JP2544851B2 - センタレス研削盤を用いて軸基準で円筒研削を行う方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、円柱体の両端側に中
心軸が突出したワークをセンタレス研削盤を用いて軸基
準で円筒研削を行う方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】図１にこの発明の対象となるワークの一
例を示している。これは小型ステッピングモータの永久
磁石ロータであり、円筒型磁石１の中心に軸（ロータ
軸）２が一体に設けられており、軸２の両端が磁石１の
両側に突出している。このような形態のワークについ
て、中心軸２を基準として円筒型磁石１（以下円柱体と
称す）の外周を研削し、軸２と円柱体１の同軸度を高精
度にする。これがこの発明の対象となる研削加工であ
る。

【０００３】前記のように軸基準で円筒研削を行うに
は、一般的な円筒研削盤を用いる。つまりワークの中心
軸２の両端をチャックで支持して研削する。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】図１のようなワークを
円筒研削盤によって両端チャック支持で研削加工する方
法においては、研削盤に対するワークの取付け、取外し
（ローデング、アンローディング）が面倒だという問題
がある。ローデング、アンローディングを自動化するこ
とも可能であるが、そのための設備が非常に複雑で高価
になるという問題がある。また自動化してもワークチェ
ンジに比較的時間がかかり、多量のワークを高速に処理
するには難点がある。

【０００５】ところで、ワークのローデング、アンロー
ディングが簡単で加工能率もよい研削装置としてセンタ
レス研削盤がある。これはよく知られているように、研
削砥石と調整車との間においてワークレストと称する受
板で下から支持したワークを挟んで外周を研削する。円
筒研削盤のようにワークをチャックにより支持する必要
がなく、ワークを次々と加工位置へ送り込んで排出する
機構も非常に簡単であり、ワークチェンジの時間も非常
に短い。しかしセンタレス研削盤はその名の通り外周基
準で研削するので、図１に示すワークの中心軸２を基準
にして円柱体１の外周を研削し、円柱体１と中心軸２の
同軸度を高くすることはできない。

【０００６】この発明は前述した従来の問題点に鑑みな
されたもので、その目的は、ワークのローディング、ア
ンローディングが簡単で高能率なセンタレス研削盤を用
い、これの通常の用い方と異なる軸基準での円筒研削を
行えるようにすることにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】そこでこの発明では、前
記センタレス研削盤における前記研削砥石と前記調整車
との間にて前記ワークを下から支持するワークレストと
して、前記ワークの中心軸の両端部をＶ溝で支える揺動
ブロックを設け、前記揺動ブロックには前記Ｖ溝の中心
線と前記研削砥石との間隔が一定値以下にならないよう
に揺動量を規制する揺動規制手段を付設し、前記ワーク
の中心軸の両端部分を前記揺動ブロックのＶ溝上に載
せ、前記調整車を前記研削砥石側に徐々に近づけろとと
もに前記ワークを支持した前記揺動ブロックを揺動させ
て前記ワークを前記研削砥石に押しつけ、前記研削砥石
の回転によって前記ワークに加わる下向きの力で前記中
心軸を前記Ｖ溝に押えつける状態で研削を進めるように
した。

【０００８】

【作用】ワークの中心軸の両端部分を前記揺動ブロック
のＶ溝上に載せ、前記調整車を研削砥石側に徐々に近付
けることで、前記ワークは前記調整車に押され、ワーク
を支持した前記揺動ブロックは研削砥石側へと揺動され
る。これによって、前記ワークは前記研削砥石に押しつ
けられて研削される。研削中には前記研削砥石の回転に
より前記ワークには下向きの大きな力が加わり、その力
を前記ワークレストで受け止めることになる。このとき
ワークの前記中心軸がワークレストの前記Ｖ溝に強く押
さえつけられるので、このＶ溝によって前記ワークが軸
基準で位置決めされる。また、前記揺動ブロックが前記
研削砥石から所定の間隔にまで近付くと、前記揺動ブロ
ックはその揺動が規制されて止まり、前記ワークの研削
ができなくなる。これらのことから、前記ワークの円柱
体外周が所定の研削代でもって前記中心軸と高精度に同
軸に仕上げられる。

【０００９】

【実施例】まず図３〜図６に基づいてこの発明を適用す
る際に使用するワークレストの具体的な構成例を説明す
る。図３に示すように、ベースプレート３の上に凹型を
した軸受台４を一体に設けている。この軸受台４に水平
に掛け渡すように軸５が取り付けられており、この軸５
を中心に図４の矢印ア−イのように揺動する揺動ブロッ
ク６が取り付けられている。

【００１０】揺動ブロック６は軸５の上方に細長く構成
されており、その上端部にネジ１０によってＶ溝ブロッ
ク７が取り付けられている。Ｖ溝ブロック７は図６に示
すように、２つの平行な垂壁部７ｃ、７ｄにそれぞれＶ
溝７ａ、７ｂを形成している。Ｖ溝７ａ、７ｂは中心が
揃って形成されており、両者を結ぶ中心線は水平になっ
ている。図１に示すワークの円柱体１を２個の垂壁部７
ｃと７ｄの間に落し込み、両端に突出している中心軸２
をＶ溝７ａと７ｂ上に載せる。またＶ溝ブロック７上に
はスラスト軸受ブロック８が搭載されている。前記のよ
うにＶ溝７ａ、７ｂにワークの中心軸２を載せると、そ
の中心軸２の一端がスラスト軸受ブロック８のスラスト
軸受８ａに当接する位置関係になる。スラスト軸受ブロ
ック８はＶ溝ブロック７に対して軸方向に摺動自在に取
り付けられており、ネジ１１で適宜位置に固定される。

