JP2521815Y2 - 鉄筋コンクリート覆工体の連結装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、プレキヤスト部材の連結装置に関するもの
であり、特に、坑道覆工体の連結装置に於て、ボルト結
合とピン結合の利点を融合させて構成した坑道覆工体の
連結装置に関するものである。

［従来の技術］ 従来の此種覆工体の連結装置であつて、ボルト結合方
式を別紙添付図面の第５図乃至第７図に従って説明す
る。第５図は従来の鉄筋コンクリート覆工体に多く用い
られている継手金具部位を示す解説縦断側面であつて、
第６図は第５図の継手金具を用いた鉄筋コンクリート覆
工体の斜視図、第７図は継手金具をボルトにて締結した
状態を示す一部切欠縦断側面図である。

（１）は鉄筋コンクリート覆工体であつて円周方向を
弧状に形成され、該鉄筋コンクリート覆工体（１）には
坑道の軸心方向の両側端面に継手金具の平鋼板（２）
（２）…が取付けられている。そして、この平鋼板
（２）両側内面にリブ（３）（３）が内側に向って突設
せられ、更に、該リブ（３）（３）の上下に夫々アンカ
ー材（４）（４）が突設せられている。そして、対峙す
るリブ（３）（３）間に空間部（Ｐ）（Ｐ）…を形成し
てボルト締付操作を可能ならしめる如く、前記アンカー
材（４）（４）…を鉄筋コンクリート覆工体（１）内に
埋設して固定してある。更に、前記平鋼板（２）には隣
接して対峙する平鋼板（２）間をボルト（５）が挿通で
きるボルト孔（６）が開穿されている。そこで、隣接せ
る鉄筋コンクリート覆工体（１）（１）の前記ボルト孔
（６）（６）にボルト（５）が挿通され、ナツト（７）
を螺着して締結し坑道軸心方向の隣接せる鉄筋コンクリ
ート覆工体（１）（１）相互を結合せしめるのである。
更に、隣接せる該鉄筋コンクリート覆工体（１）（１）
の円周方向の両端面も同様手段にて結合していた。

次に、従来の覆工体の連結装置としてピン結合方式が
知られている。之は、例えば特公昭51-40735号公報に記
載されている如く、覆工体の一方の覆工体の側端部に先
端部が細くなるように斜欠した接合ピンを固定し、他方
の覆工体の側端部にソケツトを設け、該ソケツト内に前
記接合ピンの嵌合孔を有するばね鋼板を円周方向に摺動
自在に緩挿すると共に、前記嵌合孔周辺部に多数の切目
を設けたものである。そこで、片側の前記接合ピンを有
する覆工体と前記ソケットを設けた覆工体とを結合する
ときは、前記接合ピンを対峙する嵌合孔に挿入して両者
を結合するのである。斯くして、双方の覆工体は容易に
結合せしめることができる。

［考案が解決しようとする課題］ 前記従来型のうち、ボルト方式は結合が強固であるが
次の欠陥を有する。即ち、隣接する鉄筋コンクリート覆
工体（１）（１）の継手金具である平鋼板（２）（２）
をボルト（５）にて結合するときには、坑道軸心方向又
は円周方向の鉄筋コンクリート覆工体（１）の各ボルト
孔（６）（６）を夫々合せて組立てられる。依って、該
ボルト（５）は挿入できれば、該ボルト孔（６）（６）
の孔芯の合致如何を問わずナツト（７）にて螺着され双
方の平鋼板（２）（２）…が結合されるのである。

そこで、例えば第７図に示す如く、双方のボルト孔
（６）（６）の孔芯が不一致であるとき、ボルト（５）
を該ボルト孔（６）（６）に挿入して双方の平鋼板
（２）（２）を結合するときは、該ボルト（５）に過大
な曲げ応力が発生し引張抗力の低下となり、又、各鉄筋
コンクリート覆工体（１）（１）間にズレが生じて矯正
できず、更に、該ズレを矯正する時に生じる剪断力に抵
抗する強度も低下する。その為、鉄筋コンクリート覆工
体の前記継手部位が本来有すべき締結力が弱くなり、継
手部位剛性に低下を来して止水効率が悪化するばかりで
なく、鉄筋コンクリート覆工体としての変形が大きくな
つて地盤沈下の原因となり、更に、後続の鉄筋コンクリ
ート覆工体の組立施工性をも阻害する恐れがあり、組立
完成後に於て継手部位付近の二次覆工コンクリートに亀
裂が生じ易いのである。

