JP2024061005A - 繊維強化樹脂線状体 - Google Patents
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Abstract
【課題】芯材の端部を容易に露出させることができ、更に、芯材を露出させた後も一定の補強効果を維持できる繊維強化樹脂線状体及びその製造方法を提供する。【解決手段】1又は2以上の芯材1の周囲に第1の繊維強化樹脂層2を設け、その第1の繊維強化樹脂層2上に剥離可能に第2の繊維強化樹脂層3を設けた繊維強化樹脂線状体10について、第1の繊維強化樹脂層2及び第2の繊維強化樹脂層3を、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束により形成し、繊維含有率を45~75体積%とし、かつ、第1の繊維強化樹脂層2の繊維含有率を第2の繊維強化樹脂層3よりも低くする。【選択図】図1
Description
本発明は、芯材の周囲に繊維強化樹脂層が設けられた繊維強化樹脂線状体に関する。
一般に、電線、通信線及び光ファイバなどの線状体は、導体(芯線)のままでは取り扱いが困難であるため、導体の周囲に保護用の被覆層が形成されている。また、径の細い金属ワイヤーやロープなども、その使用条件や用途によっては被覆層が設けられたものが用いられる場合がある。このような線状体の被複層は、通常、合成樹脂で形成されているが、線状体に引張や曲げに対する強度を付与したい場合は、被複層に抗張力体(テンションメンバ)と呼ばれる補強材を内包させている。
これらの線状体に内包される抗張力体としては、例えば金属線や繊維強化樹脂などが挙げられるが、芯材全体を均一に補強するため、従来、芯材の周囲を繊維強化樹脂で被覆する方法も採られている(例えば、特許文献1,2参照)。芯材の周囲に繊維強化樹脂層が設けられた繊維強化樹脂線状体は、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維及び炭素繊維などの強化用繊維材料に、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂などの硬化性樹脂を含浸させた後、その中心に芯材を配置して樹脂を硬化させることにより製造される(例えば、特許文献3参照)。
電線、通信線及び光ファイバなどの繊維強化樹脂線状体では、機器などと接続する際は芯材を取り出す必要があるが、前述した従来の繊維強化樹脂線状体のうち、特に芯材の直径が小さいものや被覆層を厚くして線状体を大径化したものでは、芯材を疵付けずに取り出すことが難しいという課題がある。また、被覆層を剥いで芯材を取り出せたとしても、芯材を保護する部分がなくなるため、使用時に破損する虞がある。
そこで、本発明は、芯材の端部を容易に露出させることができ、更に、芯材を露出させた後も一定の補強効果を維持できる繊維強化樹脂線状体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る繊維強化樹脂線状体は、1又は2以上の芯材と、前記芯材の周囲に設けられた第1の繊維強化樹脂層と、前記第1の繊維強化樹脂層上に剥離可能に設けられた第2の繊維強化樹脂層とを有し、前記第1及び第2の繊維強化樹脂層は、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束により形成されており、繊維含有率が45~75体積%であり、かつ、前記第1の繊維強化樹脂層は前記第2の繊維強化樹脂層よりも繊維含有率が低いものである。
前記第2の繊維強化樹脂層の繊維含有率Vf2と前記第1の繊維強化樹脂層の繊維含有率Vf1との差(=Vf2-Vf1)は、例えば3体積%以上とすることができる。
本発明の繊維強化樹脂線状体では、最外層として熱可塑性樹脂からなる被覆層が設けられていてもよい。
また、本発明の繊維強化樹脂線状体の外径は、例えば0.9mm以上とすることができる。
前記芯材は、光ファイバ素線でもよい。
前記第2の繊維強化樹脂層の繊維含有率Vf2と前記第1の繊維強化樹脂層の繊維含有率Vf1との差(=Vf2-Vf1)は、例えば3体積%以上とすることができる。
本発明の繊維強化樹脂線状体では、最外層として熱可塑性樹脂からなる被覆層が設けられていてもよい。
