JP2024071911A - 流路部材 - Google Patents

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Yoshihiro Fujita
伸一郎 高橋
Shinichiro Takahashi
昂平 小澤
Kohei Ozawa
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Abstract

Figure 2024071911000001
【課題】ガス拡散層との接触抵抗を低減することができ、かつガスの流路断面積を十分に確保可能な流路部材を提供する。
【解決手段】流路部材は、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を有する金属基材と、前記金属基材の前記第1面の面内における第1方向に延在する流路部とを備え、前記流路部は、前記金属基材の厚さ方向に貫通する貫通孔部と、前記流路部の側壁部間を連結する連結部とを含み、前記金属基材の厚さ方向の断面を見たときに、前記流路部の前記側壁部は、前記貫通孔部の幅方向中心に向かって突出する突出部を有し、前記貫通孔部の前記突出部は、前記第1面と前記第2面との間における最小幅となる部分である。
【選択図】図1

Description

本開示は、流路部材に関する。
電気自動車、家庭用の小型発電システム等において固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell,PEFC)が用いられている。固体高分子型燃料電池は、膜電極複合体(Membrane-Electrode Assembly,MEA)及びセパレータを有する燃料電池セルを複数個並列して構成される。膜電極複合体は、一般に、固体高分子電解質膜の両面に触媒層及びガス拡散層(Gass Diffusion Layer,GDL)をこの順で積層した構成を有する。セパレータは、ガス拡散層に接面して設けられており、反応ガス(アノード側セパレータにおいては水素等の燃料ガス、カソード側セパレータにおいては空気(又は酸素)等の酸化剤ガス)をガス拡散層に供給するとともに、集電を行うためのものであり、微細な凹凸形状のガス流路を有する。セパレータの微細な凹凸形状は、一般に、微細凹凸成形金型を用いた金属薄板のプレス加工により形成される(特許文献1参照)。
国際公開第2015/198825号パンフレット
ガス拡散層とセパレータとの接触抵抗の低減等の観点から、ガス拡散層に接触するセパレータの凸部の頂部が平坦であるのが好適とされ、流路から反応ガス(水素や空気(又は酸素))をガス拡散層に安定的に均一に供給する観点から、流路断面積を相対的に増大させるためにセパレータの凹部(凸部)の側壁部が鉛直であるのが好適とされる。
上記特許文献1に記載されているように、微細凹凸成形金型を用いて金属薄板をプレス加工すると、製造されるセパレータのガス流路である微細な凹凸形状の凸部101の上面101Aは平坦面であり、凸部101の上面101Aに連続する側壁部102が略鉛直(凸部101の上面101Aに対して略直交)であるものの、凸部101の上面101Aと側壁部102との間に連続する肩部103が丸みを帯びている(図8A参照)。丸みを帯びた肩部103はガス拡散層に接触しないため、ガス拡散層とセパレータとの接触面積が相対的に減少し、接触抵抗が相対的に高くなる。ガス拡散層とセパレータとの接触抵抗が高いほどセパレータによる集電時に発熱しやすくなり、発電効率が低下してしまうという問題がある。
近年、燃料電池の小型化及び燃料電池における高電流密度化を達成することが求められる。燃料電池の小型化及び燃料電池における高電流密度化を達成するために、セパレータの微細な凹凸形状のピッチ(隣接する凸部101の間隔)を小さくすることが求められている。微細な凹凸形状のピッチが小さいセパレータを上記特許文献1に記載の方法で作製すると、側壁部102の角度θが大きくなってしまい、流路断面積が相対的に減少してしまう(図8B参照)。
上記課題に鑑み、本開示は、ガス拡散層との接触抵抗を低減することができ、かつガスの流路断面積を十分に確保可能な流路部材を提供することを目的とする。
このような目的を達成するために、本開示の一実施形態として、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を有する金属基材と、前記金属基材の前記第1面の面内における第1方向に延在する流路部とを備え、前記流路部は、前記金属基材の厚さ方向に貫通する貫通孔部と、前記流路部の側壁部間を連結する連結部とを含み、前記金属基材の厚さ方向の断面を見たときに、前記流路部の前記側壁部は、前記貫通孔部の幅方向中心に向かって突出する突出部を有し、前記貫通孔部の前記突出部は、前記第1面と前記第2面との間における最小幅となる部分である流路部材が提供される。
