JP2024505293A - 合成糸を溶融紡糸し、延伸し、緩和する方法、およびその方法を実施するための装置 - Google Patents

合成糸を溶融紡糸し、延伸し、緩和する方法、およびその方法を実施するための装置 Download PDF

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Abstract

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本発明は、合成糸を溶融紡糸し、延伸し、緩和するための方法および装置であって、溶融紡糸後に、それぞれ1回の巻掛けを伴う、駆動されかつ部分的に加熱されるゴデット周壁を備えた複数のゴデットを通して糸が案内される、方法および装置に関する。ゴデットのゴデット周壁は、その周速度および表面温度が制御可能である。生産を拡大するために、ゴデットのゴデット周壁は、不動の配置形態で、選択的に、糸を乾燥状態でまたは糸を油剤供給状態で延伸することができ、かつ緩和することができるように、糸走路に対して保持されている。

Description

本発明は、合成糸を溶融紡糸し、延伸し、緩和する方法、および請求項10の上位概念に記載の、合成糸を溶融紡糸し、延伸し、緩和する方法を実施するための装置に関する。
合成糸を溶融紡糸し、延伸し、緩和する、冒頭で述べた形式の方法および冒頭で述べた形式の装置は、国際公開第2013/020866号により公知である。
合成糸を製造する際には、糸の使用のために必要な特性、例えば、強度および延性は、実質的に、溶融紡糸後のマルチフィラメント糸の引出し、延伸、および緩和によって生成される。このために、それぞれ1つの駆動されるゴデット周壁を有している複数のゴデットを備えたゴデット装置が使用される。ゴデット周壁は、部分的に、加熱手段によって、糸の糸材料に熱的に影響を与えることができる所定の表面温度まで加熱される。したがって、各糸タイプに応じて所望の物理的特性を生じさせるために、加熱されるゴデット周壁および加熱されないゴデット周壁を備えたゴデットの配置形態が、極めて重要である。さらには、糸における、ゴデットの配置形態により生じる物理的特性には、マルチフィラメント糸に、例えば湿潤により前処理を施すことによって、影響を与えることができる。
したがって、国際公開第2013/020866号により、マルチフィラメント糸を、延伸前に、流体によって湿潤することが公知である。しかしながら、マルチフィラメント糸に対するこのような液体の塗布は、所望の延伸温度を糸で得るために、糸の集中的な熱処理を必要とする。したがって、糸に含まれる流体の加熱のためだけに、著しい割合の熱エネルギが使用される。したがって通常、ゴデット周壁への巻掛け回数によって、糸とゴデットとの間の接触長さに影響を与えている。
これに対し、溶融紡糸後に乾燥状態でマルチフィラメント糸を引き出し、延伸する場合は、糸材料が、ゴデット周壁の表面に直接接触して加熱される。したがって、予め規定された延伸温度に達するために必要な、糸と、ゴデットのゴデット周壁との間の接触長さは、より短くなる。マルチフィラメント糸の性質に応じて、公知の方法および公知の装置では、相応に適合されたゴデット装置が使用され、これらのゴデット装置は、加熱されるゴデット周壁を備えたゴデットの個数により主に異なっており、したがって著しい装備変更作業を必要とする。
したがって、本発明の課題は、手間のかかる構成変更作業なしに多種多様な合成糸を製造することができる、合成糸を溶融紡糸し、延伸し、緩和する冒頭で述べた形式の方法、ならびにその方法を実施するための冒頭で述べた形式の装置を提供することである。
この課題は、請求項1に記載の特徴を有した方法、および請求項10に記載の特徴を有した装置によって解決される。
本発明の有利な別の構成は、各従属請求項の特徴および特徴の組み合わせによって規定される。
