JP2546750Y2 - ディスクブレーキの摺動支持装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 【産業上の利用分野】

本考案はディスクブレーキの摺動支持装置に係り、特
に制動時のキャリパの移動を摺動案内する際の滑動用潤
滑材の漏れを防止するのに好適な構造とした摺動支持装
置の改良に関する。

【従来の技術】

浮動キャリパ型ディスクブレーキは、ディスクロータ
の外縁部に配設される固定サポートを備え、これにガイ
ドピンを含む支持装置を介してキャリパをディスクロー
タの軸方向に移動可能に組み付けている。キャリパには
ディスクロータを挟圧可能な一対の摩擦パッドと、これ
らの摩擦パッドにロータ挟圧作用を行わせる液圧手段が
取り付けられている。制動作用は一方の摩擦パッドをデ
ィスクロータに圧接させるとともに、反作用により他方
の摩擦パッドをディスクロータに圧接させることで行わ
れるが、そのときキャリパは前記ガイドピンによって摺
動案内されてロータ軸方向に移動する。 このようなキャリパの移動を行わせる摺動支持機構
は、第４図に示すように、キャリパ１（または固定サポ
ート２）にガイドピン３を取り付け、他方の固定サポー
ト２（またはキャリパ１）にガイド孔４を形成して両者
を嵌合させることにより摺動案内を行わせ、キャリパ１
が適正にディスクロータの軸方向に移動できるようにし
ている。この場合、組み付けを行うに際して、ガイド孔
４内に空気が残留して摩擦パッドの引き摺りが発生しな
いように、ガイドピン３は両端開口の筒状スリーブ構造
とされ、組み付け時に内部空気を除去するようにしてい
る。またガイドピン３を固定するためにボルト５が用い
られ、当該ボルト５をキャリパ１（または固定サポート
２）に設けたボス部６に貫通させ、ガイドピン３の一端
側の内周面に形成された雌ネジ７に螺着し締め付けて取
り付けるようにしている。そして、ガイドピン３をガイ
ド孔４に挿通して支持機構の組立てを行う場合、摺動面
の滑りの円滑化と発錆防止の観点から、ガイドピン３と
ガイド孔４の摺動面にグリス等の潤滑材を塗布するよう
にしている。

【考案が解決しようとする課題】

ところが、上記従来のディスクブレーキの支持装置で
は、ガイド孔４内部の潤滑材が熱等によりボルト５側に
流出し、摩擦パッドの交換等のために行われる分解・組
立て作業時にこの潤滑材がネジ面に付着し、ボルト５の
弛みが発生する虞があった。このため、ボルト５の先端
にガイドピン３の内部に突出するような突起を設け、こ
の突起とガイド孔４の内面との間にＯリング等のシール
を施すことが考えられるが、ボルト５に複雑な加工を必
要とするとともに、組み付け作業性が悪化し、加工精度
も極めて高くする必要が生じる等の問題があった。 本考案の目的は、上記従来の問題点に着目し、非常に
簡易な構造としつつ分解・組立て作業の作業性が良好で
あって、潤滑材が螺着面に付着するようなことを有効に
防止してネジの弛みが発生することのない構造としたデ
ィスクブレーキの摺動支持装置を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するために、本考案に係るディスクブ
レーキの摺動支持装置は、ディスクロータの外周縁部に
配設される固定サポートと、ディスクロータを挟圧可能
な一対の摩擦パッドとその挟圧作用を行わせる液圧手段
とを備えた浮動キャリパとを有し、当該キャリパを前記
固定サポートに対して前記ディスクロータの軸方向に移
動可能に支持すべく前記キャリパまたは固定サポートの
一方にガイドピンを取付けるとともに他方に当該ガイド
ピンが挿入される一端のみ開放のガイド孔を設けて摺動
ガイドする機構を備えたディスクブレーキの摺動支持装
置において、前記ガイドピンは段差面を有する貫通孔と
し、その一方の開口端部に形成したネジ孔にキャリパま
たは固定サポートの一方を貫通するボルトを螺着させ、
前記貫通孔内にてボルトの先端面に縦列配置され、前記
貫通孔内に挿入される栓状突起を有してボルト螺進によ
り貫通孔を封止するゴム栓部材を取付けたものである。

【作用】

上記構成によれば、キャリパまたは固定サポートに設
けられたボス部を挟んで一方からボルトを挿通し、他面
側に配置した筒状スリーブのガイドピンに螺着して固定
するが、ボルトの先端には栓部材が配設されて筒状スリ
ーブの孔を施栓する。栓は筒状スリーブの孔に挿入され
る栓状突起が形成され、一次的な施栓をなし、ボルトの
締め付け操作による螺進によって二次的な密閉作用をな
す。これによりボルトと筒状スリーブの内部空間とは完
全に遮断され、加熱によってスリーブとガイド孔の摺動
面に塗布したグリスその他の潤滑材がボルトとスリーブ
との螺着面に流れ出ようとしても、これが封止される。
したがって、ガイドピンの取り付けに際してはガイド孔
にスリーブを挿入して内部空気を抜き、ガイド孔からの
突出側からスリーブ内に栓を挿入した上でボルトを締め
付けるだけでよい。ボルトは一般的な形状でよく、単に
栓が構成部材として増えるだけであって、組み付け作業
性や部品の加工性を悪化することもなく、重量の増加も
殆どなくして良好な潤滑材の封止構造とすることができ
るのである。

