JP2563505B2 - スクロール型流体機械 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は圧縮機及び膨張機として用いられるスクロー
ル型流体機械に関する。

（従来の技術） 従来のこの種スクロール型圧縮機は固定スクロールと
旋回スクロールを位相をずらせて相互に噛み合わせるこ
とによって密閉小室を限界し、旋回スクロールをその自
転を阻止すると共に旋回半径を可変に支持しながら上記
固定スクロールのうず巻体の中心まわりに公転円運動さ
せることにより密閉小室内に吸入されたガスを圧縮して
吐出する。

このスクロール型圧縮機の容量を低減するには、密閉
小室内から圧縮途中のガスを抽出しこれをバイパス流路
を経て吸入側に戻していた。

（発明が解決しようとする課題） 上記、従来のスクロール型流体機械においては、その
容量制御率は密閉小室に開口するバイパス穴の位置によ
って一義的に定まり、従って、容量制御率を任意に変更
できなかった。

また、密閉小室から抽出されるガスを圧縮するために
費やされた動力が無駄になると共に抽出されたガスがバ
イパス流路を流過する際に圧力損失が生ずるので、アン
ロード運転時の効率が低下する。

また、圧縮途中の昇温したガスが吸入側に戻るため、
吸込ガスの温度が上昇し、これに伴って吐出ガスの温度
も上昇するので、圧縮機の信頼性を損なうという問題が
あった。

（目的） 本発明は上記課題を解決するために発明されたもので
あって、その目的とするところは、容量を０〜100％ま
で無段階に変更できるスクロール型流体機械を提供しよ
うとするにある。

本発明の他の目的とするところは、アンロード運転時
においてもその効率が低下しないスクロール型流体機械
を提供しようとするにある。

本発明の更に他の目的とするところは、アンロード運
転時においても吐出ガス温度が上昇しないスクロール型
流体機械を提供しようとするにある。

（課題を解決するための手段） 上記目的を達成するため、本発明のスクロール型流体
機械は、固定スクロールと旋回スクロールを位相をずら
せて相互に噛み合わせることによって密閉小室を限界
し、上記旋回スクロールを自転を阻止すると共に旋回半
径を可変に支持しながら上記固定スクロールのうず巻体
の中心まわりに公転円運動させて上記密閉小室内に取り
込まれたガスをその圧力を変えて吐出するスクロール型
流体機械において、上記固定スクロール及び旋回スクロ
ールの一方又は双方のうず巻体をその厚さ方向に沿って
２分割することによって腹側うず巻体と背側うず巻体を
構成すると共にこれら腹側うず巻体と背側うず巻体をそ
の中心まわりに互いに逆方向に同じ角度だけ相対回転さ
せる回転機構を設けたことを特徴とする。

（作用） 本発明において、回転機構によって腹側うず巻体と背
側うず巻体をその中心まわりに互いに逆方向に同じ角度
だけ相対回転させることによって両者を密着させ又は両
者の間に空隙を形成することによりうず巻体の厚さを任
意に変更して密閉小室の容積を任意に設定しうる。

（実施例） 本発明の１実施例が第１図ないし第３図に示されてい
る。

第１図において、１はハウジングで、円筒状ケース1a
と、その前端開口を掩蓋するフロントエンドプレート1
b、ケース1aの後端開口を掩蓋するリアエントプレート1
cと、フロントエンドプレート1bの中央開口を掩蓋する
フロントノーズ1dからなり、これらはボルト等によって
一体に締結されて密閉腔所２を限界している。

この密閉腔所２内には固定スクロール３及び旋回スク
ロール４が収納されている。

固定スクロール３は内側スクロール3Aと外側スクロー
ル3Bに２分割されている。そして、内側スクロール3Aは
内側端板3A₁と背側うず巻体3A₂を具え、外側スクロール
3Bは外側端板3B₁と腹側うず巻体3B₂を具えている。

内側スクスクロール3Aと外側スクロール3Bは同芯に組
み合わされ、小径の円板状内側端板3A₁のまわりに大径
の円環状外側端板3B₁が位置してこれら内側端板3A₁と外
側端板3B₁の内面が面一となり、腹側うず巻体3B₂の背側
に背側うず巻体3A₂が位置する。

かくして、内側端板3A₁と外側端板3B₁により固定スク
ロール３の端板3aが構成され、背側うず巻体3A₂と腹側
うず巻体3B₂によって固定スクロール３のうず巻体3bが
構成される。

内側スクロール3Aと外側スクロール3Bはこれらの端板
3A₁、3B₁の中心まわりに相対回転可能とされ、また、外
側スクロール3Bはハウジング１に対して相対回転可能に
支持される。

