JP2024100962A - ポリビニルアルコール系繊維、繊維構造体およびその製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系繊維、繊維構造体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】吸水性に優れるとともに水溶解性能と機械的強度に優れるポリビニルアルコール系繊維、それからなる繊維構造体、およびポリビニルアルコール系繊維の製造方法を提供すること。【解決手段】スルホン酸基、スルホネート基、マレイン酸基、イタコン酸基、アクリル酸基およびメタクリル酸基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を1モル%以上含有し、架橋度が0%であり、引張強度が3cN/dtex以上であるポリビニルアルコール系繊維、ポリビニルアルコール系繊維の製造方法、および該繊維を用いた繊維構造体。【選択図】なし

Description

本発明は、創傷被覆材、包装材等の用途に好適なポリビニルアルコール系繊維、該繊維を含有する繊維構造体、および該繊維の製造方法に関する。
繊維材料、特に液体を吸収および保持することができる保水繊維および吸水繊維は、担体基材として家庭製品、衛生製品および創傷処置に用いられる創傷被覆材等に好適に用いられている。一方、ポリビニルアルコールは水溶性と機械的強度に優れる点から、包装材として用いれば水中で溶解するためゴミの減量という観点から着目されている。
しかしながらポリビニルアルコール繊維は、ポリビニルアルコール分子中の水酸基同士が分子内および分子間の水素結合を形成し、この結合が極めて強固である。したがって分子内および分子間への水の侵入が妨げられるため、常温水中ではほとんど形態変化がみられず、かつほとんど吸水しない。
水溶性と機械的強度に優れるポリビニルアルコールに高吸水性を付与すべく種々の検討がなされている。また保水性および吸水性に優れるとともに濡れた状態でも機械的強度に優れるポリビニルアルコールが求められている。
例えば特許文献1には、ポリビニルアルコールに架橋成分が導入されたポリビニルアルコール繊維が記載されている。特許文献1に記載のポリビニルコールは吸水性能が高いにもかかわらず不織布などの繊維構造物を得るために必要な繊維強度を有している。
特許文献2には、架橋ポリビニルアルコールと水素結合を形成することができる少なくとも1つの基を含む薬剤からなる繊維材料が開示されている。特許文献2には湿潤または濡れ条件下でも機械的強度に優れ、吸水性に優れた架橋ポリビニルアルコール繊維が記載されている。
しかしながら、特許文献1および2に記載のポリビニルアルコール繊維は架橋成分を有するため、繊維の一部が水に不溶化する場合があり、廃棄の際の工程が煩雑となる場合がある。
また架橋構造を導入するために架橋剤を使用した場合、架橋剤の種類により、ポリビニルアルコール繊維の用途が制限される場合がある。
特開2004-293022号公報 特表2020-507687号公報
本発明の目的は吸水性に優れるとともに水溶解性能と機械的強度に優れるポリビニルアルコール系繊維を提供することにある。また本発明の目的はかかるポリビニルアルコール系繊維を少なくとも一部に有する繊維構造体、および該ポリビニルアルコール系繊維の製造方法を提供することにある。
すなわち本発明は、
[1]スルホン酸基、スルホネート基、マレイン酸基、イタコン酸基、アクリル酸基およびメタクリル酸基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を1モル%以上含有し、架橋度が0%であり、引張強度が3cN/dtex以上であるポリビニルアルコール系繊維に関する。
さらに本発明は好ましい形態として、
[2]30℃で生理食塩水に1時間浸漬後の吸水倍率が5倍以上である、前記[1]に記載のポリビニルアルコール系繊維、
[3]生理食塩水中または水中での溶解温度が80℃以下である、前記[1]または[2]に記載のポリビニルアルコール系繊維、
[4]ケン化度が95モル%以上である、前記[1]から[3]のいずれかに記載のポリビニルアルコール系繊維、および
[5]結晶化度が20から50%である、前記[1]から[4]のいずれかに記載のポリビニルアルコール系繊維、に関する。
さらに本発明は、
[6]上記[1]から[5]のいずれかに記載のポリビニルアルコール系繊維を少なくとも一部に含む繊維構造体に関する。
また本発明は、
[7]スルホン酸基、スルホネート基、マレイン酸基、イタコン酸基、アクリル酸基およびメタクリル酸基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を1モル%以上含有するポリビニルアルコールを含有する紡糸原液をポリビニルアルコールに対して固化能を有する有機溶媒を主体とする固化浴に湿式または乾湿式紡糸し、乾燥、延伸、熱処理のいずれかの工程で、全工程における総延伸倍率を3倍以上とする、前記[1]から[5]のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系繊維の製造方法に関する。
本発明によれば、吸水性に優れるとともに水溶解性能と機械的強度に優れるポリビニルアルコール系繊維、およびそれを少なくとも一部に含む繊維構造体、および該ポリビニルアルコール系繊維の製造方法が提供される。
本発明においては、スルホン酸基、スルホネート基、マレイン酸基、イタコン酸基、アクリル酸基およびメタクリル酸基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を1モル%以上含有し、架橋度が0%、引張強度が3cN/dtex以上であるポリビニルアルコール系繊維を用いることによって、吸水性に優れるとともに水溶解性能と機械的強度に優れる繊維を得ることが可能となる。