本発明は、駆動されかつ部分的に加熱されるゴデット周壁を備えたゴデットの不動の配置形態を使用することができ、これにより合成糸を製造するための様々なプロセスを実施できる点で優れている。ゴデット装置のゴデット周壁における周速度および表面温度を所望のように変更することで、合成糸を様々な前処理状態で所望の物理的な特性をもたせて製造することが可能である。これにより、選択的に糸を乾燥状態でまたは油剤供給状態で、ゴデットの不動の配置形態により、延伸させ、かつ緩和させることができる。ゴデット装置の構成変更は不要である。
プロセス変更の際に、ゴデット周壁のうちの1つだけのゴデット周壁の周速度および表面温度を、ゴデット周壁の流入部またはゴデット周壁の流出部において糸が延伸されるように変更する、本発明のさらなる構成では、制御の手間を最小限にするために特に有利である。さらに、簡単な手段により、延伸温度に到達するために糸の接触長さを変化させることができる。糸の乾燥状態では、糸は、ゴデット周壁の流入部で既に延伸させることができる。これに対し、ゴデット周壁の流出部で糸を延伸する場合は、ゴデット周壁は、糸における熱処理のために、および延伸温度に達するために使用され、これにより有利には、湿潤された糸は、延伸されるまで、ゴデット周壁に沿って比較的長い接触長さで案内される。
ゴデットのゴデット周壁を、選択的に、1800~2200m/分の範囲の周速度で、または4800~5200m/分の範囲の周速度で駆動する本発明のさらなる構成では、当該ゴデットに対する割り当てに応じて、ゴデット周壁の流入部または流出部で延伸を行うことができることが想定されている。したがって、相対的に高速に調節された周速度により、ゴデット周壁の流入部における延伸が可能となる。これに対して、相対的に低速に調節された周速度により、ゴデット周壁の流出部における糸の延伸が可能となる。
糸がゴデット周壁の流入部で既に延伸される場合は、ゴデットのゴデット周壁を、選択的に、60~110℃の範囲の表面温度に、または130~160℃の範囲の表面温度に加熱する方法態様が特に有利である。これにより、糸の緩和を生じさせるために、ゴデット周壁におけるより高い表面温度を使用することができる。
繊維糸の現行の全ての糸タイプを製造することができるように、糸を、5つの加熱されるゴデット周壁を備えた全部で5つのゴデットによって延伸し、緩和し、この場合、真ん中のゴデットのゴデット周壁を、プロセス変更のために、周速度および表面温度において変更する方法態様が有効であることが実証されている。これにより、ゴデット周壁における1回の巻掛けにもかかわらず、コンパクトなゴデット装置が実現される。したがって、糸の状態に応じて、選択的に2つのまたは3つの加熱されるゴデット周壁を、糸の予熱のために使用することができる。したがって、選択的に2つのまたは3つの加熱されるゴデット周壁によって糸を緩和させることができる。
延伸区域の内側で、可能な限り高い引張り応力を発生させることができるようにするために、ゴデット周壁の表面特性、特に表面の粗さが重要である。したがって、さらに、必要な場合には、プロセス変更の際に、真ん中のゴデットのゴデット周壁が交換されることが、ひいては交換可能に形成されていることが想定されている。
ゴデット周壁における周囲の接触長さが制限されているにもかかわらず、油剤供給された糸において、所定の延伸温度までの予熱を達成するためには、さらに、糸の油剤供給状態が、延伸前に、油分90%超のエマルジョンによって糸に油剤供給することによって達成される方法態様が特に有利である。したがって、糸を湿潤する際のエマルジョン内の水含有量は、最小限に減じられる。糸を加熱するための水のいわゆる沸騰は不要である。
糸が、油剤供給状態でまたは乾燥状態で、延伸され、緩和されるかどうかにかかわらず、後続プロセスにおける糸のさらなる処理のためには、糸において特定の湿潤度が支配的でなければならない。このために、糸を、延伸および緩和後に、選択的に、油分15~50%のエマルジョンによって、または油分0.5~2%のエマルジョンによって油剤供給する方法態様が特に有利である。これにより全体として、プロセス終了時には、糸において適合された湿潤が生じる。