本開示によれば、ガス拡散層との接触抵抗を低減することができ、かつガスの流路断面積を十分に確保可能な流路部材を提供することができる。
図1は、本開示の実施の形態に係る流路部材の概略構成を示す平面図である。 図2は、本開示の実施の形態に係る流路部材の概略構成を示す、図1におけるA-A線切断端面図である。 図3は、本開示の実施の形態に係る流路部材の概略構成を示す、図1におけるB-B線切断端面図である。 図4は、本開示の実施の形態に係る流路部材の概略構成を示す、図1におけるC-C線断面図である。 図5Aは、本開示の実施の形態に係る流路部材の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。 図5Bは、本開示の実施の形態に係る流路部材の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。 図5Cは、本開示の実施の形態に係る流路部材の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。 図6Aは、本開示の実施の形態に係る流路部材の製造方法の一工程を示す切断端面図である。 図6Bは、本開示の実施の形態に係る流路部材の製造方法の一工程を示す切断端面図である。 図6Cは、本開示の実施の形態に係る流路部材の製造方法の一工程を示す切断端面図である。 図6Dは、本開示の実施の形態に係る流路部材の製造方法の一工程を示す切断端面図である。 図7Aは、本開示の実施の形態における燃料電池の概略構成を示す切断端面図である。 図7Bは、本開示の実施の形態における燃料電池の概略構成を示す切断端面図である。 図8Aは、従来の燃料電池用セパレータの概略構成を示す切断端面図である。 図8Bは、従来の燃料電池用セパレータの概略構成を示す切断端面図である。
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
当該図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりして示している場合がある。本明細書等において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む範囲であることを意味する。本明細書等において、「フィルム」、「シート」、「板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。例えば、「板」は、「シート」、「フィルム」と一般に呼ばれ得るような部材をも含む概念である。
本実施形態における態様1は、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を有する金属基材と、前記金属基材の前記第1面の面内における第1方向に延在する流路部とを備え、前記流路部は、前記金属基材の厚さ方向に貫通する貫通孔部と、前記流路部の側壁部間を連結する連結部とを含み、前記金属基材の厚さ方向の断面を見たときに、前記流路部の前記側壁部は、前記貫通孔部の幅方向中心に向かって突出する突出部を有し、前記貫通孔部の前記突出部は、前記第1面と前記第2面との間における最小幅となる部分である流路部材である。
本実施形態における態様2は、上記態様1において、前記連結部は、前記金属基材の厚さ方向の実質的に中央に位置する流路部材である。
本実施形態における態様3は、上記態様1又は2において、前記流路部は、複数の前記貫通孔部及び複数の前記連結部を含み、前記複数の貫通孔部及び前記複数の連結部は、前記第1方向に交互に並列している流路部材である。
本実施形態における態様4は、上記態様1~3のいずれかにおいて、複数の前記流路部を備え、前記複数の流路部は、前記金属基材の前記第1面の面内における第2方向に並列しており、前記第2方向は、前記第1方向に直交する流路部材である。
本実施形態における態様5は、上記態様4において、前記複数の流路部のピッチは、0.2mm~3.0mmである流路部材である。
本実施形態における態様6は、上記態様1~5のいずれかにおいて、前記第1面における前記貫通孔部の開口幅は、前記第1面における前記連結部の開口幅よりも大きく、前記貫通孔部の前記開口幅及び前記連結部の前記開口幅は、前記第1方向に直交する、前記第1面の面内における第2方向の長さである流路部材である。
本実施形態における態様7は、上記態様1~6のいずれかにおいて、前記金属基材の前記第1面の面内における前記第1方向に直交する第2方向に沿った断面を見たときに、前記連結部は、前記第1方向に突出する突起部を有する流路部材である。
