JP2017088647A - 熱硬化性樹脂組成物及び硬化物の製造方法 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物及び硬化物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電気特性(特に、低比誘電率及び低誘電正接)及び低吸水性をあわせて有する硬化物を得られる、BTレジン含有熱硬化性樹脂組成物を提供すること。【解決手段】本発明は、混合樹脂組成物と、硬化触媒とを含む熱硬化性樹脂組成物であって、前記混合樹脂組成物は、ガラス転移温度が260℃以上310℃以下である環状オレフィン系樹脂と、シアン酸エステル化合物と、マレイミド化合物と、を含み、前記環状オレフィン系樹脂の含有量は、前記混合樹脂組成物100質量部中に20質量部以上40質量部以下であり、前記硬化触媒の含有量は、前記混合樹脂組成物100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下である、熱硬化性樹脂組成物を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物の製造方法に関する。
シアン酸エステル化合物から得られる熱硬化性樹脂は耐熱性や誘電特性に優れる樹脂として知られている。さらに、シアン酸エステル化合物と、ビスマレイミド化合物とを併用する熱硬化性樹脂(例えば、特許文献1)は「BTレジン」と呼ばれ、加工性、耐熱性、電気特性に優れた熱硬化性樹脂として、高機能のプリント配線基板用材料等の絶縁材料として幅広く使用されている。しかし、近年の通信機器の高速通信化に伴い、伝送周波数の高周波数化に対応するために、BTレジンの低比誘電率化や低誘電正接化が求められている。さらに、吸湿耐熱性の低下抑制や誘電特性の安定化のために、BTレジンの低吸水性化も求められている。
例えば、特許文献2には、特定のシアン酸エステル化合物を用いることによりBTレジンの吸水を抑制して、機械的特性の改善された樹脂組成物が提案されている。
特公昭54−30440号公報 特開2007−45968号公報
しかし、BTレジンを含む樹脂組成物について、さらに優れた電気特性(特に、低比誘電率及び低誘電正接)を有し、さらには吸水が抑制された硬化物を得られる熱硬化性樹脂組成物が求められている。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、電気特性(特に、低比誘電率及び低誘電正接)及び低吸水性をあわせて有する硬化物が得られるBTレジン系熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、BTレジンと、ガラス転移温度が260℃以上310℃以下である環状オレフィン系樹脂と、硬化触媒とを含む熱硬化性樹脂組成物によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は下記のものを提供する。
(1) 混合樹脂組成物と、硬化触媒とを含む熱硬化性樹脂組成物であって、
前記混合樹脂組成物は、
ガラス転移温度が260℃以上310℃以下である環状オレフィン系樹脂と、
シアン酸エステル化合物と、
マレイミド化合物と、
を含み、
前記環状オレフィン系樹脂の含有量は、前記混合樹脂組成物100質量部中に20質量部以上40質量部以下であり、
前記硬化触媒の含有量は、前記混合樹脂組成物100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下である、熱硬化性樹脂組成物。
(2) 前記環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネンとα−オレフィンとの共重合体である、(1)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(3) 前記硬化触媒は、金属キレート又は金属塩を少なくとも含む、(1)又は(2)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(4) 前記環状オレフィン系樹脂が、カルボニル基、ヒドロキシ基、及びカルボキシ基からなる群から選択される1つ以上の官能基を有する、(1)から(3)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化する工程を含む、硬化物の製造方法。
本発明によれば、電気特性(特に、低比誘電率及び低誘電正接)及び低吸水性をあわせて有する硬化物を得られる、BTレジン含有熱硬化性樹脂組成物が提供される。
本発明の実施例において使用した環状オレフィン系樹脂のXPS測定結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
<熱硬化性樹脂組成物>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂、シアン酸エステル化合物、及びマレイミド化合物を含む混合樹脂組成物と、硬化触媒とを含む。以下、該熱硬化性樹脂組成物の構成について詳述する。
[混合樹脂組成物]
