JP2024023797A - 揺動制御装置 - Google Patents

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桂吾 渡辺
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Ryota Ajino
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Abstract

【課題】荷物の揺動運動を制御でき、荷物を安定させた状態で搬送することが可能となる揚重機の揺動制御装置を提供する。【解決手段】揺動制御装置4においては、推力部6のプロペラ61P・62P・63P・64Pの回転軸方向はワイヤロープ32が延びる方向と側面視において直交し、フック33を中心に計四つの推力部6が等しい位相で取り付けられ、フック33を挟み込むように対をなす第一推力部61と第三推力部63が互いに反対方向に推力を発生させ、フック33を挟み込むように対をなす第二推力部62と第四推力部64が互いに反対方向に推力を発生させ、更に第一及推力部61及び第三推力部63による推力と第二推力部62及び第四推力部64による推力が互いに反対方向に回転力を発生させ、フック33に対して並進力と回転力を付与する際には、計四つの推力部6のうちの最大三つの推力を利用する。【選択図】図2

Description

本発明は、揚重機の揺動制御装置に関する。
従来より、代表的な揚重機であるクレーンが知られている(特許文献1参照)。かかるクレーンは、主に走行体と旋回体で構成されている。走行体は、複数の車輪を備え、自走可能としている。旋回体は、ブームのほかにワイヤロープとフックを備え、荷物を吊り下げた状態でこれを搬送可能としている。
ところで、フックに荷物を吊り下げた状態でこれを搬送する場合、風などの外乱によって荷物が揺動(回転運動や振子運動を指す)してしまうことがある。そのため、揺動が大きいときには、揺動が収まるまで揚重作業を停止せざるを得ず、作業効率が低下するという問題があった。また、荷物が長尺体であるときには、荷物がブームや周囲の建築物に衝突するおそれが生じるので、荷物に括り付けたロープを作業者が引張って方向を調節しなければならず、更に作業効率が低下するという問題があった。
特許第6551638号公報
荷物の揺動運動を制御でき、荷物を安定させた状態で搬送することが可能となる揚重機の揺動制御装置を提供する。
上記課題を解決する揺動制御装置は、以下の特徴を有する。
即ち、揺動制御装置は、
ワイヤロープに吊られるフックを備え、
前記フックに荷物を吊り下げた状態で当該荷物を搬送する揚重機の揺動制御装置であって、
前記フックに取り付けられる複数の推力部と、
前記フック或いは当該フックに吊り下げられた荷物の揺動運動を認識できる制御部と、を備え、
前記制御部がそれぞれの前記推力部の出力調整を行うことで前記フック或いは当該フックに吊り下げられた荷物の揺動運動を制御し、
前記推力部は前記フックのブロック部分に固定されて、前記ブロック部分に回転自在に支持されるプロペラを有しており、
前記プロペラの回転軸方向は、前記ワイヤロープが延びる方向と側面視において直交しており、
前記フックを中心に計四つの前記推力部が等しい位相で取り付けられており、
前記フックを挟み込むように対をなす第一の前記推力部と第三の前記推力部が互いに反対方向に推力を発生させ、
前記フックを挟み込むように対をなす第二の前記推力部と第四の前記推力部が互いに反対方向に推力を発生させ、
更に第一及び第三の前記推力部による推力と第二及び第四の前記推力部による推力が互いに反対方向に回転力を発生させるものとし、
前記フックに対して並進力と回転力を付与する際には、計四つの前記推力部のうちの最大三つの推力を利用する。
また、揺動制御装置は、
ワイヤロープに吊られるフックを備え、
前記フックに荷物を吊り下げた状態で当該荷物を搬送する揚重機の揺動制御装置であって、
前記フックに取り付けられる三つの推力部と、
前記フック或いは当該フックに吊り下げられた荷物の揺動運動を認識できる制御部と、を備え、
前記制御部がそれぞれの前記推力部の出力調整を行うことで前記フック或いは当該フックに吊り下げられた荷物の揺動運動を制御し、
前記推力部は前記フックのブロック部分に固定されて、前記ブロック部分に回転自在に支持されるプロペラを有しており、
前記プロペラの回転軸方向は、前記ワイヤロープが延びる方向と側面視において直交している。
