JP2024082979A - Abs樹脂組成物およびabs樹脂用樹脂改質材 - Google Patents

Abs樹脂組成物およびabs樹脂用樹脂改質材 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、得られる成形体の常温衝撃強度等の機械的物性が改善されたABS樹脂組成物、ならびにABS樹脂の機械的物性を改善し得る樹脂改質材を提供することを課題としている。【解決手段】ABS樹脂(A)を60~99質量部、ポリオレフィンがカルボジイミド基含有モノマーでグラフト変性された、変性ポリオレフィン(B)を1~40質量部(ただし、ABS樹脂(A)と変性ポリオレフィン(B)の合計を100質量部とする)含有する樹脂組成物であって、前記変性ポリオレフィン(B)100g当たりの、グラフトされたカルボジイミド基含有モノマー量が、0.1mmol以上30mmol以下である、ABS樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ABS樹脂組成物、および、ABS樹脂の改質に好適な樹脂改質材に関する。
熱可塑性樹脂は、種々の方法により成形され、多方面の用途に供されており、中でもABS系樹脂は、三種のモノマーから構成された熱可塑性樹脂であって、バランスのよい特性を有し、一般にポリオレフィン系樹脂等より耐衝撃性に優れ、表面強度も高い傾向があることから、家電製品、自動車、家具、建材などの部材等、幅広い用途に用いられ、特に耐衝撃性や表面強度の求められる用途への利用が期待される。しかしながら、用途によっては耐衝撃性等の機械的特性のさらなる改善が求められている。
熱可塑性樹脂の強度や剛性などの機械的物性を改良する方法としては、従来より、ポリオレフィン系の改質材を加えることが試みられている。
たとえばポリエステル樹脂の機械的物性の改良について、引用文献1には、エラストマーからなるコアと熱可塑性樹脂からなるシェルとを有するコア-シェルコポリマーと、エチレン・不飽和無水カルボン酸コポリマーなどのエチレンコポリマーとからなる衝撃改質材を、熱可塑性ポリエステルに添加して、耐衝撃性を改良することが提案されている。また引用文献2には、脂肪族ポリエステル樹脂(A)に対して、ポリオレフィン系樹脂(B)およびエステル形成性官能基を有するポリオレフィン系樹脂(C)をブレンドすることにより、脂肪族ポリエステル樹脂の耐熱性、機械的物性を改良することが提案されている。
また、ABS樹脂などのゴム強化スチレン系樹脂の耐薬品性を改善する目的で、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂とブレンドした樹脂組成物を得ることが従来より試みられているが、両樹脂は相溶性が乏しく、単に混合した樹脂組成物では層状剥離を起こす問題があることから、ゴム強化スチレン系樹脂およびオレフィン系樹脂に、α,β-不飽和カルボン酸変性オレフィン系樹脂、α,β-不飽和カルボン酸変性スチレン系樹脂、およびその他の熱可塑性樹脂を組み合わせて添加し、ゴム強化スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂の特長を併せ持つ樹脂組成物を得ることが提案されている(特許文献3~5参照)。しかしながらこれらの技術では、ABS樹脂の機械的物性を向上させることは困難であった。
特開2001-181484号公報 特開2007-326961号公報 特開2003-335903号公報 特開2005-281531号公報 特開2004-300322号公報
本発明は、得られる成形体の常温衝撃強度等の機械的物性が改善されたABS樹脂組成物、ならびにABS樹脂の機械的物性を改善し得る樹脂改質材を提供することを課題としている。
本発明者は、鋭意研究の結果、ABS樹脂に対して特定の変性ポリオレフィンを用いた場合に上記課題を解決し得ることを見出して、本発明を完成するに至った。本発明は、例えば、以下の〔1〕~〔5〕の事項に関する。
〔1〕
ABS樹脂(A)を60~99質量部、
ポリオレフィンがカルボジイミド基含有モノマーでグラフト変性された、変性ポリオレフィン(B)を1~40質量部(ただし、ABS樹脂(A)と変性ポリオレフィン(B)の合計を100質量部とする)
含有する樹脂組成物であって、
前記変性ポリオレフィン(B)100g当たりの、グラフトされたカルボジイミド基含有モノマー量が、0.1mmol以上30mmol以下である、ABS樹脂組成物。
〔2〕
前記カルボジイミド含有モノマーが、下記式(1)または下記式(2)で表される化合物である、〔1〕に記載のABS樹脂組成物。
[式(1)および式(2)中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は、置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基である。式(2)中のlは2以上の整数である。]
〔3〕
前記ポリオレフィンが、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体またはプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体である、〔1〕または〔2〕に記載のABS樹脂組成物。
〔4〕
前記ポリオレフィンが、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとをランダム共重合させたエチレン・α-オレフィンランダム共重合体、またはプロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとをランダム共重合させたプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体であり、かつ、密度が860~930kg/mである、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のABS樹脂組成物。