そして、内側スクロール3Aの内側端板3A₁の外周面と
外側スクロール3Bの外側端板3B₁の内周面との間隙はシ
ール部材31によってシールされ、外側端板3B₁の外周面
と円筒状ケース1aの内周面との間隙はシール部材32によ
ってシールされている。

旋回スクロール４は端板4aとこの内面に立設されたう
ず巻体4bを具えている。この旋回スクロール４と固定ス
クロール３とは互いに位相をずらせて噛み合わされ、旋
回スクロール４のうず巻体4bの先端は固定スクロール３
の内側端板3A₁及び外側端板3B₁の内面に密接し、固定ス
クロール３の背側うず巻体3A₂及び腹側うず巻体3B₂の先
端は旋回スクロール４の端板4aの内面に密接する。そし
て、背側うず巻体3A₂のうち内径側に位置する部分の基
端は内側端板3A₁の内面に固定されているが、外径側に
位置する部分の基端は外側端板3B₁の内面に密接する。
また、腹側うず巻体3B₂のうち外径側に位置する部分は
外側端板3B₁の内面に固定されているが、内径側に位置
する部分は内側端板3A₁の内面に密接する。

主軸７がフロントノーズ1d及びフロントエンドプレー
ト1bの中央開口を貫通し、この主軸７は固定スクロール
３の中心線上においてベアリング８及び９によって回転
自在に支持されている。

そして、この主軸７の先端には第２図に明らかなよう
にこの回転軸芯Ｏより距離ｌだけ偏心して偏心ピン10が
突設され、この偏心ピン10は円筒状のドライブブッシュ
11にその中心O₁より距離ｌだけ偏心した位置に穿設され
た穴内に回転自在に嵌合されている。

このドライブブッシュ11は旋回スクロール４の端板4a
の外面に突設された中心O₂の凹所12内に嵌合され、ニー
ドル軸受13によって回転自在に支持されている。

旋回スクロール４の端板4aの外面とフロントエンドプ
レート1bの内面との間にはオルダムリング14が介装さ
れ、このオルダムリング14は旋回スクロール４の自転を
阻止するが、公転円運動を許容する。

かくして、旋回スクロール４は主軸７を回転すること
によって回転軸芯Ｏまわりに旋回半径ρ（即ち、回転軸
芯Ｏと中心O₂との距離）の円軌道上を公転円運動する。
この旋回半径ρはドライブブッシュ11の偏心ピン10まわ
りの回転によって変化する。

内側スクロール3Aの内側端板3A₁の外面に外歯歯車15
が突設され、外側スクロール3Bの外側端板3B₁の外面に
は内歯歯車16が突設されている。そして、外歯歯車15は
歯車17と噛合し、内歯歯車16は歯車18と噛合し、歯車17
及び18はリアエンドプレート1cに軸受19によって軸支さ
れた制御軸20に固定されている。

これら外歯歯車15、内歯歯車16、歯車17、18のピッチ
円D₁、D₂、D₃、D₄は次の関係式を充足するように定めら
れている。

D₂−D₄＝D₁＋D₃、 そして、上記外歯歯車15、内歯歯車16、歯車17、18、
軸受19、制御軸20等によって回転機構が構成され、その
制御軸20を回転することによって、内側スクロール3Aと
外側スクロール3Bはこれらの端板の中心まわりに互いに
逆方向に同じ角度だけ相対回転するようになっている。

かくして、このスクロール型圧縮機をフルロード運転
する時には、制御軸20を回転しない。すると、第３図
（Ａ）に示すように、背側うず巻体3A₂と腹側うず巻体3
B₂は互いに密着するので、これらうず巻体3A₂と3B₂によ
って構成される固定スクロール３のうず巻体3bの厚さは
t₀となっている。

そこで、主軸７を回転すると、旋回スクロール４はオ
ルダムリング14によって自転を阻止されながら固定スク
ロール３のうず巻体3bの中心まわりに旋回半径ρの円軌
道上を公転円運動する。

すると、旋回スクロール４のうず巻体4bと固定スクロ
ール３のうず巻体3bとが複数個所で線接触してうず巻体
3bの中心に対して対称な複数の密閉小室５が限界され
る。そして、線接触部が次第にうず巻に沿ってその中心
方向に移動すると、これに伴って密閉小室５がその容積
を減少しながらうず巻の中心方向に移動する。

