JP2548076Y2 - 幅圧下プレス用金型 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、スラブの粗圧延工程の
前段においてスラブの幅サイズ成形を行うための水平対
向型幅圧下プレス用金型に係り、前記幅サイズの変更と
ともに、圧延材の板端部に発生する圧延方向に平行なシ
ーム状疵を防止し得る金型形状に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、連続鋳造法によるスラブの製造に
際しては、鋳造幅の変更は容易でないため、粗圧延工程
の前段において、スラブの幅を製品幅に合うように調整
することが行われている。この幅圧下には、図１０に示
されるような、スラブＳ入側の傾斜面部２Ａと、これか
ら連続する平行面部２Ｂと有する一対のプレス用金型２
をそれぞれ対向して配設するとともに、ジャッキ３、３
により押圧自在とし、スラブＳが移動している状態で、
スラブの搬送速度と等速度で移動しながらスラブＳを幅
方向に圧下し、さらに圧下が終わると最初の位置に復帰
して再び圧下と移動を繰り返すものであり、一般的に走
間幅圧下と呼ばれている。この走間幅圧下に関する技術
としてたとえば、特開平２−１６５８０３号公報等にお
いて、金型の圧下と移動のメカニズムについて開示され
ており、また実開昭６２−５６２０１号公報において
は、スラブ搬送方向と直交する金型断面に搬送方向に沿
って窪みを設けて、センタリングおよび座屈を防止を図
るもの等が開示されている。

【０００３】一方、スラブの熱間圧延においては、粗圧
延初期に圧延によってスラブの側縁端面に発生した皺
が、圧延の進行に伴って圧延材の表面に回り込んで、縁
端部にパスライン方向にシーム状の疵となって残存する
表面欠陥が問題となっている。

【０００４】このストリップ縁端部に発生したシーム状
疵は、熱間圧延の最終にサイドトリマーにより切断処理
されていたため、大きな歩留りの損失となっていた。従
来よりこのシーム状疵を無くすために、種々の対策が講
じられている。たとえば特開昭５３−２８５４２号公報
においては、図１１に示される形状の竪ロール１０や、
図１２に示される形状の竪ロール１１を用いて、スラブ
の綾の部分に圧下を施したり、側縁端面に凹溝を設けて
前記シーム状疵の防止を図っている。

【０００５】また、特開昭５８−１３８０５２号公報に
おいては、図１３に示されるような鋳型１２を用いて、
スラブの側縁端面に連続的に凹状の窪みを設け、前記シ
ーム状疵の防止を図っている。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、前記竪
ロール１０、１１を用いてスラブに凹条の窪みを形成す
る場合、前記公報においては凹みの深さは５〜１５mmを
適切とするが、圧下量の少ないエッジャーロールにより
前記凹み量を形成するのは、圧下能力等装置上の問題が
生じる場合があるとともに、圧延効率が低下し生産性が
悪化する場合がある。

【０００７】一方、前記幅圧下プレス用の金型について
は、高い幅圧下能力を有しながらも、主にスラブの幅圧
下、座屈防止、搬送不良等に着目し、その形状が決めら
れており、前記シーム状疵の発生防止とは切り離されて
いた。

【０００８】そこで、本考案の主たる課題は、前記幅圧
下プレス時に、前記シーム状疵を防止し、圧延効率の向
上を図ることを目的とするものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】前記課題は、スラブの両
側部にそれぞれ配設され、かつスラブ側面に対する当接
面として搬送パスラインと平行な平行面部と、この平行
面部からスラブの入側に向けてテーパー状に広がる傾斜
面部とを有し、前記搬送パスラインと直交する方向に進
退しスラブの幅圧下を行う幅圧下プレス用金型におい
て、前記平行面部にスラブ全長に渡ってスラブ側縁端面
に凹条溝を形成するための凸条突起を形成するととも
に、前記傾斜面部にスラブ全長に渡ってスラブ側縁綾部
を圧下するための凹条窪みを形成したことで解決でき
る。

【００１０】

【作用】前記スラブ側縁部に発生するシーム状の疵は、
幅広がりによる塑性歪、圧延材の陵部や端面の疵等が圧
延の進行に伴ってスラブの表面側に回り込んで発生する
ことが一般的に知られている。本考案においては、幅圧
下プレス用金型の平行面部に凸条突起を形成するととも
に、前記傾斜面部にスラブ側縁の綾部を圧下するための
凹条窪みを形成する。

【００１１】したがって、搬送されるスラブは、前記傾
斜面部の凹条窪みによって、圧延材の稜部が潰され、シ
ーム疵の原因となる要因が取り除かれるとともに、前記
平行面部の凸条突起によって、側縁端面に全長に渡って
凹条溝が形成され、幅広がりおよび表面への回り込みが
抑制されて前記シーム状疵が防止される。また、本考案
においては、エッジャ等を使用することなく、大圧下用
の幅圧下プレス用金型によって、幅サイズの変更と同時
に圧延材たるスラブに前記形状を施すため、圧延効率を
低下させることなく前記シーム状疵を防止することがで
きる。なお、前記幅圧下プレス用金型に形成される凸条
突起や凹条窪みの形状は、何ら直線的な多角形状に限定
されるものではなく、円弧状、曲面状等種々の形状等を
採用することができる。

【００１２】

【実施例】以下、本考案を実施例に基づき詳説する。図
１に本考案に係る幅圧下プレス用金型１の斜視図を示
す。前記幅圧下プレス用金型１には、前述したように、
スラブＳの搬送パスラインと平行な平行面部１Ｂと、こ
の平行面部１ＢからスラブＳの入側に向けてテーパー状
に広がる傾斜面部１Ａとを有する。