本発明によれば、荷物の揺動運動を制御でき、荷物を安定させた状態で搬送することが可能となる。また、フックに荷物が吊り下げられていない状態であるときは、フックの揺動運動を制御できる。
クレーンを示す図。 揺動制御装置を示す図。 揺動制御装置の制御システムを示す図。 荷物の回転運動を制御するための機能を示す図。 荷物の振子運動を制御するための機能を示す図。 荷物の地切後における荷物の振子運動を制御するための機能を示す図。 フックに対して並進力のみを付与する状況を示す図。 フックに対して回転力のみを付与する状況を示す図。 フックに対して並進力と回転力を付与する状況を示す図。 他の実施形態に係る揺動制御装置を示す図。
本願に開示する技術的思想は、代表的な揚重機であるクレーンのほか、他の揚重機にも適用できる。
まず、図1を用いて、クレーン1について説明する。
クレーン1は、主に走行体2と旋回体3で構成されている。
走行体2は、左右一対の前輪21と後輪22を備えている。また、走行体2は、荷物Lの揚重作業を行う際に接地させて安定を図るアウトリガ23を備えている。なお、走行体2は、アクチュエータによって、その上部に支持する旋回体3を旋回自在としている。
旋回体3は、その後部から前方へ突き出すようにブーム31を備えている。そのため、ブーム31は、アクチュエータによって旋回自在となっている(矢印A参照)。また、ブーム31は、アクチュエータによって伸縮自在となっている(矢印B参照)。更に、ブーム31は、アクチュエータによって起伏自在となっている(矢印C参照)。
加えて、ブーム31には、ワイヤロープ32が架け渡されている。ブーム31の先端部分から垂下するワイヤロープ32には、フック33が取り付けられている。また、ブーム31の基端側近傍には、ウインチ34が配置されている。ウインチ34は、油圧モーターと一体的に構成されており、ワイヤロープ32の巻き入れ及び巻き出しを可能としている。そのため、フック33は、昇降自在となっている(矢印D参照)。なお、旋回体3は、ブーム31の側方にキャビン35を備えており、このキャビン35の内部に制御部36を収容している。
次に、図2を用いて、揺動制御装置4について説明する。
揺動制御装置4は、枠体部5と推力部6と制御部7を備えている。揺動制御装置4は、推力部6を四つ備えているため、それぞれを第一推力部61、第二推力部62、第三推力部63、第四推力部64として説明する。また、制御部7については、後に詳しく説明する。
枠体部5は、フレームの組み合わせによって略直方体形状となっている。枠体部5は、フック33のブロック部分33Bに嵌め合わされ、このブロック部分33Bに対してバックル等で固定される。なお、フック部分33Fは、枠体部5よりも下方側に垂れ下がった状態となるので、フック部分33Fに掛けられた吊具Tが干渉することはない(図4及び図5参照)。
第一推力部61は、枠体部5の外周面から突出したブラケット51に固定される。第一推力部61は、互いに対向する一対のプロペラ61P・61Pを有している。一方のプロペラ61Pは、ブラケット51の側面に支持されたモーター61Mによって回転自在となっている(図3参照)。また、他方のプロペラ61Pは、ブラケット51の反対側側面に支持されたモーター61Mによって回転自在となっている(図3参照)。なお、一方のプロペラ61Pと他方のプロペラ61Pは、互いに反転するものとされ、これによってカウンタートルクを自在にコントロールすることができる。
第二推力部62は、枠体部5の外周面から突出したブラケット52に固定される。第二推力部62は、互いに対向する一対のプロペラ62P・62Pを有している。一方のプロペラ62Pは、ブラケット52の側面に支持されたモーター62Mによって回転自在となっている(図3参照)。また、他方のプロペラ62Pは、ブラケット52の反対側側面に支持されたモーター62Mによって回転自在となっている(図3参照)。なお、一方のプロペラ62Pと他方のプロペラ62Pは、互いに反転するものとされ、これによってカウンタートルクを自在にコントロールすることができる。
第三推力部63は、枠体部5の外周面から突出したブラケット53に固定される。第三推力部63は、互いに対向する一対のプロペラ63P・63Pを有している。一方のプロペラ63Pは、ブラケット53の側面に支持されたモーター63Mによって回転自在となっている(図3参照)。また、他方のプロペラ63Pは、ブラケット53の反対側側面に支持されたモーター63Mによって回転自在となっている(図3参照)。なお、一方のプロペラ63Pと他方のプロペラ63Pは、互いに反転するものとされ、これによってカウンタートルクを自在にコントロールすることができる。
