JP3503345B2 - 大入熱溶接性、溶接割れ感受性および耐候性に優れた高張力鋼およびその製造方法 - Google Patents
大入熱溶接性、溶接割れ感受性および耐候性に優れた高張力鋼およびその製造方法Info
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Description
などの鉄鋼構造物に用いられる大入熱溶接性、溶接割れ
感受性および耐候性に優れた600N/mm2 級高張力
鋼およびその製造方法に関するものである。
性能向上に関する要望は多く、これまでに数多くの検討
がなされている。これらのうち、溶接割れ感受性の改良
を目的に低C化とTi−B添加を特徴とした技術として
特開昭49−37814号公報、特公平4−13406
号公報などが公知となっている。これらに代表される技
術により、溶接割れ感受性が改良された600N/mm
2 級高張力鋼が得られるが、600N/mm2 級高張力
鋼に要求される引張強さはBの活用により達成されてい
るため、化学成分や製造条件の変動による母材特性の不
安定さが懸念され、さらに溶接熱影響部の硬さ上昇が著
しい。この溶接熱影響部の硬さ上昇は一般に溶接継手部
で最も懸念されるボンド部の靱性劣化をもたらす。特に
熱影響部のミクロ組織の粗大化が著しくかつ後続パスに
よる再熱を受けない大入熱片面1パス溶接では靱性劣化
は著しく好ましくない。
入法を用いて靱性の優れた600N/mm2 級高張力鋼
の製造方法を提供している。この技術はNbとBの複合
添加を必須としているため、上記と同様のB添加による
弊害が懸念される。
31538号公報、特公昭60−9086号公報、特開
平2−254119号公報、特開昭59−113120
号公報、特公昭61−12970号公報、特公平2−8
322号公報、特開昭53−119219号公報が提案
されている。
報に示される技術は500N/mm2 級非調質高張力鋼
に関するものである。また、特公昭60−9086号公
報、特開平2−254119号公報、特開昭59−11
3120号公報に示される技術はいずれも600N/m
m2 級非調質高張力に関するものであり、実施例などか
らこれらの技術の適用板厚の上限はいずれも20mm程
度であることが知れる。
とV添加および直接焼入れを組み合わせることで、溶接
割れ感受性に優れた600N/mm2 級高張力鋼を提供
しようとするものであるが、大入熱溶接性に関する技術
は全くない。
b,Tiの複合添加を必須とし、直接焼入れ法を組み合
わせ、耐SSC性と溶接割れ感受性の改良を目的とした
600N/mm2 級高張力鋼に関する技術である。この
公報に適用板厚に関する記載が全く無いが、ガスタンク
やラインパイプへの適用を目的としていることから概ね
50mm以下の板厚の鋼材への適用を目的としていると
推察され、大入熱溶接性に関する技術は全くない。
加熱焼入れ焼戻しプロセスにより板厚の厚い500N/
mm2 級以上の高張力鋼を提供しようとするものであ
る。この技術によれば0.02%を越える比較的多量の
Nb添加により再加熱時に未固溶Nb炭窒化物を残存せ
しめ結晶粒の粗大化を防止し主に母材の靱性を改善しよ
うとするものである。従って焼入れに際して固溶Nbの
焼入れ性向上効果および析出硬化を十分に活用できな
い。そのため実施例に見られるように強度を確保するた
めNb,Vに加えて更にNi,Moの添加が実質的に必
須となり、かつ厚肉材の板厚1/4tの位置で600N
/mm2 級の強度を確保できる発明例(供試鋼J)では
Pcm値が0.22に達し溶接性に劣る。
0N/mm2 級調質型高張力鋼の従来技術はそのほとん
どがB添加による焼入れ性の確保により達成され、大入
熱溶接性や耐候性については何等配慮がなされていな
い。
N/mm2 級調質型高張力鋼の従来技術として、特開平
3−162522号公報、特開平4−228537号公
報、特開昭63−149354号公報、特開昭60−1
74820号公報がある。これらの技術ではいずれもT
