JP2527564B2 - 溶接強度および靭性に優れた析出硬化型ステンレス鋼 - Google Patents

溶接強度および靭性に優れた析出硬化型ステンレス鋼

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は,溶接強度および靭性に優れた析出硬化型高
力ステンレス鋼に係り,例えばOA機器のプリンターヘッ
ド移動用ベルト,帯鋸,動力伝達機構部品や搬送部材と
して好適に適用できるステンレス鋼に関する。かような
ベルト材料は通常は溶接接続にてエンドレス化されるも
のであるが,本発明鋼はかような溶接部の強度と靭性に
優れた析出硬化型高力ステンレス鋼である。
〔発明の背景と従来技術の問題点〕
高強度ステンレス鋼としては,高温のオーステナイト
状態より急冷してマルテンサイト変態させることによっ
て硬化させるマルテンサイト系ステンレス鋼(代表的に
SUS420J2や440A,B,C),冷間加工によって高強度を得る
加工硬化型オーステナイト系ステンレス鋼(代表的には
SUS301や304)および冷間加工後時効処理を施して高強
度を得る析出硬化型スンテレス鋼(代表的にはSUS631)
がある。
しかし,これらの鋼は前述の用途のように溶接接続す
る場合には,それぞれ以下のような問題が付随する。
例えば,マルテンサイト系ステンレス鋼では,溶接時
に割れを生じたり,溶接後は後熱処理を施さないと溶接
部の靭性が著しく低下する。また,スチールベルト党の
鋼帯を製造する場合には,マルテンサイト変態のための
熱処理(焼入れ処理)によって鋼帯が変形しやすいの
で,平坦性と寸法精度の要求が極めて厳格なプリンター
ヘッド移動用ベルト,帯鋸,動力伝達機構部品ベルトな
どを得ることはそのままでは困難である。
一方,加工硬化型のSUS301,304および析出硬化型のSU
S631等は,強度レベルは冷間加工量によって種々のもの
が得られ,強度の高いものでは180〜200kg/mm2前後のも
のが得られるが,これらは溶接を施すことによって溶接
部が著しく強度低下するという共通の問題がある。した
がって,これらの鋼は,溶接継手部を有しながら高強度
と疲労強度が要求される用途,例えばCVT用ベルト等で
は使用できない。これらの鋼をかような用途に使用しよ
うとすれば,溶接接続後にその溶接部をもったまま冷間
加工を施す必要がある。しかし,例えばエンドレスベル
トなどのような無端ベルトをさらに冷間加工するには作
業が煩雑とならざるを得ず効率が悪く,高価なものとな
らざるを得ない。
このようなことから,特に溶接接続を余儀無くされ且
つ高強度が要求される用途向きには,低炭素マルテンサ
イト系鋼で且つ析出硬化を伴う材料が適しており,ステ
ンレス鋼では従来より例えばSUS630やPH13−8Mo鋼が使
用されている。
しかし,これらの鋼の溶接継手強度は,いずれも時効
処理後において高々150kg/mm2前後の強度レベルであ
る。したがって,一層の高強度を必要とされる用途には
使用できない。ステンレス鋼以外では18Ni系マルエージ
ング鋼があり,母材強度が210kg級のものでは,その溶
接継手の強度も180kg/mm2以上のものが得られる。だが,
18Niマルエージング鋼は高価であるとともに,ステンレ
ス鋼に比べて著しく耐食性に劣るという問題がある。従
って,溶接部の強度と靭性はもとより耐食性が要求され
るような用途向き例えばCVTやダイシングソウ等のエン
ドレスベルト素材としては不向きである。
〔発明の目的〕
本発明は,前述のような従来材では得られなかった耐
食性と溶接継手強度並びに靭性を兼ね備えた高強度ステ
ンレス鋼の提供を目的としたものである。より具体的に
は,析出硬化型のマルテンサイト系ステンレス鋼におい
て,従来のこの種の鋼では達成できなかった溶接継手強
度170kg/mm2以上を達成することを目的としたものであ
る。そして,この高度な溶接継手強度並びに靭性と共に
スチールベルトとして要求されるその他の諸特性を合わ
せて具備する鋼の開発を目的としたものである。
〔発明の構成〕
前記の目的を達成せんとする本発明のステンレス鋼
は,重量%で,C:0.03%以下,Si:0.2〜2.0%,Mn:0.5%以
下,Ni:7.0〜12.0%,Cr:7.5〜10.0%未満,Mo:1.0〜5.0
%,Ti:0.2〜1.0%,Al:0.035%以下,S:0.004%以下,N:0.
