JP2549793B2 - 新規なポリイミドの製造法 - Google Patents

新規なポリイミドの製造法

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JP2549793B2
JP2549793B2 JP4051559A JP5155992A JP2549793B2 JP 2549793 B2 JP2549793 B2 JP 2549793B2 JP 4051559 A JP4051559 A JP 4051559A JP 5155992 A JP5155992 A JP 5155992A JP 2549793 B2 JP2549793 B2 JP 2549793B2
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  • Macromolecular Compounds Obtained By Forming Nitrogen-Containing Linkages In General (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規なポリイミドの製造
法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、優れた耐熱性を有する樹脂として
ポリイミドは広く知られている。ポリイミドは一般にジ
アミンとテトラカルボン酸二無水物を溶媒中で反応させ
て、ポリアミド酸を生成し、これを脱水閉環するかまた
はジイソシアネートとテトラカルボン酸二無水物を反応
させて直接ポリイミドを生成させる等の方法で得られて
いる。
【0003】こうして得られるポリアミド酸およびポリ
アミドの特性は用いるジアミン、ジイソシアネート、テ
トラカルボン酸二無水物等の選択と、それらの組み合わ
せで定まり、従来耐熱性に優れるもの、可とう性に富む
もの、溶解性に優れるもの等種々知られている。例えば
4,4′−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット
酸二無水物から得られる式〔III〕で表わされる構造単
位をもつポリイミドは
【化3】 非常に優れた可とう性を有することが知られている。し
かしながら、この構造単位を生成する中間体のポリアミ
ド酸は、溶媒に対する溶解性が低く、高濃度の溶液とす
ることが困難である。またポリイミドとした場合、エー
テル結合が水分等の影響で解離しやすく、耐熱性に劣る
欠点を有している。
【0004】上記のポリアミド酸の溶解性を良好にする
ためには、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラ
カルボン酸二無水物を用いて得られる式〔IV〕
【化4】 で表わされる構造単位等の芳香環の間に自由度の高い結
合を導入することが効果的であるが、この場合、前述の
様に解離しやすい結合の増加により耐熱性の低下をまね
く。また耐熱性を向上させるためには、p−フェニレン
ジアミンとピロメリット酸二無水物を用いて得られる式
〔V〕
【化5】 で表わされる構造単位とすることが考えられるが、この
構造単位を主成分として有するポリイミドは極めて剛直
なため、可とう性をもつフィルムとすることが困難であ
る。これら種々特性のバランスを取るため、3,3′,
4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用い
た式〔VI〕
【化6】 で表わされる構造単位が提案されており、ポリイミドと
した場合の可とう性、耐熱性は良好な結果が得られてい
る。しかし、用いる酸無水物すなわち3,3′,4,
4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の溶媒に対
する溶解性が非常に低いため、ポリアミド酸を高濃度で
得ることが難しい、ポリアミド酸の生成反応に長時間を
有する等の製造上の欠点を有する他、ポリアミド酸から
脱水閉環してポリアミドとする場合にも、溶媒の揮散、
脱水等が均一に行なわれないと、ポリイミドが白濁する
等の欠点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、これら
従来得られなかったレベルの耐熱性、可とう性、ポリア
ミド酸の溶解性等を示し、工業的に容易に製造され得る
ポリイミドについて鋭意検討を重ねた結果本発明に至っ
たものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、パラ−ターフ
ェニル−3,4,3″,4″−テトラカルボン酸、その
無水物またはそのエステルとジアミンとを溶媒中で反応
させて一般式〔I〕
【化7】 (式中Rは水素原子又は一価の炭化水素基、R′は二価
