JP2024075814A - 電極、電池セル、及びレドックスフロー電池 - Google Patents

電極、電池セル、及びレドックスフロー電池 Download PDF

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貴 五十嵐
Takashi Igarashi
良平 岩原
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Abstract

【課題】繊維の隔膜への突き刺さりを抑制できる電極を提供する。【解決手段】シート形状を有する電極であって、複数の繊維が組み合わされた繊維集合体を備え、前記複数の繊維の平均配向度は0.3以下であり、前記平均配向度は、前記繊維集合体の厚さ方向と直交する水平線に対する前記複数の繊維の各々の角度を90°で割った値の平均値である、電極。【選択図】図8A

Description

本開示は、電極、電池セル、及びレドックスフロー電池に関する。
特許文献1は、レドックスフロー電池の隔膜と向かい合って配置されるレドックスフロー電池用電極を開示する。この電極は、複数本の炭素繊維を有する繊維集合体を備える。この繊維集合体は、ヤング率が200GPa以下の柔炭素繊維を含む。
国際公開第2017/068944号
レドックスフロー電池の更なる電池性能の向上が望まれている。電池性能の向上の一つとして、電流効率が高いことが挙げられる。
繊維集合体を備える電極を用いたレドックスフロー電池では、電流効率の低下の要因の一つとして、電極に含まれる繊維の隔膜への突き刺さりによる影響が挙げられる。正極電極及び負極電極を構成する繊維が隔膜に突き刺さると、隔膜に孔が空いて、正極電解液と負極電解液とが混ざる。その結果、正極と負極との間で短絡が生じ得る。電極間に短絡が発生すると、電流効率の低下を招く。したがって、繊維集合体を備える電極において、レドックスフロー電池の電流効率の低下を抑制する観点から、繊維が隔膜に突き刺さることに起因する短絡を抑制することが求められている。
本開示は、繊維の隔膜への突き刺さりを抑制できる電極を提供することを目的の一つとする。また、本開示は、電流効率が高い電池セル、及びレドックスフロー電池を提供することを別の目的の一つとする。
本開示の電極は、
シート形状を有する電極であって、
複数の繊維が組み合わされた繊維集合体を備え、
前記複数の繊維の平均配向度は0.3以下であり、
前記平均配向度は、前記繊維集合体の厚さ方向と直交する水平線に対する前記複数の繊維の各々の角度を90°で割った値の平均値である。
本開示の電池セルは、
正極電極と、負極電極と、隔膜とを備え、
前記正極電極及び前記負極電極の少なくとも一方の電極は、本開示の電極である。
本開示のレドックスフロー電池は、
本開示の電池セルを備える。
本開示の電極は、繊維の隔膜への突き刺さりを抑制できる。本開示の電池セル、及びレドックスフロー電池は、電流効率が高い。
図1は、実施形態に係るレドックスフロー電池の構成を示す概略図である。 図2は、レドックスフロー電池に備えるセルスタックの構成を示す概略図である。 図3Aは、実施形態に係る電極の構成を示す概略図である。 図3Bは、図3Aの一点鎖線で囲まれる部分の内部を拡大して示す概略断面図である。 図4は、実施形態に係る電極に備える繊維集合体の断面を拡大して示す概略図であって、繊維集合体がクロスである場合を示す。 図5は、実施形態に係る電極に備える繊維集合体の表面を拡大して示す概略図であって、繊維集合体がクロスである場合を示す。 図6は、実施形態に係る電極に備える繊維集合体の断面を拡大して示す概略図であって、繊維集合体が不織布である場合を示す。 図7は、実施形態に係る電極に備える繊維集合体の断面を拡大して示す概略図であって、繊維集合体がペーパーである場合を示す。 図8Aは、実施形態に係る電極における繊維の平均配向度の測定方法を説明する図である。 図8Bは、図8Aの一点鎖線で囲まれる領域を拡大した図である。 図9は、実施形態に係る電極において、繊維の表面に炭素粒子を有する例を示す概略図である。 図10は、実施形態に係る電極において、繊維の表面に触媒を有する例を示す概略図である。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の実施形態に係る電極は、
シート形状を有する電極であって、
複数の繊維が組み合わされた繊維集合体を備え、
前記複数の繊維の平均配向度は0.3以下であり、
前記平均配向度は、前記繊維集合体の厚さ方向と直交する水平線に対する前記複数の繊維の各々の角度を90°で割った値の平均値である。
上記の電極は、レドックスフロー電池において、電解液との間で電池反応を行う。上記の電極は、レドックスフロー電池の電池セルを構成したとき、以下の理由により、電池セルに備える隔膜に繊維が突き刺さることを抑制できる。上記平均配向度が0.3以下である電極は、電極における隔膜と向かい合う第一の面において、隔膜の厚さ方向に突出する繊維の量が少ない。換言すれば、隔膜に刺さり易い繊維の量が少ない。上記平均配向度が小さいほど、隔膜に刺さり易い繊維の量が少ない。上記の電極は、レドックスフロー電池の電極に使用した場合、繊維が隔膜に突き刺さることに起因する短絡を抑制できる。上記の電極は、レドックスフロー電池の電流効率の低下を抑制できる。
上記の繊維集合体は、繊維間に空隙を有する多孔質体である。繊維集合体を備える電極は、電極内に電解液を流通させることが可能である。繊維集合体は、複数の繊維同士が絡み合って形状が維持される第一の形態と、複数の繊維同士が結着されて形状が維持される第二の形態とを含む。上記第一の形態の繊維集合体としては、具体的には、クロス、不織布が挙げられる。上記第二の形態の繊維集合体としては、具体的には、ペーパーが挙げられる。
(2)上記の電極の一形態として、
前記繊維集合体における前記繊維の含有率が20質量%以上であることが挙げられる。
上記の形態は、電極の機械的強度を確保し易い。その理由は、繊維集合体に含まれる繊維の割合が多いほど、繊維集合体の芯となる基材の割合が増えることになるからである。そのため、繊維集合体の強度を高め易い。
(3)上記の電極の一形態として、
前記繊維集合体は、クロス又は不織布であることが挙げられる。
クロス又は不織布は、複数の繊維同士が絡み合うことにより構成されることから、繊維間に多くの空隙が存在する。そのため、上記繊維集合体を備える電極は、空隙率が比較的大きいので、電極内に電解液が流通し易い。
(4)上記の電極の一形態として、
前記複数の繊維の平均長さが25mm以上であることが挙げられる。
上記の形態は、繊維同士が絡み易い。そのため、繊維同士の絡み合いによる機械的な結合により上記繊維集合体の形状が維持され易い。
(5)上記の電極の一形態として、
前記繊維集合体は、前記繊維の表面に付着されたバインダを含むことが挙げられる。
上記の形態は、バインダにより繊維同士を結着することができる。バインダによる繊維同士の結着により上記繊維集合体の形状を維持できる。
(6)上記の電極の一形態として、
前記繊維集合体はペーパーであり、
前記繊維の表面に付着されたバインダを含むことが挙げられる。
上記の形態は、電極の厚さを薄くできる。ペーパーは、複数の繊維同士がバインダにより結着されることにより形状が維持される。ペーパーは、クロスや不織布よりも薄くし易い。そのため、上記繊維集合体を備える電極は、電池セルを薄型化できる。
(7)上記(6)に記載の電極の一形態として、
前記平均配向度が0.1以下であることが挙げられる。
上記の形態は、繊維の隔膜への突き刺さりをより抑制できる。
(8)上記(6)又は(7)に記載の電極の一形態として、
前記複数の繊維の平均長さが20mm以下であることが挙げられる。
ペーパーは、複数の繊維同士がバインダによって結着されることにより構成されることから、繊維長が短くても形状を維持できる。
(9)上記(5)から(8)のいずれか一つに記載の電極の一形態として、
前記繊維集合体における前記バインダの含有率が20質量%以上80質量%以下であることが挙げられる。
上記の形態は、繊維集合体の形状を維持しながら、繊維間の空隙を確保し易い。繊維集合体の形状を維持し易い理由は、バインダの含有率が20質量%以上であることで、バインダによる繊維同士の結着を確保し易いからである。繊維間の空隙を確保し易い理由は、バインダの含有率が80質量%以下であることで、バインダによって繊維間の空隙が減少することを抑制できるからである。
