JP2566787B2 - カイラルスメクチックc液晶性ポリエステルおよび光学フィルター - Google Patents

カイラルスメクチックc液晶性ポリエステルおよび光学フィルター

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は特定波長の光を選択的に透過する特性を有す
るためオプトエレクトロニクスの分野への応用に好適で
あり、かつ溶融成形が可能で機械的強度にもすぐれた新
規なカイラルスメクチツクC液晶性ポリエステルに関す
る。本発明はさらにカイラルスメクチツクC液晶性ポリ
エステルより成る光学フイルターに関する。
<従来の技術> 液晶はその種類によつて特有の分子配向の秩序を有す
るために、液晶の分子配向を利用しあるいは制御するこ
とによつて様々な分野に応用でき、工業的に大きな分野
を形成している。低分子液晶については、周知の如く時
計、電卓あるいはテレビなどの表示素子としてネマチツ
クタイプのものが広く使用されており、デイスプレイの
分野において確固たる地位を築いている。また最近、こ
れらに代る次世代の表示素子用液晶として高速作動およ
びメモリー機能などの特徴を有するカイラルスメクチツ
クCタイプの液晶が注目され、激烈な開発競争が展開さ
れている。以上の如く低分子液晶においては、その電気
光学効果に基づく応用が用途の大半を占める。それに対
して高分子液晶に関しては、液晶構造の高度な分子配向
による高強度、高弾性率、高耐熱性を利用した力学材料
への応用がほとんどであり、たとえばケブラー(全芳香
族ポリアミド、米デュポン社)、ザイダー(全芳香族ポ
リエステル、米タートコ社)あるいはベクトラ(全芳香
族ポリエステル、米セラニーズ社)などがすでに商品化
されている。
高分子液晶はその力学的特性もさることながら、ネマ
チツク、スメクチツクおよびコレステリツクのそれぞれ
の液晶のタイプに応じて、低分子液晶と同様な電気光学
効果あるいは熱光学効果を示すこともまた良く知られて
いる。高分子液晶の電場、熱などの外力に対する応答は
高分子の粘性のために低分子の場合に比べて遅く低分子
液晶と同じ用途に用いることはできないが、一方高分子
液晶はそれぞれの液晶のタイプに特有の配向構造を固定
化でき、したがつてそれぞれの構造に由来する光学特性
を固定化できるという低分子液晶にない大きな特徴を有
する。この特徴を生かして光学素子を作製しようという
試みはいくつか為されている。高分子コレステリツク液
晶を利用したものとしてたとえば特開昭56−139506号に
は可視領域に属する波長の光を選択的に反射しうるラセ
ンピツチをもつ、コレステリツク液晶性ポリペプチドを
非晶質ポリマーにより固定して成る可視光反射ポリマー
複合体が開示されている。
また特開昭60−191203号には同様の手法により製造し
た可視光反射ポリマー複合体を用いたノツチフイルター
が開示されている。しかしながら高分子コレステリツク
液晶を固定化して得られたこれら光学素子は、入射光の
内の特定波長の光を選択反射するというコレステリツク
液晶の特性を固定化して得られたものであるため、逆に
透過光の側からみると反射されてカツトされた光以外の
大部分の光は透過してしまうという大きな問題点があ
る。このことはある特定波長の光のみを選択的に透過さ
せる透過フイルターとしては機能しないことを意味し、
実用上の大きな制限となる。
高分子液晶を素子化するためにフイルム化、薄膜化す
ると分子は通常フイルム面に平行に配向し、前記コレス
テリツク液晶の場合ではコレステリツク層はフイルム面
に平行となる。したがつて面にある角度で入射した光の
内、コレステリツクピツチに応じてある特定波長の光の
みが選択的に反射される。すなわち高分子コレステリツ
ク液晶を固定化して得られる光学素子は本質的に選択反
射フイルターである。一方コレステリツク液晶と同様の
分子配向秩序の周期性を有する液晶としてカイラルスメ
クチツクC液晶が知られている。カイラルスメクチツク
C液晶はスメクチツク分子層の配向ベクトルが少しずつ