このために、本発明による装置の油剤供給装置は、切替え可能な複数のステーションを有しており、これによりステーションのうちの少なくとも1つのステーションによって、糸を、選択的に、油分15~50%のエマルジョンによって、または油分0.5~2%のエマルジョンによって湿潤可能である。
多数の微細なフィラメントから形成されている糸のマルチフィラメント特性により、糸を、延伸前に、0.05~0.4barの範囲の圧縮空気によって交絡させる方法態様が好適に構成されている。これにより、実質的に、いわゆる交絡ノードの形成のない、均一な交絡をマルチフィラメント糸において生じさせることができる。この場合、フィラメントの結束を、乾燥状態でも冷却状態でも生成することができる。
本発明による装置は、このために、溶融紡糸装置とゴデット装置との間に交絡装置を有しており、交絡装置によって、糸は、圧縮空気によって交絡可能である。
真ん中のゴデットのゴデット周壁において、表面温度の変更を影響を与えずに行うことができるように、ゴデット周壁が、隣接するゴデット周壁に対して熱絶縁されて保持されている、本発明による装置のさらなる構成が特に有利である。これにより、糸の予熱のためにまたは糸の緩和のために必要な表面温度を、影響を受けることなく調節し、保持することができる。
合成糸を溶融紡糸し、延伸し、緩和するための本発明による方法および本発明による装置によって、特に繊維用途のための合成糸を製造することができる柔軟性および生産範囲は大幅に拡大される。
合成糸を溶融紡糸し、延伸し、緩和するための本発明による方法を説明するために、以下に、この方法を実施するための本発明による装置のいくつかの実施例を図示し、説明する。
合成糸を溶融紡糸し、延伸し、緩和するための本発明による方法を実施するための本発明による装置の第1の実施例を概略的に示す図である。 プロセス変更後の図1の実施例を概略的に示す図である。 加熱されるゴデット周壁を備えたゴデットのうちの1つのゴデットを概略的に示す横断面図である。
図1には、合成糸を溶融紡糸し、延伸し、緩和するための本発明による方法を実施するための本発明による装置の実施例が示されている。マルチフィラメント糸の溶融紡糸のために、加熱される細長い紡糸ビーム1.1を備えた溶融紡糸装置1が設けられており、紡糸ビームはその下面に、それぞれ複数のノズル開口を有した複数の紡糸ノズル1.3を支持している。紡糸ビーム1.1の上面には溶融物供給路1.2が示されており、この溶融物供給路は、通常、マルチ紡糸ポンプと、紡糸ビーム1.1の内部の溶融物分配システムとを介して紡糸ノズル1.3に接続されている。溶融物供給路1.2は、ここには図示されていない溶融物源、例えば押出し機に連結されている。紡糸ビーム1.1は、図平面に対して横方向に向けられているので、図1では、紡糸ノズル1.3のうちの1つだけが見えている。したがって、複数の糸のうちの1本の糸の糸走路に基づいてのみ、後続の装置およびユニットをより詳細に説明する。基本的には、互いに並んで平行に形成される各糸が、同様に処理される。
溶融紡糸装置1の下には冷却装置3が設けられており、この冷却装置3は、冷却ダクト3.1とブロー壁3.2とを有している。冷却ダクト3は、紡糸ノズル1.3から押し出された多数のフィラメントストランドが冷却ダクト3.1を通走するように、紡糸ノズル1.3の下側に配置されている。ブロー壁3.2は、冷却空気源に接続されているブローチャンバ3.3と協働する。ブロー壁3.2を通して、冷却空気流が冷却ダクト3.1内に導入され、これによって紡糸ノズル1.3から押し出されたフィラメントストランドは、冷却空気流によって均一に冷却される。