また、本発明の繊維強化樹脂線状体の外径は、例えば0.9mm以上とすることができる。
前記芯材は、光ファイバ素線でもよい。
本発明に係る繊維強化樹脂線状体の製造方法は、1又は2以上の芯材の周囲に未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束を配置した後加熱して前記熱硬化性樹脂を硬化させ、前記芯材の周囲に繊維含有率が45~75体積%の第1の繊維強化樹脂層を形成する工程と、前記第1の繊維強化樹脂層の周囲に未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束を配置した後加熱して前記熱硬化性樹脂を硬化させ、前記第1の繊維強化樹脂層上に繊維含有率が45~75体積%で、かつ、前記第1の繊維強化樹脂層よりも繊維含有率が高い第2の繊維強化樹脂を形成する工程と、を行う。
前記第1の繊維強化樹脂層を形成する工程では、未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束の周囲をフッ素系樹脂で被覆し、前記熱硬化性樹脂を硬化させた後で前記フッ素系樹脂を剥離してもよい。
前記第1の繊維強化樹脂層を形成する工程では、未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束の周囲をフッ素系樹脂で被覆し、前記熱硬化性樹脂を硬化させた後で前記フッ素系樹脂を剥離してもよい。
本発明によれば、繊維強化樹脂層を2層構造とし、各層を相互に剥離可能としているため、芯材の露出が容易であり、更に、芯材側の繊維強化層を剥がさずに残すことにより、芯材を露出させた後も一定の補強効果が得られる。
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係る繊維強化樹脂線状体について説明する。図1は本実施形態の繊維強化樹脂線状体の構造を示す横断面図である。図1に示すように、本実施形態の繊維強化樹脂線状体10は、1又は2以上の芯材1の周囲に、第1の繊維強化樹脂層2及び第2の繊維強化樹脂層3が、この順に、相互に剥離可能に設けられている。
先ず、本発明の第1の実施形態に係る繊維強化樹脂線状体について説明する。図1は本実施形態の繊維強化樹脂線状体の構造を示す横断面図である。図1に示すように、本実施形態の繊維強化樹脂線状体10は、1又は2以上の芯材1の周囲に、第1の繊維強化樹脂層2及び第2の繊維強化樹脂層3が、この順に、相互に剥離可能に設けられている。
[芯材1]
芯材1には、光ファイバ素線、電線や通信線の芯線(素線)の他、ワイヤーやワイヤーロープなどを用いることができる。また、芯材1の太さは特に限定されるものではなく、測定対象物や要求される検出精度などに応じて適宜選択することができる。
芯材1には、光ファイバ素線、電線や通信線の芯線(素線)の他、ワイヤーやワイヤーロープなどを用いることができる。また、芯材1の太さは特に限定されるものではなく、測定対象物や要求される検出精度などに応じて適宜選択することができる。
[繊維強化樹脂層2,3]
第1及び第2の繊維強化樹脂層2,3は、芯材1の強度を確保するためのものであり、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束により形成されており、芯材1を覆うように相互に剥離可能に積層されている。ここで、「剥離可能に積層」とは、第1の繊維強化樹脂層2と第2の繊維強化樹脂層3がそれぞれ個別に硬化しており、化学的にも物理的にも結合しておらず、通常は密着した状態にあるが、力を加えることで容易に分離できる状態をいう。
第1及び第2の繊維強化樹脂層2,3は、芯材1の強度を確保するためのものであり、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束により形成されており、芯材1を覆うように相互に剥離可能に積層されている。ここで、「剥離可能に積層」とは、第1の繊維強化樹脂層2と第2の繊維強化樹脂層3がそれぞれ個別に硬化しており、化学的にも物理的にも結合しておらず、通常は密着した状態にあるが、力を加えることで容易に分離できる状態をいう。