の炭化水素基を示す)で表わされる構造単位を含む新規
なポリアミド酸またはポリアミド酸エステルを得、つい
で該ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルを100
〜350℃で熱処理する一般式〔II〕
【化8】 (式中R′は二価の炭化水素基を示す)で表わされる構
造単位を含む新規なポリイミドの製造法に関するもので
ある。
【0007】本発明の新規なポリイミドは、次の一般式
〔VII〕で示される
【化9】 新規なパラ−ターフェニル−3,4,3″,4″−テト
ラカルボン酸、その無水物またはそのエステルとジアミ
ンとを溶媒中で反応させて得られるポリアミド酸または
ポリアミド酸エステルを用いて得られる。これらの酸お
よび、その無水物は新規な化合物であって次式〔VII
I〕で示されるダブルクロスカップリング反応によって
製造することができる。
【0008】例えばパラ−ターフェニル−3,4,
3″,4″−テトラカルボン酸およびその二無水物の場
合、4−ハロゲノ−オルト−キシレンを常法に従って金
属マグネシウムと反応させ、グリニヤール試薬としたの
ちこれにパラジハロゲノベンゼンとニッケル金属錯体触
媒を加えてダブルクロスカップリング反応によってテト
ラメチル−パラ−ターフェニルとする。これを過マンガ
ン酸塩、硝酸、液相空気酸化等によってパラ−ターフェ
ニルテトラカルボン酸とし、この後、加熱あるいは無水
酢酸によってパラ−ターフェニルテトラカルボン酸二無
水物とすることができる。
【0009】本発明においては、パラ−ターフェニルテ
トラカルボン酸およびその無水物は必要に応じ二種以上
を併用することができる。また、本発明の新規なポリア
ミド酸もしくはポリアミド酸エステルおよびポリイミド
は前述した式〔III〕、〔IV〕、〔V〕、〔VI〕の
様な他の構造単位を必要に応じて含むことも可能であ
り、そのためには、例えばピロメリット酸二無水物、
3,3′,4,4′−ジフェニルテトラカルボン酸二無
水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカル
ボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無
水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二
無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸
二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸
二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン
酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボ
ン酸二無水物、4,4′−スルホニルジフタル酸二無水
物等の公知の酸無水物やその開環酸が併用される。
【0010】また、本発明に用いられるジアミンとして
は、例えば4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、
4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジア
ミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニ
ルサルファイド、ベンジジン、メタフェニレンジアミ
ン、パラフェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジア
ミン、2,6−ナフタレンジアミンなどの芳香族ジアミ
ン化合物、次の一般式〔IX〕で表わされるジアミノシ
ロキサン化合物、
【化11】 (Rは二価の炭化水素基、R′は一価の炭化水素基であ
り、RおよびR′は同じでも異なってもよく、mは1以
上の整数である)、例えば
【化12】 等の化合物も用いることができる。
【0011】また、生成するポリイミドに、より優れた
耐熱性を付与するために、ジアミン化合物として一般式
〔X〕
【化13】 (式中、Arは芳香族基、YはSO2又はCOを示し、
1個のアミノ基とY−NH2とは互いにオルト位に位置
する)で表わされるジアミノアミド化合物、例えば4,
4′−ジアミノジフェニルエーテル−3−スルホンアミ
ド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−4−スル
ホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−
3′−スルホンアミド、3,3′−ジアミノジフェニル