i,B,Ca,Zr,REMを活用して大入熱溶接性の
改善が図られており、耐候性に関する配慮は全くない。
5−117745、特開平6−316723が挙げられ
る。特開平5−117745は490N/mm2 級の建
築構造用高張力鋼の製造方法に関する技術であり、耐火
性能に優れることを特徴とし、特開平6−316723
は更に優れたガス切断性を付与させた技術である。
で、その目的とするところは、大入熱溶接性、溶接割れ
感受性および耐候性がいずれも優れた600N/mm2
級調質型高張力鋼及びその製造方法を提供することであ
る。
性を改善するためには、 Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+N
i/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B で定義されるPcm値を低減することが有効である。溶
接割れ感受性を確保しつつ母材の強度を確保する有効な
手段としてB添加が考えられるが、溶接熱影響部の著し
い硬度上昇に伴う継手靱性の劣化が特に後述する大入熱
溶接継手において懸念される。Bを有効に活用するため
に従来しばしば添加されるTiは安定に母材性能を得る
ために添加しないことが好ましい。そこで、Ti,Bを
添加せずに溶接割れ感受性の改善と溶接継手の健全性の
確保を両立させつつ600N/mm2 級高張力鋼を得る
ためには従来の再加熱焼入れ焼戻しプロセスの適用では
適用可能な板厚範囲に制約を生じる懸念がある。
G3114に示されるように、Cu,Cr,Niの添
加が必要であるが、これらの合金添加はPcm値の増大
を招き、溶接割れ感受性を損なう。他の添加元素を低減
すれば溶接割れ感受性を損なわないことが可能である
が、引張強さ570N/mm2 以上を確保することが困
難になる。
溶接継手強度と継手靱性の確保を図らなければならな
い。大入熱溶接継手強度は従来600N/mm2 級高張
力鋼においてはCeq=C+Mn/6+Si/24+N
i/40+Cr/5+Mo/4+V/14で定義される
Ceq値を概ね0.40以上に設定することで確保され
てきたが、Ceq値の増加は継手靱性の劣化を伴いその
両立は困難である。
性に優れた板厚100mmに至る600N/mm2 級高
張力鋼を工業的に供給することを阻んできたこれらの課
題を解決するために、本発明者らが鋭意研究した結果、
直接焼入れ焼戻しプロセスの適用を前提に下記の知見を
見出だした。
接焼入れ法の採用により圧延加熱時に固溶させたNbに
よる焼入れ性向上効果を活用できる。これにより他の焼
入れ性確保のための合金元素添加量を削減できる。また
Nbは炭化物を微細分散化する作用が有り厚肉材の1/
2t部の靱性確保に極めて有効である。
b炭窒化物の析出硬化を活用できる。これは焼入れ時の
冷却速度が表層側と比べて必然的に遅くなる板厚の中心
部の強度確保に有効である。即ちこれにより必要以上の
焼入れ性を確保することなく板厚中心部の強度を確保で
きる。また、大入熱溶接により熱影響部から母材部にか
けて生成する軟化域の硬度低下を抑制する効果を発現す
る。この効果は0.015%のNb添加によりCeq値
を0.04低減することに相当し、これによりCeq値
を0.40以下としても600N/mm2 級高張力鋼に
必要な継手強度を確保できる。
素の寄与を含めて、耐候性確保のために必要なCu,C
r,Ni添加を前提に強度を確保するための鋼板厚に応
じた合金元素の必要添加量を把握し、かつ、大入熱溶接
継手靱性および溶接割れ感受性を阻害しないための条件
を明確にした。
しろ積極的に特に大入熱溶接継手の靱性を確保するため
その混入を規制する必要がある。また、Bを有効に活用
する観点からのTi添加は必須ではなく、むしろ安定に
良好な母材性能を得る上でTiは添加しないことが好ま
しい。
もので、その要旨は、 (1)重量%で、C:0.06〜0.1%、Si:0.
01〜0.4%、Mn:0.5〜1.4%、Cu:0.
2〜0.5%、Ni:0.05〜0.3%、Cr:0.
