JP3552244B2 - 音場再生装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、音場再生装置に関し、特に、入力信号に音響特性に基づく演算処理を施して再生する音場再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ホール、劇場等の空間の音響特性すなわち周波数特性や残響特性は、音源として無指向性音源を用い、その無指向性音源に対する応答として測定されていた。したがって、その測定された空間の音響特性を模擬する場合も、音源が無指向性であるという仮定のもとに模擬されることとなる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、実際にホール、劇場等の空間で演奏される楽器、歌い手の声などにはかなりの指向性がある。上記従来の方法で模擬された音響特性は、その測定に無指向性音源を用いているので、楽器、歌い手の声等の指向性が全く考慮されていないことになる。
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、楽器等の発音体それぞれの指向性に則した空間の音響特性を模擬できる音場再生装置の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る音場再生装置は、入力された楽音信号に音場の音響特性に基づく演算処理を施して再生する音場再生装置であって、発音体及び/又は空間の音響特性を記憶している記憶手段と、上記記憶手段に記憶された音響特性を用いて上記入力された楽音信号を演算処理する演算手段とを有し、上記記憶手段が記憶している音響特性は、発音体の指向特性を考慮した特性であることによって上記課題を解決する。
【0006】
ここで、上記記憶手段が記憶している音響特性は、該発音体の指向特性を考慮した特性であり、該空間の指向性を有する発音体に対する応答特性を考慮した特性であることが好ましい。さらに、上記記憶手段は、上記発音体の指向特性を考慮した音響特性と上記空間の応答特性とを合成して得られる音場の音響特性を記憶してもよい。
【0007】
なお、上記空間の応答特性は、空間内で狭指向性音源を360°回転させ、所定の角度毎に発生される測定音を、所定の聴取位置に配設された例えばダミーヘッドの右耳及び左耳の位置に取り付けた集音装置によって集音して測定し求める。また、上記発音体の指向特性は、無響室内に置からた楽器を中心としてある基準方向から所定の角度おきに、360°まで複数の角度位置において、音響インシティ法等によって中心の楽器から放射される方向の音のレベルを測定し求める。
【0008】
また、上記記憶手段が記憶している音響特性は、複数の発音体の指向特性を考慮した複数の音響特性であり、複数の空間の応答特性を考慮した複数の音響特性であることが好ましい。そして、該複数の発音体の指向特性を考慮した音響特性と、該複数の空間の応答特性を考慮した音響特性は、切り換え手段によって切り換えられることが好ましい。
【0009】
さらに、上記記憶手段が記憶している音響特性は、複数の空間の応答特性を考慮した複数の音響特性と、複数の空間の応答特性を考慮した複数の音響特性とを合成して得られた複数の音場の音響特性であってもよい。そして、該複数の音場の音響特性は、切り換え手段によって切り換えれることが好ましい。
【0010】
【作用】
記憶手段は、発音体の指向特性を考慮した、発音体及び/又は空間の音響特性を記憶し、この音響特性を用いて、演算手段が入力された楽音信号を演算処理する。
【0011】
【実施例】
以下、本発明に係る音場再生装置の実施例を図面を参照しながら説明する。
本実施例は、図1に示すように発音体である例えばバイオリン、チェロ及びピアノの指向性に則した空間(例えば劇場、ホール等であり、以下ホールとして説明を進める。)の音響特性を記憶している記憶部13と、この記憶部13に記憶された音響特性を切り換える切り換え部14及び15と、この切り換え部14及び15によって切り換えられた音響特性を用いて入力された例えばバイオリン、チェロ又はピアノの楽音信号を演算処理する演算部16及び19と、入力端子11から供給された上記入力楽音信号をディジタル楽音信号に変換し、該ディジタル楽音信号を上記演算部16及び19に供給するアナログ/ディジタル(A/D)コンバータ12と、上記演算部16が上記切り換え部14によって切り換えられた音響特性を用いて演算処理したディジタル楽音信号をアナログ楽音信号に変換するディジタル/アナログ(D/A)コンバータ17と、上記演算部19が上記切り換え部15によって切り換えられた音響特性を用いて演算処理したディジタル楽音信号をアナログ楽音信号に変換するD/Aコンバータ20とを有して構成されている。そして、上記D/Aコンバータ17からのアナログ楽音信号は、出力端子18から導出され図示しない増幅器を介して図示しないヘッドフォン等に供給される。同様に、上記D/Aコンバータ20からのアナログ楽音信号は、出力端子21から導出され図示しない増幅器を介して図示しないヘッドフォン等に供給される。
【0012】
