JP2536571Y2 - チルトアップチェアー - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【技術分野】本考案は、家庭用、オフィス用のチェアー
（椅子）に係り、特に、チェアーからの離座および着座
が容易なチルトアップチェアーに関する。

【０００２】

【従来技術およびその問題点】家庭用、オフィオス用の
ソファアー等、坐った状態を楽に保つことを主目的とす
るチェアー（安楽椅子）は、着座状態でくつろげるよう
に、坐ると、腰、臀部を座部で包み込み、腰、臀部を広
く支えて、楽な姿勢をとることができるように構成され
ている。しかし、このようなチェアーは、座部の座面が
比較的低く設定されており、臀部が膝の高さよりも低
く、重心が後方にあるので、着座者は、簡単に立ち上が
ることができなかった。

【０００３】そこで、本出願人により、座部駆動装置に
より座部の後方を上昇させて前下がりに傾斜させ、これ
により着座者の臀部を持ち上げて重心を前方に移動さ
せ、自然に立ち上がることができるように構成したチル
トアップチェアーが提案されている（実開平1-141543号
参照）。

【０００４】本出願人は、このチルトアップチェアーに
より着座者の楽な立ち上がりを実現させたが、このチェ
アーは、座部の前傾動作により着座者の臀部を持ち上げ
るだけの構造のため、立ち上がり時に上体の安定は図れ
ず、不十分であった。

【０００５】

【考案の目的】本考案は、上記問題意識に基づいてなさ
れものであり、立ち上がり時の上体を安定させ、着座姿
勢からの立ち上がりを一層容易にさせることのできるチ
ルトアップチェアーを得ることを目的とする。

【０００６】

【考案の概要】本考案は、チェアー基体、座部および背
凭れ部を有するチェアーにおいて、上記座部の前部を枢
支軸により上記チェアー基体に枢着して、該座部を、着
座位置と、この着座位置より後方が上昇する離座位置と
に回動可能とし、この座部の後部に、上記背凭れ部を枢
着し、この枢支軸を支点として上記座部の後部を上昇さ
せる上昇手段を設け、この上昇手段により上記座部を着
座位置から離座位置に回動させるとき、上記背凭れ部の
姿勢を制御する背凭れ部案内機構を設けたことに特徴を
有する。

【０００７】この構成によれば、着座者は、背凭れ部に
より上体を支持され、座部により臀部を支持され、身体
全体を安定支持された状態で容易に立ち上がることがで
きる。

【０００８】

【考案の実施例】以下図示実施例に基づいて本考案を説
明する。図１は、同実施例のチルトアップチェアー１０
を、布、皮革製のカバー、およびクッション等を取り除
いた状態で示した斜視図である。

【０００９】チルトアップチェアー１０は、左右一対の
肘かけ部１１と、この左右の肘かけ部１１の間に装着さ
れた座部１２、および背凭れ部１３を主な構成部品とし
ている。

【００１０】左右の肘かけ部１１を構成する左右の基台
１４の間に、固定部材１５が渡されてその両端を固定さ
れている。基台１４の前部に、座部１２の前部が支軸１
６により回動自在に支持されている。この座部１２の後
部に、支軸２０を介して背凭れ部１３の下部が枢支され
ている。この背凭れ部１３は、左右の支持枠１３ｂを有
し、該左右の支持枠１３ｂの支軸２０より下方は、Ｌ字
状に後方に向けて屈曲させた下端部１３ａとされてい
る。この下端部１３ａの先端にガイドピン１９が設けら
れている。

【００１１】左右の基台１４に、パネル５０がそれぞれ
固定されている。この左右のパネル５０には、それぞれ
左右一対のカム溝１７が形成されている。このカム溝１
７はガイドピン１９とにより背凭れ部案内機構を構成し
ており、上方から下方に向けて円弧状に形成された上方
案内溝１７ｂと、この上方案内溝１７ｂの下端から前方
に向けて形成した上方移動規制溝１７ａを有している。
背凭れ部１３が、図３の状態において、カム溝１７にガ
イドピン１９を沿わせ支軸２０を中心として回動できる
ように、上方移動規制溝１７ａはこの支軸２０を中心と
した円弧状に構成されている。

【００１２】固定部材１５の中央部に、リクライニング
用ガススプリング２１の一端部が回動可能に取り付けら
れている。このリクライニング用ガススプリング２１の
他端部が、ガイドピン１９に回動可能に取り付けられて
いる。

【００１３】パネル５０には、肘かけ部１１の後部上方
に位置するように付勢力調節溝４０が設けられている。
この付勢力調節溝４０に、起立用ガススプリング２３の
一端部２５が、調節ねじ部材４１を介して摺動および固
定可能に取り付けられている（図２）。この調節ねじ部
材４１は、弛められることにより付勢力調節溝４０内で
の移動が可能となり、締められることにより付勢力調節
溝４０に固定される。一端部２５はこの調節ねじ部材４
１に回動自在に支持されているため、起立用ガススプリ
ング２３はこの調節ねじ部材４１に対し上下方向に回動
できる。起立用ガススプリング２３は、チルトアップチ
ェアー１０の左右いずれか一方に設けられていれば目的
を達成することが可能であるが、本実施例では、チルト
アップチェアー１０の左右に設けて動作の安定を図っ
た。

