JP2024044021A - 防食用粘着テープ - Google Patents

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陽奈子 石井
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Abstract

【課題】粘着性が良好であるとともに、犠牲防食性のムラが小さい防食用粘着テープを提供する。【解決手段】本発明は、粘着剤層を備える防食用粘着テープであって、粘着剤層が、鉄よりも電位が卑な金属を含有し、鉄よりも電位が卑な金属の単位体積当たりの比表面積が0.16m2/cm3以上であり、粘着剤層における鉄よりも電位が卑な金属の含有量が40質量%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、防食用粘着テープに関する。
鋼材などの鉄又は鉄を含む合金を防食するために、亜鉛を多量に含有した防食塗料が広く用いられている。亜鉛は、鉄よりも電位が卑な金属であり、犠牲防食作用があるため、高い防食性を有することが知られている。しかし、塗料による防食は、塗布後に乾燥工程などが必要であり、作業に時間がかかり、例えば、橋梁などの土木、建築用途で局所的な補修を行う際には、作業効率が低下する。また、塗料による防食は、作業ムラも生じやすい。
上記状況を鑑みて、テープに犠牲防食性を付与させ、作業性を向上させる取り組みがなされてきた。例えば、特許文献1では、粘着層に亜鉛粒子を含有させ、押圧時に導電性を付与し、基材の亜鉛板と酸素・水との間に電子の回路を形成することで、犠牲防食性を発現させている。
また、粘着物性と犠牲防食性を両立させるために、粘着層に導電性を付与し、亜鉛の添加部数を減らすことを目的として、例えば、特許文献2には、粘着層に抵抗値10Ω以下の導電性を付与する方法が挙げられている。このような方法の結果、亜鉛粒子の含有量が15重量%以下でも犠牲防食性を発現できることが報告されている。
特開平9-242982号公報 特開2019-127606号公報
しかしながら、特許文献1の防食部材では、亜鉛を60~95重量%含有していることで粘着性が悪くなりやすい。
また、特許文献2の防食部材では、粘着性及び犠牲防食性が良好であるものの、犠牲防食性にムラが生じることがあった。
そこで、本発明は、粘着性が良好であるとともに、犠牲防食性のムラが小さい防食用粘着テープを提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の構成を有することで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の[1]~[12]を提供する。
[1]粘着剤層を備える防食用粘着テープであって、前記粘着剤層が、鉄よりも電位が卑な金属を含有し、鉄よりも電位が卑な前記金属の単位体積当たりの比表面積が0.16m/cm以上であり、前記粘着剤層における鉄よりも電位が卑な前記金属の含有量が40質量%以下である防食用粘着テープ。
[2]鉄よりも電位が卑な前記金属が亜鉛である上記[1]に記載の防食用粘着テープ。
[3]前記粘着剤層がアクリル系粘着剤により形成されている上記[1]又は[2]に記載の防食用粘着テープ。
[4]前記粘着剤層の厚みが100μm以上である上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の防食用粘着テープ。
[5]前記粘着剤層が、前記鉄よりも電位が卑な金属以外の導電性材料を含有する上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の防食用粘着テープ。
[6]前記導電性材料がカーボンナノチューブである上記[5]に記載の防食用粘着テープ。
[7]粘着力が20N/25mm以上である上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の防食用粘着テープ。
[8]基材をさらに備え、前記基材の少なくとも片面に前記粘着剤層が設けられた上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の防食用粘着テープ。
[9]前記基材が、鉄よりも電位が卑な金属の金属箔、樹脂フィルム及び不織布から選択される少なくとも1種のシート状材料である上記[8]に記載の防食用粘着テープ。
[10]前記鉄よりも電位が卑な金属の金属箔が亜鉛箔である上記[9]に記載の防食用粘着テープ。
[11]前記基材が樹脂フィルム又は不織布であり、前記基材と前記粘着剤層の間に、金属層とを備え、前記金属層が鉄よりも電位が卑な金属の層である上記[8]又は[9]に記載の防食用粘着テープ。
[12]前記金属層が亜鉛の層である上記[11]に記載の防食用粘着テープ。
本発明によれば、粘着性が良好であるとともに、犠牲防食性のムラが小さい防食用粘着テープを提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態の防食用粘着テープの変形例の使用例を示す模式図である。 本発明の防食用粘着テープの他の実施形態を示す模式的な断面図である。
[防食用粘着テープ]
本発明は、粘着剤層を備える防食用粘着テープであり、粘着剤層は鉄よりも電位が卑な金属を含有し、鉄よりも電位が卑な金属の単位体積当たりの比表面積が0.16m/cm以上であり、粘着剤層における鉄よりも電位が卑な金属の含有量が40質量%以下である。
<粘着剤層>
本発明の防食用粘着テープの粘着剤層は鉄よりも電位が卑な金属を含有する。粘着剤層が鉄よりも電位が卑な金属を含有しないと、防食用粘着テープは犠牲防食性を有さず、防食用粘着テープの防食性が悪くなる。鉄よりも電位が卑な金属は、粘着剤層を構成する粘着剤中で分散していることが好ましい。
(鉄よりも電位が卑な金属)
鉄よりも電位が卑な金属(以下、「犠牲防食用金属」ともいう)としては、カドミウム、クロム、亜鉛、マンガン、アルミニウムなどが挙げられ、これらの中では亜鉛、アルミニウムが好ましく、特に亜鉛が好ましい。亜鉛を使用することで犠牲防食性が優れたものとなる。
