JP2538827B2 - 固定化酵素による高甘味糖付加ステビア甘味料の製造方法 - Google Patents

固定化酵素による高甘味糖付加ステビア甘味料の製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、α−グルコシルステビ
ア抽出物より成る固定化酵素による高甘味糖付加ステビ
ア甘味料の製造方法に関するものであり、特に固定化酵
素処理でα−グルコシル化することに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、ステビア甘味料は、溶解性、熱安
定性、非褐変性、非発酵性など優れた加工適性を備えて
いることから単独、または他の甘味料或いは有機酸、有
機酸塩類などと混合して各種飲料への甘味付与に使用さ
れている。しかし、ステビア抽出物の高甘味主成分であ
るステビオシドの味質は特有の苦み、渋みを有している
ため、用途が限定されている。そこで、酵素を用いてス
テビア抽出物にα−グルコシル糖化合物を付加し、甘味
料の味質を改善する試みがなされている(特公昭57−
18779号公報、特開平3−83558号公報等)。
【0003】しかしながら、実際に工業規模で生産を行
う場合、開示されているバッチ法を用いると、反応後の
酵素の回収、再生操作が困難で結局、酵素が反応毎に使
い捨てになる。更に反応時間が非常に長時間掛かり、ス
テビオシドの反応率{[1−(ステビオシド含有率/原
料ステビオシド含有率)]×100}が低いという欠点
を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前述したバッ
チ法の欠点を解決し、反応後の酵素の回収が不要、再生
操作が容易、反応時間が短く、長時間の連続生産が可能
で、更に従来よりもステビオシドの反応率が高いα−グ
ルコシルステビア抽出物より成る固定化酵素による高甘
味糖付加ステビア甘味料の製造方法を提供することを目
的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記の課題
を解決すべく鋭意検討した結果、不飽和カルボン酸グリ
シジルエステルの重合物の母体に、イオン交換基として
第1級アミンを有する塩基性イオン交換樹脂である担体
に、グルタールアルデヒドを架橋剤としてシクロデキス
トリングルコシルトランスフェラーゼ(以下、CGT−
aseと略称する。)を固定化した固定化酵素を用いて
α−グルコシル化することを特徴とするα−グルコシル
ステビア抽出物より成る固定化酵素による高甘味糖付加
ステビア甘味料の製造方法を用いることにより、その目
的を達成し得ることを見出だし、本発明を成すに至っ
た。
【0006】本発明に用いる担体は例えばメタアクリル
酸グリシジルエステルまたはアクリル酸グリシジルエス
テル、クロトン酸グリシジルエステルに、架橋剤として
ジメタアクリル酸エチレングリコール、ジメタアクリル
酸ポリエチレングリコールを用いて重合反応させた、不
飽和カルボン酸グリシジルエステルの重合物から成る巨
大網目構造を有する母体に、例えばエタノールアミン、
プロパノールアミン若しくはアンモニウムを反応させて
イオン交換基として第1級アミンを付加させたものであ
る。なお、巨大網目構造を有する母体の物理的構造とし
ては平均粒子径0.2〜1mmで、細孔径が100〜2
000Å、細孔容積が0.5〜1.5ml/g程度のも
のである(特開平2−35082)。
【0007】また、本発明に用いられるCGT−ase
は各種微生物、特にバチルス属、クレブシーラ(Kle
bsiella)属に属する細菌等から調整されるもの
である。これ等の酵素は、α−グルコシル糖化合物とス
テビオシドとを含有する水溶液に反応させるとき、ステ
ビオシドを分解せずにα−グルコシルステビオシドを生
成するものであれば、必ずしも精製して使用する必要は
無く、通常は粗製品で本発明の目的を達することが出来
る。
【0008】CGT−aseは例えば次のようにして固
定化することが出来る。当該担体をpH 6.0の緩衝
液で緩衝化し、次いで同じ緩衝液に溶解した0.5〜1
0%濃度のグルタールアルデヒド溶液を4〜40℃にて
0.5〜2時間反応させた。その後、緩衝液で過剰のグ
ルタールアルデヒドを洗浄除去する。このようにして調
整した担体とCGT−aseとを1時間以上、好ましく
は2〜5時間反応させてCGT−aseを固定化した
後、過剰のCGT−aseを緩衝液で洗浄除去する。C
GT−aseの固定化量としては、酵素活性として0.
