JP2532060Y2 - エンジンのクランクケース構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、主として４サイクルエ
ンジン用のクランクケース構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、４サイクルエンジンにおけるクラ
ンクケース構造としては、別個に形成したクランクケー
ス本体とクランクケースカバーとを連結することにより
クランクケースを構成し、このクランクケースに別個に
形成したシリンダを連結するというものが知られてお
り、このようなクランクケース構造を図４乃至図６に基
づいて説明する。

【０００３】まず、一端に開口１が形成されたクランク
ケース本体２が設けられており、この開口１を覆うクラ
ンクケースカバー３を前記クランクケース本体２へ連結
することによりクランクケース４が構成され、このクラ
ンクケース４内には、クランク軸５やカム軸６及びタペ
ット７が収納されている。前記クランクケース本体２に
は前記クランク軸５の一端を軸支する軸受８が取付けら
れるとともに前記カム軸６の一端を軸支する軸受９が形
成されており、さらに、前記タペット７を保持するタペ
ットガイド１０が形成されている。一方、前記クランク
ケースカバー３には、前記クランク軸５の他端を軸支す
る軸受１１が取付けられるとともに前記カム軸６の他端
を軸支する軸受１２が形成されている。なお、前記クラ
ンク軸５に形成されたクランクギヤ１３と前記カム軸６
に形成されたカムギヤ１４とが噛み合わされている。

【０００４】つぎに、前記クランクケース４にはピスト
ン１５を収納したシリンダ１６が連結されており、この
ピストン１５と前記クランク軸５とを連結するコンロッ
ド１７が挿通される挿通孔１８が前記クランクケース本
体２の上面部に形成されている。なお、前記シリンダ１
６のシリンダ中心は、前記クランク軸５の真上に位置す
るとともに、前記クランクケース本体２と前記クランク
ケースカバー３との連結面１９から偏位して位置してい
る。また、前記コンロッド１７は、小端部２０と棹部２
１と大端部２２、及び、コンロッドボルト２３により大
端部２２へ連結されたキャップ部２４とにより構成され
ている。

【０００５】ここで、エンジンの組立時においては、ク
ランクケースカバー３を連結する前のクランクケース本
体２内へクランク軸５の一端を挿入して軸受８により軸
支し、ついで、コンロッド１７の大端部２２側を挿通孔
１８からクランクケース本体２内へ挿入し、大端部２２
とキャップ部２４とによりクランク軸５のクランクピン
２５を挾持するとともにコンロッドボルト２３を締付け
ることによってコンロッド１７の大端部２２側をクラン
ク軸５に連結する。ついで、タペット７をタペットガイ
ド１０に挿入し、カム軸６の一端をカムギヤ１４がクラ
ンクギヤ１３に所定のタイミングで噛み合うように軸受
９に挿入後、クランクケースカバー３をクランクケース
本体２に連結するとともにクランク軸５とカム軸６との
他端を軸受１１，１２により軸支し、さらに、挿通孔１
８からクランクケース本体２外へ突出しているコンロッ
ド１７の小端部２０側へピストン１５を連結するととも
に挿通孔１８を覆う状態にシリンダ１６をクランクケー
ス４へ連結する。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】エンジンの小型軽量化
を図ることに伴ってクランクケース４の容積が小さくな
り、また、クランクピン２５の両側に位置するバランス
ウェイト２６の間隔が狭くなり、さらに、コンロッドボ
ルト２３のピッチも小さくなる。このため、大端部２２
とキャップ部２４とを連結するためのコンロッドボルト
２３の締付作業が非常に困難になり、さらに、コンロッ
ドボルト２３の締付トルクの管理が難しくなっている。

【０００７】このような問題を解決するために、クラン
クケース本体２の下部にコンロッドボルト締付用孔を形
成し、コンロッドボルト２３の締付作業後にこのコンロ
ッドボルト締付用孔をカバーで覆うことが考えられる
が、部品点数の増加や組立工程数の増加によってコスト
アップするという欠点がある。

