JP2567762Y2 - 電子楽器の鍵盤装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、電子楽器特に電子ピア
ノの鍵盤装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、図１に示すように、鍵ａを支点ｂ
を中心として回動自在に設け、該鍵ａに支点ｃを中心と
してハンマーｄから成る鍵復帰手段を回動自在に支持し
た電子楽器の鍵盤装置が知られている。

【０００３】このハンマーｄは、アコースティックピア
ノと同じような鍵タッチ感を得るためのもので、所定の
重量を有しており、重心は図の右端にある。鍵ａを押す
と、ハンマーｄは支持部材ｅを介して回動し、鍵ａをハ
ンマーｄの重量によりハンマーｄと鍵ａは初期位置に復
帰する。この従来の鍵盤装置は、或る程度以上の力で押
鍵したときに限ってアコースティックピアノに似た鍵タ
ッチ感を得ることができるが、非常に弱く押鍵したとき
は鍵のストロークの終期に於いて負荷が増大し、アコー
スティックピアノのように鍵のストロークの終期で一気
に負荷が軽減する（レットオフ）感じは得られない。

【０００４】そこで本願考案者は、鍵盤フレームに揺動
自在に支持した鍵から伝達される力により移動及び回動
するジャックを設けると共に該ジャックの回転を初期位
置に戻す弾性部材を設け、該鍵が押されて揺動するとき
に該ジャックが回転してハンマー等の鍵復帰手段との連
係を断ち、該鍵に押鍵の強弱に係わらずアコースティッ
クピアノのような鍵タッチを与える構成を考案した。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】上記のような鍵に回動
自在にジャックを設ける場合、鍵によるジャックの回動
を復帰させる弾性部材を鍵に復帰力を与える弾性部材と
は別個に設けると、各弾性部材を夫々に取付ける取付部
のために鍵や鍵盤フレームの構造が複雑になり加工が煩
雑で組立作業に時間が掛かる不都合を生じて好ましくな
い。

【０００６】本考案は、電子楽器の鍵盤装置の鍵と鍵復
帰手段との連係を断つジャックとに共通の弾性部材によ
り復帰力を与えて簡単な構成で特別な部材を要すること
なく簡単に組立て得る鍵盤装置を提供することを目的と
するものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本考案では、上記の目的
を達成するため、電子楽器の鍵盤フレームに鍵の揺動の
支点を設け、該鍵から伝達される力により移動及び回動
するジャックと、該ジャックの回動を復帰させる弾性部
材と、該ジャックに当接して該鍵に復帰力を与える鍵復
帰手段とを備えた鍵盤装置に於いて、該鍵に該ジャック
を回動自在に取付け、該弾性部材に該ジャックの回動の
復帰力と該鍵の補助復帰力を発生させるように該ジャッ
クと鍵盤フレーム間に該弾性部材の各端を係着した。該
弾性部材は、その一端を鍵盤フレームに固定した上記鍵
復帰手段の支点部材に係着すると好都合である。

【０００８】

【作用】鍵を押し下げるとこれに取付けたジャックも下
動し、該ジャックの下動が進むと該ジャックにハンマー
等の鍵復帰手段が当接してこれを押し下げる。該ジャッ
クの下動が更に進むと適当な位置に用意された固定部材
に当接してジャックが回動し、鍵と鍵復帰手段の連係が
断たれる。そして鍵が下限に達すると鍵と鍵復帰手段が
当接する。これにより演奏者は押鍵中、抵抗感、非抵抗
感、抵抗感を交互に受け、アコースティックピアノの鍵
タッチが得られる。該鍵は弾性部材の弾力による補助復
帰力と鍵復帰手段の力により初期位置に復帰するが、こ
のとき該ジャックも該弾性部材の弾力により回動前の初
期位置に復帰して次の押鍵に備える。