なお、マレイン酸基とはマレイン酸から水酸基以外の水素を除いた残基のことであり、除かれる水素は水酸基以外であれば特に限定はない。イタコン酸基、アクリル酸基およびメタクリル酸基についても同様である。
なお本発明において、上記ポリビニルアルコール系繊維は上記の官能基を有し、ポリビニルアルコール系繊維は一種のポリビニルアルコールから構成されていても2種以上のポリビニルアルコールから構成されていてもよいが、一種のポリビニルアルコールから構成されているのが好ましい。またポリビニルアルコール以外の他のポリマーを含んでいてもよい。ポリビニルアルコール系繊維が2種以上のポリビニルアルコールから構成される場合、または他のポリマーを含んでいる場合、ポリビニルアルコール系繊維全体に含まれる官能基の量は上記範囲であればよい。
本発明のポリビニルアルコール系繊維に含まれる官能基はスルホン酸基、スルホネート基、マレイン酸基、イタコン酸基、アクリル酸基およびメタクリル酸基からなる群より選択される少なくとも1種である。これら官能基を有するポリビニルアルコールを紡糸することでポリビニルアルコール系繊維を製造することができる。上記官能基を有するポリビニルアルコールの製造方法は、これらの官能基を有する単量体とビニルエステル単量体とを共重合し、得られたポリビニルエステル共重合体をケン化する方法、または予め合成したポリビニルアルコールに後からこれらの官能基を導入する方法等が挙げられる。
スルホン酸基またはスルホネート基を含有する単量体は、ビニルエステルと共重合可能で、ケン化後スルホン酸基またはその塩であるスルホネート基となるような単量体である。具体的には、2-アクリルアミド-2-エチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸などのオレフィンスルホン酸またはその金属塩などが挙げられる。なかでもビニルエステルとの反応性やケン化時の安定性などの点から、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩が好ましい。
スルホン酸基またはスルホネート基をポリビニルアルコールに後から導入してもよい。例えば、予め合成されたポリビニルアルコールをジメチルスルホキシド等の有機溶媒に溶解し、オルトベンズアルデヒドスルホン酸ナトリウムのような芳香族アルデヒドスルホン酸またはその塩と反応させ、ポリビニルアルコールの水酸基の部分をスルホン酸基またはその金属塩で変性してもよい。
この時、触媒としてパラトルエンスルホン酸のような芳香族スルホン酸を用いてもよい。
マレイン酸基を含有する単量体は、ビニルエステルと共重合可能で、マレイン酸基が得られた共重合体に存在するものである。具体的には、マレイン酸またはその塩、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸エステル、無水マレイン酸またはその誘導体などが挙げられる。なかでもビニルエステルとの共重合反応やケン化時の安定性などの点から、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチルが好ましい。
イタコン酸基を含有する単量体は、ビニルエステルと共重合可能で、イタコン酸基が得られた共重合体に存在するものである。具体的には、イタコン酸またはその塩、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸ジエチル等のイタコン酸エステル、無水イタコン酸またはその誘導体などが挙げられる。なかでもビニルエステルとの共重合反応やケン化時の安定性などの点から、イタコン酸、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジメチルが好ましい。
アクリル酸基を含有する単量体は、ビニルエステルと共重合可能で、アクリル酸基が得られた共重合体に存在するものである。具体的には、アクリル酸またはその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル等のアクリル酸エステルなどが挙げられる。なかでもビニルエステルとの共重合反応やケン化時の安定性などの点から、アクリル酸、アクリル酸メチルが好ましい。
メタクリル酸基を含有する単量体は、ビニルエステルと共重合可能で、メタクリル酸基が得られた共重合体に存在するものである。具体的には、メタクリル酸またはその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル等のメタクリル酸エステルなどが挙げられる。なかでもビニルエステルとの共重合反応やケン化時の安定性などの点から、メタクリル酸、メタクリル酸メチルが好ましい。
上述したこれらの官能基を有する単量体は1種または2種以上を用いてもよいが、1種の単量体を用いるのが好ましい。
共重合するビニルエステル単量体は、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリアン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等を挙げることができる。これらのなかでも、酢酸ビニルが好ましい。
ビニルエステル単量体として1種または2種以上を用いてもよいが、1種のビニルエステル単量体を用いる方が好ましい。