図1~3に示すように、本実施形態に係る流路部材1は、第1面2A及び第1面2Aの反対側に位置する第2面2Bを有する金属基材2と、金属基材2の第1方向D1(図1における縦方向)に延在する複数の流路部3とを備える。本実施形態に係る流路部材1は、燃料電池用の流路部材として主に使用され得るものである。
金属基材2を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、オーステナイト系ステンレス、チタン、アルミニウム等であればよい。これらの材料により構成される金属基材2を備える流路部材1は、その表面(全面)に金層、銀層、ニッケル合金層、カーボン層、白金等の貴金属層、導電材料を含有する樹脂層等の電気めっき層、蒸着層、電着層等(図示省略)が膜厚5nm~30nm程度で設けられていてもよい。上記層が設けられていることで、流路部材1の耐食性を向上させることができるとともに、燃料電池セル10(図7A及び図7B参照)のガス拡散層15,16との接触抵抗をより低減することができる。
金属基材2の厚さTは、本実施形態に係る流路部材1を用いた燃料電池セル10(図7A及び図7B参照)の厚さに対する要求や仕様等に応じて適宜設定されればよいが、例えば、0.05mm~1.00mm程度であればよい。
複数の流路部3は、第1方向D1に沿って延在し、第1方向D1に直交する第2方向D2(流路部3の幅方向)に沿って並列している。金属基材2の第1面2A側からの平面視における流路部3のピッチPは、特に限定されるものではないが、例えば、0.2mm~3.0mm程度であればよい。本実施形態に係る流路部材1は、後述するように基板20のエッチングにより形成される流路部3(貫通孔部31及び連結部32)を有することで、流路部材1の金属基材2の平面度が相対的に小さいため、流路部3のピッチPが相対的に狭くても(例えば0.2mm~1.5mm程度)、ガス拡散層15,16との接触面積及び流路部3の流路断面積が十分に確保され得る。なお、流路部3のピッチPは、金属基材2の第1面2A側からの平面視において、一の流路部3の第2方向D2(幅方向)における中心とそれに隣接する他の流路部3の第2方向D2(幅方向)における中心との間の長さであって、第2方向D2(幅方向)に平行な長さを意味する。
各流路部3は、金属基材2の厚さ方向に貫通する貫通孔部31と、金属基材2の厚さ方向に非貫通の連結部32と、流路部3の延在方向である第1方向D1に直交する第2方向D2において互いに向かい合う側壁部33とを有する。流路部3の側壁部33は、貫通孔部31の側壁部331と、連結部32の上方側及び下方側(金属基材2の厚さ方向における一方側及び他方側)に位置する側壁部332とを含む。側壁部332は、貫通孔部31の側壁部331に対し第1方向D1に連続する。連結部32は、流路部3の延在方向である第1方向D1に直交する第2方向D2において互いに向かい合う側壁部332の間を連結する。貫通孔部31と連結部32とは、流路部3の延在方向である第1方向D1に沿って交互に並列する。流路部3は、燃料電池セル10(図7A及び図7B参照)のガス拡散層15,16に反応ガス(水素等の燃料ガス、酸素や空気等の酸化剤ガス)を供給するためのガス流路を構成するものである。流路部3が貫通孔部31を有することで、当該貫通孔部31を介してガス拡散層15,16に反応ガスが供給される。また、後述するように、本実施形態に係る流路部材1は、基板20のエッチングにより形成されるが(図6A~6D参照)、流路部3が連結部32を有することで、基板20のエッチングに起因する残留応力を緩和することができ、金属基材2の反りを抑制することができる。
連結部32は、金属基材2の第1面2A側及び第2面2B側の両面からのエッチングにより残存する部分として形成される。このようにして形成される連結部32は、金属基材2の厚さ方向において第1面2A及び第2面2Bの間に位置していればよく、換言すると、連結部32が第1面2A及び第2面2Bのいずれとも面一になっていなければよい。連結部32は、金属基材2の厚さ方向の中央よりも第1面2A側に位置していてもよいし、第2面2B側に位置していてもよいが、金属基材2の厚さ方向における実質的に中央に位置するのが好ましい。なお、金属基材2の厚さ方向における実質的に中央とは、第2方向D2及び金属基材2の厚さ方向における連結部32の中心が、金属基材2の厚さ方向の中央から金属基材2の厚さTの30%の長さ(金属基材2の厚さ方向の長さ)の範囲内に位置することを意味する。連結部32が金属基材2の第1面2A側及び第2面2B側の両面からのエッチングにより形成されていることで、連結部32の厚さT32が金属基材2の厚さTよりも薄く構成されるため、流路部材1の軽量化を図ることができる。また、流路部材1が連結部32を有することで、燃料電池セル10(図7A及び7B参照)において金属基材2の第1面2Aに接面するガス拡散層15,16が流路部3内に脱落するのを抑制することができる。