1〜50mg−蛋白/g−湿潤担体、好ましくは0.2
〜10mg−蛋白/g−湿潤担体の範囲が適当である。
【0009】当該担体とグルタールアルデヒド或いはC
GT−ase溶液との接触方法としてはバッチ法でもカ
ラムに充填して上昇流或いは下降流にて通液して実施し
ても良い。本発明で用いられるステビア抽出物は、ステ
ビア葉部から定法により水またはアルコールを用いて抽
出し、非甘味成分を除去精製したものが使用可能であ
る。また、本発明で用いられるα−グルコシル糖化合物
は、CGT−aseによって、ステビオシドからα−グ
ルコシルステビオシドが生成するものであれば何等問題
は無い。例えば、デキストリン、澱粉などが挙げられ
る。次に上記のようにして得た本発明の固定化酵素を用
い、ステビア抽出物とα−グルコシル糖化合物からα−
グルコシルステビア抽出物を生成する処理操作を説明す
る。
【0010】先ず、固定化酵素を反応塔に充填して固定
化酵素の充填層を形成し、当該充填層に基質(ステビア
抽出物とα−グルコシル糖化合物)を下降流或いは上昇
流で通液すると流出液中にα−グルコシルステビア抽出
物を含有する処理液を得ることが出来る。なお通液流速
は固定化したCGT−aseの量にもよるが、α−グル
コシルステビア抽出物の生成を目的とする場合はSV=
0.5〜2程度とすると良い。また、反応温度は50〜
60℃の範囲が適当である。このような酵素反応を長時
間続行すると、固定化したCGT−aseは失活する
が、温アルカリ溶液を接触させることで失活したCGT
−aseを担体から脱着することが出来る。
【0011】即ち、先ず反応に使用した固定化酵素を水
洗し、その後0.5〜10%濃度、特に好ましくは2〜
5%のアルカリ溶液、例えば水酸化ナトリウム、水酸化
カリウム、或いは炭酸ナトリウム溶液と40〜70℃に
て0.5時間以上、好ましくは1〜3時間接触させてC
GT−aseをグルタールアルデヒドと共に脱着し、担
体を水洗する。このときの接触方式はバッチ法でも充填
層にアルカリ溶液を通液する方法でも何れでもよい。以
後は前述した方法で担体の緩衝化、グルタールアルデヒ
ド処理を実施し、CGT−aseを再固定化する。
【0012】
【実施例】以下本発明を、実施例に従って更に詳述する
が、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0013】実施例 第1級アミンを有する不飽和カルボン酸グリシジルエス
テルの重合物から成る塩基性イオン交換樹脂(商品名,
FE4612、オルガノ(株)製)10mlを、その2倍
量の4%水酸化ナトリウム水溶液で50℃で2時間撹拌
して再生し、水洗後、0.1M酢酸緩衝液(pH 6.
0)で緩衝化した。次に、この担体に緩衝液で希釈した
5%グルタールアルデヒド溶液を担体の3倍量加え、室
温で1時間反応させた。更に酢酸緩衝液で過剰のグルタ
ールアルデヒドを洗浄して除去した。
【0014】上記の方法で調整した湿潤樹脂10mlに
CGT−ase(バチルスステアロサーモフィラス産
生)10mlを加え、撹拌しながら2時間反応させて酵
素の固定化を行った。その後、過剰の酵素を酢酸緩衝液
で洗浄除去して固定化酵素10mlを得た。このように
して得た固定化酵素は湿潤担体1g当り0.23mg−
蛋白の酵素が固定化されていた。この酵素10mlをジ
ャケット付きカラムに充填し、40%基質溶液(ステビ
ア抽出物:山陽国策パルプ(株)製、10%とデキストリ
ン:商品名サンディック#70、三和澱粉工業(株)製、
30%)を温度60℃、流速SV=1.0で通液した。
得られた結果から、ステビオシド反応率{[1−(ステ
ビオシド含有率/原料ステビオシド含有率)]×10
0}の径日変化を図1に、反応生成物のHPLC分析チ
ャートを図2に、α−グルコシルステビア抽出物の分析
結果を表1に示す。
【0015】比較例 40%基質溶液(ステビア抽出物:山陽国策パルプ(株)
製、10%とデキストリン:商品名サンディック#7
0、三和澱粉工業(株)製、30%)10mlに0.1M
酢酸緩衝液(pH6.0)100μlを添加し、CGT
−ase(バチルスステアロサーモフィラス産生)10
0μlを加えて、60℃で24時間インキュベートして
酵素反応させた。得られた結果から、反応生成物のHP
LC分析チャートを図2に、α−グルコシルステビア抽
出物の分析結果を表1に示す。図1,2及び表1から、
本発明を用いると、従来法(バッチ法)に比べてステビ
オシドの反応率が90%以上にアップし、且つ60日以
上持続可能であることが判る。
【0016】
【表1】 反応率={[1−(ST含有率/原料ST含有率)]×
100} ST:ステビオシド Gn:STにグルコースn分子が転移した生成物 AS :Gnのピーク面積 Ast:ステビオシドのピーク面積 M :Gnの分子量 Wst:ステビオシドの採取量 mg(O.D) Ws :試料採取量 mg(O.D)
【0017】
【発明の効果】本発明のα−グルコシルステビア抽出物
の製造方法を用いると、反応後の酵素の回収が不要で、
再生の操作が簡単であり、経済的メリットは非常に大き
い。また、従来24時間以上酵素反応が必要だったの
が、固定化樹脂を充填した層内を1時間程度通液するだ
けで充分であるから、反応時間が大幅に短縮出来る。更
に、ステビオシドの反応率が90%以上と、従来のバッ
チ法に比べて大きく改善された。CGT−aseによっ
てα−グルコシルステビア抽出物を製造する際、この反
応率が低いと反応生成物に未反応ステビオシドが多く残
存して、α−グルコシルステビア抽出物の甘味質に好ま
しくない影響を与える。よって、反応率の向上により甘
味質も向上した。尚且つ、この高収率を維持したまま6
0日以上の連続生産が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に於けるα−グルコシルステビア抽出物
の生成状態をステビオシド反応率{[1−(ステビオシ
ド含有率/原料ステビオシド含有率)]×100}を指
標として示したグラフで横軸に通液日数、縦軸に反応率
を示す。
【図2】実施例及び比較例に於けるα−グルコシルステ
ビア抽出物のHPLC分析チャートを示す。
【符号の説明】
1 実施例の場合 2 比較例の場合 3 ステビオシド 4 1分子転移物(G1) 5 2分子転移物(G2)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 不飽和カルボン酸グリシジルエステルの
    重合物の母体にイオン交換基として第1級アミンを有す
    る塩基性イオン交換樹脂である担体に、グルタールアル
    デヒドを架橋剤としてシクロデキストリングルコシルト
    ランスフェラーゼを固定化した固定化酵素を用いてα−
    グルコシル化することを特徴とするα−グルコシルステ
    ビア抽出物より成る固定化酵素による高甘味糖付加ステ
    ビア甘味料の製造方法。
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