JP2024068074A - 変性ジシクロペンタジエン系樹脂 - Google Patents

変性ジシクロペンタジエン系樹脂 Download PDF

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Abstract

【目的】優れた誘電特性および耐熱性を有する変性ジシクロペンタジエン系樹脂を提供する。【解決手段】変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、アミノ基を有するジシクロペンタジエン系樹脂、フェノール、およびポリオキシメチレンを環化反応させることにより形成される。アミノ基を有するジシクロペンタジエン系樹脂は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂をニトロ化反応および水素化反応させることにより形成される。【選択図】なし

Description

本発明は、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene, DCPD)系樹脂に関するものであり、特に、構造中にベンゾキサジン(benzoxazine)基を含む変性ジシクロペンタジエン系樹脂に関するものである。
ジシクロペンタジエン系樹脂は、優れた絶縁性、耐食性、誘電率(dielectric constant, Dk)および誘電正接(dissipation factor, Df)、および他の特性を有するため、通常、船舶、自動車産業、光学、電子製品、および高温コーティングを必要とする他の分野に適用される。しかし、現在使用されているジシクロペンタジエン系樹脂の誘電特性は、高周波プリント基板等の電子基板用絶縁材料への適用を制限している。
本発明は、優れた誘電特性および耐熱性を提供することのできる変性ジシクロペンタジエン系樹脂を提供する。
本発明の変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、アミノ基を有するジシクロペンタジエン系樹脂、フェノール、およびポリオキシメチレン(polyoxymethylene, POM)を環化反応させることにより形成される。アミノ基を有するジシクロペンタジエン系樹脂は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂をニトロ化反応および水素化反応させることにより形成される。
本発明の1つの実施形態において、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の重量平均分子量は、400~2,000である。
本発明の1つの実施形態において、変性ジシクロペンタジエン系樹脂の構造は、少なくとも2つのベンゾキサジン基を有する。
本発明の1つの実施形態において、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のモル数、フェノールのモル数、およびポリオキシメチレンのモル数の比率は、1:1:2~1:2:4である。
本発明の1つの実施形態において、変性ジシクロペンタジエン系樹脂の重量平均分子量は、800~20,000である。
本発明の変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、以下の式(1)で表される構造を有する。
式(1)中、Lは、ジシクロペンタジエニレン基、フェノール系化合物由来の2価の有機基、またはそれらの組み合わせを表し、
およびLは、それぞれフェノール系化合物由来の2価の有機基を表し、
mは、0~10の整数である。
本発明の1つの実施形態において、変性ジシクロペンタジエン系樹脂の前駆体は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂を含む。ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の重量平均分子量は、400~2,000である。
本発明の1つの実施形態において、フェノール系化合物は、フェノールを含む。
本発明の1つの実施形態において、Lは、式(1-1)で表される基、式(1-2)で表される基、式(1-3)で表される基、またはそれらの組み合わせを表し、*は、結合位置を表す。
本発明の1つの実施形態において、LおよびLは、それぞれ式(1-4)で表される基を表し、*は、結合位置を表す。
以上のように、本発明は、構造中にベンゾキサジン基を有し、誘電特性および耐熱性に優れたジシクロペンタジエン系樹脂を提供する。
本発明の特徴および利点をより容易に理解できるようにするために、以下に実施形態を詳細に説明する。
以下は、発明の内容を詳細に説明する実施形態である。実施形態において提供される実施の詳細は、説明のためのものであり、発明の内容の保護範囲を限定するものではない。当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、実際の実施の必要に応じて、これらの実施の詳細を変更または修正することができる。
本明細書において使用される「2価の有機基」は、2つの結合位置を有する有機基である。そして、「2価の有機基」は、これら2つの結合位置を介して2つの化学結合を形成することができる。
本発明は、アミノ基を有するジシクロペンタジエン系樹脂、フェノール、およびポリオキシメチレンを環化反応させることにより形成された変性ジシクロペンタジエン系樹脂を提供し、アミノ基を有するジシクロペンタジエン系樹脂は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂をニトロ化反応および水素化反応させることにより形成される。
本発明の変性ジシクロペンタジエン系樹脂の構造は、ベンゾキサジン基を有し、好ましくは、少なくとも2つのベンゾキサジン基を有し、さらに好ましくは、少なくとも3つのベンゾキサジン基を有する。例えば、ベンゾキサジン基は、変性ジシクロペンタジエン系樹脂の末端(例えば、両側の末端)および/または側鎖に結合することができ、好ましくは、樹脂の両側の末端および側鎖に結合する。さらに好ましくは、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の反応が終了した後、その構造中の全てのフェノール基の水酸基がベンゾキサジン基に置換される。すなわち、変性ジシクロペンタジエン系樹脂の構造は、水酸基を有さない。したがって、変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、優れた誘電特性および耐熱性を有する。
ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の重量平均分子量は、400~2,000であり、好ましくは、400~1,000である。例えば、フェノール基を有するジシクロペンタジエン樹脂の市販品の具体例としては、ERM6105(商標名;松原産業(SONGWON)社製;重量平均分子量:800)、ERM6115(商標名;松原産業社製;重量平均分子量:1,100)、ERM6140(商標名;松原産業社製;重量平均分子量:1,300)、または他の適切なジシクロペンタジエンフェノール樹脂が挙げられる。
<変性ジシクロペンタジエン系樹脂の調製方法>
まず、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂をニトロ化反応および水素化反応させることにより、アミノ基を有するジシクロペンタジエン系樹脂を形成する。ジシクロペンタジエンフェノール樹脂をニトロ化反応および水素化反応の方法は、特に限定されず、例えば、周知のニトロ化反応および水素化反応を行うことができるため、ここでは詳しい説明を省略する。本実施形態において、水素化反応は、テトラヒドロフラン、トルエン、イソプロパノール、ジメチルアセトアミド、またはそれらの組み合わせの溶媒中で行うことができ、好ましくは、ジメチルアセトアミドの溶媒中で行う。例えば、トルエンとイソプロパノールの混合溶媒において、トルエンとイソプロパノールの体積比は、80:20~100:0である。ジメチルアセトアミドとトルエンの混合溶媒において、ジメチルアセトアミドとトルエンの体積比は、75:25~100:0である。これにより、水素化反応は、優れた水素化率を達成することができ、例えば、90%以上、より好ましくは、98%以上を達成することができる。次に、アミノ基を有するジシクロペンタジエン系樹脂、フェノール、およびポリオキシメチレンを環化反応させて、変性ジシクロペンタジエン系樹脂を形成する。本実施形態において、環化反応は、トルエン、エタノール、ジメチルアセトアミド、またはそれらの組み合わせの溶媒中で行うことができ、好ましくは、ジメチルアセトアミドの溶媒中で行う。例えば、トルエンとエタノールの混合溶媒において、トルエンとエタノールの体積比は、60:40~100:0である。本実施形態において、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のモル数、フェノールのモル数、およびポリオキシメチレンのモル数の比率は、1:1:2~1:2:4であり、好ましくは、1:1:2~1:1.5:3である。
変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、以下の式(1)で表される構造を有する。本実施形態において、変性ジシクロペンタジエン系樹脂の重量平均分子量は、800~20,000であり、好ましくは、800~5,000である。
式(1)において、Lは、ジシクロペンタジエニレン基、フェノール系化合物由来の2価有機基、またはそれらの組み合わせを表し、好ましくは、ジシクロペンタジエニレン基とフェノール系化合物由来の2価の有機基の組み合わせであり、2価基は、好ましくは、ベンゾキサジン基を含む2価基であり、
およびLは、それぞれフェノール系化合物由来の2価の有機基を表し、
mは、0~10の整数を表し、好ましくは、0~5の整数である。
本実施形態において、フェノール系化合物は、フェノールを含んでもよい。L、LおよびLは、フェノール由来の2価基を表すことができる。本実施形態において、Lは、式(1-1)で表される基、式(1-2)で表される基、式(1-3)で表される基、またはそれらの組み合わせを表すことができ、好ましくは、式(1-1)で表される基と式(1-3)で表される基の組み合わせを表す。*は、結合位置を表す。LおよびLは、それぞれ式(1-4)で表される基を表すことができる。*は、結合位置を表す。
本実施形態において、変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、以下の式(2)で表される構造を有する。本実施形態において、変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、変性ベンゾオキサジン(benzoxazine, BX)樹脂、変性マルチベンゾオキサジン(multi-benzoxazine)樹脂、またはジシクロペンタジエンで変性されたベンゾオキサジン樹脂(DCPD-BXと略す)であってもよい。
式(2)において、mは、0~10の整数を表し、好ましくは、0~5の整数である。
変性ジシクロペンタジエン系樹脂の例
以下、変性ジシクロペンタジエン系樹脂の実施例1~実施例3について説明する。
実施例1
1モルの水酸基を含むジシクロペンタジエンフェノール樹脂(商品名:ERM6105、松原産業社製;重量平均分子量:800)を6モルのジメチルアセトアミド(dimethylacetamide, DMAC)に溶解させた。次に、1.25モルの炭酸カリウムおよび1.25モルの4-フルオロニトロベンゼンを添加し、120℃の温度で5時間反応させた後、室温に冷却した。その後、ろ過を行って固形物を除去し、メタノールと水の混合溶液で沈殿させて、ニトロ化されたジシクロペンタジエンフェノール樹脂(DCPD-NO)の沈殿物を得た。次に、沈殿物をジメチルアセトアミドに添加し、90℃の温度で8時間反応させて、水素化反応を行い、アミノ基を有するジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD-NH)を得た。その後、アミノ基を有するジシクロペンタジエン系樹脂、1モルのフェノール、および2モルのポリオキシメチレンをジメチルアセトアミドに添加して、80℃の温度で8時間反応させ、構造の両側の末端および側鎖にベンゾオキサジン基が結合され、且つ式(2)で表される構造(mは、0~6の整数を表す)を有する実施例1の変性ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD-BX)を得た。得られた変性ジシクロペンタジエン系樹脂を以下の各評価方法で評価し、その結果を表1に示す。