〔5〕
ポリオレフィンがカルボジイミド基含有モノマーでグラフト変性された、変性ポリオレフィン(B)からなる、ABS樹脂用の樹脂改質材。
本発明によれば、高い常温衝撃強度と優れた伸び性とを有する成形体を得ることができる、ABS樹脂組成物、およびABS樹脂用の樹脂改質材を提供することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。
<ABS樹脂組成物>
本発明のABS樹脂組成物は、ABS樹脂(A)と、変性ポリオレフィン(B)とを含む。
ABS樹脂(A)
本発明で用いるABS樹脂(A)は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂のみならず、ブタジエンを含む単量体から作られたゴム成分に、芳香族ビニル、シアン化ビニルを含む単量体をグラフト重合して得られたグラフト共重合体、及び芳香族ビニル、シアン化ビニルと共重合可能な他の単量体から製造される共重合体を含む樹脂である。ここでゴム成分は従来公知の溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等で製造されたものである。また、このゴムと上記グラフト重合体或いはこのゴムとの共重合体は、従来公知の溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等のいずれの方法で製造されたものも使用可能であり、市場で容易に入手できる。
ABS樹脂(A)の具体例としては、日本エイアンドエル(株)製のクララスチック、テクノUMG(株)製のTECHNOABSやUMG ABS、東レ(株)製のトヨラック、デンカ(株)製のデンカABSなどの市販品が挙げられる。
ABS樹脂(A)の密度(ISO 1183にて測定)は、好ましくは1000~1070kg/m3であり、より好ましくは1001~1060kg/m3であり、より好ましくは1002~1055kg/m3である。
ABS樹脂(A)のMFR(ISO 1133にて測定、220℃)は、好ましくは5~30g/10分であり、より好ましくは7~27g/10分であり、より好ましくは10~25g/10分である。
ABS樹脂(A)は1種単独で使用してもよく、2種以上の共重合体を混合して使用してもよい。例えばMFR調整の為に2種以上の共重合体を混合して使用することもできる。
変性ポリオレフィン(B)
本発明で用いる変性ポリオレフィン(B)は、ポリオレフィンがカルボジイミド基含有モノマーでグラフト変性された、グラフト変性体である。
変性ポリオレフィン(B)は、ポリオレフィンから選ばれる少なくとも1種のベースポリマーの、カルボジイミド基と重合性二重結合とを有するカルボジイミド基含有モノマーによるグラフト変性体であり、換言すれば、ポリオレフィンから選ばれる少なくとも1種のベースポリマーが、カルボジイミド基と重合性二重結合とを有するカルボジイミド基含有モノマーでグラフト変性された、グラフト変性体である。また変性ポリオレフィン(B)は、ポリオレフィンから選ばれる少なくとも1種のベースポリマー部分と、カルボジイミド基と重合性二重結合とを有するカルボジイミド基含有モノマーに由来するグラフト部分とを含むグラフト変性体であるともいえる。
本発明のABS樹脂組成物中において、変性ポリオレフィン(B)のグラフト部分のカルボジイミド基は、ABS樹脂(A)中の基と反応するかまたは極性引力により結合することから、変性ポリオレフィン(B)はABS樹脂(A)中に高度に分散し、常温衝撃強度を高度に向上する効果をもたらすと考えられる。また変性ポリオレフィン(B)が、オレフィン系モノマーとカルボジイミド基含有モノマーとのブロック共重合体やランダム共重合体ではなく、ベースポリマーであるポリオレフィンのグラフト変性体であるため、前記効果を奏すると考えられる。
変性ポリオレフィン(B)100g当たりの、グラフトされたカルボジイミド基含有モノマー量は、0.1mmol以上30mmol以下、好ましくは0.5mmol以上25mmol以下、より好ましくは1.0mmol以上20mmol以下、さらに好ましくは5.0mmol以上20mmol以下である。変性ポリオレフィン(B)が、このような量でカルボジイミド基含有モノマーをグラフトしたものであると、ABS樹脂(A)の常温衝撃強度を高度に向上する効果、ならびに熱劣化を抑制する効果を十分に得ることができる。
変性ポリオレフィン(B)100g当たりの、グラフトされたカルボジイミド基含有モノマー量は、1H-NMR測定によるピーク強度比から求めることができ、具体的には後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
・カルボジイミド基含有モノマー
ベースポリマーであるポリオレフィンをグラフト変性する際に用いられるカルボジイミド基含有モノマーは、カルボジイミド基と重合性二重結合とを有する化合物であれば特に制限されないが、本発明の効果がより発揮される等の点から、下記式(1)または(2)で表される化合物であることが好ましい。
ベースポリマーであるポリオレフィンをグラフト変性する際に用いられるカルボジイミド基含有モノマーは、2種以上であってもよいが、通常1種である。
[式(1)および式(2)中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は、置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基である。式(2)中のlは2以上の整数である。]
式(1)中において、R1は水素原子またはメチル基であるが、グラフト率の高い変性ポリオレフィン(B)を容易に得ることができる等の点からは、水素原子が好ましい。
