JP2544543B2 - カラ―陰極線管 - Google Patents

カラ―陰極線管

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JP2544543B2
JP2544543B2 JP3138728A JP13872891A JP2544543B2 JP 2544543 B2 JP2544543 B2 JP 2544543B2 JP 3138728 A JP3138728 A JP 3138728A JP 13872891 A JP13872891 A JP 13872891A JP 2544543 B2 JP2544543 B2 JP 2544543B2
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裕 奈須野
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    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J29/00Details of cathode-ray tubes or of electron-beam tubes of the types covered by group H01J31/00
    • H01J29/02Electrodes; Screens; Mounting, supporting, spacing or insulating thereof
    • H01J29/06Screens for shielding; Masks interposed in the electron stream
    • H01J29/07Shadow masks for colour television tubes
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  • Electrodes For Cathode-Ray Tubes (AREA)
  • Vessels, Lead-In Wires, Accessory Apparatuses For Cathode-Ray Tubes (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、地磁気などの外部磁
界による電子ビームの軌道の振れにともなう色ずれなど
の不具合を防止するための磁気遮蔽部材を備えてなるシ
ャドウマスク方式のカラー陰極線管に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】シャドウマスクを内装する3電子ビーム
形のカラー陰極線管においては、地磁気などの外部磁界
の影響を受けて電子ビームの軌道が振れ、このような電
子ビームの軌道の変化にともなって、所望しない蛍光体
を発光させて色ずれなどの好ましくない結果を招くこと
が知られている。このような外部磁界の影響を除去する
ために、従来よりシャドウマスクからファンネルに内壁
に沿って内部磁気遮蔽部材を装着したものが知られてい
る。
【0003】図5は、上記したような従来のカラー陰極
線管の断面図であり、同図において、1は管体で、ネッ
ク1aとファンネル1bとパネル1cとにより構成され
ている。2は電子銃で、上記ネック1a内に配設されて
いる。3は蛍光面で、通常、赤、緑、青により発光する
蛍光体がモザイク状にパネル1cの内面に被着されてい
る。4はシャドウマスクで、上記蛍光面3に対向して配
置されており、図6のように、所定の配列で電子ビーム
9の通過孔6が形成されている。
【0004】5はフレームで、断面L字形の枠材でもっ
て上記蛍光面3の外周をとり囲むような矩形状で、パネ
ル1cのスカート部内に収まる高さに形成されており、
パネル1cのスカート部に対向する側壁辺5aに、シヤ
ドウマスク4の周縁部を溶接などによって固着すること