(10)上記(5)から(9)のいずれか一つに記載の電極の一形態として、
前記バインダは、炭素を主体とする第一のバインダを含むことが挙げられる。
上記の形態は、第一のバインダによって繊維間の電気的導通を確保できる。その理由は、第一のバインダは、炭素を主体とすることで、導電性を有するからである。また、炭素は、電解液に対する耐性を有する。
(11)上記(5)から(10)のいずれか一つに記載の電極の一形態として、
前記バインダは、導電性金属酸化物を主体とする第二のバインダを含むことが挙げられる。
上記の形態は、第二のバインダによって繊維間の電気的導通を確保できる。また、導電性金属酸化物は、電解液に対する耐性を有する。
(12)上記の電極の一形態として、
前記繊維の表面に担持された炭素粒子を有することが挙げられる。
上記の形態では、炭素粒子が電解液との反応点として機能する。上記の形態は、電解液との電池反応性を向上させることが可能である。
(13)上記(5)から(11)のいずれか一つに記載の電極の一形態として、
前記繊維の表面に担持された炭素粒子を有し、
前記炭素粒子は、前記バインダによって担持されていることが挙げられる。
上記の形態は、繊維の表面に炭素粒子を強固に担持させることが可能である。
(14)上記の電極の一形態として、
前記繊維の表面に担持された触媒を有することが挙げられる。
触媒は電解液と電極との電池反応を活性化させる。上記の形態は、電解液と電極との電池反応性を向上させることが可能である。
(15)上記(5)から(11)、及び(13)のいずれか一つに記載の電極の一形態として、
前記繊維の表面に担持された触媒を有し、
前記触媒は、前記バインダによって担持されていることが挙げられる。
上記の形態は、繊維の表面に触媒を強固に担持させることが可能である。
(16)上記(14)又は(15)に記載の電極の一形態として、
前記触媒は、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、スズ、アンチモン、タリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、及びイリジウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有する金属酸化物で構成されることが挙げられる。
上記金属元素を含有する金属酸化物は、電池反応を活性化させる触媒効果を有する。上記金属酸化物は、触媒として好適である。
(17)上記の電極の一形態として、
前記繊維は、炭素、チタン、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも一種で構成されることが挙げられる。
上記の形態は、レドックスフロー電池の電極として好適である。電極を構成する繊維は、電解液との間で電池反応を行う反応場として機能する。炭素、チタン、及びタングステンは、導電性を有すると共に、電解液に対する耐性を有する。炭素、チタン、及びタングステンは、繊維の材質として好適である。
(18)本開示の実施形態に係る電池セルは、
正極電極と、負極電極と、隔膜とを備え、
前記正極電極及び前記負極電極の少なくとも一方の電極は、上記(1)から(17)のいずれか一つに記載の電極である。
上記の電池セルは、正極電極及び負極電極の少なくとも一方の電極が上述した本開示の電極であることから、電流効率が高い。その理由は、上述したように、本開示の電極は、繊維が隔膜に突き刺さることに起因する短絡を抑制できるからである。上記の電池セルは、正極と負極との間で短絡が発生し難いため、電流効率の低下を抑制できる。
(19)上記の電池セルの一形態として、
前記電極における前記繊維集合体の空隙率が30体積%以上89体積%以下であることが挙げられる。
上記の形態は、繊維集合体の空隙率が30体積%以上であることで、電極内に電解液を流通させ易い。繊維集合体の空隙率が89体積%以下であることで、電極における電解液との接触面積、即ち反応面積の減少を抑制できる。また、空隙率が89体積%以下であれば、繊維集合体の強度の低下を抑制できる。
(20)本開示の実施形態に係るレドックスフロー電池は、
上記(18)又は(19)に記載の本開示の電池セルを備える。
上記のレドックスフロー電池は、本開示の電池セルを備えることから、電流効率が高い。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る電極、電池セル、及びレドックスフロー電池の具体例を、以下に図面を参照して説明する。図中の同一符号は同一又は相当部分を示す。以下、レドックスフロー電池を「RF電池」と呼ぶ場合がある。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以下、先に、電池セル及びRF電池について説明し、その後、電極について詳しく説明する。
<RF電池>
初めに、図1を参照して、実施形態に係るRF電池1、及びRF電池1に備える電池セル100を説明する。RF電池1は、電解液循環型の蓄電池の一つである。RF電池1では、正極電解液及び負極電解液として、酸化還元により価数が変化する金属イオンを活物質として含有する電解液を使用する。RF電池1は、正極電解液に含まれる金属イオンの酸化還元電位と、負極電解液に含まれる金属イオンの酸化還元電位との差を利用して充放電を行う。電解液としては、例えば、正極電解液及び負極電解液にバナジウム(V)イオンを含有するV系電解液が挙げられる。その他、正極電解液にマンガン(Mn)イオンを含み、負極電解液にチタン(Ti)イオンを含むTi/Mn系電解液などが挙げられる。
RF電池1は、代表的には、交流/直流変換器7や変電設備71を介して発電部8及び負荷9に接続される。RF電池1は、発電部8で発電された電力を充電したり、充電した電力を負荷9に放電したりすることが可能である。発電部8は、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを利用した発電設備やその他一般の発電所である。RF電池1は、例えば、負荷平準化用途、瞬低補償、非常用電源などの用途、自然エネルギー発電の出力平滑化用途に利用される。
RF電池1は、充放電を行う電池セル100と、正極電解液及び負極電解液をそれぞれ貯留する正極電解液タンク106及び負極電解液タンク107と、正極電解液タンク106及び負極電解液タンク107の各タンクと電池セル100との間で各電解液をそれぞれ循環させる循環流路とを備える。RF電池1の基本構成は、公知の構成を適宜利用できる。
<電池セル>
電池セル100は、正極電極104と、負極電極105と、隔膜101とを備える。隔膜101は正極電極104と負極電極105との間に配置される。電池セル100は、隔膜101によって正極セル102と負極セル103とに分離されている。正極電極104は正極セル102に配置されている。負極電極105は負極セル103に配置されている。隔膜101は、例えば、水素イオンを透過するイオン交換膜である。正極電極104及び負極電極105は、電解液との間で電池反応を行う。正極電極104及び負極電極105の各電極は、例えば、シート状の多孔質体で構成されている。本実施形態では、正極電極104及び負極電極105は、後述する図3A、図3Bに示すように、複数の繊維20を含む繊維集合体30を備える電極10である。
電池セル100を構成する正極セル102には、正極電解液が供給される。負極セル103には、負極電解液が供給される。本例のRF電池1は、図1に示すように、電池セル100と正極電解液タンク106との間を接続する往路配管108及び復路配管110を備える。さらにRF電池1は、電池セル100と負極電解液タンク107との間を接続する往路配管109及び復路配管111を備える。往路配管108には、ポンプ112が設けられている。往路配管109には、ポンプ113が設けられている。正極電解液は、正極電解液タンク106からポンプ112によって往路配管108を通って正極セル102に供給される。正極セル102を通り正極セル102から排出された正極電解液は、復路配管110を通って正極電解液タンク106に戻される。負極電解液は、負極電解液タンク107からポンプ113によって往路配管109を通って負極セル103に供給される。負極セル103を通り負極セル103から排出された負極電解液は、復路配管111を通って負極電解液タンク107に戻される。つまり、各往路配管108,109及び各復路配管110,111によって、各電解液の循環流路が構成されている。