010%以下,:0.007%以下,さらに,場合によっては,
3.0%以下のCu,1.5%以下のVまたは1.5%以下のNbの1
種または2種以上を含有し,ただし,この化学成分範囲
において, Siが1.5%以上の場合には Si+Mo+2×Ti≦7.0% の関係を満足し, 残部がFeおよび不可避的に混入する不純物からなる溶
接強度および靭性に優れた析出硬化型ステンレス鋼であ
る。
本発明鋼は,溶体化処理後の組織が実質的にマルテン
サイト組織であり,後記の実施例で実証するように,溶
接部の平滑引張強度および切欠引張強度が時効処理後に
おいて170kg/mm2以上を有する。
したがって,本発明によると,本発明鋼の鋼板の両端
を溶接接続することによってエンドレス化したベルト
は,従来の析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼で
は得られなかったような溶接継手強度と靭性を具備し,
また,Niマルエージング鋼では得られなかった耐食性を
具備するものである。なお,このエンドレスベルトを製
造するには,溶体化処理後に冷延率10〜70%で冷間圧延
して得た冷延鋼板を,その両端を溶接接続し,この溶接
後にベルト全体を時効処理する方法に従えばよい。また
形状が大きなもの等では,該冷延鋼板を時効処理したあ
と溶接接続したうえ,その溶接部を時効処理を施しても
よいし,溶接部をさらに加工してから時効処理してもよ
い。
以下に本発明の内容を具体的に説明する。
〔発明の詳述〕
本発明の主目的である溶接継手強度170kg/mm2以上を
達成し得る従来綱としては,既述のように210kg級以上
の18Niマルエージング鋼がある。しかし,この従来鋼は
Crを含有していないことから耐食性が著しく劣るととも
に高価なNi,Mo,Coを多量に含有するために著しく高価な
材料となっている。そこで,本発明者等は,析出硬化型
マルテンサイト系ステンレス鋼において,従来では達成
できなかった溶接継手強度170kg/mm2以上を確保できる
ような成分系を見出すべく種々の試験研究を重ねた。そ
の結果,従来の210kg級18Niマルエージング鋼ほどのNi,
Moを含まず,またCoを含有しなくても,特定の成分調整
を行って適切に製造するならば,薄板の領域では目標と
する170kg/mm2以上の溶接継手強度を得ることが可能で
あることを知見した。
すなわち,種々の実験の過程で,従来の210kg級18Ni
マルエージング鋼のNi,Mo,Coを減少させた場合には,高
強度を得るために一方の強化元素であるTi量を増加させ
ると200kg/mm2前後の強度は保ち得るものの,靭性が低
下し,特に溶接部での切欠靭性の低下が起こることを知
った。しかし,若干のSiを添加するならば210kg級マル
エージング鋼と同程度以下のTi量0.6%でも十分な強度
を有し,しかも,溶接継手部の強度が170kg/mm2以上で
かつ切欠靭性も優れるものを得ることが可能であること
がわかった。
このSi添加の作用効果は時効処理温度領域でのTi,Mo
の固溶限を低下させることによりもたらされるものと考
えられる。すなわち,Siの添加によって,少ないTiおよ
びMo量で高強度を得ることができるのであるが,従来鋼
にあっては析出硬化に寄与していた金属間化合物Ni3Ti
は粒界析出しやすいために高強度でかつ靭性を保ち得る
為には高いNi,Mo,Coを含有していることが必須条件であ
ったのに対し,Siを添加すると金属間化合物の形態がNi
16Ti6Si7のG相に変化し,しかもこの金属間化合物は粒
界析出しにくいために,少ないNi,Mo量で且つCoを含有
しなくても十分な強度と靭性を有し,特に溶接部の強度
と靭性を保ち得ることになることがわかった。
また,従来より,Alは脱酸材として有効に働くために
