JP5700087B2 - 電解質膜−触媒層接合体、これを用いた電解質膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池、触媒層転写フィルム、並びに電解質膜−触媒層接合体の製造方法 - Google Patents

電解質膜−触媒層接合体、これを用いた電解質膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池、触媒層転写フィルム、並びに電解質膜−触媒層接合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電解質膜−触媒層接合体、これを用いた電解質膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池、触媒層転写フィルム、並びに電解質膜−触媒層接合体の製造方法に関するものである。
燃料電池は、電解質の両面に電極が配置され、水素と酸素の電気化学反応により発電する電池であり、発電時に発生するのは水のみである。このように従来の内燃機関と異なり、二酸化炭素等の環境負荷ガスを発生しないために次世代のクリーンエネルギーシステムとして普及が見込まれている。その中でも特に固体高分子形燃料電池は、作動温度が低く、電解質の抵抗が少ないことに加え、活性の高い触媒を用いるので小型でも高出力を得ることができ、家庭用コージェネレーションシステム等として早期の実用化が見込まれている。
この固体高分子形燃料電池は、まず、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜を準備し、この電解質膜の一方面にアノード触媒層を、他方面にカソード触媒層を形成して電解質膜−触媒層接合体を作製し、さらに、各触媒層上にガス拡散層を形成して電解質膜−電極接合体を作製する。そして、この電解質膜−電極接合体に、ガスケットやセパレータを設置して固体高分子形燃料電池が完成する。しかしながら、上記アノード触媒層とカソード触媒層とは外観(形状や色)がほぼ同じであるために、電解質膜−電極接合体を組み立てる際にアノード側とカソード型との向きを間違えて組み合わせてしまう可能性があり、これにより所期の性能が損なわれてしまったり、歩留り低下によるコスト高になるといった問題があった。
そこで、特許文献1に記載の固体高分子形燃料電池は、電解質膜の一方面に電解質膜よりも面積の小さいアノード触媒層を、電解質膜の他方面に電解質膜よりも面積の小さいカソード触媒層を形成している。そして、電解質膜の触媒層が形成されていない領域に、触媒層と同一の組成を有する材料でできた識別マークを形成し、この識別マークによってアノード側とカソード側とを判別するように構成されている。
特開2007−179809号公報
しかしながら、一般的に触媒層に使用される材料は非常に高価であるため、上述したように電池性能に寄与しない触媒層を使用して識別マークを形成することは製造コストの観点から好ましくない。
そこで、本発明は、アノード触媒層とカソード触媒層とが判別できるとともに、低コスト化を図ることのできる電解質膜−触媒層接合体、これを用いた電解質膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池、触媒層転写フィルム、並びに電解質膜−触媒層接合体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明に係る第1の電解質膜−触媒層接合体は、上記課題を解決するためになされたものであり、電解質膜と、前記電解質膜の一方面に形成されたアノード触媒層と、前記電解質膜の他方面に形成されたカソード触媒層と、を備えており、前記アノード触媒層及びカソード触媒層のどちらか一方の表面に、凹部又は凸部が形成されている。
この構成によれば、アノード触媒層かカソード触媒層のどちらか一方の表面に凹部又は凸部が形成されているため、この凹部又は凸部によってアノード触媒層とカソード触媒層とを識別することができる。そして、各触媒層を判別するためのマークである凹部又は凸部は触媒層の表面に形成されているため、電池性能に寄与しない触媒層を用いた識別マークを別途形成する必要がなく、低コスト化を図ることができる。また、触媒層の表面に識別マークである凹部又は凸部を形成するため、電解質膜の全面に触媒層を形成することもできる。なお、「凹部又は凸部が形成されている」とあるが、凹部と凸部の両方が形成されていてもよい。