前記式(1)中、R2は置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基である。該置換基を有してもよいアルキル基は、鎖状(直鎖であってもよく、分岐を有していてもよい)であってもよいし、脂環を含んでいてもよい。
前記置換基を有してもよいアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。また、前記置換基を有してもよいアリール基の炭素数は、好ましくは6以上20以下、より好ましくは6以上12以下である。
アルキル基またはアリール基が有していてもよい前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~8の炭化水素基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のカルボン酸エステル基、炭素数1~8のスルホン酸エステル基、炭素数1~8のカルボニル基、炭素数1~8のアミド基、炭素数1~8のアミノ基、炭素数1~8のスルフィド基、炭素数1~8のリン酸エステル基、炭素数1~8のアルキルシリル基、炭素数1~8のアルコキシシリル基が挙げられる。
これらの中でも、前記式(1)中のR2としては、カルボジイミド基含有モノマーの溶解性、入手しやすさ、得られるグラフト変性体の精製のしやすさ等の点から、脂環を含んでもよい炭素数4~20のアルキル基であることが好ましく、脂環を含んでもよい炭素数4~7のアルキル基であることがより好ましい。
前記脂環としては、例えば、シクロブチル環、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、シクロヘプチル環等が挙げられる。また、前記脂環は、アダマンチル環、メチルアダマンチル環などの多環式の環であってもよい。
式(2)中において、R1は水素原子またはメチル基であるが、グラフト率の高い変性
ポリオレフィン(B)を容易に得ることができる等の点からは、メチル基が好ましい。
式(2)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基である。該置換基を有してもよいアルキル基は、鎖状(直鎖であってもよく、分岐を有していてもよい)であってもよいし、脂環を含んでいてもよい。
前記置換基を有してもよいアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。また、前記置換基を有してもよいアリール基の炭素数は、好ましくは6以上20以下、より好ましくは6以上12以下である。
アルキル基またはアリール基が有していてもよい前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~8の炭化水素基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のカルボン酸エステル基、炭素数1~8のスルホン酸エステル基、炭素数1~8のカルボニル基、炭素数1~8のアミド基、炭素数1~8のアミノ基、炭素数1~8のスルフィド基、炭素数1~8のリン酸エステル基、炭素数1~8のアルキルシリル基、炭素数1~8のアルコキシシリル基が挙げられる。
これらの中でも、前記式(2)中のR2としては、特にABS樹脂(A)に対する分散性に優れる変性ポリオレフィン(B)を容易に得ることができる等の点から、分岐を有し、かつ、環を有さないアルキル基であることが好ましく、分岐を有し、かつ、環を有さない炭素数3~7のアルキル基であることがより好ましい。
前記分岐を有し、かつ、環を有さないアルキル基の好適例としては、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、1-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、2-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、3-メチルペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、4-メチルペンチル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,1,2―トリメチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1-メチルヘキシル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、1,2,3-トリメチルブチル基、1,2,2-トリメチルブチル基、1,3,3-トリメチルブチル基、2-メチルヘキシル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルブチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,1,2-トリメチルブチル基、1,1,3-トリメチルブチル基、1,1,2,2-テトラメチルプロピル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、3-メチルヘキシル基、3,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、1-エチルペンチル基、1-エチル-2-メチルブチル基、1-エチル-3-メチルブチル基、1-エチル-2,2-ジメチルプロピル基、2-エチルペンチル基、2-エチル-3-メチルブチル基、1-エチル-1-メチルブチル基、1-エチル-1,2-ジメチルプロピル基、3-エチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジエチルプロピル基、1-プロピルブチル基、ジイソプロピルメチル基、1-イソプロピルブチル基が挙げられる。
式(2)中、lは2以上の整数であり、カルボジイミド基含有モノマーの溶解性、入手しやすさ、得られる変性ポリオレフィン(B)の精製のしやすさ等の点から、好ましくは2~6の整数であり、より好ましくは2~4の整数であり、特に好ましくは2である。