本発明における混合樹脂組成物は、シアン酸エステル化合物とマレイミド化合物との混合組成物(BTレジン)をマトリックスとし、環状オレフィン系樹脂を含む組成物である。本発明における混合樹脂組成物は、シアン酸エステル化合物とマレイミド化合物との混合組成物(BTレジン)、及び環状オレフィン系樹脂からなる。シアン酸エステル化合物とマレイミド化合物との混合物を、以下、あわせて「BTレジン」ともいう。本発明においてBTレジンとは、架橋反応していないシアン酸エステル化合物及びマレイミド化合物の混合物、及び、シアン酸エステル化合物及びマレイミド化合物の架橋反応物のいずれをも指す。本発明者の検討の結果、BTレジンに、ガラス転移温度が260℃以上310℃以下である環状オレフィン系樹脂を配合することで、BTレジンが有する電気特性を向上できるだけではなく、吸水率を低減させることができ、吸湿耐熱性をも向上できることが見出された。具体的には、BTレジンは、低い比誘電率及び誘電正接を有する樹脂として知られるが、環状オレフィン系樹脂の添加により、比誘電率及び誘電正接をさらに低減化できるうえ、吸水率を低減させて吸湿半田耐熱性を顕著に高められることが見出された。
環状オレフィン系樹脂は、BTレジンよりも比誘電率及び誘電正接が低い誘電特性を有し、吸水率が低い樹脂である。したがって、環状オレフィン系樹脂の配合により、BTレジンの電気特性等を高められるものと予測されたものの、本発明者の検討の結果、ガラス転移温度が260℃以上310℃以下の環状ポリオレフィン系樹脂を所定の割合配合することで初めて、BTレジンが有する、銅箔との接着性や耐熱性を損なわずに比誘電率及び誘電正接を低減でき、さらには、吸水を抑制できることが見出された。吸水率の低減により、本発明によれば、吸湿耐熱性をも向上させることができる。
混合樹脂組成物における環状オレフィン系樹脂の含有量は、混合樹脂組成物100質量中に20質量部以上40質量部以下である。混合樹脂組成物における環状オレフィン系樹脂の含有量が、混合樹脂組成物100質量部中に20質量部以上、好ましくは30質量部以上であると、熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の比誘電率及び誘電正接を低減でき、さらに吸水を抑制できるので、良好な吸湿半田耐熱性を実現できる。混合樹脂組成物における環状オレフィン系樹脂の含有量が、混合樹脂組成物100質量部中に40質量部以下であると、混合樹脂組成物のマトリックスをシアン酸エステル化合物とマレイミド化合物との混合物に調製でき、誘電特性、低吸水性、吸湿半田耐熱性、銅箔との接着性の観点で良好なバランスを有する熱硬化性樹脂組成物が得られ、配線の導体材料(例えば、銅)等の回路形成部材に対する接着性等を良好にできる。混合樹脂組成物における環状オレフィン系樹脂の含有量が、混合樹脂組成物100質量部中に20質量部以上40質量部以下の範囲内であるならば、環状オレフィン系樹脂の含有量が増えるにしたがい、比誘電率及び誘電正接がより低くなり、かつ、吸水率を低減しやすく、吸湿半田耐熱性がより高まりやすい。
混合樹脂組成物におけるシアン酸エステル化合物及びマレイミド化合物の含有量の合計は、混合樹脂組成物の総量から環状オレフィン系樹脂の含有量を減じた値である。つまり、混合樹脂組成物におけるシアン酸エステル化合物及びマレイミド化合物の含有量の合計は、混合樹脂組成物100質量部中に60質量部以上80質量部以下である。混合樹脂組成物におけるシアン酸エステル化合物及びマレイミド化合物の含有量が、混合樹脂組成物100質量部中に60質量部以上であると、混合樹脂組成物のマトリックスがBTレジンになり、BTレジンが有する銅箔に対する接着性を保持でき、回路基板に適した絶縁材料を得られやすい。混合樹脂組成物におけるシアン酸エステル化合物及びマレイミド化合物の含有量が、混合樹脂組成物100質量部中に80質量部以下であると、混合樹脂組成物に十分量の環状オレフィン系樹脂を配合でき、熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の比誘電率や誘電正接の低減を実現しやすく、さらには、低吸水性を付与しやすい。
以下、混合樹脂組成物を構成する各成分について詳述する。
(環状オレフィン系樹脂)
本発明における環状オレフィン系樹脂は、ガラス転移温度が260℃以上310℃以下であり、かつ、環状オレフィンに由来する構造単位を主鎖に含む重合体又は共重合体であれば、特に限定されない。環状オレフィン系樹脂のガラス転移点が260℃以上であれば、BTレジン成分硬化物の耐熱性を損なうことなく、熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物に十分な耐熱性(特に、吸湿半田耐熱性)を付与できる。ガラス転移点が310℃以下である環状オレフィン系樹脂ならば、炭化水素溶媒(トルエンやシクロヘキサン等)への高い溶解性を有するので、BTレジン成分への環状オレフィン系樹脂の混合を効率良く実現できる。環状オレフィン系樹脂のガラス転移点は、260℃以上310℃以下の範囲内であれば、値が大きくなるにしたがい、熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物に十分な耐熱性(特に、吸湿半田耐熱性)を付与できる。
