JP7112289B2 - 車両樹脂窓損傷用器具 - Google Patents
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Description
これらの事情に鑑み、本発明は、特許文献1に記載の技術に基づく様な、特別な機構を備えていない樹脂窓においても、簡易に樹脂窓を破壊して避難通路を確保することができる車両樹脂窓損傷用器具を提供することを目的とする。
即ち、本発明は以下の通りである。
(2)前記傷付部が先鋭形状または刃形状である前記(1)に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
(3)前記傷付部が金属により形成されている前記(1)または(2)に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
(4)前記強度変性部が前記樹脂窓を軟化または劣化させる程度に加熱可能な加熱部である前記(1)~(3)のいずれか一項に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
(5)前記加熱部が通電により起動するものである前記(4)のいずれか一項に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
(6)前記加熱部と前記傷付部とが一体である前記(4)または(5)に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
(7)前記強度変性部が、車両の樹脂窓の強度を下げる液体を収容し解放操作により前記液体を放出可能な液体収容容器を有する前記(1)に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
(8)前記強度変性部が、前記液体収容容器から放出された前記液体を保持しかつ前記液体が外部に滲出可能なスポンジ状部材を有する前記(7)に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
(9)前記傷付部は、前記スポンジ状部材の樹脂窓の表面に当接させる面上に設けられている前記(8)に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
(10)
前記液体が、n-ヘプタンとトルエンとの混合液、pH13以上の液体またはハロゲン含有液である、前記(7)~(9)のいずれか一項に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
本発明の車両樹脂窓損傷用器具の第1の例(以下、単に「第1の器具」とも称する)としては、樹脂窓の表面に傷を付与可能な傷付部と、樹脂窓を軟化または劣化させる程度に加熱可能な加熱部(強度変性部の一例)とを有するものである。
第1の器具が有する「傷付部」とは、上記の樹脂窓の表面コート層の少なくとも一部を損傷させて除去し、後述の「加熱部」による熱が表面コート層の下層のPC基材層に届き易くするためのものである。
また、第1の器具が有する「加熱部」とは、前述の「傷付部」で表面コート層を損傷、除去することにより露出された下層のPC基材層を、PCの融点である250℃以上に加熱するためのものである。
図1に示す器具10aは、ハンマー形状であり、ヘッド部分11と柄部分12とを有する。ヘッド部分11の一端は、樹脂窓に接触させる接触部分13aである。接触部分13aの端部の形状は平坦形状である。
器具10aでは、接触部分13aが、前記傷付部と前記加熱部との双方に相当する。即ち、傷付部と加熱部とが一体となっているものである。
接触部分13aの硬度は、樹脂窓に傷を付与可能な程度以上であれば、特に限定されないが、具体的には、ビッカース硬さで150HV以上(鉄以上)であることが好ましい。
またこの把持と前後して、または同時に、スイッチ14により接触部分13aを高温化させる。
これらの動作により、樹脂窓を加熱しながら、樹脂窓の表面コート層の一部を損傷させて除去し、高温化させた接触部分13aの熱を、効率よく樹脂窓の下層のPC基材層に伝えることができる。
なお、器具10aを通常のハンマーの使用と同様に振り子状に操作し接触部分13aを樹脂窓に衝突させる場合には、加熱の効果と、下層のPC基材層への傷付深さは比較的小さいが、広い面積で樹脂窓の表面コート層を損傷、除去することができる。また、器具10aの接触部分13aを樹脂窓に押し当てながら摺動させる場合には、樹脂窓の表面コート層を損傷、除去する面積は比較的小さいが、加熱の効果と、下層のPC基材層への傷付深さは比較的大きい。また、摺動の速さを小さくすると加熱の効果がより大きくなる。また、接触部分13aの平坦部分を樹脂窓面に均一に接触させた場合は、比較的に、加熱効果は大きいが、傷付効果は小さい。他方、接触部分13aの平坦部分ではない角部分を樹脂窓面に接触させた場合は、比較的に、傷付効果は大きいが、加熱効果は小さい。
上記の器具10aは、特別な緊急時脱出機構を備えていない樹脂窓においても適用可能で、また、小売店等でも比較的廉価で入手可能である。