上述した方法により、スルホン酸基、スルホネート基、マレイン酸基、イタコン酸基、アクリル酸基およびメタクリル酸基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有するポリビニルアルコールが得られる。共重合により製造する場合は共重合する際に単量体の量を適宜調整することで得られるポリビニルアルコール中の官能基の含有率を調整することができる。
後からポリビニルアルコールにこれら官能基を導入する場合はポリビニルアルコールの量と官能基を有する化合物の量を調節することで所望の官能基の含有率とすることができる。
かかる官能基の含有率はポリビニルアルコール中、1モル%以上である。吸水倍率の観点から、1.5モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましい。含有率が低すぎると、吸水性を保持できなくなる。
コストおよび工程通過性や糸品位の観点から、官能基の含有率は20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、6モル%以下がさらに好ましい。
ポリビニルアルコール系繊維が2種以上のポリビニルアルコールから構成される場合、および他のポリマーを含有する場合、最終的に得られるポリビニルアルコール系繊維中に含まれる官能基の量が、上記範囲となるように各ポリビニルアルコールが含有する官能基の量を調整すればよい。
なお本発明の効果を損なわない範囲であれば、本発明に用いるポリビニルアルコールは、スルホン酸基、スルホネート基、マレイン酸基、イタコン酸基、アクリル酸基およびメタクリル酸基以外の官能基を含有してもよく、また他の成分により変性されていてもよい。他の官能基を含有する方法、または他の成分による変性の方法としては、アリルスルホン酸、ビニルピロリドン、エチレンなどの単量体と前記ビニルエステル単量体と共重合する方法が挙げられる。
本発明で用いるポリビニルアルコールの架橋度は0%である。架橋度が0%であれば繊維が水に不溶化することが少なく、例え不溶化しても廃棄には殆ど影響しない。
前記ポリビニルアルコールを用いて繊維とすることで架橋度が0%のポリビニルアルコール系繊維が得られる。架橋度を0%とする方法としては、架橋剤を用いない等の方法が挙げられる。
架橋度は以下の方法で測定できる。
測定サンプルと、サンプルに対し100倍質量の1N塩化ヒドロキシルアンモニウム水溶液を試験管に投入し密閉後、121℃で2時間溶解処理を行い、得られた溶解液に対し、0.1NのNaOH水溶液を1Nの塩化ヒドロキシルアンモニウム水溶液のpHになるまで滴定し、その滴定量から下記の式により架橋度を算出する。
架橋度(モル%)=〔中和アルカリ量(モル%)/(PVA質量(g)/44)〕×1/2
PVA質量:架橋度を測定するポリビニルアルコール系繊維の質量
本発明に用いられるポリビニルアルコールの重合度(粘度平均重合度)は、特に制限はないが、機械的強度および水溶解時の収縮とゲル化による繊維の不溶解化抑制の観点から、2400以下が好ましく、1800以下がより好ましい。重合度が大きすぎると、高温水での処理や長時間水に浸漬する必要が生じる場合がある。また、紡糸性の低下や繊維間膠着を抑制し、繊維および繊維構造体の機械的性能・品位の維持の観点から、重合度は500以上が好ましく、700以上がより好ましく、1000以上が特に好ましい。
本発明のポリビニルアルコール系繊維は30℃で生理食塩水に1時間浸漬の吸水倍率は5倍以上であることが好ましく、8倍以上がより好ましく、10倍以上がさらに好ましい。吸水倍率の上限値に特に制限はないが、50倍以下であってもよい。
生理食塩水は例えば0.01モル/Lのりん酸緩衝生理食塩水が挙げられる。ポリビニルアルコール系繊維を所定量、秤量し上記生理食塩水に1時間浸漬後、液を除去し、浸漬前後のポリビニルアルコール系繊維の重量変化率から下記式により吸水倍率を求めることができる。
吸水倍率(倍)=(B)/(A)
(A):浸漬前のポリビニルアルコール系繊維の質量
(B):浸漬後のポリビニルアルコール系繊維の質量
本発明のポリビニルアルコール系繊維の引張強度は3cN/dtex以上であり、4cN/dtex以上が好ましい。引張強度の上限値に特に制限はないが、25cN/dtex以下であってもよい。
ポリビニルアルコール系繊維の引張強度は後述する繊維の製造方法において、例えば延伸温度、延伸倍率等の延伸条件を制御することで所望の引張強度とすることができる。
本発明のポリビニルアルコール系繊維の生理食塩水中または水中での溶解温度は、水溶解性の観点から、80℃以下が好ましく、50℃以下がさらに好ましい。生理食塩水中または水中での溶解温度の下限値に特に制限はないが、0℃以上であってもよい。なお、ポリビニルアルコール系繊維の生理食塩水中または水中での溶解温度は、該繊維を構成するポリビニルアルコールの重合度、ケン化度、官能基の種類と含有率などによりコントロールすることができる。また水溶解時にゲル化して水溶性が低下するのを抑制し、高い水溶性を確保する点からは水溶解時の収縮率が小さいものが好ましく、具体的には水溶解時の最大収縮率(水中収縮率)が30%以下、特に10%以下の繊維が好ましい。
本発明のポリビニルアルコール系繊維のケン化度は95モル%以上が好ましい。ケン化度が上記未満の場合、得られるポリビニルアルコール、およびそれから得られるポリビニルアルコール系繊維の機械的強度が劣る場合があり、例えば包装体とした時に実用性に劣る場合がある。またケン化度は通常、100モル%以下であり、好ましくは99.5モル%以下であり、さらに好ましくは98モル%以下である。