環状オレフィン系樹脂のガラス転移点の調整は、主鎖の環状オレフィン骨格の含有量を調整することで行うことができる。また、ガラス転移点は、DSC法(JIS K7121記載の方法)によって昇温速度10℃/分の条件で測定した値を採用する。
本発明における環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンの付加重合体又はその水素添加物、環状オレフィンとエチレン及び/若しくはα−オレフィンとの付加共重合体又はその水素添加物等が挙げられる。これらの中で、環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体は、ガラス転移温度が高く、炭化水素溶媒への溶解性が良好なポリマーが得られやすい点から特に好ましい。環状オレフィン系樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体として、特に好ましい例としては、〔1〕炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位と、〔2〕下記一般式(I)で示される環状オレフィンに由来する構造単位と、を含む共重合体を挙げることができる。これらのうち、ガラス転移温度が高く、炭化水素溶媒への溶解性が良好であるという点から、ノルボルネンとα−オレフィン(特に、1−オクテン、1−ヘキセン等)との共重合体が特に好ましい。
Figure 2017088647
(式中、R〜R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、
とR10、R11とR12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、
nが2以上の場合には、R〜Rは、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
〔〔1〕炭素数3〜20のα−オレフィン〕
炭素数3〜20のα−オレフィンは、特に限定されるものではない。例えば、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。また、これらのα−オレフィンは、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中では、1−オクテン、1−ヘキセン、1−デセンの使用が最も好ましい。
〔〔2〕一般式(I)で示される環状オレフィン〕
一般式(I)で示される環状オレフィンについて説明する。一般式(I)におけるR〜R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものである。一般式(I)で示される環状オレフィンの具体例としては、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。
これらの環状オレフィンは、1種単独でも、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中では、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)を単独使用することが好ましい。
〔1〕炭素数3〜20のα−オレフィンと〔2〕一般式(I)で表される環状オレフィンとの重合方法及び得られた重合体の水素添加方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法にしたがって行うことができる。
また、用いられる重合触媒についても特に限定されるものではなく、チーグラー・ナッタ系、メタセシス系、メタロセン系触媒等の従来周知の触媒を用いて周知の方法により環状オレフィン系樹脂を得ることができる。
本発明における環状オレフィン系樹脂は、官能基を導入されたものであってもよい。官能基を導入された環状オレフィン系樹脂は、例えば、上記の環状オレフィン系樹脂に対して真空紫外光(172nm)を30〜90秒間、照射することで得られる。このような処理により、例えば、カルボニル基、ヒドロキシ基、及びカルボキシ基のうち1つ以上を環状オレフィン系樹脂に導入できる。環状オレフィン系樹脂に官能基が導入されたかどうかは、X線光電子分光(XPS)測定等で特定できる。
真空紫外光の照射以外の物理的官能基導入方法としては、酸素プラズマ照射法が挙げられる。酸素プラズマ照射法には真空プラズマ法と大気圧プラズマ法があり、特に限定はされないが、プラズマ照射の簡便さから大気圧プラズマ照射法が好ましい。
上記の官能基を導入された環状オレフィン系樹脂における、官能基の導入部位は必ずしも定かではないが、下記のようなメカニズムが推定される。すなわち、真空紫外光により発生した活性酸素が、ポリマー中の環状オレフィンユニットの3級炭素に結合する水素を引き抜いて、その3級炭素に酸素が結合する工程を経て官能基が導入されると推測される。
官能基を導入された環状オレフィン系樹脂はBTレジン成分との親和性が高くなり、熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物に十分な分散性と耐熱性(特に、吸湿半田耐熱性)を付与しやすい点で好ましい。