実施例2
実施例2の変性ジシクロペンタジエン系樹脂を実施例1と同様の手順で調製し、相違点は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂(商品名:ERM6115、松原産業社製;重量平均分子量:1,100)を反応物として使用するように変更したことである。得られた変性ジシクロペンタジエン系樹脂(式(2)で表される構造を有してもよく、mは、0~8の整数を表す)を以下の各評価方法で評価し、その結果を表1に示す。
実施例3
実施例3の変性ジシクロペンタジエン系樹脂を実施例1と同様の手順で調製し、相違点は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂(商品名:ERM6140、松原産業社製;重量平均分子量:1,300)を反応物として使用するように変更したことである。得られた変性ジシクロペンタジエン系樹脂(式(2)で表される構造を有してもよく、mは、0~10の整数を表す)を以下の各評価方法で評価し、その結果を表1に示す。
<評価方法>
a.誘電率(Dk)
調製された変性ジシクロペンタジエン系樹脂を基板上に塗布して、120℃の温度で2分間焼成した後、210℃の温度で3時間ホットプレスし、厚さ100μmのフィルムを形成した。次に、誘電分析装置(型番:E4991A;アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies)社製)を用いて、フィルムの周波数10GHzでの誘電率(Dk)を測定した。誘電率が小さいほど、変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、優れた誘電特性を有する。
b.誘電正接(Df)
調製された変性ジシクロペンタジエン系樹脂を基板上に塗布し、120℃の温度で2分間焼成した後、210℃の温度で3時間ホットプレスし、厚さ100μmのフィルムを形成した。次に、誘電分析装置(型式:E4991A;アジレント・テクノロジー社製)を用いて、周波数10GHzでの誘電正接(Df)を測定した。誘電正接が小さいほど、変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、優れた誘電特性を有する。
c.ガラス転移温度(Tg)
動的機械分析装置(dynamic mechanical analyzer, DMA)を用いて、調製された変性ジシクロペンタジエン系樹脂のガラス転移温度(Tg)を測定した。Tgが大きいほど、変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、相変化に対して優れた耐性を有する。すなわち、優れた耐熱性を有する。
加熱速度:10℃/分
温度範囲:30℃~300℃(加熱、冷却、加熱)
d.剥離強度
調製された変性ジシクロペンタジエン系樹脂を基材上に塗布して、120℃の温度で2分間焼成し、樹脂フィルムを形成した。次に、樹脂フィルムの上面および下面に銅箔を積層して、210℃の温度で3時間ホットプレスし、厚さ200μmのフィルムを形成した。次に、ユニバーサル引張機(universal tensile machine)を用いて、フィルムの剥離強度を測定した。剥離強度が大きいほど、変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、基材からの剥離に対して優れた耐性を有する。すなわち、優れた剥離耐性を有する。
<評価結果>
表1からわかるように、変性ジシクロペンタジエン系樹脂がベンゾキサジン基を有する構造を含み、且つベンゾキサジン基の数が少なくとも3である(すなわち、樹脂の両末端および側鎖にベンゾキサジン基を有する)場合(実施例1~3)、変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、優れた耐熱性、剥離耐性、および誘電特性を同時に有する。
また、比較的大きな重量平均分子量を有するジシクロペンタジエンフェノール樹脂を前駆体として使用することによって得られる変性ジシクロペンタジエン系樹脂と比較して、比較的小さな重量平均分子量を有するジシクロペンタジエンフェノール樹脂を前駆体として使用することによって得られる変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、ガラス転移温度が高く、剥離強度が大きい。すなわち、より優れた耐熱性および剥離耐性、および優れた誘電特性を同時に有する。
また、比較的小さな重量平均分子量を有するジシクロペンタジエンフェノール樹脂を前駆体として使用することによって得られる変性ジシクロペンタジエン系樹脂と比較して、比較的大きな重量平均分子量を有するジシクロペンタジエンフェノール樹脂を前駆体として使用することによって得られる変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、誘電率が小さく、誘電正接が小さい。すなわちより優れた誘電特性、および優れた耐熱性および剥離耐性を同時に有する。
以上のように、本発明の変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、アミノ基を有するジシクロペンタジエン系樹脂、フェノール、およびポリオキシメチレンを環化反応させることにより形成され、その構造がベンゾキサジン基を有するため、優れた耐熱性、剥離耐性、および誘電特性を有する。したがって、変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、優れた適用性を有する。
以上のごとく、本発明を上記の実施形態において開示したが、これらは、発明を限定するものではない。関連技術分野において通常の知識を有する者であれば、発明の精神および範囲から逸脱することなく、変更および修正を行うことができる。本発明の保護範囲は、添付された請求項によって定義されるものとする。
本発明の変性ジシクロペンタジエン系樹脂は、電子基板の絶縁材料に適用することができる。