第1方向D1に沿った断面を見たときに、連結部32は、第1方向D1に突出する突起部321と、第1方向D1の一方側の突起部321を含む湾曲側面322,322と、第1方向D2の他方側のの突起部321を含む湾曲側面323,323と、金属基材2の第1面2A側に位置する湾曲面324と、金属基材2の第2面2B側に位置する湾曲面325とを有する(図4参照)。連結部32が突起部321を有することで、流路部3における流体(反応ガス等)の第1方向D1の流れに乱流を引き起こすことができるため、当該流体が流路部3に滞留してしまうのを抑制することができ、反応ガスの循環効率や水の排出効率を向上させることができる。突起部321は、連結部32の厚さ方向(金属基材2の厚さ方向)において連結部32の実質的に中央に位置していればよい。なお、連結部32の厚さ方向の実質的に中央とは、連結部32の厚さT32の30%の長さ(連結部32の厚さ方向の長さ)の範囲内に位置することを意味し、突起部321が連結部32の厚さ方向の中央よりも第1面2A側に位置していてもよいし、第2面2B側に位置していてもよい。
連結部32の厚さT32は、流路部材1が連結部32を備えることによる効果(例えば、金属基材2の反りの抑制効果等)が十分に奏され得る程度に適宜設定されればよく、例えば、0.05mm~1.00mm程度であればよい。なお、連結部32の厚さT32は、第1方向D1及び第2方向D2における連結部32の中心の厚さであり、マイクロメータ(ミツトヨ社製,デジタルスプラインマイクロメータ SPM2-25MX)等を用いて測定され得る。
連結部32の第2方向D2におけるピッチP32は、流路部材1が連結部32を備えることによる効果(例えば、金属基材2の反りの抑制効果、流路部材1の軽量化効果、ガス拡散層15,16の脱落抑制効果等)が十分に奏され得る程度に適宜設定される。当該ピッチP32は、例えば、3mm~30mm程度であればよい。連結部32のピッチP32は、一の流路部3内で実質的に同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、一の流路部3における連結部32のピッチP32が、他の流路部3における連結部32のピッチP32と異なっていてもよい。なお、連結部32のピッチP32は、金属基材2の第1面2A側からの平面視において、一の流路部3における一の連結部32の第1方向D1の中心とそれに隣接する他の連結部32の第1方向D1の中心との間の長さであって、第1方向D1に平行な長さを意味する。
本実施形態において、各流路部3の複数の連結部32は、第2方向D2に沿って並んでいるが、この態様に限定されるものではない。例えば、各流路部3の複数の連結部32は、第2方向D2に沿って並んでいなくてもよい。
金属基材2の厚さ方向の第2方向D2に沿った断面を見たときに、貫通孔部31の側壁部331は、貫通孔部31の幅方向(第2方向D2)中心に向かって突出する突出部34を有する。換言すると、貫通孔部31は、金属基材2の第1面2Aと第2面2Bとの間に、最小幅となる部分を有する。この最小幅となる部分が突出部34である。貫通孔部31の側壁部331が突出部34を有することで、流路部3における流体(反応ガス等)の流れに乱流を引き起こすことができるため、当該流体が流路部3に滞留してしまうのを抑制することができ、反応ガスの循環効率や水の排出効率を向上させることができる。
金属基材2の厚さ方向の断面を見たときに、第1面2A上における貫通孔部31の側壁部331間の長さ(貫通孔部31の開口幅)を第1長さLとし、貫通孔部31の側壁部331間の最小長さ(貫通孔部31の最小幅)を第2長さLとし、第2面2B上における貫通孔部31の側壁部331間の長さ(貫通孔部31の開口幅)を第3長さLとする。なお、貫通孔部31の幅は、第2方向D2(流路部3の幅方向)に沿った長さである。第1長さL、第2長さL及び第3長さLの関係としては、第2長さLが第1長さL及び第3長さLよりも短ければよく(図5A~5C参照)、第1長さL及び第3長さLが実質的に同一であってもよいし(図5A参照)、第1長さLが第3長さLよりも長くてもよいし(図5B参照)、第3長さLが第1長さLよりも長くてもよい(図5C参照)。第2長さLは、第1長さL及び第3長さLよりも0.01mm~0.10mm程度短ければよい。側壁部331間の第1長さL、第2長さL及び第3長さLが上記関係を有し、側壁部331が上記形状を有することで、流路部3における流体(反応ガス等)の流れに乱流を引き起こすことができるため、当該流体が流路部3に滞留してしまうのを抑制することができ、反応ガスの循環効率や副生成物としての水の排出効率を向上させることができる。第1長さL、第2長さL及び第3長さLは、金属基材2の厚さ方向に沿った断面視において第1面2A及び第2面2Bと平行な方向、かつ第2方向D2に平行な方向における長さである。