ここに図示された冷却装置3は、一例である。基本的には、冷却ダクト3.1は複数の冷却シリンダによって形成することもでき、これらの冷却シリンダを通して紡糸ノズル1.3のフィラメントストランドが案内される。冷却シリンダは空気透過性の壁を有していて、ブローチャンバ内に配置されているので、外側から内側に向かって半径方向に向いた冷却空気流が、フィラメントストランドに衝突する。図1に示された冷却装置3は、通常、横方向流吹出しと呼ばれる。したがって、この冷却装置は、いわゆるラジアル吹付けによって代用することもできる。
冷却ダクト3.1の下方には、集合糸ガイド4と油剤供給装置5とが配置されている。集合糸ガイド4は紡糸ノズル1.3の下方真ん中に配置されており、いわゆる集束点を形成して、フィラメントストランドを1本の糸2にまとめている。隣接する紡糸ノズル1.3の隣接する集合糸ガイド4は、図平面に対して横方向に延在する1つの平面に位置している。
油剤供給装置5は、冷却ダクト3.1の下方の第1の油剤供給ステーション5.1と、ゴデット装置6の下方の第2の油剤供給ステーション5.2とを有している。油剤供給ステーション5.1は湿潤手段5.4を有しており、この湿潤手段は、調節手段5.6を介して作動位置と休止位置との間で往復案内可能である。湿潤手段5.4は、調量ポンプ5.3のもとで流体容器5.5に接続されている。流体容器は、90%超の油分を含むエマルジョンで満たされている。したがって、エマルジョンの水分は、10%未満であるように構成されている。
ゴデット装置6の下方の第2の油剤供給ステーション5.2は、糸2に対して常に接触状態に保持されている湿潤手段5.4を有している。この湿潤手段5.4は、調量ポンプ5.3に接続されている。調節手段を介して選択的に、調量ポンプ5.3を流体容器5.5および5.5’に接続させることができる。流体容器5.5は、15~50%の範囲にある油分を含むエマルジョンを含んでいる。これに対し、流体容器5.5’には、わずか0.5~2%の極めて少量の油分を有する極めて水性のエマルジョンが含まれている。調節手段5.6によって、調量ポンプ5.3を選択的に、流体容器5.5または5.5’のうちの一方の流体容器に接続することができる。
冷却装置3の下側には、予め規定された糸走路に対する複数のゴデット6.1~6.8を備えたゴデット装置が配置されている。ゴデット6.1~6.8は、ゴデット支持体8に、それぞれ駆動されるゴデット周壁7.1~7.8がゴデット支持体8の前側で突出するように配置されている。ゴデット6.1~6.8の図示されていない駆動装置は、ゴデット支持体8の背面に配置されている。糸を互いに対して比較的狭い糸間隔でゴデット周壁7.1~7.8に1回の巻掛けでガイドするために、第1のゴデット6.1の手前には走入装置11が設けられている。走入装置11は、糸を予め規定された糸間隔でガイドするために、通常はコーム糸ガイドを含んでいる。さらに、糸破断の場合に溶融紡糸装置1から到来する糸を集合的に導出するために、図示されていない切断装置および吸込み装置が組み込まれている。
糸2を延伸し、緩和するために、ゴデット装置6は、それぞれ1つの加熱されるゴデット周壁を備えた全部で5つのゴデットを有している。したがって、それぞれ1つの加熱されるゴデット周壁7.2~7.6を備えたゴデット6.2~6.6が形成されている。その他のゴデット6.1ならびに6.7および6.8は、直径が著しく小さく形成されており、加熱されないゴデット周壁7.1および7.7および7.8を備えて形成されている。
ゴデット6.1~6.8は、不動の配置形態にあり、かつ糸2のための規定された糸走路を形成している。この場合、ゴデット周壁7.1~7.8の周速度は、配属された駆動装置によって、プロセスに応じて個別に制御可能である。同様に、ゴデット6.2~6.6内に設けられた、ゴデット周壁7.2~7.6を加熱するための加熱手段は、糸2の熱処理のために予め規定された表面温度を得るために、個別に制御可能である。ゴデット6.2~6.6の加熱されるゴデット周壁7.2~7.6は、部分的に絶縁壁9によって互いに分離されて配置されており、これにより、ゴデット周壁7.2~7.6間の小さな間隔に基づく表面温度への相互の影響を阻止することができる。