JP2522092B2 - 音像定位装置 - Google Patents

音像定位装置

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Description

【発明の詳細な説明】 (a)産業上の利用分野 この発明は、聴取者(リスナ)に対して特定の方向で
鳴動する楽音の定位感を模倣(シュミレート)すること
ができる音像定位装置に関する。
(b)従来の技術 現在、ステレオ装置等では、複数の楽音出力系統から
出力される同一の楽音の出力レベル比を異ならせること
によってその楽音の定位感を出すようにしている。出力
チャンネルが2チャンネルの場合には、2個の出力装置
(スピーカ)の間で2次元的に楽音を定位することがで
き、出力チャンネルが4チャンネルの場合には、さらに
楽音を2次元的に定位させやすくなる。
(c)発明が解決しようとする課題 このように、従来のステレオ装置では、左右両チャン
ネルの出力レベル比を制御して左右両耳で聞こえる音量
の差のみで音像の定位感を表現しようとしていた。しか
し、実際に音源(楽器等)を特定の方向,距離に配置し
た場合には、左右両耳に聞こえて来る楽音の音量が異な
るだけではなく、響き方や微妙な時間的遅れの違いを伴
っている。従来のステレオ装置では、このような違いを
表現できなかったため、実際に楽器をレイアウトしたよ
うな明瞭な定位感を得ることが出来ない欠点があった。
さらに、従来、定位を指定する操作子は、回転ボリュー
ムやスライドボリュームであったため1次元的にしか定
位を指定することができず、2次元的,3次元的に定位を
指定するためには複数の操作子が必要となり操作性が極
めて悪い欠点があった。
この発明は音源のリスナに対する方向による聞こえ方
の違い(遅延時間や減衰率等)をシュミレートすること
により、明確な音像定位を実現し、さらに、定位指定手
段にジョイスティックを用いたことにより操作性を向上
した音像定位装置を提供することを目的とする。
(d)課題を解決するための手段 この発明は、入力された楽音信号を処理する、遅延回
路,フィルタ,アンプを含む処理回路と、鳴動した楽音
の聴取者の耳への伝達を模倣するための遅延時間,濾過
特性,増幅率を含む伝達データを、前記聴取者に対する
各方向毎に記憶したテーブルと、ジョイステックを含む
音像定位方向を指定する定位指定手段と、この定位指定
手段で指定された方向の伝達データを前記テーブルから
読み出して、前記遅延回路の遅延時間、前記フィルタの
ろ過特性および前記アンプの増幅率を制御するために前
記処理回路に供給する読出手段とを備え、前記読出手段
は、さらに、前記定位指定手段で指定された方向が前記
テーブルに記憶されていないとき、該指定された方向に
近い方向の伝達データを前記テーブルから読み出し、こ
の読み出した伝達データから該指定された方向の伝達デ
ータを補間生成する補間手段を含むことを特徴とする。
また、前記定位指定手段は、音像定位位置を指定する距
離データを出力する手段を含み、前記処理回路は、前記
テーブルから読み出した伝達データに前記距離データを
乗算する手段を含むことを特徴とする。
(e)発明の作用 この発明の音像定位装置は、遅延回路,フィルタ,ア
ンプを備えている。これらの特性(遅延時間,ろ過特
性,増幅率)を変化させることにより、これらを通過す
る楽音の音像定位方向が変化する。すなわち、耳に近い
方向の音源からは殆ど遅延・減衰がなく、周波数特性も
変化なく伝達されるが、耳から遠い方向の音源からは、
遅延時間,減衰率,高音域減衰とも大きくなる、という
実際の音像定位をシミュレートすることができる。この
ため、各音像定位方向に対応する遅延時間,ろ過特性,
増幅率(伝達データ)を記憶したテーブルを設けた。こ
のテーブルに記憶された伝達データを遅延回路,フィル
タ,アンプに供給することにより、一定方向で発音して
いる楽音が特定の方向からの楽音の伝達をシミュレート
することができる。音像の定位方向は、ジョイスティッ
クを含む定位指定手段によって指定される。指定された
方向に対応する伝達データを読出手段が読み出すことに
よって前記遅延回路,フィルタ,アンプにセットされ
る。もし、ジョイスティックにより指定された方位がテ
ーブルに記憶されていない場合には、その指定方位に近
い方位の伝達データが読み出され、補間により指定方位
の伝達データが生成される。ジョイスティックは縦横に
自由に傾けることができるため、これに基づいて2次元
的または3次元的な定位を容易にすることができる。ま
た、ジョイスティックに圧力センサ等によって距離デー
タを出力できるようにしておくことで、方位とともに位
置をも指定できる。
