JP2507379B2 - 高重合度ポリエステルの製造方法 - Google Patents

高重合度ポリエステルの製造方法

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JP2507379B2
JP2507379B2 JP62015940A JP1594087A JP2507379B2 JP 2507379 B2 JP2507379 B2 JP 2507379B2 JP 62015940 A JP62015940 A JP 62015940A JP 1594087 A JP1594087 A JP 1594087A JP 2507379 B2 JP2507379 B2 JP 2507379B2
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、高重合度ポリエステルの製造方法に関し、
更に詳細には、末端カルボキシル基量の少ない高重合度
ポリエステルの製造方法に関する。
(従来技術) 飽和線状ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレ
ートで代表されるポリアルキレンテレフタレートは、多
くの優れた特性を有しているため、工業用繊維,フイル
ム,その他の成形物の素材としても広く使用されている
が、より高強度で、より優れた耐加水分解性や耐熱性が
要求されている。ポリエステルに高強度を付与するには
重合度を高めること、耐加水分解性や耐熱性を向上させ
るにはポリエステル中の末端カルボキシル基量を減少さ
せることが有効である。
ところで、最近、高重合度で且つ末端カルボキシル基
量の少いポリエステルが得られる製造法として、特開昭
55-145734号公報及び特開昭55-161823号公報において提
案されている方法が注目されている。
かかる方法は、ポリエステルとビスオキサゾリン化合
物とを溶融状態で反応せしめる方法であって、ビスオキ
サゾリン化合物はポリエステルの重合度を上昇せしめる
鎖伸長剤としての作用と、ポリエステルの末端カルボキ
シル基量を減少させる低カルボキシル基化剤としての作
用とを併有しているため、末端カルボキシル基量が少く
且つ高重合度のポリエステル(以下、低カルボキシル基
高重合ポリエステルと称することがある。)を容易に得
ることができる。
唯、この用にして得られる低カルボキシル基高重合ポ
リエステルは、溶融状態で保持するとき、重合度の低下
速度が大きいという欠点を有している。
このため、溶融成型時の滞留時間が長い場合は、高重
合度のポリエステル成型品を得ることが難しく、又滞留
時間が短く高重合度のポリエステル成型品が得られる場
合でも、滞留時間等の成型条件のわずかなバラツキの影
響を受けて成形性の低下、例えば、溶融紡糸時に断糸が
多発し易い等の成形性の低下が認められる。
かかる欠点を解消せんとして、特開昭60-161427号公
報及び特開昭60-163921号公報には、ビスオキサゾリン
化合物と種々の化合物、例えば、第4級ホスホニウム塩
化合物、第3級ホスフイン化合物、又は第4級アンモニ
ウム塩化合物とを併用することが、特開昭60-235834号
公報には、ビスオキサゾリン化合物とジカルボン酸化合
物との反応生成物を用いることが夫々提案されている。
しかしながら、得られる低カルボキシル基高重合ポリ
エステルのいずれも、溶融状態における重合度の低下速
度が依然として大きく、充分に満足し得る熱安定性を有
するものではなかった。
(発明の目的) 本発明の目的は、ポリエステルとビスオキソザリン化
合物とを反応せしめて得られる低カルボキシル基高重合
度ポリエステルであって、溶融状態における熱安定性が
良好で、且つ溶融成形条件のバラツキの影響を受けるこ
とのない成形性良好な高重合度ポリエステルの製造法を
提供することにある。
(構成) 本発明者等は、前記目的を達成せんとして検討した結
果、ポリエステルとビスオキサゾリン化合物及びビスラ
クタム化合物とを反応せしめることによって、ビスオキ
サゾリン化合物を単独で反応せしめて得られる低カルボ
キシル基高重合ポリエステルに比較して、高重合度で且
