JP3430819B2 - ボックス孔型ロールと形鋼の圧延方法 - Google Patents

ボックス孔型ロールと形鋼の圧延方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ボックス孔型ロー
ルとそれによる形鋼の圧延方法、特に造形孔型に備えて
幅や厚みを整えた素材 (以下、準備角と称す) の圧延用
のボックス孔型ロールとその圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】形鋼、例えば鋼矢板は、正方形あるいは
矩形断面の鋳片、鋼片を素材として孔型ロールを用いて
順次熱間圧延を行いながら、最終的に目的断面形状の鋼
矢板を得る。
【0003】通常連続鋳造により得られたスラブを素材
として熱間圧延を行うが、その場合の圧延工程は大きく
分けて準備角を用意する成形段階と、粗圧延、中間圧
延、仕上圧延から構成される造形段階とがある。
【0004】すなわち、図1は、圧延素材1から出発し
て、成形段階の準備角圧延工程aと、造形段階の粗圧延
工程b、中間圧延工程c、そして仕上圧延工程dとを経
て非対称鋼矢板を孔型ロールにより製造する一般的な工
程図であるが、成形段階に供給される素材1は、厚みを
縮小する平ボックス孔型a0 と幅を縮小する平ボックス
孔型a1 による断面の縮小圧延によって、その後の造形
段階における造形孔型b1 〜d3 を用いた造形圧延に適
正な断面形状の準備角1' となる。
【0005】いずれも孔型ロールを用いるが、特に造形
段階における形鋼の孔型圧延の特徴としては、例えば幅
方向に圧下率およびロール周速が不均一に分布すること
から、圧延材の圧延姿勢が安定しないという問題があ
る。そのため、形状寸法不良、圧延疵の発生、圧延トラ
ブル (ミスロール) 等の問題が生じており、その解決策
の開発が求められている。
【0006】例えば、圧延スタンド基数、ロール胴長等
の設備的な制約があって上述の図1に示すa0 〜d3
孔型ロールが1ヒート圧延内に揃えることができない場
合には分塊工程を入れて2ヒート圧延とするが、これは
効率的でない。そこで、素材1の厚みを縮小する平ボッ
クス孔型a0 を省略すると、造形圧延に適正な準備角を
得ることができないことから、第一造形孔型b1 でのセ
ンタリング性不良による継手部の形状不良、噛み出しに
よる圧延疵の発生、等の問題が生じる。
【0007】これを準備角の厚み方向に素材幅を変化さ
せる手段によって解決するために、特開平2−34201 号
公報には、図2に示すような非対称異形ボックス孔型に
よる準備角の成形圧延を提案している。
【0008】この非対称異形ボックス孔型は、上下ロー
ル共に孔型底部の左右側辺部どちらか一方に、任意の水
平方向の距離jと、垂直方向の距離iの点を結ぶ段状の
傾斜を備えている。さらに、側面には通常の幅圧下ボッ
クス孔型とは異なり、圧延素材1の厚み方向の圧下をと
るために、孔型底部幅の寸法lを素材の厚みTより小さ
くするとともに、底部を起点とする上下ロールの側面
に、それぞれ外方に大きな傾斜角αを付している。圧延
素材の幅方向の圧下により、圧延素材の幅の両端部に前
記非対称異形ボックス孔型形状が形成され、孔型底部の
傾斜部5相当部が下になるよう90度転回して造形角1'
を得て、以降、初造形孔型b1 で圧延する。
【0009】しかしながら、かかる非対称異形ボックス
孔型は、傾斜部5がコーナ部2から設けられている。実
際に、このような形状のボックス孔型ロールで矩形断面
の素材を幅方向に圧下する場合、ロールと素材の接触面
積が小さいために噛み込み性が非常に悪い。そのため
に、ボックス孔型における初期パスの圧下量を極めて少
なくする必要があり、効率的でない。
【0010】これらの関係は、図3に示すように、圧延
素材1がボックス孔型ロール10に噛み込まれる場合に、
エッジEにおいて点接触することから噛み込みが不安定
となり、その点において生じる圧下力Fの分力の作用に
よって、左右上下の曲がりが発生し易くなると考えられ
る。
【0011】逆に噛み込み性を上げるために傾斜を緩や
かにすると、準備角のボリューム差が少なくなることか
ら、非対称異形ボックス孔型本来の目的である噛み出し
による圧延疵の発生を防止しながら、造形孔型でのセン
タリング性を上げて形状不良を抑制する効果が薄れてし
まう。
【0012】また、左右非対称形状の形鋼を圧延する場
合には、造形孔型が左右非対称となり、左右対称形状の
形鋼を圧延する場合に増して、造形孔型ロールでのセン
タリング性が重要となる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】ここに、本発明の目的
は、非対称異形ボックス孔型ロールによる圧延に際し
て、圧延姿勢の不良が防止され、したがって圧延疵の発
生も見られない造形圧延を可能とする優れた準備角圧延
用孔型ロールおよびそれを使用して行う準備角の圧延方
法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成すべ
く、本発明者らが検討した結果、次のような知見を得、
それに基づいてさらに検討を重ね、本発明を完成した。
ここに、本発明は次の通りである。
【0015】
【0016】(1) ボックス孔型の底部断面形状を孔型幅
に対して30%以上の割合で水平部または傾斜角15°以下
の緩やかな傾斜部をとり、それに続いて傾斜角15°を越
える急な傾斜部をとることを特徴とする矩形断面の素材
からの準備角の圧延に用いるボックス孔型ロール。
【0017】(2) 請求項1記載のボックス孔型ロールを
用いて矩形断面の素材から準備角を圧延することを特徴
とする形鋼の圧延方法。
【0018】
【発明の実施の形態】ここで、添付図面を参照しながら
本発明の異形ボックス孔型ロールについて具体的に説明
する。
【0019】図4は、本発明にかかる異形ボックス孔型
ロール20の断面形状を示すもので、図中、ボックス孔型
22の断面形状を素材24の厚み方向に傾斜状とし、かつ径
