JP2509415B2 - 生物付着防止構造体の製造方法 - Google Patents

生物付着防止構造体の製造方法

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JP2509415B2
JP2509415B2 JP4081049A JP8104992A JP2509415B2 JP 2509415 B2 JP2509415 B2 JP 2509415B2 JP 4081049 A JP4081049 A JP 4081049A JP 8104992 A JP8104992 A JP 8104992A JP 2509415 B2 JP2509415 B2 JP 2509415B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ふじつぼ、紫い貝、藻
類のような海生物の付着を防止する機能を持つ防汚構造
体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】海水に接触している海洋構造体は、常に
海生物の付着による汚損に曝されている。そのため、通
常の海洋構造体は、外観が損なわれるのみならず、機能
的な障害を生ずることとなる。例えば船舶の場合、船体
の底面等への海生物の付着により抵抗が増加して船体の
推進速度が低下する。また火力発電所の場合、海水の取
水ピットに海生物が付着すると、冷却媒体である海水の
流通障害が発生し、発電を停止せざるを得ない事態に至
ることがある。
【0003】このため、従来から多くの海生物付着防止
技術が研究されているが、そのうち現在実用化されてい
る海生物付着防止技術の一つは、亜酸化銅あるいは有機
スズを含有する塗料を海洋構造体の海水との接触面に塗
布する方法である。また、特開昭60−209505号
公報には、銅または銅合金からなる板の一面にプライマ
ー層を設け、その上に粘着材層を形成した生物付着防止
用粘着体が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、塗料を用いた
従来の防汚方法によると、塗料を厚塗りしたとしても塗
料が剥離しやすいため、顕著な防汚効果を発揮する寿命
は1年程度であり、毎年塗布し直すという煩雑なメンテ
ナンス作業が必要となる。また特開昭60−20950
5号公報に示される海生物付着防止体は、銅または、銅
−ニッケル(Cu−Ni)合金を用いているため、耐食
性および防汚性能が不十分である。
【0005】ところで、本発明者による長年の実験研究
の結果、ベリリウム銅合金を海洋構造体に使用すると、
極めて優れた防汚効果を発揮することが判明した。これ
は、ベリリウムイオンが銅イオンと相乗的に作用し、海
生物に対して大きな忌避効果を発揮し、また海生物の付
着および繁殖を防止するためと推定される。すなわち、
ベリリウム銅合金は、防汚機能の発揮効果と銅イオン溶
出の持続作用とを有することが本発明者により見出され
た。
【0006】本発明の目的は、張付け作業性が良好で、
防汚性能および耐久性に優れ、メンテナンスの必要がな
く、また毒性についての問題もない生物付着防止構造体
を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の本発明による生物付着防止構造体の製造方法は、金属
体の表面に絶縁体層を形成する工程と、この絶縁体層の
表面にベリリウム銅合金からなるパンチングメタルまた
は箔体を接着する工程とを含むことを特徴とする。前記
ベリリウム銅合金は、ベリリウム含有率が0.2〜2.
8重量%であり、Be−Cu合金、Be−Co−Cu合
金、Be−Co−Si−Cu合金またはBe−Ni−C
u合金からなる群から選ばれるいずれか1種の合金であ
ることを特徴とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の本発明による生物付着防止構造体の製造方法は、金属
体の表面に絶縁体層を形成する工程と、この絶縁体層の
表面にベリリウム銅合金からなる金網を接着する工程と
を含むことを特徴とする。前記ベリリウム銅合金は、ベ
リリウム含有率が0.2〜2.8重量%であり、Be−
Cu合金、Be−Co−Cu合金、Be−Co−Si−
Cu合金またはBe−Ni−Cu合金からなる群から選
ばれるいずれか1種の合金であることを特徴とする。
【0009】前記ベリリウム銅中に選択的に含有される
コバルト、ニッケル、シリコンの含有率は、それぞれ次
の範囲が望ましい。 コバルト(Co):0.2〜2.7重量% ニッケル(Ni):1.4〜2.2重量% シリコン(Si):0.2〜0.35重量% 前記各元素の添加目的、添加範囲の上限および下限の限
定理由は、次のとおりである。
【0010】 ベリリウム(Be):0.2〜2.8重量% Beを添加するのは、海水中に防汚構造体を浸漬した
とき、Beを溶出させて防汚効果を発揮させ、ベリリ
ウム銅合金の強度、耐食性等の特性を向上し、熱処理
性、結晶粒度調整等の製造性を向上し、また、成形加
工性、および鋳造性を向上するためである。Beが0.
