JP2541822B2 - 溶接強度および靭性に優れた析出硬化型ステンレス鋼 - Google Patents

溶接強度および靭性に優れた析出硬化型ステンレス鋼

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JP2541822B2
JP2541822B2 JP62165923A JP16592387A JP2541822B2 JP 2541822 B2 JP2541822 B2 JP 2541822B2 JP 62165923 A JP62165923 A JP 62165923A JP 16592387 A JP16592387 A JP 16592387A JP 2541822 B2 JP2541822 B2 JP 2541822B2
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    • C21D8/02Modifying the physical properties by deformation combined with, or followed by, heat treatment during manufacturing of plates or strips
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は,溶接強度および靭性に優れた析出硬化型ス
テンレス鋼に係り,例えばOA機器のプリンターヘッド移
動用ベルト,帯鋸,動力伝達機構部品や搬送部材として
好適に適用できるステンレス鋼に関する。かようなベル
ト材料は通常は溶接接続にてエンドレス化されるもので
あるが,本発明鋼はかような溶接部の強度と靭性に優れ
た析出硬化型ステレンス鋼である。
〔発明の背景と従来技術の問題点〕
高強度ステンレス鋼としては,高温のオーステナイト
状態より急冷してマルテンサイト変態させることによっ
て硬化されるマルテンサイト系ステンレス鋼(代表的に
はSUS420J2や440A,B,C),冷間加工によって高強度を得
る加工硬化型オーステナイト系ステンレス鋼(代表的に
はSUS301や304)および冷間加工後時効処理を施して高
強度を得る析出硬化型ステンレス鋼(代表的にはSUS63
1)がある。
しかし,これらの鋼は前述の用途のように溶接接続す
る場合には,それぞれ以下のような問題が付随する。
例えば,マルテンサイト系ステンレス鋼では,溶接時
に割れを生じたり,溶接後は後熱処理を施さないと溶接
部の靭性が著しく低下する。また,スチールベルト等の
鋼帯を製造する場合には,マルテンサイト変態のための
熱処理(焼入れ処理)によって鋼帯が変形しやすいの
で,平坦性と寸法精度の要求が極めて厳格なプリンター
ヘッド移動用ベルト,帯鋸,動力伝達機構部品ベルトな
どを得ることはそのままでは困難である。
一方,加工硬化型のSUS301,304および析出硬化型のSU
S631等は,強度レベルは冷間加工量によって種々のもの
が得られ,強度の高いものでは180〜200kg/mm2前後のも
のが得られるが,これらは溶接を施すことによって溶接
部が著しく強度低下するという共通の問題がある。した
がって,これらの鋼は,溶接継手部を有しながら高強度
と疲労強度が要求される用途,例えばCVT用ベルト等で
は使用できない。これらの鋼をかような用途に使用しよ
うとすれば,溶接接続後にその溶接部をもったまま冷間
加工を施す必要がある。しかし,例えばエンドレスベル
トなどのような無端ベルトをさらに冷間加工するには作
業が煩雑とならざるを得ず効率が悪く,高価なものとな
らざるを得ない。
このようなことから,特に溶接接続を余儀無くされ且
つ高強度が要求される用途向きには,低炭素マルテンサ
イト系鋼で且つ析出硬化を伴う材料が適しており,ステ
ンレス鋼では従来より例えばSUS630やPH13−8Mo鋼が使
用されている。
しかし,これらの鋼の溶接継手強度は,いずれも時効
処理後において高々150kg/mm2前後の強度レベルであ
る。したがって,一層の高強度を必要とされる用途には
使用できない。ステンレス鋼以外では18Ni系マルエージ
ング鋼があり,母材強度が210kg級のものでは,その溶
接継手の強度も180kg/mm2以上のものが得られる。だが,
18Niマルエーシング鋼は高価であるとともに,ステンレ
ス鋼に比べて著しく耐食性に劣るという問題がある。従
って,溶接部の強度と靭性はもとより耐食性が要求され
るような用途向き例えばCVTやダイシングソウ等のエン
ドレスベルト素材としては不向きである。
〔発明の目的〕
本発明は,前述のような従来材では得られなかった耐
食性と溶接継手強度並びに靭性を兼ね備えた高強度ステ
ンレス鋼の提供を目的としたものである。より具体的に
は,析出硬化型のマルテンサイト系ステンレス鋼におい
て,従来のこの種の鋼では達成できなかった溶接継手強
度180kg/mm2以上を達成することを目的としたものであ
る。そして,この高度な溶接継手強度並びに靭性と共に
スチールベルトとして要求されるその他の諸特性を合わ
せて具備する鋼の開発を目的としたものである。
〔発明の構成〕
前記の目的を達成せんとする本発明のステンレス鋼
は,重量%で,C:0.03%以下,Si:0.2〜2.0%,Mn:0.5%以
下,Ni:8.0超え〜10.0%,Cr:7.5〜12.0%,Mo:1.0〜5.0
%,Co:3.0〜8.0%,Ti:0.3〜1.0%,Al:0.035%以下,S:0.
