JP2518645Y2 - 自動車のデフロスタ装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、自動車のデフロスタ装置に係り、特に、フ
ロントガラスなどに発生する結露を検知して、自動的に
デフロスト運転状態を設定するものに関する。

（従来の技術） 一般に、自動車において、冬期などのように、車室内
温度が外気温度に比べて高い場合、フロントガラスやド
アガラスが外気によって冷却され、これに伴って車室内
空気中の水蒸気が結露となってガラス内側面に付着し、
乗員の視界を悪化させることがある。そこで、従来よ
り、この結露を自動的に解消するようにしたものとし
て、例えば、特開昭62-198551号公報に示されるような
デフロスタ装置がある。この公報に示されているもの
は、フロントガラスの車室内側面に２つの結露センサを
配設して結露の生成領域を検出し、この領域の大小に応
じてデフロスト運転状態を変更するようにしている。

（考案が解決しようとする課題） このように、これまでの結露の解消に関しては、フロ
ントガラス等に配設された結露センサが結露を検知する
と、結露の生成領域の大きさに応じて空調風の強さを大
小に制御するようになっていた。しかしながら、現実に
は、結露は、車室内の温度や湿度の各分布状態などによ
って発生のし易さが異なっている。このため、単に結露
の生成領域の大きさを検知してデフロスト能力を設定す
るものでは、車室内の環境状態に対応したデフロスト運
転を行うことができない。つまり、結露の発生のし易さ
に応じた空調風が送られず、結露発生領域の拡大を阻止
できる程度のデフロスト能力が得られなくなって円滑な
結露解消動作が行えなかったり、必要以上にデフロスト
運転が行われて車室内の空調状態が良好に得られなくな
ってしまうといった不具合がある。

本考案は、この点に鑑みてなされたものであって、車
室内の環境状態を認識し、それに応じたデフロスト運転
を得ることを目的とする。

（課題を解決するための手段） 上記の目的を達成するために、本考案では、結露の発
生領域の拡大速度を検知する手段を設け、この速度によ
って車室内の環境を推測し、これに応じてデフロスト用
の空調風を送るようにしたものである。そして、その具
体的な解決手段は、第１図に示すように、自動車用空調
機Ａをデフロスト運転させるデフロスタ装置として、車
室内に臨む車体部材表面の複数箇所に配設され、車体部
材表面での結露の生成を検知したときに検知信号を出力
する結露検知手段26〜28と、該各結露検知手段26〜28の
出力を受け、各検知信号が出力する各検知信号に基づい
て車体部材表面における結露発生領域の拡大速度を判定
する判定手段36と、該判定手段36の出力信号を受け、結
露発生領域の拡大速度に応じて空調機Ａのデフロスト運
転状態を設定する運転変更手段37と、該運転変更手段37
の出力信号により空調機Ａのデフロスト運転状態を制御
する運転制御手段38とを備えるような構成とした。

（作用） 上記の構成により、本考案では、複数の結露検知手段
26〜28が結露を検知すると、その出力を判定手段36に送
る。そして、判定手段36は、結露検知手段26〜28からの
各検知信号の例えば受信時期の差等に基づいて結露発生
領域の拡大速度を判定し、その出力を運転変更手段37に
送る。そして、運転変更手段37は、結露発生領域の拡大
速度が速いほど結露解消能力が増大するなどといったよ
うに空調機Ａのデフロスト運転状態を設定した出力を運
転制御手段38に送り、該運転制御手段38はこの出力に応
じて空調機Ａのデフロスト運転状態を制御する。これに
より、車室内の環境状態（結露の発生のし易さ）に適し
たデフロスト運転を行うことができ、確実且つ効率良く
結露の解消が行える。

