JP2024067975A - 結合剤噴射法造形用粉体材料、結合剤噴射法造形用粉体材料を含む錠剤、および製造方法 - Google Patents

結合剤噴射法造形用粉体材料、結合剤噴射法造形用粉体材料を含む錠剤、および製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリビニルアルコール樹脂を使用した結合剤噴射法造形用粉体材料、および該結合剤噴射法造形用粉体材料を用いた製剤の製造方法を提供する。【解決手段】結合剤噴射法造形用粉体材料中のポリビニルアルコール系樹脂の含有量を特定量とする。すなわち、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が粉体全体に対して0.1~15質量部である結合剤噴射法造形用粉体材料、および該粉体材料を使用して液状成分を噴霧し錠剤を製造することで、得られた製剤の積層時のずれが少なく、成形性が良好であり、崩壊性と硬度が両立した錠剤を提供することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、結合剤噴射方式(バインダージェッティング法)3Dプリンターによる製剤に関する発明であり、詳しくは、結合剤噴射方式による製剤製造に使用される粉末材料、および当該粉末材料を使用した製剤の製造方法に関する。
崩壊性の良好な製剤は、医療用医薬品において高齢者や、小児等の嚥下が困難な患者の服用が容易であり、そうした患者の服用コンプライアンス改善のため、有用な製剤形状の1種である。
しかしながら、通常、崩壊性を高めると硬度が下がる傾向にあり、さらには成形しづらいという問題が生じてしまう。さらに、硬度が高すぎると崩壊性悪化や溶出性の遅延に繋がるというトレードオフの関係にあり、崩壊性と錠剤硬度、さらには成形性を両立させた製剤が求められている。
ところで、3Dプリンターによる医薬製剤の製造は、患者ごとにカスタマイズした製剤を設計できるため、近年注目されている。
個人の症状、体型、年齢や性別等により必要な薬効成分やその量は様々であるが、3Dプリンターは設計の自由度が高く、個々にあわせた投与量や薬物放出性を調整した製剤を容易に調製、提供することが可能となる。
3Dプリンターによる製剤の製造方法は、熱溶融積層造形(fused deposition modeling:FDM)方式や、光造形(stereolithography:SLA)方式、結合剤噴射(Binder Jetting)方式等いくつか知られている。
ポリビニルアルコール系樹脂は、経口摂取が可能な材料であり、水溶性であるのみならず、安全性に優れた材料であることから、医薬製剤に好適に用いることができる。
このような背景下において、ポリビニルアルコール系樹脂を3Dプリンター技術に応用し、医薬製剤を得る検討が近年行われている。
たとえば、特許文献1には、熱溶融積層造形方式3Dプリンターを用いて、製剤を得る方法が記載されている。FDM方式は、フィラメント状の樹脂を熱で溶かしながらノズルから押し出し、樹脂を積み上げて造形物を作製する方式である。
特許文献1では、薬物とポリビニルアルコール系樹脂を混合し、ポリビニルアルコール系樹脂を固体分散体基剤としてFDM造形を行うことで、薬物がポリビニルアルコール系樹脂中に分散した製剤を得る方法が開示されている。
しかしながら、FDM方式による製剤の製造方法は、薬物を含む混合物を加熱する工程があり、薬物が熱分解してしまう恐れがあった。
一方、結合剤噴射方式は、原料となる粉体にノズルから液体の結合剤(バインダー)を噴射して固形化する方式であり、加熱操作が存在しないため、FDM方式のような熱による影響はない。さらに、その他の方式と比べて生産性が高く、従来の湿式造粒プロセスであるため比較的マイルドな条件での製造が可能であり、有用である。
特許文献2では、結合剤噴射方式を利用した製剤が記載されており、3Dプリンターによる医薬製剤の製造において、バインダーとしてポリビニルアルコール系樹脂を使用できる旨が記載されている。
国際公開第2020/027035号 特表2022-533213号公報
特許文献2に記載されるように、ポリビニルアルコール系樹脂を結合剤噴射方式3Dプリンターに適用する場合、ポリビニルアルコール系樹脂を噴射液に溶解させてバインダーとして使用する方法が一般的であるが、噴射液に結合剤成分を溶解させる場合、印刷プロセス中の析出やノズルの詰まり等の問題があった。
さらに、結合剤噴射方式3Dプリンターにより得た錠剤は、錠剤硬度が不十分な傾向にあり、錠剤硬度を高める必要があったが、前述のとおり、錠剤硬度と崩壊性はトレードオフの関係にあるため、錠剤硬度と崩壊性を両立させた錠剤が求められていた。
また、錠剤製造過程で各層を積層させる際に、先に積層した層とその後積層した層の間徐々にずれが生じてしまい、角度のついた錠剤が得られてしまう等の問題が発生しやすかった。
そこで、本発明は、ポリビニルアルコール樹脂を使用した結合剤噴射法造形用粉体材料、および該結合剤噴射法造形用粉体材料を用いた製剤の製造方法の提供を目的としている。
本発明者らは、従来は噴射液にポリビニルアルコール系樹脂を使用していたところを、粉体材料として使用する方法に着目し、鋭意検討を重ねた結果、結合剤噴射法造形用粉体材料中のポリビニルアルコール系樹脂の含有量を特定量とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)~(9)を特徴とする。
(1)ポリビニルアルコール系樹脂を含む粉体材料であって、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が粉体材料100質量部に対して0.1~15質量部である結合剤噴射法造形用粉体材料。