【０００８】また、小型２サイクルエンジンのようにク
ランクケースをシリンダ中心線上で左右均等に分割する
ことも考えられるが、この場合には、図７に示すよう
に、左右のクランクケース４ａ，４ｂにそれぞれタペッ
トガイド１０ａが形成されるため、カムギヤ１４を収納
する空間を形成するためには一方のクランクケース４ａ
にカバー２７を取付けることが必要となり、部品点数の
増加や組立工程数の増加によってコストアップするとい
う欠点がある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】一端に開口が形成されて
クランク軸とカム軸との一端を軸支するクランクケース
本体に前記クランク軸と前記カム軸との他端を軸支する
とともに前記開口を覆うクランクケースカバーを連結さ
せたクランクケースを設け、前記クランクケース本体と
前記クランクケースカバーとの前記開口を含む連結面か
ら前記クランク軸の軸方向に偏位させてシリンダ中心を
位置させたシリンダを前記クランク軸の軸方向と直交す
る方向から前記クランクケースに連結し、前記クランク
軸の中間部と前記シリンダ内に収納されたピストンとを
前記クランクケース本体に前記開口と直交する方向に形
成された挿通孔を通るコンロッドで連結したエンジンの
クランクケース構造において、前記コンロッドを挿通さ
せる前記挿通孔の一部を前記クランクケース本体に形成
された前記開口に連通させた。

【００１０】

【作用】エンジンの組立時において、クランク軸にコン
ロッドの一端を連結し、ついで、コンロッドを開口側か
ら挿通孔へ挿入するとともにクランク軸を開口側からク
ランクケース本体内へ組込むことができ、従って、クラ
ンク軸とコンロッドとの連結作業をクランクケース本体
内で行なう必要がなくなり、組立作業が容易になる。

【００１１】

【実施例】本考案の一実施例を図１及び図３に基づいて
説明する。なお、図４乃至図６において説明した部分と
同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。一端に開
口２８が形成されたクランクケース本体２９が設けられ
ており、この開口２８を覆うクランクケースカバー３０
を前記クランクケース本体２９へ連結することによりク
ランクケース３１が構成されている。そして、このクラ
ンクケース３１内には、軸受８，１１により軸支された
クランク軸５と軸受９，１２により軸支されたカム軸６
とが平行な軸心をもって収納されるとともに、タペット
ガイド１０により保持されたタペット７が収納されてい
る。

【００１２】前記クランクケース３１にはピストン１５
を収納したシリンダ１６が連結されており、このシリン
ダ１６のシリンダ中心は、前記クランク軸５の真上に位
置するとともに、前記クランクケース本体２９と前記ク
ランクケースカバー３０との連結面３２から偏位して位
置している。また、前記ピストン１５と前記クランク軸
５とを連結するコンロッド３３が設けられており、この
コンロッド３３は、図６に示したコンロッド１７と同様
に、小端部２０と棹部２１と大端部２２、及び、コンロ
ッドボルト２３により大端部２２へ連結されたキャップ
部２４とにより構成されている。

【００１３】つぎに、前記クランクケース本体２９の上
面部には前記コンロッド３３を挿通させるとともに前記
シリンダ１６により覆われる挿通孔３４が形成されてお
り、この挿通孔３４は前記開口２８に連通されている。

【００１４】このような構成において、エンジンの組立
時には、クランクケース本体２９外においてクランク軸
５へコンロッド３３の大端部２２側を連結するとともに
コンロッド３３の小端部２０側にピストン１５を連結
し、ついで、このクランク軸５の一端側を開口２８側か
らクランクケース本体２９内へ挿入するとともに軸受８
により軸支する。なお、この挿入時において、コンロッ
ド３３は開口２８から挿通孔３４へ挿入される。さら
に、開口２８からタペット７をタペットガイド１０へ挿
入した後、カム軸６の一端側を挿入するとともにその一
端を軸受９により軸支し、ついで、クランクケースカバ
ー３０をクランクケース本体２９へ連結するとともにク
ランク軸５とカム軸６との他端を軸受１１，１２により
軸支する。そして、挿通孔３４からクランクケース本体
２９外へ突出しているコンロッド３３の小端部２０側に
連結されているピストン１５をシリンダ１６内へ収納
し、このシリンダ１６を挿通孔３４を覆う状態にクラン
クケース３１へ連結する。