エーテル−4−スルホンアミド、4,4′−ジアミノジ
フェニルメタン−3−スルホンアミド、3,4′−ジア
ミノジフェニルメタン−4−スルホンアミド、3,4′
−ジアミノジフェニルメタン−3′−スルホンアミド、
3,3′−ジアミノジフェニルメタン−4−スルホンア
ミド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン−3−ス
ルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン
−4−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェニル
スルホン−3′−スルホンアミド、3,3′−ジアミノ
ジフェニルスルホン−4−スルホンアミド、4,4′−
ジアミノジフェニルサルファイド−3−スルホンアミ
ド、3,4′−ジアミノジフェニルサルファイド−4−
スルホンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルサルフ
ァイド−4−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフ
ェニルサルファイド−3′−スルホンアミド、1,4−
ジアミノベンゼン−2−スルホンアミド、4,4′−ジ
アミノジフェニルエーテル−3−カルボンアミド、3,
4′−ジアミノジフェニルエーテル−4−カルボンアミ
ド、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル−3′−カ
ルボンアミド、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル
−4−カルボンアミド、4,4′−ジアミノジフェニル
メタン−3−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフ
ェニルメタン−4−カルボンアミド、3,4′−ジアミ
ノジフェニルメタン−3′−カルボンアミド、3,3′
−ジアミノジフェニルメタン−4−カルボンアミド、
4,4′−ジアミノジフェニルスルホン−3−カルボン
アミド、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン−4−
カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルスルホ
ン−3′−カルボンアミド、3,3′−ジアミノジフェ
ニルスルホン−4−カルボンアミド、4,4′−ジアミ
ノジフェニルサルファイド−3−カルボンアミド、3,
4′−ジアミノジフェニルサルファイド−4−カルボン
アミド、3,3′−ジアミノジフェニルサルファイド−
4−カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルサ
ルファイド−3′−スルホンアミド、1,4−ジアミノ
ベンゼン−2−カルボンアミドなどの化合物や、一般式
〔XI〕
【化14】 (式中、Arは芳香族基、YはSO2又はCOを示し1
個のアミノ基と1個のY−NH2基が対として互いにオ
ルト位に位置する)で表わされるジアミノジアミド化合
物、例えば4,4′−ジアミノジフェニルエーテル−
3,3′−スルホンアミド、3,4′−ジアミノジフェ
ニルエーテル−4,5′−カルボンアミド、3,3′−
ジアミノジフェニルエーテル4,4′−スルホンアミ
ド、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−
カルボンアミド、3,4′−ジアミノジフェニルメタン
−4,5′−スルホンアミド等の化合物を用いることも
できる。
【0012】本発明によって得られるポリイミドはこれ
らに由来する構造単位を有することができる。例えばポ
リイミドに一般式〔XII〕または〔XIII〕で表わされ
るイソインドロキナゾリン環を有する構造単位を導入す
ることも出来る。
【化15】
【化16】 (式中、Ar、Ar2は芳香族基、YはSO2又はCOを
示す。)
【0013】本発明で用いる新規なポリアミド酸もしく
はポリアミド酸エステルおよびポリイミドを製造するに
当っては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N
−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミ
ド、テトラメチレンスルホン、p−クロルフェノール、
p−ブロルフェノール、2−クロル−4−ヒドロキシト
ルエン等の不活性溶媒が用いられる。
【0014】ポリアミド酸を製造する場合、好ましくは
先ずジアミンを上記不活性溶媒中に溶解した後、パラ−
ターフェニル−3,4,3″,4″−テトラカルボン酸