RF電池1は、単数の電池セル100を備える構成でもよいし、複数の電池セル100を備える構成でもよい。本例では、図1に示すように、複数の電池セル100が積層されたセルスタック200を備える。セルスタック200は、図2に示すように、サブスタック200sをその両側から2枚のエンドプレート210で挟み込み、締付機構230によって締め付けることで構成されている。図2は、複数のサブスタック200sを備えるセルスタック200を示している。サブスタック200sは、積層体と、積層体の両端に設けられる給排板220を備える。積層体は、セルフレーム120、正極電極104、隔膜101、負極電極105が順に繰り返し積層される。給排板220には、上述した図1に示す往路配管108、109及び復路配管110、111が接続される。セルスタック200における電池セル100の積層数は適宜選択できる。
本例のセルフレーム120は、図1、図2に示すように、正極電極104と負極電極105との間に配置される双極板121と、双極板121の周囲に設けられる枠体122とを有する。枠体122の内側には、双極板121と枠体122により凹部122oが形成される。凹部122oは、双極板121の両側にそれぞれ形成されている。双極板121は、正極電極104と向かい合う第一の面と、負極電極105と向かい合う第二の面とを有する。双極板121の第一の面側の凹部122oには正極電極104が配置される。双極板121の第二の面側の凹部122oには負極電極105が配置される。各凹部122oは、上述した図1に示す正極セル102及び負極セル103の各セル空間を形成する。
このように、隣り合う各セルフレーム120の双極板121の間に、隔膜101を挟んで正極電極104及び負極電極105が配置されることにより、1つの電池セル100が形成される。各セルフレーム120の枠体122の間には、例えばOリング、平パッキンなどの環状のシール部材127が配置される。電池セル100を構成したとき、正極電極104及び負極電極105は、隔膜101と向かい合うように配置される。正極電極104及び負極電極105は、厚さ方向に圧縮された状態で収納される。つまり、正極電極104及び負極電極105の各電極における隔膜101と向かい合う面は、隔膜101に押し付けられた状態となる。圧縮状態での正極電極104及び負極電極105の各厚さは、上記各凹部122oの深さによって決まる。
図2に示すように、セルフレーム120の枠体122は、給液マニホールド123,124及び排液マニホールド125,126を有する。本例では、正極電解液は、給液マニホールド123から給液スリット123sを介して正極電極104に供給される。正極電極104に供給された正極電解液は、排液スリット125sを介して排液マニホールド125に排出される。同様に、負極電解液は、給液マニホールド124から給液スリット124sを介して負極電極105に供給される。負極電極105に供給された負極電解液は、排液スリット126sを介して排液マニホールド126に排出される。給液マニホールド123,124及び排液マニホールド125,126は、枠体122に貫通して設けられており、セルフレーム120が積層されることによって各電解液の流路を構成する。これら各流路は、給排板220を介して図1に示す往路配管108,109及び復路配管110,111の各配管にそれぞれつながっている。セルスタック200は、上記各流路によって、各電池セル100に正極電解液及び負極電解液を流通させることが可能である。
本例の電池セル100では、正極電極104及び負極電極105の下側からそれぞれ電解液が供給され、正極電極104及び負極電極105の上側から電解液が排出されるように構成されている。つまり、正極電極104及び負極電極105の各電極の下縁部から上縁部に向かって電解液が流れる。
<電極>
図3A、図3Bを参照して、実施形態に係る電極10を説明する。電極10は、上述した電池セル100(図1参照)の正極電極104及び負極電極105に利用される。電極10は、電解液を利用して電池反応を行う。電極10は、電池セル100を構成したとき、隔膜101と向かい合う第一の面11(図3A参照)を有する。
本実施形態の電極10は、図3Aに示すように、シート形状を有する。電極10は、図3Bに示すように、複数の繊維20が組み合わされた繊維集合体30を備える。電極10の特徴の一つは、複数の繊維20の平均配向度が特定の範囲である点である。
(繊維集合体)
繊維集合体30は、繊維20間に空隙を有するシート状の多孔質体である。そのため、電池セル100(図1参照)を構成したとき、電極10の内部に電解液が流通する。繊維集合体30は、代表的には、複数の繊維20同士が絡み合って形状が維持される第一の形態と、複数の繊維20同士が結着されて形状が維持される第二の形態とがある。
〈第一の形態〉
図4、図6は、第一の形態における繊維集合体31の断面を拡大した概略断面図を示す。上記断面は、繊維集合体31の厚さ方向に沿って切断した断面である。上記厚さ方向は、図3Aに示す第一の面11に直交する方向である。第一の面11は、繊維集合体30の互いに向き合う表面と裏面のいずれかの面である。第一の形態の繊維集合体31は、具体的には、クロス、不織布が挙げられる。図4に示す繊維集合体31はクロスである。図6に示す繊維集合体31は不織布である。図中、矢印Vは厚さ方向、矢印Hは厚さ方向と直交する水平方向を示す。
クロスからなる繊維集合体31は、平面視したとき、図5に示すように、多数の繊維20を束ねて撚り合わせた糸20sを織ったものである。具体的には、第一の糸21sと、第一の糸21sと交差する第二の糸22sとを交互に織り合わせて形成される。クロスからなる繊維集合体31の製造方法の具体例については後述する。
不織布からなる繊維集合体31は、独立した個々の繊維20を交絡したものである。具体的には、複数の繊維20を積層したウェブを積層方向に交絡処理する。不織布は、繊維20同士を絡み合わせて形成される。積層方向は、繊維集合体31の厚さ方向に相当する。交絡処理としては、例えば、ニードルパンチ法、水流交絡法などが挙げられる。不織布には、フェルト、スパンレース、マリフリースなどが含まれる。不織布からなる繊維集合体31の製造方法の具体例については後述する。
〈第二の形態〉
図7は、第二の形態における繊維集合体32の断面を拡大した概略断面図を示す。繊維集合体32は、複数の繊維20と、繊維20の表面に付着されたバインダ25とを含む。バインダ25は、繊維20同士を結着する機能を有する。その他、バインダ25は、図9、図10に示す炭素粒子40や触媒50を繊維20の表面に担持させる機能を有する。炭素粒子40及び触媒50については後述する。第二の形態の繊維集合体32は、具体的には、ペーパーが挙げられる。バインダ25は電解液に対する耐性を有する材料により構成される。バインダ25は、例えば、炭素、樹脂、及び導電性金属酸化物からなる群より選択される一種を含むことが挙げられる。導電性金属酸化物としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンスズ(ATO)などの金属酸化物が挙げられる。