上述したように、本発明のポリビニルアルコール系繊維は1種でも2種以上のポリビニルアルコールを含有していてもよい。ポリビニルアルコールが1種の場合は、上記範囲内のケン化度を有するポリビニルアルコールを用いて後述するような方法で紡糸し、目的とするポリビニルアルコール系繊維とすることができる。
2種以上のポリビニルアルコールを用いる場合、各ポリビニルアルコールのケン化度に加成性が成り立つので、予め各ポリビニルアルコールのケン化度を測定等により求めておき、下記式(1)により得られるポリビニルアルコール系繊維全体のケン化度を求め、得られたケン化度が上記範囲内となるように用いるポリビニルアルコールの配合量を調整すればよい。
ポリビニルアルコールのケン化度は、通常、JIS K 6726記載の方法により求めることができる。
[数1]
ポリビニルアルコール系繊維のケン化度(モル%)=Σ(ni×Mi)/100 (1)
ni:各ポリビニルアルコールのケン化度(モル%)
なおポリビニルアルコール系繊維がポリビニルアルコール以外の他のポリマーを含む場合は、上記式(1)においてポリビニルアルコール以外の他のポリマーについてMiにポリビニルアルコール以外の他のポリマーの割合を、niに0(ゼロ)を代入すればよい。
本発明のポリビニルアルコール系繊維は、水溶解性の観点から、結晶化度は50%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。また繊維化および機械的強度の観点から、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。
結晶化度はポリビニルアルコール系繊維を構成するポリビニルアルコールの重合度、ケン化度、官能基の種類と含有率などによりコントロールすることができる。
本発明のポリビニルアルコール系繊維が2種類以上のポリビニルアルコールから構成される場合、かかるポリビニルアルコール系繊維としては、
(1)スルホン酸基、スルホネート基、マレイン酸基、イタコン酸基、アクリル酸基およびメタクリル酸基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有するポリビニルアルコール(以下ポリビニルアルコール(A)と称する場合がある)の2種以上から構成されるポリビニルアルコール系繊維、
(2)ポリビニルアルコール(A)と上記官能基を有さないポリビニルアルコール(以下ポリビニルアルコール(B)と称する場合がある)から構成されるポリビニルアルコール系繊維
等が挙げられる。
またポリビニルアルコール以外のポリマーを含む場合、例えば、
(3)ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)とポリビニルアルコール以外のポリマーとから構成されるポリビニルアルコール系繊維、またはポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール以外のポリマーとから構成されるポリビニルアルコール系繊維
等が挙げられる。
上記(1)において、複数種のポリビニルアルコール(A)は官能基の種類、含有率、ケン化度、重合度のうち少なくとも1種が異なる。また(2)において、ポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール(B)のケン化度、重合度は異なっていても同じでもよい。
ポリビニルアルコール(A)としては、スルホン酸基、スルホネート基、マレイン酸基、イタコン酸基、アクリル酸基およびメタクリル酸基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を少なくとも1モル%有している。上記官能基の量は2モル%以上がさらに好ましい。また上記官能基の量は、通常、20モル%以下である。
ポリビニルアルコール(A)の重合度は、上述同様、2400以下が好ましく、1800以下がより好ましい。また、重合度は500以上が好ましく、700以上がより好ましく、1000以上が特に好ましい。
なお、本発明のポリビニルアルコール系繊維には上記以外に、通常用いられる他の添加剤を添加してもよい。添加する場合、ポリビニルアルコール系繊維中のポリビニルアルコールは60質量%以上、特に70から99質量%であるのが好ましい。
本発明のポリビニルアルコール系繊維を製造するに際しては、まず上記要件を満たすポリビニルアルコールを含む紡糸原液を調製する。紡糸原液を構成する溶媒は水であってもかまわないが、機械的性能および寸法安定性が高く断面が略円形で均質な繊維が得られること、さらに紡糸原液構成溶媒を水とした場合に比して水中溶解温度を低くできることから、紡糸原液構成溶媒を有機溶媒とするのが好ましい。
有機溶媒は、例えばジメチルスルホキシド(以下DMSOと略記)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどの極性溶媒やグリセリン、エチレングリコールなどの多価アルコール類、およびこれらとロダン塩、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛などの膨潤性金属塩の混合物、更にはこれら溶媒同士、あるいはこれら溶媒と水との混合物などが例示される。とりわけDMSOが低温溶解性、低毒性、低腐食性などの点で最も好ましい。
紡糸原液中のポリマー濃度は、組成、重合度、溶媒によって異なるが、8から40質量%の範囲が一般的である。紡糸原液構成溶媒が有機溶媒の場合、溶解は窒素置換後減圧下で撹拌しながら行うのが、酸化、分解、架橋反応等の防止および発泡抑制の点で好ましい。紡糸原液の吐出時の液温としては50から150℃の範囲で、原液がゲル化したり分解・着色しない範囲とすることが好ましい。
