JP2540518Y2 - シャワー付車椅子入浴装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、車椅子入浴装置にシャ
ワーを設け、寝たきり老人等の入浴に好適になしたシャ
ワー付車椅子入浴装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】寝たきり老人等の入浴装置としては、車
椅子のままで入浴できるものが、入浴者の持つ羞恥心を
可及的に和らげることができるし、多数の入浴者を介助
労力少なく効率的に入浴させることもできるので有利で
ある。さらに、車椅子のままで入浴できるものにあって
は、入浴者が車椅子のままでドア付出入口から浴槽内に
入った後に一挙に湯を供給できるものであれば一層入浴
効率が高まるのであって、出願人は、これらを満足する
ものとして、車椅子出入用のドア付出入口を備えた浴槽
に貯湯タンクを連通連設した貯湯タンク併設型の車椅子
入浴装置を開発して利用に供しているところである。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】従来の貯湯タンク併設
型の車椅子入浴装置にあっては、設定された温度で貯湯
タンク内に貯えられている湯が、一気に浴槽内に供給さ
れることとなるのであるが、かかる供給形態であると、
「ぬるめの湯から入って、徐々に昇温し、浴槽から出る
時に熱くする」という手法が採れず、一気の湯供給によ
って、入浴者の心肺機能への負担が大きいものとなる。

【０００４】殊に、老人ホ−ムなどでの入浴において
は、一人当りの入浴時間が限られる関係で、貯湯タンク
から浴槽への給湯移動や、浴槽から貯湯タンクへの排水
移動が急速に行われがちで、これに入浴者が老人である
ことが加わって心肺機能の負担が特に大きいということ
が危惧される。そこで、本考案は、貯湯タンクを併設し
た車椅子入浴装置の良さを維持しながら、心肺機能の負
担を和らげることができるように考案したシャワー付車
椅子入浴装置を提供することを目的としたものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】すなわち、本考案におけ
るシャワー付車椅子入浴装置は、車椅子が出入する為の
ドア５が設けられた出入口(１)を備えた浴槽(２)と、浴
槽(２)に連通する貯湯タンク(３)とからなり、浴槽(２)
に複数個のシャワー(４)を設けてあることを特徴とする
シャワー付車椅子入浴装置である。

【０００６】又、複数個のシャワ−(４)の吐出湯温を、
体温程度の温度から任意に設定する設定温度まで徐々に
上昇させ得る漸増制御手段(Ａ)を備えている。又、複数
個のシャワ−(４)は正面シャワー４ａ、左側面シャワー
４ｂ、右側面シャワー４ｃから成り、これらのシャワー
４への湯供給管路にはそれぞれ湯温微調整器３９が設け
られ、それぞれのシャワー４の吐出湯温は互いに非同一
とすることが可能である。

【０００７】

【作用】上記のように構成されたシャワー付車椅子入浴
装置によって入浴するときは、浴槽が空の状態で出入口
のドアを開き、その出入口から車椅子に乗った入浴者を
浴槽内に入れて所定の場所に位置させ、しかる後にドア
を閉める準備操作をする。次に、浴槽に設けられている
複数個のシャワ−から、体温程度に温度設定された湯を
噴出させ入浴者にかけて、身体を徐々に馴らして行く。

【０００８】そうした後に、入浴に適する温度に設定さ
れて貯湯タンク内に貯えられている湯を、浴槽内に一気
に供給して所期の入浴を行い、入浴が終われば、浴槽内
の湯を貯湯タンクに還流させる或いは廃棄するなどして
浴槽を空けた後、やや熱めに温度設定した湯をシャワ−
から噴出させて入浴者を後洗いし、その後にドアを開い
て出入口から車椅子を出し、次の入浴に備える。また、
複数個のシャワ−からの吐出湯温を、体温程度の温度か
ら設定温度にまで徐々に上昇させ得る自動制御手段を備
えさせたものでは、シャワ−からの噴出湯温を、短時間
の間に、体温程度から徐々に温度上昇させて設定温度に
自動的に上昇させて行くことができるので、入浴温度に
対する入浴者の身体の馴れが益々好適に行われ、介助負
担も省力される。

【０００９】

【実施例】次に、本考案の実施例について図面を参照し
て説明する。図１は本考案に係るシャワー付車椅子入浴
装置の全体斜視図、図２は本考案に係るシャワー付車椅
子入浴装置の給排水用湯移動ラインおよびシャワ−の吐
出湯温を自動制御する制御手段の一例を示す回路図、図
３は漸増制御手段を示す回路図である。

【００１０】図１において、シャワー付車椅子入浴装置
は、浴槽２と貯湯タンク３とによって構成されており、
両者の間は給排水用湯移動ラインで結合され、浴槽２か
ら貯湯タンク３、および貯湯タンク３から浴槽２へと湯
を移動させることができるようになっている。浴槽２の
正面部分には車椅子用の出入口１が開設され、その出入
口１にはドア５が設けられると共に、出入口１の下辺外
方部分には浴槽への車椅子（図示されていない）の出入
りを容易且つ円滑にする為のスロ−プ台６が付設されて
いる。ドア５は、出入口１の一方の縦壁部にヒンジ装着
され、その内側にはシ−ルドア７が取り付けられて、ド
ア閉塞時にシ−ルドア７によって出入口１を水密状に閉
塞できるようになっている。