犠牲防食用金属は、粒子形状、鱗片形状、紡錘形状等、フィラーとしていかなる形態で粘着剤に分散されていてもよいが、好ましくは粒子形状であることが好ましい。犠牲防食用金属は、粒子形状とすることで、粘着剤層の粘着性を殆ど低下させることなく、粘着剤層中に分散されやすくなる。
本明細書において、粒子形状とは、短軸方向の長さに対する長軸方向の長さの比(アスペクト比)が小さいものであり、例えば、アスペクト比が3以下、好ましくは2以下である。なお、アスペクト比の下限は、1である。粒子形状は、特に限定されないが、球形であってもよいし、粉体等の不定形のものであってもよい。
犠牲防食用金属の単位体積当たりの比表面積は0.16m/cm以上である。犠牲防食用金属の単位体積当たりの比表面積が0.16m/cm未満であると、電子の移動にムラが生じやすくなり、それにより防食用粘着テープの犠牲防食性のムラが大きくなる。また、犠牲防食用金属の単位体積当たりの比表面積は、好ましくは0.18m/cm以上である。犠牲防食用金属の単位体積当たりの比表面積が0.20m/cm以上であると、防食用粘着テープの粘着性をさらに良好にすることができる。これらの観点から、犠牲防食用金属の単位体積当たりの比表面積は、より好ましくは0.25m/cm以上であり、さらに好ましくは0.35m/cm以上であり、よりさらに好ましくは1.0m/cm以上である。犠牲防食用金属の単位体積当たりの比表面積の範囲の上限値は、特に限定されないが、例えば1.6m/cmであり、好ましくは1.45m/cmであり、さらに好ましくは1.2m/cmである。犠牲防食用金属の単位体積当たりの比表面積は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
犠牲防食用金属の粘着剤層中の含有量は、粘着剤層全量基準で、40質量%以下である。犠牲防食用金属の粘着剤層中の含有量が40質量%よりも大きいと、防食用粘着テープの粘着性が悪くなる。このような観点から、犠牲防食用金属の粘着剤層中の含有量は、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下であり、よりさらに好ましくは12質量%以下である。また、防食用粘着テープの犠牲防食性の観点から、犠牲防食用金属の粘着剤層中の含有量は、例えば4.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは6質量%以上であり、さらに好ましくは8質量%以上である。
犠牲防食用金属の平均粒子径は、好ましくは1~100μmである。犠牲防食用金属の平均粒子径が1~100μmであると、防食用粘着テープの粘着性をさらに良好にしながら、防食用粘着テープの犠牲防食性のムラをさらに小さくすることができる。このようなの観点から、犠牲防食用金属の平均粒子径は、より好ましくは10~80μmであり、さらに好ましくは25~60μmであり、よりさらに好ましくは35~50μmである。犠牲防食用金属の平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
(粘着剤)
粘着剤層は、粘着剤により形成されることが好ましい。粘着剤の種類は特に限定されないが、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤などが挙げられる。これらは単独で使用してよいし、組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、粘着剤層は、アクリル系粘着剤により形成されることが好ましい。
(アクリル系粘着剤)
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)を含む重合性モノマーを重合したアクリル系重合体を含有する粘着剤である。
なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは、アクリル酸アルキルエステル、及びメタクリル酸アルキルエステルの両方を含む概念を指すものであり、他の類似の用語も同様である。また、用語「重合性モノマー」は、繰り返し単位を有しない化合物のみならず、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)と共重合する化合物であれば、後述するオレフィン重合体(C)などのモノマー自身が繰り返し単位を有するものも含みうる概念を指す。
((メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A))
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)は、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコールとのエステルであって、脂肪族アルコールのアルキル基の炭素数が、好ましくは2~14、より好ましくは4~10である脂肪族アルコールに由来するアルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数がこの範囲内であると、粘着力を高めやすく、また後述する粘着剤の23℃での貯蔵弾性率を所定の範囲に調整しやすくなる。
具体的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレートが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート又はこれらの組み合わせがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位は、粘着剤層において主成分を構成するものであって、その含有量は、粘着剤層全量基準で一般的に30質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。このように、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)の含有量を多くすると、粘着剤層に所望の粘着力を付与することが可能になる。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位の上記含有量は、他の成分を一定量以上含有させるために、例えば97質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
