JP2570662B2 - 強誘電性磁器体 - Google Patents

強誘電性磁器体

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は強誘電性磁器体、特に、低温で焼結しても電
気機械結合係数および比誘電率の大きな強誘電性磁器体
に関するものである。
(従来の技術) 一般に磁器圧電材料は加工性,量産性および特性に優
れていることから、フィルター,圧電ブザー,バイモル
フなどの圧電素子に応用されている。この種の磁器圧電
材料としては、チタン酸鉛系強誘電性磁器,チタン酸ジ
ルコン酸鉛系強誘電性磁器およびチタン酸バリウム系強
誘電性磁器が実用に供されている。
しかし、これらの強誘電性磁器は、焼結温度が1100℃
以上と高温であることから、金属板等の基板と一体化し
た複合体を得ることができなかった。
また、強誘電性磁器が鉛酸化物含有強誘電性磁器であ
る場合、その成分として揮発性のPbを含むため、焼成時
にPbOの一部が組成から失われ易く、特性の再現性およ
び均一性を図ることが困難であった。
このような問題点を解決するためには、焼成温度を低
温化する必要があり、本願出願人は、特願昭63−165274
号において、副成分としてゲルマン酸鉛ガラス化合物を
0.01〜30重量%添加した、低温焼結が可能な強誘電性磁
器体を提案している。
(従来技術の問題点) しかしながら、上述した副成分としてゲルマン酸鉛ガ
ラス化合物を添加した強誘電性磁器体からなる磁器材料
では、主成分である強誘電性磁器の結晶性が、低温焼結
では十分に得られず、電気機械結合係数および比誘電率
が低下した。また、主成分として強誘電性磁器粉末を用
いた場合であっても、粉末の平均粒径が大きいと緻密な
強誘電性磁器体が得られず、電気機械結合係数および比
誘電率が低下した。
(問題点を解決するための手段) 本発明は、上述した問題点を解決する手段として、強
誘電性磁器を主成分とし、副成分である一般式:xPbO・y
GeO2(x=1〜6,y=1〜3)からなるガラス化合物を
0.01〜30重量%含有する焼結体からなり、 前記強誘電性磁器は、鉛酸化物を含有する平均粒径0.
1〜3.0μmの粉砕磁器粉末からなる強誘電性磁器体であ
る。
なお、粉砕磁器粉末を、あらかじめ750〜950℃で熱処
理することにより、鉛成分の蒸発を迎えて粉砕時に発生
した結晶歪を除去することができる。
又、主成分となる鉛酸化物を含有する強誘電性磁器粉
末としては、チタン酸鉛系強誘電性磁器粉末およびチタ
ン酸ジルコン酸鉛系強誘電性磁器粉末が代表的なものと
して上げられるが、これらに限定されるものではない。
(作 用) 本発明は、主成分として強誘電性磁器を粉砕して得た
結晶性のよい強誘電性磁器粉末、あるいは強誘電性磁器
を粉砕した後熱処理して粉砕により生じた結晶歪を除い
た強誘電性磁器粉末に、一般式:xPbO・yGeO2(x=1〜
6,y=1〜3)で示されるガラス化合物を添加するの
で、液相焼結により異相セラミックバルクを生成するこ
とになる。
この異相セラミックバルクを生成すると、1000℃以上
で焼結した場合、強誘電性磁器体が本来有する電気機械
結合係数および比誘電率よりも大きな強誘電性磁器体を
得ることが可能となり、強誘電性磁器体が本来有する電
気機械結合係数および比誘電率を低下させることなく、
850〜1000℃の低温で焼結することが可能になる。
また、副成分である一般式:xPbO・yGeO2で示される化
合物は焼結温度を低下させるが、その含有量を0.01〜30
重量%としたのは、0.01重量%未満ではその効果をさほ
ど期待できず、30重量%を越えると焼結温度は低くなる
が、電気機械結合係数および比誘電率の低下が目立つよ
うになるからである。
一般式:xPbO・yGeO2で示される化合物x,yの値をそれ
ぞれx=1〜6,y=1〜3としたのは、低温でガラス化
できるとともに、このガラス化合物を熱処理して再結晶
させると強誘電体的性質を示すからである。
強誘電性磁器粉末の平均粒径を0.1〜3.0μmとしたの