又、前記ピン結合方式に於ては、前記ボルト挿通孔の
孔芯は自己調芯作用が働いて前記孔芯不一致に基く欠陥
は解消できるが、一旦、双方の覆工体を結合したときに
は、ばね鋼板のピン挿通孔の周辺部に多数設けた切目が
ピンに喰込み、之を解除しようとしても破壊しない限り
該ピンは離脱できない。一方、該ピン結合は芯合せ並び
に結合操作は容易であるが、初期締結力が無く、又、結
合力はボルト方式に比して弱い。そこで、ボルト方式並
びにピン方式の有する夫々の欠陥を除去し、双方の有す
る夫々の利点を融合して覆工体を結合せしめて継手部位
の剛性を高めると共に、鉄筋コンクリート覆工体の連結
作業性を向上せしめる。ために解決せられるべき技術的
課題が生じてくるのであり、この考案は該課題を解決す
ることを目的とする。

［課題を解決するための手段］ この考案は上記目的を達成せんとして提案せられたも
のであり、鉄筋コンクリート覆工体であって、坑道円周
方向及び坑道軸心方向の対峙する各一側に、袋ネジを有
するピン部材を設け、該ピン部材の一端部を隣接せる他
方の鉄筋コンクリート覆工体の夫々の一側面に設けたピ
ン部材挿入孔に挿入して、該ピン部材挿入孔の背面に形
成してあるボルト操作用空間部に臨ませ、該ボルト操作
用空間部より前記ピン部材の袋ネジにボルトを螺着して
双方の鉄筋コンクリート覆工体を緊締するように構成さ
れた鉄筋コンクリート覆工体の連結装置に於て、前記ピ
ン部材は長尺物が用いられ、且つ、アンカー材を用いて
該鉄筋コンクリート内部に深く埋設されると共に、その
先端部表面を先細りのテーパー部に形成し、該先端部に
前記袋ネジが形成され、該先端部を該鉄筋コンクリート
覆工体の一側面より突設し、更に、坑道円周方向に設け
られる前記ピン部材挿入孔は、該ピン部材の先端部が挿
入されるだけの直径を有して坑道の軸心方向に長孔状に
形成されており、該ピン部材を該ピン部材挿入孔に押し
込むとき、該ピン部材は前記テーパー部により自動的に
調芯されるように形成されたことを特徴とする鉄筋コン
クリート覆工体の連結装置。を提供せんとするものであ
る。

［作用］ 本考案の覆工体の組立施工の際、隣接して結合せらる
べき双方の覆工体のうち、片方の覆工体に突設されてい
るピン部材は、その先端部を先細りのテーパ部に形成さ
れており、且つ、この覆工体と隣接せる他方の覆工体の
一側面には前記ピン部材挿入孔を設け、そして、該ピン
部材挿入孔の背面にボルト操作用空間部が設けられてい
るので、之等相互に隣接して結合せられる覆工体の前記
片方のピン部材を、その先端部より前記他方の覆工体の
ピン部材挿入孔に挿入してその背面のボルト操作用空間
部へ、該ピン部材の前面を臨ませるのである。このと
き、ピン部材は先細りのテーパ部に形成されているので
該ピン部材をピン部材挿入孔に押込めば、該テーパ部に
より容易に調芯できる。依って、ボルト方式のように孔
芯合せ操作が不用となり施工性が向上する。

而して、該ピン部材はその先端部が袋ネジに形成され
ているため、前述せる如く該ピン部材をピン部材挿入孔
に挿入し、その前面をボルト操作用空間部に臨ませれ
ば、該ボルト操作用空間部より前記袋ネジ部に螺合せら
れるボルトをワツシヤを介して挿入し乍ら該袋ネジ部に
螺着して該ボルトを緊締し、そして、双方の覆工体を結
合する。斯くすることにより、従来のボルト方式と同様
に強固な連結が可能となり増締め作業も容易に行うこと
ができることは当然である。又、ピン部材は長尺物が用
いられ、且つ、アンカー材を用いて鉄筋コンクリート内
部に深く埋設されているので、該ピン材は該ピン部材に
作用する引張力をコンクリート内部に伝達するのに必要
な長さを有することになり、依って、該ピン部材を設け
た側の鉄筋コンクリート覆工体の側面には該ピン部材の
外に、例えば平鋼板等から成る継手部材も不要となる。
更に、この引張力に対しては該ピン部材は殆ど伸び変形
を生じないから、継手部位の剛性が高まる。更に又、ピ
ン部材に伝達されたボルトの剪断力にも、該ピン部材が
抵抗し、アンカー材の引張抵抗力と相俟って強力な剪断
抵抗力を発揮する。

