JP2534757Y2 - 緊急脱出用ハンマー - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、乗用車やトラック等の
車両に搭載されて、当該車両に緊急事態等が発生したと
きに、乗員が車両のガラスを割って脱出する際に使用さ
れる緊急脱出用ハンマーに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年の道路事情は非常に良くなり、人里
離れた山岳地や海岸付近を車両によって通行できるよう
になってきている。また、そのためにトンネル内を走る
道路も増加してきている。従って、このような人里離れ
た道路を走行していた車両がもし事故にあった場合、乗
員は自らの力で当該車両を脱出しなければならない。特
に、人里離れたトンネル内で車両事故が発生した場合、
あるいは高速道路での追突事故が発生した場合等におい
て生ずる車両火災から逃れたり、その事故発生を後続の
車両等に緊急に知らせたりしなければならないものであ
り、このような際には事故車両から緊急に脱出しなけれ
ばならない。

【０００３】一方、車両が事故にあった場合、その事故
状況によってはドアが開かなくなることがあり、乗員は
ドアから出られないことも有り得る。また、車両の乗員
に対してはシートベルト着用が義務付られているが、車
両事故の状況によってはこのシートベルトが簡単には外
れないことも有り得る。このような場合に緊急脱出する
ためには、まずシートベルトを切断して身体を自由に
し、車両の窓ガラスを割らなければならない。

【０００４】以上の場合に備えたものとして、出願人
は、例えば実開平−１４９７７３号公報において、緊急
脱出用鋏を既に提案してきている。この既に提案した緊
急脱出用鋏は、これはこれで十分な機能を発揮し得るも
のであるが、もう少し軽量かつ小型化等の改良をする必
要が生じてきた。このような道具は、緊急時にはぜひ必
要なものであっても、緊急時以外は邪魔物でしかなく、
平常時の車両内での保管を他の邪魔にならないようにす
る必要があるからである。

【０００５】また、車両の緊急時において脱出しようと
する人は、普通は動転していて十分気が回らなくなって
いるから、脱出のための操作としては複雑なものであっ
てはならない。つまり、緊急時の車両から脱出する際に
使用される道具としては、その取り扱いが簡単なもので
なければならないのである。例えば、窓ガラスを割るた
めのハンマー及びシートベルトを切断するためのハサミ
を一つのケース内に収納したものを、車両の車室内に搭
載しておくことも考えられるが、このように機能を異に
する物品を別々にしておいた場合には、緊急の際にそれ
らを簡単に使用することができないのである。

【０００６】そこで、本考案者等は、通常は車両内に置
いておいても邪魔になることはなく、しかも車両の緊急
時には簡単な操作で十分な機能を発揮し得る道具を開発
すべく鋭意検討を重ねてきた結果、本考案を完成したの
である。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】本考案は、以上の経緯
に基づいてなされたもので、その解決しようとする課題
は、不使用時には邪魔物でしかない緊急用道具のコンパ
クト化、及びその機能の改良である。

【０００８】そして、本考案の目的とするところは、そ
の取り扱いを簡単に行うことができて、車両の緊急時に
おける乗員が車両から確実に脱出できる緊急脱出用ハン
マーをコンパクトな構造によって提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するた
めに、まず請求項１に係る考案の採った手段は、実施例
において使用する符号を付して説明すると、「車両内に
搭載されて、車両の緊急時にガラス３０を割るための緊
急脱出用ハンマー１０であって、この緊急脱出用ハンマ
ー１０の柄１２の端部に、シートベルト２０を切断する
ためのハサミ１３を収納自在に取付けたことを特徴とす
る緊急脱出用ハンマー１０」である。

【００１０】また、上記の課題を解決するために、請求
項２に係る考案の採った手段は、同様に、「車両内に搭
載されて、車両の緊急時にガラス３０を割るための緊急
脱出用ハンマー１０であって、ハサミ１３の一方の側の
端部にハンマー部１１を一体的に形成するとともに、ハ
サミ１３の全体をカバー１７によって覆蓋することによ
り前記ハサミを握部としたことを特徴とする緊急脱出用
ハンマー１０」である。