なお、粘着剤層における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位の含有量は、後述する粘着剤組成物における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)の含有量と実質的に同じであるので、置き換えて表すことができる。以下で説明する(B)、(C)成分など、(A)成分以外の成分も同様である。
(極性基含有ビニルモノマー(B))
重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)に加えて、極性基含有ビニルモノマー(B)を含有することが好ましい。極性基含有ビニルモノマー(B)は、極性基とビニル基を有するものである。極性基含有モノマー(B)を用いることで、被着体に対する粘着力を向上させやすくなる。
極性基含有ビニルモノマー(B)としては、例えば、酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸、及びその無水物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、及びポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等の水酸基を有するビニルモノマー、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルラウリロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等の窒素含有ビニルモノマーが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸、及びその無水物が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましく、アクリル酸が更に好ましい。これらの極性基含有ビニルモノマー(B)は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
極性基含有ビニルモノマー(B)を使用する場合、粘着剤層において極性基含有ビニルモノマー(B)由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、好ましくは1~15質量部、より好ましくは2~12質量部、さらに好ましくは3~10質量部である。極性基含有ビニルモノマー(B)の含有量をこのような範囲内とすることで、防食用粘着テープの粘着力を向上させやすくなる。
(オレフィン重合体(C))
重合性モノマーは、さらに片末端に重合性結合を有するオレフィン重合体(C)を含むことが好ましい。このようなオレフィン重合体(C)を使用することで、防食用粘着テープの粘着力を向上させやすくなる。
なお、重合性結合は、重合性モノマーと重合することが可能な不飽和の炭素-炭素結合を意味し、例えば不飽和二重結合が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
オレフィン重合体(C)としては、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンが挙げられる。なお、ポリオレフィンとは、エチレン、プロピレン、ブタン、ブタジエン、イソプレンなどの二重結合を有する脂肪族炭化水素化合物の重合体、又はその水素添加物である。
片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンとしては、例えば、片末端にエポキシ基を有するポリエチレンと(メタ)アクリル酸とを反応させることにより調製された、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリエチレン等が挙げられる。また、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン又はその水素添加物が挙げられ、その市販品として株式会社クラレ製の「L-1253」等が挙げられる。
オレフィン重合体(C)は、その数平均分子量が好ましくは500~20000、より好ましくは1000~10000である。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出すればよい。
また、粘着剤層においてオレフィン重合体(C)由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、2~15質量部がより好ましく、4~12質量部がさらに好ましい。
(架橋剤(D))
重合性モノマーはさらに、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、ビニル基を2つ以上有する多官能モノマーが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能モノマーを使用すると、粘着剤層の粘着力を適切な範囲に調整しやすくなる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどの2官能アルキル(メタ)アクリレート、エトシキ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトシキ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化グリセリルトリアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジアクリレートなどの他に、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、液状水素化1,2-ポリブタジエンジ(メタ)アクリレートなどの重合体が挙げられる。これら多官能(メタ)アクリレートの中でも、重合体が好ましく、液状水素化1,2-ポリブタジエンジアクリレートがより好ましい。液状水素化1,2-ポリブタジエンジアクリレートの市販品としては、日本曹達株式会社製の「TEAI-1000」等が挙げられる。また、2官能アルキル(メタ)アクリレートも好ましく、市販品として、新中村化学工業株式会社製のNKエステルシリーズのA-HD-Nが挙げられる。