第1長さL及び第3長さLが同一である場合(図5A参照)、突出部34が金属基材2の厚さ方向の中央に位置することになる。一方、第1長さLが第3長さLよりも長い場合(図5B参照)、突出部34は金属基材2の厚さ方向の中央よりも第2面2B側に位置することになり、第3長さLが第1長さLよりも長い場合(図5C参照)、突出部34は金属基材2の厚さ方向の中央よりも第1面2A側に位置することになる。図5A~5Cに示す態様において、突出部34は、金属基材2の厚さ方向における実質的に中央に位置する。なお、金属基材2の厚さ方向における実質的に中央とは、突出部34が、金属基材2の厚さ方向の中央から金属基材2の厚さTの30%の長さ(金属基材2の厚さ方向の長さ)の範囲内に位置することを意味する。図5B及び図5Cに示す態様の金属基材2の第1面2Aをガス拡散層15,16に向かわせた燃料電池セル10において、突出部34が金属基材2の厚さ方向の中央よりも第1面2A側又は第2面2B側に位置することで、突出部34が金属基材2の厚さ方向の中央に位置する場合(図5A参照)と比べると、突出部34とガス拡散層15,16との間に狭空間が形成されることで毛管力が発現しやすくなるため、生成水等による流路部3の閉塞が生じ難くなる。
第1面2A上における貫通孔部31の側壁部331間の長さ(第1長さL)として定義される貫通孔部31の開口幅W31は、第1面2Aにおける連結部32の側壁部332間の長さとして定義される連結部32の開口幅W32よりも大きい(図1参照)。なお、貫通孔部31の開口幅W31及び連結部32の開口幅W32は、いずれも金属基材2の厚さ方向に沿った断面視において第1面2Aと平行な方向、かつ第2方向D2に平行な方向における長さである。
上述した構成を有する流路部材1の製造方法について説明する。
第1面20A及びその反対側に位置する第2面20Bを有する基板20を準備する。基板20の第1面20Aに、流路部材1の流路部3(貫通孔部31及び連結部32)に対応する開口パターン41,42を有する第1レジストパターン40を形成し、基板20の第2面20Bに、流路部材1の流路部3(貫通孔部31及び連結部32)に対応する開口パターン51,52を有する第2レジストパターン50を形成する(図6A及び図6B参照)。このとき、基板20の厚さ方向に沿った断面視において、第1レジストパターン40の開口パターン41,42の中心と第2レジストパターン50の開口パターン51,52の中心とが一致するように、第1レジストパターン40及び第2レジストパターン50を形成する。第1レジストパターン40及び第2レジストパターン50において、連結部32に対応する開口パターン42,52の開口幅W42,W52(第2方向D2に沿った長さ)は、貫通孔部31に対応する開口パターン41,51の開口幅W41,W51(第2方向D2に沿った長さ)よりも小さい。これにより、開口パターン42,52を介してエッチング液が相対的に侵入しにくくなるため、基板20の第1面20A側及び第2面20B側からのエッチングにより当該基板20を貫通させることなく、連結部32を形成することができる。開口パターン42,52の開口幅W42,W52は、後述するウェットエッチング処理により連結部32を形成可能な程度に適宜設定されればよい。
開口パターン41,51は、後述する工程におけるエッチング処理で形成される貫通孔部31に対応するものであるため、開口パターン41,51の開口幅W41,W51は、流路部材1の第1長さL1及び第3長さL3に応じて適宜設定される。
次に、基板20の第1面20A及び第2面20B側から同時にウェットエッチング処理を行うことで流路部3(貫通孔部31及び連結部32)を形成する(図6C及び図6D参照)。ウェットエッチング処理の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、基板20の第1面20A側及び第2面20B側にエッチング液を吹き付けるスプレーエッチング法、基板20をエッチング液に浸漬させるディッピング法等を用いればよい。
最後に、基板20の第1面20A及び第2面20Bのそれぞれに形成されている第1レジストパターン40及び第2レジストパターン50を除去する。このようにして、本実施形態に係る流路部材1を製造することができる(図1~3参照)。
続いて、本実施形態に係る流路部材1を用いた燃料電池セル10について説明する。
