JP2534144B2 - 抄紙用フェルト - Google Patents

抄紙用フェルト

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JP2534144B2 JP1320495A JP32049589A JP2534144B2 JP 2534144 B2 JP2534144 B2 JP 2534144B2 JP 1320495 A JP1320495 A JP 1320495A JP 32049589 A JP32049589 A JP 32049589A JP 2534144 B2 JP2534144 B2 JP 2534144B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は抄紙用フェルトに関するもので、更に詳しく
は抄紙機のウエットパートにおけるすき網部のすき網と
して使用したりプレス部のプレスフェルトとして使用し
たり、あるいはドライパートにおける乾燥部のドライキ
ャンバス等として使用される。
[従来の技術及び発明が解決しようとする課題] 従来、抄紙機のウエットパートにおけるプレス部のプ
レスフェルトとして使用している抄紙用フェルトは湿紙
を搬送し、一対のプレスロールのニップ圧下で湿紙の水
分を絞る働きをしている。そしてこの従来の抄紙用フェ
ルトは主としてナイロン6,ナイロン66が構成素材として
利用されていた。
しかし、ナイロン6,ナイロン66を構成素材とした抄紙
用フェルトは吸水性が高く、吸水率の増加に伴ない可塑
化されて引張強力、弾性率、耐摩耗性が減少する一方、
伸度が増加する等の寸法安定性に欠け、物性変化が著し
く大きいものである。
ナイロン6,ナイロン66等の高吸水性ナイロンは分子構
造上アミド基密度が高く結晶化度が高い反面、酸化剤等
の化学薬品の影響を受け易く抄紙用フェルト素材として
は耐久性に乏しいものである。
また上記抄紙用フェルト素材は抄紙機上で受ける繰返
し衝撃によって繊維延伸方向に次第にシェアーバンドを
生じ、ついには発達してフィブリル化する現象が見られ
る。フィブリル化現象は衝撃耐久性に乏しいほど顕著に
現れる。
さらに抄紙機の各種タイプやプレス部毎の吸水条件、
温度条件、プレス負荷や摩擦等の条件そして最近の白水
のクローズド化、ドライランニングの実施等、抄紙用フ
ェルトの素材に求められる要求特性は益々厳しいものに
なって来ているが、ナイロン6,ナイロン66ではこれら諸
要求特性を満足出来なくなってきた。
そこで、従来からナイロン6,ナイロン66の抄紙用フェ
ルト素材としての欠点を改善する提案が種々なされてい
る。
(a)特開昭58−18497号には、ナイロン66とナイロン6
12等の芯鞘型複合繊維のフィラメントから構成された抄
紙用ベルトの発明が提案されている。(以下、前者の従
来例という)。
(b)また、特開昭63−315690号にはナイロン12からな
るステープルとフィラメントから構成された抄紙用フェ
ルトの発明が提案されている(以下、後者の従来例とい
う)。
前者の従来例の芯鞘型複合繊維はコア部とシース部が
溶融界面をはさんで個々のポリマーで構成されているの
で、熱的あるいは力学的作用に対してコア部とシース部
の各成分の収縮挙動、吸水挙動、応力特性の違いによっ
て物質が低下し易い欠点を持っている。
このようにコア部とシース部とを溶融界面をはさんで
個々のポリマーで構成した場合、特に融点差が大きいも
の程、紡糸後の各成分の結晶化速度にアンバランスを生
じ、結果として、一方あるいは両方の成分の結晶粒子径
は不揃いで、しかも微細粒子が得られず、ボイドや相間
剥離の発生が顕著である。こうした欠陥構造をもつ繊維
素材からなる抄紙用フェルトは特に繰返し圧縮、衝撃に
よって容易にフィブリル化する傾向にある。
また、後者の従来例ではナイロン12はナイロン族の中
でアミド基含有率の低い部類に属し、従って、低吸水性
であることから吸水による引張強力、弾力率、寸法変化
率等が少なく、かつ酸化剤等に対する耐薬品性、耐水
性、耐摩耗性に優れている。
しかし、弾性率自体はナイロン6,ナイロン66と比較し