また、粘着剤層において架橋剤由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、0.005~0.1質量部が好ましく、0.01~0.09質量部がより好ましく、0.02~0.08質量部がさらに好ましい。
(粘着付与樹脂)
アクリル系粘着剤は、粘着力を向上させる観点から、粘着付与樹脂を含有してもよい。粘着付与樹脂としては、水添テルペン樹脂、水添ロジン、不均化ロジン樹脂、石油樹脂等の重合阻害性の低い粘着付与樹脂が好ましい。これらの中でも、粘着付与樹脂が二重結合を多く有していると重合反応を阻害することから、水添系のものが好ましく、中でも水添石油樹脂が好ましい。
粘着付与樹脂の軟化点は、粘着剤の凝集力及び粘着力を向上させる観点から、95℃以上程度であればよいが、120℃以上のものを含むことが好ましく、例えば、95℃以上120℃未満のものと、120℃以上150℃以下のものとを併用してもよい。なお、軟化点は、JIS K2207に規定される環球法により測定すればよい。
アクリル系粘着剤における粘着付与樹脂の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、好ましくは5~40質量部、より好ましくは7~35質量部、さらに好ましくは10~25質量部である。
(微粒子)
アクリル系粘着剤は、微粒子を含有してもよい。微粒子を含有させることで、粘着力を向上させることができる。
微粒子としては、ガラスバルーン、シラスバルーン、及びフライアッシュバルーン等の無機質中空粒子、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、及びフェノール樹脂等からなる有機質中空粒子、ガラスビーズ、シリカビーズ、及び合成雲母等の無機質微粒子、ポリアクリル酸エチル、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリプロピレン等の有機質微粒子が挙げられる。
アクリル系粘着剤における微粒子の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは0.7~7質量部である。
(その他の成分)
粘着剤層に用いるアクリル系粘着剤は、前述した成分以外にも、可塑剤、軟化剤、顔料、染料、光重合開始剤、難燃剤、増粘剤等の粘着剤に従来使用されている各種の添加剤を含有してもよい。
(アクリル系粘着剤及び粘着剤層の製造方法)
アクリル系粘着剤は、上記した重合性モノマー、及び必要に応じて用いられる犠牲防食用金属、導電性材料を含む粘着剤組成物に光を照射して、重合性モノマーを重合させることで得ることが可能である。また、粘着剤組成物は、必要に応じて上記した粘着付与樹脂、微粒子、及びその他の成分の少なくとも1種を含んでいてもよい。
より具体的に説明すると、まず、重合性モノマー、必要応じて配合される犠牲防食用金属及び導電性材料、さらに必要に応じて配合される粘着付与樹脂、微粒子、及びその他の成分を、ガラス容器等の反応容器に投入して混合して、粘着剤組成物を得る。
次いで、粘着剤組成物中の溶存酸素を除去するために、一般に窒素ガス等の不活性ガスを供給して酸素をパージする。そして、粘着剤組成物を剥離シート上に塗布するか、又は、樹脂フィルム、織布、不織布等の支持体などに塗布した後、光を照射し重合性モノマーを重合することにより粘着剤層を得ることができる。
前記粘着剤組成物の塗布もしくは含浸から光を照射する工程までは、不活性ガス雰囲気下、又はフィルム等により酸素が遮断された状態で行うことが好ましい。
なお、本製造方法では、各成分を混合して得た粘着剤組成物は、粘度を高くするために、剥離シート又は支持体などに塗布する前に予備重合をしてもよい。
(ゴム系粘着剤)
次に、粘着剤層に使用するゴム系粘着剤について説明する。ゴム系粘着剤は、ゴム成分と、粘着付与樹脂を含有するものであり、ゴム成分としては、スチレン-イソプレンブロック共重合体を使用することが好ましい。スチレン-イソプレンブロック共重合体は、ジブロック率が好ましくは25~70質量%、より好ましくは30~65質量%、さらに好ましくは45~60重量%である。ここでジブロックとは、スチレンとイソプレンとからなるジブロックのことをいう。ジブロック率を上記の範囲とすることにより、粘着力を高めやすくなる。なお、スチレン-イソプレンブロック共重合体は、ジブロック以外にも、スチレン、イソプレン、スチレンブロックからなるトリブロックなどブロックを3つ以上有するものも含有する。
スチレン-イソプレンブロック共重合体におけるスチレン量は、特に限定されないが、14~24質量%であることが好ましく、より好ましくは15~18質量%である。スチレン量が14質量%以上であると、凝集性の高い粘着剤となりやすくなる。また、24質量%以下とすると、凝集力が適度な大きさとなり粘着力を発現しやすくなる。
スチレン-イソプレンブロック共重合体の分子量は、特に限定されないが、質量平均分子量で100,000~400,000が好ましく、150,000~250,000がより好ましい。なお、ここでいう質量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によりポリスチレン換算分子量として測定されるものをいう。
ゴム系粘着剤に使用される粘着付与樹脂は、各種の粘着付与樹脂が使用可能であるが、好ましくは石油系樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂を使用する。粘着付与樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、石油系樹脂と、テルペン樹脂及びクマロン樹脂から選択される少なくとも1種とを併用することが好ましい。このような粘着付与樹脂の組み合わせにより粘着力を良好にしやすくなる。