本発明のポリビニルアルコール系繊維が、ポリビニルアルコールから構成される場合、上記溶媒を用いてポリビニルアルコールの紡糸原液を調整する。ポリビニルアルコール系繊維が、2種以上のポリビニルアルコールから構成される場合、紡糸原液を調整する際、予め2種以上のポリビニルアルコールを混合し、上記溶媒を用いて紡糸原液としてもよいし、上記溶媒を用いてそれぞれのポリビニルアルコールを含む液をそれぞれ調整し、その後、各液を混合して紡糸原液としてもよい。
上記のように調整した紡糸原液を紡糸することで、本発明のポリビニルアルコール系繊維を製造することができる。紡糸方法は特に限定されず、例えば乾式紡糸法、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法が例示される。なかでも生産性が高いことなどから湿式紡糸または乾湿式紡糸により紡糸するのが好ましく、ポリビニルアルコールに対して固化能を有する固化液に吐出すればよい。特に多ホールから紡糸原液を吐出する場合には、吐出時の繊維同士の膠着を防ぐ点から乾湿式紡糸法よりも湿式紡糸法の方が好ましい。なお、湿式紡糸法とは、紡糸口金から直接に固化浴に紡糸原液を吐出する方法のことであり、一方、乾湿式紡糸法とは、紡糸口金から一旦、空気や不活性ガス中に紡糸原液を吐出し、それから固化浴に導入する方法のことである。なお、本発明でいう固化とは、流動性のある紡糸原液が流動性のない固体に変化することをいい、原液組成が変化せずに固化するゲル化と原液組成が変化して固化する凝固の両方を包含する。
紡糸原液構成溶媒が水である場合には、例えば飽和芒硝水溶液を固化液として吐出すればよく、紡糸原液構成溶媒が有機溶媒である場合には、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどの脂肪酸エステル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族類やこれらの2種以上の混合物を固化液として吐出すればよい。繊維内部まで十分に固化させるために、固化溶媒に紡糸原液構成溶媒を混合したものを用いるのが好ましく、固化溶媒/原液溶媒の混合質量比は95/5から40/60が好ましく、90/10から50/50がさらに好ましく、85/15から55/45が最も好ましい。また固化浴に原液溶媒を混合することにより、固化能を調整すると共に原液溶媒と固化溶媒の分離回収コストの低下をはかることができる。固化浴の温度に限定はないが、紡糸原液構成溶媒が有機溶媒の場合、固化は通常固化浴温度が-15から30℃の間で行う。均一固化および省エネルギーの点からは、固化浴温度が-10から20℃が好ましく、-5から15℃がさらに好ましく、0から10℃が特に好ましい。固化浴の温度がこの温度範囲外の場合、得られる繊維の引張強度が低下する場合がある。紡糸原液が高温に加熱されている場合には、固化浴温度を低く保つためには、固化浴を冷却するのが好ましい。
次いで固化浴から離浴後の繊維を必要に応じて湿延伸すればよい。繊維の機械的性能、膠着防止の点からは1.5から7倍、特に2.5から5.5倍の湿延伸を施すのが好ましく、糸篠の膠着抑制のため、毛羽の出ない範囲で湿延伸倍率を大きくすることが好ましい。湿延伸倍率を大きくするためには、抽出工程中において2段以上の多段に分けて湿延伸を行うことが有効である。
なお紡糸原液構成溶媒が有機溶媒の場合、固化溶媒を主体とする抽出浴に接触させて糸篠から原液溶媒を抽出除去するのが好ましい。また湿延伸と抽出を同工程で行ってもかまわない。この抽出処理は、純粋な固化溶媒を糸篠の走行方向に対して向流方向で連続的に流すことにより抽出浴での滞留時間を短縮できる。この抽出処理により、糸篠中に含まれている紡糸原液溶媒の量を糸篠質量の1質量%以下、特に0.1質量%以下にすることができるので、このような方法が好ましい。接触させる時間としては5秒以上、特に15秒以上が好ましい。抽出速度を高め、抽出を向上させるためには、抽出浴中で糸篠をばらけさせることが好ましい。また乾燥に先立って、ポリビニルアルコールに対して固化能の大きい溶剤、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類に置換したり、鉱物油系、酸化ポリエチレン系、シリコン系、フッ素系などの疎水性油剤を溶液状またはエマルジョン状で付着させたり、乾燥時の収縮応力を緩和させるために収縮させることも膠着防止に有効である。
次いで、繊維を好ましくは180℃以下で乾燥すればよく、さらに乾熱延伸することにより繊維の機械的性能を高めることができる。乾熱処理条件はポリビニルアルコールの性状、特に融点や所望の水中溶解温度に応じて適宜選定できるが、乾熱延伸の延伸倍率は1.1から10倍程度とするのが好ましく、乾熱延伸温度は100から220℃とするのが好ましい。工程通過性と乾熱延伸および/または乾熱処理の効果の点で120から200℃、特に140から180℃であるとさらに好ましい。繊維間膠着を抑制して効率的に延伸を行う点からは、乾熱延伸を2倍以上の多段で行うのが好ましく、特に昇温での多段延伸を行うのが好ましい。
得られるポリビニルアルコール系繊維の結晶化度の観点から、上記の乾燥、延伸、熱処理工程のいずれかの工程で、総延伸倍率を3倍以上とすることが好ましい。
本発明のポリビニルアルコール系繊維の単繊維の繊度は特に限定されないが、0.1から1000dtex、特に0.2から100dtex、さらに0.5から10dtex程度のものが広く使用できる。繊維の繊維長は用途に応じて適宜設定すればよいが、例えば紙や紡績糸に加工する場合には、繊維長を1から100mm程度とするのが好ましい。またポリビニルアルコール系繊維の横断面形状に特別な限定はないが、複雑な形状よりもシンプルな実質的に円形の繊維が水分散性、製品の均質性などの点から好ましい。