ペーパーからなる繊維集合体32は、複数の繊維20とバインダ25の原料とを混合したスラリーを抄造した後、乾燥したものである。上記スラリーは、繊維20を溶媒に分散させたものである。バインダ25を含む形態では、溶媒にバインダ25の原料を混ぜる。溶媒は、水、有機溶媒を利用できる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどが挙げられる。バインダ25の原料によっては、上記スラリーの抄造後に熱処理してもよい。バインダ25が炭素又は樹脂を含む形態では、バインダ25の原料は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの有機バインダを利用することが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、代表的には、フェノール樹脂、ピッチ樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、代表的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などが挙げられる。バインダ25の原料として、上述の熱硬化性樹脂の有機バインダを使用する場合、上記熱処理によって、有機バインダを炭素化する。その結果、バインダ25は炭素を含む。バインダ25の原料として、上述の熱可塑性樹脂の有機バインダを使用する場合、上記熱処理は不要である。つまり、有機バインダを炭素化しない。その結果、バインダ25はPTFE、PVDF、PVDCなどの樹脂を含む。バインダ25が導電性金属酸化物を含む形態では、バインダ25の原料として、スズイオン、インジウムイオン、アンチモンイオンなどの金属イオンが溶解した溶液を利用する。この溶液を熱処理することによって、上記金属酸化物を含むバインダ25を形成することができる。ペーパーからなる繊維集合体32の製造方法の具体例については後述する。
繊維集合体32におけるバインダ25は、炭素を主体とする第一のバインダを含むことが挙げられる。炭素は導電性を有する。バインダ25が第一のバインダを含むことで、繊維20同士が接触していない箇所があっても、第一のバインダを介して繊維20間の電気的導通を確保できる。第一のバインダは、典型的には、上述のように、フェノール樹脂、ピッチ樹脂、エポキシ樹脂などの有機バインダが上記熱処理によって炭素化したものである。「炭素を主体とする」とは、炭素を60質量%以上含むことを意味する。第一のバインダにおける炭素の含有率は、80質量%以上でもよく、100質量%でもよい。本例では、バインダ25が実質的に第一のバインダのみで構成されている。具体的には、バインダ25が実質的に炭素のみで構成されている。つまり、バインダ25における炭素の含有率が実質的に100質量%である。バインダ25が、上述のように、PTFE、PVDF、PVDCなどの樹脂により構成されている場合、即ち炭素化していない場合、繊維20同士の接触によって繊維20間の電気的導通が確保される。
バインダ25は、導電性金属酸化物を主体とする第二のバインダを含むことが挙げられる。バインダ25が第二のバインダを含むことで、繊維20同士が接触していない箇所があっても、第二のバインダを介して繊維20間の電気的導通を確保できる。「導電性金属酸化物を主体とする」とは、導電性金属酸化物を60質量%以上含むことを意味する。第二のバインダにおける導電性金属酸化物の含有率は、80質量%以上でもよく、100質量%でもよい。
〈繊維の含有率〉
上記第一の形態及び第二の形態の両方において、繊維集合体30(図3B参照)における繊維20の含有率は、例えば20質量%以上が挙げられる。繊維集合体30に含まれる繊維20の割合が多いほど、繊維集合体30の強度を高め易い。よって、電極10の機械的強度が確保され易い。繊維20の含有率は、30質量%以上でもよい。繊維集合体30の形態が第一の形態では、繊維20の含有率は100質量%でもよい。
繊維20の含有率は、繊維集合体30の形態によって異なることが挙げられる。クロス、不織布といった第一の形態では、繊維集合体31(図4、図6参照)は繊維20のみで構成することが可能である。繊維集合体31における繊維20の含有率は、例えば20質量%以上100質量%以下である。繊維集合体31における繊維20の含有率は、更に、30質量%以上、50質量%超、70質量%超、75質量%超でもよい。本例では、繊維集合体31が実質的に繊維20のみで構成されている。つまり、繊維集合体31における繊維20の含有率が実質的に100質量%である。ペーパーといった第二の形態では、繊維集合体32(図7参照)における繊維20の含有率は、例えば25質量%以上75質量%以下、更に30質量%以上70質量%以下である。
繊維集合体30における繊維20の含有率は、「{(繊維集合体30に含まれる繊維20の合計質量)/(繊維集合体30の質量)}×100」により求められる。ペーパーといった第二の形態の場合、繊維20の含有率は、繊維集合体32の二次電子像とX線CT(Computed Tomography)像とを解析することにより計算で求められる。具体的には、まず二次電子像とX線CT像とを比較し、X線CT像の繊維像が正しく得られていることを確認する。そして、繊維20の含有率は、「D×A×T×(1/V)×(1/S)×100」により計算する。
D:繊維自体の密度(g/cm
A:X線CT像から求めた繊維の体積(cm
T:繊維集合体の厚さ(cm)
V:X線CT像の測定視野の体積(cm
S:繊維集合体の質量を実際に測定して求めた単位面積あたりの質量(g/cm
上記厚さTは、繊維集合体30が圧縮されていない状態での厚さである。
〈バインダの含有率〉
繊維集合体32(図7参照)におけるバインダ25の含有率は、例えば20質量%以上80質量%以下が挙げられる。バインダ25の含有率が20質量%以上であることで、バインダ25によって繊維20同士を結着させ易い。よって、繊維集合体32の形状を維持し易い。バインダ25の含有率が80質量%以下であることで、繊維集合体32内の空隙を確保し易い。よって、電極10内に電解液を流通させ易い。バインダ25の含有率は、30質量%以上70質量%以下、45質量%以上65質量%以下でもよい。
バインダ25の含有率は、繊維集合体32の質量を100質量%として、100質量%から繊維20の含有率を引くことにより求められる。
第一の形態の繊維集合体31(図4、図6参照)において、上記バインダ25を含まなくてもよいが、バインダ25を含むことを許容する。繊維集合体31がバインダ25を含む場合、バインダ25が繊維20同士を結着することにより繊維集合体31の形状がより維持され易くなる。繊維集合体31におけるバインダ25の含有率は、例えば80質量%以下が挙げられる。繊維集合体31におけるバインダ25の含有率は、更に、50質量%以下、40質量%以下、30質量%未満、20質量%未満でもよい。
〈厚さ〉
繊維集合体30(図3A参照)の厚さは、例えば0.1mm以上5.0mm以下、更に0.2mm以上3.0mm以下が挙げられる。厚さが0.1mm以上であることで、電池セル100に電極10として組み込まれた際に圧縮されても、電解液との反応面積を確保し易い。厚さが5.0mm以下であることで、電池セル100に電極10として組み込まれた際に圧縮されても、電解液を流通させ易い。また、厚さが5.0mm以下であれば、電極10を薄型化できる。上記厚さは、電池セル100(図1参照)に組み込まれて圧縮された状態での厚さではなく、圧縮されていない状態、即ち外力が作用していない自然状態での厚さをいう。
繊維集合体30の厚さは、繊維集合体30の形態によって異なることが挙げられる。クロス、不織布といった第一の形態では、繊維集合体31(図4、図6参照)の厚さは、例えば0.2mm以上5.0mm以下、更に0.3mm以上2.0mm以下である。ペーパーといった第二の形態では、繊維集合体32(図7参照)の厚さは、例えば0.1mm以上1.0mm以下、更に0.3mm以上0.6mm以下である。第二の形態における繊維集合体32は、第一の形態における繊維集合体31よりも薄くできるので、電池セル100(図1参照)をより薄型化し易い。
〈圧縮率〉
電池セル100(図1参照)を構成したとき、繊維集合体30(図3A参照)の圧縮率は、例えば30%以上95%以下、更に40%以上70%以下が挙げられる。繊維集合体30において、電解液との反応面積は圧縮前後で変わらないが、圧縮後の繊維集合体30の体積は減るので、単位体積あたりにおける電解液との反応面積は増えることになる。圧縮率が30%以上であることで、電極10の単位体積あたりの上記反応面積が増えるので、電解液との反応効率が高くなる。圧縮率が95%以下であることで、電極10内の空隙を確保して、電解液を流通させ易い。また、圧縮率が95%以下であれば、過度の圧縮による繊維集合体30の損傷を抑制できる。圧縮率は、圧縮状態での厚さをT、非圧縮状態での厚さをTとすると、「{(T-T)/T}×100」により求められる。
〈空隙率〉