004%以下,N:0.010%以下,O:0.007%以下,場合によっ
てはさらにB:0.01%以下,ただし,この化学成分範囲に
おいて, Ar=Ni+0.5Mn+30(C+N) −1.3Cr−1.5Si−1.5Mo+0.3Co+11.8 の式で表されるAr値が0以上となる関係を満足し,そし
て, Siが1.5%以上の場合には Si+Mo+2×Ti≦7.0% の関係を満足し, 残部がFeおよび不可避的に混入する不純物からなる溶
接強度および靭性に優れた析出硬化型ステンレス鋼であ
る。
本発明鋼は,溶体化処理後の組織が実質的にマルテン
サイト組織であり,後記の実施例で実証するように,溶
接部の時効処理後の平滑引張強度が180kg/mm2以上でか
つ溶接部の時効処理後の切欠引張強度が該平滑引張強度
と同等以上の強度を有する。また,溶体化処理後におい
て冷延率20%〜60%の冷間圧延を施した冷延材の時効処
理後の引張強度が200kg/mm2以上を有し,かつ該冷延材
の時効処理の切欠引張強度は該引張強度と同等以上を示
す。
したがって,本発明によると,本発明鋼の鋼板の両端
を溶接接続することによってエンドレス化したベルト
は,従来の析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼で
は得られなかったような溶接継手強度と靭性を具備し,
また,Niマルエージング鋼では得られなかった耐食性を
具備するものである。なお,このエンドレスベルトを製
造するには,溶体化処理後に冷延率20%〜60%で冷間圧
延して得た冷延鋼板を,その両端を溶接接続し,この溶
接後にベルト全体を時効処理する方法に従えばよい。ま
た形状が大きなもの等では,該冷延鋼板を時効処理した
あと溶接接続したうえ,その溶接部を時効処理を施して
もよいし,溶接部をさらに加工してから時効処理しても
よい。
以下に本発明の内容を具体的に説明する。
〔発明の詳述〕
本発明の主目的である溶接継手強度180kg/mm2以上を
達成し得る従来鋼としては,既述のように210kg級以上
の18Niマルエージング鋼がある。しかし,この従来鋼は
Crを含有していないことから耐食性が著しく劣るととも
に高価なNi,Mo,Coを多量に含有するために著しく高価な
材料となっている。そこで,本発明者等は,析出硬化型
マルテンサイト系ステンレス鋼において,従来では達成
できなかった溶接継手強度180kg/mm2以上を確保できる
ような成分系を見出すべく種々の試験研究を重ねた。そ
の結果,従来の210kg級18Niマルエージング鋼ほどのNi,
Mo,Coを含まなくても,特定の成分調整を行って適切に
製造するならば,薄板の領域では目標となる180kg/mm2
以上の溶接継手強度を得ることが可能であることを知見
した。
すなわち,種々の実験の過程で,従来の210kg級18Ni
マルエージング鋼のNi,Mo,Coを減少させた場合には,高
強度を得るためには一方の強化元素であるTi量を増加さ
せると200kg/mm2前後の強度は保ち得るものの,靭性が
低下し,特に溶接部での切欠靭性の低下が起こることを
知った。しかし,若干のSiを添加するならば210kg級マ
ルエージング鋼と同程度以下のTi量0.6%でも十分な強
度を有し,しかも,溶接継手部の強度が180kg/mm2以上
でかつ切欠靭性も優れるものを得ることが可能であるこ
とがわかった。
このSi添加の作用効果は時効処理温度領域でのTi,Mo
の固溶限を低下させることによりもたらされるものと考
えられる。すなわち,Siの添加によって,少ないTiおよ
びMo量で高強度を得ることができるのであるが,従来鋼
にあっては析出硬化に寄与していた金属間化合物Ni3Ti
は粒界析出しやすいために高強度でかつ靭性を保ち得る
為には高いNi,Mo,Coを含有していることが必須条件であ
ったのに対し,Siを添加すると金属間化合物の形態がNi