て大きい方ではなく、かつ抄紙機上で受ける繰返し圧縮
疲労による扁平化も改善されていない。特に扁平化した
抄紙用フェルトは搾水性に劣り抄紙機作業上、種々のト
ラブル生ずるため通常、新規なフェルトに交換されるこ
ととなる。また、ナイロン12の耐衝撃性は吸水した状態
でのナイロン6,ナイロン66とほぼ同一レベルにあり、耐
衝撃性に優れているとは決して言い難いものである。し
かも、抄紙機上で受ける繰返し圧縮即ち、パルス的に大
荷重がかかる繰返し衝撃によって繊維延伸方向にフィブ
リル化する現象はナイロン6,ナイロン66と同じで改善さ
れるものではない。
以上のように、抄紙用フェルトは湿潤下で繰返し衝撃
荷重を受けるのでフィブリル化し易く、また酸化剤、塩
類等の薬品を含んだ水によって物質が低下し、扁平化す
ることとなる。この結果、抄紙用フェルトとしての搾水
機能が低下し易いという問題があった。
この発明は上記の諸点に鑑みてなされたもので、その
目的とするところは物理的、化学的な耐久性を備えた弾
性持続性の優れた抄紙用フェルトを提供することにあ
る。またこの発明の他の目的は抄紙用フェルトの素材と
なるポリアミド系エラストマーとナイロン樹脂の混合比
率を変えることにより、抄紙機のウエットパートやドラ
イパートにおける種々の要求特性にあったフェルトを提
供することにある。
[課題を解決するための手段] この発明の抄紙用フェルトは、ポリアミド系エラスト
マーとナイロン樹脂の混合物を溶融紡糸したポリマーア
ロイ繊維を素材の一部に含むか、または該ポリマーアロ
イ繊維単独からなることを特徴とするものである。
ポリマーアロイ繊維は、その配合が下記の条件を満た
すことによって繊維の微細構造をポリマーアロイ化する
ことで達成できる。
ポリアミド系エラストマーとしてはハーグセグメン
トがナイロン12で、ソフトセグメントがポリエーテルか
らなるブロック共重合体であり、一方低吸水性ナイロン
樹脂としてはナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、
ナイロン612、ナイロン1212の何れか1種又は複数種を
使用する。
本発明ではポリアミド系エラストマーとナイロン樹
脂の組合せに当たり、溶融後の両成分の相溶性の良いも
の同士に限定される。ここで相溶性の尺度としてASTM
D1238−79で規格されているポリマー成分のメルトイン
デックス(MI)がもっとも適しており、ポリアミド系エ
ラストマーとナイロン樹脂はMIが1〜20g/10minの範囲
(何れも温度・荷重は同一条件であること)にあるもの
が好適である。
ポリアミド系エラストマーとナイロン樹脂の混合比
率は、本発明に係わる抄紙機のウェットパートやドライ
パートの各部で使用する時に要求される特性、例えば引
張強力、弾力率、耐摩耗性、寸法安定性、衝撃耐久性、
搾水性等の要求特性を考慮して決定される。実用上繊維
の微細構造をポリマーアロイ化するためにはポリアミド
系エラストマーとナイロン樹脂の混合比率は重量比で1:
3〜1:6の範囲が好適である。
本発明の抄紙用フェルトはこの構成素材の1つである
ポリアミド系エラストマーの特徴である反発弾性力と、
弾性回復力、即ち耐偏平化に貢献する弾性持続性と、衝
撃吸収性、即ち耐フィブリル化に貢献する衝撃耐久性等
の物性と、もう一方の構成素材であるナイロン樹脂の物
性を適宜組み合わせて繊維の微細構造をポリマーアロイ
化し、抄紙機のパートに応じて要求される特性のフェル
トが作られる。例えば、抄紙用フェルトとして、耐薬品
性、耐水性、耐摩耗性、寸法安定性、衝撃耐久性が要求
されるので、ポリアミド系エラストマーとしては、ハー
ドセグメントがナイロン12の低吸水性ナイロンで、ソフ
トセグメントがポリエーテルからなるブロック共重合体
を使用し、ナイロン樹脂としては、ナイロン11、ナイロ
ン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン1212等の低
吸水性ナイロン樹脂の何れか1種又は複数種を使用す
る。
また、本発明の抄紙用フェルトは上記構成のポリマー
アロイ繊維素材のみを使用してフェルトを作成してもよ
