JP2534803B2 - 金インキ用金粉 - Google Patents

金インキ用金粉

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、印刷物として非常に優
れた金属光沢を有し、かつビヒクルと混合して長期間放
置しても変色せず、優れた金属光沢が維持できる金イン
キ用金粉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】金粉(片状黄銅金属粉)を用いた金色印
刷には、あらかじめ金下インキで印刷しその上に金粉を
振りかけたり、または印刷直前に金粉とビヒクルを混合
し金インキにして印刷する方法がある。
【0003】しかしこれらは作業能率や環境衛生の点か
ら、あらかじめ金粉とビヒクルを混合した金インキで印
刷する方法が望まれていた。しかし金粉とビヒクルをあ
らかじめ混合した金インキは金粉が銅合金粉であるがた
め、ビヒクル中の遊離酸などの活性酸基や、微量水分な
どにより徐々に酸化され、金属光沢がなくなり、長期に
おいては変色まで至ることがある。これらの欠点を改善
する方法として金粉と反応の少ないビヒクルを用いた
り、防錆剤としてアミン化合物を添加する金インキ組成
物(特開昭51-115105 号公報、特公昭55-27119号公報)
が提案されている。
【0004】しかしながら本発明者の研究によれば、こ
れらの金インキは、金粉の変色防止効果は認められるも
のの、金インキとしての最大の特長である金属光沢の消
失が早く、貯蔵安定性において不十分である。
【0005】金インキに使用する金粉は平均粒径10μm
以下の微細な金属粉である。高速オフセット印刷用には
印刷適性を良くするため 5μm 以下の非常に細かい金属
粉が用いられている。特に金粉のような銅を主成分とす
る金属粉は、細かくなればなるほど酸化され易く、金イ
ンキにした場合、ビヒクルなどと反応し夏期では約1ヵ
月で金属光沢が消失してしまう。これは金インキを工業
的に使用する上で問題となり、すくなくとも3ヵ月以上
は初期の金属光沢を維持することが必要である。
【0006】従来から金粉はその製造工程において脂肪
酸(ステアリン酸などの高級脂肪酸)で表面処理されて
いる。これが優れた金属光沢や純金色に近い色調を金粉
が呈する理由になっており、金色印刷用顔料として広く
利用されてきた。しかし金インキ用金粉としては従来ま
での表面処理だけでは不十分になってきた。すなわちビ
ヒクル中に微量の活性酸基や水分が存在すると従来の脂
肪酸だけによる不均一な被覆では容易に置換してしま
い、ビヒクルと金粉がなじみ、金粉が塗膜表面に浮かび
上がるリーフィング現象が得られなくなる欠点を有して
いる。
【0007】一方、ベンゾトリアゾール、トリルトリア
ゾール、アミン化合物などの有機防錆剤で金粉を直接処
理する方法は、粗い金粉に対しては有効であるが、10μ
m 以下の微細な金粉に対しては、その防錆保護膜が、逆
に金粉の色調を変えたり、リーフィング現象を阻害し、
金インキ用金粉として使用できないものであった。
【0008】
【発明が解決しようとする問題点】本発明者は、金粉表
面に均一に脂肪酸エステルの被覆を形成すると優れた色
調、光沢を保持し、かつビヒクルに混合した場合、従来
の金粉よりリーフィング性が良く、しかもビヒクルと接
触してもそのリーフィング現象が悪くならず、長期間金
属光沢を維持することを見出し、本発明を完成したもの
である。
【0009】
【問題を解決するための手段】即ち本発明は、脂肪酸で
処理した平均粒径10μm以下の片状黄銅金属粉100
重量部に対し、2〜10重量部の脂肪酸エステルと0.2
〜5重量部のチタネート系カップリング剤またはアルミ
ニウム系カップリング剤が混合、被覆された金インキ用
金粉である。
【0010】本発明の脂肪酸で処理した片状黄銅金属粉
とは機械粉砕法で製造されるブロンズパウダー、あるい
は金粉と言われているものである。粒子の大きさを10
μm以下としたのは、それより粗い粒度になると、版の
目ヅマリあるいは印刷適性を著しく悪くしてしまい好ま
しくないためである。
【0011】本発明の脂肪酸エステルとは脂肪酸メチル
またはエチルエステルが好ましく、具体的にはラウリン
酸メチル、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸メチル、ミ
リスチン酸エチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸
エチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ベ
ヘン酸メチル、ベヘン酸エチル、などが挙げられる。
【0012】脂肪酸メチルまたはエチルエステル以外の
脂肪酸エステルは金粉のリーフィング性、色調が悪くな
り好ましくない。また不飽和結合を有する脂肪酸エステ
ルは経時変化で金粉が変色する場合があり好ましくな
い。
【0013】脂肪酸エステルの量は金属粉100重量部
に対し2〜10重量部が良い。2重量部より少ないと均
一に金粉に被覆することが難しく、優れた金属光沢や、
金インキとしての貯蔵安定性が悪くなる。10重量部以
上になると金インキとして紙への密着性や印刷適性に悪
影響を与えるため好ましくない。
【0014】本発明で使用するカップリング剤は、チタ
ネート系カップリング剤またはアルミニウム系カップリ
ング剤である。これらのカップリング剤の中で好ましい
ものは化学構造式にP,Sを含まないものが良く、チタ
ネート系カップリング剤としてはイソプロピルトリイソ
ステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタイノ
ルチタネートなどが良い。アルミニウム系カップリング
剤としては加水分解性の少ないアセトアルコキシアルミ
ニウムジイソプロピレートが良い。シラン系カップリン
グ剤は添加しても本発明に示した効果が得られず好まし
くない。
【0015】カップリング剤の量は、金属粉100重量
部に対し0.2 〜5重量部が良い。0.2 重量部より少ない