この種の鋼に活用されていたが,その含有量が著しく靭
性に影響を及ぼしていることを知った。たとえば,18Ni
系マルエージング鋼等ではAlの含有量は0.1%前後で特
に注目されておらず,さらに,SUS631に見られるように
強化元素として活用されている例さえもある。ところ
が,マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の高強度
化高靭性化にこのAlが非常な悪影響を及ぼしていること
がわかった。本発明では前記のような理由から強化元素
としてSiを活用するものであるが,このSiによる脱酸も
合わせて出来るのでAl添加による脱酸が少なくても酸化
物系の介在物による靭性低下を回避することができ,低
Al含有鋼とすることができる。
なお,本発明鋼はCaOルツボを用いて鋼を溶製するの
がよい。CaOルツボを用いて溶製するとによって,低S
化と,更に低Al含有量でOおよびNの低減が達成でき,
これによって高強度材で問題となる非金属介在物不純物
元素による靭性低下を防止し,さらに高強度で高靭性を
有する材料が提供できる。特に本発明が目的とするエン
ドレスベルト用途たとえばCVT用ベルト,ダイシングソ
ウ等は薄板が多いが,かような介在物減少による薄板の
疲労寿命改善効果が合せて発揮される。
本発明鋼ではCoを含有させないで且つNi,Mo含有量を2
10kg級18Niマルエージング鋼よりも低減させることが出
来たので,Crを耐食性に必要な量で添加しても,溶体化
処理後において実質的にマルテンサイト組織を呈し且つ
溶接部へのδフェライト相の析出が微量となるような鋼
とすることができ,これによって時効処理後の強度と靭
性は溶接部であっても170kg/mm2以上を確保することが
でき,十分な耐食性と溶接継手強度とを兼ね備えたステ
ンレス鋼とすることができる。
本発明において,鋼中の各元素の含有量範囲の上下限
を限定した理由の概要を説明すると,以下のとおりであ
る。
Cは,マルテンサイト地の強度を上げるのに有効な元
素であるが,C量が0.03%を越えるような量となると,強
化元素として含有させているTiなどの炭化物を形成しや
すくなり,切欠靭性を低下させる。そして,かようなTi
Cの析出により析出硬化に寄与する有効Ti量が減少し,
それに見合った多量のTiを添加する必要が生じ,これに
伴って靭性低下の要因となる。さらにTiCが多量に生成
していると,これが溶接時に分解固溶し,溶接継手部に
残留オーステナイトを存在させるようになり,溶接継手
強度の低下をもたらす。このような理由からCは0.03%
以下とした。
Siは,本発明の目的を達成する上で主要な元素であ
る。既述のように本発明ではSiを添加することにより従
来の18Ni系マルエージング鋼にくらべ,Coを含有させず
且つ少ないMo,Ti量で高強度を得ることを可能にしたも
のである。このためには少なくても0.2%以上のSiを必
要とする。しかしSiを多量に添加すると溶接部へのδフ
ェライトの増加による溶接強度の低下をもたらし,さら
に高強度の場合に靭性の低下をもたらす。このためSiの
上限は2.0%に限定する。
Mnは,MnSやMnO等の非金属介在物を形成しやすく靭性
低下の要因となりやすいが,本発明鋼のごとくS,を低
くもたものでは特に低減化する必要はなく上限を0.5%
とした。
Sは本発明鋼では非金属介在物を形成しやすい元素で
あり,より優れた特性を得るためには低い程好ましい。
本発明鋼ではSは0.004%まで許容しても十分な目的が
達成できる。
Niは,析出硬化元素として作用するが,本発明鋼では
Siの添加により,金属間化合物の形態とその析出の形態
を従来の210kg級マルエージング鋼とは変えたものであ
るから高いNi量は必要とせず,Ni量は7.0%以上であれば