ある角度でねじられていき、全体としてみると配向ベク
トルがある一定のらせん構造を有するものである。配向
ベクトルがある位置から1回転して元の位置にもどるま
での層間隔を1ピツチとすると、1ピツチを基本単位と
した周期構造をもち、このピツチに由来する光学特性を
有する。カイラルスメクチツクC液晶をフイルム化、薄
膜化すると分子は面に平行にならぶが、スメクチツクC
層はその結果、面に垂直に並ぶことになる。これがコレ
ステリツク液晶の場合と根本的に異なる点であり、フイ
ルム面に入射した光は、フイルム面に垂直に存在するカ
イラルスメクチツクC層で反射されてフイルム面の反対
側に進むことになる。すなわち結果的にはある特定波長
の光がフイルムを通して選択的に透過したことになり、
透過フイルターが得られる。
この原理を応用して高分子のカイラルスメクチツクC
液晶を固定化したフイルムないし薄膜が得られれば特定
の波長の光のみを選択的に透過する透過フイルターが得
られることになる。しかしながら明瞭なカイラルスメク
チツクC液晶相を生成し、しかもそれを固定化できるポ
リマーはまつたく知られていない。たとえばJ.C.Dubois
らは次式の構造の、側鎖にカイラルユニツトを含むメソ
ーゲンを導入したポリアクリル酸エステル誘導体につい
て報告している(Mol.Cryst.Liq.Cryst.,137、349(198
6))。
(n=2、6、11、R=H、CH3、Cl) DuboisらはX=H、n=2、X=CH3、n=11および
X=Cl、n=11のポリマーで、X線回折の測定の結果、
スメクチツクの層構造が観察されること、および側鎖の
メソーゲンの長軸が層の法線に対して傾いていることよ
り、これらのポリマーがある一定温度範囲でカイラルス
メクチツクらしい相を形成している可能性を示唆してい
る。しかしながら光学的な観察結果あるいはピツチ長に
対する報告はなく、カイラルスメクチツクC相生成に対
する証拠は不明確であり固定化に関する報告もない。さ
らにこのような形の側鎖を有するモノマーは合成に多段
のステツプを要し極めて面倒であること、重合させた場
合に分子量が上がらず、フイルムとした場合に強度が低
いなど、工業的に実施する際には多くの難点がある。ま
たV.P.Shibaevらは同様のポリアクリル酸エステル誘導
体について報告している(Polymer Bulletin 12、299
(1984)。
(m=6〜12、R、R1およびR2は与えられていない) ShibaevらはX線回折の結果より、スメクチツク層構
造を有すること、層の法線に対して側鎖のメソーゲンの
長軸が傾いていることおよび自発分極が観察されること
などより、これらのポリマーがカイラルスメクチツクC
液晶相を形成すると結論している。しかしながらShivae
vらのポリマーはDubaisらのポリマーと同じく合成が極
めて面倒であること、高分子量品が得にくいことなど工
業的に実施するうえで多くの難点を有する。さらにこれ
らのポリアクリル酸誘導体タイプのカイラルスメクチツ
クC液晶ポリマーは、低分子のカイラルスメクチツクC
液晶をそのままの形で側鎖に導入したものであり、その
意味では低分子液晶の延長上にあるものと言える。一方
主鎖にカイラル成分を含む主鎖型の高分子液晶でカイラ
ルスメクチツクC液晶となるものを合成できれば上記諸
欠点を克服し、溶融成形でき強度の強い工業的価値の大
きい素材になる。主鎖にカイラルな成分を含むポリエス
テル、ポリアミドなどの合成例は報告されているが、ほ
とんどがコレステリツク液晶であり、他にネマチツク、
スメクチツクの例もあるが、カイラルスメクチツクC相
を明確に示すものはまつたく報告されていない(L.L.Ch
apoy,“Recent Advances in Liquid Crystalline Palym
ers"、Elsevier Applied Science Publishers,London a
nd New York,1985、p28) <発明が解決しようとする問題点> 本発明者らは特定波長の光を選択的に透過する光学素