<ポリオレフィン>
前記カルボジイミド基含有モノマーでグラフト変性される前のベースポリマーとして用いられるポリオレフィンは、オレフィンから導かれる構造単位を有する。
該オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテンが挙げられる。
前記ポリオレフィンは、これらのオレフィンの単独重合体であってもよく、2種以上のこれらのオレフィンの共重合体であってもよく、1種以上のこれらのオレフィンと、オレフィンと共重合可能な1種以上のコポリマーとの共重合体であってもよい。これらの中でも、前記ポリオレフィンとしては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体から選ばれる少なくとも1種のポリマーであることが好ましく、グラフト反応の際に溶媒を用いる場合、該溶媒への溶解性に優れ、かつ、グラフト反応後の不純物との分離性に優れる等の点から、エチレン系重合体、プロピレン系重合体から選ばれる少なくとも1種のポリマーであることがより好ましい。また、使用するオレフィンはバイオマスベースのものであってもよい。
前記ポリオレフィンは、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体またはプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体であることが好ましく、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとをランダム共重合させたエチレン・α-オレフィンランダム共重合体、またはプロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとをランダム共重合させたプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体であることがより好ましい。
前記ポリオレフィンの密度は、好ましくは850~940kg/m、より好ましくは860~930kg/m、さらに好ましくは865~925kg/mある。
前記ポリオレフィンとしては、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとをランダム共重合させたエチレン・α-オレフィンランダム共重合体、またはプロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとをランダム共重合させたプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体であり、かつ、密度が860~930kg/mであるものが特に好ましい。
前記ポリオレフィンは、2種以上であってもよいが、通常1種である。
前記ポリオレフィンは、本発明の効果がより発揮される等の点から、カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、ヒドロキシ基およびチオール基等の活性水素含有基を有さないポリマーであることが好ましい。
また、前記ポリオレフィンは、本発明の効果がより発揮される等の点から、酸ハライド、アミド、イミド、エステルなどのカルボン酸誘導体基や、エポキシ基等の、水などにより容易に活性水素を持つ基に変換される基を有さないポリマーであることも好ましい。
前記ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、変性ポリオレフィン(B)の合成容易性等の点から、好ましくは100,000以上、より好ましくは150,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは700,000以下である。
前記ポリオレフィンの数平均分子量(Mn)も特に制限されないが、同様の理由から、好ましくは40,000以上、より好ましくは50,000以上であり、好ましくは500,000以下、より好ましくは300,000以下である。
前記ポリオレフィンの分子量分布(Mw/Mn)も特に制限されないが、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上であり、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下である。
前記MwおよびMnは、東ソー(株)製のHLC-8321 GPC/HT型 ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて以下の条件で測定した値である。
分離カラム:TSKgel GMH6-HT(2本)とTSKgel GMH6-HTL(2本)(いずれも7.5mmI.D.×30cm、東ソー(株)製)
カラム温度:140℃
移動相:o-ジクロロベンゼン(0.025%ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)含有)
展開速度:1.0mL/分
試料濃度:0.1%(w/v)
試料注入量:0.4mL
検出器:示差屈折計
装置の較正:単分散ポリスチレン(東ソー(株)製、#3std set)を用いた。
前記ポリオレフィンは、従来公知の方法で合成することができ、また、市販品を用いてもよい。
前記従来公知の方法としては特に制限されず、例えば、遷移金属を含む配位重合触媒系を用いる方法が挙げられる。具体的には、塩化マグネシウム担持型チタン触媒、可溶性バナジウム化合物とアルキルアルミニウムハライド化合物とを含むバナジウム系触媒、または、メタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物とを含むメタロセン触媒等の触媒の存在下に、エチレンまたはプロピレンと、必要に応じて後述のコモノマーとを(共)重合させることで合成する方法が挙げられる。