【００１１】なお、８は、ドア５を閉塞状態に施錠維持
するロック機構、９は、ドアが開放状態にあるか閉塞状
態にあるかを検知して、後述する自動制御手段に必要な
信号を付与するドア開閉検知センサ、１０は、前記ドア
開閉検知センサ等を含んで構成される自動制御手段の設
定操作や、その他の各種運転操作を行う運転パネルであ
り、図のものは浴槽の外側に装備されている。また、１
１は、スロ−プ台又はスロ−プ台の一部を浴槽の底壁上
面に滑らかに連なる上昇位置とドアの開閉に支障のない
降下位置とに切り換え操作をする操作具であり、１２
は、浴槽内への湯供給口であり、１３は、オ−バ−フロ
−口である。

【００１２】貯湯タンク３は、本体１４と蓋１５とによ
って構成され、その本体内の槽と前記浴槽２とが給排湯
ラインで連通結合されるのであるが、両者間を連通結合
する給排湯ラインは、図２に示すように構成されてい
る。貯湯タンク３内に貯えられた湯の温度を入浴に適す
る温度（例えば、４２度）に保って貯溜するように、貯
湯タンク３内の湯温を貯湯温度センサ４３で測り、この
温度が設定温度に一定するよう貯湯コントローラー４２
によって湯源Ｈを供給する加温弁４１を開閉している。
図２において、水源Ｃ、湯源Ｈの各々から出る水、湯管
路１６、１７は、水、湯フィルタ１８、１９を介してモ
−タドライブ型のミキシングバルブ２０に接続され、ミ
キシングバルブ２０の送出側管路２１は、中途にミキシ
ング湯電磁弁２２を介しながら、浴槽内に開口する前述
の湯供給口１２に接続される。

【００１３】一方、浴槽２と貯湯タンク３の間を連通結
合する給排水用湯移動ラインは、浴槽２から貯湯タンク
３に湯を移動する第１ポンプＰ１を備えた管路２３と、
貯湯タンク３から浴槽２に湯を移動する第２ポンプＰ２
を備えた管路２４とによって構成されており、図示を省
略しているけれども、両管路の第１ポンプＰ１、第２ポ
ンプＰ２は、前記運転パネル部１０の操作により、前記
ドア開閉検知センサ９の付与信号に基づき所期の作動を
行わせ得るように構成されている。そして、湯供給口１
２から浴槽２内に供給された新しい湯を、管路２３によ
って貯湯タンク３側に送って貯え、必要な時に貯湯タン
ク３から浴槽２に移動させたり、浴槽２から貯湯タンク
３に再び還流させたりできるようになっている。

【００１４】また、貯湯タンク３にはドレン路２５が設
けられ、浴槽２には浴槽内の湯を排出するための排水弁
２６が設けられており、さらに、浴槽の適当な部位に
は、浴槽内に居る入浴者に対して噴出湯をかけることが
できる複数個のシャワ−４が設置されている。

【００１５】これらのシャワ−４は、入浴者の正面にシ
ャワーを付与する正面シャワー４ａと、入浴者の左側面
にシャワーを付与する左側面シャワー４ｂと、入浴者の
右側面にシャワーを付与する右側面シャワー４ｃから成
り、これらのシャワー４は、前記ミキシングバルブ２０
の送出側管路２１から分岐するシャワ−管路２７に接続
され、そのシャワ−管路２７にはシャワ−用電磁弁２８
および排水用電磁弁２９が介装されており、これらの電
磁弁が所定の状態にあるときに、モ−タドライブ型のミ
キシングバルブ２０から送出される新しい湯をシャワ−
４から噴出するようになっている。

【００１６】前記シャワ−４の湯温設定、時間設定等
は、漸増制御手段Ａによって行えるように構成されるの
であり、そのために、ミキシングバルブ２０からの送出
湯温を検知する温度センサ３０が、また、シャワ−４に
近い部位には、管路送湯による温度ロスを検知して実質
的な噴出湯温を知るための温度センサ３１が設けられ、
それらの検出値が運転パネル１０部に設置されているコ
ントロ−ラ３６に与えられるようになっている。そし
て、ミキシングバルブ２０のモ−タ３２、送出側管路２
１のミキシング用電磁弁２２、シャワ−管路２７のシャ
ワ−用電磁弁２８および排水用電磁弁２９が、前記コン
トロ−ラ３６によって設定通りに作動される。浴槽２へ
供給する際は、約４２度に設定した一定温度で供給し、
シャワー４へ給湯する際は、設定された時間内に体温程
度の温度から徐々に温度上昇して設定された最高温度
（例えば４３度）までに自動的に温度変化する湯をシャ
ワ−４から噴出するように構成されているのである。