本発明のポリビニルアルコール系繊維は機械的性能等の諸性能に優れるものであり、該繊維を用いることによりあらゆる繊維構造体が得られる。例えば、カットファイバー、フィラメント、紡績糸、織編物または乾式不織布等の布帛、ロープ、紐状物等の繊維構造体に加工できる。なかでも機械的性能、柔軟性などに優れていることから、布帛、特に不織布、なかでも乾式不織布とするのがより好ましい。またかかる布帛を所望形状に成形してもかまわない。このとき、他の繊維を併用してもよいが、本発明の効果を効率的に得る点からは、繊維構造体の40質量%以上、さらに60質量%以上、特に80から100質量%を本発明のポリビニルアルコール系繊維とするのが好ましい。なお他の繊維とは水溶性繊維、非水溶性繊維および本発明以外のポリビニルアルコール系繊維を包含する。また金属またはフィルム等他の素材と併用してもかまわない。
本発明のポリビニルアルコール系繊維および該繊維構造体はあらゆる用途に使用できるが、吸水倍率が高いことから、創傷被覆材、石鹸、洗剤、漂白剤等の包装材、ガラス不織布とのソルトフリーバインダー、紙おむつの部材に特に好適に使用できる。
本発明の繊維構造体を創傷被覆材に用いる場合、機械的性能、柔軟性、保水性、包装性能等の観点から、少なくとも布帛を使用するのが好ましい。かかる布帛の目付は、機械的性能、保水性能の点からは50g/m以上、特に100g/m以上であるのが好ましく、生産効率、柔軟性の点からは300g/m以下、さらに200g/m以下であるのが好ましい。また機械的性能の点からは、布帛の裂断長は5N/25cm以上であるのが好ましい。
本発明の繊維構造体を包装材に用いる場合、機械的性能、柔軟性、保水性、包装性能等の観点から、少なくとも布帛を使用するのが好ましい。特に製造工程性、コスト、水中溶解性等の点からは不織布であるのがより好ましい。かかる布帛の目付は、機械的性能、包装性能の点からは10g/m以上、特に40g/m以上であるのが好ましく、生産効率、柔軟性の点からは80g/m以下、さらに60g/m以下であるのが好ましい。また機械的性能の点からは、布帛の裂断長は5N/25cm以上であるのが好ましい。
かかる布帛の製造方法は特に限定されないが、風合、柔軟性等の点から繊維ウエブを処理して得られる乾式不織布とするのが好ましい。乾式不織布の製造方法として、例えば、ポリビニルアルコール系繊維のフィラメント等を摩擦帯電による反発作用によって開繊したり、捲縮、カットしたステープルなどをカードなどで開繊してウエブを形成し、これを面積圧着率10から50%、特に好ましくは10から30%、すなわち不織布表面積の10から50%、特に好ましくは10から30%、を熱エンボスローラーで熱圧着する方法が好適に挙げられる。不織布の一部を熱圧着処理することにより、不織布の風合、柔軟性および水溶解性を損なうことなく機械的性能および形態安定性を高めることができる。風合、水溶解性などの点からは各熱圧着部の面積は4cm以下、特に2cm以下、さらに1cm以下であるのが好ましく、不織布の機械的性能の点からは1mm以上であるのが好ましい。熱圧着温度は例えば120から230℃程度、圧力は1から6MPa程度とすればよい。なお本発明のポリビニルアルコール系繊維は乾熱処理により接着能を発現することから、かかるエンボス処理により繊維間を接合して効率的に不織布の機械的性能を高めることができ、また熱圧着処理により容易に所望の形状に成形することもできる。例えば袋状、箱状などの所望の形状に成形すればよい。包装材としては袋状のものが好適に使用できる。例えば1辺3から10cm程度の袋状物とすればよい。
また乾式不織布の別な製造方法として、例えば、ニードルパンチ加工により交絡処理して不織布を作製する方法が挙げられる。この場合、公知のニードルパンチ機を使用し、繊維の性状に応じ、針密度、ニードル種類、ニードル深度、パンチ数といった条件を調整することで強度と柔軟性に優れた乾式不織布を作製することができる。必要に応じて、複数のニードルパンチ機を通して交絡を最適化してもよい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
[重合度]
JIS K 6726に準拠し、30℃の水溶液の極限粘度[η]の測定値から、下記式(1)によって算出した。なお、Pはポリビニルアルコールの平均重合度である。
logP=1.613・log([η]×10/8.29) (1)
[ケン化度(モル%)]
JIS K 6726に準じて測定した。
[引張強度(cN/dtex)]
JIS L 1013に準じて測定した。
[ポリビニルアルコール系繊維の結晶化度]
メトラー社製示差走査熱量測定装置(DSC-20)を用い、繊維サンプル10mgを窒素下20℃/minの速度で昇温した際の、吸熱ピークにおける吸熱量ΔH(J/g)を測定し、ポリビニルアルコールの完全結晶融解熱である174.5J/gに対する割合から、下記式(2)によって、結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=ΔH(J/g)/174.5(J/g)×100 (2)
[繊維の水中溶解温度(℃)]
長さ2mmに切断した繊維0.02gを水中に保持し、水温を2℃/分の速度で昇温し、繊維が溶解した時点の温度を水中溶解温度とした。
[繊維の吸水倍率]
繊維を精秤し、30℃の生理食塩水(0.01モル/L りん酸緩衝生理食塩水)に1時間浸漬する。その後、10分間放置して液切りし、質量を測定した。生理食塩水に浸漬前の繊維の質量をA(g)、浸漬後の質量をB(g)とすると、吸水倍率は下記式により算出した。