以下、前記カルボジイミド基含有モノマーでグラフト変性される前のベースポリマーとして用いられるポリオレフィンとして好適な、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体についてさらに説明する。
[エチレン系重合体]
前記エチレン系重合体は、該重合体中のエチレン由来の構成単位の含有量が50質量%以上である重合体であれば特に制限されず、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンとコモノマーとの共重合体(エチレン・α-オレフィンランダム共重合体等)であってもよい。共重合体の場合、その構造は特に制限されない。
前記コモノマーとしては、例えば、プロピレン、炭素数4~20のα-オレフィンおよび共役ポリエンから選ばれる少なくとも1種のモノマーが挙げられ、これらの中でも、プロピレン、炭素数4~20のα-オレフィンが好ましく、プロピレン、炭素数4~8のα-オレフィンがより好ましく、1-ブテンがさらに好ましい。
前記炭素数4~20のα-オレフィンとしては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えば、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。
前記エチレン系重合体中の前記コモノマー由来の構成単位の含有量は、ペレットやパウダーのブロッキングが無く取り扱いやすい等の点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。なお、プロピレン由来や1-ブテン由来の構成単位の含有量が50質量%のエチレン系重合体は、本明細書では、エチレン系重合体という。
[プロピレン系重合体]
前記プロピレン系重合体は、該重合体中のプロピレン由来の構成単位の含有量が50質量%以上である重合体であれば特に制限されず、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンとコモノマーとの共重合体(プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体等)であってもよい。これら(共)重合体の構造は特に制限されない。
前記コモノマーとしては、例えば、エチレン、炭素数4~20のα-オレフィンおよび共役ポリエンから選ばれる少なくとも1種のモノマーが挙げられ、これらの中でも、エチレン、炭素数4~20のα-オレフィンが好ましく、エチレン、炭素数4~8のα-オレフィンがより好ましい。
前記炭素数4~20のα-オレフィンとしては、エチレン系重合体の欄で挙げた炭素数4~20のα-オレフィンと同様のα-オレフィン等が挙げられる。
前記プロピレン系重合体中の前記コモノマー由来の構成単位の含有量は、ペレットやパウダーのブロッキングが無く取り扱いやすい等の点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。なお、1-ブテン由来の構成単位の含有量が50質量%のプロピレン系重合体は、本明細書では、プロピレン系重合体という。
[ブテン系重合体]
前記ブテン系重合体は、該重合体中のブテン由来の構成単位の含有量が50質量%以上である重合体であれば特に制限されず、ブテン、特に1-ブテンの単独重合体であってもよく、ブテン(特に1-ブテン)とコモノマーとの共重合体であってもよい。これら(共)重合体の構造は特に制限されない。
前記コモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、炭素数5~20のα-オレフィンおよび共役ポリエンから選ばれる少なくとも1種のモノマーが挙げられ、これらの中でも、エチレン、プロピレン、炭素数5~20のα-オレフィンが好ましい。
前記炭素数5~20のα-オレフィンとしては、エチレン系重合体の欄で挙げた炭素数5~20のα-オレフィンと同様のα-オレフィン等が挙げられる。
前記ブテン系重合体中の前記コモノマー由来の構成単位の含有量は、ペレットやパウダーのブロッキングが無く取り扱いやすい等の点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
<変性ポリオレフィン(B)の合成方法>
変性ポリオレフィン(B)の合成方法は特に制限されず、ベースポリマーである前記ポリオレフィンを前記カルボジイミド基含有モノマーでグラフト変性したグラフト変性体が得られれば特に制限されないが、変性ポリオレフィン(B)を容易に合成できる等の点から、前記ポリオレフィンを溶剤に溶解または分散した液、好ましくは前記ポリオレフィンを有機溶剤に溶解した溶液に、ラジカル開始剤および前記カルボジイミド基含有モノマーを添加して反応(グラフト反応)させる方法が好ましい。なお、ポリオレフィンを均質に流動させることができる攪拌能力を有する反応装置を用いる場合には、溶剤を用いなくてもよい。
前記方法によれば、グラフト重合が起こるため、グラフト変性体が得られる。
前記グラフト反応に用いるカルボジイミド基含有モノマーの使用量は、グラフト率が前記範囲にある変性ポリオレフィン(B)を容易に得ることができ、カルボジイミド基含有モノマー自体の重合体(以下「非グラフト化ポリマー」ともいう。)の生成を抑制できる等の点から、ポリオレフィン1モルに対し、好ましくは10~1000モル、より好ましくは10~800モルである。