電池セル100(図1参照)を構成したとき、繊維集合体30(図3A参照)の空隙率は、例えば30体積%以上89体積%以下、更に40体積%以上80体積%以下が挙げられる。上記空隙率は、電池セル100(図1参照)に組み込まれて圧縮された状態での空隙率である。空隙率が30体積%以上であることで、電極10内に電解液を流通させ易い。空隙率が89体積%以下であることで、電極10における電解液との反応面積の減少を抑制できる。また、空隙率が89体積%以下であれば、繊維集合体30の強度の低下を抑制できる。空隙率は、真の体積をVt、見かけの体積をVaとすると、「{(Va-Vt)/Va}×100」により求められる。真の体積Vtは、例えば、X線CT像を解析することにより、繊維集合体30中の空隙を除いた体積を計算することで求められる。見かけの体積Vaは、繊維と空隙とを含む繊維集合体30の体積である。
繊維集合体30の空隙率は、繊維集合体30の形態によって異なることが挙げられる。クロス、不織布といった第一の形態では、繊維集合体31(図4、図6参照)の空隙率は、例えば30体積%以上89体積%以下、更に40体積%以上80体積%以下である。ペーパーといった第二の形態では、繊維集合体32(図7参照)の空隙率は、例えば40体積%以上89体積%以下、更に60体積%以上80体積%以下である。一般に、第二の形態における繊維集合体32は、バインダ25を多く含むため、第一の形態における繊維集合体31に比べて空隙率が小さくなる。第一の形態における繊維集合体31は、空隙率が比較的大きいので、電解液を流通させ易い。
(繊維)
繊維20(図3B参照)は、電解液中の活物質である金属イオンが電池反応を行う反応場として機能する。
〈平均配向度〉
繊維集合体30を構成する複数の繊維20の平均配向度は0.3以下である。「平均配向度」とは、繊維集合体30の厚さ方向と直交する水平線に対する繊維20の傾き度合いを意味する。「平均配向度」は、繊維集合体30の厚さ方向に沿う角度を90°とし、上記水平線に対する複数の繊維20の各々の角度を90°で割った値の平均値である。平均配向度の値が小さいほど、繊維集合体30の厚さ方向に配向する繊維20が少ないことを示す。つまり、平均配向度の値が小さい繊維集合体30は、厚さ方向に沿う繊維20が少なく、水平方向に沿う繊維20が多いといえる。平均配向度は0~1の範囲で与えられる。
繊維20の平均配向度の測定方法について、図8A、図8Bを参照して説明する。図8Aは、繊維集合体30の断面の一例を拡大して示したものである。図8Aに示す繊維集合体30はクロスである。まず、繊維集合体30(図3A参照)を厚さ方向に沿って切断する。具体的には、繊維集合体30の厚さ方向が垂直方向となるように、第一の面11を水平にして繊維集合体30を厚さ方向に切断する。そして、図8Aに示すように、切断した繊維集合体30の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する。観察位置を変えて10箇所以上の視野を取得する。視野は、600μm×450μmの大きさを有する長方形とする。1つの視野につき、1本の対角線dを引く。視野の倍率は、例えば200倍とすることが挙げられる。倍率は、繊維集合体30の形態によって適宜変更してもよい。各視野において、対角線dに交差する繊維20のうち、10本以上の繊維20を選択する。選択した各繊維20について、対角線dと交差する部分に対してフィッティングする。具体的には、繊維20における対角線dとの交差点を中心とする長さ10μm部分について、フィッティングした直線を求める(図8Bも参照)。上記フィッティングは、例えば、最小二乗法を用いることができる。最小二乗法を用いる場合、例えば、繊維20の上記10μmの部分について、繊維20の中心を通る線分を抽出し、その線分を10等分する点に対して最小二乗法を適用することが挙げられる。図8A、図8Bでは、選択した各繊維20において、フィッティングした直線を太い破線で示す。フィッティングした直線の水平線に対する角度を測定する。測定する角度は、フィッティングした直線と水平線とがなす2つの角度のうち、0°以上90°以下の鋭角側の角度とする。フィッティングした各直線について、水平線に対する配向度を求める。上記配向度は、「(水平線に対する上記直線の角度)/90°」により計算する。全ての視野について、フィッティングした各直線の上記配向度の平均値を平均配向度とする。つまり、10箇所以上の視野において、1つの視野につき10本以上の繊維20を選択することにより、合計で100本以上の繊維20の上記平均配向度を求める。1つの視野において選択する繊維20の数は、20本以上、更に30本以上でもよい。
平均配向度が小さいほど、繊維集合体30の厚さ方向に配向する繊維20の数が少ない。そのため、電池セル100(図1参照)を構成したとき、隔膜101の表面と直交するように配置される繊維20の数が少ない。このような繊維集合体30は、繊維20が隔膜101に突き刺さることを抑制できる。平均配向度は、0.25以下でもよい。
平均配向度は、繊維集合体30の形態によって異なることが挙げられる。クロス、不織布といった第一の形態における繊維集合体31(図4、図6参照)では、平均配向度は、例えば0.05以上0.3以下が挙げられる。平均配向度が0.05以上であることで、繊維20同士の絡み合いによる機械的な結合により繊維集合体31の形状を維持し易い。平均配向度が0.3以下であることで、上述したように、繊維20の隔膜101への突き刺さりを抑制できる。第一の形態では、平均配向度は、0.1以上0.25以下、更に0.15以上0.25以下でもよい。ペーパーといった第二の形態における繊維集合体32では、平均配向度は、例えば0.1以下が挙げられる。第二の形態における繊維集合体32は、バインダ25による繊維20同士の結着により形状を維持するため、平均配向度を比較的小さくできる(図7参照)。第二の形態では、平均配向度は、0.05以下でもよい。
平均配向度を小さくする方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
(クロス)
繊維集合体30がクロスからなる場合、例えば、織りのピッチを大きくすることが挙げられる。織りのピッチとは、図5に示すように繊維集合体31を平面視したとき、第二の糸22sを挟んで隣り合う第一の糸21s間の中心間距離pである。織りのピッチが大きいほど、上述の水平線に対する繊維20の角度が小さくなる。つまり、繊維集合体30の厚さ方向に配向する繊維20の数が減ることから、平均配向度が小さくなる。織りのピッチは、例えば1.5mm以上、更に2.0mm以上が挙げられる。織りのピッチに合わせて糸20sの太さは変更するとよい。
(不織布)
繊維集合体30が不織布からなる場合、例えば、繊維集合体30を厚さ方向にプレスすることが挙げられる。プレスすることによって繊維集合体30の厚さ方向に配向する繊維20の数が減るため、平均配向度が小さくなる。プレス圧は、例えば0.05MPa以上0.5MPa以下とすることが挙げられる。別の方法としては、例えば、単位面積あたりの交絡数を少なくすることが挙げられる。水流交絡の場合、例えば、水流を噴射するノズルの数を減らしたり、水流の圧力を低くしたりする。ニードルパンチの場合、例えば、ニードルパンチの本数を減らしたり、パンチング回数を減らしたりする。例えば、パンチング回数を250回/cm未満とすることが挙げられる。交絡数が少ないほど、繊維集合体30の厚さ方向に配向する繊維20の数が減る。そのため、平均配向度が小さくなる。
(ペーパー)
繊維集合体30がペーパーからなる場合、例えば、繊維長が比較的長い繊維20を用いることが挙げられる。繊維長が比較的長いと、抄造する際に繊維20が寝易く、繊維20が水平方向に揃い易い。そのため、繊維集合体30の厚さ方向に配向する繊維20の数が減ることから、平均配向度が小さくなる。例えば、繊維長は10mm以上とすることが挙げられる。その他、上述したように、繊維集合体30を厚さ方向にプレスしてもよい。
〈材質〉