吸水倍率(倍)=(B)/(A) (3)
[繊維の加工性]
公知の製造方法に従い繊維をローラーカード機で開繊してウエブを形成し、不織布に加工可能だったものを○、加工不可だったものを×とした。
[架橋度(モル%)]
エーテル結合を形成する架橋成分を導入したポリビニルアルコール系繊維において、測定サンプルと、サンプルに対し100倍質量の1N塩化ヒドロキシルアンモニウム水溶液を試験管に投入し、密閉した後、121℃で2時間溶解処理を行った。得られた溶解液に対し、0.1N NaOH水溶液を1N塩化ヒドロキシルアンモニウム水溶液のpHになるまで滴定し、その滴定量から下記の式により架橋度を算出した。
架橋度(モル%)=〔中和アルカリ量(モル%)/(PVA質量(g)/44)〕×1/2 (4)
[実施例1]
アクリル基を5.2モル%含有するアクリル酸メチルとの共重合体であるポリビニルアルコール共重合体(クラレ製「Elvanol80-18」)をDMSOに90℃で5時間、撹拌溶解し、ポリビニルアルコール濃度22質量%の紡糸原液を得た。この紡糸原液を孔数40000、孔径0.08mmφのノズルを通して10℃のメタノール/DMSO=80/20の固化浴中に湿式紡糸し、20℃のメタノール浴で3.0倍の湿熱延伸を施した。ついで、メタノールで糸篠中のDMSOを抽出した後に紡糸油剤を付与し140℃で乾燥し、得られた乾燥原糸を160℃で乾熱延伸倍率2.0倍(総延伸倍率TD=6.0倍)の条件で乾熱延伸を施した。ついで、160℃で乾熱収縮率1%の条件で乾熱収縮をしてポリビニルアルコール系保水繊維を製造した。得られた繊維の吸水倍率、引張強度、水中溶解温度を測定した結果を表1に示す。
[実施例2]
メタクリル酸基を2.5モル%含有するメタクリル酸メチルとの共重合体であるポリビニルアルコール共重合体(クラレ製「ElvanolT-25」)をDMSOに90℃で5時間、撹拌溶解し、ポリビニルアルコール濃度20質量%の紡糸原液を得た。この紡糸原液を孔数20、孔径0.15mmφのノズルを通して5℃のメタノール/DMSO=80/20の固化浴中に乾湿式紡糸し、20℃のメタノール浴で3.0倍の湿熱延伸を施した。ついで、メタノールで糸篠中のDMSOを抽出した後に紡糸油剤を付与し120℃で乾燥し、得られた乾燥原糸を180℃で乾熱延伸倍率2.0倍(総延伸倍率TD=6.0倍)の条件で乾熱延伸を施した。ついで、180℃で乾熱収縮率1%の条件で乾熱収縮をしてポリビニルアルコール系保水繊維を製造した。得られた繊維の吸水倍率、引張強度、水中溶解温度を測定した結果を表1に示す。
[実施例3]
マレイン酸基を4.0モル%含有するマレイン酸モノメチルとの共重合体であるポリビニルアルコール共重合体(クラレ製「K-5112」)をDMSOに90℃で5時間、撹拌溶解し、ポリビニルアルコール濃度25質量%の紡糸原液を得た。この紡糸原液を孔数80、孔径0.12mmφのノズルを通して5℃のメタノール/DMSO=80/20の固化浴中に乾湿式紡糸し、20℃のメタノール浴で3.0倍の湿熱延伸を施した。ついで、メタノールで糸篠中のDMSOを抽出した後に紡糸油剤を付与し120℃で乾燥し、得られた乾燥原糸を180℃で乾熱延伸倍率2.0倍(総延伸倍率TD=6.0倍)の条件で乾熱延伸を施した。ついで、180℃で乾熱収縮率1%の条件で乾熱収縮をしてポリビニルアルコール系保水繊維を製造した。得られた繊維の吸水倍率、引張強度、水中溶解温度を測定した結果を表1に示す。
[実施例4]
スルホン酸基を2.0モル%含有する2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体であるポリビニルアルコール共重合体をDMSOに90℃で5時間、撹拌溶解し、ポリビニルアルコール濃度21質量%の紡糸原液を得た。この紡糸原液を孔数30000、孔径0.07mmφのノズルを通して5℃のメタノール/DMSO=85/15の固化浴中に乾湿式紡糸し、20℃のメタノール浴で3.0倍の湿熱延伸を施した。ついで、メタノールで糸篠中のDMSOを抽出した後に紡糸油剤を付与し165℃で乾燥し、得られた乾燥原糸を180℃で乾熱延伸倍率2.67倍(総延伸倍率TD=8.0倍)の条件で乾熱延伸を施した。ついで、180℃で乾熱収縮率1%の条件で乾熱収縮をしてポリビニルアルコール系保水繊維を製造した。得られた繊維の吸水倍率、引張強度、水中溶解温度を測定した結果を表1に示す。
[実施例5]
イタコン酸基を1.5モル%含有するイタコン酸との共重合体であるポリビニルアルコール共重合体(クラレ製「KL-118」)をDMSOに90℃で5時間、撹拌溶解し、ポリビニルアルコール濃度25質量%の紡糸原液を得た。この紡糸原液を孔数80、孔径0.12mmφのノズルを通して5℃のメタノール/DMSO=80/20の固化浴中に乾湿式紡糸し、20℃のメタノール浴で3.0倍の湿熱延伸を施した。ついで、メタノールで糸篠中のDMSOを抽出した後に紡糸油剤を付与し120℃で乾燥し、得られた乾燥原糸を160℃で乾熱延伸倍率2.0倍(総延伸倍率TD=6.0倍)の条件で乾熱延伸を施した。ついで、160℃で乾熱収縮率1%の条件で乾熱収縮をしてポリビニルアルコール系保水繊維を製造した。得られた繊維の吸水倍率、引張強度、水中溶解温度を測定した結果を表1に示す。
[比較例1]
