JP5705206B2 - 硬カプセルおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体、及び少なくとも1種の重合性ビニル単量体、を共重合させてなる共重合体、並びに特定の化合物を含む皮膜を備えた硬カプセルおよびその製造方法に関する。
医薬品の活性物質、即ち、薬効成分には、水への溶解性の悪い物質が多く、そのような物質では消化管からの吸収性が低く、生物学的利用能や薬効発現が低下、また変動しやすい。前臨床試験において、動物などで薬効や生物薬剤学的なパラメーターを求めるときには、薬効成分を吸収しやすくするため、何らかの溶剤に溶解させることが多く、難溶解性の薬効成分に対しては、比較的低分子のポリエチレングリコールおよびその誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、炭素数が6から12の脂肪酸またはその塩、ポリオキシエチレンヒマシ油、ジエチレングリコールの誘導体などが使用される。しかし、これらの溶剤は通常液体であり、錠剤にすることは困難で、市場に出す最終的な剤形は別途検討が必要である。これらの溶剤を直接製剤化できれば、製剤化の時間が大幅に短縮することが可能となるが、その剤形としてカプセル剤が最も期待されている。
カプセル剤としては、従来、ゼラチン又はセルロース誘導体を基剤とするカプセル剤が知られている。しかし、ゼラチン硬カプセルに重量平均分子量400のポリエチレングリコール(PEG400)を充填すると、皮膜中の水分が溶剤に移行するため、カプセルが割れるという欠点がある(非特許文献1参照)。また、セルロース誘導体のカプセルではこれらの溶剤は可塑剤として働くためカプセルの皮膜を透過してカプセルの表面にしみ出すなどする。
そこで、このような問題を解決するため、特定のポリビニルアルコール共重合体及びポリビニルアルコールを含有する皮膜からなる、割れ耐性や衝撃耐性が強化された硬カプセルが開発されている(特許文献1参照)。しかしながら、ポリビニルアルコールは特に低温での溶解性が低く、このカプセルは溶解するまでに長時間が必要であり、特に早急に吸収させることを要する薬物を充填するには不向きであった。
国際公開2009/125483号パンフレット 国際公開2002/017848号パンフレット
Pharmaceutical Technology Europe, October, 84,86, 88-90, 1998
本発明は、難溶性薬物を溶解する溶剤(以下、「難溶性薬物溶解溶剤」ともいう)を充填しても安定性に優れ、しかも、崩壊時間が短く優れた溶解性を示す硬カプセルを提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下に少なくとも1種の特定の重合性ビニル単量体を重合又は共重合した重合体又は共重合体に、ネイティブ型ジェランガムを配合して形成された硬カプセルが、難溶性薬物を溶解する溶剤を充填しても安定性が高く、崩壊時間が短く優れた溶解性を示すことを見出した。またさらに、当該硬カプセルが機械的強度にも優れ、高湿度環境下における皮膜の軟化も抑制されることを見出した。またさらに、本発明者らは、前記重合体又は共重合体及びネイティブ型ジェランガムを溶解して含有するカプセル調製用原液のpHを2〜6程度とし、当該原液をカプセル型に乾燥させて硬カプセルを製造することにより、さらに機械的強度が増すことも見出した。本発明は、これらの知見を基にさらに検討を重ねて、完成されたものである。
即ち、本発明は例えば以下の硬カプセル、カプセル調製用原液、硬カプセルの製造方法、硬カプセル剤を包含する。
項1−A.
(A)ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下、一般式[1]
C=C(R)−COOR [1]
〔式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは水素原子または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示す。〕
で表される少なくとも1種の重合性ビニル単量体を重合又は共重合した重合体又は共重合体、及び、
(B)ネイティブ型ジェランガム
を含む皮膜からなる硬カプセル。
項1−B.
(A)100質量部に対し、(B)0.1〜5質量部を含む皮膜からなる項1−Aに記載の硬カプセル。
項2−A.
(A)ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下、一般式[1]
C=C(R)−COOR [1]
〔式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは水素原子または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示す。〕
で表される少なくとも1種の重合性ビニル単量体を重合又は共重合した重合体又は共重合体、及び、
(B)ネイティブ型ジェランガム
を含有する、pH2〜6のカプセル調製用原液。
項2−B.
(A)100質量部に対し、(B)0.1〜5質量部を含有する項2−Aに記載のカプセル調製用原液。
項3.
項2−A又は2−Bに記載のカプセル調製用原液をカプセルの形状に乾燥させて硬カプセルを得る工程を含む、硬カプセルの製造方法。
項4.
項2−A又は2−Bに記載のカプセル調製用原液にカプセル成型用ピンを浸漬して引き上げ、当該成型用ピンに付着した前記カプセル調製用原液を乾燥させて硬カプセルを得る工程を含む、硬カプセルの製造方法。
項5.
項3又は4に記載の硬カプセルの製造方法により得られる硬カプセル。
項6.