本実施形態における燃料電池セル10は、膜電極複合体11と、膜電極複合体11の両面に接面して設けられた流路部材1とを備える(図7A及び図7B参照)。燃料電池は、複数個の燃料電池セル10が積層されたスタック構造を有する。
膜電極複合体11は、固体高分子電解質膜12と、固体高分子電解質膜12の両面に順に積層された触媒層13,14及びガス拡散層15,16とを有する。固体高分子電解質膜12の一方面に積層された触媒層13及びガス拡散層15が燃料極(水素極)17を構成し、他方面に積層された触媒層14及びガス拡散層16が空気極(酸素極)18を構成する。
固体高分子電解質膜12は、例えば、基材上に水素イオン伝導性高分子電解質を含有する溶液を塗工し、乾燥することにより形成される。水素イオン伝導性高分子電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、より具体的には、炭化水素系イオン交換膜のC-H結合をフッ素で置換したパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFS系ポリマー)等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入することで、化学的に安定し、スルホン酸基の解離度が高く、高いイオン伝導性が実現できる。このような水素イオン伝導性高分子電解質の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」(登録商標)、旭硝子社製の「Flemion」(登録商標)、旭化成社製の「Aciplex」(登録商標)、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」(登録商標)等が挙げられる。水素イオン伝導性高分子電解質含有溶液中に含まれる水素イオン伝導性高分子電解質の濃度は、通常5~60質量%程度、好ましくは20~40質量%程度である。なお、固体高分子電解質膜12の膜厚は通常20~250μm程度、好ましくは20~80μm程度である。また、上記の水素イオン伝導性高分子電解質膜以外には、アニオン導電性固高分子電解質膜や液状物質含浸膜も用いることができる。アニオン伝導性電解質膜としては炭化水素系樹脂又はフッ素系樹脂等が挙げられる。炭化水素系樹脂の具体例としては、旭化成社製のAciplex(登録商標)A201,211,221や、トクヤマ社製のネオセプタ(登録商標)AM-1,AHA等が挙げられる。フッ素系樹脂の具体例としては、東ソー社製のトスフレックス(登録商標)IE-SF34等が挙げられる。また、液状物質含浸膜としては、例えばポリベンゾイミダゾール(PBI)が挙げられる。
触媒層13,14は、公知の白金含有の触媒層(カソード触媒層14及びアノード触媒層13)である。触媒層13,14は、触媒粒子を担持させた炭素粒子及び水素イオン伝導性高分子電解質を含有する。触媒粒子としては、例えば、白金、白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、例えば、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄等からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と白金との合金等が挙げられる。なお、通常は、カソード触媒層14に含まれる触媒粒子は白金であり、アノード触媒層13に含まれる触媒粒子は上記金属と白金との合金である。また、水素イオン伝導性高分子電解質としては、上述した固体高分子電解質膜12に使用されるものと同じ材料を使用することができる。
ガス拡散層15,16としては、公知であり、燃料極17、空気極18を構成する各種のガス拡散層を使用でき、燃料ガス及び酸化剤ガスを効率よく触媒層13,14に供給するため、多孔質の導電性基材からなっている。多孔質の導電性基材としては、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス等が挙げられる。
流路部材1は、金属基材2の第1面2Aをガス拡散層15,16側に向けるようにして設けられている。燃料極17のガス拡散層15に当接する流路部材1の流路部3を介して、当該ガス拡散層15に燃料ガス(水素)が供給され、空気極18のガス拡散層16に当接する流路部材1の流路部3を介して、当該ガス拡散層16に酸化剤ガス(空気又は酸素)が供給される。
