JP2552696B2 - アルミニウム材のろう付方法 - Google Patents

アルミニウム材のろう付方法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明はアルミニウム材のろう付方法、特にろう付
仕様によるアルミニウム製熱交換器の製造に好適に用い
られるアルミニウム材のろう付方法に関する。
なお、この明細書において、アルミニウムの語はその
合金を含む意味で用いる。
従来の技術 一般に、自動車用ラジエーター、カークーラー用エバ
ポレーターあるいはコンデンサー等のアルミニウム製熱
交換器をろう付する場合、真空ろう付の場合を除き、フ
ラックスを用いて熱交換器構成部材をろう付接合する方
法が多く用いられている。
従来かかるフラックスろう付を行う場合、まずフラッ
クスを水または溶剤中に懸濁させたのち、この懸濁液
を、接合すべきアルミニウム材の表面にスプレー法、シ
ャワー法、浸漬法等により塗布したのち、これを予熱乾
燥し、しかるのち非酸化性雰囲気中で所定温度に加熱
し、接合用ろう材を溶融してろう付を行っていた。
発明が解決しようとする課題 しかしながら、上記のようなろう付方法では、懸濁液
の作製工程及び懸濁液塗布後の乾燥工程が必要であるた
め、ろう付工程が工数の多い繁雑なものとなっており、
生産効率が良くないという欠点があった。さらに、塗布
後の乾燥工程中にアルミニウムと水とが反応するため、
アルミニウム材の表面に酸化膜が形成され、これがろう
付性を低下させるという問題もあった。さらには、フラ
ックス懸濁液を作製する場合、所定濃度を得るために多
量のフラックスを懸濁させなければならず、フラックス
の無駄を生じて不経済であった。さらにまたフラックス
懸濁液を塗布した場合、必要以上のフラックスがアルミ
ニウム材に付着する虞れもあり、この場合には得られる
ろう付品の表面に余分なフラックスが残留して灰色ない
し白色の不均一なシミが生じ、外観体裁を損うという問
題もあった。さらにまた、懸濁液の塗布は実際の生産に
あっては、接合部材の仮組状態で行われることもある
が、かかる場合懸濁液の接着作用により予熱乾燥後組立
物の固定用治具とアルミニウム材が接着状態となると
か、固定用治具の劣化を来たすというような欠点もあっ
た。さらにはまた、接合部材にパイプ材等を含んでいる
場合には、パイプ内部に懸濁液が進入しないようにマス
キングを施すことが必要であり、その操作が面倒であっ
た。
この発明はかかる従来技術の問題点を解決すべくなさ
れたもので、ろう付工程の簡略化を図り得るとともに、
フラックスを最大限に節約可能として、なおかつ良好な
ろう付性を発揮しえ、しかもろう付品表面の外観不良
や、固定用治具とアルミニウム材との接着や該治具の劣
化等を生じることのないアルミニウムのろう付方法を提
供することを目的とするものである。
課題を解決するための手段 上記目的において、この発明は、フラックス懸濁液の
塗布に代え、静電粉体塗装法によってフラックスをアル
ミニウム接合部材の表面に直接的に付着せしめてろう付
を行うことを特徴とするものである。
即ちこの発明は、アルミニウム接合部材の表面に、静
電粉体塗装法によって粉末状フラックスを1〜15g/m2
付着量で付着したのち、非酸化性雰囲気中で所定温度に
加熱し、接合用ろう材をろう付することを特徴とするア
ルミニウム材のろう付方法を要旨とするものである。
フラックスは、ろう付用に用いられるものであればそ
の種類、組成は問わないが、ろう付後腐食性残渣を残さ
ない点でフッ化物系フラックスを用いるのが好ましい。
フッ化物系フラックスの一例としては、フッ化カリウム
(KF)とフッ化アルミニウム(AlF3)とを共晶組成ない
しはそれに近い組成範囲に含んで実質的に錯体化された
錯体混合物や、KAlF4とKFを重量比で80〜99.8:20〜0.2
の割合で混合した混合物や、あるいは製造簡易性等の点
で特に好適なものとしてKF水溶液にγ−AlF3粉末及び/
またはβ−AlF3粉末を溶解せしめて発熱反応を生じさせ
て水分を蒸発除去したのちの残留物からなるもの等を挙
げうる。
静電粉体塗装法は、粉末状フラックスをアルミニウム
接合部材に吹付けるとともに、吹付けられたフラックス
粒子を静電界を利用して接合部材表面に付着させる方法
である。具体的には、アルミニウム接合部材を接地して
陽極とし、スプレーガン等の吹付け装置を陰極として、
これに例えば90kv以上の負の直流高電圧を印加して両極
間に静電界を作る。そして吹付け装置からフラックスを
噴出させると該フラッス粒子は負に帯電し、静電界の軌
道に乗って対極のアルミニウム接合部材に吸着し、もっ
て接合部材にフラックスを付着させるものである。フラ
ックスは予め粉末状にして粉体供給槽に充填しておくも
のとし、一般的には圧縮空気を用いて吹付け装置から噴
出させる。ここで、フラックスの付着量はアルミニウム
接合部材の表面積1m2当り1〜15gとする必要があり、従
ってこれに見合うだけの量のフラックスを吹付け装置か
ら噴出させる。アルミニウム接合部材へのフラックス付
着量を上記範囲に設定するのは、1g/m2未満ではフラッ
クスが不足し、良好なろう付ができなくなるからであ
り、逆に15g/m2を超えるとフラックスが多くなってろう
付品の表面性常が悪くなり、外観体裁を損うからであ
る。特に好ましいフラックス付着量はアルミニウム接合
部材の表面積1m2当り5〜10gである。
上記によりフラックスを付着したアルミニウム接合部
材は、これを不活性ガス雰囲気等の非酸化性雰囲気中
