JP2546359B2 - 紡機の管替方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明はリング精紡機、リング撚糸機等の紡機の管替
方法に関するものである。

［従来の技術］ 近年、紡績工場における自動化が進み、リング精紡
機、リング撚糸機等の紡機において満管にともなう玉揚
げ及び新たな空ボビンをスピンドルに挿入する管替作業
が管替装置により自動的に行われるようになっている。
管替装置としては作業を必要とする機台に沿って移動し
て一錘ずつあるいは複数錘ずつ管替作業を行う移動式の
管替装置と、各紡機機台毎に整備された全錘一斉式の管
替装置とがある。全錘一斉式の管替装置としては例えば
特公昭48−30970号公報に開示された装置のように、紡
機機台のスピンドル列の下方にスピンドルピッチと同一
ピッチでペッグが突設されたコンベヤ装置を設けるとと
もにコンベヤ装置とスピンドル列との間にスピンドルピ
ッチと同一ピッチで中間ペックが突設された受台を設
け、スピンドルピッチと同一ピッチで配置されたボビン
把持装置を備えたドッフィングバーをパンタグラフ機構
によりスピンドル列とコンベヤ装置との間を昇降変位さ
せるとともにパンタグラフ機構全体を紡機機台に接近す
る位置と離間する位置とに傾動可能に構成した装置が開
示されている。この管替装置による管替作業は次の３段
階の動作により行われる。コンベヤ装置上の空ボビン
を受台上に中間ペッグへ移し替える。スピンドル上の
満ボビンをコンベヤ装置のペッグ上に移し替える。受
台上の空ボビンをスピンドル上へ移し替える。

前記管替方法では第１段階の作業すなわちコンベヤ装
置上から受台上への空ボビンの移し替え作業は紡機機台
の運転中にも行うことができるが、第2,3段階の作業は
紡機機台停止中でなければ行うことはできない。すなわ
ち、第2,3段階の作業中は紡機機台の運転が必ず停止さ
れる。

一方、近年特にリング精紡機においては機台の高速化
が指向され、スピンドルの最高回転速度が20000rpmに達
するものもある。このようにスピンドルの回転速度が高
速化された場合には管糸１本当りに巻取る糸の量を少な
くするスモールパッケージ化が図られている。そして、
機台の高速化とスモールパッケージ化のため満管までの
時間が短くなって機台の満管停止にともなう管替作業の
回数が増大し、管替作業のための紡機機台の停止時間が
紡機機台の稼働効率に大きく影響するようになりつつあ
る。

一方、管替装置による管替を行う場合、管替後と再起
動時に糸を空ボビンに自動的に巻付けることができるよ
うに、ローラパートに連なる糸がトラベラに通ったまま
スピンドルに接続していることが要求される。この要求
を満たすため及びワインダ工程における口出しを容易に
するため、満管に伴う機台停止時にはバンチ巻及び尻糸
巻形成のためリングレールが所定の満管停止動作を行う
ようになっている。そして、機台停止時間を短縮するた
め、従来第4,5図に示すように満管停止動作開始信号あ
るいは満管信号により管替装置の作動を開始しする方法
が実施されている。

［発明が解決しようとする課題］ ところが、前記第４図に示す従来方法では管替装置の
作動開始時期と紡機機台の満管停止動作の開始時期とが
同時であるため、管替装置の作動による空ボビンの中間
ペッグへの挿入が完了する前に紡機機台が完全に停止す
る。一方、第５図に示す方法では、紡機機台の満管停止
動作開始信号は満管信号発信後リングレールが所定位置
まで降下した時点で発信されるため、管替装置は紡機機
台の作動開始前に作動が開始される。しかし、満管信号
はリングレールが巻取りのための昇降過程のどの位置に
あるときに発せられるかは不定である。満管信号がリン
グレールの上昇開始のときに発せられれば、紡機機台の
停止前に管替装置の作動による空ボビンの中間ペッグへ
の挿入が完了するが、満管信号がリングレールの下降時
の後半に発せられた場合には管替装置の作動による空ボ
ビンの中間ペッグへの挿入が完了する前に紡機機台が完
全に停止する。すなわち、前記従来方法では紡機機台が
停止した状態で管替装置による満ボビンの玉揚げを待つ
時間が長く（20秒程度）なり、その分紡機機台の停止時
間が長くなる。この待ち時間は紡機機台の停止時間の１
〜２割を占める。

紡機機台の停止前に管替装置の作動による空ボビンの
中間ペッグへの挿入を確実に完了させる方法として、ボ
ビンが９分玉近くになったときに発せられる満管予告信
号により管替装置の作動を開始する方法が考えられる。
この場合には管替装置の作動による空ボビンの中間ペッ
グへの挿入は機台停止前に確実に完了し、管替装置はボ
ビン把持装置を備えたドッフィングバーが満ボビンの把
持準備のため最上昇位置で待機する。ところが、紡機で
は巻始め及び巻終りのときに糸切れが発生し易く、ドッ
フィングバーが満ボビンの把持準備のため最上昇位置で
待機していると、作業者による糸切れ修復作業がし難い
という問題がある。