(2)ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が70~99.9モル%である(1)に記載の結合剤噴射法造形用粉体材料。
(3)ポリビニルアルコール系樹脂の平均粒子径が1~200μmである(1)または(2)のいずれかに記載の結合剤噴射法造形用粉体材料。
(4)賦形剤を粉体材料100質量部に対して50~99.9質量部含む(1)乃至(3)に記載の結合剤噴射法造形用粉体材料。
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載の結合剤噴射法造形用粉体材料を含む錠剤。
(6)結合剤噴射法造形3Dプリンターにおいて、薬効成分とポリビニルアルコール系樹脂を含み、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が粉体全体に対して0.1~15質量部である粉体材料に液状成分を吹きかけて製剤を得る製剤製造方法。
(7)(6)に記載の製剤製造方法において、結合剤噴射式3Dプリンターを使用する製剤製造方法。
(8)液状成分が、水と有機溶剤の混合物であり、配合比率が水/有機溶剤=1/99~99/1である(6)または(7)に記載の製剤製造方法。
(9)液状成分が、界面活性剤を含む水溶液であり、液状成分中に界面活性剤を0.01~10質量部含む(6)または(7)に記載の製剤製造方法。
本発明の結合剤噴射法造形用粉体材料、および製剤の製造方法によれば、得られる製剤の積層時のずれが少なく、成形性が良好であり、崩壊性と硬度が両立した錠剤を得ることができる。
錠剤角度の測定方法を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
<ポリビニルアルコール系樹脂>
ポリビニルアルコール(以下、「PVA」という場合がある)系樹脂は、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とケン化されずに残存したビニルエステル構造単位から構成される。
本発明に用いられるPVA系樹脂の平均ケン化度は70~99.9モル%であることが好ましく、80~95モル%であることがより好ましく、83~90モル%であることがさらに好ましい。PVA系樹脂の平均ケン化度が低すぎると水溶性が低下する傾向がある。
なお、本発明において、PVA系樹脂の平均ケン化度は、JIS K 6726に準拠する方法で求められた値とする。
本発明に用いられるPVA系樹脂の平均重合度は、200~4000であることが好ましく、500~3800であることがより好ましく、1000~3500であることがさらに好ましく、2100~3000であることが特に好ましく、2100~2800であることが最も好ましい。
かかる平均重合度が低すぎると、強度が低下し脆くなる傾向があり、平均重合度が高すぎると医薬錠剤の崩壊性が低下する傾向にある。
なお、本実施形態において、ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K 6726に準拠する方法で求められた値とする。
本発明に用いられるPVA系樹脂の4質量%水溶液粘度は、1.0~80mPa・sであることが好ましく、10~70mPa・sであることがより好ましく、20~60mPa・sであることがさらに好ましく、30~55mPa・sであることが特に好ましく、40~50mPa・sであることが最も好ましい。
かかる4質量%水溶液粘度が低すぎると、強度が低下し脆くなる傾向があり、平均重合度が高すぎると医薬錠剤の崩壊性が低下する傾向にある。
なお、本実施形態において、ポリビニルアルコールの4質量%水溶液粘度は、JIS K 6726に準拠する方法で求められた値とする。
また、本発明のPVA系樹脂の平均粒子径は、1~200μmが好ましく、2~150μmがより好ましくは、3~100μmがさらに好ましく、5~80μmが特に好ましい。
PVA系樹脂は、所望の粒子径となるように粉砕してもよく、粉砕方法としては、公知の粉砕器を使用すればよい。
平均粒子径が小さすぎると扱いが難しくなり、また付着性や凝集性もが強くなるため流動性が悪化する傾向があり、大きすぎると錠剤の強度が低下する傾向がある。
なお、本実施形態における平均粒子径は、レーザー回折で粒子径別の体積分布を測定し、積算値(累積分布)が50%になる50%粒子径である。
ここで、本発明で使用されるPVA系樹脂の製造方法をさらに詳しく説明する。
PVA系樹脂は、例えば、ビニルエステル系モノマーを重合して得られたポリビニルエステル系重合体をケン化することにより得られる。
かかるビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、経済性の点で酢酸ビニルが好適である。
また、本発明の効果を阻害しない程度に、上記ビニルエステル系モノマーと共重合性を有するモノマーを共重合させることもでき、このような共重合モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類およびそのアシル化物等の誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル等のエステル類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類、その塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1-メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、ビニレンカーボネート、1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジプロピオニルオキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジブチロニルオキシ-2-メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート等が挙げられる。かかる共重合モノマーの含有量は、重合体全量を基準として、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。本発明においては安全性の点で、ビニルアルコール構造単位と未ケン化部分のビニルエステル構造単位のみからなる未変性PVAが好ましい。