項1−A、1−B、又は5に記載の硬カプセルに、下記(a)〜(g)からなる群から選ばれる少なくとも1つが充填されてなる、硬カプセル剤。
(a)重量平均分子量が2000以下のポリエチレングリコールまたはその誘導体、
(b)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
(c)炭素数が6から12の脂肪酸またはその塩
(d)ポリオキシエチレンヒマシ油
(e)ジエチレングリコールのエーテル誘導体
(f)炭素数が6から12の脂肪族アルコール
(g)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル
本発明の硬カプセルは、難溶性薬物溶解溶剤を充填しても安定性に優れており、崩壊時間が短く優れた溶解性を示す。さらに、機械的強度に優れ、高湿度環境下における皮膜の軟化も抑制する。その上、低水分性を示す。
本発明の硬カプセルであれば、従来、カプセルには適さないと考えられていた多くの薬物充填することが可能なだけでなく、保管時の機械的強度にも優れる。さらに、多種の薬物(難溶性薬物を含む)を硬カプセルへ充填することを可能とする。また、難溶性薬物溶解溶剤を充填しても安定性が損なわれないため、カプセル剤の品質向上等に寄与できる。
またさらに、カプセル調製用原液のpHを2〜6程度とし、当該原液をカプセル形状になるように乾燥させて硬カプセルを製造することにより、さらに機械的強度が増した硬カプセルを得ることができる。
図1は、ネイティブ型ジェランガム(下側)及び脱アシル型ジェランガム(上側)の構造式を示す。Mはカチオン類を示す。 図2は、硬カプセルの耐衝撃強度試験装置を示す模式図である。
以下、本発明を更に詳しく説明する。
1.皮膜
本発明の硬カプセルは、皮膜に(A)ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下、少なくとも1種の特定の重合性ビニル単量体を重合又は共重合した重合体又は共重合体、及び、(B)ネイティブ型ジェランガムを含むものである。
(A)ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下、少なくとも1種の特定の重合性ビニル単量体を重合又は共重合した重合体又は共重合体
本発明において使用されるポリビニルアルコール(PVAともいう)およびその誘導体としては、PVAの完全ケン化物、中間ケン化物、部分ケン化物の他に、アミン変性PVA、エチレン変性PVA、末端チオール変性PVAなどの各種変性PVAが用いられる。
PVAは、酢酸ビニルをラジカル重合し、得られた酢酸ビニルを適宜ケン化することによって得ることができる。よって、通常PVAには酢酸ビニル由来の−OCOCH基が存在する。PVAは、ケン化度の違いにより、完全ケン化物、中間ケン化物、部分ケン化物等に分類され得る。本発明に用いるPVAのケン化度は約70モル%以上であることが好ましく、約80モル%以上であることがより好ましく、85モル%以上であることがさらに好ましい。なかでも、ケン化度85〜90モル%、特に86〜89モル%程度のPVAケン化物が好適である。なお、PVAに関する技術分野で知られているように、PVAの完全ケン化物とは通常ケン化度98モル%以上のPVAのことであって、必ずしも100モル%ケン化されたものではない。
また、PVAの誘導体として例示される、アミン変性PVA、エチレン変性PVA、末端チオール変性PVAなどの各種変性PVAは、例えば当該分野で公知の方法で製造することができる。
なお、PVA及びその誘導体は、市販品を購入して用いることもできる。例えば日本合成化学工業株式会社、日本酢ビ・ポバール株式会社等から購入することができる。
PVA及びその誘導体は、種々の重合度のものが知られているが、その平均重合度は用途に応じた濃度、粘度で最適なものを選択することができ、限定されるものでない。すなわち、硬カプセルの製造方法は例えば以下の“2.製造方法”の項に示したように種々の方法があり、それらの方法によって至適の粘度も異なり、そのために使用可能なPVA及びその誘導体の重合度も適宜選択されうる。例えば、平均重合度約350〜5000、好ましくは平均重合度約1200〜3800のものを本発明に用いることができる。特にディッピング法により硬カプセルを製造するときに当該平均重合度が好ましい。
PVA及びその誘導体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、ケン化度の異なるPVA及び各種変性PVAを、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、PVA及びその誘導体として、市販品を用いることもできる。
本発明において使用される特定の重合性ビニル単量体は、
一般式[1]
C=C(R)−COOR [1]
〔式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは水素原子または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示す。〕
で表される化合物である。
本発明において使用される重合性ビニル単量体としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、イソブチルアクリレートが挙げられる。アクリル酸及びメタクリル酸として、これらの塩を用いることもできる。例えば、これらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、又はアルキルアミン塩等を用いてもよい。
また、重合性ビニル単量体は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性ビニル単量体としては、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種と、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、及びイソブチルアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種とを組み合わせて使用するのが好ましく、アクリル酸又はメタクリル酸並びにメチルメタクリレートを使用するのがより好ましい。
ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下、少なくとも1種の特定の重合性ビニル単量体を重合又は共重合した重合体又は共重合体(以下単に「PVA共重合体」ともいう)における、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体と重合性ビニル単量体との割合は、特に制限されないが、好ましくは、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体が20から95質量%、重合性ビニル単量体が5から80質量%である。さらに好ましくは、PVA及び/又はその誘導体が50から90質量%、重合性ビニル単量体が10から50質量%である。
PVAおよび/またはその誘導体が20質量%未満である場合に比べ、20質量%以上である場合は、カプセルが水に溶解または分散する能力がより向上し、好ましい。また、PVAおよび/またはその誘導体が95質量%を超える場合に比べ、95質量%以下の場合の方が、カプセルが湿度の影響を受けにくく、高湿度下でより軟化しにくいので好ましい。