でシャドウマスク4の周辺を補強している。7はスプリ
ングで、その一端を上記シャドウマスク4の各側壁辺5
aに固定してシャドウマスク構体20を構成している。
上記スプリング7の他端部に形成されている透孔(図示
せず)がパネル1cのスカート部の各辺の内面に植設し
ているピン(図示せず)に嵌合して取り付けられ、シャ
ドウマスク4と蛍光面3とが所定の間隔でもって相対向
するように構成されている。
【0005】8は内部磁気シールドと呼称されている内
部磁気遮蔽部材で、透磁率の大きい薄板によりファンネ
ル1bの形状に沿った角錐台形状に形成され、その前端
の周縁部8aが上記フレーム5の電子銃2側に向いた対
向辺5bに溶接などによって固着されている。9は電子
ビームで、偏向手段(図示せず)によって図5の一点鎖
線で示した範囲内を偏向走査され、シャドウマスク4の
電子ビーム通過孔6を通過した電子ビーム9が蛍光面3
に射突して蛍光体を選択的に発光させる。
【0006】つぎに、上記構成の動作について説明す
る。電子銃2から発射された電子ビーム9は、偏向手段
により図5の一点鎖線で示した範囲内で偏向走査され、
シャドウマスク4の電子ビーム通過孔6を通過した電子
ビーム9が蛍光面3に射突することで、蛍光面3の蛍光
体が選択的に発光される。このとき、カラー陰極線管が
地磁気などの環境磁界内に置かれていると、電子ビーム
9の飛行軌道が曲げられる。このような環境磁界による
影響が内部磁気遮蔽部材8にて排除される。つまり、内
部磁気遮蔽部材8で覆われたカラー陰極線管内では、上
記環境磁界が遮蔽により弱められるので、電子ビーム9
の飛行軌道の曲がりが少なくなり、電子ビーム9の蛍光
面3への入射位置のずれが小さくなって、色ずれの発生
が少なくなる。
【0007】ところで、内部磁気遮蔽部材8による磁気
遮蔽効果をみてみると、カラー陰極線管を東向き(以
下、E方向と称す)もしくは西向き(以下、W方向と称
す)に設置したときは、その内部磁気遮蔽部材8および
フレーム5に磁束が集中することになるため、これらで
囲まれた空間での遮蔽効果は十分に大きい。これに対し
て、カラー陰極線管を北向き(以下、N方向と称す)も
しくは南向き(以下、S方向と称す)に設置したとき
は、内部磁気遮蔽部材8が蛍光面3の方向に大きく開口
しているために、E方向およびW方向に比べて遮蔽効果
が劣る。このように、E−WとN−S方向に対する磁気
遮蔽効果に異方向性が存在しているが、これら両方向に
対する遮蔽効果がほぼ同程度であることが望ましい。角
錐台形状の磁気遮蔽部材8においては、E−WとN−S
方向に対する磁気遮蔽効果を独立して変えることができ
ず、経験的に設計されている。
【0008】特に、蛍光面3が図6のように、上下方向
に細長い蛍光体ストライプの集合からなるタイプのカラ
ー陰極線管にあっては、E−W方向の動作の際の電子ビ
ーム9の環境磁界による曲がりは本来、上下方向であ
り、したがって、色ずれとしては害になりにくいが、図
5に示したような角錐台形状の磁気遮蔽部材8を用いる
と、E−W方向の動作に対して所定の遮蔽効果とは別に
環境磁界の方向が陰極線管で変化する現象があり、磁気
遮蔽部材8を用いない方が良い結果となる場合が多く、
総合的な遮蔽効果の向上が意図どおりにならないのが普
通である。
【0009】なお、環境磁界としての地磁気には、水平
成分と垂直成分とがあり、垂直成分はカラー陰極線管を
N−S−E−Wのいずれの方向に向けて動作させても、
電子ビーム9の軌道に及ぼす影響は一定であり、かつ、
地球上のかなり広い範囲にわたってほぼ一定であるか
ら、当初の設計時にカラー陰極線管の地球上での使用地
域を考慮すれば、色ずれのような不具合な現象は大幅に
軽減できる。したがって、磁気遮蔽部材8の設計にあた
っては、地磁気の水平成分の遮蔽性能を考慮した設計が
重要である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従来のカラー陰極線管