3〜0.8%、Nb:0.005〜0.05%、Al:
0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.005
%、Ti≦0.002%、B<0.0003%、Mo≦
0.15%、V≦0.1%を含み、Pcm=C+Si/
30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/2
0+Mo/15+V/10+5Bで定義されるPcm値
が0.21以下、かつ、Ceq=C+Mn/6+Si/
24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14で定
義されるCeq値が0.40以下で残部が鉄および不可
避不純物よりなる引張強さ570N/mm2 以上を有す
る大入熱溶接性、溶接割れ感受性および耐候性に優れた
高張力鋼。
%、Si:0.01〜0.4%、Mn:0.5〜1.4
%、Cu:0.2〜0.5%、Ni:0.05〜0.3
%、Cr:0.3〜0.8%、Nb:0.005〜0.
05%、Al:0.005〜0.1%、N:0.000
5〜0.005%、Ti≦0.002%、B<0.00
03%、Mo≦0.15%、V≦0.1%を含み、Pc
m=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/
60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bで定義
されるPcm値が0.21以下、かつ、Ceq=C+M
n/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4
+V/14で定義されるCeq値が0.40以下の鋼を
熱間圧延する際、1000℃以上1250℃以下の温度
に加熱後、熱間圧延を行い、引続きAr3変態点以上の
温度から直接焼入れし、さらにAc1変態点以下の温度
で焼戻し処理を施すことを特徴とする引張強さ570N
/mm2 以上の大入熱溶接性、溶接割れ感受性および耐
候性に優れた高張力鋼の製造方法。
+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14で定義さ
れるCeq値および、1000〜1250℃の温度範囲
に設定された加熱温度T(℃)を用いて、log{(N
b)×(C+12N/14)}=2.26−6770/
(T+273.15)の関係より計算される固溶Nb量
を有効Nb量として、有効Nb、V含有量、目的とする
鋼板厚t(mm)を用いて、800(有効Nb)+32
0V+270Ceq≧t+64の関係を満たすことを特
徴とする上述した引張強さ570N/mm2 以上の大入
熱溶接性、溶接割れ感受性および耐候性に優れた高張力
鋼の製造方法。
で20%以上の累積圧下率で熱間圧延を施すことを特徴
とする上述した引張強さ570N/mm2 以上の大入熱
溶接性、溶接割れ感受性および耐候性に優れた高張力鋼
の製造方法である。
理由等について説明する。 <C>C量0.06%未満では他の焼入れ性向上元素の
多量添加が必要となりコスト高、靱性劣化、溶接性の劣
化を招く。また、特に本発明鋼に大入熱溶接を施す場
合、C含有量が0.06%に満たないと溶接金属へのC
の希釈が少なくなり一般の溶接材料では継手強度を確保
することが困難となる。C量の上限は溶接割れ感受性の
確保のため0.1%である。
確保する上で有効に働くので0.01%以上添加する。
しかし、0.4%を越える添加は溶接割れ感受性と溶接
継手靱性を劣化させる。
確保する上で有効に働くので0.5%以上添加する。し
かし、1.4%を越える添加は溶接割れ感受性を劣化さ
せ、必要以上の焼入れ性をもたらし母材靱性、継手靱性
を劣化させる。
母材および溶接継手強度を向上させる効果を有する。N
iはさらに靱性を改善する働きを示す。また、耐候性を
確保するためこれらの合金元素は本発明においてCu:
0.2〜0.5%、Ni:0.3%以下、Cr:0.3
〜0.8%の範囲で添加しなくてはならない。しかし必
要以上の焼入れ性を確保させないとの配慮からそれぞれ
に上限を設定した。
するために0.005%以上添加する。しかし、0.0
5%を越える添加は、溶接継手靱性を劣化させる傾向も
認められることからNb添加量の上限を0.05%、好
ましくは0.03%とする。
通常0.005%以上は含有する。また、ミクロ組織の
微細化による母材靱性の確保のために0.01%添加す
