JP2531867B2 - 半導体製造設備用転がり軸受 - Google Patents

半導体製造設備用転がり軸受

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JP2531867B2
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博光 近藤
隆宏 水谷
則秀 佐藤
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NTN Toyo Bearing Co Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、とくに半導体製造設
備で使用される転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に転がり軸受は内・外輪と転動体と
の間および転動体と保持器との間にグリース等の潤滑剤
を供給して転がり摩擦や滑り摩擦を減少させ、軸受の耐
久性を向上させるようにしている。
【0003】ところで、転がり軸受を半導体製造設備の
高い清浄度が要求される密封真空下で使用する場合、潤
滑剤の蒸気が環境の汚染源となるため、グリース等の流
体潤滑剤を使用することができない。そのため、このよ
うな環境下で使用される転がり軸受には蒸気圧の低い固
体潤滑剤が必要になる。現在、転がり軸受の固体潤滑剤
としては、二硫化モリブデン等の層状物質系、金、銀、
鉛等の軟質金属系、PTFE、ポリイミド等の高分子系
の潤滑剤が広く使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年、半導体製造分野
では半導体の集積度が増すにつれて導電パターンの線幅
が微細化しており、軸受から排出される固体潤滑剤の摩
耗粉がパターン上に付着して導電回路を短絡させるおそ
れがあることから、導電性のある軟質金属系の固体潤滑
剤が敬遠される傾向にある。一方、二硫化モリブデン、
PTFE(ポリマー)等の固体潤滑剤は導電性をもたな
いが、これらは転着性に乏しく、しかも耐摩耗性が低い
ため、耐久性の点で軟質金属よりも劣る。
【0005】また、最近の半導体製造設備では、真空中
で使用できるのみならず、大気・真空両用、低発塵、耐
食、などの機能を持つ軸受が必要とされるようになって
きた。すなわち、半導体製造工程で真空軸受が使用され
るのは主にウェーハ処理工程である。この工程で使われ
る装置は生産性の向上のためインライン化される傾向が
あり、ウェーハの搬送装置には大気と真空の両環境下で
運転できる軸受が必要になってきている。また、半導体
の高集積化は必然的に装置からの発塵の抑制を要求して
いる。さらに、使用個所によっては耐腐食性や耐熱性も
要求される。
【0006】そこで、この発明の目的は、転がり軸受、
真空中・大気中の両方で耐久性にすぐれ、かつ低発塵
で、特に半導体製造分野での使用に適したものとするこ
とにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、半導体製造
設備用転がり軸受であって、この転がり軸受を構成する
部品のうち少なくとも転がり摩擦または滑り摩擦を生ず
る表面に平均分子量が1×103〜3×103のポリテトラフ
ルオロエチレン(以下、「PTFEテロマー」と称す
る。)からなる潤滑被膜を形成したものである。
【0008】
【作用】従来転がり軸受の固体潤滑剤として使用されて
いるPTFEは平均分子量が2×105〜3×105のポリマ
ーであるが、PTFEテロマーは上記ポリマーに比べて
剪断強度が著しく小さく、また軟らかいという特性をも
つ。このため、PTFEテロマーの摩耗粉は転着性に優
れ、相手面の微小な凹部へも入り込んで潤滑被膜を形成
するので、摩耗粉(パーティクル)が飛散しにくく低発
塵である。また、剪断抵抗が小さいため摩擦係数が小さ
く、優れた潤滑性能を発揮する。したがって、このPT
FEテロマーを用いて転がり軸受の転がり摩擦または滑
り摩擦を生ずる部位に固体潤滑被膜を形成させることに
より、PTFEテロマーの転着性のよさ、摩擦係数の低
さから、潤滑性能の良好な潤滑被膜が長期にわたって維
持される。さらに、PTFEテロマーからなる固体潤滑
被膜は真空中のみならず大気中においても優れた耐久性
を備えており、半導体製造設備において各種製造装置間
やクリーンルームとの間でウエーハを搬送するためのウ
エーハ駆動系で使用される転がり軸受のように真空中と
大気中の両方で使用される場合にきわめて有利である。
【0009】
【実施例】以下、図面に従ってこの発明の実施例を説明
する。
【0010】まず、図1は深溝玉軸受に適用した実施例
を示す。深溝玉軸受は、内輪1、外輪2、内・外輪1、
2間に介在する複数の転動体3、転動体3を円周等間隔
に保持する保持器4といった軸受部品で構成される。そ