前記ラジカル開始剤としては、例えば、有機ペルオキシド、アゾ化合物が挙げられ、具体的には、ベンゾイルペルオキシド、ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン-3、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルフェニルアセテート、tert-ブチルペルイソブチレート、tert-ブチルペル-sec-オクトエート、tert-ブチルペルピバレート、クミルペルピバレート、tert-ブチルペルジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(tert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート)等の有機ペルオキシド;アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレート等のアゾ化合物が挙げられる。これらの中では、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート等の有機ペルオキシドが好ましい。
前記ラジカル開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記グラフト反応に用いるラジカル開始剤の使用量は、グラフト反応が効率よく起こり、グラフト率が前記範囲にある本変性体を容易に得ることができる等の点から、カルボジイミド基含有モノマー1モルに対し、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.05モル以上であり、好ましくは0.7モル以下、より好ましくは0.5モル以下である。
前記有機溶剤としては、前記カルボジイミド基含有モノマーのグラフト反応を著しく阻害せず、かつ、グラフト反応を行う温度領域でベースポリマーと親和性を有する有機溶剤が好ましい。このような有機溶剤の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、ジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキシアニソール等のエーテル系溶媒が挙げられる。また、水を溶剤として、懸濁重合、乳化重合することもできる。これらの溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これらの溶剤の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
ポリオレフィンを含む液を均質攪拌できる領域でグラフト反応を行うため、該液中のベースポリマーの濃度は、通常50~500g/Lに設定されるが、高グラフト率を達成するためには、200~500g/Lであることが好ましい。
ラジカル開始剤およびカルボジイミド基含有モノマーは、ポリオレフィンを含む液(またはポリオレフィン自体)に一括添加することでグラフト反応を開始させてもよいが、高グラフト率を達成するために、0.1~5時間程度の時間をかけて逐次的に添加することでグラフト反応を行うことが好ましい。
なお、ポリオレフィンまたはポリオレフィンを溶剤に溶解または分散した液にラジカル開始剤およびカルボジイミド基含有モノマーを添加する場合には、これらの添加順は特に制限されず、例えば、前記のようにこれらを逐次的に添加する場合、ラジカル開始剤およびカルボジイミド基含有モノマーを逐次的に添加してもよいし、先にカルボジイミド基含有モノマーを添加した後、ラジカル開始剤を逐次的に添加してもよい。
前記グラフト反応は、通常60℃以上の温度、好ましくは100℃以上の温度、通常200℃以下の温度、好ましくは160℃以下の温度で、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、通常10時間以下、好ましくは8時間以下行うことが望ましい。
前記グラフト反応により得られた変性ポリオレフィン(B)は、用いた溶媒、未反応のラジカル開始剤やカルボジイミド基含有モノマー、副生する非グラフト化ポリマーなどを、ろ過、遠心分離、再沈殿操作および/または洗浄等を必要により組み合わせるなど、公知の方法を用いることにより精製・単離してもよい。
この場合、前記相容性や接着性により優れる変性ポリオレフィン(B)を容易に得ることができる等の点から、変性ポリオレフィン(B)中に含まれる非グラフト化ポリマーの含有量が、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下となるように、精製・単離することが望ましい。
その他の成分
本発明のABS樹脂組成物は、上述したABS樹脂(A)および変性ポリオレフィン(B)に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、各種添加剤などのその他の成分を含んでもよい。
該添加剤としては、例えば、軟化剤、安定剤、充填剤、酸化防止剤、結晶核剤、ワックス、増粘剤、機械的安定性付与剤、レベリング剤、濡れ剤、造膜助剤、架橋剤、防腐剤、防錆剤、顔料、分散剤、凍結防止剤、消泡剤、粘着性付与剤、他の熱可塑性重合体、水、有機溶媒が挙げられ、これらはそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
ABS樹脂組成物
本発明のABS樹脂組成物は、上述したABS樹脂(A)と、変性ポリオレフィン(B)とを、両者の合計を100質量部とした場合に、ABS樹脂(A)を60~99質量部、変性ポリオレフィン(B)を1~40質量部含有する組成物であり、好ましくは、ABS樹脂(A)を70~99質量部、変性ポリオレフィン(B)を1~30質量部含有する組成物であり、より好ましくは、ABS樹脂(A)を80~99質量部、変性ポリオレフィン(B)を1~20質量部含有する組成物である。
本発明のABS樹脂組成物は、前述の添加剤を1種または2種以上含んでいてもよい。
本発明のABS樹脂組成物は、上述したABS樹脂(A)、変性ポリオレフィン(B)および必要に応じて配合するその他の成分を、公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダーなどで混合する方法で調製することができる。また各成分の混合後、さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練し、造粒あるいは粉砕を行ってもよい。