【実施例】

以下に、本考案に係るディスクブレーキの摺動支持装
置の具体的実施例を図面を参照して詳細に説明する。 第１図は第１実施例に係る摺動支持装置を備えたディ
スクブレーキの要部断面平面図である。ディスクブレー
キのキャリパ10は固定サポート12に取り付けられ、図示
しないディスクロータの軸方向に移動可能に固定サポー
ト12に装着されている。この軸方向移動を案内支持する
ための支持装置が設けられ、これはブレーキ側部に配設
された一対のガイドピン14を備えている。このガイドピ
ン14は両端を開口した筒状スリーブによって形成され、
組み付け時の空気抜きができるようになっている。ま
た、ガイドピン14は実施例ではキャリパ10側に取り付け
られており、この取り付けのためにキャリパ10の側縁に
はボス部16がフランジ状に張り出し形成されている。フ
ランジボス部16には固定用ボルト18が挿通され、これを
ガイドピン14の開口部に螺着挿入して固定するようにし
ている。一方、このようなフランジボス部16に対面する
固定サポート12側には有底のガイド孔20が穿設され、こ
のガイド孔20に前記ガイドピン14を差込み挿入すること
により、固定サポート12に対してキャリパ10がロータ軸
方向に案内されて移動できるようになっている。 このような支持装置の具体的構造を第２図に示す。筒
状のスリーブとして形成されたガイドピン14は中心に両
端開口の孔22が設けられているが、この孔22のフランジ
ボス部16への取り付け基端側は大径孔として、これに雌
ネジを刻設してネジ孔24を形成している。このためガイ
ドピン14の内部にはネジ孔24と小径の孔22との境界部分
に段差面26が形成されている。そして、この段差面26は
実施例において傾斜の緩やかな円錐形状とされている。 上記のようなガイドピン14はキャリパ10のフランジボ
ス部16に取付けられるが、このためボス部16にはボルト
18の挿通孔28が穿設されている。取付けは、挿通孔28の
一端からボルト18のネジ軸30を通し、他端側にてガイド
ピン14のネジ孔24に螺着することにより、ボルト頭部32
とガイドピン14の端面にてフランジボス部16を挟着する
ように締め付けて行われる。 一方、フランジボス部16に対面する固定サポート12に
はガイドピン14が挿入される有底のガイド孔20が穿設さ
れ、その内壁面を摺動面としてガイドピン14と一体に動
作するキャリパ10の移動方向が、図示しないディスクロ
ータの軸方向に一致するように案内規制している。そし
て、ガイド孔20の開口部外周とガイドピン14の基端外周
を取付け面とする蛇腹状のブーツ34が取付けられ、ガイ
ド孔20の開口を密封し、出入りするガイドピン14の摺動
面への塵埃付着等を防止するようにしている。 このような構成において、ガイドピン14とガイド孔20
の摺動面には円滑な滑りを生じるようにグリスその他の
潤滑材36が塗布されるが、熱により流動化して前記ボル
ト18とガイドピン14のネジ孔24の螺着面に達するとネジ
緩みが生じるので、この考案ではボルト18の先端部にゴ
ム栓38を配置し、これにより小径のスリーブ孔22を施栓
するようにしている。すなわち、ゴム栓38はネジ軸30の
先端面中央に凹陥部40を形成し、これに嵌合固着される
取付け基部42を有し、この基部42からボルト18の螺進方
向、すなわちスリーブ孔22の開口に向けて突出される栓
状突起44を一体的に設けたもので、リップタイプの形状
としている。栓状突起44はスリーブ孔22の内径寸法より
大きい膨出部44Aを有し、先端に向けて先細りとなるよ
うにしてスリーブ孔22への挿入を容易にしている。そし
て、栓状突起44と基端42との間にくびれ部46を形成し、
心ずれを吸収するようにしている。 このように構成された摺動支持装置によれば、固定サ
ポート12のガイド孔20内に潤滑材を摺動面に塗布しつつ
予めガイドピン14を挿入する。このときガイド孔20内の
空気はスリーブ孔22を介して外部に流出し、ガイドピン
14の挿入によって内部に圧力空気が残留することを防止
することができる。その後、キャリパー10を組み付ける
に際して、その側縁に設けられたフランジボス部16き挿
通孔28に固定用ボルト18を装着し、ガイドピン14のネジ
孔24に螺合する。このとき、ボルト18の先端面にはリッ
プタイプのゴム栓38を接着固定しておく。ボルト18を締
め込むことにより、先端のゴム栓38における栓状突起44
はスリーブ孔22内に貫入し、ボルト18による螺着結合に
よってガイドピン14の固定と同時にゴム栓38がガイド孔
20とボルト18との間を封止することになる。これによっ
て、ガイド孔20内に流動化してボルト18側に流れ出よう
とする潤滑材36を封じ込め、潤滑材の流出によるボルト
18の緩みが発生することを防止することができる。 このような実施例においては、固定用ボルト18の先端
にＯリング取付け用等の複雑な加工を必要とせず、しか
も単純なボルト締め作業を行うだけで確実な封止を行う
ことができる。特に栓状突起44は可撓性があるので、確
実にスリーブ孔22内に没入され、適正な封止を行わせる
ことができる。またこの実施例ではボルト18の先端にゴ
ム栓38を一体固着しているので、組み付けが非常に容易
になっている。更に、シールのための構成部材はゴム材
料により構成され、しかもゴム栓の支持のための金属部
材の付加がないので、軽量化に寄与する利点も得られ
る。 次に、第３図には第二実施例を示す。この実施例は前
記潤滑材の封止を行わせるゴム栓48をボルト18の先端面
で押し付け、ガイドピン14内の段差面26に密着させるよ
うにした形状とした点が異なる。すなわち、ゴム栓48は
ネジ孔24の内径とほぼ同様な円柱部50を有し、その先端
面にスリーブ孔22内に貫入される栓状突起52を突出形成
したもので、栓状突起52は外周面にくびれ部54が設けら
れた形状とされている。このようなゴム栓48はボルト18
による締め付けに先立ってネジ孔24内に挿入され、ボル
ト18の螺進に伴って移動し、先端の突起52をスリーブ孔
22内に没入させるとともに、円柱部50の先端面を段差面
26に圧接させて装着されるようになっている。 このような第二実施例によれば、栓状突起52によるシ
ール作用と円柱部50による段差面26位置でのシール作用
を発揮させ、複数段のシール機能をもたせることができ
る。そして、この例ではボルト18との固着を行わせるこ
となく、単純にボルト18の先端に介在させるだけでよ
く、他の加工を必要としないため、より単純構造で高い
封止作用を行わせることができる利点がある。もちろ
ん、円柱部50の後端面にボルト18への固着用突起を設
け、ボルト18の先端面にもその固着用凹陥部を形成し
て、両者を固着するようにしてもよい。