は、0.1μm未満では粉砕により発生する結晶歪が増大
し、3.0μmより大きい粒径では緻密な強誘電性磁器が
得られないからである。
以下に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1) 原料としてPb3O4,TiO2,ZrO2およびNb2O5を用い、これ
らをPbTi0.48Zr0.52O3−1.0重量%Nb2O5の組成を有する
強誘電性磁器が得られるように秤量し、その混合物を20
時間湿式混合した。この混合物を脱水,乾燥し、850℃
で2時間仮焼した後、粉砕して仮焼粉末を得、この仮焼
粉末に有機バインダーを2〜5重量%加えて20時間混合
して造粒した。これをプレス成形にて厚さ1〜1.5mm薄
板に成形した後、この薄板を1200℃で2時間焼成して強
誘電体磁器を得た。そして、この強誘電性磁器を乳鉢の
乳棒で粉砕し、60メッシュのふるいに通して平均粒径が
5μmの焼結粉末(No.1)を得た。次に、この焼結粉末
(No.1)をポットミルにて16時間湿式粉砕して平均粒径
が3.0μmの焼結微粉(No.2)を得、さらに、この焼結
微粉(No.2)を70時間湿式粉砕して平均粒径が0.1μm
の焼結微粉(No.3)を得た。また、焼結微粉(No.2)を
750℃,850℃,950℃の各温度でそれぞれ熱処理して、ア
ニール粉(No.4),アニール粉(No.5)アニール粉(N
o.6)を得た。
また、これとは別に、原料としてPb3O4およびGeO2
用い、これらを一般式:xPbO・yGeO2(x=1〜6,y=1
〜3)の組成となるように秤量し、その混合物を16〜20
時間湿式混合した後、この混合物を脱水,乾燥し、650
℃で3時間仮焼した後、これを高純度アルミナ坩堝に入
れて875℃にて溶融した。そして、この溶融物を純水中
に投入し、急冷破砕して、一般式:xPbO・yGeO2(x=1
〜6,y=1〜3)で示される組成のガラス化合物を得
た。次に、このガラス化合物を乳鉢と乳棒で粉砕し、32
5メッシュ以下のふるいに通して粉末を得た。そして、
この粉末を650℃で3時間加熱して再結晶させた後、再
び325メッシュのふるいに通して、一般式:xPbO・yGeO2
(x=1〜6,y=1〜3)の粉末を得た。
前記強誘電性磁器粉末(No.1〜No.6)を一般式:xPbO
・yGeO2(x=1〜6,y=1〜3)の粉末と第1表に示す
組成比で混合し、その混合物に樹脂と溶剤からなる有機
バインダーを10重量%混合して厚膜ペーストを調製し
た。そして、この厚膜ペーストを直径20mm,厚さ0.1mmの
耐熱性金属、たとえば、Ni−Cr系金属板の上に直径18mm
の円としてスクリーン印刷した後、第1表に示す温度で
焼成して50μm厚の一体焼結型の複合体を得た。そし
て、この複合体の強誘電性磁器の表面に焼付法によって
銀電極を形成し、この銀電極と金属板の間に、80℃で3
〜4KV/mmの直流電圧を印加して30分間分極処理を行な
い、磁器圧電体の試料とした。
各試料について、比誘電率(εr)、円板の屈曲振動
の電気機械結合係数(Kv)を測定し、その結果を第1表
に示した。なお、第1表には、比較例として前記強誘電
性磁器粉末のかわりに、850℃で仮焼して得た強誘電性
仮焼粉末(No.7)を用いて作製した試料についても同一
の測定を行ない、その結果もあわせて第1表に示した。
(実施例2) 原料としてPb3O4,TiO2,ZrO2,SnO2,Sb2O3およびMnO2
用い、仮焼温度を900℃とした以外は実施例1と同様に
して、0.05Pb(Sn1/2 Sb1/2)O3−0.47PbTiO3−0.48PbZ
rO3−0.7wt%MnO2の組成を有する強誘電性磁器粉末を調
製した。
この強誘電性磁器粉末に、実施例1で調製したxPbO・
yGeO2(x=1〜6,y=1〜3)を第2表に示す割合で添
加すると共に、有機バインダーを6〜7wt%加えて20時
間混合した後、ドクターブレート法によりシート成形
し、パンチングして直径10mm厚さ0.1mmの円板を形成