又、該覆工体の組立てに際しては、円周方向の前記ピ
ン部材挿入孔が坑道軸心方向に長孔状に形成されている
ため、先ず、連結しようとする覆工体は坑道軸心方向に
於てはピン部材の突出量だけの間隔を保有して円周方向
のピン部材を之に対峙するピン部材挿入孔に挿入し、そ
の後、坑道軸心方向へ移動して軸心方向のピン部材を之
に対峙するピン部材挿入孔に挿入し、前記円周方向並び
に軸心方向の双方を夫々結合して組立てるのである。

［実施例］ 以下、本考案の一実施例を第１図乃至第４図に従って
詳述する。尚、説明の都合上、従来公知に属する構成及
び作用も同時に説明する。

第１図は本考案に用いる継手装置を備えた鉄筋コンク
リート覆工体（10）の斜視図である。同図に於て、該鉄
筋コンクリート覆工体（10）は円周方向が弧状に形成さ
れ、該円周方向の一側端面には平鋼板にて形成された継
手（11）（11）…が設けられている。該継手（11）（1
1）…はその内側部にボルト操作用空間部（11a）（11
a）…が設けられると共に、該継手（11）（11）…には
後述のピン部材挿入孔（11b）（11b）…が夫々開穿され
ている。該ピン部材挿入孔（11b）（11b）…はピン部材
（11c）（11c）の先端部が挿入されるだけの直径を有し
て坑道軸心方向に長孔状に形成されている。又、該鉄筋
コンクリート覆工体（10）の円周方向の側面であつて、
前記継手（11）（11）…を備えていない側面には前記継
手（11）（11）…と結合できる位置に後述のピン部材
（11c）（11c）が突設されている。斯くして、該ピン部
材（11c）（11c）…は、組立てられる他方の鉄筋コンク
リート覆工体（10）の前記継手（11）（11）…に設けた
ピン部材挿入孔（11b）（11b）…に夫々挿入されて結合
される。その詳細は後述する。

次に、坑道の軸心方向の継手装置について説明する。
前記鉄筋コンクリート覆工体（10）の坑道軸心方向一側
には前記継手（11）と同様に継手部材（12）（12）…が
固設されると共に、後述のピン部材挿入孔（12a）（12
a）…が夫々開穿されると共に該継手部材（12）（12）
…の内側面にはボルト操作用空間部（12b）（12b）…が
夫々設けられている。又、該鉄筋コンクリート覆工体
（10）の軸方向他側面には継手部材（13）の一部を構成
するピン部材（13a）（13a）…が前記他方の継手部材
（12）（12）に夫々対応する位置に固設されている。

而して、前記ピン部材（13a）の固設手段としての一
例を第２図に従って説明する。該図は坑道軸心方向の前
記ピン部材（13a）の固設手段を説明しているが、之は
円周方向の前記ピン部材（11c）の固設手段も同じであ
る。而して、第２図（ａ）は鉄筋コンクリート覆工体
（10）の一側に固設され、ピン部材挿入孔（12a）を有
する継手部材（12）の縦断面図であり、同図（ｂ）は該
ピン部材挿入孔（12a）に嵌挿されるピン部材（13a）を
突設した継手部材（13）を示す縦断面図である。而し
て、同図（ｂ）に於て前記鉄筋コンクリート覆工体（1
0）の一側に、ピン部材（13a）をアンカー材（13d）を
用いて埋設し、その先端部を先細りのテーパ部（13b）
に形成すると共に袋ネジ（13c）に形成し、そして、該
先端部を該鉄筋コンクリート覆工体（10）の一側面より
突設してある。

尚、図中符号（10a）は裏込注入孔を示す。

この考案の一実施例は叙述せる如き構成を有するの
で、鉄筋コンクリート覆工体（10）（10）…を坑道の円
周方向並びに軸心方向に夫々連結してトンネルの一次覆
工を為すとき、第４図に示すように、例えば、既に組立
てられている鉄筋コンクリート覆工体（10）（10）…に
対して他の鉄筋コンクリート覆工体（10）であるＸを組
立てようとするときに於ては、先ず、前記円周方向にて
隣接する鉄筋コンクリート覆工体（10）であるＹのピン
部材挿入孔（11b）（11b）に前記Ｘのピン部材（11c）
（11c）を夫々挿入する。このとき、該ピン部材挿入孔
（11b）（11b）は坑道軸心方向に長孔状に形成されてい
るため、坑道軸心方向に隣接する鉄筋コンクリート覆工
体（10）（10）…であるZ,Zに対して、前記Ｘの側面に
突設しているピン部材（13a）（13a）（13a）の突出量
より僅かに大きい距離Ｌを保持せしめて前記Ｘのピン部
材（11c）（11c）をＹのピン部材挿入孔（11b）（11b）
に挿入することができる。斯くして、Ｘの該ピン部材
（11c）（11c）をＹの該ピン部材挿入孔（11b）（11b）
に挿入すれば、該Ｘの軸心方向のピン部材（13a）（13
a）（13a）は之に隣接する軸心方向の前記Z,Zのピン部
材挿入孔（12a）（12a）（12a）と一致することになる
ので、ＸをＺ方向に押し込めば前記の距離Ｌはなくな
り、該Ｘのピン部材（13a）（13a）（13a）がZ,Zのピン
部材挿入孔（12a）（12a）（12a）に夫々挿入できるこ
とになる。このとき、前記ピン部材（11c）及び（13a）
は前記テーパー部により、各ピン部材挿入孔（11b）並
びに（12a）に夫々円滑に容易に挿入され、特別な芯合
せ操作が不要となる。

