JP2508764Y2 - 熱交換器 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、カークーラー用凝縮
器、ルームクーラー用凝縮器等に用いられる、アルミニ
ウム等の金属製の熱交換器に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えばカークーラー用凝縮器として、近
時、第５図に示されるような、いわゆるマルチフローと
称される熱交換器が、高熱交換性能、低圧力損失を実現
しうるものとして、好んで使用される傾向にある。この
熱交換器は、所定間隔おきに並列状に配置された複数本
のチューブ（１）の両端に左右１対の筒状中空ヘッダー
（３）（３）が連通状態に接続され、チューブ（１）間
にコルゲートフィン（２）が配置された基本構成を有す
るものである。

【０００３】そして、この熱交換器を取付け側に取り付
ける構造として、例えばその下縁部に左右一対の差込み
ピンが下方突出状態に設けられ、このピンが車体等の取
付け側の取付け孔に防振ゴムを介して差し込まれたもの
となされる構造が採用されることがある。

【０００４】従来、熱交換器本体へのこの差込みピンの
取付けは、鉄等の金属プレートをプレス加工にて所定の
三次元形状に成形した台座用ブラケットを用いて、この
ブラケットに差込みピンを固着すると共に、台座用ブラ
ケットを熱交換器本体にチューブ間に通した締結部材に
て締結することにより行われていた。

【０００５】ところで、この熱交換器本体の取付けにお
いては、車体等の取付け側の構造等に依存して差込みピ
ンの配置位置を熱交換器ごとに適宜異なるものに設定す
る必要を生じる場合が多く、従来は、台座用ブラケット
の形状、構造を変更することによりそれに対応してい
た。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、ピンの
配置位置の設計変更に際しては、どの位置にピンを配置
設定するかにもよるが、通常は、ピンの配置位置の設定
変更によってブラケットの形状等を大幅に変更しなけれ
ばならず、しかも金属プレートの成形品たるブラケット
では強度確保上その形状を複雑な三次元形状に設計しな
ければならないことなどから、ブラケットの形状設計、
製作に多くの手間を要して、コスト的な不利を招くもの
であった。

【０００７】しかも、ブラケットによる場合、その加工
限界等の理由から、ピンを必ずしも所望の位置に自由に
配置設定しえない場合もあった。

【０００８】この考案は、上記のような従来の欠点に鑑
み、差込みピン等の係止用凸部、又は取付け側の係止用
凸部が差し込まれる係止用孔部の配置位置の変更を、設
計、製作上の手間を少なくしてコイト的に有利に行うこ
とができ、しかも、該係止用凸部又は係止用孔部の配置
位置を広範囲にわたって自由に選定することができる構
造の熱交換器を提供することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的において、この
考案は、所定間隔おきに並列状に配置された複数本のチ
ューブの両端が左右１対のヘッダーパイプに連通状態に
接続され、チューブ間にコルゲートフィンが配置される
と共に、前記ヘッダーパイプの端部開口が蓋体にて閉塞
された熱交換器において、前記蓋体は、ヘッダーパイプ
の端部開口を塞ぐ蓋体本体部と、取付用の差込みピンを
ヘッダーパイプの軸心に対して偏心した位置に設けるた
めの側方突出部とを一体に有し、該蓋体の上記側方突出
部に上記偏心位置において差込みピンが設けられ、 かつ
前記蓋体とヘッダーパイプの端部とに、相互に嵌合して
蓋体の周方向における取付位置を規定する位置決め用凹
部と位置決め用凸部とが形成されてなることを特徴とす
る熱交換器を要旨とする。

【００１０】

【作用】上記構成では、ヘッダーパイプの軸芯からの取
付用差込みピンの偏心距離の変更を要する場合には、そ
の偏心距離に応じて側方突出部を含む蓋体の形状を変更
すればよい。また、ヘッダーパイプの軸芯位置に対する
取付用差込みピンの偏心方向の変更を要する場合には、
嵌合凹部と位置決め用凸部の位置を変更すればよい。

【００１１】

【実施例】次に、この発明をカークーラー用アルミニウ
ム製凝縮器に適用した実施例について説明する。なお、
本発明は、ルームエアコン用熱交換器、ラジエーター、
オイルクーラー等、ヘッダーを有する各種熱交換器に広
く適用され得るものであることはいうまでもない。