繊維20は、導電性を有すると共に、電解液に対する耐性を有するものであればよい。繊維20としては、各種の炭素繊維及び金属繊維が挙げられる。繊維20は、例えば、炭素、チタン、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも一種で構成されることが挙げられる。炭素繊維は、具体的には、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を原料とするPAN系炭素繊維、ピッチ繊維を原料とするピッチ系炭素繊維などが挙げられる。炭素繊維は、PAN繊維、ピッチ繊維などの有機繊維を焼成して炭素化することによって得られる。金属繊維は、純チタン又は純タングステンで構成されてもよいし、チタンの合金又はタングステンの合金で構成されていてもよい。
〈繊維径〉
複数の繊維20の平均径、即ち平均繊維径は、例えば1μm以上20μm以下が挙げられる。平均繊維径が1μm以上であることで、繊維集合体30の強度を確保し易い。平均繊維径が20μm以下であることで、繊維20の可撓性を高め易い。そのため、電池セル100(図1参照)を構成したとき、繊維20が隔膜101に突き刺さり難くなる。また、平均繊維径が20μm以下であれば、電極10の単位体積あたりの表面積が増えるので、電解液との反応面積を確保し易い。平均繊維径は、5μm以上でもよい。
繊維径は、例えば、繊維集合体30の断面をSEMで観察し、繊維20の外径を計測することにより求められる。繊維径は、繊維20の断面積と等しい面積を持つ円の直径とする。「繊維20の断面積」とは、繊維20の長手方向に直交する断面の面積をいう。平均繊維径は、例えば10本以上の繊維径の平均値とする。繊維径を測定する繊維20の数は、20本以上、更に30本以上でもよい。
〈繊維長〉
複数の繊維20の平均長さ、即ち平均繊維長は、繊維集合体30の形態によって異なることが挙げられる。クロス、不織布といった第一の形態における繊維集合体31(図4、図6参照)では、平均繊維長は、例えば25mm以上、更に30mm以上である。平均繊維長が25mm以上であることで、繊維20同士が絡み易く、繊維集合体31の形状を維持し易い。クロスの場合、平均繊維長は、例えば80mm以上であることが挙げられる。不織布の場合、平均繊維長は、例えば25mm以上100mm以下であることが挙げられる。ペーパーといった第二の形態における繊維集合体32(図7参照)では、平均繊維長は、例えば20mm以下である。平均繊維長が長いと、繊維20が水平方向に沿うように配置され易い。一般に、第二の形態における繊維集合体32は、バインダ25による繊維20同士の結着により形状を維持するため、第一の形態における繊維集合体31に比べて繊維長が短くてもよい。ペーパーの場合、平均繊維長は、10mm以下、5mm以下、更に3mm以下でもよい。ペーパーを構成する繊維20の長さの下限は、例えば0.1mm以上、更に0.3mm以上、0.5mm以上である。
繊維長は、例えば、X線CT像を解析することにより、繊維20の長さを計測することにより求められる。平均繊維長は、例えば10本以上の繊維長の平均値とする。繊維長を測定する繊維20の数は、20本以上、更に30本以上でもよい。
〈その他〉
繊維20は、電解液との電池反応性を向上させるため、図9に示すように、繊維20の表面に炭素粒子40を有してもよい。繊維20は、図10に示すように、繊維20の表面に触媒50を有してもよい。
〈炭素粒子〉
炭素粒子40は、図9に示すように、繊維20の表面に担持される。ここでいう「担持」とは、繊維20と電気的に導通した状態で炭素粒子40が付着していることを意味する。炭素粒子40の少なくとも一部が繊維20に埋まっていてもよい。炭素粒子40は、電解液との反応点として機能することで、電解液との電池反応性を向上させる。炭素粒子40は、例えば、黒鉛、カーボンブラックなどで構成されている。
炭素粒子40は、繊維20の表面に分散して存在する。炭素粒子40の形状は、代表的には、球状である。炭素粒子40の形状は、球状の他、針状、薄板状など種々の形状をとり得る。炭素粒子40の粒径は、例えば100nm以上50μm以下が挙げられる。ここでの「粒径」は、平均粒径を意味する。
炭素粒子40の粒径は、例えば次のようにして測定することができる。繊維集合体30の断面をSEM又は透過型電子顕微鏡(TEM)で観察する。視野の大きさは、例えば100μm×50μm以上200μm×100μm以下とする。視野の倍率は、例えば3000倍とする。視野内における炭素粒子40を抽出する。抽出する炭素粒子40の数は、例えば10個以上とする。各炭素粒子40について、炭素粒子40の面積と等しい面積を持つ円の直径を求め、その平均値を炭素粒子40の粒径とする。粒径を測定する炭素粒子40の数は、20個以上、更に30個以上でもよい。
本例では、炭素粒子40がバインダ25によって繊維20の表面に担持されている。バインダ25を有することで、炭素粒子40が繊維20の表面に強固に担持される。バインダ25はなくてもよい。炭素粒子40が繊維20の表面に直接付着してもよい。
バインダ25が、炭素を主体とする第一のバインダ、又は導電性金属酸化物を主体とする第二のバインダを含む場合、繊維20と炭素粒子40との間にバインダ25が介在しても、炭素粒子40を繊維20と電気的に導通した状態で担持させることができる。つまり、炭素粒子40と繊維20との間の電気的導通を確保できる。また、バインダ25を介して炭素粒子40間の電気的導通も確保できる。バインダ25が、上述のように、PTFE、PVDF、PVDCなどの樹脂により構成されている場合、即ち炭素化していない場合、炭素粒子40と繊維20との接触によって炭素粒子40と繊維20との間の電気的導通が確保される。また、炭素粒子40同士の接触によって炭素粒子40間の電気的導通が確保される。
炭素粒子40の含有率は、例えば10質量%以上60質量%以下が挙げられる。炭素粒子40の含有率は、繊維集合体30(図3A参照)の質量を100質量%としたときの炭素粒子40の質量の割合である。繊維集合体30の質量は、繊維20、バインダ25、炭素粒子40の合計とする。後述する触媒50を有する場合は、繊維集合体30の質量は、触媒50も含めた質量とする。炭素粒子40の含有率が10質量%以上であることで、電解液との電池反応性を高め易い。炭素粒子40の含有率が高いほど、電池反応性を高め易いが、相対的に繊維20の割合が減少するため、繊維集合体30の強度の低下を招くおそれがある。炭素粒子40の含有率が60質量%以下であることで、繊維集合体30の強度を確保し易い。炭素粒子40の含有率は、20質量%以上50質量%以下、更に25質量%以上45質量%以下でもよい。炭素粒子40の含有率は、例えば、熱重量測定法(TG法)により求められる。
炭素粒子40を有する形態では、バインダ25の含有率は、繊維集合体30の質量を100質量%として、例えば10質量%以上70質量%以下が挙げられる。バインダ25の含有率が10質量%以上であることで、バインダ25によって、炭素粒子40を繊維20の表面に強固に担持し易い。バインダ25の含有率が70質量%以下であることで、相対的に繊維20の割合が減少することによる繊維集合体30の強度低下を抑制できる。バインダ25の含有率は、炭素粒子40を繊維20の表面に担持できるように適宜設定すればよい。バインダ25の含有率は、10質量%以上60質量%以下、更に20質量%以上50質量%以下でもよい。バインダ25が上述した第一のバインダ、又は第二バインダを含む場合、それぞれのバインダの含有率は、例えば、熱重量測定法(TG法)により求められる。
炭素粒子40を担持させた繊維20は、炭素粒子40を含有する塗布液を繊維集合体30に塗布した後、乾燥することで得られる。塗布液は、例えば、炭素粒子40を溶媒に分散させたものである。塗布液には、必要に応じて安定化剤などを含んでもよい。本例のように、バインダ25を有する場合、塗布液には、更にバインダ25の原料を含有する。溶媒としては、水、有機溶媒を利用できる。バインダ25の原料として上述の有機バインダを用いる場合、溶媒は有機溶媒とすることが挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどが挙げられる。バインダ25を導電性金属酸化物で構成する場合は、バインダ25の原料として上記金属イオンを溶媒に溶解する。溶媒は、塗布液を100質量%として、70質量%以上95質量%以下含有することが挙げられる。安定化剤としては、アセチルアセトンなどが挙げられる。安定化剤は、塗布液を100質量%として、1質量%以上10質量%以下含有することが挙げられる。バインダ25の原料として、上述の熱硬化性樹脂の有機バインダを使用した場合、或いは、上述の金属イオンを溶解させた場合は、塗布液を塗布した後に熱処理することが挙げられる。熱処理の条件は、例えば、熱処理温度を300℃以上700℃以下、熱処理時間を10分以上5時間以下とすることが挙げられる。熱処理温度は、400℃以上600℃以下、更に450℃以上550℃以下でもよい。熱処理時間は、15分以上2時間以下、更に30分以上1時間以下でもよい。
