JP2508531B2 - 酸化アンチモン粉末の製造方法 - Google Patents

酸化アンチモン粉末の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は合成樹脂、繊維等の難燃化剤として使用され
る酸化アンチモン粉末の改良された製造方法に関する。
〔従来技術とその問題点〕
酸化アンチモンとしては三酸化アンチモン(Sb
2O3)、四酸化アンチモン(Sb2O4)および五酸化アンチ
モン(Sb2O5)が知られているが、900℃以下で最も安定
なものはSb2O4であり、Sb2O3を空気中で酸化するとSb2O
4となってSb2O5は得られない。そのため従来Sb2O5の製
造法としては、Sb2O3を水酸化カリウム(KOH)および過
酸化水素(H2O2)と反応させてアンチモン酸カリウム
(KSbO3)とし、これをイオン交換樹脂等でカリウムイ
オンを除いてコロイド状の五酸化アンチモンを得る(特
公昭57−11848)か、またはSb2O3を特殊な管型反応器に
流通させながら90℃以上でH2O2と反応させる方法(特公
昭53−20479)が知られている。
KSbO3を経由する方法は、KSbO3のイオン交換によりSb
2O5を製造するもので、原料のSb2O3粉末が水、アルコー
ルに溶け難く、濃厚なKOH溶液には溶解し易い性質を利
用して、更にKOHにH2O2を混合してKOHの少いモル数でSb
2O3を溶解し、後工程のイオン交換の負担を軽減してい
る。ところが該方法においても依然としてSb2O3の溶解
に時間がかかり、更にイオン交換でKを除去する工程を
必要とする。また、管型反応器を用いる方法は、Sb2O3
を直接酸化するもので、K残留の問題がなく、かつ酸、
アルカリを用いないので装置の腐蝕が避けられ、しかも
連続的製造が可能であるが、使用できる装置が限定さ
れ、収率が低い。これらの方法で製造される粉末は比表
面積が27m2/g程度であって微粉末とはいい難い。
〔問題解決に係る知見〕
本発明者等は、Sb2O3を、出発原料とする従来の方法
とは異り、SbCl3をH2O2と水またはアルカリ水溶液と接
触させることにより、酸化加水分解することにより、微
細な高価数酸化アンチモン(Sb6O13を主とする)粉末を
容易に製造しうる知見を得た。
〔発明の構成〕
本発明によれば、三塩化アンチモンを過酸化水素およ
び水またはアルカリ水溶液と接触させて酸化加水分解す
ることからなる酸化アンチモンの沈澱を得、これを分
離、洗浄、乾燥することからなる酸化アンチモンの製造
方法が提供される。
本発明において酸化アンチモンという語は、後に詳細
に論じられるように、2Sb2O5・Sb2O3(Sb6O13)と考え
られる混合酸化物を意味するが、このものは一般に五酸
化アンチモンとよばれている。本発明の骨子はあくまで
製法にあるのであるから、生成物の詳細な解明は発明の
構成にとって必須ではない。
本発明の方法において使用される過酸化水素水は市販
の30〜40%のものでよい。
三塩化アンチモンは30〜40%の過酸化水素水と接触さ
せるだけでは酸化加水分解せず、水またはアルカリ水溶
液を加える必要がある。水を加える場合、H2O2を8%以
下になる程度に加える必要があるが、実際問題としては
沈澱を生ずるまで水を加えればよい。
酸化加水分解反応は三酸化アンチモンを過酸化水素水
に溶解してから水またはアルカリ水溶液と混合すること
によっても、または三塩化アンチモンを過酸化水素水と
水またはアルカリ水溶液の混合物と接触させることによ
っても達成される。
また出発SbCl3を濃塩酸に溶解してから、過酸化水素
水に溶解すると酸化アンチモンコロイドが得られ、従っ
て微粉末が得られる。この場合pHは4以上でなければな
らぬ。4未満では酸化アンチモンコロイドが再溶解す
る。アルカリとしては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水
酸化カリウム(KOH)、アンモニア(NH4OH)、炭酸ナト
リウム(Na2CO3)等が使用できる。
反応は室温でも充分進行するが、50℃以上、好ましく
は90℃以上に加温することによって促進される。
〔発明の効果〕
本発明の製造方法は、SbCl3をH2O2と水またはアルカ
リ溶液と接触させて酸化加水分解反応を行うのみで、比
表面積が100m2/g以上の微細な酸化アンチモン粉末を得
る。因に従来の製造方法で得られた粉末の比表面積は27
m2/g程度である。
〔発明の具体的開示〕
次に本発明をその好適実施態様について具体的に説明
する。