子を製造するに適した素材としてカイラルスメクチツク
C液晶性ポリマーに着目した。上記したポリアクリル酸
エステル誘導体類の有する諸欠点にかんがみ、明確なカ
イラルスメクチツクC相を形成すること、固定化が容易
であること、溶融成形が可能でありかつ十分な機械的強
度を有することなどの要求を満足させ、さらに工業的に
容易に製造できるポリマーを鋭意研究した結果、特定の
メソーゲンおよび特定のカイラル成分を含有するポリエ
ステルが明確なカイラルスメクチツクC液晶となり、か
つ上記諸問題を解決することを見出しついに本発明を完
成させるに到つた。
<問題点を解決するための手段> 本発明は下記式で表わされる構造単位(A)、(B)
および(C)から成り、特定波長の光を選択的に透過す
る特性を有するためオプトエレクトロニクス分野への応
用に好適であり、かつ溶融成形が可能で機械的強度にも
すぐれた新規なカイラルスメクチツクC液晶性ポリエス
テルを提供するものである。
上記においてモル%は対応するモノマーの仕込みモル
%を意味する。
本発明はまた上記カイラルスメクチツクC液晶性ポリ
エステルより成る光学フイルターを提供するものであ
る。
本発明のポリエステルを構成する各成分について説明
すると、まず(A)単位は液晶性を発現するためのメソ
ーゲンとしての役割を果す必須成分である。ビフエニル
−4,4′−ジカルボン酸またはその誘導体(たとえばジ
エチルエステル等のジアルキルエステル)から誘導され
る。(A)単位はポリマー中40〜60モル%の割合で存在
し、好ましくは45〜55モル%であり、実質的に50モル%
が特に好ましい。(B)単位は本発明のポリエステルが
カイラルスメクチツクC液晶相を発現するための光学活
性な成分として必須成分であり、光学活性な2−メチル
−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオ
ールあるいは2−プロピル−1,4−ブタンジオールまた
はそれぞれの誘導体(たとえばジアセトキシ化合物など
の誘導体)から誘導される。
用いられるブタンジオール類はR体、S体のいずれで
も良く、またR体およびS体の混合物であつても良い。
この場合には両者の差が1%以上あることが必要であ
り、10%以上あることが好ましく、20%以上であること
が特に好ましい。R体とS体の含有率の差が1%未満の
場合にはカイラルスメクチツクC相を形成する温度範囲
が狭くなり好ましくない。(B)単位の割合は1から60
モル%が好ましく、特に10から50モル%が好ましい。
(B)単位が1モル%より少ない場合はカイラルスメク
チツクC相を形成する温度範囲が狭まり好ましくない。
(C)単位は本発明のポリエステルがカイラルスメチツ
クC相を形成する際の転移温度、温度範囲、粘性などを
コントロールするための成分であり、目的とするポリマ
ーの物性に応じて種類および含有量を選ぶことができ
る。(C)単位の割合は目的に応じ0〜59モル%の範囲
で任意に選択できるが、物性制御の点から5〜50モル%
が好ましい。式中のnは2〜10の整数であり、特に4〜
8の場合が好ましい。n=1の場合あるいはnが10より
大きい場合には液晶を形成しない場合がある。(C)単
位は対応するα,ω−ジオールまたはその誘導体(たと
えばジアセトキシ誘導体)から誘導される。
本発明のカイラルスメクチツクC液晶性ポリエステル
の製造方法は特に制限されるものでなく、公知の溶融重
合法または溶液重合法を適用することにより製造でき
る。たとえば所定量のビフエニル−4,4′−ジカルボン
酸ジエチル、光学活性な2−アルキル−1,4−ブタンジ
オールおよびα,ω−アルカンジオールを高温、高真空
下に重合させることによつて製造でき、分子量は重合時
間をコントロールすること等により通常の縮合反応同様
容易に調節しうる。分子量は後記する極限粘度〔η〕で
示し通常0.05〜5.0、好ましくは0.1〜2.0、より好まし
くは0.2〜1.0である。重合反応を促進させるためには、
従来から公知のポリエステル重合触媒であるアルカリ金
属塩や、Fe、Mn、Cd、Mg、Ba、Ti、Zn、Pb、Co、Sb、Sn