また、本発明に係る第2の電解質膜−触媒層接合体は、上記課題を解決するためになされたものであり、電解質膜と、前記電解質膜の一方面に形成されたアノード触媒層と、前記電解質膜の他方面に形成されたカソード触媒層と、を備えており、前記アノード触媒層及びカソード触媒層は、互いに異なる凹部模様又は凸部模様が表面に形成されている。
この構成によれば、アノード触媒層とカソード触媒層に形成される凹部模様又は凸部模様が異なるため、その凹部模様又は凸部模様によってアノード触媒層とカソード触媒層とを識別することができる。そして、各触媒層を識別するための凹部模様又は凸部模様は、触媒層の表面上に形成されているため、電池性能に寄与しない触媒層を別途形成する必要がなく、低コスト化を図ることができる。また、触媒層の表面に識別マークである凹部又は凸部を形成するため、電解質膜の全面に触媒層を形成することもできる。なお、アノード触媒層とカソード触媒層は、互いに異なる凹部模様又は凸部模様が形成されているが、これは、アノード触媒層とカソード触媒層とが判別できるように凹部又は凸部が異なっていればよく、例えば、異なる形状の凹部又は凸部が形成されていたり、凹部又は凸部の形成される位置が異なっていたり、形成される凹部又は凸部の数が異なっていることなどを含む概念である。また、各触媒層上には凹部と凸部の両方が形成されていてもよい。
上記第1及び第2の電解質膜−触媒層接合体は、種々の構成をとることができるが、例えば、上記凹部の深さは、0.2μm以上であるとともに当該凹部が形成される触媒層の厚さよりも小さくすることが好ましい。凹部の深さを0.2μm以上とすることで目視によって判別することができ、より確実に目視によって判別するためには0.3μm以上とすることがさらに好ましい。また、凹部の深さを当該凹部が形成される触媒層の厚さよりも小さくすることによって電解質膜が凹部から露出してしまうことを防ぐことができる。
また、本発明に係る電解質膜−電極接合体は、上記課題を解決するためになされたものであり、上記いずれかの電解質膜−触媒層接合体と、前記各触媒層上に形成されたガス拡散層と、を備えている。
また、本発明に係る固体高分子形燃料電池は、上記課題を解決するためになされたものであり、上記電解質膜−電極接合体と、前記電解質膜−電極接合体の周囲を囲むように設置されたガスケットと、前記電解質膜−電極接合体を挟持するように設置されたセパレータと、を備えている。
また、本発明に係る第1の触媒層転写フィルムは、上記課題を解決するためになされたものであり、固体高分子形燃料電池の電解質膜に触媒層を転写するための触媒層転写フィルムであって、一方面に凸部又は凹部が形成されたシート状の基材フィルムと、前記基材フィルムの一方面に形成された触媒層と、を備えている。
この構成によれば、例えば、アノード触媒層用の触媒層転写フィルムのみ基材フィルムの一方面に凸部又は凹部を形成することによって、アノード触媒層用の触媒層転写フィルムとカソード触媒層用の触媒層転写フィルムとを識別することができる。また、この触媒層転写フィルムを使用して電解質膜に触媒層を転写させると、基材フィルムの一方面に形成された凸部又は凹部によって、電解質膜上に転写形成された触媒層の表面に凹部又は凸部を形成することができる。
また、本発明に係る第2の触媒層転写フィルムは、上記課題を解決するためになされたものであり、固体高分子形燃料電池の電解質膜に触媒層を転写するための触媒層転写フィルムであって、他方面に凸部又は凹部が形成されたシート状の基材フィルムと、前記基材フィルムの一方面に形成された触媒層と、を備えている。
この構成によれば、例えば、アノード触媒層用の触媒層転写フィルムのみ基材フィルムの他方面に凸部又は凹部を形成することによって、アノード触媒層用の触媒層転写フィルムとカソード触媒層用の触媒層転写フィルムとを識別することができる。また、この触媒層転写フィルムを使用して電解質膜に触媒層を転写させると、基材フィルムの他方面に形成された凹部又は凸部によって、電解質膜に触媒層を転写形成する際に触媒層に作用する圧力が基材フィルムの凹部又は凸部と対応する箇所とそれ以外の箇所とでは異なり、その結果、触媒層の表面上に凸部又は凹部を形成することができる。
また、本発明に係る第1の電解質膜−触媒層接合体の製造方法は、上記課題を解決するためになされたものであり、電解質膜を準備する工程と、前記電解質膜の一方面にアノード触媒層を形成する工程と、前記電解質膜の他方面にカソード触媒層を形成する工程と、前記アノード触媒層又はカソード触媒層のどちらか一方の表面に凹部又は凸部を形成する工程と、を備えている。