(シアン酸エステル化合物及びマレイミド化合物)
本発明におけるシアン酸エステル化合物及びマレイミド化合物としては、熱硬化反応により両者が反応できる組み合わせを使用できる。
本発明におけるシアン酸エステル化合物としては、多官能性シアン酸エステル化合物のモノマーやそのプレポリマーを使用できる。具体的には、ナフトール類(α−ナフトール又はβ−ナフトール等)と、縮合剤(p−キシレングリコール、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン、1,4−ジ(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼン等)との反応により得られるナフトールアラルキル樹脂とシアン酸との縮重合物、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂、ビスフェノールF型シアン酸エステル樹脂、ビスフェノールM型シアン酸エステル樹脂、ビスフェノールP型シアン酸エステル樹脂、ビスフェノールE型シアン酸エステル樹脂、フェノールノボラック型シアン酸エステル樹脂、クレゾールノボラック型シアン酸エステル樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型シアン酸エステル樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアン酸エステル樹脂、ビフェノール型シアン酸エステル樹脂等、及びこれらのプレポリマー等が挙げられる。これらのシアン酸エステル化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明におけるシアン酸エステル化合物としては、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンを好適に使用できる。
本発明におけるマレイミド化合物としては、1分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物を使用できる。具体的には、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、及びこれらのプレポリマーや、上記マレイミド化合物とアミン化合物とのプレポリマー等が挙げられる。これらのマレイミド化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明におけるマレイミド化合物としては、4,4’−ビスマレイミドフェニルメタンを好適に使用できる。
シアン酸エステル化合物及びマレイミド化合物の割合は特に限定されないが、質量比で、シアン酸エステル化合物:マレイミド化合物=95:5〜5:95であってもよい。
シアン酸エステル化合物はマレイミド化合物と反応するだけでなく、シアン酸エステル化合物のシアネート基のうち3つが反応することによりトリアジン環も形成する。トリアジン環は熱的に安定で電気特性(特に、誘電特性)に優れた官能基である。そのため、誘電特性を高める目的で、トリアジン環を多く発生させるために、シアン酸エステル化合物をマレイミド化合物よりも高い割合で配合することが好ましい。好ましいシアン酸エステル化合物の割合は、熱硬化性樹脂組成物の熱硬化工程における硬化速度等に応じて異なり、特に限定されないが、質量比で、シアン酸エステル化合物:マレイミド化合物=80:20〜95:5が好ましく、90:10〜95:5がより好ましい。
(混合樹脂組成物の製造方法)
本発明における混合樹脂組成物の製造方法は、上記の成分を混合や溶融等できれば特に限定されず、添加順序等は問わない。例えば、上記成分を順次混合してもよく、シアン酸エステル化合物及びマレイミド化合物を予備混合又は予備反応させてから他の成分と混合してもよい。混合樹脂組成物の製造方法時には、成分の混合を容易にするために適宜溶媒(トルエン等)を使用してもよい。
[硬化触媒]
本発明における硬化触媒は、BTレジン及び環状オレフィン系樹脂の硬化において使用されるものを使用でき、例えば、金属キレート又は金属塩が挙げられる。
金属キレートとしては、キレート環を有する金属キレートが挙げられ、非イオン型又はイオン型のいずれであってもよい。金属としては、鉄、コバルト、亜鉛、錫、銅、マンガン、ジルコニウム、チタニウム、バナジン、アルミニウム、及びマグネシウム等が挙げられる。金属キレートの配位子としては、特に限定されないが、アセチルアセトン、サリチルアルデヒド、ベンゾイルアセトン等が挙げられる。金属キレートとしては、例えば、アセチルアセトン鉄等を好ましく使用できる。
金属塩触媒としては、カルボン酸の金属塩が挙げられる。カルボン酸としては、ナフテン酸、オクチル酸が挙げられる。金属としては、鉄、コバルト、亜鉛、錫、銅、マンガン、ジルコニウム、チタニウム、バナジン、アルミニウム、及びマグネシウム等が挙げられる。金属塩触媒としては、例えば、オクチル酸亜鉛等を好ましく使用できる。