および/またはその無水物等を加え、好ましくは約80
℃以下特に室温付近ないしそれ以下の温度を保ちながら
撹拌する。これによって反応はすみやかに進行し、かつ
反応系の粘度は次第に上昇し、ポリアミド酸が生成す
る。
【0015】ポリアミド酸エステルは、パラ−ターフェ
ニル−3,4,3″,4″−テトラカルボン酸をチオニ
ルクロライド等を用いて得られる酸クロライドを経由し
てエステル化したものまたはパラ−ターフェニル−3,
4,3″,4″−テトラカルボン酸無水物等をアルコー
ルで開環してジエステル化したものを溶媒中でジアミン
と反応させる方法等によって得られる。
【0016】このポリアミド酸またはポリアミド酸エス
テルをポリイミドに転化せしめるには、100〜350
℃の温度で好ましくは30分〜5時間熱処理する。こう
することによりポリアミド酸が脱水、閉環し、ポリイミ
ドが得られる。この脱水、閉環反応には脱水剤として無
水酢酸、リン酸等を用いてもよい。
【0017】
【実施例】本発明を実施例、参考例及び比較例を用いて
説明する。 参考例 パラ(p)−ターフェニル−3,4,3″,
4″−テトラカルボン酸およびその無水物の合成 (1)グリニヤール試薬の製造 アリーン冷却器、滴下ロート、温度計及び撹拌装置を取
付けた2lの四つ口フラスコをアルゴンガス雰囲気下で
十分乾燥させたのち、金属ナトリウムで脱水した100
mlのテトラヒドロフラン、9.72gの金属マグネシ
ウム及び10.0gのブロモ−オルト−キシレン(アル
ドリッチ社製、4−ブロモ−オルト−キシレン75%及
び3−ブロモ−オルト−キシレン25%の混合物)を加
えた。反応液がにごり始めて、グリニヤール試薬が生成
し始めたとき、滴下ロートから64.0gの上記のブロ
モ−オルト−キシレンと100mlのテトラヒドロフラ
ンの混合液を1時間かけて滴下した。この間、発熱反応
であるので氷浴で冷却しながら反応温度を40℃に保っ
た。滴下終了後も金属マグネシウムが残っているので、
オイルバスで加熱し、温度40℃のまま5時間撹拌し、
金属マグネシウムを完全に反応させグリニヤール試薬と
した。
【0018】(2)3,4,3″,4″−テトラメチル
−p−ターフェニルの製造 次に、フラスコにジクロロ〔1,2−ビス(ジフェニル
ホスフイノ)エタン〕ニッケル触媒を0.37g(上記
のブロモ−オルトキシレンの総量に対して0.5重量
%)加え、滴下ロートから29.4g(0.200モ
ル)のパラ−ジクロロベンゼンを85mlのテトラヒド
ロフランに溶解させた溶液を1時間かけて滴下した。こ
の間反応温度を35℃に保った。滴下終了後、さらに1
時間35℃に保ったまま撹拌を続け、ダブルクロスカッ
プリング反応を完結させた。反応終了後にトルエン30
0mlを加え、撹拌しながらイオン交換水150mlを
1時間かけて徐々に加えた。下層の水層を分液ロートで
除去したのち、上層のトルエン層を加熱し、熱時濾過し
濾液を放冷すると無色の箔片状結晶が析出した。濾過に
より結晶を取り出し、乾燥したところ26.8gの結晶
が得られた。結晶の融点は168〜169℃であり、こ
の結晶について図1にプロトン核磁気共鳴(1H−NM
R)スペクトル及び図2に炭素核磁気共鳴(13C−NM
R)スペクトルの分析結果を示す。図1において、2.
29ppmと2.32ppmのメチル基プロトンに基づく吸収
と、7.17〜7.65ppmのベンゼン環プロトンに基
づく吸収の積分強度比は、前者:後者が180:150
(=12:10)であり、理論値とよく一致している。
図2において、10本のピークしか出現しないことから
得られた化合物(理論炭素数22)は対称構造であるこ
とがわかる。しかも、式〔XIV〕
【化17】 で示される化合物の炭素番号〜のベンゼン環炭素の
ザビツキー(Savitsky)則によるベンゼン環炭素のケミ
カルシフトの予想値と良く一致して図2中に吸収1〜8
が出現している。以上より、上記結晶が3,4,3″,
4″−テトラメチル−p−ターフェニルであることを確
認した。
【0019】(3)p−ターフェニル−3,4,3″,
4″−テトラカルボン酸の製造 3,4,3″,4″−テトラメチル−p−ターフェニル
14.3g(50ミリモル)、ピリジン200g及びイ
オン交換水200gをアリーン冷却管、温度計及び撹拌
装置を取付けた1l四つ口フラスコに仕込み、フラスコ
内を80℃に加熱し、過マンガン酸カリウム110.7
g(700ミリモル)を3時間かかって徐々に加え、そ
の後さらに5時間、80℃に保持して撹拌を続けた。反
応で生成した酸化マンガンの沈殿を濾過で除去し、濾液
中のピリジンをロータリーエバポレーターで留去した
後、36%塩酸で酸析したところ白色の微細結晶が析出
した。この時の溶液のpHは1であった。濾過、水洗を
2回繰り返えしたのち、減圧乾燥し、白色粉末状結晶1