十分析出硬化を起こすとともに靭性も確保出来る。しか
しNi量が7.0%未満では靭性が低下することがわかっ
た。またNi量が多くなると他の合金元素との組み合わせ
によっては残留オーステナイトが存在するようになる。
このような理由からNiの上限は12.0%までとした。
Crは本発明鋼における一つの目的である耐食性を確保
する上で必須元素であり,通常の大気雰囲気での発銹を
防止する上で少なくても7.5%は必要である。しかし,
あまり高くすると溶接部のδフェライト相を増加させ溶
接継手強度の低下をもたらすため上限は10.0未満とし
た。
Moは,Siと複合添加した場合に,少ない量でも析出硬
化元素として有効に働くとともに靭性改善にも有効に作
用する。その効果は1.0%以上で認められるのでその下
限を1.0%とする。また多量のMoは特にSiと複合添加し
た場合には未溶解の析出相を形成しやすく母材の靭性低
下をもたらすのでその上限を5.0%とする。
Tiは本発明鋼における時効硬化元素として不可欠な元
素であり,その量は他の元素であるSi,Mo,Cu或いはV,Nb
量によっても異なるが、高強度で且つ高靭性を保つ上で
は全体のバランスから0.2%以上を必要とする。しか
し,あまり高くすると母材および溶接部の靭性低下をも
たらすので,その上限は1.0%とした。
Alは脱酸材として用いられるが,非金属介在物を形成
しやすく切欠靭性の低下要因となる。とくに本発明鋼の
成分範囲ではAl含有量が0.035%を越えると著しい低下
をもたらすので0.035%以下に制限しなければならな
い。
NおよびOは非金属介在物を形成する要因となるため
低い方が好ましく,特に本発明鋼のようにTiを含有する
鋼においてはTiN,TiO等の介在物を形成し,これが靭性
低下の要因となる。この理由からN:0.010%以下および
:0.007%以下とした。
VとNbはそれぞれ結晶粒の微細化による靭性改善効果
を供すると共に析出硬化元素としても有効に働く。しか
し,あまり多量に添加すると,高強度化による靭性低下
の要因となるのでそれぞれ1.5%を上限とする。
Cuは時効処理による強化元素として作用し,強度を補
う上で補助的な役割を果たすので添加することが有効で
あるが,あまり多く添加すると熱間割れの要因となるの
で3.0%までとするのがよい。
以上のような理由で各化学成分範囲の上下限を限定し
たのであるが,本発明においては,この化学成分範囲に
おいて,Siを1.5%以上(但し2.0%以下)含有させる場
合には, Si+Mo+2×Ti≦7.0% となるように,MoとTi量を減量させる(但し,Mo≧1.0%,
Ti≧0.2%であることは必要である)。これは,SiをMoや
Tiと共存して多量に含有させると,特に溶接部の靭性低
下をもたらすことになるという理由による。
以上のように成分調整としてなる本発明鋼は,溶接継
手部の強度と靭性に優れるので溶接継手部をもつステン
レス鋼製のエンドレスベルト素材として非常に好適なも
のである。エンドレスベルトを製造するには,溶体化処
理後に冷延率10〜70%で冷間圧延して得た冷延鋼板を,
その両端を溶接接続し,この溶接も時効処理しておけば
よい。
これによって,溶体化処理後の組織が実質的にマルテ
ンサイト組織であり,溶接部の平滑引張強度および切欠
引張強度が時効処理後において170kg/mm2以上を有する
析出硬化型ステンレス鋼板が得られる。特に本発明にお
いてはこの鋼板の両端を互いに溶接接続することによっ
てエンドレスベルトに構成され,該溶接部が溶接後にお
いて時効処理されていると共に溶接部以外の母材も時効
処理されてなる,溶接部および母材とも強度と靭性に優
れたエンドレスベルトが提供される。
なお,本発明鋼は,10%前後のCrと2%前後のMoを含