は、以上のように構成されているので、磁気遮蔽部材に
よる遮蔽効果が不十分であるのに加えて、E−W方向と
N−S方向の動作に対する遮蔽効果を独立的に変更する
ことができないという問題があり、また、設計も経験的
であって、手間のかかるものであった。
【0011】この発明は上記のような実情に鑑みてなさ
れたもので、磁性体の形状異方性を有効に利用すること
で、一方向の外部磁界に対してのみミスランディング量
を効率的に減少することができ、また、設計も容易にす
ることができるカラー陰極線管を提供することを目的と
する。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明に係るカラー陰
極線管は、一端が上記フレームに固定され他端が上記電
子銃の方向に向かって他の高透磁率部材に磁気的に触れ
ずに延びてそれ自身が形づくる先端部を有する磁気遮蔽
部材を具備し、上記磁気遮蔽部材は、高透磁率で、その
長さと厚さの比が5:1以上で、かつ、長さと幅の比が
2:1以上の細長い磁性体から構成されていることを特
徴とする。
【0013】
【0014】また、上記磁気遮蔽部材がフレームの側壁
辺に対して傾斜角をもっているとともに、途中に曲げ部
をもたない短冊型に形成されていてもよい。
【0015】さらに、上記磁気遮蔽部材を複数個設け、
それらの先端部を非磁性接続部材で接続し補強すること
が好ましい。
【0016】
【作用】この発明によれば、細長い高透磁率材からなる
磁気遮蔽部材の一端が電子銃の方向に向かって延ばされ
ており、その先に磁気的にどこにも接続されていない先
端部が形成されているので、その先端部の形状効果によ
って特定の方向にのみ磁化されやすくなり、したがっ
て、特定方向の外部環境磁界の影響を、他の方向に影響
がでない状態で、効率的に除去することができる。ま
た、磁気遮蔽部材の長さ、厚さおよび幅を、長さと厚さ
の比が5:1以上で、かつ、長さと幅の比が2:1以上
となるように相互に関連づけて構成することにより、形
状効果を十分に発揮させることができる。
【0017】
【0018】また、磁気遮蔽部材をフレームの側壁辺に
対して傾斜角のあるように取り付けるとともに、途中に
曲げ部をもたない短冊型に形成することにより、狭い陰
極線管内で有効に形状効果を利用することが可能であ
る。
【0019】さらに、複数個の磁気遮蔽部材の先端部を
非磁性接続部材で接続することにより、各先端部の機械
的強度を増強して、衝撃や製造工程中の他物との接触で
振動したり、変形したりすることの不都合を防止するこ
とができる。
【0020】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面にもとづい
て説明する。図1はこの発明の一実施例によるカラー陰
極線管の要部の斜視図である。同図において、4は20
インチのカラー陰極線管のシャドウマスク、5はフレー
ム、10は磁気遮蔽部材であり、シャドウマスク4は、
全体としてほぼ長方形をなしている。管軸、すなわち、
シャドウマスク4の中央に立てた法線の方向をZ軸と
し、これに直交し、かつ互いに直交する方向で長方形の
シャドウマスク4の長辺方向をX方向とし、短辺方向を
Y方向と定めるとき、シャドウマスク4は、図6にも示
したように、多数の細長い電子ビーム通過孔6をその長
手方向がY方向に実質的に平行になるように設けられて
いる。なお、その他の構成部材としては図5に示すもの
と同一であるため、以下の説明において、該当する構成
部材の説明にあたっては図5で示した符号を使用する。
【0021】上記磁気遮蔽部材10は、L字形の磁性体
から構成されており、このL字形磁性体からなる磁気遮
蔽部材10は厚みtが0.1cm、幅bが1cm、長さ
lが10cmの純鉄製の板であり、上記シャドウマスク
4のフレーム5の2つの長側壁辺5cにそれぞれ17
本、計34本がそれぞれの辺ごとに等しい間隔a=1c
