JP2513224Y2 - 農作業車の伝動構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、エンジンの動力をベルトテンションクラッ
チを介してギア式変速機構の入力軸に伝え、変速後の出
力を走行装置に供給するよう構成してある農作業車の伝
動構造に関する。

〔従来の技術〕

従来の上記伝動構造において、従来では、例えば実開
昭57-194130号公報に示されているように、ブレーキペ
ダルの踏込み操作に連動して、ベルトテンションクラッ
チを切操作するとともに、ギア式変速機構の伝動下手側
において制動機構により制動力を付与するように構成し
てあった。

〔考案が解決しようとする課題〕 上記従来構造は、クラッチ切り作動とブレーキ作動と
を１回の操作で行えるようにしたものであるが、変速機
構の入力軸に取付けられた大径のプーリは、クラッチ切
作動直後においては慣性により回転を続行しようとする
が、変速機構の出力側は制動機構により回転を阻止され
るので、クラッチ切作動の直後、変速機構を切換え操作
すると、入出力側の回動状態に差が生じギアの咬合不整
合によるギア鳴りが発生することがあった。

本考案の目的は、上記不具合点を解消する点にある。

〔課題を解決するための手段〕

本考案の特徴構成は、冒頭に記載した農作業車の伝動
構造において、前記クラッチの切り操作に連動して、前
記入力軸に取付けた入力プーリに摺動抵抗を付与する制
動機構を設け、さらに、その制動機構の前記入力プーリ
に対する制動作用箇所を、ベルトテンションクラッチの
出力プーリと入力プーリとに対する共通接線よりも内側
で、かつ、この共通接線に対する前記入力プーリの軸芯
からの垂線よりも出力プーリ側寄り位置の伝動ベルト外
周面に設定してある点にある。

〔作用〕

クラッチを切作動すると、それに連動して制動機構に
よりギア式変速機構の入力軸が制動力を受けるので、ク
ラッチ切に伴う操作でギア変速機構の伝動下手側がブレ
ーキによって機体の走行を制動した場合であっても、ギ
ア変速機構の入出力側夫々において、慣性による自由回
動が規制されることになる。

また、制動機構で入力プーリ近傍のベルト部分を押さ
えることにより、出力プーリ側のベルト部分はベルトの
弾性復元力により出力プールから離間する現象を呈し、
クラッチ切り時の出力プーリの空回りによるベルトの連
れ回りを抑制する。

〔考案の効果〕

その結果、クラッチ切操作の直後にギア変速機構の変
速切換え操作を行った場合であっても、入出力側夫々の
回動状態が整合されてギア咬合いがスムーズに行われ、
ギア鳴りが生じるのを阻止できることになった。

しかも、制動機構のベルトに対する作用位置の設定に
より、クラッチ切り時の連れ回りを抑制することがで
き、制動機構をベルト連れ回り防止用のベルト押さえに
利用することができる。

又、弾性アームで構成しておくと、制動作用が緩やか
になり、機体の走行弾性力により回動を続行しがちな変
速出力側とのギア咬合整合性が高いものとなる。

さらに、制動機構が伝動ベルトに作用するものにおい
ては、伝動ベルトと入力プーリとの間での摺接抵抗によ
る制動であるから、制動機構の耐久性が高いものとな
る。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。

第３図に本考案に係る農作業車の一例であるコンバイ
ンを示している。このコンバインは左右一対のクローラ
走行装置（１），（１）を備えた走行機台（２）上に脱
穀装置（３）を搭載するとともに、機体前部に、植付穀
桿を刈取り、立姿勢から徐々に横倒れ姿勢に姿勢変更し
ながら脱穀装置（３）に向けて搬送する刈取前処理部
（４）を横軸芯（P₁）周りで昇降揺動自在に連結し、機
体の前部右側に操縦部（５）を設けてある。

次に、機体の走行用伝動系について説明する。

第１図に示すように、機体前部下方位置の機台（２）
上にエンジン（６）を搭載し、このエンジン（６）の動
力をベルトテンションクラッチ（７）を介してミッショ
ンケース（９）に内装したギア式変速機構（８）の入力
軸（10）に伝え、変速後の出力を左右クローラ走行装置
（１），（１）に供給するよう伝動系を構成してある。