【００１５】従って、クランク軸５とコンロッド３３と
の連結をクランクケース本体２９外で行なうことがで
き、狭いクランクケース本体２９内での連結作業が不要
となるため、組立作業を容易に行なえる。

【００１６】なお、本実施例においては、挿通孔３４と
開口２８との連通部の幅寸法を挿通孔３４の直径と略等
しく形成したが、棹部２１の幅寸法以上あればよい。

【００１７】また、本実施例においては、クランクケー
ス本体２９とクランクケースカバー３０との連結面３２
を、シリンダ中心よりクランクギヤ１３やカムギヤ１４
側に偏位させたものを例に挙げて説明したが、クランク
ケース本体とクランクケースカバーとの連結面を、シリ
ンダ中心を挾んでクランクギヤ１３やカムギヤ１４の反
対側に偏位させてもよい。

【００１８】さらに、本実施例においては、コンロッド
３３の一端側が大端部２２とキャップ部２４とに分割さ
れているものを例に挙げて説明したが、クランクピンを
別体に形成した組立式のクランク軸と大端部側が一体的
に形成されたコンロッドとを用いた場合でも組立を容易
に行なえる。

【００１９】

【考案の効果】本考案は、上述のようにクランク軸とピ
ストンとを連結するコンロッドを挿通させる挿通孔をク
ランクケース本体に形成し、この挿通孔をクランクケー
スカバーにより覆われるクランクケース本体の開口に連
通させたことにより、クランク軸とコンロッドとをクラ
ンクケース本体外で連結した後にクランク軸をクランク
ケース本体内へ挿入するとともにコンロッドを開口から
挿通孔へ挿入させることができ、従って、クランクケー
ス本体内にクランク軸を挿入した後にこのクランク軸に
コンロッドを連結するという組立工程が不要となるた
め、エンジンの組立作業を容易に行なうことができ、し
かも、従来クランクケース本体内で行なっていたクラン
ク軸とコンロッドとの連結作業を行なうためのスペース
を確保する必要がなくなるためにクランクケースの小型
化を図ることができる等の効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示す平面図である。

【図２】図１の水平断面図である。

【図３】図１のＡ−Ａ線断面図である。

【図４】従来例を示す平面図である。

【図５】図４の水平断面図である。

【図６】図４のＢ−Ｂ線断面図である。

【図７】他の従来例を示す縦断正面図である。

【符号の説明】

５ クランク軸 ６ カム軸 １５ ピストン １６ シリンダ ２８ 開口 ２９ クランクケース本体 ３０ クランクケースカバー ３１ クランクケース ３２ 連結面 ３３ コンロッド ３４ 挿通孔

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 一端に開口が形成されてクランク軸とカ
   ム軸との一端を軸支するクランクケース本体に前記クラ
   ンク軸と前記カム軸との他端を軸支するとともに前記開
   口を覆うクランクケースカバーを連結させたクランクケ
   ースを設け、前記クランクケース本体と前記クランクケ
   ースカバーとの前記開口を含む連結面から前記クランク
   軸の軸方向に偏位させてシリンダ中心を位置させたシリ
   ンダを前記クランク軸の軸方向と直交する方向から前記
   クランクケースに連結し、前記クランク軸の中間部と前
   記シリンダ内に収納されたピストンとを前記クランクケ
   ース本体に前記開口と直交する方向に形成された挿通孔
   を通るコンロッドで連結したエンジンのクランクケース
   構造において、前記コンロッドを挿通させる前記挿通孔
   の一部を前記クランクケース本体に形成された前記開口
   に連通させたことを特徴とするエンジンのクランクケー
   ス構造。