この方法によれば、アノード触媒層かカソード触媒層のどちらか一方の表面に凹部又は凸部を形成するため、この凹部又は凸部によってアノード触媒層とカソード触媒層とを識別することができる。そして、各触媒層を判別するためのマークである凹部又は凸部は触媒層の表面に形成されるため、電池性能に寄与しない触媒層を用いた識別マークを別途形成する必要がなく、低コスト化を図ることができる。また、触媒層の表面に識別マークである凹部又は凸部を形成するため、電解質膜の全面に触媒層を形成することもできる。なお、「凹部又は凸部が形成されている」とあるが、凹部と凸部の両方が形成されていることも含まれていてもよい。
また、本発明に係る第2の電解質膜−触媒層接合体の製造方法は、上記課題を解決するためになされたものであり、電解質膜を準備する工程と、前記電解質膜の一方面にアノード触媒層を形成する工程と、前記電解質膜の他方面にカソード触媒層を形成する工程と、前記アノード触媒層及びカソード触媒層の表面に、互いに異なる凹部模様又は凸部模様を形成する工程と、を備えている。
この方法によれば、アノード触媒層とカソード触媒層に形成する凹部模様又は凸部模様が異なるため、その凹部模様又は凸部模様によってアノード触媒層とカソード触媒層とを識別することができる。そして、各触媒層を識別するための凹部模様又は凸部模様を触媒層の表面上に形成するため、電池性能に寄与しない触媒層を別途形成する必要がなく、低コスト化を図ることができる。また、触媒層の表面に識別マークである凹部又は凸部を形成するため、電解質膜の全面に触媒層を形成することもできる。なお、アノード触媒層とカソード触媒層は、互いに異なる凹部模様又は凸部模様が形成されているが、これは、アノード触媒層とカソード触媒層とが判別できるように凹部又は凸部が異なっていればよく、例えば、異なる形状の凹部又は凸部が形成されていたり、凹部は凸部の形成される位置が異なっていたり、形成される凹部は凸部の数が異なっていることなどを含む概念である。また、各触媒層上には凹部と凸部の両方が形成されていてもよい。
本発明によれば、アノード触媒層とカソード触媒層とが判別できるとともに、低コスト化を図ることのできる電解質膜−触媒層接合体、これを用いた電解質膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池、触媒層転写フィルム、並びに電解質膜−触媒層接合体の製造方法を提供することができる。
本発明に係る電解質膜−触媒層接合体の実施形態を示す平面図である。 図1のA−A線断面図である。 本発明に係る固体高分子形燃料電池の実施形態を示す正面断面図である。 本発明に係る固体高分子形燃料電池の製造方法を示す説明図である。 本発明に係る触媒層転写フィルムの実施形態を示す平面図(a)及びこれのB−B線断面図である。 本発明に係る触媒層転写フィルムの他の実施形態を示す正面断面図である。 本発明に係る触媒層転写フィルムのさらに他の実施形態を示す平面図(a)及びこれのC−C線断面図である。 本発明に係る触媒層転写フィルムのさらに他の実施形態を示す正面断面図である。 本発明に係る触媒層転写フィルムのさらに他の実施形態を示す正面断面図である。
以下、本発明に係る固体高分子形燃料電池に用いられる電解質膜−触媒層接合体の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、電解質膜−触媒層接合体の平面図、図2は、図1のA−A線断面図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る電解質膜−触媒層接合体1は、平面視矩形状の電解質膜2と、電解質膜2の上面(一方面)に形成されるアノード触媒層3と、電解質膜2の下面(他方面)に形成されるカソード触媒層4と、を備えている。アノード触媒層3は、その中央部において端から端まで延びるように平面視矩形状の凹部31が形成されている。この凹部31の深さは、0.2μm以上であるとともにアノード触媒層3の厚さよりも小さくすることが好ましい。より具体的には、アノード触媒層3の膜厚によっても異なってくるが、メタノール直接型燃料電池(DMFC)として使用される場合は、凹部31の深さを0.2〜100μmとすることが好ましく、より好ましくは0.3〜50μmである。0.2μm以上の深さとすることで目視により凹部31を確認することができるが、より確実に目視で確認するためには0.3μm以上とすることが好ましい。