第四推力部64は、枠体部5の外周面から突出したブラケット54に固定される。第四推力部64は、互いに対向する一対のプロペラ64P・64Pを有している。一方のプロペラ64Pは、ブラケット54の側面に支持されたモーター64Mによって回転自在となっている(図3参照)。また、他方のプロペラ64Pは、ブラケット54の反対側側面に支持されたモーター64Mによって回転自在となっている(図3参照)。なお、一方のプロペラ64Pと他方のプロペラ64Pは、互いに反転するものとされ、これによってカウンタートルクを自在にコントロールすることができる。
次に、図3を用いて、揺動制御装置4の制御システムについて説明する。
前述したように、揺動制御装置4は制御部7を備えている。制御部7は、各種のセンサから様々な情報を取得できる。例えば、角速度センサ71から自らが回転したときの角速度を取得することができる。また、変位速度センサ72から自らが振子となったときの変位速度を取得することができる。更に、クレーン1の通信装置を介して遠隔地のサーバコンピュータ73から様々な情報を取得できる。例えば、荷物Lの形状や重量等の情報を取得することができる。
第一推力部61を構成するプロペラ61P・61Pは、それぞれモーター61M・61Mによって回転自在となっている。これらのモーター61M・61Mは、モータードライバ(エレクトロリック・スピード・コントローラ)61Dによって駆動・制御される。つまり、これらのモーター61M・61Mは、モータードライバ61Dが電流量や電流方向を適宜に切り替えることで駆動・制御される。なお、モータードライバ61Dは、制御部7が送信した電気信号に基づいて作動する。そのため、第一推力部61は、制御部7の指示どおりに推力を変えることができる。
第二推力部62を構成するプロペラ62P・62Pは、それぞれモーター62M・62Mによって回転自在となっている。これらのモーター62M・62Mは、モータードライバ(エレクトロリック・スピード・コントローラ)62Dによって駆動・制御される。つまり、これらのモーター62M・62Mは、モータードライバ62Dが電流量や電流方向を適宜に切り替えることで駆動・制御される。なお、モータードライバ62Dは、制御部7が送信した電気信号に基づいて作動する。そのため、第二推力部62は、制御部7の指示どおりに推力を変えることができる。
第三推力部63を構成するプロペラ63P・63Pは、それぞれモーター63M・63Mによって回転自在となっている。これらのモーター63M・63Mは、モータードライバ(エレクトロリック・スピード・コントローラ)63Dによって駆動・制御される。つまり、これらのモーター63M・63Mは、モータードライバ63Dが電流量や電流方向を適宜に切り替えることで駆動・制御される。なお、モータードライバ63Dは、制御部7が送信した電気信号に基づいて作動する。そのため、第三推力部63は、制御部7の指示どおりに推力を変えることができる。
第四推力部64を構成するプロペラ64P・64Pは、それぞれモーター64M・64Mによって回転自在となっている。これらのモーター64M・64Mは、モータードライバ(エレクトロリック・スピード・コントローラ)64Dによって駆動・制御される。つまり、これらのモーター64M・64Mは、モータードライバ64Dが電流量や電流方向を適宜に切り替えることで駆動・制御される。なお、モータードライバ64Dは、制御部7が送信した電気信号に基づいて作動する。そのため、第四推力部64は、制御部7の指示どおりに推力を変えることができる。
ところで、揺動制御装置4は、第一推力部61と第二推力部62の推力方向が垂直に交わっているため、これら推力部61・62の推力を変えることによって推力の合成方向を制御できる。同様に、第三推力部63と第四推力部64の推力方向も垂直に交わっているため、これら推力部63・64の推力を変えることで推力の合成方向を制御できる。こうして、それぞれの推力部61~64の出力調整を行うことでフック33の回転或いは移動を実現しているのである(図4及び図5参照)。
以降に、揺動制御装置4の機能について説明する。
まず、図4を用いて、荷物Lの回転運動を制御するための機能について説明する。