また、重合性ビニル単量体として、2種以上を組み合わせて用いる場合、その割合は、特に制限されず、適宜設定することができる。特に、(I)アクリル酸、メタクリル酸、これらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、及びアルキルアミン塩からなる群より選択される少なくとも1種と(II)メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、及びイソブチルアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種とを組み合わせて使用する場合には、その割合は、好ましくは(I)5〜50質量部に対し(II)50〜95質量部、より好ましくは(I)10〜40質量部に対し(II)60〜90質量部であり、さらに好ましくは(I)10〜30質量部に対し(II)70〜90質量部であり、よりさらに好ましくは(I)10〜20質量部に対し(II)80〜90質量部である。さらには、重合性ビニル単量体合計量に対し、(I)の質量比は5から50質量%が好ましく、10から40質量%がより好ましく、10から30質量%がさらに好ましく、10から20質量%がより好ましく、また、(II)の質量比は50から95質量%が好ましく、60から90質量%がより好ましく、70から90質量%がさらに好ましく、80から90質量%がよりさらに好ましい。
重合又は共重合は、公知の方法を使用して行うことができるが、例えば、水にPVA及び/又はその誘導体を添加し、加温して溶解し、次いで重合性ビニル単量体の少なくとも1種と重合開始剤とを添加し、共重合させて樹脂を得ることができる。例えば、イオン交換水へPVA及び/又はその誘導体を分散させ、90〜100℃で完全溶解させた後、重合性ビニル単量体の少なくとも1種を加えて窒素置換し、重合開始剤を加えて2〜5時間程度反応させればよい。水に添加するPVA及び/又はその誘導体、並びに重合性ビニル単量体の質量比によって、上述のPVA共重合体におけるPVA及び/又はその誘導体、並びに重合性ビニル単量体の質量比が決定される。よって、水に添加する質量比は上述のPVA共重合体におけるPVA及び/又はその誘導体並びに重合性ビニル単量体の質量比であることが好ましい。
重合開始剤は、従来使用されているものを用いることができる。例えば、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、AIBN(アゾイソブチロニトリル)などのアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物、過酸化水素−酒石酸、過酸化水素−酒石酸ナトリウムなどのレドックス開始剤等を使用することができる。
また、硬カプセルの皮膜に含まれる(A)のPVA共重合体の量は、乾燥質量換算で、皮膜全質量に対し70〜99.9質量%程度が好ましく、80〜99.8質量%程度がより好ましく、85〜99.7質量%程度がさらに好ましい。
限定的な解釈を望むものではないが、本発明において、ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下、少なくとも1種の特定の重合性ビニル単量体を重合又は共重合させる際の反応機構は、次のようなものであると考えられる。すなわち、まず、重合開始剤により、PVAに存在する−OCOCH基の末端のメチル基の水素が引き抜かれ、ラジカルが発生する。当該ラジカルに重合性ビニル単量体が結合し、当該重合性ビニル単量体の二重結合が切断され、再度ラジカルが発生する。当該ラジカルに重合性ビニル単量体が結合し、同様に反応が繰り返される。
本発明において、(A)のPVA共重合体は、PVAの側鎖として存在する−OCOCH基に前述の重合性ビニル単量体の少なくとも1種がグラフト重合した構造を有する。なお、このグラフト重合において、“重合性ビニル単量体の少なくとも1種が重合又は共重合した重合体”を介してPVA同士が結合していてもよい。すなわち、PVAとPVAとが、“重合性ビニル単量体の少なくとも1種が重合又は共重合した重合体”により架橋されていてもよい。
例えば、重合性ビニル単量体としてアクリル酸及びメチルメタクリレートを用いた場合は、(A)のPVA共重合体は、アクリル酸及びメチルメタクリレートの共重合体が、PVAの−OCOCH基を介してPVAに結合した構造を有する。このようなPVA共重合体(ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体)として、具体的には、POVACOAT(登録商標)TypeR、TypeL(大同化成工業株式会社製)を例示できる。
(B)ネイティブ型ジェランガム
本発明の硬カプセルの皮膜は、更に(B)ネイティブ型ジェランガムの化合物を含む。
ジェランガムは、水生植物から分離された微生物(Pseudomonas elodea)を液体培養にて培養して、菌体外に産生される粘性物を培養液から回収して得られるものである。回収の際に脱アシル化したものを脱アシル型ジェランガム、脱アシル化せず回収したものをネイティブ型ジェランガムという。脱アシル型とネイティブ型の違いは、1−3結合したグルコースに存在するアセチル基とグリセリル基の有無であり、これらアセチル基とグリセリル基を除去したものが脱アシル型ジェランガムである。報告されている脱アシル型ジェランガム及びネイティブ型ジェランガムの一次構造を図1に示す。なお、図1の構造式は理解の助けのために示すものであって、必ずしも当該構造式でネイティブジェランガムを限定するものではない。
本発明に用いるネイティブ型ジェランガムとしては、Pseudomonas elodeaにより産生されたものを回収して用いることができる。また、ネイティブ型ジェランガムを販売する販社より購入して本発明に用いてもよい。例えば、「ケルコゲルCG−HA」「ケルコゲルLT100」、「ケルコゲルHM」、「ケルコゲルHT」(以上、全てCP Kelco社製)等を用いることができる。
特に制限されるものではないが、本発明に用いるネイティブ型ジェランガムは、下記の測定条件でゲル強度を測定した際、400〜650g/cmであることが好ましい。
〔ゲル強度測定条件〕
重量既知のビーカーに蒸留水295gをとり、0.3M CaCl・2HOを2.0mL加えた後、プロペラ撹拌を用いて700±100rpmで撹拌する。そこへネイティブ型ジェランガムを3.0g加え、94〜95℃まで撹拌しながら15分加熱する。95℃の蒸留水で300gに調整した後、TPA ring moldに充填し、ふたをして24時間放置する。このゲルをテクスチャーアナライザー(TA-TX2 Texture Analyzer)を用い20〜21℃の下、ゲル強度を測定する。その際、プランジャーはTexture Techmologies TA-19 plungerを使用する。
硬カプセルの皮膜に含まれる(B)ネイティブ型ジェランガムの量は、(A)のPVA共重合体の量に応じて適宜設定することができる。例えば、乾燥質量換算で皮膜全質量に対し、0.05〜10質量%程度、好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは、0.2〜3質量%、よりさらに好ましくは0.2〜1質量%程度である。ネイティブ型ジェランガムの量が当該範囲であれば、カプセル皮膜形成能が好ましく確保される。また、粘度が大きくなりすぎてカプセル成型性に悪影響を及ぼすこともない。
また、硬カプセルの皮膜において、(A)のPVA共重合体100質量部に対し、(B)ネイティブ型ジェランガムは好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.3〜2質量部含まれる。
(C)他の成分
皮膜には、本発明の効果が損なわれない限り、上記(A)及び(B)以外の他の成分が含まれていてもよい。
例えば、公知の可塑剤が含まれてもよい。このような可塑剤としては、例えば多価アルコールが挙げられる。具体的にはグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、糖アルコール等の多価アルコールが挙げられる。なお、糖アルコールとしてはソルビトール、マンニトール等が挙げられる。これらのなかでも、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトールが好ましく、グリセリン、プロピレングリコールがより好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