本発明のABS樹脂組成物は、ABS樹脂からなる成形体を使用する従来公知の用途に特に制限なく使用することができるが、ABS樹脂がポリオレフィン等の樹脂と比較して耐衝撃性に優れ、表面硬度も高い傾向があることから、たとえば、ものが擦れることが想定されるトレイや、キッチン台の板面、机、風呂場カウンター、強度を要求されるドアハンドルなどの用途に好適に用いることができる。
<樹脂改質材>
本発明の樹脂改質材は、ABS樹脂用の樹脂改質材であって、カルボジイミド基含有モノマーでグラフト変性された、変性ポリオレフィン(B)からなる。変性ポリオレフィン(B)については、本発明のポリエステル樹脂組成物を構成する変性ポリオレフィン(B)として上述した通りである。
本発明の樹脂改質材は、ABS樹脂の機械的物性を改善し、得られる成形体の常温耐衝撃強度を改善するとともに、伸び性を向上する目的で、ABS樹脂またはABS樹脂を含む樹脂組成物に添加して用いることができる。
本発明の樹脂改質材は、ABS樹脂またはABS樹脂を含む樹脂組成物に添加することにより、得られる樹脂成形体の常温衝撃強度等の機械的物性を改善することができる。本発明の樹脂改質材が、ABS樹脂またはABS樹脂を含む樹脂組成物に対して優れた効果を示すのは、ABS樹脂の官能基と、樹脂改質材を構成する変性ポリオレフィン(B)のグラフト部分のカルボジイミド基とが結合することに伴い、樹脂改質材がABS樹脂中に高度に分散することに起因すると考えられる。
本発明の樹脂改質材は、実質的に変性ポリオレフィン(B)のみから構成されていてもよく、ABS樹脂等をベース基材として用いたマスターバッチの形態であってもよい。
本発明の樹脂改質材を添加したABS樹脂またはABS樹脂を含む樹脂組成物は、常温衝撃強度等の機械的物性が改善されるとともに、伸び性が向上したものとなる。また本発明の樹脂改質剤は、ABS樹脂およびABS樹脂を含む組成物の、熱履歴による粘度低下などの劣化を抑制する効果も期待できる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<グラフト率の算出方法>
変性ポリオレフィンを試料として、ブルカー・バイオスピン(株)製、AVANCEIIIcryo-500型核磁気共鳴装置(500MHz)を用い、測定溶媒:1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2、測定温度:120℃、スペクトル幅:20ppm、パルス繰り返し時間:7.0秒、パルス幅:5.00μsec(45°パルス)の測定条件下にて、1H-NMRスペクトルを測定した。得られたスペクトルにおいて、3.0ppm~4.0ppmに存在するカルボジイミド基に結合した炭化水素基のプロトンと、0.3ppm~2.5ppmに存在する原料ポリマー由来の全ての炭化水素基に結合したプロトンのピーク強度比率を求め、グラフト率(質量%)を算出した。また、得られたグラフト率とカルボジイミド基含有モノマーの分子量とに基づき、変性ポリオレフィン100g当たりの、グラフトされたカルボジイミド基含有モノマー量(mmol)を算出した。
[合成例1](グラフトポリマー(P-1)の合成)
500mLのセパラブルフラスコに、エチレン・1-ブテンランダム共重合体(ベースポリマー、Mw:218,000、Mn:77,000、Mw/Mn:2.82、MFR(190℃、荷重2.16kg):1.2g/10分、密度:870kg/m)を20.3gおよびキシレンを100mL装入し、セパラブルフラスコを窒素置換した後、内温を120℃まで昇温し、その温度を維持しながら、メタクリル酸エチル-tert-ブチルカルボジイミド(下記式参照)を12.0mmol装入し、次いで、キシレン10mLに溶解したtert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーブチルI、日油(株)製)1.4mmolを、ダブルアンカー翼を用い、攪拌速度400rpmで攪拌しながら、10分かけてフィードした。その後、さらに3時間攪拌した。
Figure 2024082979000003
その後、セパラブルフラスコの内温を50℃まで冷却し、得られた反応液に400mLのアセトンを加え、10分間攪拌した後、撹拌後の液を濾過し、固形分と濾液とに分けた。得られた固形分に対し、このアセトンを加えることから濾過までの工程をさらに5回繰り返した。この6回の濾過により、未反応のメタクリル酸エチル-tert-ブチルカルボジイミドおよびメタクリル酸エチル-tert-ブチルカルボジイミドの単独重合体を除去した。
前記6回目の濾過後の固形分を、90℃の真空乾燥機で10時間乾燥することで、グラフトポリマー(P-1)を20.9g得た。グラフト率は1.7質量%(100g当たりのグラフトモノマー量:8.1mmol)であった。
[合成例2](グラフトポリマー(P-2)の合成)
500mLのセパラブルフラスコに、エチレン・1-ブテン共重合体(ベースポリマー、前記合成例1で用いたベースポリマーと同じポリマー)を25.0gおよびキシレンを110mL装入し、セパラブルフラスコを窒素置換した後、内温を120℃まで昇温し、その温度を維持しながら、無水マレイン酸を16.7mmol装入し、次いで、キシレン10mLに溶解したtert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーブチルI、日油(株)製)1.4mmolを、ダブルアンカー翼を用い、攪拌速度400rpmで攪拌しながら、10分かけてフィードした。その後、さらに3時間攪拌した。
その後、セパラブルフラスコの内温を50℃まで冷却し、得られた反応液に400mLのアセトンを加え、10分間攪拌した後、撹拌後の液を濾過し、固形分と濾液とに分けた。得られた固形分に対し、このアセトンを加えることから濾過までの工程をさらに5回繰り返した。この6回の濾過により、未反応の無水マレイン酸を除去した。