して、内・外輪1、2の転走面および転動体3の表面に
はそれぞれPTFEテロマーの潤滑被膜1a、2a、3aが形
成されている。これらの固体潤滑被膜1a、2a、3aは、P
TFEテロマー(日本アチソン製ARC7)を、25cm離
れた位置から被膜形成面にスプレ−して付着させたもの
で、この場合の平均被膜厚さは0.6μmであったが、図で
は被膜厚さをかなり誇張してある。なお、本実施例では
内・外輪1、2の転走面および転動体3の表面に固体潤
滑被膜を形成するようにしたが、固体潤滑被膜は少なく
とも転動体の表面に形成すればよい。また、図面では内
・外輪1、2の外表面全体に固体潤滑被膜1a、2aが形成
されているが、嵌合面等の、固体潤滑被膜の不必要な部
分については、マスキングによって被膜処理を施さな
い、あるいは、最終製品とする前に除去することも可能
である。さらに、軸受の形式は図1に例示したような深
溝玉軸受に限らず、広く転がり軸受一般に適用すること
ができる。
【0011】図2は半導体製造設備におけるウエーハ駆
動系を示す。このウエーハ駆動系は、各製造装置間での
ウエーハの搬送など半導体製造工程の搬送全般に使用さ
れるもので、ウエーハ昇降部5とウエーハ搬送部6を有
する。ウエーハ昇降部5は、ウエーハ7を収納したカセ
ット8をリニアボールベアリング9で案内しつつボール
ねじ10で駆動する。カセット8がウエーハ搬送部6と同
レベルまで上昇したら、図には現われていないプッシャ
が作動してウエーハ7を1枚ずつウエーハ搬送部6へ押
し出す。このようにしてウエーハ搬送部5に順次押し出
されたウエーハ7は、駆動ローラー11で駆動されるベル
ト12上を矢印方向に整列して搬送される。駆動ローラー
11の支持軸や、ボールねじ10のねじ軸およびリニアボー
ルベアリング9の軸の支持部等にこの発明の転がり軸受
を使用することができる。
【0012】図3は、図1の実施例の転がり軸受につい
て行なった寿命試験結果を示す。寿命試験は、軸を支承
させた2個の試験軸受を、室温、真空度10-6Torr以下、
スラスト荷重1kgf、回転数2500rpmの条件下に回転さ
せ、2個の試験軸受の摩擦トルクの総和が100gcmに達し
た時点を寿命とした。同図に示すように、本実施例の固
体潤滑転がり軸受は、PTFEポリマーの潤滑被膜を形
成した従来の固体潤滑転がり軸受の寿命(略50hrs)を
1とした場合に比べて4倍以上の耐久性を示した。
【0013】図4は、各種の潤滑被膜を施した深溝玉軸
受の発塵量を、真空度10-6Torr以下、500rpm、スラスト
荷重1.5Nの条件で測定した結果を示すもので、また、
図5はウェーハ搬送装置の条件に近い50rpm、スラスト
荷重10Nで比較したものである。これらの図において、
横軸は時間(h)、縦軸は相対発塵量(count/min)を
表しており、(A)はPTFEテロマー被膜、(B)は
Pbイオンプレーティング被膜、(C)はAgイオンプレー
ティング被膜、(D)はMoS2スパッタリング被膜、
(E)はMoS2焼成被膜の場合である。いずれも、回転数
およびスラスト荷重以外の試験条件は次のとおり。試験
軸受:#608、内・外輪、鋼球:SUJ2、保持器:SU
S304、被膜処理を施した部位:内・外輪、鋼球、温
度:室温、測定粒子径:>0.38μm。
【0014】図4および図5に示される試験結果から、
二硫化モリブデンの被膜、特に焼成膜は発塵量が多いこ
と、ついで銀、鉛、PTFEテロマーの順で少なくなっ
ていることが分かる。PTFEテロマーの潤滑被膜は軸
受の滑り面で大きな剪断を受けても二硫化モリブデンや
軟質金属のように微細粉にならず、軸受外部への発塵を
ほとんど零に抑えられるためと考えられる。また、この
潤滑被膜は長時間使用しても発塵量が使用時間の経過と
ともに増加するようなことはない。なお、半導体製造に
おけるこれらの軸受の実使用時間は半導体製造設備の全
稼働時間に比べるとずっと短いので、300時間のデータ
で実機使用時の状況を捉えることができると思われる。
図6が示すのは図5の条件でPTFEテロマー被膜を施
した軸受を長時間測定した結果である。
【0015】固体潤滑被膜の耐久性は雰囲気により大き
く左右される。そこで、各種の固体潤滑被膜を付けた玉
軸受について、真空中および大気中において耐久試験を
行なった。図7にその試験結果を示す。図7(A)は真
空(真空度<10-6Torr)中での試験結果を示し、図7
(B)は大気中での試験結果を示している。試験条件
は、回転数が2500rpmである点を除き図5に関して既述
したのと同じである。銀や鉛などの金属系被膜は真空中
では長寿命であるが大気中では短い。大気中では被膜が
酸素と反応し酸化物を作り粉塵化するので、酸素のない
真空中に比べ短寿命になるものと思われる。二硫化モリ
ブデン被膜は大気、真空の両方の雰囲気下で特別長寿命