ここで、上記記憶部13に記憶される音響特性は、上述したように例えばバイオリン、チェロ及びピアノの指向性に則したホールにおける音響特性である。すなわち、本実施例では、ピアノがBホールで演奏された際の所定の聴取位置での音響特性、チェロがAホールで演奏された際の所定の聴取位置での音響特性、バイオリンがAホールで演奏された際の所定の聴取位置での音響特性を上記記憶部13が右耳、左耳での特性として別々に記憶している。
【0013】
上記記憶部13に記憶される音響特性、すなわち、楽器がホールで演奏された際の所定の聴取位置での音響特性は、楽器の指向性とホールの応答特性とを合成して得ている。音響特性としては、一般的に、周波数の変化に対する音のレベルの変化を示す周波数特性や、周波数に対する残響時間の変化を示す残響特性が上げられる。そして、該周波数特性及び該残響特性は、楽器の指向性や空間の応答特性に左右されるので、本実施例では、該音響特性を楽器の指向性とホールの応答特性とを合成することによって得ている。
【0014】
以下その具体的方法を図2乃至図5を参照しながら説明する。
なお、指向性は簡単のために2次元方向のみを考える。
【0015】
先ず、図2に示すように、測定すべき楽器(図2ではピアノ)31を無響室30に持込み、該ピアノ31を中心としてある基準の方向位置Pを角度0°として、そこから30°おきに330°まで12個の方向位置P、P・・・P11を設定し、該方向位置P、P・・・・・P11において、例えば音響インテシティ法等によってピアノ31からの音のレベルを測定する。すなわち、ピアノ31を中心として、放射状となる各方向位置での音のレベルを測定する。この測定を複数の音階で行うことにより、各方向位置P、P・・・・・P11毎の周波数特性が図3に示すように得られる。なお、この図3は、方向位置Pでの周波数特性を示している。
【0016】
次に、上記楽器毎の指向性の測定とは別に、図4に示すようにして、ホールでの応答特性を測定する。
先ず、ホール40内の楽器の演奏されるべき位置に例えば狭い指向性の音源41を置く。この狭指向性音源41からは、例えばTSP(Time Streched Pulse)信号等の測定用信号を出力させる。このとき、上記狭指向性音源41を例えば角度30°おきに回転させて、所定の聴取位置に配設されたダミーヘッド42の右耳及び左耳の位置に取り付けられたマイクロフォン等の集音装置によって、ホール40の応答特性を測定する。ここでは、角度30°おきに回転する狭指向性音源41からの測定用信号音をダミーヘッド42で集音して解析し、右耳、左耳の特性を抽出している。
【0017】
すなわち、一般的にホールの音響特性を測定する場合のように、所定の聴取位置での指向特性を測定するものではなく、音源の指向性に応じた応答特性によりホールの音響特性を求めている点に注目すべきである。
【0018】
そして、上記楽器の指向性測定によって得られた楽器の特性である指向特性と上記ホールの特性である応答特性とを図5に示すように合成する。
【0019】
図5に示すように、入力端子51、51、51・・・5111を介した上記図2で説明した方法で得られた角度0°、30°、60°・・・330°の楽器の指向特性のデータと、入力端子52、52、52・・・5211を介した上記図4で説明した方法で得られた角度0°、30°、60°・・・330°の右耳におけるホールの応答特性のデータとを、乗算器M、M、M・・・M11でそれぞれ乗算し、該乗算器M、M、M・・・M11からの乗算結果を加算器Aで加算合成し、楽器がホールで演奏された際の所定の聴取位置での右耳での音響特性を得ることができる。同様に楽器がホールで演奏された際の所定の聴取位置での左耳での音響特性も得ることができる。本実施例の上記記憶部13は、このようにして得られた音響特性を記憶している。
【0020】
図1に戻り、本実施例の動作を説明する。
なお、入力端子11からピアノの楽音信号が供給されるものとして説明をする。
図1において、入力端子11から供給された例えばピアノのアナログ楽音信号は、楽器装着型マイクロフォン等によって集音される。A/Dコンバータ12が出力したピアノのディジタル楽音信号は、2系統に分けられ、一方は記憶部13から読み出され、切り換え部14で切り換えられた、右耳でのピアノのBホールにおける音響特性と上記演算部16で所定の演算がなされ、D/Aコンバータ17でアナログ楽音信号に変換されて、出力端子18から出力される。上記A/Dコンバータ12が出力したディジタル楽音信号の他方の信号も同様に、記憶部13から読み出され、切り換え部15で切り換えられた左耳でのピアノのBホールにおける音響特性と上記演算部19で所定の演算がなされ、D/Aコンバータ20でアナログ楽音信号とされて、出力端子21から出力される。出力端子18、21から出力されたアナログ楽音信号は、図示しない増幅器を介してヘッドフォン等に供給され、聴取者の右耳、左耳に与えられる。
【0021】
上記記憶部13には、右耳、左耳の特性として、ピアノのBホールにおける音響特性、チェロのAホールにおける音響特性及びバイオリンのAホールにおける音響特性が記憶されているが、これらの各音響特性は、上述したように上記切り換え部14及び15によって切り換えられる。
【0022】
上記切り換え部14には被選択端子a、b及びcが設けられ、右耳でのピアノのBホールにおける音響特性、チェロのAホールにおける音響特性及びバイオリンのAホールにおける音響特性が供給される。上記切り換え部14の切り換えスイッチdが上記被選択端子aに切り換えられることにより、演算部16には、右耳でのピアノのBホールにおける音響特性が供給される。