また、皮膜には、多価アルコールのエステルが含まれてもよい。多価アルコールのエステルとしては、例えば多価アルコールと炭素数1〜5のカルボン酸(好ましくは炭素数1〜4のカルボン酸、より好ましくは炭素数1〜3のカルボン酸)とのエステルを用い得る。例えば、前記多価アルコールのモノエステル、ジエステル、トリエステル等が好ましく挙げられる。好ましい多価アルコールのエステルとして、具体的には、グリセリントリアセテート(以下、トリアセチンともいう)、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリブチレート、グリセリントリプロピオネート、プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート等が挙げられる。これらのなかでも、トリアセチンが特に好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
また、皮膜には、多価カルボン酸のエステルが含まれてもよい。多価カルボン酸のエステルとしては、例えば多価カルボン酸と炭素数1〜5のアルコール(好ましくは炭素数1〜4のアルコール、より好ましくは炭素数1〜3のアルコール)とのエステルを用い得る。例えば、多価カルボン酸のモノエステル、ジエステル、トリエステル等を用い得る。多価カルボン酸としては、2個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸であれば特に限定されないが、好ましい多価カルボン酸として、具体的には、クエン酸、アセチルクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、コハク酸等が挙げられる。好ましい多価カルボン酸のエステルとして、具体的には、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジメチル等が挙げられる。これらのなかでもクエン酸トリエチルが特に好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロース誘導体等の水溶性高分子を皮膜の軟化防止のために配合してもよい。このような水溶性高分子としては、例えば、天然多糖類、半合成多糖類、蛋白質、及び合成高分子等が挙げられる。
天然多糖類としては、カンテン、マンナン、プルラン、デンプン類(トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン)、デキストリン、アルファ化デンプン、アミロース、デキストラン等が挙げられる。
半合成多糖類としては、セルロース系高分子、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ、シクロデキストリンポリマー等が挙げられる。
蛋白質としては、ゼラチン、カゼイン、ゼイン等が挙げられる。
合成高分子類としては、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
セルロース系高分子としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(日本薬局方ではヒプロメロースとも称される。「HPMC」ともいう)、ヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」ともいう)、メチルセルロース(「MC」ともいう)、ヒドロキシエチルセルロース(「HEC」ともいう)等が挙げられる。
これらの成分は1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
また、必要に応じてゲル化補助剤を配合してもよい。ネイティブ型ジェランガムはゲル化補助剤が存在しなくてもゲル化するが、ゲル化温度を上げるためなど必要に応じて加えてもよい。例えばカリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン等を含む水溶性化合物を配合してもよい。このような水溶性化合物としては、例えば塩化カリウム、リン酸カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム等を挙げることができる。
また、本発明の硬カプセルは、通常の硬ゼラチンカプセルまたはセルロース誘導体カプセルと同様に、必要に応じて色素、顔料等の着色剤、不透明化剤、香料、ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤等を本発明の効果を妨げない範囲で適宜添加することができる。
これら(C)その他の成分の配合量は、硬カプセルが製造できる範囲で適宜選択される。
硬カプセルの皮膜の厚さは、硬カプセルとしての機能を満たす限り特に制限されないが、一般に0.01から5mm程度、好ましくは0.05から1mm程度、更に好ましくは0.05〜0.5mm程度である。
なお、上記皮膜は、硬カプセルの他、軟カプセルの皮膜として用いることも可能である。
2.製造方法
上記皮膜を備えた本発明の硬カプセルの製造方法としては、射出成型法やディッピング法などが挙げられる。但し、硬カプセルが成型可能な方法ならば、特にこれらの方法に限定されるものではなく、通常の硬ゼラチンカプセル成型手法と同様の方法を用いることができる。好ましくはディッピング法である。ディッピング法は、硬カプセル基剤が温度差によりゲル化することを利用したカプセルの製造方法である。
ディッピング法の硬カプセルの製造方法を例示する。(A)ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下で少なくとも1種の特定の重合性ビニル単量体を重合又は共重合した重合体又は共重合体、(B)ネイティブ型ジェランガム、並びに、必要に応じて(C)その他の成分を含む組成物を溶解した溶液(水溶液又はジェル)中に成型ピンを浸漬し、これを引き上げ、前記組成物をゲル化、乾燥して、皮膜を形成するという方法が挙げられる。即ち、(A)及び(B)(必要に応じて(C))を溶解した水溶液(カプセル調製用原液)にカプセル成形用ピンを浸漬して引き上げ、当該成形用ピンに付着した前記水溶液(カプセル調製用原液)を乾燥させることで、硬カプセルの皮膜を得ることができる。より具体的には、実施例に記載の方法が例示される。
3.カプセル調製用原液
本発明は、カプセル調製用原液も包含する。上記皮膜を備えた本発明の硬カプセルは、上述のようにカプセル調製用原液から製造され得る。カプセル調製用原液をカプセルの形となるように乾燥させることで、本発明の硬カプセルを製造することができる。
カプセル調製用原液は、上述したように(A)及び(B)(必要に応じて(C))を溶解した溶液(好ましくは水溶液)である。(A)(B)(C)を溶解させる順序は、本発明の硬カプセルが製造できるカプセル調製用原液が得られるのであれば、特に制限されない。例えば、(A)を水に溶解させた後、(B)(及び必要に応じて(C))をさらに溶解させることができる。また、これらを溶解させる際、適宜水を撹拌してもよい。また、適宜水を加温してもよい。加温する場合は、例えば80〜100℃程度が好ましい。
カプセル調製用原液における、(A)、(B)(及び必要に応じて加えられる(C))それぞれの濃度は、本発明の硬カプセルが得られる限り特に制限されず、適宜設定することができる。例えば、(A)の濃度は好ましくは10〜20質量%、より好ましくは12〜18質量%である。また、(B)の濃度は好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.03〜0.3質量%である。
また、カプセル調製用原液において、(A)のPVA共重合体100質量部に対し、(B)ネイティブ型ジェランガムは好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.3〜2質量部含まれる。