フック33に吊り下げられた荷物Lが回転運動をしている場合、荷物Lの回転運動につられてフック33及び揺動制御装置4も回転運動をすることとなる(矢印E及び矢印F参照)。
そこで、制御部7は、角速度センサ71から角速度を取得し、取得した角速度に基づいて荷物Lの角速度を決定する。なお、本制御システムにおいては、取得した揺動制御装置4の角速度をそのまま荷物Lの角速度としている。これは、ブーム31の先端部分から揺動制御装置4までの長さに対して揺動制御装置4から荷物Lまでの長さが相対的に短いため、両者はほぼ同じ角速度になると近似できるからである。但し、揺動制御装置4の角速度をそのまま荷物Lの角速度とすることについて限定するものではない。
その後、制御部7は、荷物Lの角速度に加え、荷物Lの形状や重量等の情報を利用して慣性モーメントを算出する。そして、制御部7は、慣性モーメントの方向と大きさに基づいて電気信号を作成し、かかる電気信号を各モータードライバ61D~64Dへ送信する。このようにすることで、それぞれの推力部61~64の出力調整が行われ、全体として回転運動を制御するように推力を発生させる(矢印G参照)。
加えて、フック33に荷物Lが吊り下げられていない状態であるときは、フック33の回転に対して同様の効果を奏する。即ち、制御部7は、揺動制御装置4の角速度に加え、フック33及び揺動制御装置4の形状や重量等の情報を利用して慣性モーメントを算出する。そして、制御部7は、慣性モーメントの方向と大きさに基づいて電気信号を作成し、かかる電気信号を各モータードライバ61D~64Dへ送信する。このようにすることで、それぞれの推力部61~64の出力調整が行われ、全体として回転運動を制御するように推力を発生させる。
次に、図5を用いて、荷物Lの振子運動を制御するための機能について説明する。
フック33に吊り下げられた荷物Lが振子運動をしている場合、荷物Lの振子運動につられてフック33及び揺動制御装置4も振子運動をすることとなる(矢印H及び矢印I参照)。
そこで、制御部7は、変位速度センサ72から変位速度を取得し、取得した変位速度に基づいて荷物Lの変位速度を決定する。なお、本制御システムにおいては、取得した揺動制御装置4の変位速度をそのまま荷物Lの変位速度としている。これは、ブーム31の先端部分から揺動制御装置4までの長さに対して揺動制御装置4から荷物Lまでの長さが相対的に短いため、両者はほぼ同じ変位速度になると近似できるからである。但し、揺動制御装置4の変位速度をそのまま荷物Lの変位速度とすることについて限定するものではない。
その後、制御部7は、荷物Lの変位速度に加え、荷物Lの形状や重量等の情報を利用して慣性力を算出する。そして、制御部7は、慣性力の方向と大きさに基づいて電気信号を作成し、かかる電気信号を各モータードライバ61D~64Dへ送信する。このようにすることで、それぞれの推力部61~64の出力調整が行われ、全体として振子運動を制御するように推力を発生させる(矢印J参照)。
加えて、フック33に荷物Lが吊り下げられていない状態であるときは、フック33の変位に対して同様の効果を奏する。即ち、制御部7は、揺動制御装置4の変位速度に加え、フック33及び揺動制御装置4の形状や重量等の情報を利用して慣性力を算出する。そして、制御部7は、慣性力の方向と大きさに基づいて電気信号を作成し、かかる電気信号を各モータードライバ61D~64Dへ送信する。このようにすることで、それぞれの推力部61~64の出力調整が行われ、全体として振子運動を制御するように推力を発生させる。
次に、図6を用いて、荷物Lの地切後における荷物Lの振子運動を制御するための機能について説明する。
地面上に置かれた荷物Lを持ち上げる場合、ブーム31には徐々に荷物Lの重量が掛かるため、それに応じてブーム31の撓みが大きくなっていくこととなる(矢印K参照)。すると、荷物Lの鉛直上方にあったブーム31の先端部分がブーム31の倒伏方向に移動してしまい、結果として水平方向にズレが生じてしまう。そのため、荷物Lが持ち上がったと同時に動き出し、振子運動が始まるのである(矢印M参照)。
そこで、制御部7は、荷物Lの重量からブーム31の撓み量を算出する。そして、制御部7は、ブーム31の撓み量と荷物Lが持ち上がったと同時に動き出すであろう方向に基づいて電気信号を作成し、かかる電気信号を各モータードライバ61D~64Dへ送信する。このようにすることで、それぞれの推力部61~64の出力調整が行われ、ブーム31の撓みが大きくなって変位する方向に対して等しい方向に予めフック33を移動させておくことができるのである(矢印N参照)。