特に、真ん中のゴデット6.4のゴデット周壁7.4は、隣接するゴデット周壁7.2および7.3ならびに7.5および7.6に対して熱的に絶縁されている。糸2を延伸し、緩和するために、ゴデット装置6は、それぞれ1つの加熱されるゴデット周壁を備えた全部で5つのゴデットを有している。糸2の状態に応じて、延伸区域を選択的にゴデット周壁7.3と7.4との間にまたはゴデット周壁7.4と7.5との間に形成することができる。これについては、以下でより詳しく説明する。
糸2の前処理のために、油剤供給ステーション5.1とゴデット装置6との間には予備交絡装置10が配置されている。予備交絡装置10は、通常、糸のそれぞれに対して別個の糸処理通路を有しており、この糸処理通路を通して糸は分離されて案内される。処理通路のそれぞれには圧縮空気通路が割り当てられており、この圧縮空気通路を通して、圧縮空気が、マルチフィラメント糸2を交絡するために処理通路内に導入される。このような予備交絡装置10は、一般に公知であるので、この装置のさらなる図示は省かれる。
ゴデット装置6の下側の領域には後交絡装置12が配置されており、これにより糸2において、糸継ぎ部を、糸の巻取り前にいわゆる交絡ノードによって安定化させることができる。このような後交絡装置12は、予備交絡装置10と同様の原理に基づいているが、交絡ノードを生成するために、圧縮空気のより高い圧力で作動させられる。
プロセスの最後に、糸2をパッケージ14に巻き取るために、巻取り機13が配置されている。巻取り機13は、突出する2つの巻取りスピンドル13.1を有しており、両巻取りスピンドルは、回転可能な巻取りリボルバ13.3に保持されている。これによって、巻取りスピンドル13.1を、パッケージ14を巻成するための作動領域と、完全に巻成されたパッケージ14を交換するための交換領域とに、交互に案内することができる。糸2を巻き取るために、糸は綾振り装置13.5によって巻取り箇所毎に往復案内され、かつ圧着ローラ13.4を用いてパッケージ14の表面に巻き重ねられる。綾振り装置13.5の上方には、巻取り箇所毎にそれぞれ1つの変向ローラ13.2が設けられており、これによりゴデット周壁7.1~7.8において糸群として案内されている糸2を分離することができる。したがって、糸2は、ゴデット装置6の最後のゴデット周壁7.8から流出した後に、ほぼ水平な分配平面から巻取り機13の巻取り箇所へと案内される。
油剤供給装置5およびゴデット装置6の調節に応じて、図1に示した本発明による装置によって、糸2の前処理状態が実質的に異なる様々な製造プロセスを実施することができる。冷却装置3の下側の第1の油剤供給ステーション5.1により、糸を選択的に湿潤状態でまたは乾燥状態で引き出すことができる。本発明による装置の図1に図示された作動状態は、乾燥した前処理状態において完全延伸糸(FDY)を製造するための調節を示している。このために、例えばポリエステルまたはポリアミドから成るポリマー溶融物が紡糸ビーム1.1に供給される。紡糸ノズル1.3の内部においてポリマー溶融物は、加圧下で、紡糸ノズル1.3の下側に形成されたノズル孔を通して押され、これによって多数のフィラメントが押し出される。冷却装置3により、フィラメントは、冷却空気流によって、熱可塑性材料のガラス転移温度を下回る温度に冷却されるので、フィラメントの硬化および予備配向が生じる。冷却後に、フィラメントストランドはそれぞれ1本の糸2にまとめられる。
油剤供給ステーション5.1では、湿潤手段5.4は休止位置に位置しているので、糸2は湿潤されずに、ひいては乾燥した状態で引き出される。ゴデット装置6への糸の走入前に、糸2は予備交絡装置10によって圧縮空気によって交絡させられる。この場合、圧縮空気は0.05~0.4barの範囲の低い正圧で供給される。