上記ビニルエステル系モノマーおよび共重合モノマーを重合するにあたっては特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、または乳化重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
かかる重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、ブタノール等の炭素数1~4の脂肪族アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、工業的にはメタノールが好適に使用される。
また、重合反応は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の公知のラジカル重合触媒や公知の各種低温活性触媒を用いて行われる。また、反応温度は、35℃以上、公知のラジカル重合触媒や公知の各種低温活性触媒の沸点以下の範囲から選択される。
得られたポリビニルエステル系重合体は、次いで連続式またはバッチ式にてケン化される。かかるケン化にあたっては、アルカリケン化または酸ケン化のいずれも採用できるが、工業的には重合体をアルコールに溶解してアルカリ触媒の存在下に行われるアルカリケン化が好適である。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、ブタノール等の炭素数1~4の脂肪族アルコールが好ましく、中でもメタノールやエタノールがより好ましい。アルコール中の重合体の濃度は20~60質量%の範囲から選ばれる。また、必要に応じて、0.3~10質量%程度の水を加えてもよく、さらには、酢酸メチル等の各種エステル類やベンゼン、ヘキサン、DMSO(ジメチルスルホキシド)等の各種溶剤類を添加してもよい。
上記のアルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を具体的に挙げることができ、かかる触媒の使用量はモノマーに対して1~100ミリモル当量にすることが好ましい。
ケン化後、得られたPVA系樹脂を、洗浄液で洗浄する。洗浄液としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類が挙げられ、洗浄効率と乾燥効率の観点からメタノールが好ましい。
洗浄方法としては、バッチ式洗浄方法と連続式洗浄方法が挙げられ、通常はバッチ式洗浄方法が採用される。洗浄時の撹拌方式(装置)としては、スクリュー翼、リボンブレンダー、ニーダー等が挙げられる。
また、洗浄装置としては、円筒型洗浄装置、向流接触型洗浄装置、遠心分離洗浄装置等が挙げられる。
浴比(洗浄液の質量/ポリビニルエステル系重合体粒子の質量)は、通常、1~30であり、特に2~20が好ましい。浴比が大きすぎると、大きな洗浄装置が必要となり、コスト増につながる傾向があり、浴比が小さすぎると、洗浄効果が低下し、洗浄回数を増加させる傾向がある。
洗浄時の温度は、通常、10~80℃であり、特に20~70℃が好ましい。温度が高すぎると、洗浄液の揮発量が多くなり、還流設備を必要とする傾向がある。温度が低すぎると、洗浄効率が低下する傾向がある。洗浄時間は、通常、5分~12時間であり、特に30分~4時間が好ましい。洗浄時間が長すぎると、生産効率が低下する傾向があり、洗浄時間が短すぎると、洗浄が不十分となり、カルボン酸金属塩が多く残留する傾向がある。また、洗浄回数は、通常、1~10回であり、特に1~5回が好ましい。洗浄回数が多すぎると、生産性が低下し、コストがかかる傾向がある。
洗浄されたポリビニルエステル系重合体ケン化物の粒子を連続式またはバッチ式にて熱風等で乾燥し、本発明で用いられるPVA系樹脂の粉体を得る。乾燥温度は、通常、50~150℃であり、特に60~130℃、殊に70~110℃が好ましい。乾燥温度が高すぎると、PVA系樹脂が熱劣化する傾向があり、乾燥温度が低すぎると、乾燥に長時間を要する傾向がある。乾燥時間は、通常、1~48時間であり、特に2~36時間が好ましい。乾燥時間が長すぎると、PVA系樹脂が熱劣化する傾向があり、乾燥時間が短すぎると、乾燥が不十分となったり、高温乾燥を要したりする傾向がある。
乾燥後のPVA系樹脂の粉体中に含まれる溶媒の含有量は、通常、0~10質量%であり、特に0.01~5質量%、殊に0.1~1質量%とするのが好ましい。
かくして本発明で用いられるPVA系樹脂が得られ、これを含有することにより本発明の結合剤噴射法造形用粉体材料(以下、単に「粉体材料」ということがある。)となる。
本発明の粉体材料によれば、PVA系樹脂を含有することによって粉体材料の濡れ性や流動性が向上し、さらに噴霧された液状成分により、積層時のずれが少なく、成形性が良好となり、さらにPVA系樹脂が一部溶解し、粉体材料の粒子間結合力を高める結合剤として働くことにより、崩壊性と硬度が両立した錠剤を得ることができると考えられる。
本発明の粉体材料において、PVA系樹脂の含有量は、粉体材料全体に対して0.1~15質量%であり、0.5~15質量%がより好ましく、1.0~12質量%がさらに好ましい。
かかる含有量が少なすぎると、PVA系樹脂を含むことによる接着効果を得られず、錠剤成形時に積層した各層にずれが生じる傾向がある。また、PVA系樹脂の含有量が多すぎると、粉末材料の粒子間結合力が必要以上に強固になり、また水に浸漬した際に錠剤の一部がゲル化する可能性があるため崩壊性が劣る傾向がある。