上記塗布液を繊維集合体30に塗布した後に乾燥することで、炭素粒子40が繊維20の表面に付着した状態となる。上記塗布液にバインダ25の原料を含有する場合は、上述のように、バインダ25によって繊維20の表面に炭素粒子40を担持させることができる。
〈触媒〉
触媒50は、図10に示すように、繊維20の表面に担持される。触媒50は、電解液と電極との電池反応を活性化させることで、電解液との電池反応性を向上させる。
触媒50は、例えば、金属元素を含有する金属酸化物で構成されている。上記金属元素は、例えば、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、スズ、アンチモン、タリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、及びイリジウムからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。上記金属酸化物は、上記の群から選択される一種の金属元素を含むものでもよいし、複数種の金属元素を含む複合酸化物でもよい。
繊維20が上述した金属繊維である場合、触媒50である金属酸化物は、繊維20を構成する金属元素と同じ金属元素を含むことが挙げられる。この場合、繊維20は元素単体からなり、触媒50はその元素の酸化物からなることが挙げられる。例えば、繊維20がチタンで構成されている場合、触媒50がチタン酸化物(TiO)で構成されていることが挙げられる。例えば、繊維20がタングステンで構成されている場合、触媒50がタングステン酸化物(WO)で構成されていることが挙げられる。
触媒50は、繊維20の表面に分散して存在する。触媒50は、代表的には、粒子状である。粒子状には、球状、針状、薄板状など種々の形状が含まれる。触媒50の粒径は、例えば1nm以上100nm以下が挙げられる。ここでの「粒径」は、平均粒径を意味する。触媒50の粒径は、上述した炭素粒子40の粒径と同様の方法により測定することができる。
本例では、触媒50がバインダ25によって繊維20の表面に担持されている。バインダ25を有することで、触媒50が繊維20の表面に強固に担持される。バインダ25はなくてもよい。触媒50が繊維20の表面に直接付着してもよい。第二のバインダ25が、炭素を主体とする第一のバインダ、又は導電性金属酸化物を主体とする第二のバインダを含む場合、繊維20と触媒50との間にバインダ25が介在しても、触媒50を繊維20と電気的に導通した状態で担持させることができる。つまり、触媒50と繊維20との間の電気的導通を確保できる。また、バインダ25を介して触媒50間の電気的導通も確保できる。バインダ25が、上述のように、PTFE、PVDF、PVDCなどの樹脂により構成されている場合、即ち炭素化していない場合、触媒50と繊維20との接触によって触媒50と繊維20との間の電気的導通が確保される。また、触媒50同士の接触によって触媒50間の電気的導通が確保される。
触媒50の含有率は、例えば1質量%以上30質量%以下が挙げられる。触媒50の含有率は、繊維集合体30(図3A参照)の質量を100質量%としたときの触媒50の質量の割合である。触媒50の含有率が1質量%以上であることで、電解液との電池反応性を高め易い。触媒50の含有率が高いほど、電池反応性を高め易いが、相対的に繊維20の割合が減少するため、繊維集合体30の強度の低下を招くおそれがある。触媒50の含有率が30質量%以下であることで、繊維集合体30の強度を確保し易い。触媒50の含有率は、1質量%以上20質量%以下、更に1質量%以上10質量%以下でもよい。触媒50の含有率は、例えば、熱重量測定法(TG法)により求められる。
触媒50を担持させた繊維20は、上記金属酸化物を構成する金属元素を含有する塗布液を繊維集合体30に塗布した後、酸素を含む雰囲気中で熱処理することで得られる。塗布液は、例えば、上記金属酸化物を構成する金属元素の原料と溶媒とを含有する。塗布液には、必要に応じて安定化剤などを含んでもよい。本例のように、バインダ25を有する場合、塗布液には、更にバインダ25の原料を含有する。上記金属酸化物を構成する金属元素の原料としては、金属アルコキシド、塩化物、酢酸塩、有機金属化合物がある。溶媒としては、水、有機溶媒を利用できる。有機溶媒及び安定化剤のそれぞれの種類や含有量、熱処理の条件は、上述した炭素粒子40の塗布液について説明した事項を参照するとよい。酸素を含む雰囲気は、例えば、空気中が挙げられる。
上記塗布液を繊維集合体30に塗布した後に熱処理することで、金属酸化物を構成する金属元素が繊維集合体30内に熱拡散すると共に酸化する。そして、金属酸化物からなる触媒50が繊維20の表面に付着した状態となる。上記塗布液にバインダ25の原料を含有する場合は、上述のように、バインダ25によって繊維20の表面に触媒50を担持させることができる。
《作用効果》
上述した実施形態の電極10は、電池セル100を構成したとき、繊維20が隔膜101に突き刺さることを抑制できる。その理由は、平均配向度が0.3以下であるからである。平均配向度が0.3以下であれば、繊維集合体30の厚さ方向に配向する繊維20の数が少ない。そのため、繊維20が隔膜101に突き刺さることを抑制できる。上記電極10は、RF電池1の電極に利用した場合、繊維20が隔膜101に突き刺さることに起因する短絡を抑制できる。その結果、RF電池1の電流効率の低下を抑制できる。
実施形態の電池セル100、及び電池セル100を備えるRF電池1は、電流効率が高い。その理由は、電池セル100を構成する正極電極104及び負極電極105が実施形態の電極10であることで、繊維20が隔膜101に突き刺さることに起因する短絡を抑制できるからである。正極と負極との間で短絡が生じ難くなるので、電流効率の低下を抑制できる。
[試験例1]
繊維の平均配向度が異なる繊維集合体を用意した。用意した繊維集合体をRF電池の電極に使用したときの電流効率を調べた。
この試験例では、不織布、クロス、及びペーパーの3種類の形態の繊維集合体を用意した。また、各形態の繊維集合体について、繊維の配向度が異なるものを2つ用意した。用意した各繊維集合体からなる電極を試料No.1~3、及び試料No.11~13とした。
試料No.1及びNo.11の電極における繊維集合体は不織布である。試料No.2及びNo.12では、繊維集合体がクロスである。試料No.3及びNo.13では、繊維集合体がペーパーである。各繊維集合体を構成する繊維はいずれも、炭素繊維である。
繊維集合体が不織布である試料No.1の電極については、繊維の表面に炭素粒子をバインダによって担持させた構成とした。つまり、試料No.1では、炭素繊維の他に、炭素粒子とバインダとを有する。炭素粒子の粒径は15μmである。炭素粒子の含有率は35質量%である。バインダの含有率は35質量%である。バインダの材質は炭素である。繊維集合体がペーパーである試料No.3及びNo.13の電極についても、バインダの材質は炭素である。
各試料の電極を用いて、単一の電池セルを備えるRF電池をそれぞれ構成した。各々のRF電池において、電池セルを構成する正極電極及び負極電極には、同じ試料の電極を用いた。正極電極及び負極電極の各面積は9cmとした。隔膜には、厚さ25μmのナフィオン(登録商標)膜を使用した。正極電解液及び負極電解液には、チタン/マンガン系電解液を使用した。チタン/マンガン系電解液は、硫酸の濃度が5M(mol/L)の水溶液に、チタンイオン及びマンガンイオンがそれぞれ1M(mol/L)の濃度で溶解したものである。
各々のRF電池について、充放電試験を行った。充放電試験の条件は、電流密度が70mA/cmの定電流とした。充電終了電圧は1.5Vとし、放電終了電圧は1.0Vとした。充放電後、電流効率を求めた。電流効率は、「(放電電気量/充電電気量)×100」により求められる。充電電気量は、「(充電時間)×(電流密度×電極面積)」により求められる。放電電気量は、「(放電時間)×(電流密度×電極面積)」により求められる。各試料の電極を用いた各RF電池の電流効率(%)を表1に示す。