2重量%未満では前記〜の効果が十分に発揮されな
い。Beが2.8重量%を超えると、展伸加工性が低下
し、経済的にも高価になる。
【0011】コバルト(Co):0.2〜2.7重量% Coを添加するのは、微細なCoBe化合物を形成して
合金中に分散して機械的特性、および熱処理性、結晶粒
度調整等の製造性を向上するためである。Coが0.2
重量%未満であると、前記効果が十分に発揮されない。
Coが2.7重量%を超えると、湯流れ性が低下し、前
記特性はほとんど向上しないし、経済的に高価になるか
らである。
【0012】ニッケル(Ni):1.4〜2.2重量% Niを添加するのは、微細なNiBe化合物を形成して
合金中に分散して機械的特性、および熱処理性、結晶粒
度調整等の製造性を向上するためである。Niが1.4
重量%未満であると、前記効果が十分に発揮されない。
Niが2.2重量%を超えると湯流れ性が低下し、前記
特性はほとんど向上しないし、経済的に高価になるから
である。
【0013】 シリコン(Si):0.2〜0.35重量% Siを添加するのは、ベリリウム合金の湯流れ性を向上
するために添加する。Siが0.2重量%未満では、そ
の効果が十分に発揮されず、Siが0.35重量%を超
えると合金が脆くなり、靱性が低下する。
【0014】
【作用】本発明の生物付着防止構造体によると、金属体
の表面に絶縁体層を形成し、この絶縁体層の表面にベリ
リウム銅合金からなるパンチングメタルまたは箔体を接
着するから、相対的にベリリウム銅合金からなるパンチ
ングメタルまたは箔体の接着作業が簡便である。またこ
の方法によって接着されたベリリウム銅合金は、海水中
において海生物の忌避効果を発揮するとともにアルミ青
銅や白銅と同等の優れた耐久性がある。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。本発明の第1実施例を図1および図2に示す。第
1実施例は、発電所の冷却施設に用いる海水循環用の配
管に本発明を適用した例である。
【0016】図2に示すように、円筒状の鉄管1の内周
壁面に電気絶縁材からなるガラス質、コンクリート質、
望ましくは樹脂2が接着される。そして、樹脂2の表面
にベリリウム銅からなる金網5が張付けられる。ベリリ
ウム銅の金網5は、図1に示すように、あらかじめロー
ル状に巻かれたものから引き出して樹脂2の表面に接着
される。あらかじめ樹脂2の表面には接着剤が塗布され
ている。
【0017】本発明者による長年の実験研究の結果、ベ
リリウム銅合金は、防汚機能の発揮効果と、銅イオンの
溶出の持続作用とを有する。この防汚機能の発揮効果
と、銅イオンの溶出の持続作用を詳述すると、次のとお
りである。 防汚機能の発揮効果 ベリリウム、銅、ニッケルのイオン化傾向は、Be>N
i>Cuであることが文献より知られており、左側の元
素の方が溶出しやすいことを示している。ベリリウム銅
の場合、ベリリウムが先に溶出し局部電池を形成し電流
効果により生物付着防止効果を発揮するとともに、ベリ
リウムイオンは内部酸化という酸化形態を取る。この内
部酸化は、例えば図6に示すように、内部にBeO皮膜
を形成するが、このBeO皮膜が多孔質のため、表面に
Cu2 O+BeOを形成すべく銅の溶出を許容する。こ
の銅イオンの海水への溶出により防汚機能が発揮される
ものと考えられる。
【0018】 銅イオン溶出の持続作用 前記の防汚機能の発揮効果は、銅イオンを溶出する持
続作用がある。すなわち、ベリリウム銅は防汚機能を止
むこと無く持続する作用がある。海水に接触するベリリ
ウム銅は、その表面に緻密な表面酸化物(Cu2 O)が
形成されるが、その表面酸化物の下層には、図6に示す
ように、多孔質のBeOの内部酸化物の皮膜が形成され
る。そのため、海水中への銅の溶出が維持されるととも
に、酸化によりこの皮膜が体積増加する。この皮膜の体
積増加量がある程度の量になると、表面の酸化皮膜が多
孔質の内部酸化物層との間で剥離する。このため、電気
化学作用と銅の溶出が長期間維持されると考えられる。
【0019】さらにベリリウム銅が発生する銅イオン溶
出の持続作用については、ベリリウム銅とキュープロニ
ッケルとを対比すると、図8に示す模式図を用いて次の
ように説明される。図8に示すように、ベリリウム銅
(BeCu)は腐食生成物(酸化物)の厚さがある厚さ
になると、この腐蝕生成物が剥離する。すると、ベリリ
ウム銅合金の表面が現われ、再び腐食の進行とともに腐
蝕生成物の厚さが増大する。そして、再び腐蝕生成物が
ある厚さになると剥離する、ということが繰り返され
る。一方、イオンの溶出は腐食生成物の厚さが増すと阻
害されるため次第に低下する。しかし、前述のように腐
食生成物が剥離すると、合金表面が現われるためイオン
溶出量は増大する。したがって、銅イオン溶出の増大と
低下が繰り返される。
【0020】本発明の実施例のベリリウム銅では、酸化
皮膜の剥離によって銅イオンの溶出持続作用がある。こ
の結果、ベリリウム銅の表面に付着する海生物の量が少
量であるか、あるいはほとんど付着しない。これに対
し、図7に示すように、比較例のキュープロニッケル
(CuNi)の場合、ある程度の経年によって表面層に
緻密な酸化ニッケルNiO2 または酸化銅Cu2 Oが形
成されることで、図8に示すように、銅イオンの溶出が
抑制されるからである。これは、イオン化傾向(Be>