熱硬化性樹脂組成物における硬化触媒の含有量は、混合樹脂組成物100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下である。混合樹脂組成物における硬化触媒の含有量がかかる範囲であると、加熱条件下において、熱硬化性樹脂組成物を十分に硬化できる。
(その他の成分)
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記以外の成分が含まれていてもよい。このような成分として、例えば、充てん剤、硬化促進剤、環状オレフィン系樹脂以外の樹脂(エポキシ樹脂等)、高分子化合物(エラストマー等)、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、顔料、増粘剤等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物中のこれらの成分の配合量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。
<熱硬化性樹脂組成物及び硬化物の製造方法>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記の混合樹脂組成物及び硬化触媒を混合等することで得られる。得られた熱硬化性樹脂組成物を、例えば150〜200℃の温度条件で、2〜4時間加熱することで熱硬化性樹脂組成物を硬化させると、硬化物が得られる。加熱時の圧力は特に限定されないが、0.01〜50MPaで加圧することが好ましく、真空加熱することがさらに好ましい。硬化物は任意の形態に調製でき、例えば、プレート、シート、フィルム等に調製できる。
<硬化物の特性>
本発明の熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、電気特性及び耐熱性(特に、吸湿半田耐熱性)に優れ、低吸水性を有する。
硬化物の電気特性は、実施例に記載した方法で、硬化物の比誘電率及び誘電正接を特定することで評価できる。これらの値が低い硬化物であれば、高周波特性が要求される用途の材料として好適な、優れた電気特性を有することを示す。
硬化物の耐熱性は、実施例に記載した方法で、硬化物の表面膨れ発生時間を特定することで評価できる。この時間が長い硬化物であれば、吸湿半田耐熱性が高いことを示す。
本発明の熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、低吸水性を有する。硬化物の低吸水性は、実施例に記載した方法で吸水率を特定することで評価できる。吸水率が低い硬化物であれば、低吸水性であることを示し、電気絶縁材料として好適であることを示す。
本発明の熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、その優れた電気特性及び低吸水性を利用して、各種用途に利用できる。具体的には、高周波特性が求められる電子部品用材料として特に好適に使用できる。電子部品としては、特に限定されないが、1GHz以上の伝送周波数を用いる部品等が挙げられ、具体的には、アンテナ、SAWフィルター、イメージセンサーモジュール、ジャイロセンサーモジュール、RFID、デュプレクサ、ダイプレクサ、チュナーモジュール等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<環状オレフィン系樹脂(COC1、COC2、COC4)の調製>
乾燥し、窒素雰囲気下に保ったガラス反応器に、表1に記載された量(単位:質量部)の各モノマー、溶媒(トルエン)及び助触媒A及びBを加え、40℃に保ったのち、表1に記載された量(単位:質量部)の触媒を加えた。なお、触媒及び助触媒は、それぞれトルエンに溶解させた状態で反応器に加えた。表1に示す重合温度(単位:℃)及び重合時間(単位:時間)で、反応器内を撹拌して重合を継続した後、2−プロパノール1質量部を添加して反応を終了させた。次いで、塩酸100mLを系内に加え、室温で30分間撹拌させたのち、この溶液を同容積の蒸留水で3回洗浄させたのち、重合溶液と同容量積のアセトンに注ぐことで重合体を完全に析出させた。その後、濾別及び洗浄を行った後、60℃で1日間以上減圧乾燥して環状オレフィン系樹脂を得た。
なお、使用した材料の詳細は下記のとおりである。
[モノマー]
ノルボルネン
1−オクテン
1−ヘキセン
[触媒]
(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジメチル
[助触媒A]
6.5質量%(Al原子の含有量として)MMAO−3Aトルエン溶液([(CH0.7(iso−C0.3AlO]で表されるメチルイソブチルアルミノキサンの溶液、東ソー・ファインケム株式会社製、なお全Alに対して6mol%のトリメチルアルミニウムを含有する)
[助触媒B]
9.0質量%(Al原子の含有量として)TMAO−211トルエン溶液(メチルアルミノキサンの溶液、東ソー・ファインケム株式会社製、なお全Alに対して26mol%のトリメチルアルミニウムを含有する)
[溶媒]
トルエン
Figure 2017088647
<環状オレフィン系樹脂(COC3)の調製>