【００１４】基台１４の中央部に、縦方向に補強部材２
６が設けられている。この補強部材２６の上方に、ベル
クランク状の回動リンク２７の中央部が支軸３５により
枢支されている。起立用ガススプリング２３の他端部
に、連動リンク４２の一端部が枢支ピン２４を介して枢
支されており、この連動リンク４２の他端部が枢支ピン
３９を介して回動リンク２７の一端部に枢着されてい
る。座部１２の中央部よりやや前部寄りに、下方に向け
て突出させたブラケット３３が設けられている。このブ
ラケット３３の下端部に枢支ピン３２を介して連動リン
ク３１の一端部が枢着されている。この連動リンク３１
の他端部に枢支ピン４４を介して回動リンク２７の他端
部が枢着されている。

【００１５】チルトアップチェアー１０の基本操作およ
び動作について説明する。通常の使用状態では、図３に
示すように、座部１２は後がやや下がった状態にある。
この状態では、図示しない解除レバーの操作でガススプ
リングストッパを解除させることにより、背凭れ部１３
を、後方に最大に傾斜させた実線位置と直立させた二点
鎖線位置との間で自由に回動させることができる。つま
り着座者は、解除レバーを操作したまま背凭れ部１３に
荷重をかければこの背凭れ部１３を後方に傾斜させるこ
とができ、前かがみになって背凭れ部１３への荷重を減
少させればリクライニング用ガススプリング２１の付勢
力により、背凭れ部１３を前方に傾斜させることができ
る。これがいわゆるリクライニング操作である。このリ
クライニング操作時の背凭れ部１３は、図３の状態にあ
る座部１２後端部の支軸２０を中心として、ガイドピン
１９を上方移動規制溝１７ａ内で摺動させるから、安定
して回動できる。また適宜の位置で解除レバーの操作を
止めれば、背凭れ部１３はその位置に固定される。

【００１６】次に、背凭れ部１３が図３の実線位置にあ
る状態から、立ち上がり時のチルトアップ・ダウン動作
を説明する。

【００１７】この状態では、リクライニング用ガススプ
リング２１はガススプリングストッパにより規制されて
いて、付勢力を背凭れ部１３に作用させないから、リク
ライニング用ガススプリング２１は最収縮状態にあり、
ガイドピン１９は上方移動規制溝１７ａの前端部に位置
している。起立用ガススプリング２３は、一端部２５が
調節ねじ部材４１の調整により、付勢力が適宜の強さに
なるようにセットされている。起立用ガススプリング２
３の付勢力が連動リンク４２を介して回動リンク２７に
作用されているが、回動リンク２７が座部１２の後方を
持ち上げ前傾させようとしても、背凭れ部１３がガイド
ピン１９を上方移動規制溝１７ａに嵌入させていて上方
への移動を阻止されているので、座部１２は前傾されな
い。

【００１８】この状態において、着座者が、立ち上がる
ため解除レバーを操作し、ガススプリングストッパを解
除し、前かがみになって背凭れ部１３への荷重減らす
と、リクライニング用ガススプリング２１の伸長動によ
りガイドピン１９が上方移動規制溝１７ａ内を、上方案
内溝１７ｂとの境界部つまり立ち上がり部に当接するま
で移動される。これにより、ガイドピン１９の上方への
移動規制が解除される（図４）。

【００１９】このとき、着座している者の体重と起立用
ガススプリング２３による付勢力とが釣合った状態にあ
り、座部１２はすぐには前傾しないが、着座者が前かが
みの姿勢から立ち上がろうとすると、荷重の移動により
起立用ガススプリング２３の付勢力が打ち勝つ。これに
より、座部１２は背凭れ部１３を、つまりガイドピン１
９を上方案内溝１７ｂ内で上方に向け移動させながら、
支軸１６を中心に図の反時計方向に回動する。この回動
初期状態において、背凭れ部１３は、支軸２０とガイド
ピン１９によりその二点を支持されて、略直立姿勢で前
部上方に向けて回動移動される。したがって、着座者
は、座部１２により臀部を支えられ、背凭れ部１３によ
り上体を支持され、安定した姿勢で膝を自然に伸ばし、
起立姿勢になることができる（図５）。

【００２０】そして完全に立ち上がることのできる離座
位置に向けて座部１２が移動する間に、背凭れ部１３
は、支軸２０とガイドピン１９とによってその二点を支
持され、かつ該ガイドピン１９が、前方に向けて湾曲さ
れた上方案内溝１７ｂに沿って移動するので、後方に傾
斜する。これにより、着座者が、離座位置においてチル
トアップチェアー１０から離れるとき、背凭れ部１３を
邪魔にすることはない（図７）。なお、図３〜図７に示
したチルトアップチェアー１０の作動を、図８〜図１２
に模式的に示した。