mで配置されている。なお、図1には磁気遮蔽部材10
の一部のみを表し、他は省略している。この磁気遮蔽部
材10の上記フレーム5の長側壁辺5cに固定されてい
ない部分は、図1に示されていないファンネル1bに沿
って若干のY方向成分を有しながら、主としてZ方向に
延びて、その先が磁気的に他の高透磁部材につながらな
い先端部10aを形成している。この先端部10aに近
い部分は、それ自身の全長の約(1/4)がY=0の方
向に折り曲げられており、主としてY方向の成分のみを
有する方向に延在し折り曲げ部10bを構成している。
【0022】つぎに、上記構成の動作のうち、磁気遮蔽
部材10の作用について説明する。いま、カラー陰極線
管がNもしくはS向きに配置されて動作されている状況
を考察すると、つまり、Z方向から外部磁界が印加され
ているとすると、磁気遮蔽部材10は、図11(c)の
ように、L字形に沿って磁化されY方向の誘導磁界を生
じて、Y方向磁界を強める作用をする。さらに、L字形
磁性体からなる磁気遮蔽部材10で囲まれた領域におい
ては、誘導磁界が外部磁界と逆方向であるため、遮蔽効
果を発揮しZ方向磁界を弱める作用もする。
【0023】以下、上記のようすを、実験結果をまじえ
て少し詳しく説明する。図6において、ストライプ状の
蛍光面3は、青色蛍光体列B、赤色蛍光体列Rおよび緑
色蛍光体列Gからなり、シャドウマスク4に形成されて
いる電子ビーム通過孔6は一組の蛍光体列B,R,Gに
それぞれ対応しており、電子銃2から発射された電子ビ
ーム9はシャドウマスク4の通過孔6を通って、対応す
る蛍光体列B,RまたはGに射突し所望の色を発光させ
る。
【0024】ところが、このようなストライプ状の蛍光
面3を有するカラー陰極線管においては、各電子ビーム
9が地磁気などの外部磁界の影響を受けて、Y方向に移
動しても、同色の蛍光体列に必ず射突するために、色純
度の低下を招くことがない。しかし、地磁気などの外部
磁界の影響により電子ビーム9が蛍光面3上をX方向に
移動するローレンツ力を受ける場合は、対応する蛍光体
列から外れたり、あるいは他の蛍光体列にまたがって射
突されることがあり、こうなると、色ずれを生じる。こ
こで、磁束密度Bの磁界中を、速度Vで電子が運動する
ときに電子に加わるローレンツ力Fは、 F=e(V×B)………………(1) で表される。蛍光体列に垂直な方向、すなわち、X方向
のローレンツ力Fxは、 Fx=Vy・Bz−Vz・By………………(2) で表される。ここで、Vy,Vzはそれぞれ電子のY方
向,Z方向の速度成分、By,BzはそれぞれY方向,
Z方向の磁束密度値であり、Fxを零に近づければX方
向、すなわち、左右方向への電子ビーム9の移動量が小
さくなり、色ずれを生じない。
【0025】図8の白ぬきの○、△、▽は、図7に示す
20インチ型カラー陰極線管のフレーム5とシャドウマ
スク4だけを取り出し、Z方向から1.0Oe(エルス
テッド)の環境磁界に相当する磁界を印加して、管内の
磁束密度のX,Y,Zの各成分Bx,By,Bzを測定
した値を示す。その測定は、偏向中心を出発して画面コ
ーナ部に入射する電子ビーム9の軌道に沿ってZを位置
変数として行なっている。ここで、偏向中心とは、図5
において、電子銃2から発射された電子ビーム9が偏向
ヨーク(図示せず)の磁界によって蛍光面3の各点に向
かって発散していく発散中心に相当する点であり、この
点をZ=0と定めている。なお、環境磁界としての地磁
気は、通常0.5Oe程度であるけれども、実験精度を
上げるために意図的に大きい値に設定している。
【0026】図8において、偏向中心(Z=0)から2
00mmまでの間では、Z方向から印加した磁界のBz
成分が主であるが、シャドウマスク4に近づくにつれて
Bz成分が減少し、ByおよびBx成分も生じ磁界分布
が変化するが、全体的には、Bz≫Byで、上記した
(2)式から分かるように、X方向のローレンツ力が大