また、本発明の粉体材料は、薬物と混合して使用することができる。
<薬物>
本発明の粉体材料と混合してもよい薬物としては特に制限されないが、たとえば以下のものが挙げられる。これらは単独でもしくは2種を併せて用いることができる。
(1)解熱、鎮痛、抗炎症薬
例えば、アセトアミノフェン、サリチル酸、スルピリン、フルフェナム酸、ジクロフェナク、インドメタシン、アトロピン、スコポラミン、モルヒネ、ペチジン、レボルファノール、ケトプロフェン、ナプロキセン、イブプロフェン、オキシモルフォン、アスピリン、アミノピリン、フェナセチン、アセトアミノフェノン、フェニルブタゾン、ケトフェニルブタゾン、メフェナム酸、ブコローム、ベンジダミン、メピリゾール、チアラミド、チノリジン、キシロカイン、ペンタゾシン、デキサメタゾン、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、アズレン、イソプロピルアンチピリン、サザピリン、クロフェゾン、エトドラッグまたはその塩等が挙げられる。
(2)精神安定薬
例えば、ジアゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、オキサゾラム、クロチアゼパム、メダゼパム、テマゼパム、フルジアゼパム、メプロバメート、ニトラゼパム、クロルジアゼボキシド等が挙げられる。
(3)抗精神病薬
例えば、クロルプロマジン、プロクロルペラジン、トリフロペラジン、スルピリド、塩酸クロカプラミン、ゾテピン、ハロペリドール等が挙げられる。
(4)抗菌薬
例えば、グリセオフルビン、ランカシジン類〔J.Antibiotics,38,877-885(1985)〕、アゾール系化合物〔2-〔(1R,2R)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-1-メチル-3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロピル〕-4-〔4-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル〕-3-(2H,4H)-1,2,4-トリアゾロン、フルコナゾール、イトラコナゾール等〕、ナリジクス酸、ピロミド酸、ピペミド酸三水和物、エノキサシン、シノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、塩酸シプロキサシン、スルファメトキサゾール・トリメトプリム等が挙げられる。
(5)抗生物質
例えば、ゲンタマイシン、ジペカシン、カネンドマイシン、リビドマイシン、トプラマイシン、アミカシン、ディベカシン、フラジオマイシン、シソマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ロリテトラサイクリン、ドキシサイクリン、アンピシリン、ピペラシリン、チカルシリン、セファロチン、セファロリジン、セフォチアム、セフォチアムヘキセチル、セフスロジン、セフメノキシム、セフメタゾール、セファゾリン、セフォタキシム、セフォペラゾン、セフチゾキシム、モキサラクタム、チエナマイシン、スルファゼシン、アズスレオナム、アモキシリン、セファレキシン、エリスロマイシン、バカンピシン、ミノサイクリン、クロラムフェニコールまたはそれらの塩等が挙げられる。
(6)抗腫瘍薬
例えば、6-O-(N-クロロアセチルカルバモイル)フマギロール、ブレオマイシン、メトトレキサート、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、ダウノルビシン、アドリアマイシン、ネオカルチノスタチン、シトシンアラジノシド、フルオロウラシル、テトラヒドロフリル-5-フルオロウラシル、ピシバニール、レンチナン、レバミゾール、ベスタチン、アジメキソン、グリチルリチン、HER2阻害剤(国際公開第01/77107号等に記載の複素環化合物等)、タキソール、塩酸ドキソルビシン、エトポシド、ミトキサントロン、メスナ、ジメスナ、アミノグルテチミド、タモキシフェン、アクロライン、シスプラチン、カルボプラチン、シクロフォスファミド、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BCNU)等が挙げられる。
(7)抗高脂血症薬
例えば、クロフィブラート、2-クロロ-3-〔4-(2-メチル-2-フェニルプロポキシ)フェニル〕プロピオン酸エチル〔Chem. Pharm. Bull.,38,2792-2796(1990)〕、クリノフィブラート、コレスチラミン、ソイステロール、ニコチン酸トコフェロール、ニコモール、ニセリトロール、プロブコール、エラスターゼ等が挙げられる。
(8)鎮咳・去痰薬
例えば、エフェドリン、メチルエフェドリン、ノスカピン、コデイン、ジヒドロコデイン、アロクラマイド、クロルフェジアノール、ピコペリダミン、クロペラスチン、プロトキロール、イソプロテレノール、サルブタモール、テレプタリン、ブロムヘキシン、カルボシスティン、エチルシスティン、メチルシスティンまたはそれらの塩等が挙げられる。
(9)筋弛緩薬
例えば、プリジノール、ツボクラリン、パンクロニウム、カルバミン酸クロルフェネシン、塩酸トルペリゾン、塩酸エペリゾン、塩酸チザニジン、メフェネシン、クロルゾキサゾン、フェンプロバメート、メトカルバモール、クロルメザノン、メシル酸プリジノール、アフロクアロン、バクロフェン、ダントロレンナトリウム等が挙げられる。
(10)抗てんかん薬
例えば、フェニトイン、エトサクシミド、アセタゾラミド、クロルジアゼポキシド、フェノバルビタール、カルバマゼピン、プリミドン等が挙げられる。
(11)抗潰瘍薬