【００１２】第５図に示されるカークーラー用凝縮器に
おいて、（１）は偏平チューブ、（２）はコルゲートフ
ィンで、これらは並列状態に交互に上下方向に配置され
ている。（３）（３）は左右１対のヘッダーで、偏平チ
ューブ（１）の両端に連通状態に接続されている。そし
て、（４）（４）は係止用凸部としての差込みピンで、
熱交換器本体をその下部において車体側に係止するもの
である。

【００１３】なお、（５）は、熱交換器本体をその上部
側において車体に取り付けるための上部取付け用ブラケ
ットである。（６）は仕切部材で、熱交換媒体がチュー
ブ（１）群を蛇行状に流通するようにヘッダー（３）
（３）内を所定高さ位置において仕切っている。（７）
は冷媒流入用の入口管、（８）は同出口管で、いずれも
ヘッダー（３）（３）の周壁所定位置に連通状態に接続
されている。（９）（９）はサイドプレートで、上下最
外側のコルゲートフィン（２）（２）を保護するために
その外側に配置されたものである。

【００１４】偏平チューブ（１）は、アルミニウム製の
押出型材によるもので、内部が仕切り壁により複数個の
室に区画されて伝熱性能、耐圧性能が高められた、いわ
ゆるハモニカチューブである。なお、電縫管製チューブ
が使用されてもよい。

【００１５】コルゲートフィン（２）は、チューブ
（１）の幅と略同じ幅のシート材をコルゲート状に成形
してルーバーを切り起こしたもので、このシート材とし
てろう材層がクラッドされたアルミニウムブレージング
シートが使用されている。

【００１６】ヘッダー（３）は、円筒状のヘッダーパイ
プ（11）と、該パイプ（11）の上下端部開口を塞ぐ蓋体
（12）（13）とからなる。

【００１７】ヘッダーパイプ（11）は次のようにして製
作されるたものである。即ち、片面又は両面にろう材層
がクラッドされたアルミニウムブレージングシートを用
い、これをプレス切断することにより、第３図（イ）に
示されるように、チューブ挿入孔（11a ）を有する複数
のパイプ成形用単位板（14）…を細幅の枝板部（15）を
介して帯状の幹板（16）に一体に連接した中間加工品
（17）を製作する。そして、該中間加工品（17）の各パ
イプ成形用単位板（14）…を、同図（ロ）に示されるよ
うに、枝板部（15）を一体に有する態様において幹板
（16）から切り離す。そして、このパイプ成形用単位板
（14）を両側縁部突き合わせ状態に曲成することで、同
図（ハ）に示されるようなヘッダーパイプ（11）に製作
する。なお、この合わせ目（11b ）は、後述の一括ろう
付けの際に併せてろう付け接合されるものである。以上
のようにして製作されたこのヘッダーパイプ（11）の端
部における枝板部（15）は、蓋体（12）を回転方向にお
いて所定の向きに位置決めする位置決め用凸部として機
能するものである。なお、ヘッダーパイプ（11）として
は、電縫管、押出管等が使用されることもあり、また、
位置決め用凸部は、上記のような枝板部（15）を利用し
たものでなくてよいことはいうまでもない。

【００１８】蓋体（12）（13）は、アルミニウム製の鍛
造品によるもので、第１図に示されるように、ヘッダー
パイプ（11）の下端開口を塞ぐ蓋体（12）は、ヘッダー
パイプ（11）の開口を塞ぐ蓋体本体部（20）と、該蓋体
本体部（20）に一体に設けられた側方突出部（21）とを
有して、所定肉厚のひょうたん板状のブロック体に成形
されている。この側方突出部（21）の突出量は、差込み
ピン（４）をヘッダーパイプ（11）の軸芯位置からどの
程度距離偏心させるかによって決められる。そして、蓋
体本体部（20）の上面には、ヘッダーパイプ（11）の端
部を嵌合する所定深さの円形嵌合凹部（23）が形成され
ると共に、該嵌合凹部（23）の底面周縁の所定位置に
は、前記ヘッダーパイプ（11）の位置決め用凸部（15）
を適合状態に嵌合するスリット状の位置決め用凹部（2
4）が形成されている。円形嵌合凹部（23）内における
この位置決め用凹部（24）の形成位置は、差込みピン
（４）の偏心方向をどの方向にするかによって決定され
るのはいうまでもない。なお、本実施例では、位置決め
用凹部（24）が２つ設けられているが、これは、蓋体
（12）を左右のヘッダーパイプ（３）（３）のどちらに
も使用できるようにするためのものである。また、位置
決め用凹部としては、第６図に示されるように、円形嵌
合凹部（23）の底面を横断する態様の所定幅の溝（25）
によるものが採用されてもよい。