【０００９】該弾性部材は例えば板ばねで構成され、そ
の一端を鍵盤フレームに固定し他端を該ジャックに固定
することにより、該弾性部材は該ジャックにその回転の
復帰力を与えると同時に該ジャックを介して鍵にも補助
復帰力を与えることができ、該ジャックと鍵に個々に復
帰のための弾性部材を設ける必要がないので鍵盤フレー
ム及び鍵の構造が簡単になり、弾性部材はその１個を装
置の組立てに際して取付ければ足りるので、その組立て
が簡単になる。鍵に復帰力を与えるための鍵復帰手段を
支持する支点部材が鍵盤フレームに設けられる場合に
は、該支持部材に弾性部材の一端を係着させれば弾性部
材の取付けのために特別の部材を要さず、安価になる。

【００１０】

【実施例】本考案の実施例を図面に基づき説明すると、
図２に於いて符号１は基端部に於いて鍵盤フレーム２に
支点２ａで回動自在に支持された鍵（白鍵）で、該鍵１
は略箱状にモールド成形されて下面が開放しており、該
鍵１の両側壁の少なくとも一方に戻り荷重付与部３（後
述）を下方へ突出して形成した。該鍵盤フレーム２には
スイッチ４及び支点部材５が固定され、該支点部材５の
支点６に、一端に錘７が付設されたハンマーから成る鍵
復帰手段８を回動自在に支持するようにした。該鍵１の
内部空間には側面形状が略Ｚ字状をしたジャック９が図
６に見られるようなこれと一体に左右に延びる支軸９ａ
により鍵１の下端に設けた切欠１ａ内に回動自在に軸支
される。該ジャック９は、鍵１が下方へ揺動したとき、
該ジャック９の角部９ｃが鍵盤フレーム２に当接して時
計方向に回動する。該支点部材５は図７及び図８に示す
ように適当な間隔で鍵盤フレーム２への取付け穴５ａが
形成され、その斜め下方に略円筒軸状の支点６を備え、
更にその上面に斜面５ｂを形成してそこに短冊状の板ば
ねから成る弾性部材１１の一端を受ける受け孔１０を穿
設した。該支点部材５の背後に、鍵盤フレーム２にスイ
ッチ４の取付けのために設けられるスイッチ基板１４の
撓みを防止するためのリブ５ｃを形成するようにした。
該弾性部材１１の他端はジャック９の中腹の凹入部９ｂ
に係止されて該ジャック９を鍵１の切欠１ａ内から脱落
しないように支持すると共に、その支軸９ａを中心に図
の反時計方向の復帰回動力を与え、この回動力により該
ジャック９の当接部１２が鍵復帰手段８のジャック当接
部１３に当接する位置に回動する。該戻り荷重付与部３
は鍵復帰手段８の先端の復帰当接部１６に対向する位置
に設けられ、該ジャック９の当接部１２が該ジャック当
接部１３に当接しているときは、該戻り荷重付与部３と
復帰当接部１６とが当接しないように両者の間隔を調整
し、該ジャック９の当接部１２とジャック当接部１３と
が当接していないときに該戻り荷重付与部３と鍵復帰手
段８の復帰当接部１６とが当接するようにした。前記ス
イッチ４は、鍵１が所定角度を揺動すると該鍵１の内部
上壁に設けられたアクチュエータ１５により押圧されて
作動する。

【００１１】この図２の実施例の作動を説明すると、鍵
１が押し下げられて下方へ揺動すると、該鍵１に設けた
ジャック９も下方へ移動する。そして、ジャック９の移
動に伴ってその当接部１２が鍵復帰手段８のジャック当
接部１３を押圧し、該鍵復帰手段８が反時計方向に回動
を始める。このとき演奏者は弾性部材１１と鍵復帰手段
８の荷重を受ける。更に鍵１を押し下げると、ジャック
９の角部９ｃが図３に示すように鍵盤フレーム２から成
る固定部材に当接し、該ジャック９が支軸９ａを中心と
して回動を始める。このとき演奏者は、鍵盤フレーム２
からの抗力と弾性部材１１の荷重を受ける。更に鍵１が
押し下げられると、図４に示すように該ジャック９の当
接部１２が鍵復帰手段８から外れるように回動する。こ
の外れた一瞬は鍵１の抵抗が減り、鍵復帰手段８の荷重
が鍵１に伝わらなくなるから、演奏者には一瞬力の抜け
たような感じを受ける。その後、鍵１はストッパフェル
ト１８に当接し、鍵１の下動が終わる。