16Ti6Si7のG相に変化し,しかもこの金属間化合物は粒
界析出しにくいために,少ないNi,Mo,Co量でも十分な強
度と靭性を有し,特に溶接部の強度と靭性を保ち得るこ
とになることがわかった。
また,従来より,Alは脱酸材として有効に働くために
この種の鋼に活用されていたが,その含有量が著しく靭
性に影響を及ぼしていることを知った。たとえば,18Ni
系マルエージング鋼等ではAlの含有量は0.1%前後で特
に注目されておらず,さらに,SUS631に見られるように
強化元素として活用されている例さえもある。ところ
が,マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の高強度
化高靭性化にこのAlが非常な悪影響を及ぼしていること
がわかった。本発明では前記のような理由から強化元素
としてSiを活用するものであるが,このSiによる脱酸も
合わせて出来るのでAl添加による脱酸が少なくても酸化
物系の介在物による靭性低下を回避することができ,低
Al含有鋼とすることができる。
なお,本発明鋼ではNi,Mo,Co含有量を210kg級18Niマ
ルエージング鋼よりも低減させることが出来たので,Cr
を耐食性に必要な量で添加しても,溶体化処理後におい
て実質的にマルテンサイト組織を呈し且つ溶接部へのδ
フェライト相の析出が微量となるような鋼とすることが
でき,これによって時効処理後の強度と靭性は溶接部で
あっても180kg/mm2以上を確保することができ,十分な
耐食性と溶接継手強度とを兼ね備えたステンレス鋼とす
ることができる。
本発明において,鋼中の各元素の含有量範囲の上下限
を限定した理由の概要を説明すると,以下のとおりであ
る。
Cは,マルテンサイト地の強度を上げるのに有効な元
素であるが,C量が0.03%を越えるような量となると,強
化元素として含有させているTiなどの炭化物を形成しや
すくなり,切欠靭性を低下させる。そして,かようなTi
Cの析出により析出硬化に寄与する有効Ti量が減少し,
それに見合った多量のTiを添加する必要が生じ,これに
伴って靭性低下の要因となる。さらにTiCが多量に生成
していると,これが溶接時に分解固溶し,溶接継手部に
残留オーステナイトを存在させるようになり,溶接継手
強度の低下をもたらす。このような理由からCは0.03%
以下とした。
Siは,本発明の目的を達成する上で主要な元素であ
る。既述のように本発明ではSiを添加することにより従
来の18Ni系マルエージング鋼にくらべ,少ないMo,Ti,Co
量で高強度を得ることを可能にしたものである。このた
めには少なくても0.2%以上のSiを必要とする。しかしS
iを多量に添加すると溶接部へのδフェライトの増加に
よる溶接強度の低下をもたらし,さらに高強度の場合に
靭性の低下をもたらす。このためSiの上限は2.0%に限
定する。
Mnは,MnSやMnO等の非金属介在物を形成しやすく靭性
低下の要因となりやすいが,本発明鋼のごとくS,Oを低
くしたものでは特に低減化する必要はなく上限を0.5%
とした。
Sは本発明鋼では0.007%前後でもかなり優れた特性
を示すが,非金属介在物を形成しやすい元素であり,よ
り優れた特性を得るためには低い程好ましい。本発明鋼
ではSは0.004%まで許容しても十分な目的が達成でき
る。
Niは,析出硬化元素として作用するが,本発明鋼では
Siの添加により,金属間化合物の形態とその析出の形態
を従来の210kg級マルエージング鋼とは変えたものであ
るから高いNi量は必要とせず,Ni量は8.0%より多ければ
十分析出硬化を起こすとともに靭性も確保出来る。また
Ni量が多くなると他の合金元素との組み合わせによって
は残留オーステナイトが存在するようになる。このよう
な理由からNiの上限は10.0%までとした。
Crは本発明鋼における一つの目的である耐食性を確保