前記6回目の濾過後の固形分を、90℃の真空乾燥機で10時間乾燥することで、グラフトポリマー(P-2)を25.4g得た。グラフト率は0.8質量%(100g当たりのグラフトモノマー量:8.1mmol)であった。
[実施例1]
合成例1で製造したグラフトポリマー(P-1)10質量部と、ABS(UMG ABS:EX18A、テクノUMG(株)社製;密度1050kg/m、MFR(ISO1133、220℃)18.9g/10分)90質量部とを、ラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて温度230℃、スクリュー回転数100rpm、混錬時間5分の条件で混錬することにより、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を用いて、以下の方法により衝撃強度評価及び引張強度評価を行った。結果を表1に示す。
<衝撃強度評価>
・プレスシートの作製
実施例およびで得た樹脂組成物それぞれを、温度230℃、圧力10MPa、余熱時間6分、加圧時間3分の条件でプレス成形し、その後20℃に設定したプレス成形機にて急冷することにより、厚さ3mm、長さ65mm、幅13mmのプレスシートを作製した。
・アイゾット衝撃試験
作成したプレスシートについて、ASTM D256に準拠して、23℃でノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
<引張強度評価>
・プレスシートの作製
実施例および比較例で得た樹脂組成物それぞれを、温度230℃、圧力10MPa、余熱時間6分、加圧時間3分の条件でプレス成形し、その後20℃に設定したプレス成形機にて急冷することにより、厚さ2mm、幅5mmの試験片を作製した。
・引張試験
作成した試験片について、試験速度10mm/min、チャック間距離10mm、23℃の条件で引張強度を測定した。
[比較例1]
実施例1において、グラフトポリマー(P-1)に代えて、エチレン・メチルアクリレート・グリシジルメタクリレート(GMA)三元共重合体であるLOTADER(登録商標)AX8900を用いたことの他は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法により衝撃強度評価及び引張強度評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、グラフトポリマー(P-1)に代えて、未変性のポリオレフィンであるエチレン・ブテン共重合体(EBR、前記合成例1で用いたベースポリマーと同じポリマー)を用いたことの他は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法により衝撃強度評価及び引張強度評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1において、グラフトポリマー(P-1)に代えて、合成例2で製造したグラフトポリマー(P-2)を用いたことの他は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法により衝撃強度評価及び引張強度評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2024082979000004
本発明のABS樹脂組成物は、ABS樹脂からなる成形体を使用する従来公知の用途に特に制限なく使用することができ、たとえば、ものが擦れることが想定されるトレイや、キッチン台の板面、机、風呂場カウンター、強度を要求されるドアハンドルなどの用途、耐衝撃性が求められる用途等に好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. ABS樹脂(A)を60~99質量部、
    ポリオレフィンがカルボジイミド基含有モノマーでグラフト変性された、変性ポリオレフィン(B)を1~40質量部(ただし、ABS樹脂(A)と変性ポリオレフィン(B)の合計を100質量部とする)
    含有する樹脂組成物であって、
    前記変性ポリオレフィン(B)100g当たりの、グラフトされたカルボジイミド基含有モノマー量が、0.1mmol以上30mmol以下である、ABS樹脂組成物。
  2. 前記カルボジイミド含有モノマーが、下記式(1)または下記式(2)で表される化合物である、請求項1に記載のABS樹脂組成物。
    [式(1)および式(2)中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は、置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基である。式(2)中のlは2以上の整数である。]
  3. 前記ポリオレフィンが、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体またはプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体である、請求項1に記載のABS樹脂組成物。
  4. 前記ポリオレフィンが、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとをランダム共重合させたエチレン・α-オレフィンランダム共重合体、またはプロピレンと炭素数4~20のα-オレフィンとをランダム共重合させたプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体であり、かつ、密度が860~930kg/mである、請求項1に記載のABS樹脂組成物。
  5. ポリオレフィンがカルボジイミド基含有モノマーでグラフト変性された、変性ポリオレフィン(B)からなる、ABS樹脂用の樹脂改質材。
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