長繊維束を構成する繊維としては、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、液晶ポリエステル繊維などの各種合成繊維(有機繊維)、又は、炭素繊維、ガラス繊維及び金属繊維などの無機繊維を用いることができるが、芯材1の保護の観点から強度や弾性率などを考慮すると、無機繊維が好ましい。特に、光ファイバのように芯材1がガラス製の場合は、長繊維束には炭素繊維又はガラス繊維を用いることが好ましい。これにより、芯材1への追従性が向上するため、屈曲させたときの折れ発生を防止することができる。
一方、熱硬化性樹脂は、加熱により硬化する性質の樹脂であればよく、例えば不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和アルキド樹脂及びエポキシ樹脂などを用いることができる。また、熱硬化性樹脂は、硬化後の硬さ及び賦形後の形状の熱的安定性から、架橋性物質を含有することが好ましく、不飽和ポリエステル樹脂、不飽和アルキド樹脂又はエポキシアクリレートのうち少なくとも1種と、架橋性モノマーなどの架橋性物質と、ジアシルパーオキサイドなどの重合開始剤とを含むことがより好ましい。
なお、第1の繊維強化樹脂層2と第2の繊維強化樹脂層3は、同種の熱硬化性樹脂で形成しても、異種の熱硬化性樹脂で形成してもよいが、各層の収縮率が異なると意図しないタイミングで剥がれてしまう可能性があるため、繊維強化樹脂層2,3は同種の繊維と同種の熱硬化性樹脂を用いて形成することが好ましい。
ただし、第1の繊維強化樹脂層2の繊維含有率Vf1及び第2の繊維強化樹脂層3の繊維含有率Vf2がそれぞれ45体積%未満の場合、繊維強化樹脂線状体10の外径にばらつきが生じ、外径を長さ方向に安定して維持することが困難になる。一方、第1の繊維強化樹脂層2の繊維含有率Vf1及び第2の繊維強化樹脂層3の繊維含有率Vf2がそれぞれ75体積%を超えると、熱硬化性樹脂量が不足し、繊維強化樹脂線状体10として十分な曲げ強度が得られなくなる。
そこで、本実施形態の繊維強化樹脂線状体10では、第1の繊維強化樹脂層2の繊維含有率Vf1及び第2の繊維強化樹脂層3の繊維含有率Vf2をそれぞれ45~75質量%とする。なお、第1の繊維強化樹脂層2の繊維含有率Vf1及び第2の繊維強化樹脂層3の繊維含有率Vf2は、繊維強化樹脂線状体10の外径の均一化及び物性の維持の観点から、55~65体積%とすることが好ましい。
また、本実施形態の繊維強化樹脂線状体10では、第1の繊維強化樹脂層2の繊維含有率Vf1を、第2の繊維強化樹脂層3の繊維含有率Vf2よりも低くする(Vf1<Vf2)。これにより、第2の繊維強化樹脂層3を、第1の繊維強化樹脂層2から剥離しやすくすることができる。なお、第2の繊維強化樹脂層3の繊維含有率Vf2と、第1の繊維強化樹脂層2の繊維含有率Vf1との差(=Vf2-Vf1)は、3体積%以上であるであることが好ましく、これにより芯材1を露出しやすくすることができる。そして、第1の繊維強化樹脂層2の繊維含有率Vf1を57体積%以下とし、第2の繊維強化樹脂層3の繊維含有率Vf2を62質量%以上にして、その差を5体積%以上とすることにより、芯材1の露出させやすさを更に向上させることができる。
本実施形態の繊維強化樹脂線状体10の外径は、特に限定されるものではないが、芯材1を露出させる作業を手作業で行う場合は、作業性の観点からある程度の太さが必要となるため、外径を0.9mm以上とすることが好ましい。
第1及び第2の繊維強化樹脂層2,3の厚さは、特に限定されるものではなく、用途や要求される特性に応じて適宜設定することができるが、例えば、芯材1の周囲に設けられた第1の繊維強化樹脂層2の厚さを、第1の繊維強化樹脂層2上に設けられた第2の繊維強化樹脂層3の厚さ以下とすることが好ましい。これにより、繊維強化樹脂線状体10の強度を確保しつつ、芯材1の取り出しやすさを向上させることができる。
また、第1の繊維強化樹脂層2と第2の繊維強化樹脂層3の外径比は、剥ぎ取りやすさの観点から、第1の繊維強化樹脂層2の外径D1:第2の繊維強化樹脂層3の外径D2=1:1.5~1:5の範囲が好ましく、1:2~1:3の範囲がより好ましい。
[製造方法]