【００１３】前記傾斜面部１Ａには、図２の横断面図に
示されるような台形状の凹条窪み１ａが形成されてお
り、幅サイズ変更の大圧下に伴ってスラブＳの稜部が潰
され、これに原因して発生するシーム状疵が防止され
る。前記稜部の圧下形状については、当接角度θ＝３０
〜６５°の範囲とし、溝深さＳ₁ ＝１０〜１００mm、Ｓ
₁／Ｓ₂ ＝０．６〜２．１の範囲とするのがよい。当接
角度θが３０°以下の場合および６５°を超えると、多
角形状に成形された稜部の一方の角度がきつくなり、効
果的にシーム状疵を防止することができない。また、溝
深さＳ₁ が１０mm以下の場合には、溝深さが小さすぎて
稜部圧下によるシーム状疵の抑止効果が少なく、また１
００mmを超えた溝深さを有しても稜部圧下によるシーム
疵抑制効果は得られない。

【００１４】また、前記平行面部１Ｂには、搬送パスラ
イン方向に、図３の横断面図に示されるような台形状の
凸条突起１ｂが形成されており、幅サイズ変更の大圧下
に伴ってスラブＳの側縁端面に凹状溝が形成され、圧延
による幅広がりが抑制され、るとともに、表面への回り
込みが防止される。前記凹条溝の形状については、前記
幅圧下プレス用金型１の傾斜面部１ＡによってスラブＳ
の上下稜部が角落としされるが、この角落としされない
端面区間を滑らかに結ぶ凹形状とするのがよく、その溝
深さＳ₃ は５〜２５mmの範囲が良好とされる。溝深さＳ
₃ が５mm以下の場合には圧延時に端面から表面側に回り
込み、効果的にシーム状疵を防止することができない。
また２５mmを超えると、凹条溝の肩部の勾配が急になる
ためパイプ疵として残る場合がある。前記平行面部に形
成される凸条突起については、たとえば図４に示される
ような球面状の凸条突起であってもよいし、また図５に
示されるように二つの凹状溝６ａ、６ｂを形成すること
により、結果的にその中間に凸条突起６ｃを形成するこ
とでもよい。また図６に示されるように、全体的になだ
らかな山状の凸条突起７ａとすることもできる。

【００１５】（実施例） 本考案に基づき製作された、図８に示される平行面部の
横断面形状であって、かつ図９に示される傾斜面部の横
断面形状の幅圧下プレス用金型１を用い、実際の圧延パ
スラインにおいて、幅１２００mm×厚さ２４０mmのステ
ンレス鋼スラブ（ＳＵＳ３０４）に対し、圧下量を種々
変化させながら幅圧下を行いシーム状疵の発生幅につい
て調べた。その試験結果を図７に示す。図７より明らか
なように、幅圧下を施さない圧下量０mmの場合には、シ
ーム状疵の発生幅は１０〜１５mmであったのに対し、５
０mmの幅圧下を施した場合、シーム状疵の発生幅は１０
mmに減少し、さらに７０mmの幅圧下を施した場合にはシ
ーム状疵の発生幅は５〜１０mmに減少した。以上のよう
に、本幅圧下プレス用金型１を用いた場合には、圧下量
が大きくなるにつれて、シーム状疵の発生幅が減少して
いることが判明される。なお、本実施例においては、７
０mmまでの幅圧下しか行わなかったが、幅圧下プレス用
金型の場合には、通常２００mm程度の大圧下量にて幅圧
下が行われることを考慮すると、本考案によって、さら
にシーム状疵の発生が防止されることが期待される。

【００１６】

【考案の効果】以上詳説のとおり、本考案によれば、エ
ッジャー等を使用することなく、幅圧下プレス時に、幅
サイズの変更と同時に、シーム状疵を防止し得る形状に
スラブを成形するため、圧延効率の向上を図ることがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係る幅圧下用プレス用金型の斜視図で
ある。

【図２】図１のII−II線横断面図である。

【図３】図１のIII −III 線横断面図である。

【図４】金型平行面部の凸条突起の他の例である。

【図５】金型平行面部の凸条突起の他の例である。

【図６】金型平行面部の凸条突起の他の例である。

【図７】実施例の試験結果を示す図である。

【図８】実施例において用いた金型の凸条突起の形状寸
法図である。

【図９】実施例において用いた金型の凹条凹みの形状寸
法図である。

【図１０】幅圧下プレス用金型の使用状況図である。

【図１１】特開昭５３−２８５４２号公報における竪ロ
ールの形状図である。

【図１２】特開昭５３−２８５４２号公報における竪ロ
ールの形状図である。

【図１３】特開昭５８−１３８０５２号公報における鋳
型横断面形状図である。

【符号の説明】

１…幅圧下プレス用金型、１Ａ…傾斜面部、１Ｂ…平行
面部、１ａ…凹条窪み、１ｂ…凸条突起、Ｓ…スラブ

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】スラブの両側部にそれぞれ配設され、かつ
   スラブ側面に対する当接面として搬送パスラインと平行
   な平行面部と、この平行面部からスラブの入側に向けて
   テーパー状に広がる傾斜面部とを有し、前記搬送パスラ
   インと直交する方向に進退しスラブの幅圧下を行う幅圧
   下プレス用金型において、 前記平行面部にスラブ全長に渡ってスラブ側縁端面に凹
   条溝を形成するための凸条突起を形成するとともに、前
   記傾斜面部にスラブ全長に渡ってスラブ側縁綾部を圧下
   するための凹条窪みを形成したことを特徴とする幅圧下
   プレス用金型。