(f)実施例 第1図はこの発明の実施例である音像定位装置の概略
構成を示すブロック図である。この音像定位装置には、
音像を定位されるべき音源部としてキーボード11および
音源回路12が接続される。キーボード11は音源回路12に
対して発生すべき楽音の音高,音量や音色を指示し、音
源回路12はこの指示に基づいて楽音を形成する。形成さ
れた楽音は、ディジタル信号(量子化信号)のまま複数
チャンネルの出力処理系統に出力される。この音像定位
装置には複数チャンネル(nチャンネル)の出力処理系
統が備えられており、各出力処理系統は、ディレイ回路
19,フィルタ20およびアンプ21を有している。ディレイ
回路19,フィルタ20およびアンプ21は、それぞれ遅延時
間,濾過特性,ゲインを外部から設定可能である。
一般的に、チャンネル数nは2または4である。2チ
ャンネルの場合には、左右(R/L)チャンネル間で2次
元の定位が可能であり、4チャンネルの場合には、右前
(RF),左前(LF),右後ろ(RR),左後ろ(LR)各チ
ャンネル間でさらに2次元の定位がさせやすくなる。
ディレイ回路19,フィルタ20,アンプ21には、それぞれ
読出補間回路16,17,18を介してディレイ長テーブル13,
フィルタ係数テーブル14,アンプ係数テーブル15からの
パラメータ(係数)が入力される。
各テーブル13,14,15には、第2図に示すように、人に
対する音源の方向をシミュレートするためのディレイタ
イム,LPF(ローパスフィルタ)カットオフ周波数および
増幅率が記憶されている。なお、第2図は2次元方向に
ついてのみ示したものであり、実際のテーブルにはこの
ような伝達データが3次元的に記憶されている。
これらのテーブル13,14,15および読出補間回路16,17,
18には、定位指定部10が接続されている。読出補間回路
16,17,18はこの定位指定部10から入力された方向に対応
するデータを各テーブル13,14,15から読み出す。なお、
テーブル13,14,15には、0度(正面)から30度刻みで伝
達データが記憶されているが、この角度以外の定位方向
が指定された場合には、読出補間回路16,17,18が指定方
向に隣接する計測角度のパラメータを用いてそのパラメ
ータを算出する。算出式は公知の円分演算によって行わ
れる。また、定位指定部10から距離に関するデータが入
力された場合には、それぞれの伝達データ(遅延時間,
カットオフ周波数,増幅率)をこの距離データを勘案し
た値に再演算するようにすればよい。
第3図は、ジョイスティック30の構成を示す図であ
る。同図(A)はその原理を示す斜視図であり、同図
(B),(C)は概略構成を示す正面図,側面図であ
る。このジョイスティック30はスティック31を有してお
り、スティック31の先端部には演奏者が把持するグリッ
プ31aが形成されている。演奏者がグリップ31aを握って
スティック31を前後左右(X,Y方向)に操作したとき、
その操作角度に対応するデータが出力される。スティッ
ク31は、ドラム36を介してX軸廻り,Y軸廻りに揺動自在
に支持されている。すなわち、ドラム36はX軸方向の支
持軸32によって回動自在に支持され、スティック31は支
持軸33によってドラムにY軸廻りに揺動自在に支持され
ている。支持軸32には回転センサ34が接続され、支持軸
33には回転センサ35が接続さている。これによって、ス
ティック31のX軸廻りへの揺動(角度データθ)は回転
センサ34に検出され、Y軸廻りへの揺動(角度データ
φ)は回転センサ35に検出される。なお、回転センサ3
4,35はボリューム,ロータリエンコーダ等で構成するこ
とができる。
前記角度データφ,θは、第5図に示すように、それ
ぞれcosテーブル31,32に入力される。cosテーブル31,32
には入力された角度データに対応する関数値が記憶され
ており、このデータが前記テーブル13,14,15に入力され
る。
さらに、前記グリップ31a内部には圧力センサ37が設
けられている。この圧力センサ37は、演奏者がグリップ
31aを握る圧力を検出するセンサである。軸方向力(距
離データ)rとして出力される。
第5図は、第3図のジョイスティック30を用いた場合
の定位指定部10の構成を示す。この場合、上記角度デー
タθおよびφによってリスナから音像への立体角を指定
し、軸方向の圧力データ(距離データ)rによってリス
ナと音像との距離を指定するようにしている。この実施
例において、ジョイスティック30からは上述した角度デ
ータθ,φおよび距離データrが出力される。この角度
データθ,φに基づいて音像の角度を決定するためのco
sテーブル41,44およびsinテーブル42,43、さらに、これ
らを合成するための乗算器45,46が設けられている。