Ni>Cu)に従えば、キュープロニッケルの場合、ニ
ッケル(Ni)が優先的に溶出して局部電池を形成する
と考えられ、図4のように表面に緻密な酸化物を形成す
ることによる。そのため、図5に示すように、キュープ
ロニッケルの場合、腐食生成物の厚さは初期に時間とと
もに増大するが、次第に腐蝕生成物の成長速度は遅くな
る。それとともに銅イオンの溶出量はしだいに低下す
る。しかもキュープロニッケルでは腐食生成物の剥離が
ベリリウム銅ほど容易には起こらない。このため、イオ
ンの溶出量は低レベルのままとなり、防汚効果が減退す
る。
【0021】なお、ベリリウム銅合金にこのような顕著
な前記防汚機能の発揮効果と銅イオン溶出の持続作用が
あることが判明したのは、本発明者が初めて見出したも
のであり、この点に言及したり指摘したりした従来の文
献を本発明者は知らない。実用的なベリリウム銅合金と
しては、ベリリウムの含有率が0.2〜0.6重量%の
11合金やベリリウムの含有率が1.8〜2.0重量%
の25合金等々の各種のものがJISで規定されている
が、防汚効果の点ではベリリウムの含有率が1.6%以
上のものが好ましい。ベリリウムの含有率が2.8%を
越えると、銅にベリリウムがそれ以上固溶しなくなるた
め、防汚効果は優れるものの展伸加工性が次第に低下す
る。
【0022】次に本発明の第2実施例を図3に示す。第
2実施例は、前記第1実施例の金網5に代えて、パンチ
ングメタル6を用いた例である。パンチングメタル6
は、ベリリウム銅合金からなり、箔体6bに多数の小孔
6cが形成される。この第2実施例は、配管1の内壁面
1aに絶縁材層6を塗布し、乾燥後、ベリリウム銅合金
からなるパンチングメタル6を張付けた例である。張付
けは、例えば接着剤あるいはあらかじめパンチングメタ
ル6の表面に粘着剤を塗装したものを用いるのが望まし
い。
【0023】前記第2実施例によれば、前記第1実施例
と同様に海水に対する耐食性が良好であり、防汚効果が
発揮されるという効果がある。次に、本発明の第3実施
例を図4に示す。第3実施例は、前記第2実施例のパン
チングメタル6に代えて、エキスパンドメタル等の引張
時に小孔が形成される箔体を用いた例である。図4
(A)に示すように、箔体8は、ベリリウム銅合金から
なり、箔体6bに多数の切り込み状の小孔8aが形成さ
れ、引っ張ると、図4(B)に示すように、角形ないし
丸状の小孔8aに変形する。
【0024】次に、本発明の第4実施例を図5に示す。
第4実施例は、前記第2実施例のパンチングメタル6に
代えて、引張時に金網状に変形する金網体10を用いた
例である。金網体10はベリリウム銅合金からなり、図
5に示すように、矢印方向に引っ張ると、折り畳まれた
金網体10が網状に変形する。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の生物付着
防止体によると、比較的簡単な作業で生物付着防止構造
体を貼り付けることができる。またこの方法により取付
けられた生物付着防止構造体によると、耐食性に優れ、
メンテナンスの手数が簡便で、毒性の問題がなく海生物
の付着を効果的に防止するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例による生物付着防止構造体
の金網を示す斜視図である。
【図2】図1に示す金網を接着した生物付着防止構造体
を示す模式断面図である。
【図3】本発明の第2実施例による生物付着防止構造体
のパンチングメタルを示す斜視図である。
【図4】(A)は本発明の第3実施例による生物付着防
止構造体の箔体を示す斜視図である。(B)はその箔体
に引張力を付加した状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の第4実施例による生物付着防止構造体
の金網体を示す斜視図である。
【図6】本発明実施例のベリリウム銅の酸化皮膜状態を
示す模式図である。
【図7】比較例のキュープロニッケルの酸化皮膜状態を
示す模式図である。
【図8】ベリリウム銅とキュープロニッケルについて銅
イオン溶出量および腐蝕生成物の厚さの経時的変化を対
比した模式説明図である。
【符号の説明】
1 鉄管(金属体) 5 金網(ベリリウム銅合金) 6 パンチングメタル(ベリリウム銅合金) 8 箔体(ベリリウム銅合金) 10 金網体(ベリリウム銅合金)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属体の表面に絶縁体層を形成する工程
    、この絶縁体層の表面にベリリウム銅合金からなる
    ンチングメタルを接着する工程とを含み、 前記ベリリウム銅合金は、ベリリウム含有率が0.2〜
    2.8重量%であり、Be−Cu合金、Be−Co−C
    u合金、Be−Co−Si−Cu合金またはBe−Ni
    −Cu合金からの群から選ばれるいずれか1種の合金で
    あることを特徴とする生物付着防止構造体の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のパンチングメタルに代え
    て、箔体を用いたことを特徴とする生物付着防止構造体
    の製造方法。
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