石油系樹脂としては、脂肪族系石油樹脂(C5系石油樹脂)、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂等が挙げられ、スチレン-イソプレンブロック共重合体との相溶性の観点から脂肪族系石油樹脂が好ましい。また、石油系樹脂は、軟化点が90~120℃程度のものを使用することが好ましい。
また、テルペン樹脂としては、軟化点が80~120℃程度のものが使用可能であるが、粘着力確保の観点から100℃未満のものが好ましい。また、クマロン樹脂としては、凝集力確保のために、軟化点が好ましくは110~130℃、より好ましくは115~125℃のものを使用する。
粘着付与樹脂はゴム成分100質量部に対して60~250質量部が好ましく、100~200質量部がより好ましく、110~180質量部がさらに好ましい。粘着付与樹脂の配合量を上記範囲内とすることで、凝集力を良好にして適度な粘着力を付与できるようになる。
また、石油系樹脂と、テルペン樹脂及びクマロン樹脂から選択される少なくとも1種とを併用する場合、石油系樹脂は、ゴム成分100質量部に対して、50~200質量部が好ましく、60~150質量部が好ましく、60~110質量部がより好ましい。一方で、テルペン樹脂は、ゴム成分100質量部に対して、10~70質量部が好ましく、20~60質量部がより好ましく、30~50質量部がさらに好ましい。さらに、クマロン樹脂は、ゴム成分100質量部に対して、10~60質量部が好ましく、15~50質量部がより好ましく、20~40質量部がさらに好ましい。
ゴム系粘着剤は、アクリル系粘着剤と同様に上記した微粒子を含有してもよく、また、ゴム系粘着剤は、必要に応じて、犠牲防食用金属、導電性材料、軟化剤、酸化防止剤、充填剤等を含有してもよい。
(ウレタン系粘着剤)
上記したウレタン系粘着剤は特に限定されず、例えば、少なくともポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタン樹脂等が挙げられる。上記ポリオールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。上記ポリイソシアネート化合物として、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらのウレタン粘着剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ウレタン系粘着剤としては、ポリウレタンポリオールと多官能イソシアネート系硬化剤とを反応させて得られるウレタン樹脂を使用してもよい。ポリウレタンポリオールは、上記したポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応したもの、又はポリオールとポリイソシアネート化合物とジアミンなどの鎖延長剤とを反応させたものが挙げられる。多官能イソシアネート系硬化剤としては、2以上のイソシアネート基を有する化合物であればよく、上記したイソシアネート化合物を使用可能である。
ウレタン系粘着剤は、ウレタン樹脂に加えて、上記した微粒子を含有してもよく、また、ウレタン系粘着剤は、必要に応じて、粘着付与樹脂、犠牲防食用金属、導電性材料、軟化剤、酸化防止剤、充填剤等を含有してもよい。
(シリコーン系粘着剤)
また、シリコーン系粘着剤としては、例えば、付加反応型、過酸化物硬化型又は縮合反応型のシリコーン系粘着剤等が挙げられる。中でも、低温短時間で硬化可能という観点から、付加反応型シリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。なお、付加反応型シリコーン系粘着剤は粘着剤層の形成時に硬化するものである。シリコーン系粘着剤として、付加反応型シリコーン系粘着剤を用いる場合、上記シリコーン系粘着剤は白金触媒等の触媒を含んでいてもよい。
また、シリコーン系粘着剤は、微粒子を含有してもよく、また、架橋剤、粘着力を制御するための各種添加剤を加えたりしてもよい。
(厚み)
粘着剤層の厚みは、好ましくは100μm以上である。厚みを100μm以上とすることにより、自己修復力などが高まり防食用粘着テープの防食性を向上させることができ、また粘着力も高まりやすくなる。このような観点から、粘着剤層の厚みは、より好ましくは200μm以上であり、さらに好ましくは250μm以上であり、さらに好ましくは300μm以上である。また粘着剤層の厚みの上限は特に限定されないが、厚みに応じた防食性能の向上効果を得る観点から、例えば3000μmであり、2000μm以下が好ましい。
(導電性材料)
粘着剤層は、犠牲防食用金属に加えて、上記犠牲防食用金属以外の導電性材料をさらに含有することが好ましい。導電性材料を含有させると、犠牲防食用金属がイオン化した際に放出する電子を被着体に移動させやすくなり、犠牲防食性が向上しやすくなる。また、犠牲防食用金属の単位体積当たりの比表面積を0.16m/cm以上とすることにより、犠牲防食用金属が導電性材料と、さらに接触しやすくなり、犠牲防食性がさらに向上しやすくなる。さらに、犠牲防食用金属の単位体積当たりの比表面積を0.16m/cm以上とすることにより、犠牲防食用金属と導電性材料との間の電子の移動が局所的に途切れることを抑制することができ、その結果、犠牲防食性のムラをさらに低減することができる。
導電性材料としては、カーボン系材料、金属系材料、金属酸化物系材料、イオン性ポリマー及び導電性高分子から選択される1種または2種以上が挙げられる。