走入装置11により、糸2は2mm~4mmの範囲の糸間隔でまとめられ、これにより一緒に糸群としてゴデット6.1~6.8のゴデット周壁7.1~7.8において案内されることができる。常温のゴデット周壁7.1を備えた第1のゴデット6.1は、溶融紡糸装置1から糸2を引き出す働きをする。糸2を延伸し、緩和するために、まずゴデット周壁7.2および7.3において糸の予熱が行われる。この場合、糸を延伸するために必要となる速度差は、ゴデット周壁7.3と7.4との間で調節される。したがって、糸は、真ん中のゴデット6.4のゴデット周壁7.4の流入部において延伸される。真ん中のゴデット6.4のゴデット周壁7.4は、このために、4000~5200m/分の範囲内の周速度で駆動される。付加的に、真ん中のゴデット6.4のゴデット周壁7.4は、120°C~160°Cの範囲の表面温度に加熱され、これにより糸2における緩和ひいては応力減少を実施することができる。ゴデット6.4~6.8のゴデット周壁7.4~7.6の間では、速度差が調節されないか、または極めて僅かな速度差しか調節されず、これにより糸2における応力を減じるための僅かな糸応力が生じる。したがって、後続のゴデット周壁7.5および7.6の表面温度も、同様に120°C~160°Cの範囲にある。
糸2の延伸および緩和後に、糸は第2の油剤供給ステーション5.2において水と油とから成るエマルジョンで湿潤される。そのために、第2の油剤供給ステーション5.2の調量ポンプ5.3は、調節手段5.6を介して流体容器5.5に接続されている。流体容器5.5内には、最小15%~最大50%の油含有量を有するエマルジョンが予め保持されている。
糸2の湿潤後に、これらの糸は後交絡装置12において交絡させられ、次いで巻取り機13において巻き取られてパッケージ14となる。
しかしながら、糸タイプおよびポリマー組成によっては必然的に、乾燥状態における糸の製造により、不十分な糸品質が生成されるか、またはプロセス障害さえも引き起こされてしまうおそれがある。したがって、図1に示された本発明による装置により、糸を油剤供給状態で延伸し、緩和するために、プロセス変更を実施することができる。このために、図2には、図1に示した実施例の変更された作動状態が示されている。
図2に示した作動状態では、油剤供給ステーション5.1が作動位置で示されている。このために、湿潤手段5.4は、調節手段5.6によって休止位置から作動位置に案内されており、これによって、冷却後の糸2をエマルジョンによって湿潤することができる。このために、調量ポンプ5.3は、糸2を湿潤するために、流体容器5.5から所定の量の相応のエマルジョンを圧送する。ただしこの場合、エマルジョンは、実質的に、油、特にニートオイルから成っている。したがって、エマルジョン中の油の割合は、90%超である。したがって、本明細書では、糸の状態を油剤供給されたものと言う。
引き続き行われる予備交絡装置10における糸の交絡は、既に図1について上述したように行われる。
糸2をゴデット装置6によって延伸し、緩和するために、真ん中のゴデット6.4において、ゴデット周壁7.4の周速度と、ゴデット周壁7.4の表面温度とは、ゴデット周壁7.4とゴデット周壁7.5との間の糸走路において糸の延伸が行われるように変更される。延伸のための糸2の予熱は、今、付加的に真ん中のゴデット6.4のゴデット周壁7.4によって感知される。これにより、ゴデット周壁7.4の表面温度は60°C~110°Cの範囲の値に調節されるので、糸を予熱するための接触長さは、ゴデット周壁7.4における巻掛け領域の分だけ拡大する。この場合、ゴデット周壁7.2および7.3における調節は維持されている。真ん中のゴデット6.4のゴデット周壁7.4の流出部に延伸区域を移すために、真ん中のゴデット6.4のゴデット周壁7.4の周速度が減じられ、1800~3500m/分の範囲で調節される。これにより、全ての糸2は、真ん中のゴデット6.4のゴデット周壁7.4の流出部において延伸される。次いで、糸2の緩和が、先行するプロセスに対して調節が変更されずに維持されているゴデット6.5および6.6のゴデット周壁7.5および7.6によって行われる。したがって、ゴデット装置6内でのプロセス変更は、真ん中のゴデット6.4の速度および表面温度の適合しか必要としない。