斯くして、該ピン部材（11c）（11c）…及び（13a）
（13a）…の夫々の前面をピン部材挿入孔（11b）（11
b）…及び（12a）（12a）…の背面に形成されているボ
ルト操作用空間部（11a）（11a）…及び（12b）（12b）
…より各ピン部材（11c）（11c）…及び（13a）（13a）
…に設けた袋ネジ（13c）（13c）…にボルト（14）（1
4）…をワツシヤ（15）（15）…を介して螺合して緊締
する。然るときは、隣接せる双方の鉄筋コンクリート覆
工体（10）（10）は極めて強固に結合され、作業性も向
上する。

尚、この考案は、この考案の精神を逸脱しない限り種
々の改変を為す事ができ、そして、この考案が該改変せ
られたものに及ぶことは当然である。

［考案の効果］ 本考案は叙述せる一実施例に於て詳述せる如く、従来
の覆工体の連結方式であるボルト方式とピン方式とが夫
々有している欠陥を解消でき、そして、双方の有してい
る利点を合理的に融合した為、覆工体の連結作業を極め
て容易迅速に行うことができると共に、ロボツトによる
自己組立も実施可能となり、施工時間の短縮化と相俟つ
てコストダウンにも寄与できる等、正に著大なる効果を
奏する考案である。

【図面の簡単な説明】

第１図乃至第４図は本考案の実施例を示し、第１図は本
考案の継手部材を用いた鉄筋コンクリート覆工体の斜視
図、第２図（ａ）（ｂ）は鉄筋コンクリート覆工体の連
結前の解説縦断面図、第３図は第２図の覆工体の連結状
態を示す解説縦断側面図、第４図は鉄筋コンクリート覆
工体の組立状態を示す斜面図である。第５図乃至第７図
は従来のボルト方式を示し、第５図は継手金具部位の解
説縦断側面図、第６図は第５図の継手金具を用いた鉄筋
コンクリート覆工体の斜視図、第７図は継手金具をボル
トにて締結した状態を示す一部切欠縦断側面図である。 （10）……鉄筋コンクリート覆工体 （11）……継手、（12）（13）……継手部材 （11a）（12b）……ボルト操作用空間部 （11b）（12a）……ピン部材挿入孔 （11c）（13a）……ピン部材 （13b）……テーパ部、（13c）……袋ネジ （14）……ボルト

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】鉄筋コンクリート覆工体であって、坑道円
   周方向及び坑道軸心方向の対峙する各一側に、袋ネジを
   有するピン部材を設け、該ピン部材の一端部を隣接せる
   他方の鉄筋コンクリート覆工体の夫々の一側面に設けた
   ピン部材挿入孔に挿入して、該ピン部材挿入孔の背面に
   形成してあるボルト操作用空間部に臨ませ、該ボルト操
   作用空間部より前記ピン部材の袋ネジにボルトを螺着し
   て双方の鉄筋コンクリート覆工体を緊締するように構成
   された鉄筋コンクリート覆工体の連結装置に於て、前記
   ピン部材は長尺物が用いられ、且つ、アンカー材を用い
   て該鉄筋コンクリート内部に深く埋設されると共に、そ
   の先端部表面を先細りのテーパー部に形成し、該先端部
   に前記袋ネジが形成され、該先端部を該鉄筋コンクリー
   ト覆工体の一側面より突設し、更に、坑道円周方向に設
   けられる前記ピン部材挿入孔は、該ピン部材の先端部が
   挿入されるだけの直径を有して坑道の軸心方向に長孔状
   に形成されており、該ピン部材を該ピン部材挿入孔に押
   し込むとき、該ピン部材は前記テーパー部により自動的
   に調芯されるように形成されたことを特徴とする鉄筋コ
   ンクリート覆工体の連結装置。