JP2562205B2 - 香気の良いパチュリ油、その製法およびこれを含有する香料組成物 - Google Patents

香気の良いパチュリ油、その製法およびこれを含有する香料組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、パチュリアルコールを特定量含む匂いが改
善されたパチュリ油、その製法及びこれを含有する香料
組成物に関する。
〔従来の技術〕
パチュリ油は、調合香料として石けん香料を初めとし
て広汎に用いられている。ところが、パチュリ油そのも
のは、ハーバル、スパイス様、バルサム様、木様の匂い
があり、調合香料の中へ大量に配合することができず、
その配合量は制限される。一方パチュリ油の特有香気成
分は約30重量%含有されているパチュリアルコールであ
ることが従来より知られている。このパチュリアルコー
ルは、しょうのう様、木様、土様、アンバー様の匂いを
有し大変興味深い匂いを有している。パチュリアルコー
ルの単離は、パチュリ油を蒸留しパチュリアルコール含
有量を高めた後結晶化させることにより得られる。
しかし、この結晶化は必ずしも効率が良くなく、得ら
れたパチュリアルコールが極めて高価となって、香料と
しての価値とその製造コストがバランスしない。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明者等は、前述の点を考慮し再結晶によらないで
蒸留のみによってパチュリアルコールの含有量を高める
ことを検討してきた。つまり、パチュリ油の低沸点部を
精密蒸留で留去し、ついでパチュリアルコールを含む主
留留分をとり出す方法である。これによりパチュリアル
コールの含有量は、85重量%程度まで向上させることが
できる。当初の目的からすれば、パチュリアルコール含
有量の高いもの程、他成分の匂いが本来のパチュリアル
コールの匂いを阻害することが少なく香料としての価値
が高いことが予想されたが、実際には高含有量、例えば
前述のパチュリアルコール含有量85重量%程度のもの
は、匂いにパワーがなく特徴の少いものとなり、香料素
材としては魅力に欠けるものであった。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者等は、この点を改良すべく鋭意研究を行なっ
た結果、むしろ低沸点部を多く含みパチュリアルコール
含有量の若干低いものが、優れた香気を有することを見
い出した。即ち、パチュリアルコールより低沸点部にあ
り、高沸点部のパチュリアルコールの匂いを強調または
変調させる成分がノルパチュレノールである事を見い出
した。つまり匂いの評価の良好であったパチュリアルコ
ール含有量80重量%程度のサンプルから分取液クロマト
グラフィーを用い、分画を行いノルパチュレノールのみ
を取り除いたサンプルを調製した。このサンプルは分取
液クロマトグラフィー分画前のサンプルもしくは、全画
分を合わせたサンプルと匂いの比較を行うと、前述の精
密蒸留によって低沸点部分を充分除去し、パチュリアル
コール含有量を85重量%にまで高めたサンプルと同様匂
いのボリューム感及び甘さが消失している事が確認され
た パチュリ油の重要香気成分は、ノルパチュレノールで
ありパチュリアルコールはほとんど匂いがないというこ
とは、既に報告されている(P.Teissire,P.Manpetit an
d B.Corbier,Recherches(RBD),19,8(1974))。ま
たこれに対しパチュリアルコールがやはり大切な成分で
あるとの報告もあった(B.D.Mookheriee,K.K.Liaht and
I.D.Hill“Essential Oils"Allured Publishing Corp.
(1981)P274)。
しかしながら本発明者らの検討の結果のようにパチュ
リアルコールの濃度を高めたとき、ノルパチュレノール
の存在が必須であり、これにより全体の匂いを豊かに力
強させる作用を持っていることは、従来全く知られてい
なかった。
本発明者等は、パチュリ油を蒸留しその時ノルパチュ
レノールの含有量を制御するといった簡便な操作によっ
てパチュリ油の持つトップノートの異臭を除去しより豊
かで力強い香り新しい精油の入手法を見出し本発明を完
成した。
本発明を実施するに当っては、トップノートの異臭を
効率良く除去するため精密蒸留機を用いることが好まし
い。その理論段数は、5段以上好ましくは10段以上であ
る。
本発明を実施するに当り、常圧又は減圧にて蒸留する
ことができる。蒸留されるパチュリ油に対して長時間の
熱履歴は得られる目的物の品質上あまり好ましくないの
で、減圧蒸留することが望ましい。また減圧度は一般的
には0.01〜50mmHgにて行い得るが、この範囲に限定する
必要はない。また蒸留塔の塔頂温度は、蒸留塔の段数及
び減圧度によって左右されるが、一般的に50〜300℃の
温度である。
本発明に於いてパチュリアルコール含有量が70重量%
より少ないパチュリ油を蒸留する際、蒸留により留出す
る成分は(a)低沸点炭化水素次いで(b)ノルパチュ
レノールを含むパチュリアルコール(以下、第1主留部
と言う)、最後に(c)ノルパチュレノールを殆んど含
まないパチュリアルコール(以下、第2主留部と言う)
の順序に留出する(以下、第1主留部と第2主留部と合
わせたものを主留部と言う)。
本発明の目的のひとつは、パチュリアルコール70.0〜
99.6重量%、且つノルパチュレノール0.40〜5.0重量%
を含有するパチュリ油を蒸留にて得ることであり、蒸留
の方法は種々の形態を取り得る。即ち、第1主留部を細
かく分画し、その分画されたものを選択して第2主留部
と混合しても良いし又は第1主留部を細かく分画せずに
蒸留塔の段数、減圧度及び蒸留温度を制御することによ
り主留部の形で上記組成となるように留分を採取しても
良い。
〔作用及び発明の効果〕
本発明によって得られるパチュリアルコール含有量を
高め且つノルパチュレノールを特定量含むパチュリ油
は、青くさい、土くさいトップノートを持たず、穏かな