またさらに、当該カプセル調製用原液は、pHが約2〜6であることが好ましく、約3〜5であることがより好ましく、約3.5〜4であることがさらに好ましい。上記(A)及び(B)(必要に応じて(C))を溶解した段階で、カプセル調製用原液のpHが当該範囲から外れている場合は、pH調整剤を用いてpHを調整してもよい。pH調整剤としては、pHを上昇させる場合には例えばアニモニア水溶液などアルカリ性物質を使用できる。pHを下降させる場合は例えばクエン酸、塩酸などの酸性物質を使用できる。当該pH範囲のカプセル調製用原液を用いることで、より強度の優れた硬カプセルを製造することができる。
4.硬カプセル剤
本発明は、上記皮膜を備えた硬カプセルに内容物が充填されたカプセル剤も含む。
内容物の形態は、カプセルに充填できるのであれば特に制限されず、例えば、液状、粉末状、顆粒状、ペースト状、半固形又は軟膏、クリーム状等であってよい。本発明のカプセルは、特に、難溶性薬物溶解溶剤を充填する場合に好適に用いられる。
上述の通り、難溶性薬物溶解溶剤とは、難溶性薬物を溶解する溶剤である。難溶性薬物とは、水に溶解しにくい薬物をいい、第十五改正日本薬局方に記載される「やや溶けにくい」「溶けにくい」「極めて溶けにくい」「ほとんど溶けない」のいずれに当てはまるものであってもよい。具体的には、、薬物を水中に入れ(薬物が固形の場合は粉末とした後水中に入れる)、20±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき、30分以内に溶ける度合を検討し、薬物1g又は1mLを溶かすのに要する水量が30mL以上100mLのものを「やや溶けにくい」、100mL以上1000mL未満のものを「溶けにくい」、1000mL以上10000mL未満のものを「極めて溶けにくい」、10000mL以上のものを「ほとんど溶けない」とする。
難溶性薬物溶解溶剤としては、製剤学的に許容され、難溶性薬物を溶解できるのであれば特に制限はされない。例えば、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、ジエチレングリコールのエーテル誘導体、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、中鎖脂肪酸またはその塩、中鎖脂肪族アルコールが挙げられる。
ポリエチレングリコールとしては、低分子量のポリエチレングリコールが好ましい。低分子量のポリエチレングリコールとしては、重量平均分子量2000以下(好ましくは1500以下、より好ましくは1000以下)のポリエチレングリコールが挙げられる。具体的には、PEG400(重量平均分子量約400のポリエチレングリコール)が例示できる。またポリエチレングリコールの誘導体としては、例えば脂肪酸エステル誘導体(ポリエチレングリコールと脂肪酸とのエステル)が挙げられる。なお、ポリエチレングリコールの重量平均分子量は、次のようにして測定した値である。すなわち、無水フタル酸42gをとり、新たに蒸留したピリジン300mLを入れた1Lの遮光した共栓瓶に加え、強く振り混ぜて溶かした後、16時間以上放置する。この液25mLを、約200mLの耐圧共栓瓶に入れ、これに測定するPEG試料約0.8〜15gを加え、密栓し、これを丈夫な布で包み、あらかじめ98±2℃に加熱した水浴中に入れる。この際、瓶の中の液が水浴の液の中に浸るようにする。98±2℃で30分間保った後、水浴から瓶を取り出し、室温になるまで空気中で放冷する。次に0.5mol/L 水酸化ナトリウム液 50mLを加え、更にフェノールフタレインのピリジン溶液(1→100)5滴を加え、この液につき、0.5mol/L 水酸化ナトリウム液で滴定する。但し、滴定の終点は液が15秒間持続する淡赤色を呈するときとする。同様の方法で空試験を行う。 以下の式より重量平均分子量を算出する。
Figure 0005705206
中鎖脂肪酸またはその塩としては、炭素数が6から12の脂肪酸またはその塩が挙げられる。具体的には、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸、並びにそれらのナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。
また、中鎖脂肪族アルコールとしては、炭素数が6〜12の脂肪族アルコールが挙げられる。具体的には、カプロイルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられる。
難溶性薬物溶解溶剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本発明の硬カプセルに充填される溶剤は、難溶性薬物溶解溶剤だけに限られず、製剤学的に許容され薬物を溶解できる溶剤であれば制限されない。難溶性薬物溶解溶剤と他の公知の溶剤との混合物を用いてもよい。
従来の硬カプセルにおいては、難溶性薬物溶解溶剤を充填した場合に割れなどの問題を生じたため、難溶性薬物を溶剤に溶解させ、これを硬カプセルに充填して用いるのは難しかった。しかし、本発明の上記皮膜を備えた硬カプセルは、難溶性薬物溶解溶剤を充填しても割れにくいため、難溶性薬物を溶剤に溶解させてこれを充填して用いることができる。さらには、本発明の硬カプセルは従来の硬カプセルに比べ、優れた低水分性を示す。低水分性とは、含有水分が低い性質を指す。硬カプセルの皮膜に水分が多く含まれると、カプセル内に充填した溶媒へ皮膜中の水分が移行し、薬物及び溶媒の安定性が悪くなるおそれがあることから、硬カプセルは低水分性であることが好ましい。硬カプセルについて、25℃・40%RH条件下、及び25℃・75%RH条件下で含有水分値を測定して比較し、当該2条件のうち少なくとも1条件下での結果が優れていれば、比較的優れた低水分性を有するとする。当該2条件とも優れた結果が得られるのがより好ましい。なお、「RH」は相対湿度を示す。
更に、上述の難溶性薬物溶解溶剤は増粘剤を添加して用いてもよい。増粘剤を添加することによって、硬カプセルへの充填操作を簡便に行い得る、硬カプセルからの充填物の漏出を防止できる、などの効果を得ることができる。増粘剤としては、軽質無水ケイ酸、植物油、セルロース誘導体など、製剤学的に許容されるもの(例えば製剤学の教科書などに記載されているものや一般に使用されているもの)ならば、特に限定されない。また、増粘剤の添加量としては、例えば難溶性薬物溶解溶剤100重量部に対して好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.3〜3重量部を挙げることができる。
またさらに、上述の難溶性薬物溶解溶剤には、本発明の硬カプセルの安定性を損なわない限り、通常カプセル充填溶剤に添加され得る添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、例えば乳糖やスターチ類等を挙げることができる。
本発明の硬カプセルへ充填される薬物(難溶性薬物を含む)は、用途によっては特に制限されない。例えば、医薬品類としては、ビタミン類、解熱剤、鎮痛剤、消炎剤、抗潰瘍剤、強心剤、抗凝固剤、止血剤、骨吸収抑制剤、血管新生抑制剤、抗うつ剤、抗腫瘍剤、鎮咳去痰剤、筋弛緩剤、抗てんかん剤、抗アレルギー剤、不整脈治療剤、血管拡張剤、降圧利尿剤、糖尿病治療剤、抗結核剤、ホルモン剤、麻薬拮抗剤、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤等を本発明の硬カプセルに充填することができる。これらは、固形状(例えば粉末状や顆粒状)で充填されてもよいし、溶剤に溶解させた上で充填されてもよい。
難溶性薬物の具体例としては、例えば以下のものが例示される。
<解熱、鎮痛、抗炎症薬>
サリチル酸、スルピリン、フルフェナム酸、ジクロフェナック、インドメタシン、アトロピン、スコポラミン、モルヒネ、ペチジン、レボルファイノール、ケトプロフェン、ナプロキセン、イブプロフェン、オキシモルフォン、アスピリン、アミノピリン、フェナセチン、アセトアミノフェノン、フェニルブタゾン、ケトフェニルブタゾン、メフェナム酸、ブコローム、ベンジダミン、メピリゾール、チアラミド、チノリジン、キシロカイン、ペンタゾシン、デキサメタゾン、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、アズレン、イソプロピルアンチピリン、サザピリン、クロフェゾン、エトドラッグまたはその塩など。