【００１１】

【考案の作用及び使用の態様】次に、以上のように構成
した各請求項の考案に係る緊急脱出用ハンマー１０の作
用を、その使用の態様とともに説明する。

【００１２】（請求項１の緊急脱出用ハンマー１０） まず、この緊急脱出用ハンマー１０においては、車両の
ガラス３０を割るためのハンマー部１１と、このハンマ
ー部１１の柄１２にシートベルト２０を切断するための
ハサミ１３を収納自在に取付けた構成となっているか
ら、この緊急脱出用ハンマー１０のみを持つことによっ
て、ガラス３０の破壊とシートベルト２０の切断とを行
えるのである。つまり、もしシートベルト２０の切断を
行うものとガラス３０の破壊を行うものとが別々である
とすると、緊急時において、使用者はその使用の方法に
まごついたり、あるいは設置場所の確認に手間取って、
非常に不便なものとなるのであるが、本考案に係る緊急
脱出用ハンマー１０においてはそのようなことにはなら
ないものである。

【００１３】また、シートベルト２０を切断するハサミ
１３が、図１〜図４に示した例においては連結軸１４に
よって柄１２内に折畳み自在であり、また図５に示した
例においては柄１２に対して抜差し自在、つまりいずれ
の場合も柄１２に対して収納自在に取付けてあるので、
このハサミ１３を有した緊急脱出用ハンマー１０は車室
内に搭載しておくのに有利なように非常に小さくなって
いるものである。しかも、このハサミ１３は前述したよ
うに、ハンマー部１１の柄１２に収納自在に取付けられ
ているものであるから、シートベルト２０の切断をする
ものと、ガラス３０の破壊をするものとが一体化されて
いることになって、例えば車室内に搭載しておくものと
して、他の邪魔にならないコンパクトなものとなってい
るのである。

【００１４】さて、一旦車両に交通事故等の緊急事態が
発生して、乗員が当該車両から脱出しようとした場合
に、その事故の状況に応じて車両のドアが開かないこと
がある。また、場合によっては、シートベルト２０が外
れなかったりすることもあり得る。そのようなときに、
この緊急脱出用ハンマー１０を使用して車両から脱出す
るのである。

【００１５】つまり、まず身体を拘束しているシートベ
ルト２０を切断する必要がある場合には、使用者は緊急
脱出用ハンマー１０を手に取って、そのハサミ１３を使
用できるようにするのである。すなわち連結軸１４によ
って柄１２内に対して回動自在としたハサミ１３におい
ては、図２及び図３に示したように、柄１２の収納部内
に収納してあったハサミ１３を引き出す。そして、スプ
リング１６が付いていない一方の刃部を、図４に示した
ように引き起こすのである。つまり、この図１〜図４に
示したハサミ１３においては、一方の刃部の握手が小さ
くしてあるものであって、これを他方の刃部に対して１
８０゜回転させることにより、柄１２の収納部内に収納
できるようにしたものであり、両刃部に設けた刃をすり
合わせ状態にするために、一方の刃部を図３に示した状
態から図４に示した状態にまで回転させるのである。

【００１６】一方、図５に示したハサミ１３は、そのま
ま使用できるものではあるが、柄１２内にその端部から
抜差し自在としたものであるため、図５の実線にて示し
た状態から同仮想線にて示した状態に引き出して使用す
るものである。

【００１７】以上のようにすることによって、柄１２内
に収納してあったハサミ１３は使用可能状態となるか
ら、このハサミ１３によって図９に示したように、邪魔
なシートベルト２０を切断するのである。

【００１８】以上のようにして自由になった使用者は、
今度は図８に示すように、車両のガラス３０を当該緊急
脱出用ハンマー１０のハンマー部１１によって破壊する
のである。

【００１９】このようにして、緊急脱出用ハンマー１０
のハンマー部１１によって車両のガラス３０を破壊して
脱出口を形成することにより、車両のドアが開かなくな
った場合でも、乗員は早急に車両から脱出できるもので
あり、車両火災から逃れたり、あるいは後続の車両に危
険を知らせるのである。