【００２１】着座者が立ち上がった後、チルトアップチ
ェアー１０は図７の状態で保持されているため、再び着
座すると、座部１２かかる体重により起立用ガススプリ
ング２３が収縮され、座部１２が次第に時計方向に回動
される。これに伴い背凭れ部１３が次第に前傾して着座
者の上体を支えるので、着座者は腰を深くかがめた不自
然な姿勢をとることなく、安定した姿勢のまま楽に坐る
ことができる。

【００２２】そしてガイドピン１９が、上方移動規制溝
１７ａと上方案内溝１７ｂとの境界部に到達した時点で
ガイドピン１９の下降が規制され、座部１２の回動が停
止される。この状態で、着座者は、背凭れ部１３に荷重
をかけて好みの角度に回動させ、解除レバーを操作して
ガススプリングストッパを作動させて、背凭れ部１３を
その位置に固定することができる。

【００２３】本実施例のチルトアップチェアー１０は、
複雑な駆動回路や駆動機構を必要とせず、連動リンク機
構に起立用ガススプリング２３による付勢力を作用させ
るだけの簡単な構造により本考案を達成させることがで
きるから、極めて安価に製造される。

【００２４】また、構造はやや複雑になるが、リクライ
ニング用ガススプリング２１と起立用ガススプリング２
３に代え、同様の機能を有する電動機構を用いてチルト
アップチェアー１０を構成させることも可能である。

【００２５】

【考案の効果】以上説明したように本考案のチルトアッ
プチェアーは、座部が着座位置から離座位置に移動する
とき、背凭れ部を、背凭れ部案内機構により姿勢を制御
させ座部とともに移動させることができるから、着座者
は、座部により臀部を支持されかつ背凭れ部により上体
を支持され、身体全体を安定して支持されながら、極め
て容易に立ち上がることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案を適用させたチルトアップチェアーを、
布、皮革製のカバーおよびクッション等を取り除いた状
態で示した斜視図である。

【図２】起立用ガススプリングのチルトアップ力を調整
する構造を示す斜視図である。

【図３〜図７】着座位置から離着可能位置に向けて移動
するときの、座部および背凭れ部の変化を段階的に示す
図である。

【図８〜図１２】図３〜図７の座部および背凭れ部の段
階的変化を模式的に示す図である。

【符号の説明】

１０ チルトアップチェアー １１ 肘かけ部 １２ 座部 １３ 背凭れ部 １４ 基台 １５ 固定部材 １６ 支軸 １７ カム溝 １７ａ 上方移動規制溝 １７ｂ 上方案内溝 １８ ブラケット １９ ガイドピン ２０ 支軸 ２１ リクライニング用ガススプリング ２３ 起立用ガススプリング ２４ 枢支ピン ２５ 一端部 ２６ 補強部材 ２７ 回動リンク ３１ 連動リンク ３２ 枢支ピン ３３ ブラケット ３５ 支軸 ３９ 枢支ピン ４０ 付勢力調節溝 ４１ 調節ねじ部材 ４２ 連動リンク ４４ 枢支ピン ５０ パネル

Claims (5)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】チェアー基体、座部および背凭れ部を有す
   るチェアーにおいて、上記座部の前部を枢支軸により上
   記基体に枢着して、該座部を、着座位置と、この着座位
   置より後方が上昇する離座位置とに回動可能とし、この
   座部の後部に、上記背凭れ部を枢着し、この枢支軸を支
   点として上記座部の後部を上昇させる上昇手段を設け、
   この上昇手段により上記座部を着座位置から離座位置に
   回動させるとき、上記背凭れ部の姿勢を制御する背凭れ
   部案内機構を設けたことを特徴とするチルトアップチェ
   アー。
2. 【請求項２】請求項１において、背凭れ部案内機構は、
   上記背凭れ部に設けたガイドピンと、このガイドピンが
   嵌まる上記基体側に設けたカム溝とから構成されている
   チルトアップチェアー。
3. 【請求項３】請求項２において、背凭れ部案内機構は、
   座部が着座位置から離座位置に移動するとき、背凭れ部
   を、略直立状態から後方に向けて傾斜させるチルトアッ
   プチェアー。
4. 【請求項４】請求項１ないし３のいずれか１項におい
   て、上昇手段は、基体に一端部を支持したガススプリン
   グであり、このガススプリングの付勢力がリンクを介し
   て座部に作用されるチルトアップチェアー。
5. 【請求項５】請求項１ないし４のいずれか１項におい
   て、さらに、座部が着座位置にあるとき、背凭れ部の角
   度調節を可能とする角度調節機構が設けられているチル
   トアップチェアー。