<精神安定薬>
ジアゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、オキサゾラム、クロチアゼパム、メダゼパム、テマゼパム、フルジアゼパム、メプロバメート、ニトラゼパム、クロルジアゼボキシドなど。
<抗精神病薬>
クロルプロマジン、プロクロルペラジン、トリフロペラジン、スルピリド、塩酸クロカプラミン、ゾテピン、ハロペリドールなど。
<抗菌薬>
グリセオフルビン、ランカシジン類〔J.Antibiotics,38,877−885(1985)〕、アゾール系化合物〔2−〔(1R,2R)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−メチル−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロピル〕−4−〔4−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)フェニル−3−(2H,4H)−1,2,4−トリアゾロン、フルコナゾール、イトラコナゾール等〕、ナリジクス酸、ピロミド酸、ピペミド酸三水和物、エノキサシン、シノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、塩酸シプロキサシン、スルファメトキサゾール・トリメトプリムなど。
<抗生物質>
ゲンタマイシン、ジペカシン、カネンドマイシン、リビドマイシン、トプラマイシン、アミカシン、ディベカシン、フラジオマイシン、シソマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ロリテトラサイクリン、ドキシサイクリン、アンピシリン、ピペラシリン、チカルシリン、セファロチン、セファロリジン、セフォチアム、セフォチアムヘキセチル、セフスロジン、セフメノキシム、セフメタゾール、セファゾリン、セフォタキシム、セフォペラゾン、セフチゾキシム、モキサラクタム、チエナマイシン、スルファゼシン、アズスレオナム、アモキシリン、セファレキシン、エリスロマイシン、バカンピシン、ミノサイクリン、クロラムフェニコールまたはそれらの塩など。
<抗腫瘍薬>
6−O−(N−クロロアセチルカルバモイル)フマギロール、ブレオマイシン、メトトレキサート、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、ダウノルビシン、アドリアマイシン、ネオカルチノスタチン、シトシンアラジノシド、フルオロウラシル、テトラヒドロフリル−5−フルオロウラシル、ピシバニール、レンチナン、レバミゾール、ベスタチン、アジメキソン、グリチルリチン、HER2阻害剤(WO01/77107等に記載の複素環化合物等)、タキソール、塩酸ドキソルビシン、エトポシド、ミトキサントロン、メスナ、ジメスナ、アミノグルテチミド、タモキシフェン、アクロライン、シスプラチン、カルボプラチン、シクロフォスファミド、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BCNU)など。
<抗高脂血症薬>
クロフィブラート、2−クロロ−3−〔4−(2−メチル−2−フェニルプロポキシ)フェニル〕プロピオン酸エチル〔Chem. Pharm. Bull.,38,2792−2796(1990)〕、クリノフィブラート、コレスチラミン、ソイステロール、ニコチン酸トコフェロール、ニコモール、ニセリトロール、プロブコール、エラスターゼなど。
<鎮咳・去痰薬>
エフェドリン、メチルエフェドリン、ノスカピン、コデイン、ジヒドロコデイン、アロクラマイド、クロルフェジアノール、ピコペリダミン、クロペラスチン、プロトキロール、イソプロテレノール、サルプタモール、テレプタリン、ブロムヘキシン、カルボシスティン、エチルシスティン、メチルシスティンまたはその塩など。
<筋弛緩薬>
プリジノール、ツボクラリン、パンクロニウム、カルバミン酸クロルフェネシン、塩酸トルペリゾン、塩酸エペリゾン、塩酸チザニジン、メフェネシン、クロルゾキサゾン、フェンプロバメート、メトカルバモール、クロルメザノン、メシル酸プリジノール、アフロクアロン、バクロフェン、ダントロレンナトリウムなど。
<抗てんかん薬>
フェニトイン、エトサクシミド、アセタゾラミド、クロルジアゼポキシド、フェノバルビタール、カルバマゼピン、プリミドンなど。
<抗潰瘍薬>
ランソプラゾール、メトクロプラミド、ファモチジン、オメプラゾール、スルピリド、トレピブトン、塩酸セトラキサート、ゲフェルナート、マレイン酸イルソグラジン、シメチジン、塩酸ラニチジン、ニザチジン、塩酸ロキサチジンアセテートなど。
<抗うつ薬>
イミプラミン、クロミプラミン、ノキシプチリン、フェネルジンなど。
<抗アレルギー薬>
ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、トリペレナミン、メトジラミン、クレミゾール、ジフェニルピラリン、メトキシフェナミン、フマル酸クレマスチン、塩酸シプロヘプタジン、メキタジン、酒石酸アリメマジンなど。
<強心薬>
トランスバイオキソカンファー、テレフィロール、アミノフィリン、エチレフリンなど。
<不整脈治療薬>
プロプラノロール、アルプレノロール、プフェトロール、オクスプレノロール、塩酸プロカインアミド、ジソピラミド、アジマリン、硫酸キニジン、塩酸アプリンジン、塩酸プロパフェノン、塩酸メキシレチンなど。
<血管拡張薬>
オキシフェドリン、ジルチアゼム、トラゾリン、ヘキソベンジン、バメタン、ニフェジピン、ニルバジピン、二硝酸イソソルビット、塩酸ジルチアゼム、トラピジル、ジピリダモール、塩酸ジラゼプ、ベラパミル、塩酸ニカルジピン、酒石酸イフェンプロジル、マレイン酸シネパシド、シクランデレート、シンナリジン、ペントキシフィリンなど。
<降圧利尿薬>
ヘキサメトニウムブロミド、ペントリニウム、メカミルアミン、エカラジン、クロニジン、ジルチアゼム、ニフェジピン、フロセミド、トリクロルメチアジド、メチクロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、エチアジド、シクロペンチアジド、フロロチアジド、エタクリン酸など。
<糖尿病治療薬>
グリミジン、グリプジド、フェンフォルミン、プフォルミン、メトフォルミン、グリベンクラミド、トルブタミドなど。
<抗結核薬>
イソニアジド、エタンブトール、パラアミノサリチル酸など。
<麻薬拮抗薬>
レバロルファン、ナロルフィン、ナロキソンまたはその塩など。
<ホルモン薬>
ステロイドホルモン類、例えば、デキサメサゾン、ヘキセストロール、メチマゾール、ペタメサゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、エストリオールなど。
<骨・軟骨疾患予防・治療剤>
プロスタグランジンA1誘導体、ビタミンD誘導体、ビタミンK誘導体、エイコサペンタエン酸誘導体、ベンジルホスホン酸、ビスホスホン酸誘導体、性ホルモン誘導体、フェノールスルフォフタレイン誘導体、ベンゾチオピランまたはベンゾチエピン誘導体、チエノインダゾール誘導体、メナテトレノン誘導体、ヘリオキサンチン誘導体などの非ペプチド性骨形成促進作用物質、ペプチド性骨形成促進物質など。
<関節疾患治療剤>
p38MAPキナーゼ阻害剤(WO 00/64894等に記載のチアゾール系化合物等)、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤(MMPI)、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、デキサベタメタゾン、ベタメタゾン等の抗炎症ステロイド剤、インドメタシン、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、イブプロフェン、ピロキシカム、スリンダク等の非ステロイド性消炎鎮痛剤など。
<頻尿治療剤>