る。しかし、0.1%を越えるAl添加は母材靱性を損
なう。
物を形成することでミクロ組織を微細化し、母材靱性を
向上させるため、および焼戻し時にNb,Vなどと反応
し析出硬化による強度確保のために添加する。
通じて母材および溶接継手の靱性を改善する効果を有す
る。また、B添加鋼では、焼入れ性に有効に働くBを確
保するため積極的に添加される。しかし、本発明では溶
接熱影響部の硬化が懸念されるBを添加せずに母材強度
を確保し、特に熱影響部粗粒域の硬度低減により溶接継
手靱性を達成するため、Tiを添加する必然性はない。
むしろTi添加による母材性能の不安定さを懸念し、不
純物元素として0.002%以下に規制するが後述する
N含有量の3.4倍を下回ることが望ましい。
物元素として0.0003%未満に規制しなければなら
ない。0.0005%未満の添加ではミクロ組織の微細
化および強度確保に必要な析出物が形成されず、0.0
05%を越える添加はむしろ母材および大入熱溶接継手
の靱性う損なう。
耐候性を向上させる効果を有することから選択的に添加
できる。ただし、溶接割れ感受性と溶接継手靱性を劣化
させる傾向が認められるため、上限を0.15%とす
る。ただし、必要以上の焼入れ性を確保しない様にとの
配慮から上限を0.1%とすることが好ましい。また、
添加する場合の下限は、上記の効果を発揮させるため
0.02%とすることが好ましい。
する上で有効に働くので、選択的に0.01%以上添加
することが可能である。
感受性を劣化させ、かつ母材靱性を損なう。 <P,S>P,Sは、いずれも不純物元素である。Pに
ついては耐候性を向上させる効果を有する。しかし、健
全な母材および溶接継手を得るためにはいずれも0.0
15%以下好ましくは0.01%以下に規制されること
が望ましい。
指数であり、通常の環境において溶接施工時の予熱を不
要にするために0.21以下に規制する。
いる炭素当量値である。厚肉材を含む従来の600N/
mm2 級高張力鋼のCeq値は概ね0.40を越えた
が、本発明では先述のようにNb添加により母材強度お
よび大入熱継手強度を確保するので0.40を越えるC
eq値は必要ではなく、むしろ大入熱溶接継手靱性を確
保するためCeq値を0.40以下に制限する。
eq≧t+64 計算式:800Nb+320V+270Ceqは母材の
板厚1/2tにおける強度を表す指数であり、当該業者
間で一般に知られる炭素当量式(Ceq)に本発明の要
であるNb,Vの寄与を加味しさらに概ね25〜100
mmの板厚範囲における板厚効果を考慮して整理した数
式である。尚、板厚効果とは、熱間圧延後の直接焼入れ
により鋼板をAr3変態点以上から強制冷却する際、板
厚に応じてその冷却速度が必然的に変化し、そのため母
材強度が変化することを指す。板厚と冷却速度の関係は
両対数表示において線形な関係にあるため板厚と強度も
同様な関係にて近似できる。ここでは1/2tにおいて
も600N/mm2 級耐候性高張力鋼に分類されるJI
S G3114SMA570に適合する鋼板を得ること
とし、計算式の板厚の項は工業的な簡便さを図るべく板
厚25〜75mmの1/2tの強度との相関を線形とし
て取り扱い、計算式:800Nb+320V+270C
eqが板厚t(mm)に64を加えた値を上回ることと
した。従って板厚が50mmを越える領域では概ね要求
される計算式の関係は厳しめであり、現実に板厚が75
mmを越える場合は計算式:800Nb+320V+2
70Ceqが板厚t(mm)/2に64を加えた値を上
回ることで目標とする1/2tの強度を確保できる。
果はVの場合、V炭窒化物の析出硬化による寄与を表
し、Nbの場合はNb炭窒化物の析出硬化に加えて焼入
れ性上昇による寄与を考慮したものである。直接焼入れ
後焼戻し工程により期待されるこれらの元素の効果は、
熱間圧延前の加熱段階に於いて固溶していることが必要
である。Vは本発明の範囲において添加量全てが固溶し
得るが、Nbの場合は必ずしも全量固溶するとは限らな
い。そこで、Nbの全量固溶を確保できない場合は、l
og{(Nb)×(C+12N/14)}=2.26−
6770/(T(℃)+273.15)の関係より計算
される固溶Nb量を有効Nb量として、上述の計算式を 800(有効Nb)+320V+270Ceq≧t+6
4 として、適用しなければならない。
5mm〜100mmの範囲である。 <熱間圧延前の加熱温度>合金元素の均質化とNbの固
溶を図るため、加熱温度は1000℃以上に設定する必