（実施例） 次に、本考案の一実施例を図面に沿って説明する。

第２図に示すように、本例におけるデフロスタ装置１
は、既存の自動車用空調機Ａ内に一体的に組込まれてい
る。

空調機Ａの空気通路２には、上流側から内気導入口３
と外気導入口４との切替えを行う切替ドア５、ブロア
６、エバポレータ７、エアミックスドア８、ヒータコア
９及び補助ドア10が順に配設され、ベント吹出口11、デ
フロスト吹出口12及びヒータ吹出口13より夫々空調風を
吹出すようになっている。各吹出口11,12,13には、風量
を制御するドア14,15,16が配設されている。前記切替ド
ア５はアクチュエータ17によって切替えが行われ、エア
ミックスドア８及び補助ドア10はアクチュエータ18によ
って開閉され、また、前記ドア14,15,16は、アクチュエ
ータ19によってそのドア開度が制御されるようになって
いる。また、各吹出口11,12,13には、吹出される空調風
の吹出方向を調整するためのルーバ11a,12a,13aが配設
されている。そして、この各ルーバ11a,12a,13aは夫々
アクチュエータ20,21,22によってその回動位置（吹出方
向）が制御されるようになっている。

デフロスタ装置１は、フロントガラス25内側面の複数
箇所に配設された結露検知手段としての複数（本例のも
のは５つ）の結露センサ26〜30と、該結露センサ26〜30
に接続されたコントローラ31とを備えている。

各結露センサ26〜30は、第３図に示すように、基板32
上に一組の櫛歯状電極33,34が対称的に配置され、基板3
2の中央部で両電極33,34が所定寸法の電極間隔ｄを有し
て交互に配設されて構成されている。また、各電極33,3
4の一端部間には直流電源35が印加されている。これに
より、各結露センサ26〜30は、その表面に結露が発生し
て電極間隔ｄに結露が付着すると、電極間が電気的に導
通状態となることで結露の生成を検知し、センサ信号を
コントローラ31に出力する。そして、この結露センサと
しては、第１〜第５結露センサ26〜30を有している。第
１〜第５結露センサ26〜30の夫々について説明すると、
第２図において、第１結露センサ26はフロントガラス25
の左右方向中央部の上端近傍に配設されている。第２結
露センサ27はフロントガラス25の左端部で上下方向の中
央部に配設されている。第３結露センサ28は前記第２結
露センサ27とはフロントガラス25の中心線ｌに対して対
称な位置に配設されている。第４結露センサ29はフロン
トガラス25の下端部で左右方向の中央よりも所定寸法だ
け左側に位置している。第５結露センサ30は前記第４結
露センサ29とはフロントガラス25の中心線ｌに対して対
称な位置に配設されている。

コントローラ31は、判定手段36、運転変更手段37及び
運転制御手段38を備えている。

判定手段36は、検知手段36a、時間計測手段36b、結露
生成方向算出手段36cを備えている。検知手段36aは、前
記第１〜第５各結露センサ26〜30に接続され、結露を検
知した結露センサ26〜30が出力するセンサ信号を受ける
と、そのセンサ信号に応じた検知信号を時間計測手段36
b及び結露生成方向算出手段36cに出力するようになって
いる。時間計測手段36bは、タイマを備え、検知手段36a
が出力する検知信号を複数受けると各検知信号の出力時
の時間差、つまり、各結露センサ26〜30の結露検知時の
時間間隔を計測し、計測信号を結露生成方向算出手段36
cに出力するようになっている。結露生成方向算出手段3
6cは、前記検知手段36a及び時間計測手段36bの各出力信
号を受けると、結露の生成方向及び生成速度（結露発生
領域の拡大速度）を算出、判定し、その判定信号を運転
変更手段37に出力するようになっている。また、運転変
更手段37は、結露生成方向算出手段36cが出力する判定
信号を受けると、該判定信号に基づいて運転変更信号を
運転制御手段38に出力するようになっている。運転制御
手段38は、空調機Ａの運転モード、運転能力及び空調風
の吹出方向を調整するものであって、運転変更手段37が
出力する運転変更信号を受けると該運転変更信号に応じ
たデフロスト運転信号を空調機Ａに送り、結露生成進行
方向及び結露生成速度に応じたデフロスト運転を行わせ
るようになっている。つまり、この運転制御手段38から
の運転信号によって、前記ブロア６の回転数、エバポレ
ータ７への冷媒流通量、各ドア5,8,10,14,15,16の開度
を調整するアクチュエータ17,18,19、及びルーバ11a,12
a,13aの回動位置を調整するアクチュエータ20,21,22を
制御するようになっている。