図2に示す器具10bは、接触部分13bの端部の形状が先鋭形状である以外は、図1に示す器具10aと同様の構造を有する。
器具10bの使用、動作、作用効果についても、図1に示す器具10aとほぼ同様であるが、接触部分13bが先鋭形状であることにより、図1に示す器具10aと比較して、傷付効果は大きいが、窓への接触面積が小さくなりやすいため加熱効果は小さい。
図3の(a)は、器具20の側面図であり、図3の(b)は、器具20の正面図である。
図3に示す器具20は、斧形状であり、ヘッド部分21と柄部分22とを有する。
器具20のヘッド部分21における柄部分22とは反対側の端部には、樹脂窓に接触させる接触部分23を有する。接触部分23は刃形状である。そして器具20では、刃形状の接触部分23が、前記傷付部と前記加熱部に相当する。即ち、傷付部と加熱部とが一体となっている。
接触部分23の硬度、材質、加熱部としての起動機構(スイッチ24)及び柄部分22等については、図1に示す器具10aと同様である。
また、器具20の使用、作用及び効果については、使用者は器具20を、通常の斧を通常に使用する際と同様の持ち方をする以外は、図2に示す器具10bと同様である。
図4の(a)は、器具30の側面図であり、図3の(b)は、器具30の正面図である。
図4に示す器具30は、スケッパー形状であり、刃状部分31と把持部分32とを有する。そして器具30では、刃状部分31が、前記傷付部と前記加熱部に相当する。即ち、傷付部と加熱部とが一体となっている。
刃状部分31の加熱部としての起動機構は、以下の点以外は、図1に示す器具10aと同様である。
高電気抵抗の通電部材に通電することにより高温化する場合には、前記通電部材は、器具30の内部等で、刃状部分31に接触するように設けられる。
刃状部分31に対する高温化を起動するための手動型のスイッチ34は、例えば、把持部分32に設けられ、自動型のスイッチを構成する受信部も把持部分32に設けられる。
使用者は、器具30aを把持した後、刃状部分31における把持部分32とは反対側の端部を押し当てながら、刃状部分31の刃身方向に摺動させる。
これらの動作により、図1に示す器具10aと同様に、樹脂窓を加熱しながら、樹脂窓の表面コート層の一部を損傷させて除去し、高温化させた刃状部分31の熱を、効率よく樹脂窓の下層のPC基材層に伝えることができる。
器具30について、上記の使用、作用及び効果以外の事項については、器具10aと同様である。
その際、加熱部として、火炎を発生するものを備えていても良く、具体的にはトーチバーナ等が挙げられる。
図5に示す器具10cは、加熱部として樹脂窓の表面に火炎Fを放射可能な小型のトーチバーナ15を、ヘッド部分11の側方に、左右にそれぞれ2基、計4基有する以外は、図2に示す器具10bと同様の構造を有する。トーチバーナ15の設置数、規格等については、適宜変更可能である。
また、器具10cは、トーチバーナ15を作動させるためのスイッチ14と燃料ガス供給部(図示せず)を有する。図5の器具10cでは、スイッチ14を、図2の器具10bと同様に手動型のものとして示したが、器具10bと同様に自動型としてもよく、その設置位置も同様である。トーチバーナ15は、高電気抵抗の通電部材を用いたものに比べて、加熱温度や加熱速度が高く、また、火炎Fが器具10cの周囲の可燃物に誤って放射される危険を回避するため、スイッチは手動型であることが好ましい。燃料ガス供給部は、例えば、ヘッド部分11または柄部分12に設けられる。
また、予期しない火炎Fの放出を防ぐための安全機構を備えていることが好ましい。
この衝突または摺動と前後して、または同時に、トーチバーナ15を作動させて火炎Fを放出させる。トーチバーナ15の作動は、ヒトや周囲の可燃物等に誤って火炎Fを放射する危険を回避するために、火炎Fの放射方向を樹脂窓に向けた後に行うことが好ましい。
トーチバーナ15から火炎Fにより、直接、樹脂窓を加熱することができるが、接触部分13bを高温化し、高温化した接触部分13bが樹脂窓を加熱するようにすることもできる。
これらの動作により、樹脂窓を加熱しながら、樹脂窓の表面コート層の一部を損傷させて除去し、トーチバーナ15からの火炎Fによる熱を、効率よく樹脂窓の下層のPC基材層に伝えることができる。
器具10cについて、上記の使用、作用及び効果以外の事項については、器具10bと同様である。
この場合、トーチバーナ15の作動のタイミングとその作用効果は、図5に示す器具10cと同様であるが、その他の使用、作用及び効果は、各器具10a、20及び30のそれぞれと同様である。
第6の器具は、樹脂窓の表面に傷を付与可能な傷付部と、樹脂窓の強度を下げる液体を収容し解放操作により前記液体を放出可能な液体収容容器(強度変性部を構成する部材の一例)と、前記液体収容容器から放出された前記液体を保持し、かつ前記液体が外部に滲出可能なスポンジ状部材(強度変性部を構成する部材の一例)とを有するものである。
図6に示す第6の器具40は、液体収容容器(以下、単に「容器」とも称する)41とスポンジ状部材42と傷付部44とを有する。容器41には、樹脂窓の強度を下げる液体が収容されている。第6の器具の容器41のスポンジ状部材42と接する側には、容器41に収容されている液体を解放操作により放出する機構を有する(図示せず)。前記機構としては、例えば、容器41の側方に設けられた引紐43を引張ることによって開閉するシャッター構造(図示せず)等が挙げられる。