【００２０】（請求項２の緊急脱出用ハンマー１０） この緊急脱出用ハンマー１０においては、図６に示した
ように、ハサミ１３の一方の握手の端部がハンマー部１
１に直接固定してあって、このハサミ１３全体をカバー
１７によって覆ったものであるから、ガラス３０を割る
場合にはこのカバー１７を持ったまま使用すればよいも
のである。勿論、ハサミ１３を使用する場合には、その
カバー１７を外してハサミ１３を露出させればよいもの
である。

【００２１】また、上述したように構成したこの請求項
２に係る緊急脱出用ハンマー１０においては、緊急脱出
用ハンマー１０として、シートベルト２０を切断するハ
サミ１３と、ガラス３０を破壊するハンマー部１１とを
一体化したものであるから、全体がコンパクトされてい
ることは言うまでもない。

【００２２】

【実施例】次に、各考案を、図面に示した各実施例によ
って説明する。

【００２３】図１〜図４には、請求項１に係る考案の第
１実施例である緊急脱出用ハンマー１０が示してあり、
この緊急脱出用ハンマー１０においては、柄１２の一端
にハンマー部１１が形成してあるとともに、この柄１２
の他端にハサミ１３を連結軸１４にて回動自在に連結す
るとともに、この柄１２の一端側に形成した収納開口１
５から当該柄１２内にハサミ１３を出入自在としてあ
る。図１には、このハサミ１３を柄１２内に収納した状
態が示してあるが、この状態においては、一方の刃部は
連結軸１４側に位置していて、図示してある刃部の下側
に見えているのは少し小型化した一方の握手である。そ
して、全体が図示してある他方の刃部の握手にはスプリ
ング１６が取付けてあり、図１に示した状態のスプリン
グ１６は所謂きいていない状態にあるものである。この
ようにしたのは、スペースの余りない柄１２内にこのハ
サミ１３を効率よく収納するためである。

【００２４】このようにしたハサミ１３は、まず図２に
示したように柄１２から引き出して、これを図３に示し
たような固定位置にまで連結軸１４を中心にして回動す
るものである。このときには、各刃部は互いに対向して
いないから、一方の刃部を図４に示すように約１８０゜
回転させて、その握手の一部を他方の刃部に取付けてあ
るスプリング１６に当接させるものである。これによ
り、このハサミ１３は使用可能状態となるのである。

【００２５】図５には、請求項１に係る緊急脱出用ハン
マー１０の第２実施例が示してある。この緊急脱出用ハ
ンマー１０においては、そのハサミ１３が柄１２に対し
て抜差し自在とされているものであり、使用しない場合
には、図５の実線にて示したように、このハサミ１３を
その先端の一部が突出するように柄１２内に収納してお
くものである。また、このハサミ１３を使用する場合に
は、その先端をつまんで、図５の仮想線にて示したよう
に、このハサミ１３を引き出すのである。

【００２６】図１〜図６に示した緊急脱出用ハンマー１
０のハンマー部１１は、言わば一般的な形状を有したも
のではあるが、これを図７に示すような形状のものとし
て実施してもよいものである。すなわち、図７に示した
ハンマー部１１は、先端が鋭角的に尖った破壊部１１ａ
と、この破壊部１１ａの内側に位置する複数の引掻溝１
１ｂを有したものとして構成したものであり、乗用車の
フロントガラスのような合わせガラスを割るのに適した
ものとしたものである。つまり、合わせガラスは、非常
に強度の高いものであり、また衝激によってこれにヒビ
が入ったとしても、間に挟み込んであるフィルムによっ
て容易にはバラバラにならないものである。従って、強
度の高いガラス３０を破壊するためには、力を集中させ
ることのできる先の尖った破壊部１１ａを有するハンマ
ー部１１を使用することが有利であり、またヒビの入っ
たガラス３０を破るにはこれに引っかかる引掻溝１１ｂ
を有したハンマー部１１を使用するのが有利なのであ
る。

【００２７】また、図７に示したハンマー部１１は、柄
１２の先端に形成したネジにそれぞれ螺着することによ
り構成してある。このように形成することにより、ハン
マー部１１と柄１２を別の材料で、また別工程でそれぞ
れ形成することができることになるから、緊急脱出用ハ
ンマー１０を安価に製造することができるものである。
以上の図７に示したハンマー部１１は、次の請求項２に
係る緊急脱出用ハンマー１０についても適用することが
できるものである。