つ溶融状態における熱安定性が飛躍的に向上した低カル
ボキシル基高重合ポリエステルが得られることを見い出
し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、実質的に線状の飽和ポリエステル
と、下記一般式(I) で表わされる少なくとも一種のビスオキサゾリン化合物
及び下記一般式(II) で表わされる少くとも一種のビスラクタム化合物、或い
は前記ビスオキサゾリン化合物とビスラクタム化合物と
の反応生成物とを溶融状態で反応せしめることを特徴と
する高重合度ポリエステルの製造方法である。
本発明で言う飽和ポリエステルを構成する酸成分とし
ては、テレフタル酸,イソフタル酸,ナフタレンジカル
ボン酸,ジフェニルジカルボン酸,ジフェニルスルホン
ジカルボン酸,ジフェノキシエタンジカルボン酸,ジフ
ェニルエーテルジカルボン酸,メチルテレフタル酸,メ
チルイソフタル酸等の如き芳香族ジカルボン酸類,コハ
ク酸,アジピン酸,セバチン酸,デカンジカルボン酸,
シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン
酸,ε−オキシカプロン酸,オキシ安息香酸,ヒドロキ
シエトキシ安息香酸等の如きオキシカルボン酸等が例示
され、これらのうち芳香族ジカルボン酸、殊にテレフタ
ル酸が好ましい。また、上記飽和ポリエステルにおい
て、酸成分がジカルボン酸である場合のグリコール成分
としては、エチレングリコール,トリメチレングリコー
ル,テトラメチレングリコール,ヘキサメチレングリコ
ール,デカメチレングリコール,シクロヘキサンジメチ
ロール等が例示され、これらのうち特にエチレングリコ
ール,テトラメチレングリコールが好ましい。
また、グリコール成分の一部としてポリオキシアルキ
レングリコールを使用することも可能であり、例えば、
ポリオキシエチレングリコール,ポリオキシテトラメチ
レングリコール及びこれらの共重合体が例示される。ポ
リオキシアルキレングリコールを使用する場合、その平
均分子量は好ましくは500〜5000、より好ましくは600〜
4000、特に好ましくは800〜3000であり、その使用量は
ポリエステル中5〜85重量%程度、好ましくは10〜80重
量%、より好ましくは15〜75重量%程度共重合される量
である。これらの共重合ポリエステルはブロック共重合
体であることが好ましい。
また、前記飽和ポリエステルには、実質的に線状であ
る範囲内(例えば、全酸成分に対して1モル%以下)
で、3官能以上の化合物、例えばトリメチロールプロパ
ン,ペンタリスリトール,トリメリット酸,ピロメリッ
ト酸等が、又単官能化合物、例えばベンゾイル安息香
酸,ジフェニルカルボン酸等が共重合されていてもよ
い。
かかるポリエステルを製造するには任意の方法が採用
される。例えば、ポリエチレンテレフタレートの場合、
テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル反
応させるか又はテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ
ールとをエステル交換反応させるかしてテレフタル酸の
グリコールエステル及び/又はその低重合体とする第1
段階の反応と、この第1段階の反応生成物を減圧下加熱
して発生するグリコールを留去して重合させる第2段階
の反応とによって製造するのが最も一般的であり、その
重合度及び末端カルボキシル基量は目的とする製品ポリ
エステルの重合度及び末端カルボキシル基量によって異
なり、一概に規定できないが、重合度は固有粘度で通常
0.4以上、好ましくは0.5〜0.8であり、末端カルボキシ
ル基量は通常5〜150当量/106gポリマー、好ましくは
15〜100当量/106gポリマーである。
この第1段階の反応及び第2段階の反応には、必要に
応じて任意の触媒を使用することができ、又必要に応じ
て添加剤、例えば着色剤,艶消剤,安定剤,難燃剤,制
電剤,易染化剤等を配合してもよい。
本発明においては、かくして得られる線状飽和ポリエ
ステルと、ビスオキサゾリン化合物及びビスラクタム化
合物と、或いはビスオキサゾリン化合物とビスラクタム