Claims (10)

  1. アミノ基を有するジシクロペンタジエン系樹脂、フェノール、およびポリオキシメチレンを環化反応させることにより形成され、
    前記アミノ基を有するジシクロペンタジエン系樹脂が、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂をニトロ化反応および水素化反応させることにより形成される、変性ジシクロペンタジエン系樹脂。
  2. 前記ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の重量平均分子量が、400~2,000である、請求項1に記載の変性ジシクロペンタジエン系樹脂。
  3. 構造中に少なくとも2つのベンゾキサジン基を有する、請求項1に記載の変性ジシクロペンタジエン系樹脂。
  4. 前記ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のモル数、前記フェノールのモル数、および前記ポリオキシメチレンのモル数の比が、1:1:2~1:2:4である、請求項1に記載の変性ジシクロペンタジエン系樹脂。
  5. 重量平均分子量が、800~20,000である、請求項1に記載の変性ジシクロペンタジエン系樹脂。
  6. 以下の式(1)で表される構造を有し、
    式(1)中、Lが、ジシクロペンタジエニレン基、フェノール系化合物由来の2価の有機基、またはそれらの組み合わせを表し、
    およびLが、それぞれフェノール系化合物由来の2価の有機基を表し、
    mが、0~10の整数である変性ジシクロペンタジエン系樹脂。
  7. 前記変性ジシクロペンタジエン系樹脂の前駆体が、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂を含み、前記ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の重量平均分子量が、400~2,000である、請求項6に記載の変性ジシクロペンタジエン系樹脂。
  8. 前記フェノール系化合物が、フェノールを含む、請求項6に記載の変性ジシクロペンタジエン系樹脂。
  9. Lが、式(1-1)で表される基、式(1-2)で表される基、式(1-3)で表される基、またはそれらの組み合わせを表し、
    *が、結合位置を表す、請求項6に記載の変性ジシクロペンタジエン系樹脂。
  10. およびLが、それぞれ式(1-4)で表される基を表し、
    *が、結合位置を表す、請求項6に記載の変性ジシクロペンタジエン系樹脂。
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