JP2567756Y2 - 電子楽器の鍵盤装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、電子楽器特に電子ピア
ノの鍵盤装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、図１に示すように、鍵ａを支点ｂ
を中心として回動自在に設け、該鍵ａに支点ｃを中心と
してハンマーｄから成る鍵復帰手段を回動自在に支持し
た電子楽器の鍵盤装置が知られている。

【０００３】このハンマーｄは、アコースティックピア
ノと同じような鍵タッチ感を得るためのもので、所定の
重量を有しており、重心は図の右端にある。鍵ａを押す
と、ハンマーｄは支持部材ｅを介して回動し、鍵ａをハ
ンマーｄの重量によりハンマーｄと鍵ａは初期位置に復
帰する。この従来の鍵盤装置は、或る程度以上の力で押
鍵したときに限ってアコースティックピアノに似た鍵タ
ッチ感を得ることができるが、非常に弱く押鍵したとき
は鍵のストロークの終期に於いて負荷が増大し、アコー
スティックピアノのように鍵のストロークの終期で一気
に負荷が軽減する（レットオフ）感じは得られない。

【０００４】そこで本願考案者は、鍵に、鍵から伝達さ
れる力により移動及び回動するジャックを取付け、該ジ
ャックの回転を初期位置に戻す弾性部材を設け、該鍵が
押されて揺動するときに該ジャックが回転してハンマー
等の鍵復帰手段との連係を断ち、該鍵に押鍵の強弱に係
わらずアコースティックピアノのような鍵タッチを与え
る構成を考案した。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】上記のような鍵に回動
自在にジャックを設ける場合、モールド成形により製作
される鍵にその揺動で脱落しないようにジャックを取付
けなければならず、その脱落防止のために鍵の形状が複
雑になると製作コストが掛り、脱落防止のために特別な
部材を用いると鍵盤の組み立てに時間を要しコストが高
くなる不都合を生じて好ましくない。

【０００６】本考案は、電子楽器の鍵盤装置に設けた鍵
復帰手段との連係を断つジャックを、簡単な構成で特別
な部材を要することなく取付け得る構成を提供すること
を目的とするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本考案では、上記の目的
を達成するため、電子楽器の揺動する鍵から伝達される
力により移動及び回動するジャックと、該ジャックの回
動を復帰させる弾性部材と、該ジャックに当接して該鍵
に復帰力を与える鍵復帰手段とを備えた鍵盤装置に於い
て、該鍵に切欠を設けてそこに該ジャックの支軸を回動
自在に収容すると共に該ジャックを切欠内に保持するよ
うに該弾性部材を配置した。

【０００８】

【作用】鍵を押し下げるとジャックも下動し、該ジャッ
クの下動が進むと該ジャックにハンマー等の鍵復帰手段
が当接してこれを押し下げる。該ジャックの下動が更に
進むと適当な位置に用意された固定部材に当接してジャ
ックが回動し、鍵と鍵復帰手段の連係が断たれる。そし
て鍵が下限に達すると鍵と鍵復帰手段が当接する。これ
により演奏者は押鍵中、抵抗感、非抵抗感、抵抗感を交
互に受け、アコースティックピアノの鍵タッチが得られ
る。該鍵はスプリングと鍵復帰手段の力により初期位置
に復帰するが、このとき該ジャックも弾性部材により回
動前の初期位置に復帰して次の押鍵に備える。

【０００９】該ジャックは回動のための支軸を備えてお
り、該支軸でモールド成形された鍵に取付けられるが、
該鍵に形成した切欠へ該支軸を収容し、該ジャックの回
動を復帰させるために設けられる弾性部材で該ジャック
を切欠から外れないように保持したので、鍵の形状を複
雑化することなくしかも特別の部材を要さずに該ジャッ
クの取付けを行なえる。

【００１０】

【実施例】本考案の実施例を図面に基づき説明すると、
図２に於いて符号１は基端部に於いて鍵盤フレーム２に
回動自在に支持された鍵（白鍵）で、該鍵１は略箱状に
モールド成形されて下面が開放しており、該鍵１の両側
壁の少なくとも一方に戻り荷重付与部３（後述）を下方
へ突出して形成した。該鍵盤フレーム２にはスイッチ４
及び支点部材５が固定され、該支点部材５の支点６に、
一端に錘７が付設されたハンマーから成る鍵復帰手段８
を回動自在に支持するようにした。該鍵１の内部空間に
はジャック９がこれと一体に左右に延びる支軸９ａによ
り回動自在に軸支され、該鍵１の内部上壁に設けられた
受け部１０に一端が固定された短冊状の板ばねから成る
弾性部材１１の他端によって図の反時計方向に該ジャッ
ク９を付勢し、その力により該ジャック９の当接部１２
が鍵復帰手段８のジャック当接部１３に当接する位置に
回動する。該戻り荷重付与部３は鍵復帰手段８のジャッ
ク当接部１３に対向する位置に設けられ、該戻り荷重付
与部３の長さは、ジャック９の当接部１２の長さよりも
短く形成されており、該ジャック９が該戻り荷重付与部
３と平行する位置に回動したときには、鍵復帰手段８の
ジャック当接部１３に該ジャックの当接部１２が当接す
るようにした。前記スイッチ４はスイッチ基板１４に支
持され、鍵１が所定角度を揺動すると該鍵１の内部上壁
に設けられたアクチュエータ１５により押圧されて作動
する。