【0023】
同様に、上記切り換え部15には被選択端子a、b及びcが設けられ、左耳でのピアノのBホールにおける音響特性、チェロのAホールにおける音響特性及びバイオリンのAホールにおける音響特性が供給される。上記切り換え部15の切り換えスイッチdが上記被選択端子aに切り換えられることにより、演算部19には、例えば左耳でのピアノのBホールにおける音響特性が供給される。
【0024】
上記切り換え部14及び15での切り換えスイッチdの切り換えは、この音場再生装置の入力端子11に入力される楽音信号を発生する楽器に合わせて、使用者により切り換える。
【0025】
そして、上記演算部16では、上記A/Dコンバータ12から供給されたピアノのディジタル楽音信号と、上記切り換え部14によって切り換えられた右耳でのピアノのBホールにおける音響特性とが演算処理される。
【0026】
同様に、上記演算部19では、上記A/Dコンバータ12から供給されたピアノのディジタル楽音信号と、上記切り換え部15によって切り換えられた左耳でのピアノのBホールにおける音響特性とが演算処理される。
【0027】
上記演算部16からの演算出力、すなわち入力端子11から入力されたピアノの楽音信号にホールBでの右耳に関する音響特性を演算した出力は、D/Aコンバータ17でアナログ楽音信号に変換されて、出力端子18から図示しない増幅器等を介してヘッドフォンに供給され、聴取者の右耳に達する。また、上記演算部19からの演算出力、すなわち入力端子11から入力されたピアノの楽音信号にホールBでの左耳に関する音響特性を演算した出力は、D/Aコンバータ20でアナログ楽音信号に変換されて、出力端子21から図示しない増幅器等を介してヘッドフォンに供給され、聴取者の左耳に達する。
【0028】
以上より、本実施例は、楽器それぞれの指向性に則したホールの音響特性を模擬できる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施例にのみ限定されるものではなく、例えば、入力信号に関しては、A/D、D/Aコンバータを持たず、ディジタル信号入出力であっても良いし、アナログ入出力で、演算部分がアナログのディレイ、フィルタ等の組み合わせであっても良い。また、模擬する特性も、ダミーヘッドで行うのではなく、指向性集音器で複数方向の特性を測定しておき、マルチスピーカによるホールの模擬を行うことも可能である。
【0030】
また上記記憶手段に記憶させる音響特性は、例えば、ピアノ、チェロ、バイオリンにのみ応じるものではなく、ギター、ドラム等多種に応じる。
【0031】
また、上記記憶手段には、人間の話声に関する音響特性を記憶しておいてもよく、この音場再生装置に入力した肉声に所望の空間での音響特性を演算するようにしてもよい。
【0032】
さらに、楽器の指向特性の測定及びホールにおける応答特性の測定は、より細かな角度で行う方が望ましく、また、水平方向など2次元方向ばかでなく、3次元方向で測定し、特性を合成した方がより現実に即した音響特性に近づく。
【0033】
本発明に係る音場再生装置は、記憶手段が発音体の指向特性を考慮した、発音体及び/又は空間の音響特性を記憶し、この音響特性を用いて、演算手段が入力された楽音信号を演算処理するので、発音体それぞれの指向性に則した空間の音響特性を模擬できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の概略構成を示すブロック図である。
【図2】楽器の指向性を測定する方法を説明するための図である。
【図3】楽器の指向性を測定する方法によって得られた周波数特性を示す図である。
【図4】ホールの応答特性を測定する方法を説明するための図である。
【図5】記憶手段に記憶する楽器の所望の空間における模擬すべき特性の合成方法を説明するための図である。
【符号の説明】
12・・・・・アナログ/ディジタル(A/D)コンバータ
13・・・・・記憶部
14、15・・切り換え部
16、19・・演算部
17、20・・ディジタル/アナログ(D/A)コンバータ

Claims (4)

  1. 入力された楽音信号に音場の音響特性に基づく演算処理を施して再生する音場再生装置であって、
    発音体及び/又は空間の音響特性を記憶している記憶手段と、
    上記記憶手段に記憶された音響特性を用いて上記入力された楽音信号を演算処理する演算手段とを有し、
    上記記憶手段が記憶している音響特性は、発音体の指向特性を考慮した特性であることを特徴とする音場再生装置。
  2. 上記記憶手段が記憶している音響特性は、空間の指向性を有する発音体に対する応答特性を考慮した特性であることを特徴とする請求項1記載の音場再生装置。
  3. 上記記憶手段には複数の発音体の音響特性が記憶され、該複数の発音体の音響特性の切り換えは切り換え手段によって行われることを特徴とする請求項1又は2記載の音場再生装置。
  4. 上記記憶手段には複数の空間の音響特性が記憶され、該複数の空間の音響特性の切り換えは切り換え手段によって行われることを特徴とする請求項1、2又は3記載の音場再生装置。
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