カーボン系材料としては、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、アセチレンブラックなどが挙げられる。金属系材料としては、金、銀、銅、ニッケル、又はこれらを含む合金など、鉄よりも電位が貴な金属、又は鉄などが挙げられる。金属酸化物材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、三酸化アンチモン(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛などが挙げられる。導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)、PEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の複合物)、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p-フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等が挙げられる。イオン性ポリマーとしては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウムなどが挙げられる。
導電性材料は、これらを1種単独で使用してもよいが、2種以上を併用してもよい。
上記の中でも導電性材料としては、カーボン系材料が好ましく、カーボンナノチューブがより好ましい。
(カーボンナノチューブ)
粘着剤層は、カーボンナノチューブを含有することが好ましい。カーボンナノチューブを含有することで、粘着剤層の犠牲防食性が向上し、かつ粘着力を高く維持できるため、粘着性、犠牲防食性、及び犠牲防食の安定性のいずれも良好にした防食用粘着テープが得やすくなる。これは、カーボンナノチューブは導電性材料であるが、他の種類の導電性材料と比較し、一定の犠牲防食性を発現させるために要する量が少ないため、粘着力の低下の度合いが小さいためと推察される。
カーボンナノチューブは、炭素から形成されるチューブ状の材料である。カーボンナノチューブは電気的特性に優れており、樹脂などと複合化すると、導電性の高いシートなどを形成できる。カーボンナノチューブは、六角網目状の炭素原子配列のグラファイトシートが円筒状に巻かれた構造を有する物質であり、一層に巻いたものをシングルウオールカーボンナノチューブ、多層に巻いたものをマルチウオールカーボンナノチューブという。
本発明の一実施形態の防食用粘着テープでは、カーボンナノチューブの種類は特に限定されず、シングルウオールカーボンナノチューブ、マルチウオールカーボンナノチューブ、及びこれらを任意の割合で含む混合物のいずれでもよい。また、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学気相成長法(CVD法)等の各種方法により製造されたカーボンナノチューブを用いることができる。
カーボンナノチューブの平均直径は好ましくは1~100nmであり、より好ましくは2~15nmである。カーボンナノチューブの平均長さは好ましくは0.1~1000μmであり、より好ましくは10~500μmである。カーボンナノチューブのアスペクト比(平均長さ/平均直径)は、好ましくは10~100000であり、より好ましくは500~30000である。
なお、カーボンナノチューブの直径とは、シングルウオールカーボンナノチューブの場合には外径を示し、マルチウオールカーボンナノチューブの場合には最も外側に位置するチューブの外径を意味する。カーボンナノチューブの直径、及び長さは、例えばTEM(透過型電子顕微鏡)による観察によって得られた画像において測定すればよく、平均直径、及び平均長さとは、任意の50個の算術平均により求めるとよい。
粘着剤層の犠牲防食性及び粘着力の観点から、粘着剤層における導電性材料の含有量は、粘着剤層全量基準で、好ましくは0.005~10質量%、より好ましくは0.007~5質量%、さらに好ましくは0.01~3質量%である。
導電性材料がカーボンナノチューブである場合、カーボンナノチューブの粘着剤層中の含有量は、粘着剤層全量基準で、好ましくは0.005~0.1質量%であり、より好ましくは0.007~0.05質量%であり、さらに好ましくは0.01~0.03質量%である。
カーボンナノチューブの含有量がこれら下限値以上であると、犠牲防食性が高まりやすく、カーボンナノチューブの含有量がこれら上限値以下であると、粘着力が向上しやすくなる。
(粘着力)
本発明の防食用粘着テープの粘着力は、例えば、10N/25mm以上、好ましくは20N/25mm以上である。該粘着力が20N/25mm以上であると、防食用粘着テープが鋼材などの被着体から、さらに剥がれにくくなり、そのため防食性がさらに改善される。粘着力を高めて防食性を向上させる観点から、本発明の防食用粘着テープの粘着力は、好ましくは30N/25mm以上であり、より好ましくは40N/25mm以上であり、よりさらに好ましくは50N/25mm以上である。粘着力は高ければ高いほどよいが、実用上は200N/25mm以下である。なお、防食用粘着テープの粘着力は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
<基材>
本発明の防食用粘着テープは基材をさらに備えてもよい。この場合、基材の少なくとも片面に粘着剤層が設けられる。基材としては、例えば、樹脂フィルム、不織布、金属箔などのシート状材料が挙げられる。
樹脂フィルムには、例えば、アクリル系フィルム、フッ素系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、AES樹脂系フィルム、ASA樹脂系フィルムなどが挙げられる。
不織布は、例えば、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系等の合成樹脂繊維からなる不織布である。
金属箔には、例えば、鉄及びその合金の金属箔、クロム、亜鉛、チタン、アルミニウム、マグネシウムなどの鉄よりも電位が卑な金属の金属箔、金、銀、銅、錫、ニッケル、コバルトなどの鉄よりも電位が貴な金属の金属箔などが挙げられる。
これらのシート状材料は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。防食用粘着テープの防食性の観点から、基材は、鉄よりも電位が卑な金属の金属箔が好ましく、亜鉛箔がより好ましい。基材が、鉄よりも電位が卑な金属の金属箔である場合、基材は粘着剤層に直接積層されることが好ましい。