次に、前述した繊維強化樹脂線状体10の製造方法について説明する。図2は本実施形態の繊維強化樹脂線状体10の製造工程を示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態の繊維強化樹脂線状体10を製造する際は、先ず、芯材1の周囲に繊維含有率が45~75体積%である第1の繊維強化樹脂層2を形成する(ステップS1)。具体的には、芯材1の周囲に繊維含有率が45~75体積%になるよう熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束を配置するか、又は、繊維含有率が45~75体積%になるよう熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束の中心に芯材1を配置し、それを絞りノズルなどを通過させることによって所定径に成形すると共に余分な熱硬化性樹脂を除去した後、加熱して熱硬化性樹脂を硬化させる。
次に、前述した繊維強化樹脂線状体10の製造方法について説明する。図2は本実施形態の繊維強化樹脂線状体10の製造工程を示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態の繊維強化樹脂線状体10を製造する際は、先ず、芯材1の周囲に繊維含有率が45~75体積%である第1の繊維強化樹脂層2を形成する(ステップS1)。具体的には、芯材1の周囲に繊維含有率が45~75体積%になるよう熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束を配置するか、又は、繊維含有率が45~75体積%になるよう熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束の中心に芯材1を配置し、それを絞りノズルなどを通過させることによって所定径に成形すると共に余分な熱硬化性樹脂を除去した後、加熱して熱硬化性樹脂を硬化させる。
次に、第1の繊維強化樹脂層2上に繊維含有率が45~75体積%であり、かつ、第1の繊維強化樹脂層2よりも繊維含有率が高い第2の繊維強化樹脂層3を形成する(ステップS2)。具体的には、ステップS1で第1の繊維強化樹脂層2を形成した芯材1の周囲に繊維含有率が45~75体積%となるよう熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束を配置するか、又は、繊維含有率が45~75体積%となるよう熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束の中心に第1の繊維強化樹脂層2を形成した芯材1を配置し、それを絞りノズルなどを通過させることにより所定径に成形すると共に余分な熱硬化性樹脂を除去した後、加熱して熱硬化性樹脂を硬化させる。
このとき、熱硬化性樹脂の含浸量を調整して、第2の繊維強化樹脂層3の繊維含有率Vf2が第1の繊維強化樹脂層2の繊維含有率Vf1よりも高くなるようにする。これにより、芯材1の周囲に、第1の繊維強化樹脂層2及び第2の繊維強化樹脂層3が、相互に剥離可能に積層された繊維強化樹脂線状体10が得られる。
本実施形態の繊維強化線状体10の製造方法では、ステップS1において未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束の周囲をフッ素系樹脂で被覆し、熱硬化性樹脂を硬化させた後でフッ素系樹脂による被覆を剥離することが好ましい。これにより、フッ素系樹脂が金型の代用をするため、熱硬化性樹脂を硬化させる際に、加熱時により長繊維束が変形することを防止できる。即ち、長繊維束を変形させることなく、熱硬化性樹脂を硬化させることができる。
また、このフッ素系樹脂による被覆は、長繊維束にダメージを与えることなく容易に剥がすことができる上に、フッ素系樹脂を剥がした後の第1の繊維強化樹脂層2は表面が非常に滑らかとなり、形状を安定させることができる。第1の繊維強化樹脂層2の表面に凹凸がなく平滑であると、その上に形成される第2の繊維強化樹脂層3と密着するが、物理的には接着しないため、第1の繊維強化樹脂層2上に第2の繊維強化樹脂層3を剥離可能に積層することができる。これにより、芯材1を取り出すために第2の繊維強化樹脂層3を剥がしたときに、第1の繊維強化樹脂層2は剥がされずに残り、芯材1が第1の繊維強化樹脂層2のみに覆われている状態にすることができる。