大部26を水平もしくは緩やかな傾斜部として、径小部28
を急な傾斜部としている。なお、径大部26のロール径を
D1、傾斜部の開始部のロール径をD2、径小部28の端部の
ロール径をD3とするとD1≧D2>D3となる。
【0020】本発明の好適態様によれば、ボックス孔型
22の断面形状を孔型幅L0 に対して30%以上の割合で水
平または傾斜角15°以下の緩やかな傾斜部26をとり、そ
れに続いて傾斜角15°を越える急な傾斜部28をとるよう
に構成してもよい。このように本発明による異形ボック
ス孔型ロールは、以下の3点を特徴とする。
【0021】孔型幅L0 に対して30%以上の割合で、
コーナ部30から水平もしくは傾斜角15°以下の傾斜部20
(この傾斜は直線に限らず、円弧上や複数段状、または
それに類するものでよい) と、急勾配をもった傾斜部28
とからなる。
【0022】急勾配の傾斜部28の形状は、得たい形状
により直線、円弧等を任意につなげて構成してもよい。 厚み方向の圧下は特に考えず、孔型幅Lは素材の厚み
に応じて設定する。ただし、ロール摩耗や焼付を低減す
るために若干の傾斜をもった側面部32、34とする。
【0023】本発明による異形ボックス孔型では、コー
ナ部30から始まる水平もしくは緩やかな傾斜部26によっ
て矩形素材との接触面積が増大し、噛み込み性が良くな
る。好ましくは15°以下、より好ましくは5°以下かつ
可及的平行に近い角度である。よって、本発明によれ
ば、1回の圧延で大きな圧下量を得ることができ、従来
の平ボックス孔型による場合と比較しても、準備角圧延
に要するパス回数はほぼ同等となる。
【0024】これらの関係は図5に概略で示す通りであ
り、圧下力Fがかかっても水平または緩やかな傾斜部26
では面接触となり、噛み込みが安定し、上下左右の曲が
りも発生しにくい。
【0025】一方、急勾配部28を設けることにより、続
く造形孔型において上ロールの孔型幅≒材料幅、かつ下
ロールの孔型幅≫材料幅となり、疵発生は防止される。
好ましくは15°を越える急角度とし、より好ましくは25
°以上45°以下とする。この急勾配部は孔型幅L0 の70
%以下、好ましくは60%以下を占めればよい。
【0026】このように本発明によれば、さらに、噛み
込み性が良くなることによって、凹形状部分28を比較的
大きくとることができ、造形孔型における噛み出しの防
止、センタリング性向上の効果が増大する。
【0027】図6に示すように、特に、左右非対称形状
の鋼矢板を圧延する場合には、第一造形孔型40が左右非
対称となっていることから、第一造形孔型40での圧延中
に準備角である素材1がずれていくことによるセンタリ
ング不良が問題となるが、凹形状部分を大きくすること
で上ロール孔型の左右側面に正確に拘束されることによ
って、センタリング性が保たれる。このとき、上ロール
と下ロールの隙間からの噛み出しが懸念されるが異形ボ
ックス孔型による準備角の幅差によって解消される。
【0028】
【実施例】最初に異形ボックス孔型の形状を種々変えて
鉛スラブによるモデルテストを実施した。テスト尺度は
1/5 とした。形状の変更点は、図7におけるθ=0°、
10°、15°、20°、30°、l/L =0%、20%、30%、40
%、50%をそれぞれ組み合わせたものである。図示例で
はロール径D1≧D2>D3である。
【0029】素材寸法は140 mm×50mmの矩形断面とし、
テストの評価は図5に示す異形ボックス孔型にて幅方向
に4mm圧下する際の噛み込み状況を観察した。結果を表
1に示す。表より孔型深さが浅い方のコーナ部から始ま
る傾斜が15°以下、さらにその傾斜部分lが孔型幅Lに
対して30%以上の場合、噛み込み性が良いことがわかっ
た。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】本発明による異形ボックス孔型を用いる
と、造形孔型における噛み出しを防止しつつ、センタリ
ング性向上により、圧延長手方向における形状変動が極
めて少ない製品を得ることができる。また、その際に従
来の矩形ボックス孔型とほぼ同等の圧下量をとることが
でき、圧延能率の低下を招くことはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】孔型ロールによる形鋼の圧延工程の概略説明図
である。
【図2】従来の孔型ロールの断面形状の説明図である。
【図3】孔型ロールへの噛み込みの様子の説明図であ
る。
【図4】本発明にかかる孔型ロールの断面形状の概略説
明図である。
【図5】孔型ロールへの噛み込みの様子の説明図であ
る。
【図6】本発明にかかる圧延により得られ準備角の粗圧
延用孔型ロールへの噛み込みの様子の説明図である。
【図7】実施例の実験要領の説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−34201(JP,A) 特開 平4−356302(JP,A) 特開 平5−76913(JP,A) 特開 昭58−159905(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 27/02 B21B 1/08

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ボックス孔型の底部断面形状を孔型幅に
    対して30%以上の割合で水平部または傾斜角15°以下の
    緩やかな傾斜部をとり、それに続いて傾斜角15°を越え
    る急な傾斜部をとることを特徴とする矩形断面の素材か
    らの準備角の圧延に用いるボックス孔型ロール。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のボックス孔型ロールを用
    いて矩形断面の素材から準備角を圧延することを特徴と
    する形鋼の圧延方法。
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