かくして、図示しない吸入ポートを通って吸入室21内
に流入したガスがうず巻の外終端に形成される開口から
密閉小室５内に取り込まれてここで圧縮され、うず巻の
中心部の吐出小室６から内側端板3A₁に穿設された貫通
孔22を経て吐出室23に吐出され、図示しない吐出口を経
てハウジング１の外部に吐出される。

アンロード運転時には、制御軸20を回転することによ
り内側スクロール3Aと外側スクロール3Bを互いに逆方向
にこれらの端板の中心のまわりに同じ角度だけ相対回転
させる。

すると、第３図（Ｂ）に示すように、背側うず巻体3A
₂と腹側うず巻体3B₂との間に隙間24を生じて、固定スク
ロール３のうず巻体3bの厚さはt₁となり、また、このう
ず巻体3bは旋回スクロール４のうず巻体4bと複数個所で
線接触して小さい容積の密閉小室５を限界する。

そして、旋回スクロール４の旋回半径ρはそのうず巻
体4bと固定スクロール３のうず巻体3bとの線接触により
自動的に定まるので、旋回スクロール４の旋回半径ρは
固定スクロール３のうず巻体3bの厚さの増大に応じて小
さくなる。この結果、密閉小室５の容積が小さくなるの
で、このスクロール型圧縮機の容量は小さくなる。

無負荷運転時には第３図（Ｃ）に示すように、背側う
ず巻体3A₂と腹側うず巻体3B2の隙間24を更に拡大して固
定スクロール３のうず巻体3bの厚さをt₂とすることによ
ってこのうず巻体3bをその全長に亘って旋回スクロール
４のうず巻体4bに密着させる。

すると、旋回スクロール４の旋回半径ρと零となり、
また、密閉小室５の容積は零となるので、ガスの吸入及
び圧縮が行われなくなる。

かくして、制御軸20の回転角度を任意に設定すること
によって、スクロール型圧縮機の容量を０から100％ま
で無段階に変更できる。

上記実施例においては、固定スクロールを内側スクロ
ールと外側スクロールから構成したが、これに代えて旋
回スクロールだけ又は固定スクロールと旋回スクロール
の双方を内側スクロールと外側スクロールから構成して
も良い。

また、回転機構は図示のもの以外の任意の形状、構造
のものを採用しうる。

そして、本発明はスクロール型膨張機に適用しうるこ
とは勿論である。

（発明の効果） 本発明においては、固定スクロール及び旋回スクロー
ルの一方又は双方のうず巻体をその厚さ方向に沿って２
分割することによって腹側うず巻体と背側うず巻体を構
成すると共にこれら腹側うず巻体と背側うず巻体をその
中心まわりを互いに逆方向に同じ角度だけ相対回転させ
る回転機構を設けたため、フルロード運転時には回転機
構によって腹側うず巻体と背側うず巻体を相対回転させ
ることによってこれらを互いに密着させることによりう
ず巻体の厚さを薄くし、アンロード運転時には腹側うず
巻体と背側うず巻体の間に隙間を形成することによりう
ず巻体の厚さを大きくすることができる。

従って、腹側うず巻体と背側うず巻体の相対回転角度
を任意に設定することによって密閉小室の容積を増減し
うるので、スクロール型流体機械の容量を0100％まで無
段階に制御することができる。

そして、アンロード運転時においても従来のように圧
縮途中のガスを抽出して吸入側に戻さないので、アンロ
ード運転時においても効率が低下せず、また、吐出ガス
の温度が上昇しないのでその信頼性を向上できる。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図は本発明の１実施例を示し、第１図
は縦断面図、第２図は第１図のII−II線に沿う断面図、
第３図（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）はそれぞれ100％、50％
及び０％ロード時におけるうず巻体の相対関係位置を示
す説明図である。 固定スクロール……３、旋回スクロール……４、密閉小
室……５、背側うず巻体……3A₂、腹側うず巻体……3
B₂、回転機構……15、16、17、18、19、20

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】固定スクロールと旋回スクロールを位相を
   ずらせて相互に噛み合わせることによって密閉小室を限
   界し、上記旋回スクロールを自転を阻止すると共に旋回
   半径を可変に支持しながら上記固定スクロールのうず巻
   体の中心まわりに公転円運動させて上記密閉小室内に取
   り込まれたガスをその圧力を変えて吐出するスクロール
   型流体機械において、上記固定スクロール及び旋回スク
   ロールの一方又は双方のうず巻体をその厚さ方向に沿っ
   て２分割することによって腹側うず巻体と背側うず巻体
   を構成すると共にこれら腹側うず巻体と背側うず巻体を
   その中心まわりに互いに逆方向に同じ角度だけ相対回転
   させる回転機構を設けたことを特徴とするスクロール型
   流体機械。