後交絡装置12の交絡の際に十分な数の交絡ノードを形成することができるように、糸2は、緩和後に第2の油剤供給ステーション5.2で再び湿潤される。しかしながら、この場合、湿潤は、主として水から成るエマルジョンによって行われる。したがって、調量ポンプ5.3は、調節手段5.6によって流体容器5.5’に接続される。流体容器5.5’は、0.5~2%の範囲にあってよい僅かな油分を含むエマルジョンを含んでいる。最後に、糸2は巻取り機13によって巻成されてパッケージ14となる。
合成糸を溶融紡糸し、延伸し、緩和するための本発明による方法、および本発明による方法を実施するための本発明による装置によって、完全延伸糸(FDY)を製造するための生産範囲は大幅に拡大される。乾燥状態または油剤供給状態において糸を製造するためには、手間のかかる構成変更は不要である。油剤供給装置5のアクチュエータの制御および真ん中のゴデット6.4の駆動および加熱制御によるだけで、様々なプロセスを実施するための高いフレキシビリティが得られる。
真ん中のゴデット6.4において場合によっては行われる周壁交換は、プロセス多様性をさらに拡大することができる。したがって、図3には、真ん中のゴデット6.4の構造が横断面図で概略的に示されている。ゴデット6.4は、フランジケーシング21を介して、ゴデット支持体8に保持されている。ゴデット6.4のゴデット周壁7.4は、支持体8の前側に突出するようにガイドされている。ゴデット周壁7.4は、このために中空円筒状に形成されており、内部で駆動軸20に連結されている。駆動軸20は、駆動装置15に接続されている。ゴデット周壁7.4は、加熱手段16に被せられている。例えば誘導コイルによって形成されていてよい加熱手段16は、加熱支持体17に保持され、外部の加熱制御装置18に電気的に接続されている。加熱制御装置18を介して、ゴデット周壁7.4においてそれぞれ所望の表面温度が調節される。表面温度を閉ループ制御および監視するために設けられているセンサは、この実施例では示されていない。駆動装置15には駆動制御機器19が割り当てられており、この駆動制御機器により、ゴデット周壁7.4の周速度が制御可能である。
ゴデット周壁7.4は、取外し可能に駆動軸20に接続されている。したがって、ゴデット周壁7.4を、支持体8の前側から簡単に交換することができる。糸の延伸を流入部から流出部へと移すために、表面粗さを変化させるためにゴデット周壁7.4を交換することが有利であり得る。すなわち、一般的には、ゴデット周壁の表面の粗さが僅かであるならば、延伸力の形成が促進されることが知られている。したがって、図2に示された実施例では、ゴデット6.4のゴデット周壁7.4の流出部における糸の延伸を改善するために、予めゴデット周壁7.4の交換を行うことができる。
ここで明確に述べておくが、加熱されるゴデット6.2,6.3および6.5~6.6は、図3に示された実施例とほぼ同一の構造を有している。

Claims (16)

  1. 合成糸を溶融紡糸し、延伸し、緩和するための方法であって、溶融紡糸後に、それぞれ1回の巻掛けを伴う、駆動されかつ部分的に加熱されるゴデット周壁を備えた複数のゴデットの不動の配置形態を通して糸を案内し、前記ゴデットの前記ゴデット周壁の周速度および表面温度を、前記糸が選択的に乾燥状態または油剤供給状態で延伸され、緩和されるように制御する、方法。
  2. プロセス変更のために、前記ゴデットの前記ゴデット周壁のうちの1つのゴデット周壁の周速度および表面温度のみを、前記ゴデット周壁の流入部または前記ゴデット周壁の流出部において糸が延伸されるように、変更する、請求項1記載の方法。