また、粘着剤層の保護の観点から、基材は樹脂フィルムが好ましく、アクリル系フィルム、及びフッ素系フィルムがより好ましい。
基材の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~100μm、さらに好ましくは25~80μmである。基材は、10μm以上であることで、支持体としての機能を発揮することができる。また、200μm以下とすることで、被着体に対する密着性を高めやすくなる。
<防食用粘着テープの構成>
本発明の防食用粘着テープは、いわゆる基材レス粘着テープであり、粘着剤層のみからなるものであってもよいが、図1に示すように、防食用粘着テープ10は、基材12と、該基材12の片面に粘着剤層11が設けられた片面粘着テープであることが好ましい。これにより、基材12によって粘着剤層11を保護することができる。
各図面の防食用粘着テープは、粘着剤層11の表面11Aを接着面として被着体に貼付して使用される。
また、防食用粘着テープは、図示しないが、基材と、該基材の両面に粘着剤層が設けられた両面粘着テープであってもよい。
基材が金属箔でない場合、防食用粘着テープ10の防食性を高めるために、図2に示すように、防食用粘着テープ10は、基材12と粘着剤層11の間に、金属層13をさらに備えるようにしてもよい。そして、金属層13は、鉄よりも電位が卑な金属の層であることが好ましい。鉄よりも電位が卑な金属としては、上述したものが特に制限なく使用されるが、該金属層13は、亜鉛の層であることがより好ましい。金属層13は、具体的には、基材12に対して接着剤などにより接着されてもよいし、基材12上にスパッタリングや真空蒸着などにより形成されてもよい。また、金属層13は、スパッタリングや真空蒸着などにより、金属を粘着剤層11の表面に被膜して形成される金属膜であってもよい。
金属層13は、基材12と粘着剤層11に挟まれるような形態で、粘着剤層11の上に直接形成される。すなわち、金属層13を構成する鉄よりも電位が卑な金属は、粘着剤層11に接触することになる。このように、鉄よりも電位が卑な金属は、粘着剤層11に接触すると、イオン化した際に放出する電子が、粘着剤層11に容易に移行できるので、防食用粘着テープ10の防食性が向上する。
金属層13は、基材が樹脂フィルム又は不織布の場合に好適に使用され、基材が樹脂フィルムである場合により好適に使用される。
金属層13の厚みは、好ましくは2.5μm以上である。金属層13の厚みが2.5μm以上であると、金属層13は、金属層13中の金属のイオン化による電子を十分に供給することができ、防食用粘着テープ10の十分な防食性を維持できる。防食用粘着テープ10の防食性を高める観点から、金属層13の厚みは、より好ましくは5μm以上である。また、防食用粘着テープ10の柔軟性を確保して、防食用粘着テープ10の取り扱い性などを良好にする観点から、金属層13の厚みは、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。
本発明の防食用粘着テープは、粘着剤層の表面に剥離シートが貼付されていてもよい。剥離シートは、防食用粘着テープを使用する前に粘着剤層から剥離され、粘着剤層が露出され、露出した粘着剤層により、被着体に貼り合わされるとよい。より具体的には、粘着剤層の面のうち、基材あるいは金属層13が設けられている面とは反対側の面、すなわち表面11Aに剥離シートが貼付されるとよい。
剥離シートとしては、樹脂フィルムを使用するとよいが、粘着剤層との貼り合わせ面がシリコーン剥離剤などにより剥離処理された剥離処理面であることが好ましい。
本発明の防食用粘着テープは、各種被着体に対して貼付して使用され、その被着体の種類は特に限定されない。本発明の防食用粘着テープは、粘着力及び防食性に優れるため、各種金属材料からなる被着体表面に対して貼付して使用することが好ましい。金属材料としては好ましくは、鉄、及び鉄を含む合金からなる群から選択される少なくとも1種を含有する金属材料である。鉄を含む合金としては、具体的には、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、マンガン鋼などの合金鋼、炭素鋼などの各種の鋼材が挙げられる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
実施例、比較例では、犠牲防食用金属を以下の評価方法により評価した。
<単位体積当たりの比表面積と平均粒子径>
レーザー回析式乾式粒度分布測定装置(株式会社日本レーザー社製、商品名「HELOS&RODOS」)を用いて、レーザー回折法により単位体積当たりの比表面積と平均粒子径を測定した。なお、メジアン径を平均粒子径とした。
実施例、比較例では、防食用粘着テープを以下の評価方法により評価した。
<粘着力>
1.試料の作製
SUS板(幅50mm、長さ125mm)に、各実施例及び比較例の防食用粘着テープ(幅25mm、長さ100mm)を、2kgのローラーを10±0.5mm/sの速度で2往復させることで貼付して、粘着力評価用試料を作製し、該粘着力評価用試料を用いて、粘着力を測定した。
2.粘着力の測定
粘着力の測定は、粘着力評価用試料を用いて、以下のとおり行った。
粘着力評価用試料を引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能材料試験機」)のチャックに固定した。その後、23℃、50RH%の環境下で、防食用粘着テープを剥離角度90°、速度300mm/分で60mm以上引張り、ロードセルにより検出された荷重(N)の区間平均値を記録して、これを粘着力とした。そして、以下の基準で評価した。
◎・・粘着力が40N/25mm以上
〇・・粘着力が20N/25mm以上40N/25mm未満
△・・粘着力が10N/25mm以上20N/25mm未満
×・・粘着力が10N/25mm未満
<酸化還元電位>