【００１９】差込みピン（４）は、上記蓋体（12）の側
方突出部（21）の下面中央部に一体に設けられている。

【００２０】上側取付け用ブラケット（５）は、第４図
に示されるように、ヘッダーパイプ（11）の外周面に面
接触状態に配置されるろう付け用板部（26）と、該ろう
付け用板部（26）に一体に連接された取付け用板部（2
7）とを有するものである。このブラケット（５）は、
全体厚さの１〜５％を占める厚さのろう材層（28）を片
面に有する肉厚２〜５ｍｍのアルミニウムブレージング
シートを用いて、これにプレス成形を施すことにより製
作したものである。なお、ろう材層（28）の厚さを全体
厚さの１〜５％に設定したのは、炉中ろう付け中のろう
流れを良好なものに保持してろう切れの発生を防ぐため
であり、１％未満ではその効果が必ずしも十分でなく、
５％を越えるとろう材が多すぎてエロージョンを発生す
る危険性が高くなる。

【００２１】熱交換器の製造においては、まず、各熱交
換器構成部材を相互に仮組状態に組み立てる。即ち、複
数本の偏平チューブ（１）をその厚さ方向に所定間隔お
きに並列状態に配置して、その両端にヘッダーパイプ
（11）（11）を、チューブ挿入孔（11a ）にチューブ
（１）の端部を挿入することにより、嵌めると共に、コ
ルゲートフィン（２）をチューブ（１）間に挿入配置す
る。またその他、仕切り部材（６）、入口管（７）、出
口管（８）、サイドプレート（９）（９）、上側蓋体
（13）等を組み付ける。

【００２２】併せて、第１図及び第２図に示されるよう
に、ヘッダーパイプ（11）の下端部に蓋体（12）の円形
嵌合凹部（23）を嵌合し、ヘッダーパイプ（11）の位置
決め用凸部（15）を蓋体（12）の位置決め用凹部（24）
内に嵌合する。これにより、差込みピン（４）は、ヘッ
ダーパイプ（11）の軸芯から設定距離だけ偏心し、かつ
設定どおりの偏心方向に向いた状態に組み付けられる。

【００２３】また併せて、ブラケット（５）をヘッダー
（３）に組み付ける。この組付けは、第４図（イ）に示
されるように、ブラケット（５）のろう付け用板部（2
6）をヘッダー（３）の外周面に沿わせた状態に配置し
て、外方から先端閉のブレーキングステムリベット（2
9）をヘッダー（３）内まで通し、そして、ステム（29
a）を引き抜くことによって、同図（ロ）に示されるよ
うに、このリベット（29）にてブラケット（５）をヘッ
ダー（３）に仮どめする。そして、このリベット（29）
の頭部開口部内にろう材製のねじ（30）を螺着する。な
お、ねじ（30）のかわりに同図（ハ）に示されるような
リブ付きピン（31）が使用されてもよい。

【００２４】そして、上記のようにして組み立てられた
熱交換器組立体をフラックスろう付け又は真空ろう付け
し、全体を接合一体化する。これにより、下側の蓋体
（12）は、差込みピン（４）をヘッダーパイプ（11）の
軸芯に対して所定距離だけ所定方向に偏心せしめた状態
に保持しつつヘッダーパイプ（11）に接合一体化さけれ
る。また、このろう付け中、ブラケット（５）のブレー
キングステムリベット（29）の頭部開口部は、そこに配
置されたろう材製ねじ（30）により内部密閉状態に封鎖
される。これにより、リベット（29）の防食が図れると
共に、リベット（29）の先端が破れた場合でもヘッダー
（３）内をシール状態に保持して洩れが防がれる。以上
により熱交換器に製造される。

【００２５】そして、差込みピン（４）の配置位置の設
計変更を要する場合には、蓋体（１２）の側方突出部
（21）の突出量を変更するだけで偏心距離を変更するこ
とができると共に、蓋体（12）の位置決め用凹部（24）
の形成位置を変更するだけで偏心方向を変更することが
できる。