本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであっ
て、その目的は管替作業のための紡機機台の停止時間を
できるだけ短縮することができる紡機の管替方法を提供
することにある。

［課題を解決するための手段］ 前記の目的を達成するため本発明においては、紡機の
スピンドル列の下方に移送装置を配設し、スピンドル列
と移送装置との間にボビン挿入用の中間ペッグを所定ピ
ッチで設け、ボビン把持装置を備えた全錘一斉式の管替
装置により前記中間ペッグを介して前記移送装置上に配
置された空ボビンとスピンドル上の満ボビンとの交換作
業を行う紡機の管替方法において、紡機運転中に紡機の
満管信号で前記管替装置の管替動作を開始し、前記満管
信号発信から満管停止時におけるバンチ巻形成のための
リングレールの動作を開始する満管停止動作開始信号を
発信するまでの時間を、リングレールの昇降回数が１回
より多く数回以下となるように設定し、紡機が停止する
前に前記管替装置による前記中間ペッグへの空ボビンの
挿入が完了するようにした。

［作用］ 本発明では紡機運転中に紡機の満管信号で全錘一斉式
の管替装置が管替動作を開始し、スピンドル列の下方に
配置された移送装置上の空ボビンの中間ペッグ上への移
し替えが行われる。そして、前記満管信号発信から巻取
のためのリングレールの昇降動が１回より多く数回以下
行われた後、満管停止時におけるバンチ巻形成のための
リンクレールの動作を開始する満管停止動作開始信号が
発信される。管替装置による前記中間ペッグへの空ボビ
ンの挿入作業は機台停止前に確実に完了し、管替装置は
満ボビンの抜き取りのための待機状態で機台の停止を待
つ。従って、機台停止とともに管替装置の再起動が可能
となり、紡機機台が再起動されるまでの機台停止時間が
短縮される。又、管替装置が満ボビンの抜き取りのため
の待機状態となった後、リングレールが昇降動する回数
はわずかなため糸切れ修復作業の邪魔になることはほと
んどない。

［実施例］ 以下、本発明をリング精紡機に具体化した一実施例を
第１〜３図に従って説明する。

多数のスピンドル１が一定ピッチで配設されたスピン
ドルレール２の下方には第３図に示すように、ペッグト
レイ３を利用してボビンの移送を行う公知（例えば特開
昭63−145438号公報）のボビン移送装置４が配設されて
いる。スピンドルレール２の前側には支持バー５がスピ
ンドルレール２に沿って延設され、支持バー５の上面に
はスピンドルピッチと同ピッチで中間ペッグ６が突設さ
れている。又、精紡機機台には公知の構成の全錘一斉式
の管替装置７が装備されている。

管替装置７はスピンドルピッチと同一ピッチでボビン
把持部が配設されたボビン把持装置８を備えたドッフィ
ングバー９がいわゆるパンタグラフ機構10により昇降動
されるとともに、支軸11を中心にパンタグラフ機構10全
体が揺動可能に構成され、シリンダ12の作動により支持
ブラケット13が支軸11を中心に回動されてパンダグラフ
機構10全体が支軸11を中心に揺動され、ドッフィングバ
ー９が精紡機機台に接近する位置と離間する位置とに移
動配置可能に構成されている。

次に前記のように構成された装置による管替方法を説
明する。精紡機機台の運転中に空ボビンＥが挿入された
ペッグトレイ３がボビン移送装置４上のスピンドル１と
対応する位置に搬入される。精紡機機台の運転が継続さ
れて満管信号が発せられると、管替装置７が作動される
とともにタイマがカウントを開始する。管替装置７の作
動により、第２図（ａ）に示すようにペッグトレイ３上
の空ボビンＥがボビン把持装置８把持されてペッグ3a上
から抜き上げられる。そして、ドッフィングバー９の移
動によりスピンドル１と対応する位置に配置された中間
ペッグ６上に空ボビンＥが挿入される。次いで、ボビン
把持装置８による空ボビンＥの把持が開放された後、第
２図（ｂ）に示すようにボビン把持装置８が満ボビンＦ
の頂部と対応する前方位置まで上昇移動された状態で管
替装置７の作動が一時中断され、管替装置７はその状態
で精紡機機台が停止してラペットが反転されるのを待
つ。

一方、カウント開始からリングレールが１回昇降動す
るのに必要な所定時間経過後、タイマがタイムアップ
し、その後リングレールが所位位置まで降下してリミッ
トスイッチ（図示せず）がONとなると、満管停止動作開
始信号が発信される。この信号に基づき精紡機機台が満
管停止動作に入り、トップバンチ巻、尻糸巻が行われた
後リングレールが所定位置に到達した時点で機台が完全
に停止するとともにラペットが反転される。満管停止動
作開始信号が発信されるのは、管替装置７の作動が開始
されてからリングレールが１回昇降動するのに必要な所
定時間経過後である。従って、精紡機機台が停止するま
でに、管替装置７が空ボビンＥを中間ペッグ６に挿入し
た後、満ボビンＦの引き抜き準備のためドッフィングバ
ー９を最上昇位置に移動する動作が確実に完了し、その
状態で精紡機機台の停止を待つ。