きく働く。このような磁界分布中を飛行する電子ビーム
9の軌道計算から、蛍光面3のコーナ部でのミスライデ
ィング量は147μmで完全に色ずれを生じる値とな
る。Fxのローレンツ力を小さくするには、上記(2)
式から分かるようにBz≒Byとなるような磁界分布に
すればよい。すなわち、Bz成分を減少させるととも
に、By成分を増加させればよい。
【0027】ところで、強磁性体を外部磁界によって磁
化する場合、その磁化状態は強磁性体の形状に大きく依
存する。たとえば、図9(a)ないし(d)は、長さ
l、幅bの板状磁性体の長手方向から、θ=60°の角
度で外部磁界Heを印加した場合の磁化Mの分布を積分
方程式法により解析し、その結果をベクトルで表したも
のである。同図(a)のように、(l/b)=1の正方
形の場合には、外部磁界Heと磁化Mの方向が一致して
いるが、(l/b)の値が同図(b),(c),(d)
のように大きくなるにしたがって、磁化Mの方向が長さ
方向に変移していることが分かる。
【0028】図10(a),(b),(c)は、(l/
b)=10の板状磁性体に、その長手方向からθ=0
°,30°,60°の角度で外部磁界Heを印加した場
合の磁化Mの分布を積分方程式法により解析し、その結
果をベクトルで表したものである。同図から分かるよう
に、磁性体形状が細長い場合は、印加する外部磁界He
の方向によらず、磁化Mは長手方向に向いている。これ
は、磁性体の磁化における形状効果と呼ばれるものであ
る。ここで、任意の形状の磁性体の見掛けの透磁率μ
と反磁界係数N、磁性材料の透磁率μとの間には、次式
が成立する。
【0029】
【数1】
【0030】細長い板状磁性体の長さ方向に対する反磁
界係数Nlと幅方向に対する反磁界係数Nbとの間に
は、Nl≪Nbの関係があるので、長さ方向の見掛けの
透磁率μlと幅方向の見掛けの透磁率μbとの関係
は、μl≫μbとなり、板状磁性体の長さ方向が容
易磁化方向となる。また、磁性材料が純鉄の場合、磁界
が長手方向に垂直でない限り、(l/b)=3程度で、
すでに磁化方向が相当に長手方向に偏る傾向があらわ
れ、(l/b)>20の関係を満足するような十分に細
長い板状磁性体では、平均的な磁化方向は実質的に長手
方向のみになる
【0031】図11(a)は、厚み0.1cm、幅1c
m、長さ10cmの細長い板状磁性体の長手方向に外部
磁界を印加した場合、磁化Mは長手方向を向き、先端部
より誘導磁界が放出される。その誘導磁界は板状磁性体
の左側部のみ図示し、右側部は図示していない。図11
(b),(c)は、上記と同様な厚み、幅、長さの細長
い板状磁性体をその厚さ方向に曲げて、ほぼL字形に形
成したものであり、このようなL字形の長手方向に外部
磁界を印加すると、厚さに対し長さが十分に大きいの
で、形状効果により、矢印で示すように長手方向に沿っ
て磁化Mし、L字形磁性体の先端部を中心として誘導磁
界を発生する。特に、図11(c)に示すように、ほぼ
直角に折り曲げたL字形磁性体では、誘導磁界のベクト
ル図で示されるように、Y方向、すなわち、上下方向を
中心として放射状に誘導磁界を発生する。つまり、細長
い磁性体を外部磁界によって磁化する場合、その形状に
したがって磁化し、誘導磁界を放出するので、磁界分布
の制御が可能である。
【0032】
【数2】 図1に示すL字形磁性体からなる磁気遮蔽部材10を有
する場合において、Z方向から1.0Oe(エルステッ
ド)の環境磁界に相当する外部磁界を印加した場合の偏
向中心から蛍光面3までの管内の磁束密度のX,Y,Z
の各成分Bx,By,Bzを測定した値を示しており、
L字形磁性体からなる磁気遮蔽部材10を取り付けた場
合、Bzが減少し、ByはZ=0〜200mmの範囲で
増加し、磁界分布が変化していることが分かる。この磁
界分布中を飛行する電子ビーム9の軌道を計算し、コー
ナ部でのミスランディング量を求めると、77μmとな