【００２６】なお、上記実施例では、差込みピン（４）
は、下側蓋体（12）のみに設けられたものを示したが、
パイプ（11）の上端部開口を塞ぐ蓋体（13）に設けられ
ることもある。また、ヘッダーパイプ（11）の周方向に
おける蓋体（12）の位置決め構造としては、蓋体（13）
がヘッダーパイプ（11）に対し所定の向きに回転規制状
態に取り付けられるものであればよく、従って、上記の
ような構成の他、例えばパイプ（11）側に位置決め用凹
部が設けられると共に、蓋体（12）側に位置決め用凸部
が設けられたものとなされていてもよい。

【００２７】

【考案の効果】上述の次第で、この考案の熱交換器は、
ヘッダーパイプの端部開口を塞ぐ蓋体が、取付用の差込
みピンをヘッダーパイプの軸芯に対して偏心した状態に
設けるための側方突出部を一体に有し、該蓋体に上記偏
心状態に取付用差込みピンが設けられた構造を有するも
のであるから、該差込みピンの配置位置の設計変更を要
する場合は、ヘッダーパイプの軸芯位置に対する偏心距
離、偏心方向に応じて、側方突出部を含む蓋体の形状を
変更すると共に、ヘッダーパイプへの該蓋体の位置決め
用凹部または同凸部の位置を変更することにより容易に
対応することができ、この偏心取付けのための側方突出
部を有する蓋体の全体形状をブラケットの場合のように
複雑な形状に設計する必要もない。そしてまた、該蓋体
の形状を特定設計のものに製作することにより、これを
ヘッダーパイプに無造作に嵌合して取付けることによ
り、取付用差込みピンの偏心位置、偏心方向をいずれも
正確に設計どおりの位置と方向に正しく設定することが
でき、その取付位置精度を安易に確保することができ
る。

【００２８】従って、取付用差込みピンの配置位置の変
更を、設計、製作上の手間を少なくしてコスト的に有利
に行うことができる。しかも、該取付用差込みピンの配
置位置を広範囲にわたって自由に選定しかつ正確に設定
することができる。加えて、ブラケットの省略により部
品点数を減少することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】ヘッダーパイプ、蓋体等を分離状態で示す斜視
図である。

【図２】図（イ）は蓋体の取付け状態を示す部分断面側
面図、図（ロ）は蓋体の平面図、図（ハ）は図（イ）の
Ｉ−Ｉ線部分断面矢視図である。

【図３】ヘッダーパイプの製造方法を示すもので、図
（イ）は中間加工品の平面図、図（ロ）はパイプ成形用
単位板の斜視図、図（ハ）はヘッダーパイプの斜視図で
ある。

【図４】上側取付け用ブラケットの仮組方法を示すもの
で、図（イ）はブレーキングステムリベットを挿入した
状態を示す断面図、図（ロ）は同リベットでブラケット
を仮どめした状態を示す断面図、図（ハ）はリベット頭
部封鎖用に用いられるピンの側面図である。

【図５】図（イ）は熱交換器の全体正面図、図（ロ）は
同側面図である。

【図６】蓋体の変更例を示す斜視図である。

【符号の説明】

１…偏平チューブ ３…ヘッダー １１…ヘッダーパイプ １２…蓋体 ２１…側方突出部 ４…差込みピン（係止用凸部） ３２…係止用孔部

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 所定間隔おきに並列状に配置された複数
   本のチューブの両端が左右１対のヘッダーパイプに連通
   状態に接続され、チューブ間にコルゲートフィンが配置
   されると共に、前記ヘッダーパイプの端部開口が蓋体に
   て閉塞された熱交換器において、前記蓋体は、ヘッダーパイプの端部開口を塞ぐ蓋体本体
   部と、取付用の差込みピンをヘッダーパイプの軸心に対
   して偏心した位置に設けるための側方突出部とを一体に
   有し、該蓋体の上記側方突出部に上記偏心位置において
   差込みピンが設けられ、 かつ前記蓋体とヘッダーパイプの端部とに、相互に嵌合
   して蓋体の周方向における取付位置を規定する位置決め
   用凹部と位置決め用凸部とが形成されて なることを特徴
   とする熱交換器。