【００２８】以上が請求項１の考案に係る緊急脱出用ハ
ンマー１０であったが、図６には、請求項２の考案に係
る緊急脱出用ハンマー１０が示してあり、この緊急脱出
用ハンマー１０においては、ハサミ１３の一方の握手の
端部にハンマー部１１を一体的に形成したものである。
また、この緊急脱出用ハンマー１０のハサミ１３は、そ
の全体をカバー１７により覆うようにしたものであり、
このカバー１７がハンマー部１１を使用する際の握り部
となるものである。勿論、このカバー１７を取り外した
ものをハンマーとして使用することもあるが、その場合
にはハサミ１３全体が握部となるものである。

【００２９】なお、この緊急脱出用ハンマー１０におけ
るカバー１７は、これを透明あるいは半透明の材料によ
って形成することが有利である。その理由は、このカバ
ー１７を取付けた場合に、中に入っているハサミ１３を
外から見えるようにすることができるからであり、これ
により、この緊急脱出用ハンマー１０はハサミ１３をも
有していることを明確にできるからである。

【００３０】

【考案の効果】以上詳述した通り、請求項１に係る考案
においては、上記各実施例にて例示した如く、「車両内
に搭載されて、車両の緊急時にガラス３０を割るための
緊急脱出用ハンマー１０であって、この緊急脱出用ハン
マー１０の柄１２の端部に、シートベルト２０を切断す
るためのハサミ１３を収納自在に取付けたこと」にその
特徴があり、これによりその取り扱いを簡単に行うこと
ができて、車両の緊急時における乗員が車両から確実に
脱出できる緊急脱出用ハンマーをコンパクトな構造によ
って提供することができるのである。

【００３１】また、請求項２に係る考案においては、
「車両内に搭載されて、車両の緊急時にガラス３０を割
るための緊急脱出用ハンマー１０であって、ハサミ１３
の一方の側の端部にハンマー部１１を一体的に形成する
とともに、ハサミ１３の全体をカバー１７によって覆蓋
することにより前記ハサミを握部としたこと」にその特
徴があり、上記の請求項１の考案と同様な効果を有する
他に、その全体の構成を簡略化できて、より一層安価に
提供することができるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】請求項１の考案の第１実施例に係る緊急脱出用
ハンマーの一部破断正面図である。

【図２】図１に示した緊急脱出用ハンマーのハサミを少
し出した状態の部分正面図である。

【図３】図１に示した緊急脱出用ハンマーのハサミを完
全に出した状態の部分正面図である。

【図４】ハサミの一方を使用状態に回動したときの緊急
脱出用ハンマーの正面図である。

【図５】請求項１の考案の第２実施例に係る緊急脱出用
ハンマーの正面図である。

【図６】請求項２の考案に係る緊急脱出用ハンマーの一
部破断正面図である。

【図７】緊急脱出用ハンマーにおけるハンマー部の他の
実施例を示す部分断面図である。

【図８】本考案に係る緊急脱出用ハンマーによって車両
のガラスを破壊している状態を示す斜視図である。

【図９】使用者の腰に掛っているシートベルトを緊急脱
出用ハンマーのハサミによって切断している状態を示す
正面図である。

【符号の説明】

１０ 緊急脱出用ハンマー １１ ハンマー部 １１ａ 破壊部 １１ｂ 引掻溝 １２ 柄 １３ ハサミ １４ 連結軸 １５ 収納開口 １６ スプリング １７ カバー ２０ シートベルト ３０ ガラス

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 車両内に搭載されて、車両の緊急時にガ
   ラスを割るための緊急脱出用ハンマーであって、この緊
   急脱出用ハンマーの柄の端部に、シートベルトを切断す
   るためのハサミを収納自在に取付けたことを特徴とする
   緊急脱出用ハンマー。
2. 【請求項２】 車両内に搭載されて、車両の緊急時にガ
   ラスを割るための緊急脱出用ハンマーであって、ハサミ
   の一方の側の端部にハンマー部を一体的に形成するとと
   もに、前記ハサミの全体をカバーによって覆蓋すること
   により前記ハサミを握部としたことを特徴とする緊急脱
   出用ハンマー。