り、磁気遮蔽部材10を取り付けていない場合にくらべ
て、ミスランディング量が格段に減少している。磁気遮
蔽部材10の寸法条件によって誘導磁界の大きさを制御
でき、さらに、フレーム5に取り付ける際の配置および
設置数によっても、磁界分布を制御でき、Z方向の磁界
に対するミスライディング量を最小にする最適設計が可
能となる。
【0033】一方、図12は、図1に示すものにおい
て、X方向から1.0Oeの外部磁界を印加した場合の
磁界分布の測定結果を示し、磁気遮蔽部材10を取り付
けても、磁界分布にそれほどの変化がないことが分か
る。これは、上述した形状効果により、磁気遮蔽部材1
0の幅方向に外部磁界を印加しても磁化しないこと、お
よび磁気遮蔽部材10同士に間隔aが存在して、X方向
の磁界に対して大きな磁気抵抗を有し磁気回路を形成し
ないためである。
【0034】図5に示すカラー陰極線管に内部磁気遮蔽
部材8が取り付けられていなければ、フレミングの法則
から明らかなように、X方向の磁界による電子ビーム9
の曲がりは主としてY方向であって、これは図6に示す
ように、蛍光面3がY方向に細長い蛍光体ストライプ構
造からなっていれば色ずれの害を生じない。しかし、こ
の状態では、Z方向の磁界に対して無防備であり、いち
じるしい色ずれを生じやすく、これを防ぐ意味で内部磁
気遮蔽部材8が取り付けられていた。この内部磁気遮蔽
部材8はX方向の磁界に対しても、ある程度の磁気遮蔽
効果があるものの、管内の磁界の方向を変化させる効果
もあるため、結果として、X方向の磁界に対しては、内
部磁気遮蔽部材8を取り付けない方がよい場合が多く、
Z方向およびX方向の両磁界の色ずれに対する影響を同
時に減少させることは困難である。
【0035】これに対し、上記実施例に示したように、
L字形磁性体からなる磁気遮蔽部材10を十分に細長く
し、かつ、間隔aを置いて配置することで、形状効果に
よりX方向の環境磁界に対してはほとんど影響を与え
ず、Z方向の環境磁界の遮蔽効果を発揮させることがで
きる。また、図1に示したように、磁気遮蔽部材10の
先端部10aを、Y=0の方向に曲げて折り曲げ部10
bを構成しているため、図11に示したように、Bzを
Byに変換する効果によって、Z方向の環境磁界の影響
を一層効果的に除去することができる。
【0036】なお、図5に示した従来の内部磁気遮蔽部
材8においても、その入口側端部を管軸の方向に曲げる
ことで、特定の方向の環境磁界の影響を除去しようとし
たものが存在するが、その場合は、特定の方向である程
度の効果があるものの、別の方向の環境磁界の影響につ
いては、それを悪化させる傾向となることを避けがた
い。この点についても、図1に示す磁気遮蔽部材10は
改善することができる。
【0037】つぎに、上記の磁気遮蔽部材10の設計定
数の選択の範囲について説明する。この磁気遮蔽部材1
0は、シャドウマスク4の周辺に配置され、その一端が
フレーム5に固定され、他端が先端部10aを形成して
いる細長い磁性体からなり、その先端部10aを電子銃
2側に向けていることが重要であり、図9に関連して説
明した形状効果を発揮させる上で、長さlと幅bとの比
が、少なくとも2:1以上、望ましくは、3:1以上の
細長さが必要である。また、そのような形状効果は、1
つの磁気遮蔽部材10による効果であるから、フレーム
5の一つの辺あるいはコーナ部の近くに複数個の磁気遮
蔽部材10を必ず取り付けねばならないものでないが、
一般的には、蛍光面3の広い範囲にわたって遮蔽効果が
必要であることから、フレーム5の一つの辺あるいはコ
ーナ部の近くに複数個の磁気遮蔽部材10を並べて設け
られる。このときの隣接する磁気遮蔽部材10の間隔a
は、フレーム5の側壁辺の表面に垂直な方向の厚み、す
なわち、図1におけるtよりも相当に大きい必要があ
り、一般的に、(a/t)≧3位が適当である。
【0038】さらに、図1の実施例では、BzをByに