例えば、ランソプラゾール、メトクロプラミド、ファモチジン、オメプラゾール、スルピリド、トレピブトン、塩酸セトラキサート、ゲフェルナート、マレイン酸イルソグラジン、シメチジン、塩酸ラニチジン、ニザチジン、塩酸ロキサチジンアセテート等が挙げられる。
(12)抗うつ薬
例えば、イミプラミン、クロミプラミン、ノキシプチリン、フェネルジン等が挙げられる。
(13)抗アレルギー薬
例えば、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、トリペレナミン、メトジラミン、クレミゾール、ジフェニルピラリン、メトキシフェナミン、フマル酸クレマスチン、塩酸シプロヘプタジン、メキタジン、酒石酸アリメマジン等が挙げられる。
(14)強心薬
例えば、トランスバイオキソカンファー、テレフィロール、アミノフィリン、エチレフリン等が挙げられる。
(15)不整脈治療薬
例えば、プロプラノロール、アルプレノロール、プフェトロール、オクスプレノロール、塩酸プロカインアミド、ジソピラミド、アジマリン、硫酸キニジン、塩酸アプリンジン、塩酸プロパフェノン、塩酸メキシレチン等が挙げられる。
(16)血管拡張薬
例えば、オキシフェドリン、ジルチアゼム、トラゾリン、ヘキソベンジン、バメタン、ニフェジピン、ニルバジピン、二硝酸イソソルビット、塩酸ジルチアゼム、トラピジル、ジピリダモール、塩酸ジラゼプ、ベラパミル、塩酸ニカルジピン、酒石酸イフェンプロジル、マレイン酸シネパシド、シクランデレート、シンナリジン、ペントキシフィリン等が挙げられる。
(17)降圧利尿薬
例えば、ヘキサメトニウムブロミド、ペントリニウム、メカミルアミン、エカラジン、クロニジン、ジルチアゼム、ニフェジピン、フロセミド、トリクロルメチアジド、メチクロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、エチアジド、シクロペンチアジド、フロロチアジド、エタクリン酸等が挙げられる。
(18)糖尿病治療薬
例えば、グリミジン、グリプジド、フェンフォルミン、プフォルミン、メトフォルミン、グリベンクラミド、トルブタミド等が挙げられる。
(19)抗結核薬
例えば、イソニアジド、エタンブトール、パラアミノサリチル酸等が挙げられる。
(20)麻薬拮抗薬
例えば、レバロルファン、ナロルフィン、ナロキソンまたはそれらの塩等が挙げられる。
(21)ホルモン薬
例えば、ステロイドホルモン類、例えば、デキサメサゾン、ヘキセストロール、メチマゾール、ペタメサゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、エストリオール等が挙げられる。
(22)骨・軟骨疾患予防・治療剤
例えば、プロスタグランジンA1誘導体、ビタミンD誘導体、ビタミンK2誘導体、エイコサペンタエン酸誘導体、ベンジルホスホン酸、ビスホスホン酸誘導体、性ホルモン誘導体、フェノールスルフォフタレイン誘導体、ベンゾチオピランまたはベンゾチエピン誘導体、チエノインダゾール誘導体、メナテトレノン誘導体、ヘリオキサンチン誘導体等の非ペプチド性骨形成促進作用物質、ペプチド性骨形成促進物質等が挙げられる。
(23)関節疾患治療剤
例えば、p38MAPキナーゼ阻害剤(国際公開第00/64894号等に記載のチアゾール系化合物等)、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤(MMPI)、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、デキサベタメタゾン、ベタメタゾン等の抗炎症ステロイド剤、インドメタシン、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、イブプロフェン、ピロキシカム、スリンダク等の非ステロイド性消炎鎮痛剤等が挙げられる。
(24)頻尿治療剤塩酸
例えば、フラボキサート、塩酸オキシブチニン、塩酸テロリジン等が挙げられる。
(25)抗アンドロゲン剤
例えば、オキセンドロン、アリルエストレノール、酢酸クロルマジノン、カプロン酸ゲストノロン、酢酸オサプロン、フルタミド、ビカルタミド等が挙げられる。
(26)脂溶性ビタミン薬
例えば、ビタミンK類:ビタミンK1、K2、K3およびK4、葉酸(ビタミンM)等が挙げられる。
(27)ビタミン誘導体
例えば、ビタミンの各種誘導体、例えば、5,6-トランス-コレカルシフェロール、2,5-ヒドロキシコレカルシフェロール、1-α-ヒドロキシコレカルシフェロール等のビタミンD3誘導体、5,6-トランス-エルゴカルシフェロール等のビタミンD2誘導体等が挙げられる。
(28)バイオ医薬品
また、本発明の結合剤噴射法では加熱操作を必要としないため高温で変性する薬物にも適用でき、バイオ医薬品や核酸医薬品が挙げられる。
例えば、バイオ医薬品として、抗CD20、抗HER2、抗TNFs、血管内皮細胞増殖因子、骨形成タンパク質-7、コンセンサスインターフェロン、エリスロポエチン(EPO)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、グルカゴン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト・インスリン、インターロイキン-2、抗インターロイキン-6、インターフェロンα-2a/2b、インターフェロンγ-1b、インターフェロンβ-1b/β-1a、血小板由来成長因子(PDGF)等が挙げられる。
(29)核酸医薬品
例えば、核酸医薬品としてsiRNA、miRNA、アンチセンス、アプタマー、デコイ、リボザイム、CpGオリゴ等が挙げられる。
(30)その他