  3. 前記ゴデットの前記ゴデット周壁を、選択的に、1800~3500m/分の範囲の周速度で、または4000~5200m/分の範囲の周速度で駆動する、請求項2記載の方法。
  4. 前記ゴデットの前記ゴデット周壁を、選択的に、60~110℃の範囲の表面温度に、または120~160℃の範囲の表面温度に加熱する、請求項2または3記載の方法。
  5. 前記糸を、5つの加熱されるゴデット周壁を備えた全部で5つのゴデットによって延伸し、緩和し、真ん中のゴデットの前記ゴデット周壁を、プロセス変更のために、周速度および表面温度において変更する、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
  6. 前記真ん中のゴデットの前記ゴデット周壁を、プロセス変更の際に、表面粗さを変更するために交換する、請求項5記載の方法。
  7. 前記糸の油剤供給状態は、延伸前に、油分90%超のエマルジョンによって前記糸に油剤供給することにより達成される、請求項1から6までのいずれか1項記載方法。
  8. 前記糸を、延伸および緩和後に、選択的に、油分15~50%のエマルジョンによって、または油分0.5~2%のエマルジョンによって油剤供給する、請求項1から7までのいずれか1項記載方法。
  9. 前記糸を、延伸前に、0.05~0.4barの範囲の圧縮空気によって交絡させる、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
  10. 請求項1から9までのいずれか1項記載の方法を実施するための装置であって、溶融紡糸装置(1)と、油剤供給装置(5)と、ゴデット装置(6)とを有しており、前記ゴデット装置は、駆動されかつ部分的に加熱されるゴデット周壁(7.1~7.8)を備えた複数のゴデット(6.1~6.8)を有しており、前記ゴデット周壁(7.1~7.8)は、その周速度および表面温度が制御可能に形成されている、装置において、
    前記ゴデット(6.1~6.6)の前記ゴデット周壁(7.1~7.6)は、不動の配置形態で、選択的に糸(2)が乾燥状態でまたは前記糸が油剤供給状態で、延伸可能かつ緩和可能であるような糸走路を形成することを特徴とする、装置。
  11. 前記ゴデット(6.2~6.6)の前記ゴデット周壁(7.2~7.6)のうちの1つのゴデット周壁は、選択的に前記糸が、前記ゴデット周壁(7.2~7.6)の流入部でまたは前記ゴデット周壁(7.2~7.6)の流出部で、延伸可能であるように、制御可能である、請求項10記載の装置。
  12. 前記ゴデット装置(6)は、加熱されるゴデット周壁(7.2~7.6)を備えた全部で5つのゴデット(6.2~6.6)を有しており、真ん中のゴデット(6.4)の前記ゴデット周壁(7.4)によって、延伸区域を、前記流出部から前記流入部へと、またはその逆へと移すことができる、請求項11記載の装置。
  13. 前記真ん中のゴデット(6.4)の前記ゴデット周壁(7.4)は交換可能に形成されている、請求項12記載の装置。
  14. 前記真ん中のゴデット(6.4)の前記ゴデット周壁(7.4)は、隣接する前記ゴデット周壁(7.2,7.3,7.6,7.7)に対して熱絶縁されて保持されている、請求項12または13記載の装置。
  15. 前記油剤供給装置(5)は、切替え可能な複数のステーション(5.1,5.2)を有しており、前記ステーション(5.1,5.2)のうちの少なくとも1つのステーションによって、糸は、選択的に、油分15~50%のエマルジョンによって、または油分0.5~2%のエマルジョンによって湿潤可能である、請求項10から14までのいずれか1項記載装置。
  16. 前記溶融紡糸装置(1)と前記ゴデット装置(6)との間に交絡装置(10)が配置されており、前記交絡装置によって、前記糸は圧縮空気によって交絡可能である、請求項10から15までのいずれか1項記載の装置。
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