【００１１】該ジャック９は、図６に示すようにその両
側に支軸９ａを備え、該支軸９ａを鍵１の両側壁に形成
した切欠１ａに収め、該支軸９ａが切欠１ａから鍵１の
揺動で脱落しないようにジャック９に回動を与えるため
の弾性部材１１の力が該支軸９ａに作用させるべく該弾
性部材１１を設けるようにした。

【００１２】この図２の実施例の作動を説明すると、鍵
１が押し下げられて下方へ揺動すると、該鍵１に設けた
ジャック９も下方へ移動する。そして、ジャック９の移
動に伴ってその当接部１２が鍵復帰手段８のジャック当
接部１３を押圧し、該鍵復帰手段８が反時計方向に回動
を始める。このとき演奏者は荷重調整用コイルスプリン
グ１６と鍵復帰手段８の荷重を受ける。更に鍵１を押し
下げると、ジャック９の突出部１７が図３に示すように
鍵盤フレーム２から成る固定部材に当接し、該ジャック
９が支軸９ａを中心として回動を始める。このとき演奏
者は、鍵盤フレーム２からの抗力と弾性部材１１の荷重
を受ける。更に鍵１が押し下げられると、図４に示すよ
うに該ジャック９の当接部１２が鍵復帰手段８から外れ
るように回動する。この外れた一瞬は鍵１の抵抗が減
り、鍵復帰手段８の荷重が鍵１に伝わらなくなるから、
演奏者には一瞬力の抜けたような感じを受ける。その
後、鍵１はストッパフェルト１８に当接し、鍵１の下動
が終わる。

【００１３】該鍵復帰手段８が図示のような支点６を中
心に回動するハンマーである場合、鍵１の押し下げによ
る慣性のために上限ストッパフェルト１９に当接したの
ち、自重により時計方向に復帰回動しはじめ、図５に示
すように、ジャック当接部１３が鍵１の戻り荷重付与部
３に当接し、鍵復帰手段８の復帰回動力が鍵１の戻り荷
重付与部３を介して演奏者に伝わり、通常のアコーステ
ィックピアノにおける打弦後のタッチ感を受ける。この
とき該ジャック９の当接部１２は鍵復帰手段８のジャッ
ク当接部１３と当接する位置には戻らない。

【００１４】離鍵時には、鍵１は鍵復帰手段８の力と荷
重調整用コイルスプリング１６の弾性力との合力を受
け、該鍵１は図２に示す鍵上限ストッパフェルト２０に
接した初期位置に戻り、鍵復帰手段８も下限ストッパフ
ェルト２１に当接してその作用を終え、ジャック９は弾
性部材１１の弾性力により初期位置に回動されてその当
接部１２が鍵復帰手段８のジャック当接部１３と対向す
る。

【００１５】押鍵後には、鍵１の戻り荷重付与部３に鍵
復帰手段８のジャック当接部１３が当接するので、鍵復
帰手段８の荷重が戻り荷重付与部３に作用しながら鍵１
が復帰し、そのため鍵１に接触する指に質量感を受け、
この質量感は鍵１の復帰作動の途中で再押鍵されたとき
でも存在するので、連打に際しても良好な押鍵感が得ら
れる。

【００１６】該ジャック９は、鍵１の両側壁の下方に形
成した切欠１ａに支軸９ａを収め、該支軸９ａが切欠１
ａの内部から外れないように力を加える位置に配置した
弾性部材１１で鍵１に対して取付けられているので、ジ
ャック９の取付けのために特別な部材は要らず、鍵１も
モールド成形の際に切欠１ａを形成するようにすれば足
り、鍵１の構成が複雑化することはない。

【００１７】以上の実施例では、鍵復帰手段８をハンマ
ーにて構成したが、図７に示すように弾性部材やエアダ
ンパーで鍵復帰手段８を構成してもよく、ジャック９に
復帰の回動を与えると共に切欠１ａからの脱落を防止す
るために弾性部材１１を図８に示すように鍵復帰手段８
に一端を支持させ、他端をジャック９を押圧するように
取付けることも可能である。

【００１８】

【考案の効果】以上のように本考案によるときは、電子
楽器の鍵に設けたジャックの支軸を、該鍵に設けた切欠
に収め、該ジャックに復帰回動を与える弾性部材で該支
軸を脱落しないように切欠内に保持したので、該鍵を複
雑な形状とすることなくまた特別な部材を必要とするこ
となくジャックを鍵に取付けすることができ、組み立て
が簡単で安価に製作できるようになる等の効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】 従来例の截断側面図

【図２】 本考案の実施例の截断側面図

【図３】 図２の作動状態の截断側面図

【図４】 図２の作動状態の截断側面図

【図５】 図２の作動状態の截断側面図

【図６】 図２のＡ−Ａ部分の拡大断面図

【図７】 本考案の他の実施例の截断側面図

【図８】 本考案の更に他の実施例の截断側面図

【符号の説明】

１ 鍵 １ａ 切欠 ８
鍵復帰手段 ９ ジャック ９ａ 支軸 １１
弾性部材

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 電子楽器の揺動する鍵から伝達される力
   により移動及び回動するジャックと、該ジャックの回動
   を復帰させる弾性部材と、該ジャックに当接して該鍵に
   復帰力を与える鍵復帰手段とを備えた鍵盤装置に於い
   て、該鍵に切欠を設けてそこに該ジャックの支軸を回動
   自在に収容すると共に該ジャックを切欠内に保持するよ
   うに該弾性部材を配置したことを特徴とする電子楽器の
   鍵盤装置。