する上で必須元素であり,通常の大気雰囲気での発銹を
防止する上で少なくても7.5%は必要である。しかし,
あまり高くすると溶接部のδフェライト相を増加させ溶
接継手強度の低下をもたらすため上限は12.0%以下とし
た。
Moは,Siと複合添加した場合に,少ない量でも析出硬
化元素として有効に働くとともに靭性改善にも有効に作
用する。その効果は1.0%以上で認められるものでその
下限を1.0%とする。また多量のMoは特にSiと複合添加
した場合には未溶解の析出相を形成しやすく母材の靭性
低下をもたらすのでその上限を5.0%とする。
Coは,高強度と靭性を兼ね備えた本発明鋼を得る上で
重要な元素で,母材及び溶接部で目標の強度と靭性を得
るためには少なくても3.0%以上を必要とする。その含
有量の上限については高い方が好ましいが,不必要に高
くてもCoは高価な元素であるから不経済となるので8.0
%までとした。
Tiは本発明鋼における時効硬化元素として不可欠な元
素であり,このために少なくても0.3%以上を必要とす
る。しかし,あまり高くすると母材および溶接部の靭性
低下をもたらすので,その上限は1.0%とした。
Alは脱酸材として用いられるが,非金属介在物を形成
しやすく切欠靭性の低下要因となる。とくに本発明鋼の
成分範囲ではAl含有量が0.035%を越えると著しい低下
をもたらすので0.035%以下に制限しなければならな
い。
NおよびOは非金属介在物を形成する要因となるため
低い方が好ましく,特に本発明鋼のようにTiを含有する
鋼においてはTiN,TiO等の介在物を形成し,これが靭性
低下の要因となる。この理由からN:0.010%以下および
O:0.007%以下とした。
Bは熱間加工性改善元素として広く知られ用いられて
いるが,本発明鋼では前記効果以外にそのメカニズムは
明確ではないが,0.01%までのBを添加することで靭性
を低下させることなく強度上昇硬化が得られる。このた
め,0.01%までのBを添加するのが望ましい。
以上のような理由で各化学成分範囲の上下限を限定し
たのであるが,本発明においては,この化学成分範囲に
おいて, Ar=Ni+0.5Mn+30(C+N)−1.3Cr −1.5Si−1.5Mo+0.3Co+11.8 の式で表されるAr値が0以上となる関係を満足し,そし
て, Siが1.5%以上の場合には Si+Mo+2×Ti≦7.0% の関係を満足するように,これらの成分の含有量範囲を
調整する。
Ar値は本発明者らによって得られた実験式であり,Ar
値が0以上となるように各成分量をバランスさせれば,
溶接部へのδフェライト相の析出量は少なくなり,本発
明の目的とする溶接部の強度および靭性を確保すること
ができる。このためAr値を0以上となるように各成分量
を調整することが必要である。
また,Siを1.5%以上(但し2.0%以下)含有させる場
合には,Si+Mo+2×Ti≦7.0%となるように,MoとTi量
を減量させる(但し,Mo≧1.0%,Ti≦0.3%であることは
必要である)。これは,SiをMoやTiと共存して多量に含
有させると,特に溶接部の靭性低下をもたらすことにな
るという理由による。
以上のように成分調整してなる本発明鋼は,溶接継手
部の強度と靭性に優れるので溶接継手部をもつステンレ
ス鋼製のエンドレスベルト素材として非常に好適なもの
である。エンドレスベルトを製造するには,溶体化処理
後に冷延率20〜60%で冷間圧延して得た冷延鋼板を,そ
の両端を溶接接続し,この溶接も時効処理しておけばよ
い。
第1図は,後記の実施例におけるA5鋼とA3鋼の冷間圧
延率と時効後の引張強さとの関係を示したものである
が,この図に見られるように,溶体化処理後20〜60%の
冷間圧延率で冷延したものは時効処理後において200kg/
mm2以上の十分な引張強さを示す。
〔実施例〕
第1表に示した化学成分値(重量%)の本発明鋼(A1