んでいることから,従来鋼の18Niマルエージング鋼に比
べ耐発銹性に優れるものであり,この点でも従来材に比
べてその利用面および用途範囲の拡大ができるものであ
り有益である。
そして,一層の特性改善は後記の実施例に示すように
CaOルツボを用いて溶製することにより達成でき,この
場合の溶接部の強度レベルは180kg/mm2以上に達するこ
とができる。
このように本発明によれば,例えば溶接接続され使用
されるCVT,ダイシングソウ等の薄板のエンドレスベルト
素材として好適に使用することができ且つ本発明鋼と同
等の強度特性を有する18Niマルエージング鋼に比べ安価
な材料を提供するものであり,この分野において非常に
有益な鋼を提供するものである。
〔実施例1〕 第1表に示す化学成分値(重量%)の本発明鋼(V1〜
V4),比較鋼(B1〜B6),従来鋼(C1〜C2)をMgOルツ
ボを用い溶製し,常法により熱間圧延した後,焼鈍,冷
間圧延を施こし、最終的に板厚1.0mmtで60%冷間圧延率
のものを作成し供試材とした。
得られた各供試材をTIG突き合せ溶接を行ない,溶接
部を含む平行部長さ25mm幅7mmの平滑引張試片と,平行
部長さ25mm幅10mmの平滑引張試片の溶着部に両サイドか
ら深さ1.5mm,幅180μ,先端R90μの切欠を挿入した切欠
引張試片を作成し,切欠引張強さ/平滑引張強さの比が
1.0前後で且つ平滑引張強さが170kg/mm2以上となる時効
処理条件を各鋼について予め求め,この時効処理条件
(500〜550℃の範囲×5時間加熱後,空冷)で時効処理
後,各試験片の平滑引張、切欠引張強度を求めた。従来
鋼C1については480℃×1時間,C2については515℃×4.5
時間の条件で時効処理を施こした。これらの結果を第2
表に示した。
第2表の結果から明らかなように,本発明鋼V1〜V4は
いずれも溶接部の時効処理後の平滑引張強さ,切欠引張
強さともに170kg/mm2以上を呈し,しかも切欠引張強さ
/平滑引張強さの比がおおむね1.0以上を有し優れた靭
性を有していることを示している。これは従来鋼C2の20
kg級18Niマルエージング鋼の特性に近い値を有し,ま
た,従来鋼C1(SUS630)に比べると高強度を有してい
る。
また比較鋼B1はSiが低いため強度を得るためにTiが高
くした鋼,B2はAlが高い鋼,B3はSi+Mo+2(Ti)が本発
明で規定する範囲より高い鋼,B4はNiが低い鋼,B5はNi,
が本発明で規定するより高い鋼,B6はSiが高い鋼であ
り,いずれも本発明で規定する化学成分値を外れるもの
であるが,そのいずれも溶接部が170kg/mm2以上となる
条件で時効処理を施した場合,溶接部の切欠引張強度は
全て170kg/mm2以下となり,本発明鋼に比べ溶着部での
靭性が低いことが認められ,本発明の目的が達成できに
ない。
〔実施例2〕 第3表に示す本発明で規定する成分範囲内にある鋼を
CaOルツボ炉を用いて溶製し,常法により熱間圧延した
後,焼鈍,冷間圧延を施し最終的に板厚1.0mmtで60%冷
間圧延率のものを作成し供試材とした。
そして実施例1と同じ方法で溶接部の平滑引張強度と
切欠引張強度を求めた。ただし時効条件は切欠引張強度
/平滑引張強度の比が1.0前後が得られかつ出来るだけ
高強度となる条件で実施した(500〜550℃×5時間加熱
後,空冷)。その試験結果を第4表に示した。
第4表の結果に見られるように,V−1K〜V−5Kとも,
溶接部の平滑引張強度および切欠引張強度がともに180k
g/mm2以上の強度を有し,第2表に示す従来鋼C1に比べ
優れた強度特性を有し,C2の18Ni系マルエージングと同
等の強度特性を有している。
また,実施例1の本発明鋼のV1〜6に比較しても強度
レベルおよび靭性ともに優れた特性を有している。これ