甘い木様、バルサム、アンバー様の匂いを有している。
ノルパチュレノールを適度に含有しているためパチュリ
アルコールそのものより配合した匂いのバランスが良
い。
従って本発明の香料組成物は、石鹸、化粧品、香水等
高級な調合香料素材として大変有用である。
〔実施例〕
以下に本発明を実施例で更に詳細に説明するが、本発
明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1〜6及び比較例1、2 表−1に示す仕込み量のパチュリ量(ネシア)を、表
−1の理論段数を有する精油塔を用いて表−1の初留条
件下(還流比、温度、圧力)、蒸留して表−1に示す量
の初留部を除去した。次いで蒸留装置を単留塔に代え、
残留物を表−1に示す主留部留出条件下(温度、圧
力)、蒸留して本発明のパチュリ油(実施例1〜6)及
び比較の為のパチュリ油(比較例1、2)を得た。
得られた各パチュリ油中のパチュリアルコール及びノ
ルパチュレノール含有量をキャピラリーガスクロマトグ
ラフィーにて分析し測定した。又得られた各パチュリ油
の芳香性を評価した。これらの結果を表−1に示す。尚
実施例2のパチュリ油については、更にキャピラリーガ
スクロマトグラフィーチャートを第1図に示す。尚、キ
ャピラリーガスクロの条件はカラム=メチルシリコン
(φ=0.2nm×25n)、キャリアーガス=ヘリウム(75ml
/分)で昇温条件80〜200℃/20分であった。
比較例3 実施例2で得たパチュリ油2410mgを、順相の担体イナ
ートシルPrepSIL(ガスクロ工業社製)を充填した高速
液体クラマグラフィー(HPLC)を用い3%酢酸エチル/
ヘキサンを溶離液として、ノルパチュレノールを含まな
い部分2240mgとノルパチュレノールを含む部分170mgに
分けた。このノルパチュレノールを含む部分170mgを、
更に逆相の担体イナートシルPrepODS(ガスクロ工業社
製)を充填したHPLCを用いアセトニトリル/水=6/4を
溶離液として、ノルパチュレノール30mgとノルパチュレ
ノールのみ除かれた残りの部分140mgに分けた。この残
りの部分140mgを上述のノルパチュレノールを含まない
部分2240mgと合わせることにより、実施例2のパチュリ
油からノルパチュレノールのみ除かれたパチュリ油2380
mgを得た。
得られたパチュリ油中のパチュリアルコール及びノル
パチュレノール含有量をキャピラリーガスクロマトグラ
フィーにて分析し測定した。又得られたパチュリ油は、
ボリューム感と甘さが失われていた。又上記パチュリ油
のキャピラリーガスクロマトグラフィーを第2図に示
す。
上記実施例及び比較例の結果より、ノルパチュレノー
ルを0.4重量%以上パチュリ油に含有させることにより
一層芳香性が向上することが判る。
実施例7(フローラルブーケ調調合香料の例) 重量部 セージトンV1) 100 サンダルマイソールコア2) 20 γ−メチルイオノン 100 パールライド DEP3) 100 メチルジヒドロジャスモネート 200 ローズベース 100 ガルバナムオイル 10 ポレナールII4) 10 レモンオイル 50 ベルガモットオイル 100フルテート5) 10 800 1)セージトンV:花王商品名 スピロ(ボルナン3,1−シクロペンタ−2−オン) 2)サンダルマイソールコア:花王商品名 2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペ
ンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール 3)パールライドDEP:花王商品名 1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−4,6,6,7,8,8−ヘキサメチ
ルシクロペンタン−γ−2−ベンゾピランジエチルフタ
レート溶液 4)ポレナールII:花王商品名 2−シクロヘキシルプロパナール 5)フルテート:花王商品名 エチル〔5,2,1,02,6〕デカン2−カルボキシレート 上記調合香料に実施例1で得られた本発明名200部を
加えることによりフレッシュでしかもリッチ感のあるフ
ローラルブーケ調調合香料が得られた。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例2のパチュリ油のキャピラリーガスクロ
チャート、第2図は比較例2のパチュリ油のキャピラリ
ーガスクロチャートをそれぞれ示す。尚、第1図及び第
2図の横軸は保持時間(単位:分)、縦軸は吸収強度を
表わす。 A……ノルパチュレノールのピーク。 B……パチュリアルコールのピーク。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤田 学 千葉県柏市柏443―26 (72)発明者 戸井 直 千葉県佐倉市中志津6―21―2 (56)参考文献 特開 昭56−103125(JP,A) 特開 昭57−85312(JP,A) Seifen,Oele,Fett e,Wachse,103(6),P.159 −61,F.W.Hefendehl

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】理論段数5段以上の精密蒸留機を用いて低
    沸点炭化水素を除去して得られるパチュリアルコール70
    〜99.6重量%およびノルパチュレノール0.4〜5.0重量%
    を含有する香気の良いパチュリ油。
  2. 【請求項2】粗パチュリ油を理論段数5段以上の精密蒸
    留機を用いて低沸点炭化水素を除去して、パチュリアル
    コール含量70〜99.6重量%およびノルパチュレノール含
    量0.4〜5.0重量%にすることを特徴とする請求項1記載
    の香気の良いパチュリ油の製法。
  3. 【請求項3】請求項1記載のパチュリ油を含む香料組成
    物。
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