JP2522770B2 - インクジェット装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、インク吐出口から気泡などを除去して回復
を行うために用いられる回復手段を有するインクジェッ
ト装置に関する。

［従来の技術］ インクジェット記録装置においては、記録ヘッドに設
けたインク吐出口の目づまりやインク吐出口からの空気
混入等が原因となってインク吐出不良が生じることを防
止するため、インク吐出口からインクを吸引してインク
吐出を正常化するインク回復装置を設けることがある。

しかし、従来のこの種のインク回復装置では、記録ヘ
ッド内の空気混入等による吐出不良に対しインクのみが
吸引され、記録ヘッド内の隅部あるいは段差部の空気が
吸引排出されず吐出不安定になるという問題があった。

第９図に従来のインク回復装置の構成を示す。記録ヘ
ッド１のマルチノズル1Aは密閉キャップ３で密閉され、
密閉キャップ３には吸引チューブ４および大気開放チュ
ーブ５が接続されている。吸引チューブ４の他端は負圧
発生源である吸引ポンプ６に接続されている。大気開放
チューブ５には通気弁７および電磁弁８が設けられ、電
磁弁８の開閉は電磁弁開閉コントロールタイマー９で制
御される。密閉キャップ３内にはインクを保持できるイ
ンク吸収体が設けられている。通気弁７は、吸引ポンプ
６の操作レバーと連動し、インク吸引時には閉じ、イン
ク吐出口でのインク蒸発やごみ付着を防止するためのキ
ャッピング時には開くよう動作する。電磁弁８は、通常
は閉じているが、電磁弁開閉コントロールタイマー９に
より後述するタイミングで開かれ大気開放チューブ５を
大気と連通させる。

以上説明したインク回復装置の動作を第10図のタイミ
ングチャートを参照して以下に説明する。

密閉キャップ３でマルチノズル1Aが密閉され、かつ通
気弁７および電磁弁８が閉じられた状態で、第10図中の
時間t0の時点で吸引ポンプ６をオン（作動状態）にする
と、吸引チュープ４を介して空気が吸引され密閉キャッ
プ３内および大気開放チューブ５内に負圧（インク吸引
負圧）が生成され、マルチノズル1Aからインクが吸引さ
れる。吸引されたインクは、密閉キャップ３内を満たし
インク吸引体より溢れている。また、大気開放チューブ
５内にもインクが満たされる場合がある。しかし、この
状態のままでは後のインク吐出に悪影響が生じる。そこ
で、時点t0から所定時間経過した時点t1で、電磁弁８を
オン（開き状態）にして大気開放チューブ５を大気に連
通させる。すると、インク吸収体２より溢れていたイン
クおよび大気開放チューブ５内のインクは、吸引チュー
ブ４を介して吸引ポンプ６へ送られる。

第10図に示すごとく、密閉キャップ３内の圧力（吸引
圧力波形）は、吸引ポンプ６をオンしたt0時点で若干の
立上がり角度でもって負圧になり、電磁弁８をオン
（開）にしたt1時点で急激に大気圧に復帰する。したが
ってt1時点以降ではインク吸引は行われない。ここで、
吸引ポンプ６をオンにするt0時点から電磁弁８をオンに
するt1時点までの時間（t1−t0）は、電磁弁開閉コント
ロールタイマー９によって制御される。また、この時間
t1−t0すなわちインク吸引時間は電磁弁開放コントロー
ルタイマー９を調節することにより変化させることがで
きる。

従来は第10図の負圧・吸引シーケンスで吐出不良を解
消していた。しかし、第９図のように記録ヘッド１のマ
ルチノズル1Aの後方の共通インク室1Bの内部に気泡1Cが
ある場合吐出不良が生じ易い。また気泡が共通インク室
内の隅部および段差部にある場合は吸引ポンプ６の負圧
で吸引してもインクはマルチノズル1Aには流れても、共
通インク室1B内では流れ易い部分のみノズル側へ流れ、
気泡1Cは留まったままであり、吐出不良が解消しにくい
ことがあった。

［発明が解決しようとする問題点］ 本発明は上述した従来における吐出不良が解消しにく
いという欠点を解決し、記録ヘッド内に滞留した気泡の
除去を容易に行うことのできるインクジェット装置を提
供することを目的とする。

［問題点を解決するための手段］ このような目的を達成するための本発明のインクジェ
ット装置は、インクジェットヘッドのインク吐出口を密
閉するための弾性キャップと、該弾性キャップが前記イ
ンク吐出口を密閉しているときに前記インク吐出口から
の吸引を行うための吸引手段と、前記弾性キャップが前
記インクジェットヘッドへ近付く方向に前記弾性キャッ
プを付勢するための付勢手段と、前記弾性キャップが前
記インクジェットヘッドから離間するように前記付勢手
段による付勢力に抗して前記弾性キャップの位置を規制
するための規制手段と、前記弾性キャップが前記インク
吐出口を密閉しているときに前記インクジェットヘッド
に対する前記弾性キャップの密閉力が大きくなるように
前記インクジェットヘッドへ近付く方向に前記弾性キャ
ップを押圧するための押圧手段を有し、該押圧手段を用
いて前記インク吐出口から気体を導入した後前記吸引手
段を用いて前記インク吐出口からの吸引を行うことを特
徴とする。