ヒドロキシカム、ダイアセリン、メゲストロール酢酸、ニセロゴリン、プロスタグランジン類等、さらに、虚血性疾患治療薬、免疫疾患治療薬、アルツハイマー病治療薬、骨粗鬆症治療薬、血管新生治療薬、網膜症治療薬、網膜静脈閉塞症治療薬、老人性円板状黄斑変性症治療薬、脳血管攣縮治療薬、脳血栓治療薬、脳梗塞治療薬、脳閉塞症治療薬、脳内出血治療薬、クモ膜下出血治療薬、高血圧性脳症治療薬、一過性脳虚血発作治療薬、多発性梗塞性痴呆治療薬、動脈硬化症治療薬、ハンチントン病治療薬、脳組織障害治療薬、視神経症治療薬、緑内障治療薬、高眼圧症治療薬、網膜剥離治療薬、関節炎治療薬、抗リウマチ薬、抗セプシス薬、抗セプティックショック薬、抗喘息薬、アトピー性皮膚炎治療薬、アレルギー性鼻炎治療薬等が挙げられる。
上記の薬物の含有量は、バイオアベイラビリティーに応じて適宜調整される。薬物は、一般に医療、食品分野等で用いられる希釈剤等によって希釈されたものであってもよい。また薬物の苦味のマスキングを目的として処理したものを用いてもよい。
<賦形剤>
本発明の粉体材料は、賦形剤を含んでもよい。
賦形剤としては、例えば、糖アルコール類、糖類、リン酸カルシウム類、結晶セルロース類、デンプン類、リン酸ナトリウム類およびゼラチン等から選ばれた1種または2種以上の成分が用いられる。好ましい賦形剤としては糖アルコール類や糖類が挙げられる。
糖アルコール類としては、例えば、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールおよびマルチトール等が挙げられる。糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、乳糖、白糖、トレハロース、麦芽糖およびオリゴ糖等が挙げられる。
安全性、溶解性、適合性および非吸湿性の観点から、特に乳糖が好ましい。
本発明において、賦形剤の含有量は、粉体全体に対して1~99質量%が好ましく、15~98質量%がより好ましく、30~97質量%がさらに好ましく、50~95質量%が特に好ましい。
かかる含有量が少なすぎると、溶解性が低下する傾向があり、多すぎると、錠剤成形性が低下する傾向がある。
賦形剤は、使用する種類にもよるが、平均粒子径が、1~200μmが好ましく、2~150μmがより好ましく、5~100μmが特に好ましい。
賦形剤は、所望の粒子径となるように粉砕してもよく、粉砕方法としては、公知の粉砕器等を使用すればよい。
平均粒子径が小さすぎると扱いが難しくなりまた付着性や凝集性も強くなるため流動性が悪化する傾向があり、大きすぎると錠剤の強度が低下する傾向がある。
<その他の添加剤>
本発明の結合剤噴射法造形用粉体材料には、本発明の効果を損なわない範囲において、各種添加剤を添加することができる。その他の添加剤としては、例えば、崩壊剤、pH調整剤、流動化剤、界面活性剤、着色剤、甘味剤およびコーティング剤等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、セルロースまたはその誘導体およびデンプンまたはその誘導体等が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸およびその塩、リン酸およびその塩、炭酸およびその塩、酒石酸およびその塩、フマル酸およびその塩、酢酸およびその塩、アミノ酸およびその塩、コハク酸およびその塩並びに乳酸およびその塩等が挙げられる。
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、酸化チタン、ステアリン酸、トウモロコシゲルおよび重質無水ケイ酸等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート類、リン酸水素ナトリウム類およびリン酸水素カリウム類等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、食用黄色5号、食用黄色4号、アルミニウムキレート、酸化チタンおよびタルク等が挙げられる。
甘味剤としては、例えば、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ソーマチンおよびスクラロース等が挙げられる。
コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンアクリル酸エチル、メタクリル酸メチルコポリマー分散液、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートおよびメタクリル酸コポリマー等が挙げられる。
<結合剤噴射法造形>
本発明の結合剤噴射法造形用粉体材料を使用した結合剤噴射法による造形方法について説明する。
本発明の結合剤噴射法による造形方法では、結合剤噴射法造形用粉体材料を含む層を形成する層形成工程と、前記層の選択された領域内の粉体材料を接着させる粉体接着工程と、を含み、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
以下、各手順の詳細を説明する。
層形成工程の前に、供する原料同士を混合してもよい。
PVA系樹脂、薬物を混合して原料粉体を得ることができる。各種成分の混合には、公知または慣用のミキサー等(例えば、モルタルミキサー、可傾式ミキサー、トラックミキサー、2軸式ミキサー、オムニミキサー、パンミキサー、プラネタリーミキサーおよびアイリッヒミキサー等)を用いることができる。
先に記載した任意の成分(賦形剤等)を添加する場合は、この混合工程において添加することができる。各成分をミキサー等に投入する順序は特に限定されない。
その後、原料粉体を結合剤噴射法3Dプリンターへ充填し、原料粉体を造形部に供給して層状に堆積させる(層形成工程)。
堆積させた層の上からノズルを通じて液状成分を噴霧させることで粉体を溶解し結合させる(粉体接着工程)。この際、堆積している層へ選択的に噴霧することで、噴霧した箇所のみが結合するため、任意の形状の造形物を得ることができる。