などの金属塩を単独もしくは組み合わせて使用すること
もできる。また分解抑制剤としてリン化合物を添加して
も良い。
以上のような方法で製造されたカイラルスメクチツク
C液晶性ポリエステルを用いて光学フイルターを製造す
る方法について次に説明する。本発明のポリエステルを
光学素子として用いる場合、板状、シート状、フイルム
状あるいは薄膜状として用いることができる。例として
フイルム状で用いる場合の製造法について述べる。本発
明のカイラルスメクチツクC液晶性ポリエステルのフイ
ルムは当該分野で用いられる各種の方法を採用すること
ができる。まずポリマーを高温で溶融状態で保持する。
カイラルスメクチツクC相を示す温度域に一定時間保持
したのちポリマーにせん断力をかけて分子をフイルム面
に平行に配列させる。次に冷却することによつて十分に
配向したカイラルスメクチツクC相を固定化できる。第
5図の相図の例から明らかなように、本発明のポリエス
テルはカイラルスメクチツクC相を示す温度より高い温
度域でコレステリツク相あるいはスメクチツクA相を示
す。コレステリツク相あるいはスメクチツクA相を示す
温度域で保持した場合は、その後少し温度を下げてカイ
ラルスメクチツクC相で熟成させ、次にポリマーにせん
断力をかけて分子をフイルム面に平行に配列させたのち
冷却することによつて、さらに十分に配向したカイラル
スメクチツクC相を固定化できる。冷却速度はカイラル
スメクチツクC相を示す温度範囲によつて異なる。すな
わち光学活性成分の含有量によつて異なるが、本発明の
ポリエステルのカイラルスメクチツクC相を示す温度範
囲は非常に広いので、多くの場合特別な操作をしなくと
も通常のフイルム面からの放冷温度の冷却でも容易にカ
イラルスメクチツクC液晶構造を固定化できる。この固
定化が容易であるという点は本発明の大きな特徴の一つ
であり、またフイルムが簡単な方法で製造でき、またポ
リエステルであるために強度が大きくしたがつて大面積
のフイルターが容易に製造できることも本発明の大きな
特徴である。
このようにして得られたフイルムを目的に応じて裁断
あるいは成形して、そのまま波長選択性透過フイルター
として用いることができるし、また他の光学素子との組
み合わせにより光学的デバイスとすることもできる。本
発明の光学フイルターは高精度で安価かつ製造が容易で
あり、光学、光エレクトロニクスの分野に好適であり工
業的価値が極めて大きい。また本発明のカイラルスメク
チツクC液晶性ポリエステルはピツチが可視光の領域に
あるとき、非常に美しい色を呈し装飾品、フアツシヨン
品としても有用である。さらに本発明のポリエステルは
カイラルスメクチツクC液晶性であるため、強誘電性を
有し、それを利用した種々の用途への応用が可能であ
る。
<実施例> 以下に実施例を述べるが、本発明はこれらに制限され
るものではない。なお、実施例で用いた各分析法は以下
のとおりである。
(1) 組成の決定 ポリマーを重水素化トリフルオロ酢酸に溶解し400MHz
1H−NMR(日本電子製JNM−GX400)または300NHzの1H
−NMR(ブルカー社製MSL−300)で測定し決定した。
(2) 極限粘度の測定 ウベローデ型粘度計を用い、フエノール/テトラクロ
ロエタン(60/40体積比)混合溶媒中、25℃で測定し
た。
(3) DSCの測定 Perkin−Elmer DSC−II型カロリメーターを用いて測
定した。
(4) X線回折の測定 理学電機社製X線発生装置を用いて写真撮映した。
(5) 透過スペクトルの測定 自社製分光測定装置を用いて測定した。
実施例 1. (1) カイラルスメクチツクC液晶性ポリエステルの
合成 ビフエニル−4,4′−ジカルボン酸ジエチル5.96g、
(S)−2−メチル−1,4−ブタンジオール3.32g(enan
tiotropic exess,e.e.=93%)およびテトラブトキシチ
タン2滴を攪拌機のついたリアクターに仕込み窒素ガス
でパージしたのち、185℃で45分間窒素気流下に反応を