は,CaOルツボを用いて溶製した本発明鋼は,実施例1の
ようにMgOルツボを用いて溶製したものに比べてSが一
層低くさらにO等の不可避的に混入してくる不純物の量
が少なくなり,これによって本発明の目的である溶接部
の靭性改善が一層良好に達成出来たものであると考えら
れる。すなわちCaOルツボ炉を用いて溶製することによ
り,同じ成分の鋼をMgOルツボ炉を用いて溶製した場合
に比べて一層特性の優れたものを得ることができる。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で,C:0.03%以下,Si:0.2〜2.0%,M
    n:0.5%以下,Ni:7.0〜12.0%,Cr:7.5〜10.0%未満,Mo:
    1.0〜5.0%,Ti:0.2〜1.0%,Al:0.035%以下,S:0.004%
    以下,N:0.010%以下,:0.007%以下,ただし,この化
    学成分範囲において, Siが1.5%以上の場合には Si+Mo+2×Ti≦7.0% の関係を満足し, 残部がFeおよび不可避的に混入する不純物からなる溶接
    強度および靭性に優れた析出硬化型ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】溶体化処理後の組織が実質的にマルテンサ
    イト組織であり,溶接部の平滑引張強度および切欠引張
    強度が時効処理後において170kg/mm2以上を有する特許
    請求範囲第1項記載の析出硬化型ステンレス鋼。
  3. 【請求項3】重量%で,C:0.03%以下,Si:0.2〜2.0%,M
    n:0.5%以下,Ni:7.0〜12.0%,Cr:7.5〜10.0%未満,Mo:
    1.0〜5.0%,Ti:0.2〜1.0%,Al:0.035%以下,S:0.004%
    以下,N:0.010%以下,:0.007%以下,さらに,3.0%以
    下のCu,1.5%以下のVまたは1.5%以下のNbの1種また
    は2種以上を含有し,ただし,この化学成分範囲におい
    て, Siが1.5%以上の場合には Si+Mo+2×Ti≦7.0% の関係を満足し, 残部がFeおよび不可避的に混入する不純物からなる溶接
    強度および靭性に優れた析出硬化型ステンレス鋼。
  4. 【請求項4】溶体化処理後の組織が実質的にマルテンサ
    イト組織であり,溶接部の平滑引張強度および切欠引張
    強度が時効処理後において170kg/mm2以上を有する特許
    請求範囲第3項記載の析出硬化型ステンレス鋼。
  5. 【請求項5】重量%で,C:0.03%以下,Si:0.2〜2.0%,M
    n:0.5%以下,Ni:7.0〜12.0%,Cr:7.5〜10.0%未満,Mo:
    1.0〜5.0%,Ti:0.2〜1.0%,Al:0.035%以下,S:0.004%
    以下,N:0.010%以下,:0.007%以下,場合によっては
    さらに,3.0%以下のCu,1.5%以下のVまたは1.5%以下
    のNbの1種または2種以上を含有し,ただし,この化学
    成分範囲において, Siが1.5%以上の場合には Si+Mo+2×Ti≦7.0% の関係を満足し,残部がFeおよび不可避的に混入する不
    純物からなるステンレス鋼のエンドレスベルトであっ
    て,該鋼の鋼板の両端を互いに溶接接続することによっ
    てエンドレスベルトに構成され,該溶接部が溶接後にお
    いて時効処理されていると共に溶接部以外の母材も時効
    処理されているエンドレスベルト。
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