各試料の電極における繊維集合体及び繊維の仕様、並びに電池セルを構成したときの繊維集合体の圧縮率及び空隙率は、次のとおりである。表1では、平均配向度を百分率で示している。
(試料No.1)
〈繊維〉
材質:炭素
平均配向度:0.204
平均繊維径:10μm
平均繊維長:50mm
〈繊維集合体〉
形態:不織布
繊維の含有率:30質量%
炭素粒子の含有率:35質量%
バインダの含有率:35質量%
厚さ:1.4mm
圧縮率:50%
空隙率:60体積%
(試料No.11)
〈繊維〉
材質:炭素
平均配向度:0.413
平均繊維径:10μm
平均繊維長:50mm
〈繊維集合体〉
形態:不織布
繊維の含有率:100質量%
厚さ:2.0mm
圧縮率:60%
空隙率:70体積%
(試料No.2)
〈繊維〉
材質:炭素
平均配向度:0.244
平均繊維径:9μm
平均繊維長:100mm
〈繊維集合体〉
形態:クロス
繊維の含有率:100質量%
厚さ:0.5mm
圧縮率:60%
空隙率:40体積%
(試料No.12)
〈繊維〉
材質:炭素
平均配向度:0.493
平均繊維径:9μm
平均繊維長:100mm
〈繊維集合体〉
形態:クロス
繊維の含有率:100質量%
厚さ:0.6mm
圧縮率:60%
空隙率:60体積%
(試料No.3)
〈繊維〉
材質:炭素
平均配向度:0.045
平均繊維径:10μm
平均繊維長:15mm
〈繊維集合体〉
形態:ペーパー
繊維の含有率:40質量%
バインダの含有率:60質量%
厚さ:0.5mm
圧縮率:40%
空隙率:60体積%
(試料No.13)
〈繊維〉
材質:炭素
平均配向度:0.135
平均繊維径:10μm
平均繊維長:1.5mm
〈繊維集合体〉
形態:ペーパー
繊維の含有率:50質量%
バインダの含有率:50質量%
厚さ:0.5mm
圧縮率:40%
空隙率:60体積%
Figure 2024075814000002
表1に示すように、繊維集合体が不織布又はクロスである試料No.1、2及びNo.11、12において、平均配向度が30%以下、即ち0.3以下である試料No.1、2の電流効率は、試料No.11、12の電流効率に比較して高い。試料No.1、2の電流効率は、90%以上、更に95%以上、特に99%以上を満たす。また、繊維集合体がペーパーである試料No.3及びNo.13において、平均配向度が10%以下、即ち0.1以下である試料No.3の電流効率は、試料No.13の電流効率に比較して高い。試料No.3の電流効率は、90%以上、更に95%以上、特に99%以上を満たす。
繊維集合体の形態が同じ試料同士で比較したとき、試料No.1~3は、試料No.11~13よりも電流効率の低下を抑制できることが分かる。試料No.1~3において電流効率の低下を抑制できた理由は、繊維の隔膜への突き刺さりを抑制できたことによるものと考えられる。試料No.1~3では、平均配向度が小さいので、繊維の隔膜への突き刺さりが発生し難い。そのため、試料No.1~3では、繊維が隔膜に突き刺さることに起因する短絡が抑制されることから、電流効率の低下が抑制される。
1 レドックスフロー電池(RF電池)
10 電極、11 第一の面
20 繊維、25 バインダ
20s 糸、21s 第一の糸、22s 第二の糸
30,31,32 繊維集合体
40 炭素粒子
50 触媒
7 交流/直流変換器、71 変電設備
8 発電部、9 負荷
100 電池セル
101 隔膜、102 正極セル、103 負極セル
104 正極電極、105 負極電極
106 正極電解液タンク、107 負極電解液タンク
108,109 往路配管
110,111 復路配管
112,113 ポンプ
120 セルフレーム
121 双極板、122 枠体
122o 凹部
123,124 給液マニホールド、125,126 排液マニホールド
123s,124s 給液スリット、125s,126s 排液スリット
127 シール部材
200 セルスタック、200s サブスタック
210 エンドプレート、220 給排板、230 締付機構
p 中心間距離
d 対角線

Claims (20)

  1. シート形状を有する電極であって、
    複数の繊維が組み合わされた繊維集合体を備え、
    前記複数の繊維の平均配向度は0.3以下であり、
    前記平均配向度は、前記繊維集合体の厚さ方向と直交する水平線に対する前記複数の繊維の各々の角度を90°で割った値の平均値である、
    電極。
  2. 前記繊維集合体における前記繊維の含有率が20質量%以上である請求項1に記載の電極。
  3. 前記繊維集合体は、クロス又は不織布である請求項1又は請求項2に記載の電極。
  4. 前記複数の繊維の平均長さが25mm以上である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電極。
  5. 前記繊維集合体は、前記繊維の表面に付着されたバインダを含む請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電極。
  6. 前記繊維集合体はペーパーであり、
    前記繊維の表面に付着されたバインダを含む請求項1又は請求項2に記載の電極。
  7. 前記平均配向度が0.1以下である請求項6に記載の電極。
  8. 前記複数の繊維の平均長さが20mm以下である請求項6又は請求項7に記載の電極。
  9. 前記繊維集合体における前記バインダの含有率が20質量%以上80質量%以下である請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の電極。
  10. 前記バインダは、炭素を主体とする第一のバインダを含む請求項5から請求項9のいずれか一項に記載の電極。
  11. 前記バインダは、導電性金属酸化物を主体とする第二のバインダを含む請求項5から請求項10のいずれか一項に記載の電極。
  12. 前記繊維の表面に担持された炭素粒子を有する請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の電極。
  13. 前記繊維の表面に担持された炭素粒子を有し、
    前記炭素粒子は、前記バインダによって担持されている請求項5から請求項11のいずれか一項に記載の電極。
  14. 前記繊維の表面に担持された触媒を有する請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の電極。
  15. 前記繊維の表面に担持された触媒を有し、
    前記触媒は、前記バインダによって担持されている請求項5から請求項11、及び請求項13のいずれか一項に記載の電極。
  16. 前記触媒は、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、スズ、アンチモン、タリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、及びイリジウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含有する金属酸化物で構成される請求項14又は請求項15に記載の電極。
  17. 前記繊維は、炭素、チタン、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも一種で構成される請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の電極。
  18. 正極電極と、負極電極と、隔膜とを備え、
    前記正極電極及び前記負極電極の少なくとも一方の電極は、請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の電極である、
    電池セル。
  19. 前記電極における前記繊維集合体の空隙率が30体積%以上89体積%以下である請求項18に記載の電池セル。
  20. 請求項18又は請求項19に記載の電池セルを備える、
    レドックスフロー電池。
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