行つた。つづいて205℃で10分間、225℃で10分間と少し
ずつ反応を続け、最後に250℃で20分間反応を行いポリ
マーを合成した(表1のポリマーNo.1)。
次にビフエニル−4,4′−ジカルボン酸ジエチル5.96
g、(S)−2−メチル−1,4−ブタンジオール1.66g、
1,6−ヘキサンジオール1.89gおよびテトラブトキシチタ
ン2滴を用いて、185℃で45分、205℃で10分、225℃で1
0分さらに250℃で20分間反応させたのち、250℃で0.3mm
Hgの高真空下で1時間反応を行いポリマーを合成した
(表1のポリマーNo.5)。
同様にしてモノマーの種類、仕込み組成を変え、また
反応条件をコントロールすることによつて分子量を調節
し、表1に示す各種ポリマーを合成した。
得られたポリマーの組成および〔η〕を表1に示し
た。これらの内、例としてポリマーNo.1、5、6および
9の1H−NMRスペクトルを第1図に示した。
(2) カイラルスメクチツクC構造の同定 X線回折 第2図にポリマーNo.1のX線回折結果を示した。スメ
クチツク層構造の存在を示す回折パターンがあらわれ、
そのときのスペーシングdが温度の低下とともに減少す
る。さらにスメクチツク層を形成する分子のチルト角θ
が、逆に温度の低下とともに増大している。以上よりこ
のポリマーはスメクチツク層構造を有しかつスメクチツ
ク層を形成する分子の配向ベクトルがチルトしており、
かつチルト角の増大と層間隔の減少が相関していること
がわかる。すなわち本ポリマーはスメクチツクC液晶を
形成することは明らかである。
偏光顕微鏡観察 第3図にポリマーNo.8の160℃における偏光顕微鏡写
真を示した。鮮明なリターデーシヨンライトが観察さ
れ、本ポリマーがコレストリツク液晶と同様のらせん周
期構造を有していることを明確に示している。すなわり
本ポリマーは、X線回折の結果と偏光顕微鏡観察の結果
より、スメクチツクC構造を形成しかつ光学的に観察さ
れるらせん構造を有することから、カイラルスメクチツ
クC液晶性であることは明らかである。
(3) カイラルスメクチツクC相を示す温度および組
成範囲 DSCの測定 第4図にポリマーNo.1、3および6のDSCサーモグラ
ムを示した。クーリングカーブにおいて結晶相からカイ
ラルスメクチツクC液晶相への転移点T1、カイラルスメ
クチツク液晶相からコレステリツク液晶相またはスメク
チツクA液晶相への転移点T2および液晶相から等方相へ
の転移点T3が観察された。すなわち図3より、本発明の
ポリマーが広い温度範囲において安定なカイラルスメク
チツクC相を形成することおよびそれより高い温度範囲
においてはコレステリツク相またはスメクチツクA相を
形成することがわかる。
相図 第5図にNo.1〜No.7のポリマーのDSCサーモグラムお
よび偏光顕微鏡観察結果を基に作成した相図を示した。
これらのポリマーはB単位としてe.e.が93%の(S)−
2−メチル−1,4−ブタンジオールから誘導されるユニ
ツトを、C単位として1,6−ヘキサンジオールから誘導
されるユニツトを有している。カイラルユニツトすなわ
ちB単位のモル分率のほぼ全域および広い温度範囲にわ
たつてカイラルスメクチツクC相が形成されることがわ
かる。C単位が1.0の近傍すなわちカイラルユニツト含
量が少量である組成域においても、発現する温度範囲は
せまくなるがカイラルスメクチツクC相が形成されてお
り、本発明のポリマーの特徴である非常に広い組成域で
カイラルスメクチツクC液晶を形成する性質が明らかに
示されている。
(4) カイラルスメクチツクC相のらせんピツチ 93%e.e.の(S)−2−メチル−1,4−ブタンジオー
ルおよびラセミ体の2−メチル−1,4−ブタンジオール
を混合することによつて、e.e.がそれぞれ80%、50%、
30%および10%の2−メチル−1,4−ブタンジオールを
調製した。次にこれらとビフエニル−4,4′−ジカルボ
ン酸ジエチルを用いて、(1)で述べた方法に従いカイ
ラルスメクチツクC液晶性ポリエステルを合成した(ポ
リマーNo.12、13、14および15)。得られたポリマーの