また、ステップS1及びステップS2において長繊維束に未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させる際は、気泡が含まれないようにすることが好ましい。第1及び第2の繊維強化樹脂層2,3に気泡が存在し、熱硬化性樹脂の含浸が十分でない箇所が存在すると、製造される繊維強化樹脂線状体10に曲げ応力がかかったときに、折れなどの不具合が発生する虞がある。
以上詳述したように、本実施形態の繊維強化線状体は、芯材の周囲に、繊維含有率が異なる2層の繊維強化樹脂層を剥離可能に積層しているため、芯材を露出させる際に、容易に剥ぐことができる。また、外側の繊維強化樹脂層を剥いでも、内側の繊維強化樹脂層が残るため、芯材を露出させた後も一定の補強効果が得られる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る繊維強化樹脂線状体について説明する。図3は本実施形態の繊維強化樹脂線状体の構造を示す横断面図である。なお、図3においては、図1に示す第1の実施形態の繊維強化樹脂線状体10の構成要素と同じものには同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図3に示すように、本実施形態の繊維強化樹脂線状体20は、最外層に被覆層4が設けられている以外は、前述した第1の実施形態の繊維強化樹脂線状体10と同様である。
次に、本発明の第2の実施形態に係る繊維強化樹脂線状体について説明する。図3は本実施形態の繊維強化樹脂線状体の構造を示す横断面図である。なお、図3においては、図1に示す第1の実施形態の繊維強化樹脂線状体10の構成要素と同じものには同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図3に示すように、本実施形態の繊維強化樹脂線状体20は、最外層に被覆層4が設けられている以外は、前述した第1の実施形態の繊維強化樹脂線状体10と同様である。
[被覆層4]
被覆層4は、柔軟性を有する熱可塑性樹脂で形成されていればよく、樹脂の種類は特に限定されるものではないが、例えばポリオレフィン系樹脂を用いることができる。また、被覆層4を形成する樹脂には、耐候性、耐薬品性及び難燃性などの性能が付与されたものを用いることもできる。被覆層4の厚さは、特に限定されるものではないが、芯材1の保護及び剥ぎやすさの観点から0.05~1.50mmが好ましい。
被覆層4は、柔軟性を有する熱可塑性樹脂で形成されていればよく、樹脂の種類は特に限定されるものではないが、例えばポリオレフィン系樹脂を用いることができる。また、被覆層4を形成する樹脂には、耐候性、耐薬品性及び難燃性などの性能が付与されたものを用いることもできる。被覆層4の厚さは、特に限定されるものではないが、芯材1の保護及び剥ぎやすさの観点から0.05~1.50mmが好ましい。
繊維強化樹脂線状体20が光ファイバケーブルなどである場合は、被覆層4の表面に複数の凹部及び/又は凸部を形成することができる。これにより、繊維強化樹脂線状体20を構造物や地盤などの測定対象物に埋設された後に、被覆層4が定着層として機能し、コンクリートや土壌などとの密着性を確保することができる。被覆層4に形成される凹部や凸部は、規則的に形成されていても、不規則(ランダム)に形成されていても、どちらでもよい。
[製造方法]
次に、前述した繊維強化樹脂線状体20の製造方法について説明する。図4は本実施形態の繊維強化樹脂線状体20の製造工程を示すフローチャートである。図4に示すように、本実施形態の繊維強化樹脂線状体20を製造する際は、前述したステップS1,S2を行った後、引き続き、第2の繊維強化樹脂層3の周囲に熱可塑性樹脂を押しだし、直ちに水冷して被覆層4を形成する(ステップS3)。これにより、第2の繊維強化樹脂層3が被覆層4で被覆され、所定外径を有する繊維強化樹脂線状体20が得られる。