次に、上記の如く構成されたデフロスタ装置１におけ
る結露解消動作の一例について説明する。

冬期などのように車室内温度が外気温度よりも高く、
車室内空気中の水蒸気がフロントガラス25の内側面に付
着して結露の生成が開始し、例えば第１結露センサ26の
周辺に結露が発生してこの第１結露センサ26の電極33,3
4間が結露によって電気的に導通することによって、該
第１結露センサ26が結露の生成を検知する。この時、こ
の第１結露センサ26は第１センサ信号を検知手段36aに
送る。ここで第１センサ信号を受けた検知手段36aは、
第１検知信号を時間計測手段36b及び結露生成方向算出
手段36cに出力する。時間計測手段36bは、この第１検知
信号を受けた時点からタイマを作動させ、他の結露セン
サ27〜30が結露を検知するまでの時間を計測する。一
方、結露生成方向算出手段36cは第１検知信号を記憶す
る。この状態から結露の生成が進み、例えば、前記第１
結露センサ26周辺から第２結露センサ27周辺に向って結
露の生成が広がっていくと、第２結露センサ27が結露の
生成を検知する。そして、この第２結露センサ27は第２
センサ信号を検知手段36aに出力する。この第２センサ
信号を受けた検知手段36aは、時間計測手段36b及び結露
生成方向算出手段36cに第２検知信号を出力する。この
第２検知信号を受けた時間計測手段36bは、タイマを停
止して、第１検知信号を受けた時点からの時間差を計測
した後、リセットして再びタイマの作動を開始し、更
に、他の結露センサ28〜30が結露を検知するまでの時間
差を計測する。一方、第２検知信号を受けた結露生成方
向算出手段36cは、ここで第１結露センサ26周辺から第
２結露センサ27周辺、つまりフロントガラス25の上端部
から左端部へ向って結露が生成されていることを判定す
ると共に、前記時間計測手段36bで計測された第１検知
信号と第２検知信号との出力時間差及び第１結露センサ
26と第２結露センサ27との配設位置の距離によって結露
の生成速度を演算、算出することで、結露の生成方向及
び生成速度を判定し、その判定信号を運転変更手段37に
出力する。この判定信号を受けた運転変更手段37は判定
信号に基づいて結露の生成進行方向に向って所定の風量
をもってデフロスト運転をさせるように指示する運転変
更信号を運転制御手段38に出力する。この運転変更信号
を受けた運転制御手段38は、この運転変更信号に基づい
て空調機Ａのデフロスト運転状態を変更する。つまり、
運転制御手段38は、前記運転変更信号に基づいて、結露
の生成速度に応じた結露解消能力となるように、つま
り、結露の生成速度が速いほど結露解消能力が大きくな
るようにブロア６の回転数の調整、エバポレータ７への
冷媒流通量の調整、アクチュエータ17,18,19の制御によ
る各ドア5,8,10,14,15,16の開度調整を行うと共に、結
露生成方向に向って空調風を送るように、アクチュエー
タ20,21,22の制御によるルーバ11a,12a,13aの回動位置
を調整する。