また、メタノール直接型燃料電池(DMFC)における触媒層の厚みは、一般的に100μm程度とされるため、凹部31の深さを100μm以下とすることで電解質膜が凹部から露出してしまうことを防ぐことができ、50μm以下とすることにより確実に電解質膜の露出を防ぐことができる。また、電解質膜−触媒層接合体1が通常の固体高分子形燃料電池(PEFC)として使用される場合は、凹部31の深さを0.2〜30μmとすることが好ましく、より好ましくは0.3〜15μmである。0.2μm以上の深さとすることで目視により凹部31を確認することができるが、より確実に目視で確認するためには0.3μm以上とすることが好ましい。また、また、通常の固体高分子形燃料電池の一般的な触媒層の厚みは15〜30μm程度であるため、凹部の深さを30μm以下とすることによって電解質膜が凹部から露出してしまうことを防ぐことができ、15μm以下とすることにより確実に電解質膜の露出を防ぐことができる。
図3は、上記電解質膜−触媒層接合体を用いた固体高分子形燃料電池の正面断面図である。図3に示すように、固体高分子形燃料電池10は、まず、上述した電解質膜−触媒層接合体1を備えており、この電解質膜−触媒層接合体1の各触媒層3,4上にガス拡散層5が形成されることで電解質膜−電極接合体20が構成されている。なお、各触媒層3,4とガス拡散層5とで電極を構成している。そして、この各電極を囲むようにガスケット6が電解質膜2の外周縁部上に設置されており、さらにこのガスケット6が設置された電解質膜−電極接合体20を上下から挟持するように、ガス流路71が形成されたセパレータ7が設置されている。
次に、上記固体高分子形燃料電池10を構成する各部材の材質について説明する。
まず、電解質膜2は、例えば、基材上に水素イオン伝導性高分子電解質を含有する溶液を塗工し、乾燥することにより形成される。水素イオン伝導性高分子電解質としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、より具体的には、炭化水素系イオン交換膜のC−H結合をフッ素で置換したパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFS系ポリマー)等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入することで、化学的に非常に安定し、スルホン酸基の解離度が高く、高いイオン伝導性が実現できる。このような水素イオン伝導性高分子電解質の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」(登録商標)、旭硝子(株)製の「Flemion」(登録商標)、旭化成(株)製の「Aciplex」(登録商標)、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」(登録商標)等が挙げられる。水素イオン伝導性高分子電解質含有溶液中に含まれる水素イオン伝導性高分子電解質の濃度は、通常5〜60重量%程度、好ましくは20〜40重量%程度である。なお、電解質膜2の膜厚は通常20〜250μm程度、好ましくは20〜80μm程度である。
アノード触媒層3及びカソード触媒層4は、公知の白金含有の触媒層である。詳しくは、触媒層3及び4は、触媒粒子を担持させた炭素粒子及び水素イオン伝導性高分子電解質を含有する。触媒粒子としては、例えば、白金や白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、例えば、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄等からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、白金との合金等が挙げられる。なお、通常は、カソード触媒層に含まれる触媒粒子は白金であり、アノード触媒層に含まれる触媒粒子は前記金属と白金との合金である。また、水素イオン伝導性高分子電解質としては、上述した電解質膜2に使用されるものと同じ材料を使用することができる。
ガス拡散層5としては、公知であり、アノード極、カソード極を構成する各種のガス拡散層を使用でき、燃料である燃料ガス及び酸化剤ガスを効率よく触媒層3、4に供給するため、多孔質の導電性基材からなっている。多孔質の導電性基材としては、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロス等が挙げられる。