化合物との反応生成物を溶融状態で反応させることが肝
要である。
本発明で使用するビスオキサゾリン化合物は、下記一
般式(I)で表わされるものである。
一般式(I)において、R1〜R8は夫々水素原子又は一
価の有機基であり、この一価の有機基の好ましいものと
しては炭素数1〜10アルキル基,炭素数6〜12のアリー
ル基,炭素数5〜12のシクロアルキル基,炭素数8〜20
のアラールキル基等があげられる。これらのR1〜R8は同
一でも異なってもよく、なかでもR1〜R8のすべてが水素
原子であるものが好ましい。また、式中のDは二価の有
機基であり、例えば炭素数1〜10のアルキレン基,炭素
数6〜12のアリーレン基,炭素数5〜12のシクロアルキ
レン基,炭素数8〜20のアラールキレン基等が挙げられ
る。更に具体的には、アルキレン基として、メチレン,
エチレン,プロピレン,プチレン,ペンチレン,ヘキサ
メチレン,オクタメチレン,ノナメチレン,デカメチレ
ン,ジメチルメチレン等を、アリーレン基として、フェ
ニレン,ナフチレン,ジフェニレン, (ここでR′は−O−,−CO−,−S−,−SO2−,−C
H2−,−C(CH3)2−等である)等を、シクロアルキレン
基として、シクロキシレン基等を夫々例示できる。式中
のnは0又は1であり、nが0の下記一般式(I′)で
表わされる化合物が鎖伸長剤としての作用に優れている
ために特に好ましい。
前記一般式(I)で表わされるビスオキサゾリン化合
物の具体例としては、2,2′−ビス(2−オキサゾリ
ン)、2,2′−ビス(4−メチル−2−オキサゾリ
ン)、2,2′−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリ
ン)、2,2′−ビス(4−エチル−2−オキサゾリ
ン)、2,2′−ビス(4,4′−ジエチル−2−オキサゾリ
ン)、2,2′−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリ
ン)2,2′−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、
2,2′−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)2,2′
−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)2,2′−ビ
ス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′
−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)2,2′−o
−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−m−
フェニレンビス(2−オキサゾリン)2,2′−o−フェ
ニレンビス(2−オキサゾリン)2,2′−p−フェニレ
ンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p
−フェニレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリ
ン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−メチル−2−
オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4,4−ジ
メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス
(2−オキサゾリン)2,2′−テトラメチレンビス(2
−オキサゾリン)2,2′−ヘキサメチレンビス(2−オ
キサゾリン)2,2′−オクタメチレンビス(2−オキサ
ゾリン)2,2′−デカメチレンビス(2−オキサゾリ
ン)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−2−オキサ
ゾリン)2,2′−テトラメチレンビス(4,4−ジメチル−
2−オキサゾリン)、2,2′−9,9′−ジフェノキシエタ
ンビス(2−オクサゾリン)、2,2′−シクロヘキシレ
ンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ジフェニレンビ
ス(2−オキサゾリン)等をあげることができ、就中、
2,2′−ビス−(2−オキサゾリン)が最も好ましい。
かかるビスオキサゾリン化合物は1種のみ単独で使用し
ても、2種以上併用してもよい。
ビスオキサゾリン化合物の使用量はポリエステルに対
し0.1重量%乃至10重量%であることが好ましい。0.1重
量%に満たない量では、低カルボキシル基高重合ポリエ
ステルを得ることが困難になる傾向があり、10重量%を
越える場合には、得られるポリエステルの末端カルボキ
シル基量の減少効果等の効果が飽和に達する傾向があ
る。より好ましい使用量は0.2重量%乃至5重量%、特
に好ましくは0.3重量%乃至3重量%である。
また、本発明において使用するビスラクタム化合物
は、下記一般式(II)で表わされる化合物である。
かかるるビスラクタム化合物は、後述の実施例で示す
様に単独で使用しても得られるポリエステルの末端カル
ボキシル基量を減少させることなく重合度を上昇させる
鎖伸長剤としての作用を有する。
このため、ビスラクタム化合物の鎖伸長剤としての作
用は、ポリエステルの末端OH基を連結せしめることによ
るものと推察される。
この様なビスラクタム化合物としては、下記一般式
(II′)で表わされる化合物が好ましい。
前記好ましいビスラクタム化合物の具体例としては、
N,N′−テレフタリルビスカプロラクタム,N,N′−イソ
フタリルビスカプロラクタム,N,N′−アジピルビスカプ
ロラクタム,N,N′−アジピルビスバレロラクタム,N,N′
−イソフタリルブチロラクタム,N,N′−テレフタリルビ
スブチロラクタム等をあげることができ、就中、N,N′
−テレフタリルビスカプロラクタム,N,N′−アジピルビ
スカプロラクタムが特に好ましい。かかるビスラクタム
化合物は1種のみ単独で使用しても、2種以上併用して
もよい。
本発明で用いるビスラクタム化合物の使用量は、ポリ
エステルに対し0.1〜10重量%が好ましい。0.1重量%に
満たない量では、溶融状態における熱安定性向上効果お
よび重合度向上効果が少くなる傾向があり、10重量%を
越える場合には、前記効果が飽和に達する傾向がある。
かかるビスラクタム化合物は、ビスオキサゾリン化合
物と混合してポリエステルに添加してもよく、予めポリ
エステル中に配合しておいてもよい。
ここで、ビスラクタム化合物を、実質的にポリエステ
ルとビスオキサゾリン化合物との反応が完了した後に添
加すると、得られるポリエステルの重合度及び熱安定性
が不充分となる傾向がある。
この様な懸念なくビスオキサゾリン化合物及びビスラ
クタム化合物とポリエステルとを反応せしめるために
は、予めビスオキサゾリン化合物とビスラクタム化合物
とを反応せしめておくことが好ましい。
ビスオキサゾリン化合物とビスラクタム化合物との反
応生成物の赤外線吸収スペクトル(以下、IRスペクトル
と称することがある)の1例を第1図に示す。
第1図は、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)(以
下、CEと称することがある)とN,N′−テレフタルビス
ラクタム(以下、TLと称することがある)とをモル比1/
1でメチレンクロライドに溶解し室温にて30分間撹拌し
つつ反応せしめた後、メチレンクロライドを蒸発除去し
て得られる固形物の赤外線吸収スペクトルを示し、第2
図及び第3図は2,2′−ビス(2−オキサゾリン)及び
N,N′−テレフタルビスラクタムの夫々の赤外線吸収ス
ペクトルを示す。
第1図のIRスペクトルと第2図及び第3図のIRスペク
トルとを比較すると、第1図のIRスペクトルには、波長
1720cm-1付近に第2図及び第3図のCE及びTLのIRスペク
トルには見られない吸収ピークが見られ、更に第2図の
CEのIRスペクトルで特徴的な1720cm-1付近の吸収ピーク
が第1図のIRスペクトルでは1725cm-1付近に、第3図の
IRスペクトルで特徴的な1670cm-1付近の吸収ピークが第
1図のIRスペクトルでは1680cm-1付近に夫々シフトして