【００１７】なお、図２中３３は、浴槽２内の湯量を検
出するために設けられているフロ−トスイッチである。
又、３４は、貯湯タンク３に第３ポンプＰ３によってポ
ンプアップ可能に接続して、浴槽２の上部両側等の適宜
位置に設けられた循環湯シャワ−であり、入浴中におい
て、湯面から露出する肩部に湯をかけるなど便利に用い
ることができる。

【００１８】又、３９は、シャワー４の湯供給管路に設
ける電熱線等で成る湯温微調整器であり、正面シャワー
４ａのシャワー吐出湯温を他のシャワー吐出湯温よりや
や低温に設定する等、シャワー吐出湯温に差が生じるよ
う微調整するものである。又、３７は、入浴の終了時点
で作動する温風機であり、３８は、温風機３７で作った
圧縮温風を浴槽２内の入浴者に噴出付与する温風用ノズ
ルである。この噴出温風により入浴終了時に入浴者から
付着水分を払拭除去する。この温風付与手段によれば、
介助者にとっては、入浴者の清拭介助労力が省け、入浴
者にとっては、羞恥心や心労の軽減ができ大いに有益で
ある。

【００１９】

【考案の効果】以上に述べたように、本考案におけるシ
ャワー付車椅子入浴装置は、車椅子出入用のドア付の出
入口を備えた浴槽と、浴槽に連通する貯湯タンクとから
なり、前記浴槽に、複数個のシャワ−を設たものである
から、入浴者が車椅子に乗ったまま浴槽に入った後、貯
湯タンク内の湯を浴槽に供給する前に、シャワ−により
任意に設定された湯を噴出させ、それを入浴者にかけ、
入浴者の身体を徐々に加温し温湯に馴らすことができる
ので、貯湯タンク併設型の車椅子入浴装置の、湯の供給
時間及び湯の排水時間を素早く行ない能率よく入浴が行
なえるという良さを損なわずに、入浴者の心肺機能の負
担を和らげることができて、慣行の入浴に近い好適な入
浴が行える。又、このシャワ−は、上がり湯等としても
利用でき好都合である。

【００２０】さらに、複数個のシャワ−からの吐出湯温
を、体温程度の温度から設定温度にまで徐々に上昇させ
得る漸増制御手段を備えているから、シャワ−の吐出湯
温は、適宜に設定された短時間のうちに、体温程度から
設定温度まで自動的に漸増させることができ、貯湯タン
ク内の全湯を漸増温度変化させる等により浴槽へ入れる
湯の温度を変化調整させる場合に比べると、水消費や加
温エネルギー消費等のランニングコストが極めて低廉で
あり、シャワ−の吐出湯温を入浴者の体調などに合わせ
て自由に変更設定でき、入浴温度に対する入浴者の身体
の馴れが益々好適に行われ、介助者には介助労力が省力
され、入浴者には快適で安全な入浴が行える。

【００２１】さらに、複数個のシャワ−からの吐出湯温
を、或る一つのシャワーのシャワー吐出温度を他のシャ
ワーのシャワー吐出温度とは僅か異なるようにする湯温
微調整器を設けているから、例えば、正面シャワ−から
の噴出湯温を、左側・右側シャワーのシャワー吐出温湯
より下げて付与する等の実施により、入浴者を馴化加温
し、心臓等への負担を軽減して安全に入浴させることが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係るシャワー付車椅子入浴装置の全体
斜視図である。

【図２】本考案に係るシャワー付車椅子入浴装置の給排
湯ラインおよびシャワ−の吐出湯温を制御する手段を示
す回路図である。

【図３】本考案に係るシャワー付車椅子入浴装置の漸増
制御手段を示す回路図である。

【符号の説明】

１ 出入口 ２ 浴槽 ３ 貯湯タンク ４ シャワ- ４ａ 正面シャワー ４ｂ 左側面シャワー ４ｃ 右側面シャワー ５ ドア ３９ 湯温微調整手段 Ａ 自動制御手段

Claims (3)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ドア（５）が設けられた出入口(１)を備
   えた浴槽(２)と、浴槽(２)に連通する貯湯タンク(３)と
   からなり、浴槽(２)に複数個のシャワー(４)を設けたこ
   とを特徴とするシャワー付車椅子入浴装置。
2. 【請求項２】 複数個のシャワ−(４)の吐出湯温を、体
   温程度の温度から任意に設定する設定温度まで徐々に上
   昇させる漸増制御手段(Ａ)を備えていることを特徴とす
   る請求項１記載のシャワー付車椅子入浴装置。
3. 【請求項３】 複数個のシャワ−(４)は正面シャワー
   （４ａ）、左側面シャワー（４ｂ）、右側面シャワー
   （４ｃ）から成り、正面、左側面、右側面シャワー（４
   ａ、４ｂ、４ｃ）の湯供給管路には各個に湯温微調整器
   （３９）が設けられ、正面、左側面、右側面シャワー
   （４ａ、４ｂ、４ｃ）の吐出湯温は互いに非同一に為す
   ことが可能であることを特徴とする請求項１記載のシャ
   ワー付車椅子入浴装置。