変換する効果が現れている。この効果は、磁気遮蔽部材
10がZ方向に延在していることに加えて、その先端部
10aをY=0の方向に曲げて折り曲げ部10bを構成
しているので、変換効果が特に大きく現れる。これも一
種の形状効果であるが、この効果を十分にするために
は、図11で説明したように、磁気遮蔽部材10の長さ
が厚さに対して十分に大きいことが必要である。すなわ
ち、図1に示す実施例において、長さlと厚さtとの間
に、少なくとも(l/t)≧5、望ましくは、(l/
t)≧10とすることが必要である。
【0039】図2は、この発明の他の実施例によるカラ
ー陰極線管の要部の斜視図であり、同図において、図1
に示す実施例と同一の個所には同一の符号を付して、そ
れらの説明を省略する。この実施例において、図1の実
施例と相違する点は、磁気遮蔽部材10に共通の張出部
11を設け、その先に先端部10aを形成した点であ
り、このような磁気遮蔽部材10を用いることで、形状
効果に加えて、先端部10aの機械的な強度を大きくす
ることが可能である。この場合も、(l/t)≧5、
(l/b)≧2で、かつ、(a/t)≧3位が適当であ
る。
【0040】図3は、この発明の別の実施例によるカラ
ー陰極線管の要部の斜視図であり、同図において、図2
に示す実施例と同一の個所には同一の符号を付して、そ
れらの説明を省略する。この実施例において、図2の実
施例と相違する点は、磁気遮蔽部材10がフレーム5の
長辺側壁5cに対して傾斜角θを有していることと、途
中に折り曲げ部10bを有していない短冊状に形成され
ていることである。以下、これを短冊型磁気遮蔽部材1
0と称する。
【0041】図3の実施例によれば、図11の(b)や
(c)で説明したような曲がりによる形状効果は発揮さ
れないが、フレーム5の長辺側壁5cに対して傾斜角θ
を有していることにより、形状効果とほぼ類似の効果
と、短冊型磁気遮蔽部材10が先端部10aを備えてい
ることによる図10で説明したような形状効果とによ
り、カラー陰極線管の狭い内部で有効にその形状効果を
利用することができる。この場合も、(l/t)≧5、
(l/b)≧2で、かつ、(a/t)≧3位が適当であ
る。
【0042】図4は、この発明のさらに別の実施例によ
るカラー陰極線管の要部の斜視図であり、同図におい
て、図2に示す実施例と同一の個所には同一の符号を付
して、それらの説明を省略する。この実施例において、
図2の実施例と相違する点は、磁気遮蔽部材10の各先
端部10aを非磁性接続部材12で接続して、機械的に
補強したものであり、この実施例によれば、僅かな衝撃
あるいは製造工程中の他物との接触で磁気遮蔽部材10
の先端部10aが振動したり、折れ曲がることを防止し
て、所定の効果を確実に保持することができる。
【0043】以上説明した実施例では、磁気遮蔽部材1
0をフレーム5の長側壁辺5cに取り付けたもので示し
たが、図1に示すフレーム5の短側壁辺5dに取り付け
てもよい。また、複数個の磁気遮蔽部材10の形状とし
ては、すべてが同一のものであっても、上述の設計条件
を満足していれば、隣り同士の形状を異にしてもよく、
特に、フレーム5のコーナ部付近では、フレーム5自身
の影響も含めて磁束の向きが複雑に変化することが多
く、これを打ち消したり、利用したりするために、磁気
遮蔽部材10の形状を個々に細かく変化させることが有
利な場合もある。さらに、蛍光面3の構造としては、図
6に示すようなストライプ状のものに限らず、ドットタ
イプのものに適用することも可能である。
【0044】また、上記した各実施例において、フレー
ム5はシャドウマスク4の保持と補強のために、一般に
シャドウマスク4よりも厚手の材料で作製されるが、小
型のカラー陰極線管にあっては、シャドウマスク4を構
成する板材自身を折り曲げるなどして、実質的なフレー
ムとしての保持や補強の機能をもたせることができる。
このようなシャドウマスク4を構成する板材の折り曲げ