上記COC1(粉状)を室温で幅約4cm、長さ約7cm、厚さ約0.5mmのマットにプレスした。Min−Excimer SUS713(ウシオ電機株式会社製)を用いて、照射距離1mmで真空紫外光(波長172nm)をそのマットに60秒間照射して、真空紫外光照射による変性環状オレフィン系樹脂(COC3)を得た。さらに、このマット作成と真空紫外光照射を繰り返して、必要量のCOC3を準備した。
[真空紫外光照射による表面変性の評価]
上記のCOC1マット及びCOC3マットのそれぞれについて、3箇所のX線光電子分光(XPS)測定を行った。COC1マットのC1sスペクトルを図1(A)に示し、COC3マットのC1sスペクトルを図1(B)に示す。COC3には、C−O結合とC=O結合に対応する結合エネルギー287eV〜289eVに新たな結合が観察された。杉村等の報告(Applied Surface Science, 255, 2648,2009)に基づけば、これらの結合の出現は水酸基、カルボニル基、カルボキシル基が導入されたことを示唆している。したがって、図1は、COC1への60秒間の紫外線照射により、官能基が導入されたCOC3が得られたことを示している。
<環状オレフィン系樹脂の評価>
以下のとおりにして、得られた環状オレフィン系樹脂又はその溶液のモノマー組成、ガラス転移温度(Tg)、平均分子量を評価した。結果を表2に示す。
[モノマー組成]
得られた環状オレフィン系樹脂約70mgをテトラクロロエタン−d2 0.6mlに溶解して、BRUKER AVANCE 600を用いて、381°KでパルスプログラムZGPG45により繰り返し時間3秒、積算2万回で13C−NMRスペクトルを測定した。得られたスペクトルから、Macromolecules 2010, 43, 4527−4531に記載の方法によりモノマー組成を算出した。
[ガラス転移温度(Tg)]
JIS K 7121に準拠して、示差走査熱量分析装置(TA Instrument製Q−1000)にて、室温から20℃/分の昇温条件で重合体のガラス転移温度を測定した。
[平均分子量]
得られた重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によりポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定した。
Figure 2017088647
<熱硬化性樹脂組成物及び硬化物の調製>
以下のとおり、各環状オレフィン系樹脂を使用して熱硬化性樹脂組成物を調製し、硬化物(硬化物プレート)を作製した。
[実施例1]
上記のCOC1をトルエンに表3の割合で加えて、40℃で撹拌しながらCOC1を溶解した。その溶液に、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(東京化成工業株式会社の試薬)と4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(東京化成工業株式会社の試薬)を表3の割合で加え、さらに、アセチルアセトン鉄(東京化成工業株式会社の試薬)を表3の割合で添加して、室温で溶解して混合溶液を作製した。この混合溶液をテフロンフィルム上にドクターブレードを用いて塗布して、100℃のオーブンに10分間入れてトルエンを除去した後、120℃で3時間真空乾燥して厚さ100μm〜110μmの組成物フィルムを準備した(この組成物フィルムが熱硬化性樹脂組成物に相当する。)。この組成物フィルムを10枚重ねて、周辺に厚さ1mmのスペーサーを囲い、離型フィルムとしてテフロンフィルムを用いて、真空プレス機内を用いて160℃で3時間真空加熱しながら硬化して、厚さ1mmの硬化物プレートを作製した。なお、表3の数値は、混合樹脂組成物100質量部に対する割合(単位:質量部)を示す。
[実施例2及び3]
実施例1の配合割合を表3に示す配合割合に代えて、実施例1と同様にして硬化物プレートを作製した。
[実施例4]
実施例1のCOC1をCOC2に代え、触媒のアセチルアセトン鉄をオクチル酸亜鉛(和光純薬工業株式会社の試薬)に代えて、表3に示す配合割合で、実施例1と同様にして硬化物プレートを作製した。
[実施例5]
実施例1のCOC1をCOC3に代え、触媒のアセチルアセトン鉄をオクチル酸亜鉛に代えて、表3に示す配合割合で、実施例1と同様にして硬化物プレートを作製した。
[比較例1]
環状オレフィン樹脂をトルエンに溶解した溶液の作製をせずに、トルエンに2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンと4,4’−ビスマレイミドフェニルメタンを表3の割合で溶解して、さらに硬化触媒のアセチルアセトン鉄を表3の割合で溶解して溶液を準備した。テフロンコートした型に入れて、室温で発泡を防ぎながら減圧下で蒸散した後、120℃で3時間真空乾燥して溶媒を除いた。得られた固体を厚さ1mmのスペーサー枠の中に入れて、離型フィルムとしてテフロンフィルムを用いて、真空プレス機内を用いて160℃で3時間真空加熱しながら硬化して、厚さ1mmの硬化物プレートを作製した。
[比較例2]