ガスケット6としては、熱プレスに耐えうる強度を保ち、かつ、外部に燃料及び酸化剤を漏出しない程度のガスバリア性を有しているものを使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートシートやテフロン(登録商標)シート、シリコンゴムシート等を例示することができる。
セパレータ7としては、公知であり、燃料電池内の環境においても安定な導電性板であればよく、一般的には、カーボン板にガス流路71を形成したものが用いられる。また、セパレータ7をステンレス等の金属により構成し、金属の表面にクロム、白金族金属又はその酸化物、導電性ポリマーなどの導電性材料からなる被膜を形成したものや、同様にセパレータを金属によって構成し、該金属の表面に銀、白金族の複合酸化物、窒化クロム等の材料によるメッキ処理を施したもの等も使用可能である。
次に上述した固体高分子形燃料電池10の製造方法について図面を参照しつつ説明する。図4は、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池10の製造方法を示す説明図である。
まず、上述した材料からなる電解質膜2を準備し、この電解質膜2の上面にアノード触媒層転写フィルム8を配置し、電解質膜2の下面にカソード触媒層転写フィルム9を配置する(図4(a))。ここで、アノード触媒層転写フィルム8について説明する。図5に示すように、アノード触媒層転写フィルム8は、平面視矩形状のシート状の基材フィルム81と、この基材フィルム81上に形成されたアノード触媒層3とを備えている。この基材フィルム81の上面の中央部には、平面視矩形状の凸部811が基材フィルム81の端から端まで延びるように形成されている。なお、カソード触媒層転写フィルム9は、凸部が形成されていない点を除いてアノード触媒層転写フィルム8と同一の構成をしており、シート状の基材フィルム91と、この基材フィルム91上に形成されたカソード触媒層4とを備えている。
このように構成された各触媒層転写フィルム8,9の製造方法について説明すると、まず、基材フィルム81,91を準備する。この基材フィルム81,91の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパルバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン等の高分子フィルムを挙げることができる。また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。さらには、高分子フィルム以外にアート紙、コート紙、軽量コート紙等の塗工紙、ノート用紙、コピー用紙などの非塗工紙であっても良い。この基材フィルム81、91の厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から通常6〜100μm程度、好ましくは10〜30μm程度程度とするのがよい。従って、基材フィルム81、91としては、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。そして、アノード触媒層転写フィルム8用の基材フィルム81には、上述した基材フィルム81と同一の材料のフィルムなどが中央部に貼り付けられて、凸部811が形成される。
次に、上述した基材フィルム81,91上に触媒層3,4を形成する。より詳細には、上述した触媒粒子を担持させた炭素粒子及び水素イオン伝導性高分子電解質を適当な溶剤に混合、分散して触媒ペーストを作製する。そして、形成される触媒層3、4が所望の膜厚になるように触媒ペーストを公知の方法に従い、必要に応じて離型層を介して基材フィルム81、91上に塗工する。このとき、触媒層3、4が、電解質膜2よりも一回り小さい形状となるように、触媒ペーストを基材フィルム81、91に塗工する。触媒ペーストの塗工方法としては、スクリーン印刷や、スプレーコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティングなどの公知の塗工方法を挙げることができる。また、上記の溶剤としては、各種アルコール類、各種エーテル類、各種ジアルキルスルホキシド類、水またはこれらの混合物等が挙げられ、これらの中でもアルコール類が好ましい。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、等の炭素数1〜4の一価アルコール、各種の多価アルコール等が挙げられる。