［作 用］ 弾性キャップ３を通気弁と電磁弁を閉じた状態で強制
的に前後進させると弾性キャップ内の空気が加圧され、
共通インク室内およびヘッド供給管の１部にも空気が入
り込む。この状態で吸引ポンプで負圧吸引すると一気に
空気がノズルから排出され、ヘッド供給管、共通インク
室およびマルチノズルがインクで充填され記録ヘッド１
の吐出安定を図ることができる。

［実施例］ 以下に図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明す
る。

第１図に本発明のインクジェット装置の一実施例を搭
載したインクジェットプリンタの上面図を第２図に本発
明の一実施例の斜視図を示す。

第１図，第２図において第９図と同一部分は同一参照
番号を付して説明を省略する。3Aは記憶ヘッド１を密閉
し得る弾性キャップであり、シリコンゴム，ブチルゴム
その他弾性を有する適宜な材料で形成される。10は弾性
キャップ3Aを内包したキャップホルダー、11は接点、12
は歯車で図示しないモータと連係されている。13はポン
プレバー、14はベース、15は付勢手段を構成するばねで
弾性キャップ3Aを前方に押すように附勢されている。16
はキャリッジ、17はプラテン、18は記録紙である。

記録装置本体に内蔵されているマイクロプロセッサな
どの制御装置の指示によるモーター（図示せず）の回転
と共に歯車12が回転し、弾性キャップ3Aを内包したキャ
ップホルダー10を前後進させ、キャリッジの記録ヘッド
１に弾性キャップ3Aの圧接および離間させる。弾性キャ
ップ3Aの開閉状態は歯車12の位置決めカム12Aによって
接点11のキャップ接点11Bをオン，オフさせることによ
り検知でき、その結果は前述した制御装置に入力され
る。吸引ポンプ６のオン，オフの検出はポンプレバー13
の一端部で接点11のポンプ接点11Aを開閉して行う。弾
性キャップ3Aはキャップホルダー10と一体である。記録
ヘッド１の密閉力（シール力）はベース14に取付けられ
たばね15によりベースにガイドされたキャップホルダー
10の前進力により生じる。記録ヘッドとベースは一定の
位置関係で設置されているので密閉力は一定となる。

弾性キャップ3Aを通気弁７と電磁弁８を閉じた状態で
第３図の矢印のように強制的に前後進させると弾性キャ
ップ3A内の空気が加圧され、第３図のように共通インク
室1B内およびヘッド供給管1Dの一部にも空気が入り込
む。この状態で吸引ポンプ６で負圧吸引すると一気に空
気がノズルから排出され、ヘッド供給管1D、共通インク
室1Bおよびマルチノズル1Aがインクで充填され印字ヘッ
ド１の吐出安定が図られる。空気層とインクがきれいに
置換されるためである。

第４図および第５図は歯車12の詳細を示す。第４図は
歯車12の斜視図、第５図はその断面図である。歯車12の
回転と共にその内部に設けられている内面カム12B内を
キャップホルダーピン10Aが前後進する。キャップホル
ダーピン10Aが第５図のＸの位置にある時はキャップホ
ルダーピン10Aが規制手段を構成する内面カム12Bに規制
され押圧されて弾性キャップ3Aは開放されており、図示
のＹの位置がキャップ閉状態である。この時弾性キャッ
プ3Aは記録ヘッド１に当接し、かつばね15によって一定
の圧力で記録ヘッド１に押圧されている。輸送時など、
この閉状態のままで長時間おかれることもあるので、弾
性キャップの塑性変形を防止するため、この状態では大
きな圧縮力を与えることはできない。キャップホルダー
ビン10Aが図示のＺの位置に移ると押圧手段を構成する
圧縮カム12Cがキャップホルダーピン10Aをさらに押すの
で、記録ヘッド１にばね15の力で押圧されている弾性キ
ャップ3Aにはばね15のばね力に加え、機械的な圧縮力が
与えられる。このように弾性キャップ3Aが開放状態から
閉状態へ移行する時に瞬時大きな圧縮力を与える。こう
すると弾性キャップ3Aの圧縮量を大きくすることができ
るので、記録ヘッド内に容易に空気を入れることができ
る。

第６図（Ａ）および（Ｂ）に、本発明を適用可能なイ
ンクジェット記録装置の外観構成および装置前面に設け
た操作パネルの構成の一例を示す。第６図（Ａ）におい
て、21は装置本体、22は電源スイッチ、23は操作パネル
である。操作パネル23には、同図（Ｂ）に示すように、
紙等記録媒体の搬送を操作者が指令するためのFF（フォ
ームフィード）スイッチ24、LE（ラインフィード）スイ
ッチ25、および例えばマスタ装置とのオンライン指令を
与えるためのオンラインスイッチ26などの指令手段の
他、装置のオンライン状態を表示するためのオンライン
ランプ27、異常等を報知するためのアラームランプ28、
およびレディ状態を報知するためのレディランプ29など
の表示手段を設けることができる。