室温ないし100℃の温度でH2O2水に溶解したSbCl3溶液
を水、あるいはアルカリ溶液中に滴下し、もしくは水ま
たはアルカリ溶液をH2O2水に溶解したSbCl3溶液に滴下
して沈澱を生成させ、反応終了後該沈澱を洗滌、濾過、
乾燥してSb6O13を製造する。
SbCl3をH2O2水に溶解するときは急激な発熱を伴うの
で容器の周囲を水等で冷却し乍ら徐々にH2O2水を加え
る。SbCl3をH2O2水に溶解するのみではSbCl3の酸化加水
分解は進行せずそのまゝではSb6O13の粉末を得ることは
できない。該SbCl3溶液を室温ないし100℃に保持した
水、あるいはアルカリ溶液中に滴下するか、もしくは逆
に水またはアルカリ溶液を該SbCl3溶液に滴下すること
により酸化加水分解反応が進行しSb6O13が生成してく
る。
この操作を60℃以下で実施した場合は滴下終了後80℃
以上に昇温し、20ないし30分撹拌して反応を終了させ
る。このようにしてSb6O13の微細結晶を得ることができ
る。このときの反応を化学式で表わせば次のようであ
る。
6SbCl3+4H2O2+5H2O→Sb6O13+18HCl また、アルカリとしてNaOHを用いる場合は 6SbCl3+4H2O2+18NaOH→Sb6O13+18NaCl+13H2O 副生するHClまたはNaCl等は濾過またはデカンテーショ
ンの繰り返しにより除去される。デカンテーションは洗
滌液が蒸留水と同程度の導電率を示すか、または硝酸銀
(AgNO3)溶液による塩素イオン試験で白色沈澱を生じ
なくなる程度まで行なう。
このようにして濾過洗浄した析出物は、そのまゝ、ま
たは500℃で2時間焼成した粉末のX線回析グラフによ
り、Sb6O13であることが認められる。Sb6O13は2Sb2O5
Sb2O3によって示される混合酸化物である。一般に無水
のSb2O5は、脱水、脱酸素が起るので生成し難く、通
常、Sb2O5・nH2O(n=1〜5)で表わされる水和物と
して生成し、該水和物は加熱により脱水(400℃付近で
終了)されるが同時に脱酸素も起り、Sb6O13に変化す
る。Sb6O13は600〜800℃に加熱しても安定であるが、90
0℃付近でSb2O4に変化する。
実施例1 SbCl348gを35%H2O2水10.5gに溶解し、これを20℃の
水に撹拌しながら滴下し、80℃に昇温した後20分間継続
して反応を終了させた。ついで1の水で3回デカンテ
ーションを繰り返した後濾過し、110℃の熱風乾燥機で
乾燥した。該乾燥物を乳鉢で粉砕した後比表面積を測定
したところ140.7m2/gであった。X線回折グラフはSb6O
13のピークのみが見られた。
実施例2 SbCl338gを35%H2O2水16.2gに溶解し、これを水100g
にNaOH 20gを溶解したアルカリ溶液に、80℃で滴下し
て、終了後15分間撹拌を継続し反応を終了させた。析出
物を60℃の温水で4回デカンテーションを行ない、濾
過、乾燥後乳鉢で粉砕したものの比表面積は112.3m2/g
であった。
実施例3 35%H2O2水9.1gに水54.6gを加えて5%H2O2溶液を調
製し、これをSbCl321.4gに滴下したところ直ちに白色析
出物が生成した。滴下終了後10分間撹拌を続けた後、洗
浄、濾過、乾燥し、14.1gの粉末を得た。この粉末のX
線回折結果はSb6O13であることを示した。比表面積は10
2.5m2/gであった。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】三塩化アンチモンを過酸化水素および水ま
    たはアルカリ水溶液と接触させて酸化加水分解すること
    により酸化アンチモンの沈澱を得、これを分離、洗浄、
    乾燥することからなる酸化アンチモンの製造方法。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項に記載の方法であっ
    て、三塩化アンチモンを過酸化水素水に溶解してから、
    水またはアルカリ水溶液と混合することからなる方法。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲第1項に記載の方法であっ
    て、三塩化アンチモンを水またはアルカリ水溶液と過酸
    化水素水の混合物と混合する方法。
  4. 【請求項4】特許請求の範囲第1項に記載の酸化アンチ
    モンの製造方法であって、加水分解を60〜100℃で行う
    方法。
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