接着した層の上に原料粉体を新たに層状に堆積(リコート)することで、粉体を造形部に供給し、新たな層を形成する。その後、新たな層に液状成分を噴霧させ、粉体を接着させる。この層形成工程と粉体接着工程を所望の層厚になるまで繰り返すことで製剤を作製することができる。
前記粉体接着工程において、使用できる液状成分としては、水もしくは有機溶剤を好適に使用することができる。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等の炭素数1~4の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル等のカルボン酸エステル等の有機溶剤が挙げられる。水および有機溶剤のうち1つ以上を混合して使用してもよい。
使用する液状成分は、人体への影響の小さい水、エタノールが特に好ましい。
水と有機溶剤を混合して使用する場合、水/有機溶剤の比率が1/99~99/1であることが好ましく、10/90~99/1であることがより好ましく、20/80~99/1がさらに好ましく、30/70~99/1が特に好ましい。
水の配合比率が多すぎると、リコート時に堆積した層同士にずれが生じやすい傾向がある。水の配合量が少なすぎると、成形性が低下する傾向がある。
また、液状成分に薬の有効成分ではない接着成分(好ましくは薬学的に許容される接着成分)を含有していてもよい。接着成分としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムとマレイン酸とのコポリマー、ポリビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、セルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等)、アラビアゴム、ハリエンジュゴム、ゼラチン、澱粉、スクロース、デキストロース、フルクトース、ラクトース、小麦粉、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等、クエン酸、コハク酸等を使用することができる。
さらに、液状成分には、その他成分として、界面活性剤を含んでもよい。
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ソルビタン脂肪酸エステル(Span系)、グリセリンモノステアリン酸エステル、ラウロマクロゴール、ステアリン酸ポリオキシル40、ベンザルコニウム塩化物等が挙げられる。
安定化剤としては、例えばトコフェロール、エデト酸四ナトリウム、ニコチン酸アミド、シクロデキストリン類等が挙げられる。
界面活性剤の含有量としては、液状成分中に0.01~10質量部が好ましく、0.025~5質量部がより好ましく、0.05~2.5質量部が特に好ましい。
かかる含有量が小さすぎると錠剤硬度が低下する傾向があり、多すぎるとリコート時に堆積した層同士にずれが生じやすい傾向がある。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記例に制限されるものではない。
また、得られた錠剤の硬度、崩壊時間、積層時のずれ評価として錠剤角度、成形性を下記の通り測定、評価した。
<硬度>
ロードセル式錠剤硬度計(岡田精工社製「ポータブルチェッカー PC-30」)を使用し、下記の条件にて硬度を測定した。
Crushing speed : 30 μm/min
<崩壊時間>
第十七改正日本薬局方に従い崩壊試験機(富山産業社製「NT-20H」)を使用して下記条件で測定した。
測定溶媒:水
測定温度:37℃
測定時間:30分
<錠剤角度>
図1に示したように、錠剤の角度(2)を、分度器を使用して測定した。
90度に近いほど、錠剤製造時の層間のずれが小さいことを意味している。
<成形性>
下記の判断基準により、錠剤の成形性を判断した。
〇:問題なく錠剤が形成できる、きれいに印刷台から剥離できる。
×:得られた錠剤に歪みや割れがある、もしくは錠剤が印刷台上の粉末に付着してしまい、余計な粉末が錠剤にくっついてしまう。
〔錠剤の作製(簡易評価)〕
3Dプリンターを使用した錠剤作製の前に、結合剤噴射式3Dプリンターへの適用要否を確認するため、直接打錠した錠剤に液状成分を噴霧した錠剤で、簡易的に結合剤噴射式3Dプリンターによる錠剤を再現、評価した。
作製した錠剤の各成分の配合量は表1にまとめた。
Figure 2024067975000001
(実施例1)
ポリビニルアルコール(平均ケン化度88.0モル%、4質量%水溶液粘度43.0mPa・s、平均粒子径25.6μm)15質量部、乳糖(フロイント産業製「ダイラクトーズS」、平均粒子径68.7μm)85質量部、薬物としてアセトアミノフェン(平均粒子径28.9μm)10質量部を混合し、V-typeミキサーを使用し30rpmで10分間混合した。
得られた混合物を打錠機(特殊計測社製「TK-TB20KN」)により打錠圧2.1kNで打錠し(1錠あたり200mg)、打錠物に液状成分として、水/エタノール=95/5溶液を噴霧して直径8mmの円柱状の錠剤を作製した。
(比較例1)
ポリビニルアルコールの配合量を20質量部、乳糖の配合量を70質量部、アセトアミノフェンの配合量を10質量部に変更した以外は実施例1と同様にして直径8mmの円柱状の錠剤を得た。
(比較例2)
ポリビニルアルコールの配合量を30質量部、乳糖の配合量を60質量部、アセトアミノフェンの配合量を10質量部に変更した以外は実施例1と同様にして直径8mmの円柱状の錠剤を得た。
実施例1、比較例1、2について錠剤の硬度、崩壊時間を測定し、結果を表2へまとめた。
Figure 2024067975000002
表2より、PVA系樹脂の含有量が粉体全体に対して20質量部以上である比較例1および比較例2の錠剤では、崩壊時間の測定範囲内で錠剤が崩壊しなかった。
〔錠剤の作製(結合剤噴射式3Dプリンター)〕