COC1、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンと4,4’−ビスマレイミドフェニルメタン、アセチルアセトン鉄を表3の割合でトルエンに溶解して、溶媒除去と真空プレスを比較例1と同様に行い、厚さ1mmの硬化物プレートを作製した。
[比較例3]
COC1の代わりにTgが245℃のCOC4を用いて、実施例2と同様に行って、厚さ1mmの硬化物プレートを得た。
Figure 2017088647
<作製した硬化物の評価>
以下のとおりにして、上述の硬化物プレートから試験片を作製して、その比誘電率、誘電正接、吸水率、吸湿半田耐熱性を評価した。その結果を表4に示す。
[比誘電率及び誘電正接]
硬化物プレートを幅1.8mm長さ80mmで切だし、誘電測定用試験片を作製した。Agilent社製ネットワークアナライザー8757D及び関東電子株式会社製空洞共振器複素誘電率測定装置を用い、5GHzと10GHzにおける比誘電率及び誘電正接を空洞共振器摂動法により23℃で測定した。
[吸水率]
上記の厚さ1mmの硬化物プレートを幅25mm、長さ50mmの短冊状に切り出して、この試験片をプレッシャークッカー試験機で121℃、2気圧で2時間処理した。プレッシャークッカー試験前後の試験片の質量変化から吸水率を求めた。この値が低いほど、低吸水性であることを示す。
[吸湿半田耐熱性]
上記の吸水率の測定において準備したプレッシャークッカー試験後の試験片を、270℃の溶融半田浴に浮かべて、目視で観察しながら表面に膨れが発生するまでの時間を求めた。この表面膨れが発生した時点での時間(表面膨れ発生時間)を吸湿半田耐熱性の指標とした。この時間が長いほど、吸湿半田耐熱性が高いことを示す。
Figure 2017088647
表4から理解されるとおり、本発明における熱硬化性樹脂組成物から得られた硬化物は、低い比誘電率及び誘電正接を有し、かつ、吸水率が低く、吸湿半田耐熱性に優れており、さらに低い吸水率をも有していた。
実施例1乃至3の結果から理解されるとおり、熱硬化性樹脂組成物中の環状オレフィン系樹脂の含有量が増えるにしたがい、比誘電率及び誘電正接がより低くなり、かつ、吸湿半田耐熱性がより高まる傾向にあった。
実施例2と実施例4との比較から理解されるとおり、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度が高くなるにしたがい、吸湿半田耐熱性がより高まる傾向にあった。
実施例2と実施例5との比較から理解されるとおり、環状オレフィン系樹脂が官能基を有する場合、比誘電率及び誘電正接がやや高まるものの(しかしながら、十分に低い比誘電率及び誘電正接を有していた。)、吸湿半田耐熱性がより高まる傾向にあった。
他方、環状オレフィン系樹脂を含まないか、低い含有量である比較例1及び2においては、比誘電率及び誘電正接を低減化できないばかりか、吸水率が高い傾向にあり、吸湿半田耐熱性が劣っていた。
環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度が本発明の要件を満たさない比較例3においては、吸湿半田耐熱性が劣っていた。

Claims (5)

  1. 混合樹脂組成物と、硬化触媒とを含む熱硬化性樹脂組成物であって、
    前記混合樹脂組成物は、
    ガラス転移温度が260℃以上310℃以下である環状オレフィン系樹脂と、
    シアン酸エステル化合物と、
    マレイミド化合物と、
    を含み、
    前記環状オレフィン系樹脂の含有量は、前記混合樹脂組成物100質量部中に20質量部以上40質量部以下であり、
    前記硬化触媒の含有量は、前記混合樹脂組成物100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下である、熱硬化性樹脂組成物。
  2. 前記環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネンとα−オレフィンとの共重合体である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記硬化触媒は、金属キレート又は金属塩を少なくとも含む、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記環状オレフィン系樹脂が、カルボニル基、ヒドロキシ基、及びカルボキシ基からなる群から選択される1つ以上の官能基を有する、請求項1から3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化する工程を含む、硬化物の製造方法。
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EP4112291A4 (en) * 2020-02-27 2023-08-23 MCPP Innovation LLC RESIN FOIL AND CIRCUIT BOARD MATERIAL WITH IT
JP7562321B2 (ja) 2020-07-21 2024-10-07 Mcppイノベーション合同会社 樹脂複合体及びこれを用いた回路基板材料

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