そして、触媒ペーストを塗工した後、所定の温度及び時間で乾燥することにより基材フィルム81、91上に触媒層3、4が形成される。乾燥温度は、通常40〜100℃程度、好ましくは60〜80℃程度である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常5分〜2時間程度、好ましくは10分〜1時間程度である。
図4に戻って、固体高分子形燃料電池10の製造方法について説明を続ける。上述したように作製したアノード触媒層転写フィルム8をアノード触媒層3が電解質膜2側を向くように電解質膜2の上面に配置するとともに、カソード触媒層転写フィルム9をカソード触媒層4が電解質膜2側を向くように電解質膜2の下面に配置し(図4(a))、各触媒層転写フィルム8、9の背面側から加熱プレスを施して触媒層3、4を電解質膜2に転写させて、転写フィルム8、9の基材フィルム81、91を剥離する(図4(b))。作業性を考慮すると、触媒層3、4を電解質膜2の両面に同時に積層することが好ましいが片面ずつ触媒層3,4を形成することもできる。加熱プレスの加圧レベルは、転写不良を避けるために、通常0.5〜20MPa程度、好ましくは1〜10MPa程度がよい。また、この加圧操作の際に、転写不良を避けるために加圧面を加熱するのが好ましい。加熱温度は、電解質膜2の破損、変形等を避けるために、通常200℃以下、好ましくは150℃以下がよい。このように電解質膜2の両面に触媒層3を形成することで電解質膜−触媒層接合体1が形成される。このとき、アノード触媒層3には、基材フィルム81の凸部811と対応する箇所に凹部31が形成されている。
次に、このようにして形成された電解質膜−触媒層接合体1の各触媒層3,4上にガス拡散層5を熱圧着により積層形成して、電解質膜−電極接合体20を作製する(図4(c))。続いて、電解質膜−電極接合体20の周囲を囲むようにガスケット6を取り付ける。より詳細には、電解質膜2上の電極が形成されていない領域に、電極の周囲を囲むように枠状のガスケット6を設置する。そして、このガスケット6が設置された電解質膜−電極接合体20を上下方向から挟持するように、セパレータ7を設置する。このときセパレータ7のガス流路71はガス拡散層5と対向している。以上により固体高分子形燃料電池1が完成する(図4(d))。
以上、本実施形態によれば、アノード触媒層3の表面のみに凹部31が形成されており、カソード触媒層4の表面は平坦で凹部が形成されていないため、アノード触媒層3とカソード触媒層4とを判別することができる。また、本実施形態では、アノード触媒層3の表面に凹部31を形成するだけであって、アノード触媒層3自体の形状を変更したり余分なアノード触媒層3を形成したりするわけではないため、性能に寄与しない電極部分を削減することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、アノード触媒層3のみに凹部31が形成されているが、カソード触媒層4のみに凹部が形成されていてもよいし、さらには、アノード触媒層3とカソード触媒層4との両方に凹部が形成されていてもよい。なお、両方の触媒層に凹部を形成する場合は、各触媒層を識別できるように各凹部は互いに異なる凹部模様に形成する必要があり、例えば、凹部の形状や位置、数などを各触媒層で異なるように形成する。また、上記実施形態では、アノード触媒層3に凹部31が形成されているが、凸部が形成されていてもよいし、凹部と凸部の両方が形成されていてもよい。
また、上記実施形態では、アノード触媒層転写フィルム8は、基材フィルム81の上面に凸部811が形成されていたが、図6に示すように、基材フィルム81の下面に凸部811を形成してもアノード触媒層3の凹部31を形成することができる。
また、上記実施形態では、 基材フィルム81の凸部811は、基材フィルム81に使用される材料からなるフィルムなどを基材フィルム81上に貼り付けて平面視矩形状に形成されていたが、この他にも、例えば、図7に示すように、微粒子(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ等のフィラー)を混ぜた樹脂層を基材フィルム上にコートすることにより表面を粗面化するコーティングマット加工などによって、平面視円形状の複数の凸部811を形成することもできる。また、図8に示すように、基材フィルム81に凸部811ではなく、エンボス加工やブラスト加工、エッチング加工などによって、平面視矩形状や円形状などの凹部811を形成することもできる。さらには、図9に示すように、基材フィルム81自体には凸部及び凹部を形成せず、ブラスト加工などによって触媒層3自体に凹部を形成することもできる。