結合剤噴射式3Dプリンターを使用して錠剤を作製した。
作製した錠剤の各成分の配合量は表3にまとめた。
Figure 2024067975000003
(実施例2)
ポリビニルアルコール(平均ケン化度88.0モル%、4質量%水溶液粘度43.0mPa・s、平均粒子径25.6μm)5質量部、乳糖(フロイント産業社製「ダイラクトーズS」、平均粒子径68.7μm)85質量部、薬物としてアセトアミノフェン(平均粒子径28.9μm)10質量部を混合し、V-typeミキサーを使用し30rpmで10分間混合した。
得られた粉体を結合剤噴射式3Dプリンター(3D System社製「desktop Binder Jetting printer 」)に調整した粉体を充填し、液状成分として、水/エタノール=95/5の溶液を噴霧し、直径14.7mm、高さ3.7mmの円柱状の錠剤を得た。
(実施例3)
ポリビニルアルコールの配合量を10質量部、乳糖の配合量を80質量部、アセトアミノフェンの配合量を10質量部に変更した以外は実施例2と同様にして錠剤を得た。
(実施例4)
ポリビニルアルコールの配合量を10質量部、乳糖の配合量を80質量部、アセトアミノフェンの配合量を10質量部に変更し、噴霧する液状成分を水/エタノール=70/30の水溶液とした以外は実施例2と同様にして錠剤を得た。
(実施例5)
ポリビニルアルコールの配合量を10質量部、乳糖の配合量を80質量部、アセトアミノフェンの配合量を10質量部に変更し、噴霧する液状成分を水/エタノール=50/50の水溶液とした以外は実施例2と同様にして錠剤を得た。
(実施例6)
ポリビニルアルコールの配合量を10質量部、乳糖の配合量を80質量部、アセトアミノフェンの配合量を10質量部に変更し、噴霧する液状成分をTween80(キシダ化学社製「ポリソルベート80」)0.1質量%水溶液とした以外は実施例2と同様にして錠剤を得た。
(実施例7)
ポリビニルアルコールの配合量を10質量部、乳糖の配合量を80質量部、アセトアミノフェンの配合量を10質量部に変更し、噴霧する液状成分をTween80(キシダ化学社製「ポリソルベート80」)0.5質量%水溶液とした以外は実施例2と同様にして錠剤を得た。
(比較例3)
ポリビニルピロリドン(BASF社製「Kollidon25」、平均粒子径46.7μm)10質量部、乳糖(フロイント産業社製「ダイラクトーズS」、平均粒子径68.7μm)80質量部、アセトアミノフェン(平均粒子径28.9μm)10質量部を混合し、V-typeミキサーを使用し30rpmで20分間混合した。
得られた粉体を結合剤噴射式3Dプリンター(3D System社製「desktop Binder Jetting printer 」)に調整した粉体を充填し、液状成分として、Tween80(キシダ化学社製「ポリソルベート80」)0.5質量%水溶液を噴霧し、直径14.7mm、高さ3.7mmの円柱状の錠剤を得た。
(比較例4)
ポリビニルピロリドンの代わりにHPMC(信越化学工業社製、「ヒプロメロースTC‐5」、平均粒子径50.6μm)を使用した以外は比較例3と同様にして錠剤を得た。
実施例2~7、比較例3、4について錠剤の硬度、崩壊時間、錠剤硬度、成形性を測定し、結果を表4へまとめた。
Figure 2024067975000004
PVAを粉体材料として使用した実施例2~7は、硬度と崩壊性が両立しており、さらに錠剤角度、成形性が良好な錠剤が得られた。
一方、PVPを粉体材料として使用した比較例3は成形した錠剤に印刷台上の粉末に付着してしまい、余分な粉体が付着してしまった。さらに錠剤の変形がみられた。
HPMCを粉体材料として使用した比較例4では、錠剤硬度が小さくなってしまった。
本発明の結合剤噴射法造形用粉体材料、および製剤の製造方法によれば、得られた製剤の積層時のずれが少なく、さらに歪みが生じることがないため成形性が良好であり、崩壊性と硬度が両立した錠剤を得ることができる。

Claims (9)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂を含む粉体材料であって、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が粉体材料100質量部に対して0.1~15質量部である結合剤噴射法造形用粉体材料。
  2. ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が70~99.9モル%である請求項1に記載の結合剤噴射法造形用粉体材料。
  3. ポリビニルアルコール系樹脂の平均粒子径が1~200μmである請求項1に記載の結合剤噴射法造形用粉体材料。
  4. 賦形剤を粉体材料100質量部に対して50~99.9質量部含む請求項1に記載の結合剤噴射法造形用粉体材料。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の結合剤噴射法造形用粉体材料を含む錠剤。
  6. 薬効成分とポリビニルアルコール系樹脂を含み、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が粉体材料100質量部に対して0.1~15質量部である粉体材料に液状成分を吹きかけて製剤を得る製剤製造方法。
  7. 請求項6に記載の製剤製造方法において、結合剤噴射式3Dプリンターを使用する製剤製造方法。
  8. 液状成分が、水と有機溶剤の混合物であり、配合比率が水/有機溶剤=1/99~99/1である請求項6、または7に記載の製剤製造方法。
  9. 液状成分が、界面活性剤を含む水溶液であり、液状成分中に界面活性剤を0.01~10質量部含む請求項6、または7に記載の製剤製造方法。
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