〜A8),比較鋼(B1〜B8)および従来鋼(C1〜C2)を溶
製し,常法により熱間圧延した後,焼鈍,冷間圧延を施
し,板厚1.0mmで60%冷間圧延率の冷延板を作成し,こ
の冷延板を供試材とした。
供試材から平滑引張試験片と切欠引張試験片を作成し
た。平滑引張試験片は平行部の長さが25mmで幅7mmの試
片である。切欠引張試験片は平行部の長さが25mmで幅10
mmの試片に,平行部中央部両サイドから深さが1.5mmで
幅が180μそして先端R90μの切欠を挿入した切欠引張試
片である。
両試験片とも,試験片に加工後に(500〜550)℃×5
時間の時効処理を施したうえ,各試片を引張試験に供
し,平滑引張強さおよび切欠引張強さを求めた。試験片
に対して行った時効の条件は,母材の切欠引張強さ/平
滑引張強さの比が1.0前後となり且つ200kg/mm2以上の母
材の引張強さが得られるような条件である。この時効条
件は幾種かの予め行った試験で確認したものである。た
だし従来鋼C1は480℃×1時間,従来鋼C2は515℃×4.5
時間の標準条件で時効処理を行なった。
得られた冷延・時効試験片の引張試験結果を第2表の
60%冷延材の引張強さおよび切欠引張強さの欄に示し
た。
また前記の供試材をTIG突き合わせ溶接を行ない,そ
の溶接部を含む平滑引張試験片と切欠引張試験片(寸法
形状は前記と同じ)を作成した。切欠引張試験片におけ
る切欠は溶着部に挿入した(切欠の寸法形状は前記と同
じ)。
両溶接試験片とも,試験片に加工後に,前記の冷延・
時効試験片の場合と全く同じ条件で時効処理を施した。
なお,従来鋼C1については480℃×1時間,従来鋼C2は5
15℃×4.5時間の前記と同様の標準条件で時効処理を行
なった。
各溶接・時効試験片を引張試験に供して,平滑引張強
さおよび切欠引張強さを求めた。その結果を第2表の溶
接部の引張強さおよび切欠引張強さの欄に示した。
第2表の結果から次のことが明らかである。
本発明鋼A1〜A9は,60%冷間圧延後時効処理した時の
平滑引張強さが200kg/mm2以上を有しており,従来鋼の2
10kg級18Niマルエージング鋼と同等の強度を有してい
る。また,その切欠引張強さも平滑引張強さと同等以上
の特性を有している。したがって,高強度でありながら
極めて靭性が良好であることが認められる。
そして,本発明鋼A1〜A9の溶接部は180kg/mm2以上の
平滑引張強さを示すとともに,それと同等以上の切欠引
張強さを有している。したがって溶接部も高強度を維持
すると共に極めて靭性が良好であることがわかる。
一方比較鋼B1〜B8では,例えばSi,Moが高くて,Si+Mo
+2(Ti)≦7.0の本発明で規定する関係を満足しないB
1では,未固溶の析出物が存在するためであると推察さ
れるが,平滑引張強さに比べ切欠引張強さが低く靭性の
ないことが認められる。また,Co,Moの低い比較鋼B2およ
びB3でも切欠強度が低い。
比較鋼B4は本発明鋼に比べA1が若干高いものである
が,切欠引張強さが低く靭性の低下が認められる。比較
鋼B5は本発明鋼に比べSiの高いものであるがやはり切欠
引張強さが低く靭性が低下している。
比較鋼B6は本発明鋼に比べNiが低いものであるが,本
発明系鋼でもこの鋼のようにNiが低いとNi系マルエージ
ング鋼と同様に靭性の低下が認められる。
比較鋼B7はNとOが高いために,やはり切欠引張強度
が低い。
比較鋼B8はSiの低いものであるが,低Siで高強度を得
るためにはTi含有量を高くすることが必要であり,この
ために靭性低下を助長している。すなわち低Siのために
金属間化合物は粒界析出しやすいNi3Ti系となり,かつN
i,Moが低いため粒界脆化による靭性の低下をきたしてい
る。
C1とC2はそれぞれ従来鋼SUS630と210kg級18Niマルエ
ージング鋼であるが,C1のSUS630は冷間加工状態でも本
発明鋼と比較すると強度が低くさらに溶接部も同様に本