また、容器41及びスポンジ状部材42の各材質としては、使用する液体によって不都合な影響を受けないものを適宜選択して使用する必要がある。
傷付部44の硬度、材質としては、前述の第1~第5の各器具における「傷付部」(詳細には、図1~図3及び図5の接触部分13a、13b、23、並びに、図4の刃状部分31に相当)と同じであっても良い。但し、図6に示す器具40のように、傷付部44がスポンジ状部材42の樹脂窓表面に当接させる面上に設けられている場合には、傷付部44として、軽石、スチールウール、無機粗粒の焼結体等の、それ自身が液体を保持、滲出することができるものが好ましい。但し、傷付部44の材質は、使用する前記液体によって不都合な影響を受けないものを適宜選択して、使用する必要がある。
器具40を使用する際には、使用者は器具40の取っ手45を利き手等で把持する。
またこの把持と前後して、または同時に、引紐43が引っ張られることによって、容器41に収容されている液体が容器41から放出される。この際、器具40のスポンジ状部材42を下側に位置させることにより、容器41から放出された液体は、重力により下側のスポンジ状部材42へ移動し、スポンジ状部材42中に保持される。
スポンジ状部材42中に液体が保持された後、器具40のスポンジ状部材42側を破壊を試みる樹脂窓に当接させると、スポンジ状部材42から保持された液体が樹脂窓側に滲出される。この場合、器具40をより大きい力を加えて樹脂窓に押し当てると、スポンジ状部材42から、より多くの液体が樹脂窓に滲出される。
さらに、樹脂窓に器具40をより大きい力を加えて押し当てながら擦ることが好ましい。
前述のとおり、主にPCから構成される車両の樹脂窓は、無機ガラスよりも耐薬品性に劣ることがあり、そのため、PC基材層の表面に表面コート層を有することがある。そのため、樹脂窓に器具40をより大きい力を加えて押し当てながら擦ることにより、スポンジ状部材42の表面上の傷付部44が樹脂窓の表面コート層の少なくとも1部を損傷させて除去し、露出された下層のPC基材層に前記液体を作用させ易くなる。
器具40について、上記の使用、作用及び効果以外の事項については、器具10aと同様である。
また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
11,21 ヘッド部分
12,22 柄部分
13a,13b,23 接触部分
14 スイッチ
10b 第2の器具
20 第3の器具
30 第4の器具
31 刃状部分
32 把持部分
10c 第5の器具
15 トーチバーナ
40 第6の器具
41 容器
42 スポンジ状部材
43 引紐
44 傷付部
45 取っ手
Claims (10)
- 車両の樹脂窓の表面に傷を付与可能な傷付部と、前記樹脂窓を軟化または劣化させる強度変性部とを有する車両樹脂窓損傷用器具。
- 前記傷付部が先鋭形状または刃形状である請求項1に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
- 前記傷付部が金属により形成されている請求項1または2に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
- 前記強度変性部が前記樹脂窓を軟化または劣化させる程度に加熱可能な加熱部である請求項1~3のいずれか一項に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
- 前記加熱部が通電により起動するものである請求項4に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
- 前記加熱部と前記傷付部とが一体である請求項4または5に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
- 前記強度変性部が、車両の樹脂窓の強度を下げる液体を収容し解放操作により前記液体を放出可能な液体収容容器を有する請求項1に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
- 前記強度変性部が、前記液体収容容器から放出された前記液体を保持しかつ前記液体が外部に滲出可能なスポンジ状部材を有する請求項7に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
- 前記傷付部は、前記スポンジ状部材の樹脂窓の表面に当接させる面上に設けられている請求項8に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
- 前記液体が、n-ヘプタンとトルエンとの混合液、pH13以上の液体またはハロゲン含有液である、請求項7~9のいずれか一項に記載の車両樹脂窓損傷用器具。
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