次に、前述した繊維強化樹脂線状体20の製造方法について説明する。図4は本実施形態の繊維強化樹脂線状体20の製造工程を示すフローチャートである。図4に示すように、本実施形態の繊維強化樹脂線状体20を製造する際は、前述したステップS1,S2を行った後、引き続き、第2の繊維強化樹脂層3の周囲に熱可塑性樹脂を押しだし、直ちに水冷して被覆層4を形成する(ステップS3)。これにより、第2の繊維強化樹脂層3が被覆層4で被覆され、所定外径を有する繊維強化樹脂線状体20が得られる。
被覆層4の表面に凹凸を設ける場合は、熱可塑性樹脂を押しだした直後に表面に凹凸を付与する加工を施し、その後、熱可塑性樹脂を冷却して固化させればよい。被覆層4に凹凸を付与する際、固化した樹脂を溶融させて加工すると、芯材1や繊維強化樹脂層2,3にダメージを与える可能性があるが、本実施形態の繊維強化樹脂線状体20では、被覆層4形成時には各繊維強化樹脂層2,3は完全に硬化しており、また、熱可塑性樹脂を冷却固化する前に表面に凹凸を形成しているため、芯材1や繊維強化樹脂層2,3にダメージを与えずに、被覆層4の表面に凹凸を設けることができる。
なお、本実施形態における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。
以下、実施例により、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例では、以下に示す方法で実施例及び比較例の繊維強化樹脂線状体(光ファイバケーブル)を作製し、評価した。
<実施例1>
本実施例では、図4に示す工程により、図5に示す構成の光ファイバケーブル30を作製した。具体的には、280TEXのガラス繊維3本を引取りながらノンスチレンタイプの熱硬化性樹脂に含浸し、直径0.9mmの絞りノズルを通し、その中心に外径0.25mmの青色保護層付の光ファイバ素線31を配置した。その状態で押出機のTダイを通し、外径が0.9mmになるようにFEP樹脂で被覆し、直ちに水冷した後、硬化槽にて熱硬化性樹脂を硬化させて第1の繊維強化樹脂層32を形成し、FEP樹脂を剥ぎ取った。この時点、即ち第1の繊維強化樹脂層32形成時の外径は0.9mmであり、第1の繊維強化樹脂層32における繊維含有率Vf1は56.7体積%であった。
本実施例では、図4に示す工程により、図5に示す構成の光ファイバケーブル30を作製した。具体的には、280TEXのガラス繊維3本を引取りながらノンスチレンタイプの熱硬化性樹脂に含浸し、直径0.9mmの絞りノズルを通し、その中心に外径0.25mmの青色保護層付の光ファイバ素線31を配置した。その状態で押出機のTダイを通し、外径が0.9mmになるようにFEP樹脂で被覆し、直ちに水冷した後、硬化槽にて熱硬化性樹脂を硬化させて第1の繊維強化樹脂層32を形成し、FEP樹脂を剥ぎ取った。この時点、即ち第1の繊維強化樹脂層32形成時の外径は0.9mmであり、第1の繊維強化樹脂層32における繊維含有率Vf1は56.7体積%であった。
次に、280TEXのガラス繊維14本を引取りながら熱硬化性樹脂に含浸し、直径2.0mmの絞りノズルを通し、その中心に光ファイバ素線31に第1の繊維強化樹脂層32を設けたものを配置した。その状態で押出機のTダイを通し、外径が4.0mmになるようにポリエチレン樹脂で被覆し、直ちに水冷した後、硬化槽にて熱硬化性樹脂を硬化させて第2の繊維強化樹脂層33とポリエチレン樹脂からなる被覆層34を形成し、実施例1の光ファイバケーブルを得た。このとき、第2の繊維強化樹脂層33における繊維含有率Vf2は62.0体積%であった。
<実施例2>
第1の繊維強化樹脂層32における繊維含有率Vf1を56.7体積%、第2の繊維強化樹脂層33における繊維含有率Vf2を59.3体積%、その差(=Vf2-Vf1)を2.6体積%とした以外は、前述した実施例1と同様の方法及び条件で、実施例2の光ファイバケーブルを作製した。
第1の繊維強化樹脂層32における繊維含有率Vf1を56.7体積%、第2の繊維強化樹脂層33における繊維含有率Vf2を59.3体積%、その差(=Vf2-Vf1)を2.6体積%とした以外は、前述した実施例1と同様の方法及び条件で、実施例2の光ファイバケーブルを作製した。
〔評価〕
前述した方法で作製した実施例1,2の光ファイバケーブルから、以下に示す方法で、直径300mmの光ファイバ素線を露出させた。
(1)先ず、片刃のカミソリ刃を用いて、ポリエチレン樹脂からなる被覆層34を先端から400mmの範囲で削り取る。