本発明における粘着剤層の犠牲防食試験における電位は、好ましくは-700mV以下であり、より好ましくは-750mV以下であり、さらに好ましくは-800mV以下である。犠牲防食性の観点からは、上記電位は低い方がよいが、犠牲防食性と粘着力とのバランスを考慮すると、上記電位は、-900mV以上であることが好ましい。粘着剤層の犠牲防食試験における電位は、鉄よりも電位が卑な金属、導電性材料などの種類及び量により調整することができる。
酸化還元電位の測定は、次の(1)~(2)により行う。
(1)被着体としての鋼板SS400(TP技研株式会社製、150mm×70mm)に、150mm×70mmの粘着剤層を貼り付ける。
(2)その後、粘着剤層の一部(2mm×2mm)を切り取り、そこに濃度3質量%のNaCl水溶液を垂らして、銀/塩化銀電極を使って、電極の先端がNaCl水溶液に触れるように配置し、電位を測定する。
電位の測定においては、テスターとして、デジタルマルチメーター「CDM-11D」(株式会社カスタム製)を用い、そのマイナス極と電極「HS-205C」(東亜ディーケーケー株式会社製)を電極クリップで接続し、使用するとよい。
上記測定を15cm角の粘着層の四隅と中央の計5か所から採取したサンプルに対いて行い、ー700mV以下を合格とし、以下の基準で評価した。
〇・・5箇所全て合格
×・・1箇所以上不合格
<総合評価>
防食用粘着テープの総合評価について、以下の基準で評価した。
〇・・粘着力の評価及び酸化還元電位の評価で、「×」の評価がない。
×・・粘着力の評価及び酸化還元電位の評価の少なくとも一方の評価で、「×」の評価がある。
[実施例1~8、比較例1~2]
表1に記載の配合にしたがって、粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物に窒素をパージして溶存酸素を除去した。次いで、粘着剤組成物をフィルム(PET系フィルム、中本パックス株式会社製、製品名:「NS-50-TA」、厚み50μm)上に塗布した。
この状態で被覆側の剥離シートにおける紫外線照射強度が5mW/cm2となるようにケミカルランプのランプ強度を調整し、一方の側から15分間紫外線を照射し、粘着剤層単体からなり、両面に剥離シートが貼付された防食用粘着テープを得た。各実施例、比較例の粘着剤層(すなわち、両面粘着テープ)の厚さは表1に記載の通りに調整した。該防食用粘着テープの剥離シートを剥離し、各種評価を行った。結果を表1に示した。
表1における各成分は、以下のとおりである。
オレフィン重合体:製品名「L-1253」、株式会社クラレ製、(メタ)アクリロイル基を片末端に有する水素化ポリブタジエン
粘着付与樹脂1:製品名「アルコンP140」、荒川化学工業株式会社製、水添石油樹脂、軟化点140℃
粘着付与樹脂2:製品名「アルコンP100」、荒川化学工業株式会社製、水添石油樹脂、軟化点100℃
増粘剤:製品名「AEROSIL 200」、日本アエロジル株式会社製、フュームドシリカ
亜鉛粒子1:東邦亜鉛株式会社製、製品名「亜鉛末AN-200」、比表面積:0.16m/cm、平均粒子径:47μm
亜鉛粒子2:東邦亜鉛株式会社製、製品名「亜鉛末AN-325」、比表面積:0.4m/cm、平均粒子径:24μm
亜鉛粒子3:本庄ケミカル株式会社製、製品名「亜鉛末NG-F500」、比表面積:1.1m/cm、平均粒子径:7μm
亜鉛粒子4:堺化学工業株式会社製、製品名「亜鉛末#40」、比表面積:0.14m/cm、平均粒子径:48μm
導電性材料:カーボンナノチューブ(CNT)、JEIO社製、製品名「JENOTUBE8A」、平均直径6~9nm、平均長さ100~200μm
架橋剤:新中村化学工業株式会社製、NKエステルA-HD-N、2官能アルキルアクリレート
重合開始剤:2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン
実施例1~8の防食用粘着テープは、犠牲防食用金属の単位体積当たりの比表面積が0.16m/cm以上であり、粘着剤層における犠牲防食用金属の含有量が40質量%以下であったため、粘着力が大きく、犠牲防食性のムラも小さかった。比較例1の防食用粘着テープは犠牲防食用金属の比表面積が0.16m/cmよりも小さかったため、犠牲防食性のムラが大きかった。また、比較例2の防食用粘着テープは、粘着剤層における犠牲防食用金属の含有量が40質量%よりも大きかったため、粘着力が小さかった。
10 防食用粘着テープ
11 粘着剤層
12 基材
13 金属層

Claims (12)

  1. 粘着剤層を備える防食用粘着テープであって、
    前記粘着剤層が、鉄よりも電位が卑な金属を含有し、
    鉄よりも電位が卑な前記金属の単位体積当たりの比表面積が0.16m/cm以上であり、
    前記粘着剤層における鉄よりも電位が卑な前記金属の含有量が40質量%以下である防食用粘着テープ。
  2. 鉄よりも電位が卑な前記金属が亜鉛である請求項1に記載の防食用粘着テープ。
  3. 前記粘着剤層がアクリル系粘着剤により形成されている請求項1に記載の防食用粘着テープ。
  4. 前記粘着剤層の厚みが100μm以上である請求項1に記載の防食用粘着テープ。
  5. 前記粘着剤層が、前記鉄よりも電位が卑な金属以外の導電性材料を含有する請求項1に記載の防食用粘着テープ。
  6. 前記導電性材料がカーボンナノチューブである請求項5に記載の防食用粘着テープ。
  7. 粘着力が20N/25mm以上である請求項1に記載の防食用粘着テープ。
  8. 基材をさらに備え、前記基材の少なくとも片面に前記粘着剤層が設けられた請求項1に記載の防食用粘着テープ。
  9. 前記基材が、鉄よりも電位が卑な金属の金属箔、樹脂フィルム及び不織布から選択される少なくとも1種のシート状材料である請求項8に記載の防食用粘着テープ。
  10. 前記鉄よりも電位が卑な金属の金属箔が亜鉛箔である請求項9に記載の防食用粘着テープ。
  11. 前記基材が樹脂フィルム又は不織布であり、
    前記基材と前記粘着剤層の間に金属層を備え、
    前記金属層が鉄よりも電位が卑な金属の層である請求項8に記載の防食用粘着テープ。
  12. 前記金属層が亜鉛の層である請求項11に記載の防食用粘着テープ。
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