第７図にインク吐出回復動作のタイミングチャートを
示す。時点Ａにおいてポンプレバー13を押し込むと、レ
バー13と連動している通気弁７が閉じ、ポンプ接点11A
はメイクする。すると制御装置は電磁弁８を開放し、ポ
ンプ６を動作させる。この時弾性キャップ3Aは記録ヘッ
ド１を閉じている。アラームランプは回復動作の進行中
を示す点滅を開始する。吸引ポンプ６が動作しても、電
磁弁８が大気に開放されているので負圧は発生しない。

時点Ｂでポンプレバー13の押圧を止めると、ポンプレ
バー13はポンプ内の図示しないばねによってＢ′のよう
に上昇し、ポンプ接点11Aがオンからオフとなる。制御
装置はポンプ接点11Aのオフを検知すると電磁弁８を閉
じ、歯車12を駆動して弾性キャップ3Aの開閉を行う。前
述したようにこの開閉動作に伴って、弾性キャップ3Aに
は、記録ヘッド１に押圧された状態でさらに圧縮力が加
えられるので、記録ヘッド内に空気が入る。Ｂ点におけ
る１〜２回の開閉動作後、ランプの点滅がアラームラン
プの点滅から、アラームランプとオンラインランプの相
互点滅に変り、記録ヘッドからの負圧吸引回復動作のた
めの２回目のポンプレバー動作Ｃを促す。

Ｃ以後の動作は第10図に示したタイミングチャートと
同様になる。オンラインランプの点滅は中止し、一定時
間アラームランプが点滅した後ポンプレバー13を引上げ
て回復動作を終了する。

第８図に通常のキャッピング動作のタイムチャートを
示す。接点11Bによるキャップ開閉信号に応じて電磁弁
８を一定時間大気開放し、弾性キャップ3Aが閉状態でポ
ンプレバーの引上げを忘れても記録ヘッド内に空気が入
らないようにする。

第７図に示したように時点Ｂにおける密閉キャップ開
閉の後、時点Ｃにおけるインク吸引がなされるので、印
字ヘッド内に小さな気泡が滞留することが防止できる。
また、ポンプレバー操作を手動で行う例を説明したが自
動化することは非常に容易であり、インクジェットプリ
ンタ21の操作パネル23のFF,LF,ON LINE等のスイッチを
利用し、第７図のタイミングチャートのように回復装置
を作動させることができる。さらに手動操作においても
第７図のタイミングチャートの時点Ｂにおける点線から
スタートするようスタートスイッチ等を設けることによ
り回復操作を単純にすることができる。

以上説明した実施例によれば、ポンプレバー、電磁弁
を操作し、ばね力と強制力による密閉キャップの開閉を
制御することにより、記録ヘッド内の隅部あるいは段差
部等の排出にしくい気泡を大きな空気の塊とし負圧吸引
時記録ヘッド内から容易に排出し吐出回復することがで
きる。

［発明の効果］ 以上の説明から明らかなように、本発明によればイン
ク吸引時記録ヘッド内に滞留した気泡の除去を容易に行
うことができるインクジェット装置を得ることができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の構成を説明する図、 第２図は本発明の一実施例の斜視図、 第３図は記録ヘッドの断面図、 第４図は本発明の実施例における歯車の斜視図、 第５図は歯車の断面図、 第６図はインクジェットプリンタの斜視図、 第７図，第８図は本発明の動作を説明するタイミングチ
ャート、 第９図は従来のインク回復装置の構成を示す概略図、 第10図は従来のインク回復動作のタイミングチャートで
ある。 １……記録ヘッド、 ３……密閉キャップ、 3A……弾性キャップ、 ６……吸引ポンプ、 ７……通気弁、 ８……電磁弁、 10……キャップホルダー、 10A……キャップホルダーピン、 11……接点、 11A……ポンプ接点、 12……歯車、 12B……内面カム、 12C……圧縮カム、 13……ポンプレバー、 15……ばね。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】インクジェットヘッドのインク吐出口を密
   閉するための弾性キャップと、 該弾性キャップが前記インク吐出口を密閉しているとき
   に前記インク吐出口からの吸引を行うための吸引手段
   と、 前記弾性キャップが前記インクジェットヘッドへ近付く
   方向に前記弾性キャップを付勢するための付勢手段と、 前記弾性キャップが前記インクジェットヘッドから離間
   するように前記付勢手段による付勢力に抗して前記弾性
   キャップの位置を規制するための規制手段と、 前記弾性キャップが前記インク吐出口を密閉していると
   きに前記インクジェットヘッドに対する前記弾性キャッ
   プの密閉力が大きくなるように前記インクジェットヘッ
   ドへ近付く方向に前記弾性キャップを押圧するための押
   圧手段と、 を有し、該押圧手段を用いて前記インク吐出口から気体
   を導入した後前記吸引手段を用いて前記インク吐出口か
   らの吸引を行うことを特徴とするインクジェット装置。