(2)次に、ペンチを用いて、先端から10mmの範囲を潰し、先端部分を裂く。
(3)その後、ペンチ又は保護具を着用した手で、第2の繊維強化樹脂層33を先端から300mmの部分まで裂く。
前述した方法で作製した実施例1,2の光ファイバケーブルから、以下に示す方法で、直径300mmの光ファイバ素線を露出させた。
(1)先ず、片刃のカミソリ刃を用いて、ポリエチレン樹脂からなる被覆層34を先端から400mmの範囲で削り取る。
(2)次に、ペンチを用いて、先端から10mmの範囲を潰し、先端部分を裂く。
(3)その後、ペンチ又は保護具を着用した手で、第2の繊維強化樹脂層33を先端から300mmの部分まで裂く。
その結果、実施例1,2の光ファイバケーブルは、いずれも第2の繊維強化樹脂層33は繊維含有率が高いため裂けやすく、また、第1の繊維強化樹脂層32は樹脂含有率が高いため剥がれずに残った。その結果、実施例1,2の光ファイバケーブルは、図5に示すような状態となり、容易に光ケーブル素線1を取り出すことができた。特に、第2の繊維強化樹脂層33の繊維含有率Vf2と、第1の繊維強化樹脂層32の繊維含有率Vf1との差(=Vf2-Vf1)が3体積%以上である実施例1の光ファイバケーブルは、第2の繊維強化樹脂層33を剥離しやすかった。
なお、本発明は、以下の形態を採ることもできる。
〔1〕
1又は2以上の芯材と、
前記芯材の周囲に設けられた第1の繊維強化樹脂層と、
前記第1の繊維強化樹脂層上に剥離可能に設けられた第2の繊維強化樹脂層と
を有し、
前記第1及び第2の繊維強化樹脂層は、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束により形成されており、繊維含有率が45~75体積%であり、かつ、前記第1の繊維強化樹脂層は前記第2の繊維強化樹脂層よりも繊維含有率が低い繊維強化樹脂線状体。
〔2〕
前記第2の繊維強化樹脂層の繊維含有率Vf2と、前記第1の繊維強化樹脂層の繊維含有率Vf1との差(=Vf2-Vf1)が3体積%以上である〔1〕に記載の繊維強化樹脂線状体。
〔3〕
最外層として熱可塑性樹脂からなる被覆層が設けられている〔1〕又は〔2〕に記載の繊維強化樹脂線状体。
〔4〕
外径が0.9mm以上である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂線状体。
〔5〕
前記芯材が光ファイバ素線である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂線状体。
〔6〕
1又は2以上の芯材の周囲に未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束を配置した後加熱して前記熱硬化性樹脂を硬化させ、前記芯材の周囲に繊維含有率が45~75体積%の第1の繊維強化樹脂層を形成する工程と、
前記第1の繊維強化樹脂層の周囲に未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束を配置した後加熱して前記熱硬化性樹脂を硬化させ、前記第1の繊維強化樹脂層上に繊維含有率が45~75体積%で、かつ、前記第1の繊維強化樹脂層よりも繊維含有率が高い第2の繊維強化樹脂を形成する工程と、
を有する繊維強化樹脂線状体の製造方法。
〔7〕
前記第1の繊維強化樹脂層を形成する工程では、未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束の周囲をフッ素系樹脂で被覆し、前記熱硬化性樹脂を硬化させた後で前記フッ素系樹脂を剥離する〔6〕に記載の繊維強化樹脂線状体の製造方法。
〔1〕
1又は2以上の芯材と、
前記芯材の周囲に設けられた第1の繊維強化樹脂層と、
前記第1の繊維強化樹脂層上に剥離可能に設けられた第2の繊維強化樹脂層と
を有し、
前記第1及び第2の繊維強化樹脂層は、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束により形成されており、繊維含有率が45~75体積%であり、かつ、前記第1の繊維強化樹脂層は前記第2の繊維強化樹脂層よりも繊維含有率が低い繊維強化樹脂線状体。
〔2〕