いる。
しかも、第1図のIRスペクトルを測定した固形物
(A),CE,及びTLの融点を差動走査型熱量計(DSC)で
測定したところ、下記に示す如く、CE,及びTLよりも融
点が低下している。
これらの結果からCEとTLとをメチレンクロライド中で
室温下、30分間撹拌しメチレンクロライドを蒸発除去し
て得られる固形物(A)は、CEとTLとの反応生成物であ
り、後述する様に、ポリエステルと反応してCE及びTLを
混合使用した場合と同等又はそれ以上に熱安定性が良好
である低カルボキシル基高重合ポリエステルを得ること
ができる。このため、固形物(A)はCEとCLとの反応付
加物ではないかと推察される。
この様に、ビスオキサゾリン化合物とビスラクタム化
合物とは溶媒中で室温において容易に反応させることが
できる。
かかる溶媒としては、メタレンクロライドの他に、ビ
スオキサゾリン化合物とビスラクタム化合物とを溶解で
きるものであればよく、例えばメタノール,エタノー
ル,クロロホルム等を用いることができる。
また、ビスオキサゾリン化合物とビスラクタム化合物
とを反応させる際に、ビスオキサゾリン化合物(BO)と
ビスラクタム化合物(BL)とのモル比(BO/BL)を0.5〜
2.0とすることが好ましい。
ここで、BO/BLが0.5未満の場合、ビスオキサゾリン化
合物によるポリエステルの低カルボキシル基化の効果が
減少する傾向があり、BO/BLが2.0を超える場合、ビスラ
クタム化合物によるポリエステルの熱安定性効果が減少
する傾向がある。
この様にして得られる反応生成物の使用量は、得られ
るポリエステルの低カルボキシル化及び高重度化の程度
から、ポリエステルに対して0.1〜10重量%とすること
が好ましい。
尚、特開昭55-164218号公報には、ポリエステルとビ
スオキサゾリン化合物及びビスオキサジノン化合物に代
表されるポリエステルの末端OH基を連結させる作用を有
する鎖伸長剤とを反応させて高重合度ポリエステルを製
造する方法が示されている。
しかしながら、かかる製造方法によって得られたポリ
エステルは、後述の比較例2において示す様に、高重合
度であるものの溶融状態における熱安定性に欠けるもの
である。
本発明においては、溶融状態でポリエステルと、ビス
オキサゾリン化合物及びビスラクタム化合物、或いはビ
スオキサゾリン化合物とビスラクタム化合物との反応生
成物とを反応させる。この際の反応温度はポリエステル
の溶融以上320℃以下、特にポリエステルの融点以上290
℃以下が好ましい。また、反応圧力は加圧であっても良
いが常圧乃至減圧が好ましい。好ましい反応時間は30秒
乃至60分であり、より好ましくは1分乃至15分である。
この反応は、通常のポリエステル重合反応器の中で両者
を混合撹拌下反応させる方法はもちろんのこと、例え
ば、エクストルーダー中で両者を混合することにより反
応せしめ高重合度化することとが可能である。例えば、
製糸,製膜あるいはプラスチックスの射出成形時に混合
することができる。
また、本発明においては、ポリエステルの耐熱性を向
上させるために通常使用される熱安定剤、例えばヒンダ
ードフェノール系化合物を、ポリエステルとビスキサゾ
リン化合物及びビスラクタム化合物、或いはビスオキサ
ゾリン化合物とビスラクタム化合物との反応生成物を反
応させる際に存在させてもよく、反応完了後のポリエス
テルに添加してもよい。
(作用) 本発明によれば、ポリエステルとビスオキサゾリン化
合物とを反応せしめて得られる従来の低カルボキシル基
高重合ポリエステルに比較して、重合度及び溶融状態に
おける熱安定性が著しく向上した低カルボキシル基高重
合ポリエステルを得ることができる。
かかる低カルボキシル基高重合ポリエステルが得られ
る詳細な理由は未だ明確になっていないが、ビスオキサ
ゾリン化合物とビスラクタム化合物との鎖伸長剤として
の作用が異る点にあるものと推察される。
即ち、ビスオキサゾリン化合物はポリエステルの末端
カルボキシル基を、他方、ビスラクタム化合物はポリエ
ステルの末端OH基を夫々選択的に連結させる。
このため、ポリエステルと前記両化合物とを反応せし
めて得られるポリエステルは、ビスオキサゾリン化合物