で、接合部材より融点の低いアルミニウムろう材を用い
て、上記アルミニウム材の融点よりも低くかつフラック
スの融点よりも高い580〜620℃程度の温度に加熱するこ
とにより、ろう材を溶融してろう付接合が達成される。
なおろう材にはSi含有量約4.5〜13.5wt%程度のAl−Si
系合金が用いられるのが普通であり、該ろう材は作業性
の点から、通常、接合されるべき部材の少なくとも一方
のアルミニウム材にクラッドして使用されるのが望まし
い。
発明の効果 この発明は上述の次第で、アルミニウム接合部材の表
面に、静電粉体塗装法によって粉末状フラックスを1〜
15g/m2の付着量で付着したのち、非酸化性雰囲気中で所
定温度に加熱し、接合用ろう材を溶融してろう付するこ
とを特徴とするものである。従ってフラックスを接合部
材に付着させるために従来法のようなフラックス懸濁液
は不要となるから、懸濁工程及び懸濁液塗布後の乾燥工
程も不要となり、ろう付工程の簡略化を図り得るばかり
か、懸濁液塗布後の予熱乾燥工程中におけるようなアル
ミニウムと水との反応による酸化膜の生成もなく、ろう
付性の向上を図ることができる。
かつまた、懸濁液を塗布する従来法のように、必要以
上のフラックスが付着することもなく、フラックス付着
量をろう付に必要かつ充分な量に容易に制御できるか
ら、フラックスの無駄な使用を回避しえ経済的であるの
はもとより、ろう付後のろう付品の表面に余分なフラッ
クスが残留する危険も回避することができ、外観体裁の
悪化とか、ろう付用の固定治具とアルミニウム材との接
着とか、該治具の劣化などを防止することができる。ま
た不要部分のフラックス除去が容易であり、かつパイプ
材のマスキングも不要となしうる。
また、静電粉体塗装法によって粉末状フラックスをア
ルミニウム材の表面に電気的に付着させるから、単にフ
ラックス粉末を吹き付けて付着させる方法に比べて、フ
ラックスの脱落を抑制し得て確実にかつ効率的にフラッ
クスを付着させることができる。
実施例 次にこの発明の実施例を示す。
純度99.8%のKF5.5kgを6リットルの水に溶解させた
水溶液に、純度90%以上の工業用γAlF3(平均粒径約10
μm)6.5kgを徐々に投入攪拌して発熱反応を生じさ
せ、水分を除去したのち、残留物を大気中で200℃×900
分間乾燥し、さらに粉砕して平均粒径15μmのフッ化物
系フラックスを製作した。
一方、第1図に示すように、肉厚0.8mmのA1100合金押
出材よりなるチューブ(1)と、A3003合金を心材と
し、Al−10%Si合金を皮材とした片面クラッド率10%、
厚さ0.16mmの両面ブレージングシートよりなるフィン
(2)とをコルゲート型熱交換器(3)に組み立てると
ともに、この組立物を固定用治具(4)を用いて固定
し、これを複数個用意した。
次に、静電粉体塗装機を用いて、前記熱交換器組立物
(3)の厚さ方向の上面に前記フラックスを吹付け、電
気的吸引力によってフラックス粒子を熱交換器組立物
(3)の表面に付着させた。なお、静電粉体塗装は、熱
交換器組立物(3)を接地しこれを陽極とする一方、ス
プレーガンを陰極として両極間に高電圧発生機により発
生させた直流電圧を印加し、この状態でスプレーガン先
端から圧縮空気とともにフラックスを噴射した。またフ
ラックスの付着量は、各熱交換器組立物の表面積に対し
0.5g/m2、1g/m2、5g/m2、10g/m2、15g/m2、20g/m2とし
た。
こうしてフラックウを熱交換器組立物(3)に付着し
たのちのフラックス付着状態を目視観察した。その結果
を下記第1表に示す。
次いで、上記によりフラックスを含着した各熱交換器
組立物を、酸素濃度100ppm以下、温度600〜620℃のN2ガ
ス雰囲気で3分間加熱してろう付を行った。
以上により得られたろう付品のろう付状態、表面状態
を目視観察するとともに、熱交換器固定用治具と熱交換
器との接着の有無、該治具の表面変色の有無を調査し
た。それらの結果を併せて下記第1表に示す。
第1表の結果からわかるように、本発明によれば熱交
換器組立物表面にフラックス粒子を均一ないしはほぼ均
一に付着させることができるとともに、良好なろう付を
行うことができ、さらに表面状態も良好なろう付品を得
ることができ、かつ固定用治具との接着や該治具の変色
をも防止しうることを確認しえた。
これに対し、フラックス付着量が少ない比較品No5は
十分なろう付状態が得られず、またフラックス付着量が
多い比較品No6はろう付後の表面にシミを生じるととも
に、治具の表面変色が認められるものであった。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例において用いた熱交換器組立物の斜視図
である。 (1)……チューブ、(2)……フィン、(3)……熱
交換器組立物、(4)……固定用治具。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミニウム接合部材の表面に、静電粉体
    塗装法によって粉末状フラックスを1〜15g/m2の付着量
    で付着したのち、非酸化性雰囲気中で所定温度に加熱
    し、接合用ろう材を溶融して接合部材をろう付すること
    を特徴とするアルミニウム材のろう付方法。
JP63016696A 1987-12-15 1988-01-27 アルミニウム材のろう付方法 Expired - Lifetime JP2552696B2 (ja)

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