し、該円板を第2表に示す温度で2時間焼成して磁器円
板を得た。そして、この磁器円板の両面に銀電極を焼き
付け、両電極間に80℃で3〜4kv/mmの直流電圧を印加し
て30分間分極処理を行い磁器圧電体の試料を得た。
この試料について、比誘電率(εr)、円板の拡がり
振動の電気機械結合係数(Kp)を測定し、その結果を第
2表に示した。
(実施例3) 原料としてPb3O4,TiO2,ZrO2,MnO2およびNb2O5を用
い、仮焼温度を900℃とした以外は実施例1と同様とし
て、0.05Pb(Mn1/3 Nb2/3)O3−0.45PbTiO3−0.50PbZrO
3の組成を有する強誘電性磁器粉末を調製した。
この強誘電性磁器粉末に、実施例1で調製したxPbO・
yGeO2(x=1〜6,y=1〜3)を第3表に示す割合で添
加すると共に、有機バインダーを2〜3wt%加えて20時
間混合した後、造粒し、プレス成形して直径15mm厚さ1m
mの円板を形成し、該円板を第3表に示す温度で2時間
焼成して磁器円板を得た。そして、この磁器円板の両面
に銀電極を焼き付け、両電極間に80℃で3〜4kv/mmの直
流電圧を印加して30分間分極処理を行い、磁器圧電体の
試料を得た。
この試料についても、実施例2と同様に比誘電率(ε
r)、円板の拡がり振動の電気機械結合係数(Kp)を測
定し、その結果を第3表に示した。
(実施例4) 原料としてPb3O4,TiO2,La2O3およびMnO2を用い、仮焼
温度を950℃とした以外は実施例1と同様にして、Pb
0.85La0.10TiO3−0.7wt%MnO2の組成を有する強誘電性
磁器粉末を調製した。
この強誘電性磁器粉末に、実施例1で調製したxPbO・
yGeO2(x=1〜6,y=1〜3)を第4表に示す割合で配
合し、有機バインダーを4〜5wt%加えて20時間混練し
た後、押出し成形してグリーンシートを得、これをパン
チングして直径10mm厚さ0.5mmの円板に形成して、第4
表に示す温度で2時間焼成して磁器円板を得た。そし
て、この磁器円板の両面に銀電極を焼き付け、両電極間
に80℃で3〜4kv/mmの直流電圧を印加して30分間分極処
理を行い磁器圧電体の試料を得た。
この試料について、比誘電率(εr)および円板の厚
み方向の振動の電気機械結合係数(Kt)を測定し、その
結果を第4表に示した。
第1表〜第4表から明らかなように、本発明の強誘電
性磁器体によれば、1000℃以上の焼結温度では従来の強
誘電性磁器体が本来有する電気機械結合係数および比誘
電率よりも大きな値を示す強誘電性磁器体を得ることが
できる。
また、焼結温度を850〜1000℃としても、電気機械結
合係数および比誘電率の低下がさほどみられず、850〜1
000℃の低温で焼結可能な強誘電性磁器体を得ることが
できる。
(発明の効果) 以上説明したように、本発明の強誘電性磁器体によれ
ば、1000℃以上の焼結温度では従来の強誘電性磁器体が
本来有する電気機械結合係数および比誘電率よりも大き
な値を示す強誘電性磁器体を得ることができることか
ら、エネルギー変換効率が高い圧電素子を得ることがで
きる。
また、850〜1000℃の低温で焼結可能な強誘電性磁器
体を得ることができることから、金属板との一体焼結が
可能となり、一体焼結型のブザーやバイモルフなどの電
歪素子が製造できる。
さらに、焼成時のPbO雰囲気調整が不要となり、匣や
焼成炉の延命化および省エネルギー化を図ることができ
る。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】強誘電性磁器を主成分とし、副成分である
    一般式:xPbO・yGeO2(x=1〜6,y=1〜3)からなる
    ガラス化合物を0.01〜30重量%含有する焼結体からな
    り、 前記強誘電性磁器は、鉛酸化物を含有する平均粒径0.1
    〜3.0μmの粉砕磁器粉末からなる強誘電性磁器体。
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