を単独で反応せしめて得られる従来の低カルボキシル基
高重合ポリエステルに比較して、高重合度で且つ末端カ
ルボキシル基量及び末端OH基量が少く熱安定性も向上す
る結果、溶融成形条件にバラツキがあっても、その影響
を受けることなく安定して成形でき、溶融紡糸時の断糸
も著しく減少できる。
(発明の効果) 本発明によって得られる低カルボキシル基高重合ポリ
エステルは、高強度で且つ低カルボキシル基量が要求さ
れるポリエステル成形品、例えばポリエステル繊維,フ
イルム,プラスチツク成形材料として好ましく用いるこ
とができる。
(実施例) 以下、実施例にて本発明を具体的に説明する。
実施例1 固有粘度[η]0.80、末端カルボキシル基量[COOH]
18当量/106gポリマーのポリエチレンテレフタレート1
00重量部に対して、表1に示す種類及び添加量でビスオ
キサゾリン化合物及び/又はビスラクタム化合物を一緒
にブレンドし、次いで得られた混合物をエクストルーダ
ーにより温度約300℃で表1に示す滞留時間で溶融押出
しした。得られた押し出し参のポリマーの固有粘度
[η]及び末端カルボキシル基量[COOH]を表1に併せ
て示す。
表1において、No.1及びNo.3は、本発明の実施例であ
って、得られるポリエステルはいずれも高重合度で且つ
良好な熱安定性を有している。
これに対して、No.4は、ビスオキサゾリン化合物を単
独でポリエステルと反応させる例であって、得られるポ
リエステルの重合度及び熱安定性は、No.1及びNo.3のポ
リエステルに比較して著しく劣る。
また、No.2は、ビスラクタム化合物を単独でポリエス
テルと反応させる例であって、得られるポリエステルの
熱安定性はNo.4のポリエステルに比較してやや向上して
いるものの、No.及びNo.3のポリエステルに比較して、
重合度及び熱安定性が劣る。
比較例1 実施例1の表1のNo.1において、表2に示す如く、ビ
スオキサゾリン化合物又はビスラクタム化合物の種類及
び/又は添加量を変更する他は、実施例1と同様にエク
ストルーダーから押出し後のポリマーの固有粘度を測定
し、表2に併せて示した。
比較例2 固有粘度[η]0.80、末端カルボキシル基量[COOH]
18当量/106gポリマーのポリエチレンテレフタレート1
00重量部に対して、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)
0.3重量部と2,2′−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾ
オキサジン−4−オン)0.3重量部とを一緒にブレンド
し、次いで得られた混合物をエクストルーダーにより温
度約300℃で表3に示す滞留時間で溶融押出した。
得られた押し出し後のポリマーの固有粘度[η]及び
末端カルボキシル基量[COOH]を表3に併せて示す。
得られるポリエステルは実施例1と同程度に重合度は
向上するが、溶融状態における熱安定性が劣る。
実施例2 実施例1の表1のNo.1及びNo.4に示す種類及び添加量
のビスオキサゾリン化合物とビスラクタム化合物とをポ
リエステルに混合し、次いで310℃で溶融吐出し冷却、
固化せしめてから2500m/分で引取った。
この際の紡糸断糸率は、No.1の1.5%対し、No.4は3.7
%であった。
溶融紡糸において、溶融ポリマーの流動状態を完全な
ピストンフローとすることは不可能であって、滞留時間
のバラツキを絶無にすることはできない。
このため、No.4のポリマーの如く熱安定性の劣るポリ
マーでは、滞留時間の長いポリマー部分の重合度が低下
し、吐出された前記低重合度部分が断糸され易いため、
紡糸断糸が多発する。
これに対し、No.1のポリマーの様に熱安定性が向上さ
れたポリマーは、紡糸時の滞留時間のバラツキ程度では
紡糸断糸の原因になる程ポリマー重合度は低下しないた
め、紡糸断糸を少くすることができるのである。
実施例3 固有粘度[η]0.80,末端カルボキシル基量[COOH]18
当量/106gポリマーのポリエチレンテレフタレート100
重量部に対して、表4に示す種類のビスオキサゾリン化