1.6gを得た。この結晶の融点は311〜313℃で
あった。この結晶の赤外線吸収スペクトルを図3に示
す。この結晶0.4gに対してメタノール50ml及び
97%硫酸2mlを加え、8時間リフラックスし、上記
結晶のメチルエステル化を行なった。得られたメチルエ
ステル化物の1H−NMRスペクトルの結果を図4に示
す。図4において、3.91ppmと3.94ppmのメチル
基プロトンに基づく吸収と7.71〜7.95ppmのベ
ンゼン環プロトンに基づく吸収の積分強度比は、前者:
後者が180:151(=12:10.07)であり、
理論値(式〔VII〕の化合物のメチルエステル化物)
とよく一致した。また、上記結晶を元素分析した結果は
次のとおりであった。 実測値 炭素:59.67%、水素:4.15% 理論値 炭素:65.03%、水素:3.47% (ただし、理論値は、p−ターフェニル−3,4,
3″,4″−テトラカルボン酸として求めた値であ
る。)元素分析の結果、実測値と理論値が異なるので、
上記結晶を、5℃/分の昇温速度で、示差熱天秤分析を
行なったところ、160℃、230℃及び310℃に吸
熱ピークがあった。160℃及び230℃で合計17重
量%の重量減少が認められた。310℃における吸熱ピ
ークは融点によるものであるが、160℃及び230℃
の吸熱ピークは脱水によるものである。p−ターフェニ
ル−3,4,3″,4″−テトラカルボン酸が示差熱天
秤分析中の加熱によって脱水閉環を起こして対応する酸
無水物になっただけであれば重量減少は9%である。こ
のことから得られた結晶には結晶水を有すると考えら
れ、上記元素分析の実測値は、p−ターフェニル−3,
4,3″,4″−テトラカルボン酸に2分子の結晶水が
水和した時の元素分析の理論値炭素59.73%、水素
4.10%にきわめてよく一致する。以上より、上記結
晶が、p−ターフェニル−3,4,3″,4″−テトラ
カルボン酸であって結晶水を2分子有するものであるこ
とを確認した。
【0020】(4)p−ターフェニル−3,4,3″,
4″−テトラカルボン酸−3,4,3″,4″−二無水
物の製造 得られたp−ターフェニル−3,4,3″,4″−テト
ラカルボン酸10.0gと無水酢酸400gとを1lの
なす形フラスコに入れ、30分間加熱還流して溶解した
のち熱濾過し、放冷したところ、淡かっ色の粉末微細結
晶が析出した。濾過し減圧乾燥して6.9gの粉末状結
晶を得た。この粉末状結晶の赤外線吸収スペクトル及び
1H−NMRスペクトルをそれぞれ図5及び図6に示
す。この結晶の融点は311〜313℃であり、元素分
析の結果、炭素71.28%、水素2.76%であり、
理論値の炭素71.36%、水素2.72%とよく一致
し、p−ターフェニル−3,4,3″,4″−テトラカ
ルボン酸−3,4,3″,4″−二無水物であることを
確認した。
【0021】実施例1 温度計、撹拌機および塩化カルシウム管を備えた200
mlの三つ口フラスコに4,4′−ジアミノジフェニル
エーテル5.41g(27.0ミリモル)および反応溶
媒としてN−メチル−2−ピロリドン87.3gを入れ
室温で撹拌溶解した。これに参考例で合成したp−ター
フェニル−3,4,3″,4″−テトラカルボン酸−
3,4,3″,4″−二無水物10.0g(27.0ミ
リモル)を加え、室温で8時間撹拌を続けた。次にこの
反応液(ポリアミド酸の溶液)の一部を採取し、水に投
じて沈殿させて、ジメチルスルホキシドを用いて濃度
0.1g/dl、25℃で還元比粘度を測定したところ
2.5dl/gであった。ついでこの反応液を粘度調整
した後、ガラス板上に塗布して乾燥後、350℃で1時
間熱処理してガラス板から剥離したところ可とう性の良
好なポリイミドのフィルムが得られた。つぎにこのフィ
ルムを以下に示す試験方法により評価した。結果を表1
に示す。
【0022】試験方法 (1)熱分解開始温度 上記フィルム10mgを用い示差熱天秤で空気中、昇温
10℃/minで測定した。 (2)重量減少率 上記フィルム80mgを用い(1)と同じ装置で空気中
460℃/30分放置後の重量減少率を測定した。 (3)弾性率 上記フィルム10mm×800mmの短ざく状の試験片
とし、引張試験機(オートグラフ)を用いて伸びの弾性
率を測定した。
【0023】実施例2 パラフェニレンジアミン2.92g(27ミリモル)、
p−ターフェニル−3,4,3″,4″−テトラカルボ
ン酸−3,4,3″,4″−二無水物10.0g(2
7.0ミリモル)N−メチル−2−ピロリドン87.3
gを用いて実施例1と同様にして、ポリアミド酸溶液お
よびポリイミドのフィルムを作成し、実施例1と同様の
評価を行なった結果を表1に示す。
【0024】比較例1 4,4′−ジアミノジフェニルエーテル5.41g(2