【００１２】該鍵復帰手段８が図示のような支点６を中
心に回動するハンマーである場合、鍵１の押し下げによ
る慣性のために上限ストッパフェルト１９に当接したの
ち、自重により時計方向に復帰回動しはじめ、図５に示
すように、復帰当接部１６が鍵１の戻り荷重付与部３に
当接し、鍵復帰手段８の復帰回動力が鍵１の戻り荷重付
与部３を介して演奏者に伝わり、通常のアコースティッ
クピアノにおける打弦後のタッチ感を受ける。このとき
該ジャック９の当接部１２は鍵復帰手段８のジャック当
接部１３と当接する位置には戻らない。

【００１３】離鍵時には、鍵１は鍵復帰手段８の力と弾
性部材１１の補助復帰力との合力を受け、該鍵１は図２
に示す鍵上限ストッパフェルト２０に接した初期位置に
戻り、鍵復帰手段８も下限ストッパフェルト２１に当接
してその作用を終え、ジャック９は弾性部材１１の弾性
力により初期位置に回動されてその当接部１２が鍵復帰
手段８のジャック当接部１３と対向する。

【００１４】押鍵後には、鍵１の戻り荷重付与部３に鍵
復帰手段８の復帰当接部１６が当接するので、鍵復帰手
段８の荷重が戻り荷重付与部３に作用しながら鍵１が復
帰し、そのため鍵１に接触する指に質量感を受け、この
質量感は鍵１の復帰作動の途中で再押鍵されたときでも
存在するので、連打に際しても良好な押鍵感が得られ
る。

【００１５】該弾性部材１１はジャック９と鍵盤フレー
ム２との間に設けられ、該ジャック９は揺動する鍵１に
設けられているので、該弾性部材１１の弾力は該ジャッ
ク９の回動復帰力と鍵１の復帰力として作用し、該ジャ
ック９及び鍵１の回動や揺動の復帰のために個別に弾性
部材を設ける必要がなく、鍵１や鍵盤フレーム２の構造
が簡単になり、鍵盤装置の組立て作業が容易になる。

【００１６】

【考案の効果】以上のように本考案によるときは、電子
楽器のジャックを回動自在に取付けた鍵と鍵盤フレーム
との間に弾性部材を設けるようにしたので、ジャックの
回動の復帰と鍵の揺動の復帰とを共通の弾性部材で行な
え、該鍵及び鍵盤フレームの構造が簡略になり、組み立
てが簡単で安価に製作できるようになる等の効果があ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】 従来例の截断側面図

【図２】 本考案の実施例の截断側面図

【図３】 図２の作動状態の截断側面図

【図４】 図２の作動状態の截断側面図

【図５】 図２の作動状態の截断側面図

【図６】 図２のＡ−Ａ部分の拡大断面図

【図７】 支点部材の一部省略した斜視図

【図８】 図７の背面図

【符号の説明】

１ 鍵 ２ 鍵盤フレーム ２ａ
支点 ５ 支点部材 ６ 支点 ８
鍵復帰手段 ９ ジャック １１ 弾性部材

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 電子楽器の鍵盤フレームに鍵の揺動の支
   点を設け、該鍵から伝達される力により移動及び回動す
   るジャックと、該ジャックの回動を復帰させる弾性部材
   と、該ジャックに当接して該鍵に復帰力を与える鍵復帰
   手段とを備えた鍵盤装置に於いて、該鍵に該ジャックを
   回動自在に取付け、該弾性部材に該ジャックの回動の復
   帰力と該鍵の補助復帰力を発生させるように該ジャック
   と鍵盤フレーム間に該弾性部材の各端を係着したことを
   特徴とする電子楽器の鍵盤装置。
2. 【請求項２】 上記弾性部材の一端を鍵盤フレームに固
   定した上記鍵復帰手段の支点部材に係着したことを特徴
   とする請求項１に記載の電子楽器の鍵盤装置。