上述した構成を有する燃料電池セル10において、流路部材1の流路部3が連結部32を有することで、金属基材2の反りが抑制されているため、流路部材1の金属基材2の第1面2Aが確実にガス拡散層15,16に接面する。また、流路部材1の金属基材2の第1面2Aの平面度が相対的に小さいこともあり、流路部材1とガス拡散層15,16との接触抵抗を低減することができ、燃料電池セル10による発電効率を向上させることができる。さらに、流路部3の貫通孔部31の側壁部331が、幅方向(第2方向D2)中心に向かって突出する突出部34を有することで、流路部3における流体(反応ガスや副生成物としての水等)の流れに乱流を引き起こすことができるため、当該流体が流路部3に滞留してしまうのを抑制することができ、反応ガスの循環効率や副生成物としての水の排出効率を向上させることができる。さらにまた、流路部材1がエッチングにより形成された流路部3を有することで、流路部3のピッチPが相対的に狭くても(例えば0.2mm~1.5mm程度)、流路部3の流路断面積を十分に確保することができ、燃料電池セル10における副生成物である水を効果的に排出することができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、実施例等をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
基板20(SUS316L,板厚:0.20mm)を準備し、基板20の第1面20A及び第2面20Bのそれぞれに、感光性ドライフィルムを、ロールラミネーターを用いて貼付した。
次に、所定の開口パターンを有するフォトマスクを準備し、当該フォトマスクと、第1面20A及び第2面20Bのそれぞれに貼付された感光性ドライフィルムとを真空密着させて露光し、その後現像することで、第1面20Aに第1レジストパターン40を形成し、第2面20Bに第2レジストパターン50を形成した。
続いて、第1レジストパターン40及び第2レジストパターン50が形成された基板20に対してディッピング法によるエッチング処理を実施し、流路部材1を作製した。
上述のようにして作製された流路部材1の金属基材2の第1面2Aの平面度を、平面度測定装置(OLYMPUS社製,STM7)を用いて測定したところ、当該平面度が0.05mmであった。また、流路部3(貫通孔部31)の断面のSEM画像を確認したところ、流路部3(貫通孔部31)の側壁部331には、流路部3の幅方向(第2方向D2)中心に向かって突出する突出部34が形成されており、第1長さL1が0.82mm、第2長さL2が0.34mm、第3長さL3が0.85mmであった。
[比較例1]
連結部32を有しない以外は同様の構成を有する流路部材を、実施例1と同様にして作製した。当該流路部材の金属基材の第1面の平面度を実施例1と同様にして測定したところ、当該平面度が0.15mmであった。
1…流路部材
2…金属基材
3…流路部
31…貫通孔部
32…連結部
33,331,332…側壁部
34…突出部

Claims (7)

  1. 第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を有する金属基材と、
    前記金属基材の前記第1面の面内における第1方向に延在する流路部と
    を備え、
    前記流路部は、前記金属基材の厚さ方向に貫通する貫通孔部と、前記流路部の側壁部間を連結する連結部とを含み、
    前記金属基材の厚さ方向の断面を見たときに、前記流路部の前記側壁部は、前記貫通孔部の幅方向中心に向かって突出する突出部を有し、
    前記貫通孔部の前記突出部は、前記第1面と前記第2面との間における最小幅となる部分である、流路部材。
  2. 前記連結部は、前記金属基材の厚さ方向の実質的に中央に位置する
    請求項1に記載の流路部材。
  3. 前記流路部は、複数の前記貫通孔部及び複数の前記連結部を含み、
    前記複数の貫通孔部及び前記複数の連結部は、前記第1方向に交互に並列している
    請求項1又は2に記載の流路部材。
  4. 複数の前記流路部を備え、
    前記複数の流路部は、前記金属基材の前記第1面の面内における第2方向に並列しており、
    前記第2方向は、前記第1方向に直交する
    請求項1又は2に記載の流路部材。
  5. 前記複数の流路部の前記第2方向におけるピッチは、0.2mm~3.0mmである
    請求項4に記載の流路部材。
  6. 前記第1面における前記貫通孔部の開口幅は、前記第1面における前記連結部の開口幅よりも大きく、
    前記貫通孔部の前記開口幅及び前記連結部の前記開口幅は、前記第1方向に直交する、前記第1面の面内における第2方向の長さである
    請求項1又は2に記載の流路部材。
  7. 前記金属基材の前記第1面の面内における前記第1方向に直交する第2方向に沿った断面を見たときに、前記連結部は、前記第1方向に突出する突起部を有する
    請求項1又は2に記載の流路部材。
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