【考案の効果】

以上説明したように、本考案によれば、ガイドピンを
両端開口の筒状スリーブによって形成しつつ当該筒状ス
リーブの端部にキャリパまたは固定サポートのボス部に
貫通して挟持するボルトを螺着嵌合させて固定し、前記
筒状スリーブに螺着されるボルトの先端には前記筒状ス
リーブの孔内に挿入される栓状突起を有しボルト螺進に
よりスリーブ孔を密封施栓して充填潤滑材の封止するゴ
ム栓部材を縦列配置したので、非常に簡易な構造としつ
つ分解・組立て作業の作業性が良好であって、潤滑材が
螺着面に付着するようなことを有効に防止してネジの弛
みが発生することのない構造の摺動支持装置とすること
ができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は実施例に係る摺動支持装置を備えたディスクブ
レーキの要部断面平面図、第２図は摺動支持装置の拡大
断面図、第３図は第二実施例の拡大断面図、第４図は従
来例の手動支持装置の断面図である。 10……キャリパ、12……固定サポート、14……ガイドピ
ン、16……フランジボス部、18……固定用ボルト、20…
…ガイド孔、22……スリーブ孔、24……ネジ孔、26……
段差面、34……ブーツ、36……潤滑材、38、48……ゴム
栓、42……取付け基部、44、52……栓状突起、50……円
柱部。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ディスクロータの外周縁部に配設される固
   定サポートと、ディスクロータを挟圧可能な一対の摩擦
   パッドとその挟圧作用を行わせる液圧手段とを備えた浮
   動キャリパとを有し、当該キャリパを前記固定サポート
   に対して前記ディスクロータの軸方向に移動可能に支持
   すべく前記キャリパまたは固定サポートの一方にガイド
   ピンを取付けるとともに他方に当該ガイドピンが挿入さ
   れる一端のみ開放のガイド孔を設けて摺動ガイドする機
   構を備えたディスクブレーキの摺動支持装置において、 前記ガイドピンは段差面を有する貫通孔とし、その一方
   の開口端部に形成したネジ孔にキャリパまたは固定サポ
   ートの一方を貫通するボルトを螺着させ、前記貫通孔内
   にてボルトの先端面に縦列配置され、前記貫通孔内に挿
   入される栓状突起を有してボルト螺進により貫通孔を封
   止するゴム栓部材を取付けたことを特徴とするディスク
   ブレーキの摺動支持装置。