前記第2の繊維強化樹脂層の繊維含有率Vf2と、前記第1の繊維強化樹脂層の繊維含有率Vf1との差(=Vf2-Vf1)が3体積%以上である〔1〕に記載の繊維強化樹脂線状体。
〔3〕
最外層として熱可塑性樹脂からなる被覆層が設けられている〔1〕又は〔2〕に記載の繊維強化樹脂線状体。
〔4〕
外径が0.9mm以上である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂線状体。
〔5〕
前記芯材が光ファイバ素線である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂線状体。
〔6〕
1又は2以上の芯材の周囲に未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束を配置した後加熱して前記熱硬化性樹脂を硬化させ、前記芯材の周囲に繊維含有率が45~75体積%の第1の繊維強化樹脂層を形成する工程と、
前記第1の繊維強化樹脂層の周囲に未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束を配置した後加熱して前記熱硬化性樹脂を硬化させ、前記第1の繊維強化樹脂層上に繊維含有率が45~75体積%で、かつ、前記第1の繊維強化樹脂層よりも繊維含有率が高い第2の繊維強化樹脂を形成する工程と、
を有する繊維強化樹脂線状体の製造方法。
〔7〕
前記第1の繊維強化樹脂層を形成する工程では、未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束の周囲をフッ素系樹脂で被覆し、前記熱硬化性樹脂を硬化させた後で前記フッ素系樹脂を剥離する〔6〕に記載の繊維強化樹脂線状体の製造方法。
1 芯材
2、3、32、33 繊維強化樹脂層
4、34 被覆層
10、20 繊維強化樹脂線状体
30 光ファイバケーブル
31 光ファイバ素線
2、3、32、33 繊維強化樹脂層
4、34 被覆層
10、20 繊維強化樹脂線状体
30 光ファイバケーブル
31 光ファイバ素線
Claims (7)
- 1又は2以上の芯材と、
前記芯材の周囲に設けられた第1の繊維強化樹脂層と、
前記第1の繊維強化樹脂層上に剥離可能に設けられた第2の繊維強化樹脂層と
を有し、
前記第1及び第2の繊維強化樹脂層は、熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束により形成されており、繊維含有率が45~75体積%であり、かつ、前記第1の繊維強化樹脂層は前記第2の繊維強化樹脂層よりも繊維含有率が低い繊維強化樹脂線状体。 - 前記第2の繊維強化樹脂層の繊維含有率Vf2と、前記第1の繊維強化樹脂層の繊維含有率Vf1との差(=Vf2-Vf1)が3体積%以上である請求項1に記載の繊維強化樹脂線状体。
- 最外層として熱可塑性樹脂からなる被覆層が設けられている請求項1に記載の繊維強化樹脂線状体。
- 外径が0.9mm以上である請求項1に記載の繊維強化樹脂線状体。
- 前記芯材が光ファイバ素線である請求項1に記載の繊維強化樹脂線状体。
- 1又は2以上の芯材の周囲に未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束を配置した後加熱して前記熱硬化性樹脂を硬化させ、前記芯材の周囲に繊維含有率が45~75体積%の第1の繊維強化樹脂層を形成する工程と、
前記第1の繊維強化樹脂層の周囲に未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束を配置した後加熱して前記熱硬化性樹脂を硬化させ、前記第1の繊維強化樹脂層上に繊維含有率が45~75体積%で、かつ、前記第1の繊維強化樹脂層よりも繊維含有率が高い第2の繊維強化樹脂を形成する工程と、
を有する繊維強化樹脂線状体の製造方法。 - 前記第1の繊維強化樹脂層を形成する工程では、未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた長繊維束の周囲をフッ素系樹脂で被覆し、前記熱硬化性樹脂を硬化させた後で前記フッ素系樹脂を剥離する請求項6に記載の繊維強化樹脂線状体の製造方法。
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