又、ミッションケース（９）内の前記変速機構（８）
の伝動下手側には、摩擦式ブレーキ（11）を内装し、こ
のブレーキ（11）はブレーキペダル（12）の踏込み操作
により制動作用するよう構成し、このブレーキペダル
（12）の踏込み操作に連動して前記クラッチ（７）が切
り作動するよう構成してある。つまり、前記クラッチ
（７）用テンションアーム（13）をコイルスプリング
（14）によりクラッチ入側に揺動付勢するとともに、ブ
レーキ操作用中継揺動アーム（15）とテンションアーム
（13）とをロッド（16）を介して連動連結して、ブレー
キ操作に伴ってテンションアーム（13）がクラッチ切側
に連動揺動するよう構成してある。

又、前記ギア変速機構（８）は、変速レバー（17）の
操作により、図示しないシフタにより変速ギアをシフト
させて切換変速を行うよう構成してある。

そして、前記クラッチ（７）の切り操作に連動して前
記入力軸（10）に取付けた入力プーリ（18）に摺動抵抗
を付与する制動機構としてのベルト押え部材（19）を設
けてある。詳述すると、ブレーキ操作用中継揺動アーム
（15）に弾性を有するピアノ線材から成る前記ベルト押
え部材（19）を片持ち状に取付けてあり、クラッチ切操
作、即ちブレーキ操作に伴って、中継揺動アーム（15）
が横軸芯（P₂）周りで揺動してベルト押え部材（19）の
遊端側が、出力プーリ（21）と入力プーリ（18）とに亘
って巻回した伝動ベルト（20）の入力プーリ（18）近傍
箇所に押圧作用し、つまり、出力プーリ（21）と入力プ
ーリ（18）とを結ぶ共通接線よりも内側で、この共通接
線に対して入力プーリ（18）の軸芯を通る垂直線に対し
て出力プーリ（21）側の近傍に押圧作用し、慣性力によ
り回動する入力プーリ（18）は伝動ベルト（20）との摺
動抵抗により制動力を受けることになる。尚、この制動
作用状態において、前記ベルト押え部材（19）と入力プ
ーリ（18）とは接触しない程度に近接するよう配置し、
伝動ベルト（20）の押え過ぎによる半クラッチ状態の現
出を阻止するよう構成してある。

このようにして、クラッチ切及び機体制動操作の直
後、変速レバー（17）によるギアシフト変速操作が為さ
れても、ギア変速機構（８）の入力側及び出力側夫々に
おいて慣性力により回動が制動されるので、スムーズな
ギア変速が行われることになる。

尚、実用新案登録請求の範囲の項に図面との対照を便
利にする為に符号を記すが、該記入により本考案は添付
図面の構造に限定されるものではない。

【図面の簡単な説明】 図面は本考案に係る農作業車の伝動構造の実施例を示
し、第１図はクラッチ切状態の要部側面図、第２図はク
ラッチ入状態の要部側面図、第３図はコンバイン前部の
側面図である。 （１）……走行装置、（６）……エンジン、（７）……
クラッチ、（８）……変速機構、（10）……入力軸、
（18）……入力プーリ、（19）……制動機構、（20）…
…伝動ベルト、（21）……出力プーリ。

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】エンジン（６）の動力をベルトテンション
   クラッチ（７）を介してギア式変速機構（８）の入力軸
   （10）に伝え、変速後の出力を走行装置（１）に供給す
   るよう構成してある農作業車の伝動構造であって、前記
   クラッチ（７）の切り操作に連動して、前記入力軸（1
   0）に取付けた入力プーリ（18）に摺動抵抗を付与する
   制動機構（19）を設け、さらに、その制動機構（19）の
   前記入力プーリ（18）に対する制動作用箇所を、ベルト
   テンションクラッチ（７）の出力プーリ（21）と入力プ
   ーリ（18）とに対する共通接線よりも内側で、かつ、こ
   の共通接線に対する前記入力プーリ（18）の軸芯からの
   垂線よりも出力プーリ（21）側寄り位置の伝動ベルト
   （20）外周面に設定してある農作業車の伝動構造。
2. 【請求項２】前記制動機構（19）が弾性材から成るアー
   ム部材である請求項１記載の農作業車の伝動構造。