【００１１】図４に示すように、揺動ブロック６は軸５
を中心として矢印ア−イ方向に揺動するが、自由な状態
ではその質量バランスによって矢印ア方向に倒れるよう
になっている。揺動ブロック６を矢印イ方向に回動させ
て起こすことができるが、この方向に対しては軸受台４
に取り付けられた揺動ストッパボルト９が位置規制とな
る。図４のように揺動ブロック６をほぼ垂直に起こした
状態で揺動ブロック６がストッパボルト９に当たり、そ
れ以上矢印イ方向には回動させることができない。スト
ッパボルト９による揺動ブロック６のストップ位置は微
細に調整できるようになっている。

【００１２】以上のように構成されたワークレストを、
図２に示すように、センタレス研削盤における研削砥石
１２と調整車１３との間に配置する。センタレス研削盤
はよく知られた一般的なもので良く、ここでは詳述しな
い。ワークレストにおける揺動ブロック６の揺動中心と
なる軸５を研削砥石１２の回転軸と平行に配置する。す
ると、Ｖ溝ブロック７の２つのＶ溝７ａと７ｂを結ぶ中
心線が研削砥石１２の回転軸と平行になる。また図２に
示すように、研削砥石１２の回転中心と調整車１３の回
転中心を結ぶほぼ水平な線分に対し、２つのＶ溝７ａ、
７ｂの谷線が若干上方に位置する配置関係とする。また
揺動ブロック６は自重により矢印ア方向に回動し、調整
車１３の側へ倒れるようにする。したがって揺動ブロッ
ク６を矢印イ方向に回動させてＶ溝ブロック７を研削砥
石１２側に近付けると、ストッパボルト９によって所定
の位置で揺動ブロック６が止まる。このときＶ溝７ａ、
７ｂの中心線と研削砥石１２との間隔が所定の寸法トな
るようにストッパボルト９を調整しておく。

【００１３】そして図２に示すように、図１のワークの
中心軸２の両端部分をＶ溝７ａ、７ｂの上に載せ、調整
車１３を研削砥石１２側に徐々に近付ける。するとワー
ク円柱体１が研削砥石１２と調整車１３との間に挟まれ
て研削される。周知のように研削砥石１２はワークと接
する部分で下向きに回転するようになっており、これに
よってワークには下方へ向かう大きな力が作用する。こ
の力をＶ溝７ａ、７ｂで受け止めるわけである。ワーク
中心軸２の両端がＶ溝７ａ、７ｂで支持され、しかも下
向きに大きな力が加わっているので、所定の研削代の加
工の終了が近付くにつれてワーク中心軸２がＶ溝７ａ、
７ｂで位置の定まった状態で研削が進行することとな
り、軸基準でワーク円柱体１が研削されたことになる。
したがって円柱体１と中心軸２の同軸度が非常に高くな
る。

【００１４】

【発明の効果】以上詳細に説明したように、この発明で
は、ワークを下から支持するワークレストとして、ワー
ク中心軸の両端部をＶ溝で支える揺動ブロックを設け、
一般的なセンタレス研削盤において軸基準で円筒研削を
行えるようにしたので、ワークのローディング、アンロ
ーディングが容易で高能率の研削が行えるというセンタ
レス研削盤の利点を生かしつつ、通常のセンタレス研削
とは違って軸基準の研削を行うことができる。したがっ
てワーク中心軸の両端をチャックで支持する円筒研削盤
で加工する場合に比べ、ワークのローディング、アンロ
ーディング機構をも含めた装置全体の構成が簡単とな
り、軸基準の円筒研削を能率よく処理することができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の研削加工の対象となるワークの一例
を示す正面図である。

【図２】この発明の方法の一実施形態を示す正面図であ
る。

【図３】この発明を適用するにあたって使用するワーク
レストの一実施例の正面図である。

【図４】同上ワークレストの側面図である。

【図５】同上ワークレストの平面図である。

【図６】同上ワークレストの要部斜視図である。

【符号の説明】

１ ワーク円柱体 ２ ワーク中心軸 ６ 揺動ブロック ７ Ｖ溝ブロック ７ａ，７ｂ Ｖ溝 ９ 揺動ストッパボルト １２ 研削砥石 １３ 調整車

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 円柱体の両端側に中心軸が突出したワー
   クの前記円柱体外周を前記中心軸を基準として研削する
   方法であって、研削砥石と調整車の間にワークを挟んで
   外周を研削するセンタレス研削盤を用い、前記研削砥石
   と前記調整車との間にて前記ワークを下から支持するワ
   ークレストとして、前記ワークの中心軸の両端部をＶ溝
   で支える揺動ブロックを設け、前記揺動ブロックには前
   記Ｖ溝の中心線と前記研削砥石との間隔が一定値以下に
   ならないように揺動量を規制する揺動規制手段を付設
   し、前記ワークの中心軸の両端部分を前記揺動ブロック
   のＶ溝上に載せ、前記調整車を前記研削砥石側に徐々に
   近づけるとともに前記ワークを支持した前記揺動ブロッ
   クを揺動させて前記ワークを前記研削砥石に押しつけ、
   前記研削砥石の回転によって前記ワークに加わる下向き
   の力で前記中心軸を前記Ｖ溝に押えつける状態で研削を
   進めることを特徴とするセンタレス研削盤を用いて軸基
   準で円筒研削を行う方法。