なお、上記各実施形態において、凹部の深さ及び凸部の高さは、表面形状測定装置(ULVAC社製、DEKTAK−3ST)を使用する。
1 電解質膜−触媒層接合体
2 電解質膜
3 アノード触媒層
31 凹部
4 カソード触媒層
5 ガス拡散層
6 ガスケット
7 セパレータ
8 アノード触媒層転写フィルム
81 基材フィルム
811 凸部(又は凹部)
9 カソード触媒層転写フィルム
10 固体高分子形燃料電池
20 電解質膜−電極接合体

Claims (9)

  1. 電解質膜と、
    前記電解質膜の一方面に形成されたアノード触媒層と、
    前記電解質膜の他方面に形成されたカソード触媒層と、を備えており、
    前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層の表面に、凹部又は凸部が形成されており、
    前記凹部及び凸部は、凹部模様及び凸部模様であり、
    前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層は、互いに異なる前記凹部模様又は凸部模様が表面に形成されている、電解質膜−触媒層接合体。
  2. 前記凹部模様及び凸部模様は、凹部及び凸部の形状、位置、又は数が前記アノード触媒層と前記カソード触媒層とで異なるように形成されている、請求項1に記載の電解質膜−触媒層接合体。
  3. 前記凹部の深さは、0.2μm以上であるとともに当該凹部が形成される触媒層の厚さよりも小さい、請求項1又は2に記載の電解質膜−触媒層接合体。
  4. 前記凹部の深さは、0.3μm以上である、請求項3に記載の電解質膜−触媒層接合体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の電解質膜−触媒層接合体と、
    前記各触媒層上に形成されたガス拡散層と、を備えた、電解質膜−電極接合体。
  6. 請求項5に記載の電解質膜−電極接合体と、
    前記電解質膜−電極接合体の周囲を囲むように設置されたガスケットと、
    前記電解質膜−電極接合体を挟持するように設置されたセパレータと、を備えた、固体高分子形燃料電池。
  7. 電解質膜を準備する工程と、
    前記電解質膜の一方面にアノード触媒層を形成する工程と、
    前記電解質膜の他方面にカソード触媒層を形成する工程と、
    前記アノード触媒層及びカソード触媒層の表面に、凹部又は凸部を形成する工程と、を備え、
    前記凹部及び凸部は、凹部模様及び凸部模様であり、
    前記凹部又は凸部を形成する工程では、前記アノード触媒層及びカソード触媒層の表面に、互いに異なる前記凹部模様又は凸部模様を形成する、電解質膜−触媒層接合体の製造方法。
  8. 前記電解質膜に触媒層としてアノード触媒層を転写するためのアノード触媒層転写フィルムと、前記電解質膜に触媒層としてカソード触媒層を転写するためのカソード触媒層転写フィルムと、を備え、
    前記アノード触媒層転写フィルム及び前記カソード触媒層転写フィルムは、
    一方面又は他方面に、凹部又は凸部が形成されたシート状の基材フィルムと、
    前記基材フィルムの一方面に形成された触媒層と、を備え、
    前記凹部及び凸部は、凹部模様及び凸部模様であり、アノード触媒層転写フィルムであるかカソード触媒層転写フィルムであるかで互いに異なる前記凹部模様又は凸部模様が形成されており、
    前記アノード触媒層を形成する工程、前記カソード触媒層を形成する工程、及び前記凹部又は凸部を形成する工程では、前記アノード触媒層転写フィルムを前記アノード触媒層が前記電解質膜側を向くように前記電解質膜の一方面に配置するとともに、前記カソード触媒層転写フィルムを前記カソード触媒層が前記電解質膜側を向くように前記電解質膜の他方面に配置し、前記各触媒層転写フィルムの背面側から加熱プレスを施して前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層を前記電解質膜に転写させる、請求項7に記載の電解質膜−触媒層接合体の製造方法。
  9. 前記凹部模様及び凸部模様は、凹部及び凸部の形状、位置、又は数が前記アノード触媒層と前記カソード触媒層とで異なるように形成されている、請求項7又は8に記載の電解質膜−触媒層接合体の製造方法。
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