精紡機機台の停止及びラペット反転が完了して玉揚げ
可能な状態となると、待機状態にあった管替装置７が再
起動され、第２図（ｃ）に示すようにボビン把持装置８
が直ちに満ボビンＦの頂部と対応する位置に移動される
とともに、満ボビンＦがボビン把持装置８に把持されて
スピンドル１から抜き取られる。次いでボビン把持装置
８がスピンドルレール２の下方に移動されて第２図
（ｄ）に示すように、満ボビンＦがボビン移送装置４の
ペッグ3aに挿入される。次に再びボイン把持装置８が中
間ペッグ６に挿入された空ボビンＥと対応する位置まで
移動され、第２図（ｅ）に示すように中間ペッグ６から
空ボビンＥが引き抜かれた後、第２図（ｆ）に示すよう
に空ボビンＥがスピンドル１に挿入される。そして、ボ
ビン把持装置８による空ボビンＥの把持解除後、ボビン
把持装置８は上方へ移動された後スピンドル１の真上位
置から後退移動され、第２図（ｇ）に示すように待機位
置に復帰して管替作業が完了する。精紡機機台はボビン
把持装置８が空ボビンＥの把持を解除後、上昇した時点
で直ちに再起動される。

すなわち、管替作業時に精紡機機台１が停止するの
は、満ボビンＦをスピンドル１からボビン移送装置４の
ペッグ3aに移し替える作業と、中間ペッグ６上の空ボビ
ンＥをスピンドル１に挿入するとともにボビン把持装置
８が空ボビンＥの頂部上方へ移動する間となり、満管に
伴う管替作業のために精紡機機台が停止する時間が短縮
される。

なお、本発明は前記実施例に限定されるものではな
く、例えば、タイマの設定時間をリングレールが数回昇
降動できる時間としたり、ボビン移送装置４としてペッ
グトレイ３を使用する装置に代えてスピンドルピッチと
同一ピッチでペッグが突設されたベルトコンベヤを採用
したり、管替装置７としてパンタグラフ機構を支軸11を
中心に揺動可能な構成とする代わりに特公昭51−24008
号公報に開示された装置のようにパンタグラフ機構の駆
動軸を紡機機台の幅方向に往復動させてパンタグラフ機
構全体をスピンドル列に対して接近、離間可能とする構
成を採用してもよい。又、管替方法として本願出願人が
先に提案した（特願昭63−209166号特開昭２−61117号
公報）、スピンドルピッチの1/2の間隔で中間ペッグを
突設したバーをスピンドルレールに沿って往復動可能に
配設し、スピンドルから引き抜かれた満ボビンＦを一旦
前記中間ペッグに挿入し、その状態で中間ペッグから空
ボビンを引き抜いてスピンドルに挿入し、その後満ボビ
ンＦをボビン移送装置に受け渡す方法を採用してもよ
い。又、リング撚糸機に適用してもよい。

［発明の効果］ 以上詳述したように本発明によれば、満管に伴う機台
停止の際、機台が停止してラペットが反転されてスピン
ドルからの満ボビンの引き抜き作業を開始できる状態と
なるまでに、管替装置は空ボビンの中間ペッグへの挿入
を確実に完了するとともに、スピンドルからの満ボビン
の引き抜き作業を開始できる待機状態となるので、従来
と異なり機台が停止した状態で管替装置による空ボビン
の中間ペッグへの挿入完了を待つということがなく、紡
機機台の停止時間を確実に短縮でき機台の稼働効率が向
上する。又、管替装置が満ボビンの抜き取りのための待
機状態となった後、リングレールが昇降動する回数はわ
ずかなため糸切れ修復作業の邪魔になることはほとんど
ない。

【図面の簡単な説明】

第１図は機台停止時の機台及び管替装置の運転状況を示
すダイヤグラム、第２図（ａ）〜（ｇ）は管替作業を示
す概略側面図、第３図は管替装置の側面図、第４図は従
来の管替方法を示すダイヤグラム、第５図は別の従来の
管替方法を示すダイヤグラクである。 スピンドル１、ボビン移送装置４、中間ペッグ６、管替
装置７、ボビン把持装置８、ドッフィングバー９、パン
タグラフ機構10、空ボビンＥ、満ボビンＦ。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】紡機のスピンドル列の下方に移送装置を配
   設し、スピンドル列と移送装置との間にボビン挿入用の
   中間ペッグを所定ピッチで設け、ボビン把持装置を備え
   た全錘一斉式の管替装置により前記中間ペッグを介して
   前記移送装置上に配置された空ボビンとスピンドル上の
   満ボビンとの交換作業を行う紡機の管替方法において、
   紡機運転中に紡機の満管信号で前記管替装置の管替動作
   を開始し、前記満管信号発信から満管停止時におけるバ
   ンチ巻形成のためのリングレールの動作を開始する満管
   停止動作開始信号を発信するまでの時間を、リングレー
   ルの昇降回数が１回より多く数回以下となるように設定
   し、紡機が停止する前に前記管替装置による前記中間ペ
   ッグへの空ボビンの挿入が完了するようにした紡機の管
   替方法。