要がある。しかし、加熱温度が1250℃を越えるとミ
クロ組織の粗大化により母材の靱性が確保されなくなる
ので上限を1250℃、好ましくは1200℃、更に好
ましくは1150℃とする。
熱間圧延する工程は、通常の条件に依って差し支えな
い。母材の靱性をより安定に確保、向上させる観点か
ら、1050℃以下の温度域で20%以上の累積圧下を
付与することが望ましい。累積圧下を20%以上とする
ことでγ粒の再結晶に伴う細粒化を達成し、母材の靱性
をより安定に確保、向上させることができる。同じ理由
から、圧延1パス毎の圧下率を5%以上、更に好ましく
は10%以上確保することが望ましい。
態点を上回る温度の鋼板を強制冷却し焼入れ処理を施す
ことが必要である。強制冷却は水等の冷却媒体を鋼板に
均一に付与し、板厚1/2tにて少なくとも1℃/se
c以上の冷却速度を達成させなければならない。
る性能変化に対する懸念を取り除くため実施されるが、
本発明ではNb炭窒化物の析出硬化による母材強度確保
という重要な意味を持つ。焼戻しは570℃以上で実施
しなければ上記の目的を達成できず、好ましくは600
℃以上で実施する。しかし、Ac1変態点を越える温度
で焼戻しを行うと強度の低下が著しく、600N/mm
2 級高張力鋼としての強度が確保されない。
を示す。表1に示した化学成分の鋼を溶製し、鋼塊とな
し、表2に示した製造条件にて所定の板厚に熱間圧延
後、直接焼入れし、更に焼戻し処理を施し供試鋼を得
た。尚、圧延仕上温度はいずれも850℃以上であり、
焼戻し温度は580〜680℃の範囲とした。
およびシャルピー衝撃試験を圧延方向と垂直な方向にて
採取し600N/mm2 級鋼としての母材の機械的性質
を評価した。その結果を表3に示す。
Y型溶接割れ試験を、JIS Z3101に準拠して最
高硬さ試験をそれぞれ実施し、溶接割れ感受性を評価し
た。これらの試験はいずれも60キロ級鋼用超低水素タ
イプの溶接材料を用いて、雰囲気20℃−60%、試験
片初期温度25℃の条件で行った。更に板厚25mmの
供試鋼を用いて大入熱溶接性を評価した。エレクトロガ
スアーク溶接により片面一層により入熱10〜12kJ
/mmにて溶接継手を作成し、継手引張試験と切欠位置
をボンド部としたシャルピー衝撃試験を行い継手強度と
継手靱性を評価した。
例である。A鋼の計算値(800Nb+320V+27
0Ceq=120)は供試鋼板厚(25、50)に64
を加えた値(89、114)を上回り、そのため板厚中
心部の母材の引張り強さは570N/mm2 を越え靱性
も良好であった。また、Pcm値は0.19と低く、Y
割れ試験において溶接割れは発生しなかった。また板厚
25mmの実施例No.1にて調査した大入熱溶接性は
継手強度、継手靱性ともに良好である。
例および比較例である。板厚50mmでは計算値が板厚
t+64を上回り板厚中心部母材の機械的性質は良好で
あるが、板厚75mmでは計算値が板厚t+64を下回
り、強度が570N/mm2に達しない。
例および比較例である。No.5では1150℃で加熱
された鋼Cの計算値(800Nb+320V+270C
eq=141)は供試鋼板厚(75)に64加えた値
(139)を上回り、板厚中心部の強度は570N/m
m2 に達したが、加熱温度を1000℃としたNo.6
(比較例)では、有効Nbは0.012%に減じ、その
ため計算値は132となり、板厚t+64を下回り、板
厚中心部の強度は570N/mm2 に満たなかった。
No.7(本発明例)では、計算値が板厚50mmに6
4を加えた値を上回り、良好な強度が得られる。実施例
No.8〜11は鋼D,Eによる本発明例および比較例
である。
の減少に伴い、板厚50mm材で強度が不足する。実施
例No.12は鋼Fによる比較例である。本発明の特徴
であるNbを用いずに板厚75mmの鋼板を得ようとし
たため、Pcmが0.21%を上回り最高硬さは高く、
またY型割れ試験で割れが発生した。
が0.32および0.31と小さいこれらの鋼による大
入熱溶接性の評価を併せて行い、良好な性能を確認し
た。No.13はC量を本発明の下限とした本発明例で
ある。板厚50mm材において良好な機械的性質が溶接
性と共に確認された。
び比較例である。No.14に示したように本発明の範
囲を満たす鋼Hに本発明の要件であるDQTプロセスを
組み合わせるので良好な母材強度が確保されるが、N
o.15では900℃加熱によるQTプロセスを適用し
たため有効Nb量は0.004%に激減し、目標とする