と十分なカップリング剤の効果が得られず金インキとし
ての貯蔵安定性が悪くなる。また、5重量部以上である
と優れた金属光沢が得られなくなる。カップリング剤の
添加量は脂肪酸エステル量の50%以下が良く、これよ
りカップリング剤を多くすると優れた金属光沢が得られ
ない場合が有り好ましくない。
【0016】
【作用】本発明の金インキ用金粉が金インキとして優れ
た金属光沢、貯蔵安定性を示す理由については、どのよ
うな結合あるいは作用をしているか十分に解明されてい
ないが次のことが考えられる。
【0017】カップリング剤を含む、脂肪酸エステルで
金粉を被覆することは、あらかじめ金粉表面の一部に形
成されていた脂肪酸あるいは金属石けんの保護膜のすき
まを均一に脂肪酸エステルが埋め、均一な保護膜ができ
るためであろう。カップリング剤の効果は、金粉表面の
金属部と脂肪酸エステルとの親和性を良くし、結合させ
る効果がある。この結果、金粉表面には均一な脂肪酸、
脂肪酸エステルの保護膜が形成され、金インキとした場
合、優れた金属光沢を発し、またビヒクルと金属銅とが
直接反応することを防止するため貯蔵安定性が良くなる
のであろう。
【0018】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する
がこれにより本発明の金インキ用金粉の使用範囲が限定
されるものではない。なお文中に部とあるものは全て重
量部で、使用した黄銅粉は福田金属箔粉工業株式会社の
商品である。
【0019】実施例(1) 平均粒径3μmの黄銅金属粉 (商品名No5550) 100部
に対し、カップリング剤としてイソプロピルトリイソス
テアロイルチタネート 0.2部 、2部、5部をステアリ
ン酸メチル10部に添加、混合し、ミキサーにて60rp
m , 120分間混合して3種類の金インキ用金粉を製造し
た。このようにして得た金インキ用金粉の性能を評価す
るため、アルキルフェノール変性キシレン樹脂を5号ソ
ルベントで溶解したビヒクル50部に本発明の金インキ
用金粉を各々50部混合し、金インキを作成して印刷適
性試験機にて塗膜を作成した結果、3種類全て非常に優
れた金属光沢を呈した。また金インキにしたものを、2
5℃,90日間放置した後に印刷しても、優れた金属光
沢を有する塗膜を得ることができた。比較のため、本発
明の処理を行っていない通常の金粉を用いて上記方法で
金インキを作成したものは25℃,10日間で金属光沢
がなくなり、30日後には変色が認められた。
【0020】実施例(2) 平均粒径3μmの黄銅金属粉 (商品名No7770) 100部
に対し、カップリング剤としてアセトアルコキシアルミ
ニウムジイソプロピレート0.2部 、2部、5部をステ
アリン酸メチル10部に添加混合し、ミキサーにて60
rpm , 120分間混合して3種類の金インキ用金粉を製造
した。このようにして得た金インキ用金粉の性能を評価
するため、実施例(1) で述べた方法と同じ試験を行った
結果、優れた金属光沢を呈するとともに、25℃,90
日間放置した後も初期の金属光沢を維持していた。
【0021】実施例(3) 平均粒径3μmの黄銅金属粉 (商品名No5550) 100部
に対し、カップリング剤としてアセトアルコキシアルミ
ニウムジイソプロピレート1部をラウリン酸メチル、ラ
ウリン酸エチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エ
チル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、ステ
アリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ベヘニン酸メチ
ル、ベヘニン酸エチル5部に各々添加混合し、ガラス球
を媒体としたボールミルで30rpm ,60分間混合して
10種類の金インキ用金粉を製造した。このようにして
得た金インキ用金粉の性能を実施例(1) と同じ方法で評
価した結果、10種類全て優れた金属光沢を呈するとと
もに、25℃,90日間放置後も初期の金属光沢を維持
していた。比較のためカップリング剤を添加しないで脂
肪酸エステルだけで処理したものは初期の金属光沢は比
較的良いが、金インキ化後25℃,20日間で金属光沢
が悪くなり、40日後には変色が認められた。
【0022】
【発明の効果】オフセット印刷による金色印刷が多くな
ってきたが、従来までのオフセット用金インキは初期の
金属光沢があまり良くなく、さらに金インキ化後の貯蔵
安定性が悪いため、他のインキと同じ取扱いができなか
った。しかし本発明の金インキ用金粉を使用すれば非常
に優れた金属光沢を出す金インキを製造することが可能
となり、また貯蔵安定性も非常に良くなったため、他の
インキと同じ取り扱いができ、長期間在庫することがで
き、いつでも優れた金属光沢を有する印刷物を印刷する
ことができるようになる。
【0023】さらに従来の金粉よりリーフィング性能も
良いため、高速印刷でも優れた金属光沢を有する印刷物
ができるようになった。以上詳細に説明した通り、本発
明の金インキ用金粉は、金インキ用として使用した場合
優れた性能を示す画期的な金粉である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】脂肪酸で処理した平均粒径10μm以下の
    片状黄銅金属粉100重量部に対し、2〜10重量部の
    脂肪酸エステルと0.2〜5重量部のチタネート系カップ
    リング剤またはアルミニウム系カップリング剤が混合、
    被覆された金インキ用金粉
  2. 【請求項2】脂肪酸エステルが脂肪酸メチルまたはエチ
    ルステルであることを特徴とする請求項1記載の金イン
    キ用金粉
  3. 【請求項3】チタネート系カップリング剤またはアルミ
    ニウム系カップリング剤量が脂肪酸エステル量の50%以
    下であることを特徴とする請求項1記載の金インキ用金
    粉。
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