ではないが使用可能な程度の耐久性を示している。現在
は大気・真空両用の場合は二硫化モリブデン被膜が使用
されることが多いが、PTFEテロマー被膜は大気・真
空両雰囲気下で二硫化モリブデン被膜以上の耐久性を持
っている。しかも、発塵性の問題がでてくるとPTFE
テロマー被膜の有利さが一層顕著となる。
【0016】インライン形式の半導体製造装置には腐食
性のガスを用いSiO2をエッチングする工程や酸素ガスを
使った酸化膜形成工程などがある。これらの工程のガス
濃度は希薄ではあるが腐食性が高い。潤滑被膜の耐蝕性
は当然必要であるが、軸受基材の耐蝕性も必要になる。
したがって、ステンレスのボールやレースを用い、PT
FEテロマー被膜を施すのが望ましい。
【0017】PTFEテロマー被膜の軟化点は320℃以
上であるので、半導体製造装置で要求される300℃程度
の高温には十分耐えるものと思われる。
【0018】各種潤滑被膜の特徴をまとめると図8のよ
うになる。半導体製造装置において軸受が多数使用され
る搬送装置の軸受は上述のように低発塵性と大気・真空
両用性を兼備することが特に要求される。この観点か
ら、さらに量産性の観点からも、各種潤滑被膜を比較す
るとPTFEテロマー被膜が最も良い。
【0019】
【発明の効果】以上説明したところから明らかなよう
に、PTFEテロマーを固体潤滑剤として用いることに
より、非導電性で、かつ潤滑性および耐久性に優れた固
体潤滑被膜が得られる。したがって、少なくとも転がり
摩擦または滑り摩擦を生ずる表面にこのPTFEテロマ
ーからなる固体潤滑被膜を形成した転がり軸受は、従来
のPTFE固体潤滑剤を使用したものに比べて耐久性が
大幅に向上する。しかも、既述のようにPTFEテロマ
ーからなる固体潤滑被膜は、低発塵性、大気・真空
両用可能、低トルク(MoS2スパッタ被膜と同程度)、
耐熱性(被膜の軟化点は320℃以上である。)、耐
蝕性(被膜は酸やアルカリに侵されない。)、といった
諸特性を備えているので、特に半導体製造分野で使用さ
れる転がり軸受の潤滑に用いるとき顕著な効果を発揮す
るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例を示す深溝玉軸受の断面図で
ある。
【図2】半導体製造設備におけるウエーハ駆動系の斜視
図である。
【図3】寿命の比較試験結果を示す図である。
【図4】発塵量の測定結果を示す図である。
【図5】発塵量の経時変化を示す図である。
【図6】長時間にわたる発塵量の経時変化を示す図であ
る。
【図7】耐久性に関する比較試験結果を示す図である。
【図8】各種潤滑被膜の特徴を比較した図である。
【符号の説明】
1 内輪 2 外輪 3 転動体 1a、2a、3a 固体潤滑被膜(PTFEテロマー)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭52−31253(JP,A) 特開 昭51−70105(JP,A) 特開 昭49−640(JP,A) 特開 昭63−225729(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体製造設備用転がり軸受であって、
    この転がり軸受を構成する部品のうち少なくとも転がり
    摩擦または滑り摩擦を生ずる表面に平均分子量が1×10
    3〜3×103のポリテトラフルオロエチレンからなる潤滑
    被膜を形成したことを特徴とする半導体製造設備用転が
    り軸受。
JP3136084A 1990-11-30 1991-06-07 半導体製造設備用転がり軸受 Expired - Lifetime JP2531867B2 (ja)

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US07/799,254 US5207513A (en) 1990-11-30 1991-11-27 Rolling bearing with solid lubricant
GB9125165A GB2250549B (en) 1990-11-30 1991-11-27 Rolling bearing with solid lubricant
DE4139426A DE4139426A1 (de) 1990-11-30 1991-11-29 Waelzlager mit festschmierstoff
FR9114779A FR2671386B1 (fr) 1990-11-30 1991-11-29 Palier de roulement a lubrifiants solides utilises notamment dans un appareil de fabrication de semiconducteurs

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