塩酸フラボキサート、塩酸オキシブチニン、塩酸テロリジンなど。
<抗アンドロゲン剤>
オキセンドロン、アリルエストレノール、酢酸クロルマジノン、カプロン酸ゲストノロン、酢酸オサプロン、フルタミド、ビカルタミドなど。
<脂溶性ビタミン薬>
ビタミンK類:ビタミンK、K、KおよびK
葉酸(ビタミンM)など。
<ビタミン誘導体>
ビタミンの各種誘導体、例えば、5,6−トランス−コレカルシフェロール、2,5−ヒドロキシコレカルシフェロール、1−α−ヒドロキシコレカルシフェロールなどのビタミンD誘導体、5,6−トランス−エルゴカルシフェロール等のビタミンD誘導体など。
<その他>
ヒドロキシカム、ダイアセリン、メゲストロール酢酸、ニセロゴリン、プロスタグランジン類など。
特に、アグリジン、アジマリン、アモバルビタール、クロルジアゼポキシド、酢酸クロマジノン、クロナゼパム、ジアゼパム、ジルチアゼム、キタサマイシン、ジクマロール、スルファチアゾール、メダゼパム、メナジオン、ミデカマイシン、ピロキシカム、ナイスタチン、フェナセチン、フェノバルビタール、フェノチアジン、フルニトラゼパム、プレドニゾロン、ニセルゴリイン、フェニトイン、プロブコール、ニフェジピン、レセルピン、フロセミド、グリベンクラミド、インドメタシン、グリセオフルビン、ニトラゼパム、アルベンダゾール、カルバマゼピン、フェニルブタゾン等が挙げられる。
但し、上記は例示であり、これらに限られる訳ではない。
なお、上記では難溶性薬物溶解溶剤に薬物を溶解させて充填させることについて述べたが、難溶性でない薬物を充填することも、もちろん可能である。
これらの薬物については、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法により製造して用いてもよい。
また、本発明の硬カプセル剤には、カプセル剤に関する他の公知の技術を必要に応じて付加することもできる。例えば、カプセルのキャップとボディのかん合部分を、例えばカプセルの皮膜と同様の材料でシールすることにより、内容物の漏出、逸散などを防ぐことができる。ポリビニルピロリドンによりシールすることもできる。また、シールの方法としては、具体的には例えばバンドシール法を挙げることができる。
本発明の硬カプセル剤は、経口投与製剤以外に、吸入剤、直腸投与製剤としても用いることができる。また、医薬品分野以外の、例えば化粧品、食品分野においても利用可能である。つまり、経口化粧品や食品を本発明のカプセル剤に充填して用いることもできる。
以下、本発明をより詳細に説明するために、実施例及び比較例を用いて説明を行うが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
尚、下記実施例及び比較例において、「%」は特に断らない限り、「質量%」を意味する。また、「RH」は相対湿度を示す。また、表中の「添加濃度」とは、 皮膜の全質量に対するゲル化剤(κカラギーナン、ネイティブ型ジェランガム、又は脱アシル型ジェランガム)の質量を示す。
1.PVA共重合体
冷却還流管、滴下ロート、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコにPVA(EG25、平均重合度1700、ケン化度88%、日本合成化学製)122g、イオン交換水648gを仕込み、常温で分散させた後95℃で完全溶解させた。次いでアクリル酸3.8g、メチルメタクリレート26.6gを添加し、窒素置換後50℃まで昇温した後、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド8.5g、エリソルビン酸ナトリウム8.5gを添加し4時間で反応を終了した。このようにして得られたPVA共重合体水溶液を、以下の実験に用いた。
なお、当該PVA共重合体水溶液はpH4.0であった。さらに、これにアンモニア水を加えてpH5.2又は5.5に調整したもの、及び、クエン酸を加えてpH3.5に調整したもの、も用意し、以下の実験に用いた。
2.硬カプセルの製造
(1)PVA共重合体水溶液(pH5.2)153gに精製水47gを加えた溶液に、ゲル化剤としてκカラギーナン0.36gおよびゲル化補助剤として塩化カリウム0.36gを添加してカプセル調製用原液とし、この溶液を約65℃に保温して室温のステンレス製のピンを浸漬し、引き上げ、膜厚約0.06から0.15mmの3号サイズの硬カプセルを製造した。この硬カプセルを「比較例1」とした。
なお、3号サイズの硬カプセルとは、カプセル容量0.3mL、カプセル重量0.05g、カプセルの長径1.6cm、カプセルの短径0.6cmの硬カプセルである。
(2)上記(1)で使用したPVA共重合体水溶液(pH5.2)の代わりにPVA共重合体水溶液(pH4.0)を使用し、その他を上記(1)と同様にして同サイズの硬カプセルを製造した。この硬カプセルを「比較例2」とした。
(3)上記(1)で使用したPVA共重合体水溶液(pH5.2)149gに精製水51gを加えた溶液に、ゲル化剤としてジェランガム(CP Kelco社製ネイティブ型ジェランガム KELCOGEL CG-HA)0.12gを添加してカプセル調製用原液とし、κカラギーナンおよび塩化カリウムを加えないこと以外は上記(1)と同様にして同サイズの硬カプセルを製造した。この硬カプセルを「実施例1」とした。
(4)上記(3)で使用したPVA共重合体水溶液(pH5.2)の代わりにPVA共重合体水溶液(pH4.0)を使用し、その他を上記(3)と同様にして同サイズの硬カプセルを製造した。この硬カプセルを「実施例2」とした。
(5)上記(4)において、PVA共重合体水溶液(pH4.0)の代わりにPVA共重合体水溶液(pH3.5)を使用し、その他は上記(4)と同様にして同サイズの硬カプセルを製造した。この硬カプセルを「実施例3」とした。
(6)ゲル化剤として、ネイティブ型ジェランガムに代えて脱アシル型ジェランガム(CP Kelco社製ジェランガム KELCOGEL CG-LA)1.0gを用いたこと以外は上記(4)と同様にして同サイズの硬カプセルを製造した。この硬カプセルを「比較例3」とした。
3. フィルムの製造
(1)PVA共重合体水溶液(pH5.5)137gに精製水63gを加えた溶液をガラス板上に垂らし、膜厚約100マイクロメートルのフィルムを製造した。このフィルムを「参考例1」とした。
(2)PVA共重合体水溶液(pH4.0)137gに精製水63gを加えた溶液をガラス板上に垂らし、膜厚約100マイクロメートルのフィルムを製造した。このフィルムを「参考例2」とした。
4. 評価試験
(1)硬カプセルの崩壊試験
上記方法により得た各実施例及び比較例のカプセルをそれぞれ6個ずつ用意し、重量平均分子量400のポリエチレングリコール(以下、「PEG400」)を0.2mL充填し、上記PVA共重合体水溶液を用いてバンドシールを施した。硬カプセル6個の開口時間を、第15改正日本薬局方記載の崩壊試験法に準じて測定した。試験液は水で行い、補助盤を使用した。カプセルからPEG400がもれ始めたときを開口時間と判断した。結果を表1に示す。なお、表1における「pH」はカプセル調製用原液のpHを示し、「ゲル化剤濃度(皮膜中(%))」はカプセル皮膜中のゲル化剤濃度(質量%)を示す。当該「ゲル化剤濃度(皮膜中(%))」は、原材料の量より算出したものであり、乾燥質量換算した場合の皮膜中のゲル化剤の割合値に相当する。また、カプセル調製用原液中のゲル化剤濃度「ゲル化剤濃度(原液中(%))」も表1の右端列に併せて示す。
Figure 0005705206
ゲル化剤としてネイティブ型ジェランガムを使用した硬カプセルは、開口までの時間が短く、崩壊時間の短い優れた溶解性を示す硬カプセルであることがわかった。
(2)硬カプセルの耐衝撃強度試験
上記各実施例及び比較例のカプセルをそれぞれ恒温恒湿器にて25℃40%RHの条件下に1週間保管した後の耐衝撃強度を、図2に示す耐衝撃試験装置(カプセル硬度計;クオリカプス株式会社)を用いて測定した。すなわち、空カプセルの上5cmあるいは10cmから50gの錘を垂直に落下させたときのカプセルの破損する個数と割れ率(%)を調べた。なお、当該錘は直方体であり、高さ4cm、横1.5cm、奥行き3cmである。また、目視により、ヒビが確認できるカプセルは破損した(割れた)と判断した。当該結果を表2に示す。