このように、本例によれば、結露生成方向及び生成速
度に応じてデフロスト運転状態を変更することができ、
確実且つ効率良く結露の解消動作が得られる。

一方、結露の解消時の動作について説明すると、例え
ば、前述の如く第１、第２、第４結露センサ26,27,29が
共に結露を検知している状態において、デフロスト運転
によって結露が次第に解消されていく時、例えば、結露
の縮小に伴って第４結露センサ29が非検知状態となる。
これにより、検知手段36aへの第４センサ信号の出力停
止に伴い、検知手段36aから時間計測手段36bへの第４検
知信号の出力が停止され、これと同時に時間計測手段36
bはタイマを作動させる。その後、結露の解消が進んで
第２結露センサ27が非検知状態になると、結露検知手段
36aから時間計測手段36bへの第２検知信号の出力が停止
されて、時間計測手段36bはタイマを停止してその時間
を計測する。そして、この計測した時間に基づいて、結
露生成方向算出手段36cが結露解消速度を演算、算出
し、その算出信号を運転変更手段37に送る。そして、運
転変更手段37は運転変更信号を運転制御手段38に出力し
て、この運転変更信号に応じて、運転制御手段38は空調
機Ａをデフロスト運転させる。つまり、結露生成方向演
算手段36cが出力する算出信号において結露解消速度が
比較的高い場合には、デフロスト運転能力を変えること
なく現運転状態を維持するように指示する信号を運転制
御手段38に出力し、運転制御手段38は空調機Ａの運転状
態を維持する。一方、算出信号において結露解消速度が
比較的低い場合や、予め設定していた時間を経過しても
第２結露センサ27からのセンサ信号の出力が停止されな
い場合には、ブロア６の回転数を高くしたり、エバポレ
ータ７への冷媒流通量を多くして、高い結露解消能力の
デフロスト運転によって結露解消能力を高めるように指
示する運転変更信号を運転制御手段38に出力し、運転制
御手段38は空調機Ａをデフロスト運転能力が高くなるよ
うに制御する。

そして、全てのセンサが非検知状態となると、結露が
全て解消されたと判断して、デフロスト運転を停止し
て、空調機Ａの通常のマニュアル操作を可能とする。

このように、本例では、結露の解消動作においても、
その解消速度に応じた運転状態で効率の良いデフロスト
運転を行わせることができる。

尚、本例では、フロントガラスに５つの結露センサを
配設するようにしたが、本考案はこれに限らず、より多
数の結露センサを配設することにより、より正確に結露
の生成進行方向を検出することができる。

（考案の効果） 上述したように、本考案によれば、結露発生領域の拡
大速度に基づいて車室内の環境状態を認識し、これによ
って空調機のデフロスト運転状態を設定するようにした
ために、車室内の結露の発生のし易さに応じたデフロス
ト運転状態を得ることができ、結露の解消を確実に行う
ことができる。また、拡大速度が遅い場合に、結露を除
去するための送風を必要以上に供給しないようにすれば
省電力化が図れ、効率の良い結露の解消動作と車室内の
良好な空調状態の維持とを得ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の構成を示すブロック図、第２図及び第
３図は本考案の一実施例を示し、第２図は空調機の全体
構成図、第３図は結露センサの平面図である。 Ａ……自動車用空調機 １……デフロスタ装置 25……フロントガラス（車体部材） 26〜30……結露センサ（結露検知手段） 36……判定手段 37……運転変更手段 38……運転制御手段

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】自動車用空調機をデフロスト運転させるデ
   フロスタ装置であって、 車室内に臨む車体部材表面の複数箇所に配設され、車体
   部材表面での結露の生成を検知したときに検知信号を出
   力する結露検知手段と、 該各結露検知手段の出力を受け、各検知信号が出力する
   各検知信号に基づいて車体部材表面における結露発生領
   域の拡大速度を判定する判定手段と、 該判定手段の出力信号を受け、結露発生領域の拡大速度
   に応じて空調機のデフロスト運転状態を設定する運転変
   更手段と、 該運転変更手段の出力信号により空調機のデフロスト運
   転状態を制御する運転制御手段とを備えていることを特
   徴とする自動車のデフロスタ装置。