いが、必ずしもこれに限定されるものではなく、使用さ
れるパート、条件等によって要求される諸特性に応じて
前記ポリマーアロイ繊維と他の既存の繊維の1種以上と
を組合わせたりあるいは混合してフェルトを作成するよ
うにしてもよい。例えば、上記構成のポリマーアロイ繊
維素材のみを使用する場合としては、基布および該基布
上に形成されるウェッブの両者を該ポリマーアロイ繊維
で形成するとか、あるいはすき網として使用する場合は
該すき網全体を前記ポリマーアロイ繊維で形成する等で
ある。そして、上記構成のポリマーアロイ繊維を抄紙用
フェルトの一部に含む形で使用する例として、基布のみ
を上記構成のポリマーアロイ繊維で形成し、該基布上に
形成されるウェッブを既存の繊維で形成するとか、また
はウェッブとして、前記ポリマーアロイ繊維と既存繊維
とを混合したり、両者をサンドイッチ状の構造とする等
種々の構成とすることができる。
[作用及び発明の効果] (1) ポリアミド系エラストマーの持つ反発弾性力と
弾性回復力は抄紙用フェルトの耐扁平化に貢献して弾性
持続性が改善される。また、衝撃耐久性は耐フィブリル
化に貢献する。これらの物性はポリアミド系エラストマ
ーのソフトセグメントの示すエントロピー弾性及びハー
ドセグメントの示す結晶性、水素結合性に基づく強靭性
の相乗効果により得られる。
(2) ポリアミド系エラストマー単独から成る繊維は
結晶性、配向性、捲縮性に劣るため抄紙用フェルト素材
として引張強力、耐摩耗性、寸法安定性が不足するの
で、かれを補うためにメルトインデックスを尺度として
相溶性の良いナイロン樹脂を前記ポリアミド系エラスト
マーに混合し、溶融紡糸したポリマーアロイ繊維とする
ことにより、前記ポリアミド系エラストマーの欠点を解
消することができる。
通常、異種ポリマーのアロイ化樹脂の物性が各々の成
分独自の物性の中間に位置してしまうという事例は多
い。ところがMIが近似し、かつ同族ポリマーからなる本
発明に係るポリマーアロイ繊維の微細構造は、母材であ
るナイロン樹脂に分散材であるポリアミド系エラストマ
ーが極めて良く微分散しており、かつ相互連続相の形態
いわゆるIPN(Interpenetrating Polymer Networks)を
形成する。
このような微細構造を持つ抄紙用フェルト素材は従来
の単一成分からなる素材に比べ耐扁平化に貢献する弾性
持続性、耐フィブリル化に貢献する衝撃耐久性、引張強
力、耐摩耗性、寸法安定性に優れるものである。
(3) 種類の異なるポリマーを単に混合しただけでは
良好な相溶系は得られず、従って良好な物性は発現しな
い。相溶性の悪い2成分を部分的に変性するかあるいは
相溶化剤である第3成分を加えることによってポリマー
間の界面の相溶性や分散形態を改良する試みが次第にな
されてきている。現在、ポリマーアロイの相溶性を改善
する方向としてMIを近づけるという意味に相関する溶融
粘度のコントロールや相溶性剤の開発が上げられるが、
いずれも非相溶系アロイでは満足できるような微細構造
を得ることは困難で本発明で示すような相互連続相の形
態は取り難いものとなっている。
[実施例] 実施例1 ナイロン樹脂としてナイロン12チップ(相対粘度2.0;
1g/95%硫酸100ml、25℃、MI;3g/10min190℃1kg荷重)
6部と,ナイロン12とポリエーテルからなるブロック共
重合体のポリアミド系エラストマー(MI;10g/10min190
℃1kg重荷)1部を混合し、通常の方法で紡糸、延伸を
行い、フィラメントとステープルを作成した。
フィラメントは330dを2本撚り合わせ更にこれを3本
撚り合わせたフィラメントヤーンとした。このフィラメ
ントヤーンで基布を製織した。
ステープルは15d×76mmとして、カーデングマシンに
て均一なウェッブを作成し、上記基布の上にこのウェッ
ブを積層してニードリングにより絡合させて一体化し、
目付1000g/m2の抄紙用フェルトを得た。
実施例2 ナイロン樹脂としてナイロン12チップ3部で、ポリア
ミド系エラストマーを1部とした以外は実施例1と同様
の方法で目付1000g/m2の抄紙用フェルトを得た。