らせんのピツチPを偏光顕微鏡によるリターデーシヨン
ラインの間隔dの観察(d=P/2)および透過スペクト
ルの波長λmaxの測定(λmax=nPsinθ)により求め
た。結果を第6図に示したが、本ポリマーはカイラル成
分の量を調節することによつて、カイラルスメクチツク
C構造の有するらせんピツチを制御でき、したがつて透
過してくる光の波長を自在に選べることがわかる。
実施例 2. 光フイルターの作製 実施例1の(4)で合成した4種のポリマーについ
て、それぞれ0.2gずつを5cm×2cm×0.1cmのパイレツク
スガラス2枚の中心部にはさんでおき、厚さ調節用に20
μm厚のアルミフイルムを入れて、卓上プレス上で200
℃、30分間予熱したのち、同じ温度に保ちながら少しず
つ圧力をかけてプレスした。次にプレスより取出し、15
0゜から180℃の温度で1時間保持したのち冷却して第7
図に示す試料を作製した。この試料に第8図のようにし
て30゜の角度で光を入射しフイルターを透過してくる光
の波長を30℃の角度で測定し、結果を表2に示した。
表 2 透過スペクトルの波長 ポリマーNo. 波長4/mm 色 12 410 紫 13 620 橙 14 1090 (赤外) 15 2920 (赤外) これより実質的に本発明のポリマーより成る光フイル
ターは特定波長の光を選択的に透過させることができる
こと、ポリマーのカイラル成分の組成を変化させること
により透過する光の波長を自由にコントロールできかつ
その波長の範囲が非常に広いことがわかる。すなわち本
発明の光フイルターは製造の容易さ、波長選択性、波長
範囲の広さなどの点において極めてすぐれたものであ
る。
<発明の効果> 本発明の新規なカイラルスメクチツクC液晶性ポリエ
ステルは、広い組成範囲および温度範囲において安定な
カイラルスメクチツクC相を示しかつ固定化が容易であ
る。製造が容易で強度の高いフイルムに成形できるた
め、カイラルスメクチツクC相を固定化したフイルムを
容易に製造することができる。このフイルムは特定波長
の光を選択的に透過するため光フイルターとして有用
で、光学分野および光エレクトロニクス分野の様々な用
途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のカイラルスメクチツクC液晶性ポリエ
ステルの1H−NMRスペクトル図であり、横軸はTMS基準の
シフト値(ppm)である。 第2図はX線回折の結果より求めたスメクチツクC相の
層間隔(d/Å)と分子のチルト角(θ/deg)であり、横
軸は温度である。 第3図は本発明のポリマーの結晶構造を示す偏光顕微鏡
写真である。 第4図は本発明のポリマーのDSCサーモグラムである。 第5図は本発明のポリマーの相図の1例である。 第6図は本発明のポリマーのカイラルスメクチツクC相
のらせんとピツチとカイラル成分量との関係を示す図で
あり、たて軸はピツチ長(μm)の逆数、横軸はエナン
テオトロピツクエクセス(e.e.)の値である。 第7図は本発明の実施例で用いた光フイルターの上面
図、長辺方向の側面図および短辺方向の側面図を示す。 第8図は本発明の実施例で用いた光フイルターへの入射
光の角度および透過光の測定角度を示す。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記式で表される構造単位(A)、(B)
    および(C)から成り、極限粘度〔η〕が0.05〜5.0で
    あるカイラルスメクチックC液晶性ポリエステル。 但し上記のモル%はモノマーの仕込みモル%を意味す
    る。
  2. 【請求項2】下記式で表される構造単位(A)、(B)
    および(C)から成り、極限粘度〔η〕が0.05〜5.0で
    あるカイラルスメクチックC液晶性ポリエステルからな
    る光学フィルター。 但し上記のモル%はモノマーの仕込みモル%を意味す
    る。
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