なお、割れ率(%)は、下記により算出される値を示す。
割れ率(%)=(割れ個数/検体数)×100
Figure 0005705206
実施例1〜3を比較することで、ネイティブ型ジェランガムを用いた場合、カプセル調製用原液のpHを下げることにより割れやすさを改善できることがわかった。なお、比較例1と比較例2を比較すると、κカラギーナンを用いた場合であっても、カプセル調製用原液のpHを下げることにより割れやすさを改善できることがわかった。
一方、実施例2と比較例3を比較すると、脱アシル型ジェランガムよりもネイティブ型ジェランガムを用いたカプセルの方が割れやすさを著しく改善できることがわかった。つまり、ジェランガムのなかでもアシル化度が高いものの方が、カプセル強度が高くなることもわかった。
(3)硬カプセルの水分値
25℃40%RHおよび25℃75%RHの条件下に1週間保管した上記の硬カプセルそれぞれ3個について、日本薬局方第15局乾燥減量試験法に基づき水分量を測定した。すなわち、カプセルをキャップとボディに分離し質量を測定し、105℃の乾燥機にて2時間乾燥した。その後、デシケーター(シリカゲル)内で放冷、再度質量を測定し、乾燥前と乾燥後の質量差より水分値を算出した。すなわち、乾燥前の質量と乾燥後の質量との差を水分質量とし、水分質量が乾燥前の質量の何%にあたるかを算出して水分値とした。
結果を表3に示す。
Figure 0005705206
ゲル化剤としてネイティブ型ジェランガムを使用した硬カプセルは、κカラギーナンを使用したカプセルよりも低い水分値を示した。つまり、ネイティブ型ジェランガムを含む皮膜からなる硬カプセル(特にpHが2〜6程度のカプセル調製用原液から製造したもの)は、より良好な低水分性を示すことがわかった。
(4)溶剤充填時の安定性試験
各実施例及び比較例のカプセルをそれぞれ3個ずつ用意し、重量平均分子量400のポリエチレングリコール(以下、「PEG400」)を0.2mL充填し、上記「1.PVA共重合体」において製造したPVA共重合体水溶液を用いてバンドシールを施して封入し、40℃密栓で7日間保存した後、カプセルの形状変化及び漏れなどの外観変化、並びに割れの有無を肉眼で確認することにより、溶剤充填時の安定性を調べた。なお、ポリエチレングリコールは、難溶性薬物を溶解できる溶剤であり、従来の硬カプセル(例えばゼラチンカプセル)に充填すると、皮膜中の水分がポリエチレングリコールに移行するため、カプセルが割れるという問題があった。
外観は、以下の基準で、評価した。
○:外観変化なし
△:僅かな外観変化を認めるものの実用上問題なし。
×:顕著な外観変化を生じ、実用上使用不可。
Figure 0005705206
当該結果からも明らかなとおり、本発明カプセルは、PEG400を充填しても殆どカプセルに外観変化を来さず、割れも認められず、実用上何ら問題なく製剤化できるものであることが確認された。また、比較例1〜3の結果から、κカラギーナン又は脱アシル型ジェランガムを用いた場合でも、PEG400を充填しても問題ないことがわかった。
(5)硬カプセルの高湿度下での状態
25℃75%RHの条件下に1週間保管した上記の硬カプセルについて、3人のパネラーにより硬さを4段階で評価し、合計点数を算出した。パネラーは、各カプセルを手でつまみ、得られる感触により硬さを評価した。サンプル数は3個、パネラーは3人、硬さの評価は0〜3点で行った。満点は27点であり、点数が高いほどカプセルが硬さを保持しており、点数が低いほど軟化していることを示す。結果を表5に示す。
Figure 0005705206
表5に示されるように、κカラギーナンのかわりにネイティブ型ジェランガムを含むカプセルにおいては、高湿度下での軟化が顕著に抑制されることが確認できた。
(6)フィルムの引張強度試験
25℃40%RHの条件下に3日間保管した参考例1および参考例2のフィルムについて、試験片を1.5cm×15cmにカットし、引張強度試験器を用いてフィルムの破断した時の引張強度とフィルムの伸度を測定した。結果を表6に示す。なお、引張強度試験は JIS K 7127-1999 「プラスチック−引張特性の試験方法−第3部:フィルム及びシートの試験条件」に準拠して実施した。試験速度は100mm/min、試験片数は5枚で行った。
Figure 0005705206
表6に示されるように、pHの低いPVA共重合体フィルムのほうが、伸度が大きくなっており、そのために硬カプセルにおいても割れにくくなっていることが推測された。

Claims (6)

  1. (A)ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下、一般式[1]
    C=C(R)−COOR [1]
    〔式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは水素原子または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示す。〕
    で表される少なくとも1種の重合性ビニル単量体を重合又は共重合した重合体又は共重合体、及び、
    (B)ネイティブ型ジェランガム
    を含む皮膜からなる硬カプセル。
  2. 硬カプセルの皮膜に含まれる(B)ネイティブ型ジェランガムの量が、乾燥質量換算で皮膜全質量に対し、0.05〜10質量%である、請求項1に記載の硬カプセル。
  3. (A)ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下、一般式[1]
    C=C(R )−COOR [1]
    〔式中、R は水素原子またはメチル基を示し、R は水素原子または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示す。〕
    で表される少なくとも1種の重合性ビニル単量体を重合又は共重合した重合体又は共重合体、及び、
    (B)ネイティブ型ジェランガム
    を含有する、pH2〜6のカプセル調製用原液をカプセルの形状に乾燥させて硬カプセルを得る工程を含む、請求項1又は2に記載の硬カプセル製造する方法。
  4. (A)ポリビニルアルコール及び/又はその誘導体の存在下、一般式[1]
    C=C(R )−COOR [1]
    〔式中、R は水素原子またはメチル基を示し、R は水素原子または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示す。〕
    で表される少なくとも1種の重合性ビニル単量体を重合又は共重合した重合体又は共重合体、及び、
    (B)ネイティブ型ジェランガム
    を含有する、pH2〜6のカプセル調製用原液にカプセル成型用ピンを浸漬して引き上げ、当該成型用ピンに付着した前記カプセル調製用原液を乾燥させて硬カプセルを得る工程を含む、請求項1又は2に記載の硬カプセル製造する方法。
  5. 請求項3又は4に記載の方法により得られる硬カプセル。
  6. 請求項1、2又は5に記載の硬カプセルに、下記(a)〜(g)からなる群から選ばれる少なくとも1つが充填されてなる、硬カプセル剤
    (a)重量平均分子量が2000以下のポリエチレングリコールまたはその誘導体、
    (b)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
    (c)炭素数が6から12の脂肪酸またはその塩
    (d)ポリオキシエチレンヒマシ油
    (e)ジエチレングリコールのエーテル誘導体
    (f)炭素数が6から12の脂肪族アルコール
    (g)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル
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