合物(BO)とビスラクタム化合物(BL)との反応生成物
を1.0重量部添加し、エクストルーダーにより温度約300
℃で表4に示す滞留時間で溶融押出しした。得られた押
し出し後のポリマーの固有粘度[η]及び末端カルボキ
シル基量[COOH]を表4に併せて示す。
尚、第4表に示すBOとBLとの反応生成物は、両者をモ
ル比(BO/BL)1でメチレンクロライドに溶解し、撹拌
下室温で30分間反応させた後、メチレンクロライドを蒸
発除去させて得たものである。
第4表から明らかな様に、本発明の範囲にあるNo.1〜
3においては、得られるポリエステルはいずれも高重合
度で且つ良好な熱安定性を有している。
尚、第1表の第1において用いた反応生成物のIRスペ
クトルは第1図に示すIRスペクトルを示すものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)とN,N′−
テレフタルビスラクタムとをモル比1/1でメチレンクロ
ライドに溶解し室温にて30分間撹拌しつつ反応せしめた
後、メチレンクロライドを蒸発除去して得られる固形物
の赤外線吸収スペクトルを示し、第2図及び第3図は2,
2′−ビス(2−オキサゾリン)及びN,N′−テレフタル
ビスラクタムの夫々の赤外線吸収スペクトルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−125219(JP,A) 特開 昭56−110720(JP,A) 特開 昭56−18617(JP,A) 特開 昭55−161823(JP,A) 特開 昭54−145734(JP,A) 特開 昭51−107393(JP,A) 特開 昭51−30294(JP,A) 特開 昭48−55236(JP,A) 特開 昭47−39193(JP,A)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】実質的に線状の飽和ポリエステルと、下記
    一般式(I) で表わされる少なくとも一種のビスオキサゾリン化合物
    及び下記一般式(II) で表わされる少くとも一種のビスラクタム化合物、或い
    は前記ビスオキサゾリン化合物とビスラクタム化合物と
    の反応生成物とを溶融状態で反応せしめることを特徴と
    する高重合度ポリエステルの製造方法。
  2. 【請求項2】ビスオキサゾリン化合物が下記一般式
    (I′) で表わされるビスオキサゾリン化合物である特許請求の
    範囲第(1)項記載の高重合度ポリエステルの製造方
    法。
  3. 【請求項3】ビスラクタム化合物が下記一般式(II′) で表わされるビスラクタム化合物である特許請求の範囲
    第(1)項記載の高重合度ポリエステルの製造方法。
  4. 【請求項4】ビスオキサゾリン化合物の使用量が飽和ポ
    リエステルに対して0.1〜10重量%である特許請求の範
    囲第(1)項又は第(2)項記載の高重合度ポリエステ
    ルの製造方法。
  5. 【請求項5】ビスラクタム化合物の使用量が飽和ポリエ
    ステルに対して0.1〜10重量%である特許請求の範囲第
    (1)項又は第(3)項記載の高重合度ポリエステルの
    製造方法。
  6. 【請求項6】反応生成物がビスオキサゾリン化合物(B
    O)とビスラクタム化合物(BL)とをモル比(BO/BL)0.
    5〜2.0で反応せしめて得られるものである特許請求の範
    囲第(1)項記載の高重合度ポリエステルの製造方法。
  7. 【請求項7】反応生成物の使用量が飽和ポリエステルに
    対して0.1〜10重量%である特許請求の範囲第(1)項
    又は第(6)項記載の高重合度ポリエステルの製造方
    法。
  8. 【請求項8】飽和ポリエステルが下記一般式(III) [式中、nは2又は4である。] で表わされる繰返単位を主たる構成単位とするポリエス
    テルである特許請求の範囲第(1)項,第(4)項,第
    (5)項,又は第(7)項記載の高重合度ポリエステル
    の製造方法。
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