7.0ミリモル)、ピロメリット酸二無水物5.89g
(27.0ミリモル)、N−メチル−2−ピロリドン6
4.0gを用いて実施例1と同様にしてポリアミド酸溶
液およびポリイミドのフィルムを作成し、実施例1と同
様の評価を行なった結果を表1に示す。
【0025】比較例2 4,4′−ジアミノジフェニルエーテル5.41g(2
7.0ミリモル)、3,3′,4,4′−ベンゾフェノ
ンテトラカルボン酸二無水物8.70g(27ミリモ
ル)、N−メチル−2−ピロリドン80.0gを用い実
施例1と同様にしてポリアミド酸溶液およびポリイミド
のフィルムを作成し、実施例1と同様の評価を行なった
結果を表1に示す。
【0026】比較例3 パラフェニレンジアミン2.92g(27.0ミリモ
ル)、ピロメリット酸二無水物5.89g(27.0ミ
リモル)、N−メチル−2−ピロリドン50.0gを用
いて実施例1と同様にしてポリアミド酸の溶液を作成し
た。次に実施例1と同様にしてポリアミド酸溶液をガラ
ス板に塗布し、乾燥後350℃/1時間の熱処理を行な
ったところ、塗膜はりん片状にぼろぼろに割れ、フィル
ムを形成出来なかった。
【0027】比較例4 パラフェニレンジアミン5.84g(54.0ミリモ
ル)、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン
酸二無水物15.89g(54.0ミリモル)、N−メ
チル−2−ピロリドン50.7gを用い実施例1と同様
にして不揮発分濃度30重量%のポリアミド酸溶液を作
成した。この溶液は粘度(25℃)が10,000ポア
ズ以上あり、室温での撹拌は不可能であった。次に70
℃付近の温度で粘度調整を行なったところ200ポアズ
近辺で粘度が一定となり、さらに加熱をつづけたとこ
ろ、溶液が濁り始め、粘度は逆に増加し、低粘度の溶液
とすることが出来なかった。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】実施例、比較例に示される様に、本発明
によって得られる新規なポリイミドは、従来公知のポリ
イミドに比して、耐熱性、可とう性、溶解性等全ての特
性において優れており、あらゆる工業的用途において有
用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例で製造した中間体である3,4,3″,
4″−テトラメチル−p−ターフェニルの1H−NMR
スペクトルである。
【図2】3,4,3″,4″,−テトラメチル−p−タ
ーフェニルの13C−NMRスペクトルである。
【図3】参考例で製造したp−ターフェニル−3,4,
3″,4″−テトラカルボン酸の赤外線吸収スペクトル
である。
【図4】参考例で製造したp−ターフェニル−3,4,
3″,4″−テトラカルボン酸テトラメチルエステルの
1H−NMRスペクトルである。
【図5】参考例で製造したp−ターフェニル−3,4,
3″,4″−テトラカルボン酸−3,4,3″,4″−
二無水物の赤外線吸収スペクトルである。
【図6】参考例で製造したp−ターフェニル−3,4,
3″,4″−テトラカルボン酸−3,4,3″,4″−
二無水物1H−NMRスペクトルである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 斉藤 高之 茨城県日立市東町四丁目13番1号 日立 化成工業株式会社 茨城研究所内 (72)発明者 佐藤 任廷 茨城県日立市東町四丁目13番1号 日立 化成工業株式会社 山崎工場内 (72)発明者 児嶋 充雅 茨城県日立市東町四丁目13番1号 日立 化成工業株式会社 山崎工場内 (72)発明者 牧野 大輔 茨城県日立市東町四丁目13番1号 日立 化成工業株式会社 山崎工場内 (56)参考文献 特開 昭61−60725(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パラ−ターフェニル−3,4,3″,
    4″−テトラカルボン酸、その無水物またはそのエステ
    ルとジアミンとを溶媒中で反応させて一般式〔I〕 【化1】 (式中Rは水素原子または一価の炭化水素基、R′は二
    価の炭化水素基を示す)で表わされる構造単位を含む新
    規なポリアミド酸またはポリアミド酸エステルを得、つ
    いで該ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルを10
    0〜350℃で熱処理することを特徴とする一般式〔I
    I〕 【化2】 (式中R′は二価の炭化水素基を示す)で表わされる構
    造単位を含む新規なポリイミドの製造法。
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