強度を確保できない。
型の化学成分にて耐候性600N/mm2 鋼を製造した
比較例である。母材の機械的性質は良好であったが、溶
接割れ感受性は板厚が25mmであったためY型割れ試
験で割れを発生しなかったものの最高硬さは324と高
く、かつ、大入熱溶接継手靱性は良好ではない。
G3114に規定されるSMA570で要求されるC
u,Cr,Niを含有するので、使用中に安定な酸化皮
膜を生成し良好な耐候性を発現する。
接性、溶接割れ感受性および耐候性に優れた600N/
mm2 級高張力鋼およびその製造方法を提供できる。
Claims (4)
- 【請求項1】重量%で、C:0.06〜0.1%、S
i:0.01〜0.4%、Mn:0.5〜1.4%、C
u:0.2〜0.5%、Ni:0.05〜0.3%、C
r:0.3〜0.8%、Nb:0.005〜0.05
%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜
0.005%、Ti≦0.002%、B<0.0003
%、Mo≦0.15%、V≦0.1%を含み、 Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+N
i/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bで
定義されるPcm値が0.21以下、かつ、Ceq=C
+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo
/4+V/14で定義されるCeq値が0.40以下で
残部が鉄および不可避不純物よりなる引張強さ570N
/mm2 以上を有する大入熱溶接性、溶接割れ感受性お
よび耐候性に優れた高張力鋼。 - 【請求項2】重量%で、C:0.06〜0.1%、S
i:0.01〜0.4%、Mn:0.5〜1.4%、C
u:0.2〜0.5%、Ni:0.05〜0.3%、C
r:0.3〜0.8%、Nb:0.005〜0.05
%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜
0.005%、Ti≦0.002%、B<0.0003
%、Mo≦0.15%、V≦0.1%を含み、 Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+N
i/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5Bで
定義されるPcm値が0.21以下、かつ、Ceq=C
+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo
/4+V/14で定義されるCeq値が0.40以下の
鋼を熱間圧延する際、1000℃以上1250℃以下の
温度に加熱後、熱間圧延を行い、引続きAr3変態点以
上の温度から直接焼入れし、さらにAc1変態点以下の
温度で焼戻し処理を施すことを特徴とする引張強さ57
0N/mm2 以上の大入熱溶接性、溶接割れ感受性およ
び耐候性に優れた高張力鋼の製造方法。 - 【請求項3】Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni
/40+Cr/5+Mo/4+V/14で定義されるC
eq値および、1000〜1250℃の温度範囲に設定
された加熱温度T(℃)を用いて、log{(Nb)×
(C+12N/14)}=2.26−6770/(T+
273.15)の関係より計算される固溶Nb量を有効
Nb量として、有効Nb、V含有量、目的とする鋼板厚
t(mm)を用いて、800(有効Nb)+320V+
270Ceq≧t+64の関係を満たすことを特徴とす
る請求項2に記載の引張強さ570N/mm2 以上の大
入熱溶接性、溶接割れ感受性および耐候性に優れた高張
力鋼の製造方法。 - 【請求項4】熱間圧延に際して、1050℃以下で20
%以上の累積圧下率で熱間圧延を施すことを特徴とする
請求項2又は3に記載の引張強さ570N/mm2 以上
の大入熱溶接性、溶接割れ感受性および耐候性に優れた
高張力鋼の製造方法。
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JPH108193A JPH108193A (ja) | 1998-01-13 |
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