比較例1 ナイロン樹脂としてナイロン12チップ10部で、ポリア
ミド系エラストマー1部とした以外は実施例1と同様の
方法で目付1000g/m2の抄紙用フェルトを得た。
比較例2 ナイロン樹脂として、ナイロン12チップ1部で、ポリ
アミド系エラストマー1部とした以外は実施例1と同様
の方法で目付1000g/m2の抄紙用フェルトを得た。
比較例3 ポリアミド系エラストマーを混合しないナイロン樹脂
単独のナイロン12のみからなるフィラメントとステープ
ルを作成し、同様の目付1000g/m2の抄紙用フェルトを得
た。
比較例4 ポリアミド系エラストマーを混合しないナイロン樹脂
単独のナイロン6のみからなるフィラメントとステープ
ルを作成し、同様の目付1000g/m2の抄紙用フェルトを得
た。
上記6種の抄紙用フェルトを下記の項目でシュミレー
ション比較テストを行った。
1)圧縮、回復テストによる弾性評価、耐扁平化評価、
衝撃耐久性(フィブリル化)評価。
150kg/cm2、10Hzのパルス荷重をフェルト面に掛け、繰
返し回数による物性の変化を調べた。
2)耐薬品性テスト、耐熱水性テスト、耐摩耗性テスト
による耐久性評価。
○耐薬品性は次亜塩素酸ソーダ水溶液(有効塩素500pp
m)にフェルトを14日間浸漬した。
○耐熱水性は沸騰水中にフェルトを7日間浸漬した。
○仕上りフェルトをRH65%、25℃恒温恒湿室に放置し
た。
上記3種の異なった条件下に置かれたフェルトをテーバ
ー摩耗試験及び切断強力、圧縮、回復テストを実施し、
総合して耐久性のあるフェルト素材を求めた。
第1表からポリマーアロイ繊維、時にポリアミド系エ
ラストマーとナイロン樹脂の混合重量比が1:3〜1:6の範
囲のものは弾性、衝撃耐久性に優れることが判った。
実施例3 上質紙用の抄紙機(ツインバータイプ)における第4
番プレスの抄紙用フェルトは高ニップ圧であるため、特
に弾性持続性をはじめ圧縮回復性、耐摩耗性、衝撃耐久
性(耐フィブリル化)に富んだフェルトが要求されると
いう条件の下にナイロン樹脂としてナイロン12(相対粘
度2.0;1g/95%硫酸100ml、25℃、MI;3g/10min190℃1kg
荷重)3部と、ナイロン12とポリエーテルからなるブロ
ック共重合体(MI;10g/10min190℃1kg重荷)1部を混合
し、実施例1と同様にして目付1350g/m2の第4番プレス
用の抄紙用フェルトを作成した。
比較例5 ポリアミド系エラストマーを混合しないナイロン樹脂
単独のナイロン66のみからなるフィラメントとステープ
ルを作成し、同様にして目付1350g/m2の第4番プレス用
の抄紙用フェルトを作成した。
上記実施例3と比較例5の各使用済みフェルトの物性
を比較したところ、第2表の通りであった。
第2表から明らかなように本発明による抄紙用フェル
ト(実施例3)における使用済み残存物性は未だ余力を
残している。特に実施例3の抄紙用フェルトは比較例5
のような従来の抄紙用フェルトに比べて使用済みフェル
トの密度が低く、圧縮、回復性が良好であった。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ハードセグメントがナイロン12、ソフトセ
    グメントがポリエーテルからなるポリアミド系エラスト
    マーと,ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイ
    ロン612、ナイロン1212の何れか1種又は複数種からな
    る低吸水性ナイロン樹脂との混合物を溶融紡糸した繊維
    において、その混合物の配合割合が重量比で1:3〜1:6の
    範囲、かつ同一条件下におけるメルトインデックスがポ
    リアミド系エラストマーと低吸水性ナイロン樹脂共に1
    〜20g/10minの範囲から選択された樹脂の混合物を溶融
    紡糸したポリマーアロイ繊維を素材の一部に含むか、ま
    たは該ポリマーアロイ繊維単独からなることを特徴とす
    る抄紙用フェルト。
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