スルホン酸基、スルホネート基、マレイン酸基、イタコン酸基、アクリル酸基およびメタクリル酸基のいずれの官能基も有さないポリビニルアルコール(クラレ製「22-88」)をDMSOに90℃で5時間、撹拌溶解し、ポリビニルアルコール濃度22質量%の紡糸原液を得た。この紡糸原液を孔数40000、孔径0.08mmφのノズルを通して10℃のメタノール/DMSO=80/20の固化浴中に湿式紡糸し、20℃のメタノール浴で3.0倍の湿熱延伸を施した。ついで、メタノールで糸篠中のDMSOを抽出した後に紡糸油剤を付与し165℃で乾燥し、得られた乾燥原糸を160℃で乾熱延伸倍率2.0倍(総延伸倍率TD=6.0倍)の条件で乾熱延伸を施した。ついで、160℃で乾熱収縮率1%の条件で乾熱収縮をしてポリビニルアルコール系保水繊維を製造した。得られた繊維の吸水倍率、引張強度、水中溶解温度を測定した結果を表1に示す。
[比較例2]
アクリル酸基を0.5モル%含有するアクリル酸メチルとの共重合体であるポリビニルアルコール共重合体をDMSOに90℃で5時間、撹拌溶解し、ポリビニルアルコール濃度19質量%の紡糸原液を得た。この紡糸原液を孔数40000、孔径0.08mmφのノズルを通して10℃のメタノール/DMSO=80/20の固化浴中に湿式紡糸し、20℃のメタノール浴で3.0倍の湿熱延伸を施した。ついで、メタノールで糸篠中のDMSOを抽出した後に紡糸油剤を付与し165℃で乾燥し、得られた乾燥原糸を160℃で乾熱延伸倍率2.0倍(総延伸倍率TD=6.0倍)の条件で乾熱延伸を施した。ついで、160℃で乾熱収縮率1%の条件で乾熱収縮をしてポリビニルアルコール系保水繊維を製造した。得られた繊維の吸水倍率、引張強度、水中溶解温度を測定した結果を表1に示す。
[比較例3]
イタコン酸基を0.5モル%含有するイタコン酸との共重合体であるポリビニルアルコール共重合体を水に90℃で5時間、撹拌溶解し、ポリビニルアルコール濃度19質量%の紡糸原液を得た。この紡糸原液を孔数1000、孔径0.08mmφのノズルを通して40℃の飽和硫酸ナトリウムの固化浴中に湿式紡糸し、形成した糸篠は2.0倍の湿熱延伸を施した後に紡糸油剤を付与した。ついで、糸篠中の水を130℃で乾燥し、ポリビニルアルコール系繊維を製造した。得られた繊維の吸水倍率、引張強度、水中溶解温度を測定した結果を表1に示す。
[比較例4]
イタコン酸基を1.0モル%含有するイタコン酸との共重合体であるポリビニルアルコール共重合体を架橋剤であるグルタルアルデヒドが2g/L添加された水に90℃で5時間、撹拌溶解し、ポリビニルアルコール濃度15質量%の紡糸原液を得た。この紡糸原液を孔数15000、孔径0.16mmφのノズルを通して飽和芒硝水溶液からなる酸性凝固浴中に紡出し、凝固および架橋を行った。さらに得られた糸篠をローラードラフト3.0倍で湿熱延伸した後水洗し、さらに130℃にて乾燥した後170℃にて延伸倍率2.0倍の乾熱延伸を施した。ついで、170℃で乾熱収縮率1%の条件で乾熱収縮をして架橋度0.07モル%のポリビニルアルコール系繊維を製造した。得られた繊維の吸水倍率、引張強度、水中溶解温度を測定した結果を表1に示す。
[比較例5]
エチレン基を5.0モル%含有するエチレン-ビニルアルコール共重合体を水に90℃で5時間、撹拌溶解し、ポリビニルアルコール濃度19質量%の紡糸原液を得た。この紡糸原液を孔数1000、孔径0.08mmφのノズルを通して40℃の飽和硫酸ナトリウムの固化浴中に湿式紡糸し、形成した糸篠は2.0倍の湿熱延伸を施した後に紡糸油剤を付与した。ついで、糸篠中の水を130℃で乾燥し、ポリビニルアルコール系繊維を製造した。得られた繊維の吸水倍率、引張強度、水中溶解温度を測定した結果を表1に示す。
上記表1から明らかなように、本発明のポリビニルアルコール系繊維は吸水性に優れるとともに水溶解性能と機械的強度に優れる。
本発明のビニルアルコール系繊維を少なくとも一部に含む繊維構造体は創傷被覆材、石鹸、洗剤、漂白剤等の包装材、ガラス不織布とのバインダー、紙おむつとして好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. スルホン酸基、スルホネート基、マレイン酸基、イタコン酸基、アクリル酸基およびメタクリル酸基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を1モル%以上含有し、架橋度が0%であり、引張強度が3cN/dtex以上であるポリビニルアルコール系繊維。
  2. 30℃で生理食塩水に1時間浸漬後の吸水倍率が5倍以上である、請求項1に記載のポリビニルアルコール系繊維。
  3. 生理食塩水中または水中での溶解温度が80℃以下である、請求項1または請求項2に記載のポリビニルアルコール系繊維。
  4. ケン化度が95モル%以上である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系繊維。
  5. 結晶化度が20から50%である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系繊維。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系繊維を少なくとも一部に含む繊維構造体。
  7. スルホン酸基、スルホネート基、マレイン酸基、イタコン酸基、アクリル酸基およびメタクリル酸基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を1モル%以上含有するポリビニルアルコールを含有する紡糸原液をポリビニルアルコールに対して固化能を有する有機溶媒を主体とする固化浴に湿式または乾湿式紡糸し、乾燥、延伸、熱処理のいずれかの工程で、全工程における総延伸倍率を3倍以上とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のポリビニルアルコール系繊維の製造方法。

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