これらの回路により、 x1=cosφ y1=sinφcosθ z1=sinφsinθ の演算が行われる。さらに、この演算によって決定され
たx1,y1,z1の値に、乗算器47,48,49によって距離デー
タrが乗算されて、x,y,zの座標データが決定され上記
テーブル13,14,15に出力される。
以上の構成において、2チャンネルの場合、アンプ21
-1,21-2から出力される楽音信号はリスナの左右方向真
横に設けられたスピーカから出力するようにすれば明瞭
な音像定位感を出すことができる。なお、出力方式はス
ピーカに限らずヘッドホンを応用してもよい。また、4
チャンネルの場合には、4隅にスピーカを配置するよう
にし、また、8チャンネルの場合には4隅の上下にスピ
ーカを配置するようにすればよい。ただし、これらに限
定されるものではない。
また、本実施例の場合音源はモノラル音源であった
が、ステレオ音源等多チャンネル音源にも同様に適用す
ることができる。
また、この実施例では、ディレイ,フィルタ,アンプ
の特性データ(伝達データ)を各方向毎にテーブルに記
憶するようにしたが、これに代えて、伝達系のインパル
ス応答特性をテーブルに持ち、たたみ込み演算を行うよ
うにすることによっても同様のシミュレーションを行う
ことができる。
なお、本実施例はハードウエアで構成されているが、
CPUを用いたソフトウェアで構成するようにしてもよ
い。
(g)発明の効果 以上のようにこの発明の音像定位装置では遅延回路,
フィルタ,アンプの遅延時間,濾過特性,利得を音源を
定位する方向によって切り換えるようにしたことによ
り、楽音が聞こえてくる方向の伝達をリアルにシミュレ
ートすることができ、明瞭な音像定位感を実現すること
ができる。そして、指定された方位がテーブルに記憶さ
れていなくても、補間により指定方位の伝達データを生
成できるため、ジョイスティックで指定される方位に応
じた精徴な定位を実現できる。
さらに、定位指定手段にジョイスティックを用いたこ
とにより、簡略な且つ感覚的な操作で容易になおかつ正
確に定位を指定することができ、操作性を向上するとと
もに、音像の移動を正確にすることができる。また、ジ
ョイスティックで音像までの距離データを出力できるよ
うにしておくことで、方位とともに位置をも同時に指定
できる利点がある。
【図面の簡単な説明】 第1図はこの発明の実施例である音像定位装置の概略ブ
ロック図、第2図は同音像定位装置に用いられるテーブ
ルの記憶内容を示す図、第3図(A)〜(C)は同音像
定位装置に用いられるジョイスティックの構成を示す
図、第4図(A),(B)は同ジョイスティックが出力
する角度データを説明するための図、第5図は同音像定
位装置の定位指定部の構成を示す図である。 10……定位指定部、13……ディレイ長テーブル、14……
フィルタ係数テーブル、15……アンプ係数テーブル、1
6,17,18……読出補間回路、19……ディレイ回路、20…
…フィルタ、21……アンプ、30……ジョイスティック、
31……スティック、31a……グリップ、34,35……回転セ
ンサ、37……圧力センサ。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】入力された楽音信号を処理する、遅延回
    路,フィルタ,アンプを含む処理回路と、 鳴動した楽音の聴取者の耳への伝達を模倣するための遅
    延時間,濾過特性,増幅率を含む伝達データを、前記聴
    取者に対する各方向毎に記憶したテーブルと、 ジョイステックを含む音像定位方向を指定する定位指定
    手段と、 この定位指定手段で指定された方向の伝達データを前記
    テーブルから読み出して、前記遅延回路の遅延時間,前
    記フィルタのろ過特性および前記アンプの増幅率を制御
    するために前記処理回路に供給する読出手段とを備え、 前記読出手段は、さらに、前記定位指定手段で指定され
    た方向が前記テーブルに記憶されていないとき、該指定
    された方向に近い方向の伝達データを前記テーブルから
    読み出し、この読み出した伝達データから該指定された
    方向の伝達データを補間生成する補間手段を含むことを
    特徴とする音像定位装置。
  2. 【請求項2】前記定位指定手段は、音像定位位置を指定
    する距離データを出力する手段を含み、前記処理回路
    は、前記テーブルから読み出された伝達データに前記距
    離データを乗算する手段を含むことを特徴とする、請求
    項1記載の音像定位装置。
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