により形成されるフレーム相当個所に磁気遮蔽部材10
を取り付けるように実施してもよい。
【0045】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、細長
い高透磁率の磁性体の一端をフレームに固定し、他端を
電子銃側に向けて、その先に磁気的な先端部を形成した
磁気遮蔽部材を備えているので、磁気遮蔽部材の先端部
の形状効果によって特定の方向にのみ磁化されやすくな
り、したがって、地磁気など特定方向の外部環境磁界の
影響を、他の方向に影響がでない状態で、効率的に除去
することができ、色ずれなどの発生を十分に抑制し、カ
ラー陰極線管の性能を著しく高めることができる。ま
た、E−W方向とN−S方向の動作に対する遮蔽効果を
独立的に変更すること可能であり、さらに、設計も容易
となり、高性能のカラー陰極線管を低コストに提供する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例によるカラー陰極線管の要
部の斜視図である。
【図2】この発明の他の実施例によるカラー陰極線管の
要部の斜視図である。
【図3】この発明の別の実施例によるカラー陰極線管の
要部の斜視図である。
【図4】この発明のさらに別の実施例によるカラー陰極
線管の要部の斜視図である。
【図5】従来のカラー陰極線管の断面図である。
【図6】蛍光面部分の拡大斜視図である。
【図7】磁気遮蔽部材を持たないカラー陰極線管の要部
の斜視図である。
【図8】この発明の効果を説明するための磁束密度分布
を示す測定値グラフを示す図である。
【図9】この発明の原理である磁性体の磁化の形状効果
を説明するための図である。
【図10】板状磁性体に、その長手方向から異なる角度
で外部磁界を印加した場合の磁化の分布を積分方程式法
により解析した結果をベクトルで表した説明図である。
【図11】細長い板状磁性体の長手方向に外部磁界を印
加した場合の磁化の方向および誘導磁界の放出状況を示
す説明図である。
【図12】この発明による磁気遮蔽部材が特定の方向の
磁界に対して、これを乱すことのないことを示すための
測定値グラフを示す図である。
【符号の説明】
1a ネック 1b ファンネル 1c パネル 2 電子銃 3 蛍光面 4 シャドウマスク 5 フレーム 10 磁気遮蔽部材(L字型磁性体、短冊型磁性体) 10a 先端部 10b 折り曲げ部 11 共通張出部 12 非磁性接続部材

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ファンネルと、パネルの内面に設けられ
    た蛍光面と、この蛍光面に対向して配置され電子ビーム
    通過孔を有するシャドウマスクと、このシャドウマスク
    の周辺を補強するとともにこのシャドウマスクを上記パ
    ネルの内面の所定位置に保持するフレームと、上記シャ
    ドウマスクを間に挟んで上記蛍光面に対向して配置され
    た電子銃と、一端が上記フレームに固定され他端が上記
    電子銃の方向に向かって他の高透磁率部材に磁気的に
    れずに延びてそれ自身が形づくる先端部を有する磁気遮
    蔽部材とを具備し 上記磁気遮蔽部材は高透磁率であって、その長さと厚さ
    の比が5:1以上で、かつ、長さと幅の比が2:1以上
    の細長い磁性体から構成されている ことを特徴とするカ
    ラー陰極線管。
  2. 【請求項2】 上記磁気遮蔽部材がフレームの側壁辺に
    対して傾斜角をもっているとともに、途中に曲げ部をも
    たない短冊型に形成されている請求項1のカラー陰極線
    管。
  3. 【請求項3】 上記磁気遮蔽部材が複数個設けられ、そ
    れらの先端部を非磁性接続部材で接続し補強している請
    求項1のカラー陰極線管。
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