発明鋼に比べ強度レベルが低い。
また第2表中に示すごとく本発明鋼のAr値は0以上で
あり,1300℃×分処理でδフェライト相はほとんど存在
せず溶接によるδフェライト相の析出は少ないことを示
している。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例において本発明鋼A3とA5の冷間
圧延率と時効処理後の引張強さとの関係を調べた結果を
示す図である。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で,C:0.03%以下,Si:0.2〜2.0%,M
    n:0.5%以下,Ni:8.0超え〜10.0%,Cr:7.5〜12.0%,Mo:
    1.0〜5.0%,Co:3.0〜8.0%,Ti:0.3〜1.0%,Al:0.035%
    以下,S:0.004%以下,N:0.010%以下,O:0.007%以下,た
    だし,この化学成分範囲において, Ar=Ni+0.5Mn+30(C+N)−1.3Cr−1.5Si−1.5Mo +0.3Co+11.8 の式で表されるAr値が0以上となる関係を満足し,そし
    て, Siが1.5%以上の場合には Si+Mo+2×Ti≦7.0% の関係を満足し, 残部がFeおよび不可避的に混入する不純物からなる溶接
    強度および靭性に優れた析出硬化型ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】溶体化処理後の組織が実質的にマルテンサ
    イト組織であり,溶接部の時効処理後の平滑引張強度が
    180kg/mm2以上でかつ溶接部の時効処理後の切欠引張強
    度が該平滑引張強度と同等以上の強度を有する特許請求
    の範囲第1項記載の析出硬化型ステンレス鋼。
  3. 【請求項3】溶体化処理において冷延率20%〜60%の冷
    間圧延を施した冷延材の時効処理後の引張強度が200kg/
    mm2以上でかつ該冷延材の時効処理後の切欠引張強度が
    該引張強度と同等以上である特許請求の範囲第1項また
    は第2項記載の析出硬化型ステンレス鋼。
  4. 【請求項4】重量%で,C:0.03%以下,Si:0.2〜2.0%,M
    n:0.5%以下,Ni:8.0超え〜10.0%,Cr:7.5〜12.0%,Mo:
    1.0〜5.0%,Co:3.0〜8.0%,Ti:0.3〜1.0%,Al:0.035%
    以下,B:0.01%以下,S:0.004%以下,N:0.010%以下,O:0.
    007%以下,ただし,この化学成分範囲において, Ar=Ni+0.5Mn+30(C+N)−1.3Cr−1.5Si−1.5Mo +0.3Co+11.8 の式で表されるAr値が0以上となる関係を満足し,そし
    て, Siが1.5%以上の場合には Si+Mo+2×Ti≦7.0% の関係を満足し, 残部がFeおよび不可避的に混入する不純物からなる溶接
    強度および靭性に優れた析出硬化型ステンレス鋼。
  5. 【請求項5】溶体化処理後の組織が実質的にマルテンサ
    イト組織であり,溶接部の時効処理後の平滑引張強度が
    180kg/mm2以上でかつ溶接部の時効処理後の切欠引張強
    度が該平滑引張強度と同等以上の強度を有する特許請求
    の範囲第4項記載の析出硬化型ステンレス鋼。
  6. 【請求項6】溶体化処理後において冷延率20%〜60%の
    冷間圧延を施した冷延材の時効処理後の引張強度が200k
    g/mm2以上でかつ該冷延材の時効処理後の切欠引張強度
    が該引張強度と同等以上である特許請求の範囲第4項ま
    たは第5項記載の析出硬化型ステンレス鋼。
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