その後、制御部7は、荷物Lの変位速度に加え、荷物Lの形状や重量等の情報を利用して慣性力を算出する。そして、制御部7は、慣性力の方向と大きさに基づいて電気信号を作成し、かかる電気信号を各モータードライバ61D~64Dへ送信する。このようにすることで、それぞれの推力部61~64の出力調整(推力の調整)が行われ、全体として振子運動を制御するように推力を発生させる(矢印P参照)。
次に、図7及び図8を用いて、揺動制御装置4が機能を発揮する際の具体的な動作態様について説明する。
ここで、揺動制御装置4についてもう少し詳しく説明しておく。
揺動制御装置4は、フック33を中心に計四つの推力部6が等しい位相で取り付けられている。つまり、揺動制御装置4は、第一推力部61から第四推力部64が90度ごとに取り付けられている。
また、揺動制御装置4は、フック33を挟み込むように対をなす推力部6が互いに反対方向に推力を発生させる。つまり、揺動制御装置4は、第一推力部61と第三推力部63が互いに反対方向に推力を発生させ、第二推力部62と第四推力部64が互いに反対方向に推力を発生させる。
更に、揺動制御装置4は、一方の対をなす推力部6による推力と他方の対をなす推力部6による推力が互いに反対方向に回転力を発生させる。つまり、揺動制御装置4は、第一推力部61及び第三推力部63による推力と第二推力部62及び第四推力部64による推力が互いに反対方向に回転力を発生させる。
このような揺動制御装置4において、制御部7は、それぞれの推力部6を構成するプロペラ61P・62P・63P・64Pの目標回転速度を算出し、これらプロペラ61P・62P・63P・64Pの実回転速度を追従させる。ここでは、水平面に対して平行となるX-Y座標系を想定し、フック33のX方向への目標並進力をUx、フック33のY方向への目標並進力をUy、フック33を中心とする水平方向への目標回転力をUψ、と定義する。
目標並進力Ux・Uy並びに目標回転力Uψは、下記の数式1のように表される。なお、第一推力部61を構成するプロペラ61P・61Pの目標回転速度をω1、第二推力部62を構成するプロペラ62P・62Pの目標回転速度をω2、第三推力部63を構成するプロペラ63P・63Pの目標回転速度をω3、第四推力部64を構成するプロペラ64P・64Pの目標回転速度をω4としている。また、推力係数をb、力点半径をlとする。
Figure 2024023797000002
まず、制御部7は、目標並進力Uxに応じたプロペラ62P・64Pの目標回転速度を算出する。具体的には、第二推力部62を構成するプロペラ62P・62Pの目標回転速度をω2xyとし、第四推力部64を構成するプロペラ64P・64Pの目標回転速度をω4xyとして、下記の数式2及び数式3を用いて算出する。数式2は、想定のX-Y座標系における目標並進力Uxが「Ux≧0」のときを表し、数式3は、想定のX-Y座標系における目標並進力Uxが「Ux<0」のときを表している。
Figure 2024023797000003
Figure 2024023797000004
同時に、制御部7は、目標並進力Uyに応じたプロペラ61P・63Pの目標回転速度を算出する。具体的には、第一推力部61を構成するプロペラ61P・61Pの目標回転速度をω1xyとし、第三推力部63を構成するプロペラ63P・63Pの目標回転速度をω3xyとして、下記の数式4及び数式5を用いて算出する。数式4は、想定のX-Y座標系における目標並進力Uyが「Uy≧0」のときを表し、数式5は、想定のX-Y座標系における目標並進力Uyが「Uy<0」のときを表している。
Figure 2024023797000005
Figure 2024023797000006
ところで、プロペラ61P・62P・63P・64Pの回転速度差によって発生する回転力(揺動制御装置4の向きを変えようとする回転力)Tは、下記の数式6によって表される。
Figure 2024023797000007
その後、制御部7は、目標回転力Uψに応じたプロペラ61P・62P・63P・64Pの目標回転速度を算出する。具体的には、第一推力部61を構成するプロペラ61P・61Pの目標回転速度をω1ψとし、第二推力部62を構成するプロペラ62P・62Pの目標回転速度をω2ψとし、第三推力部63を構成するプロペラ63P・63Pの目標回転速度をω3ψとし、第四推力部64を構成するプロペラ64P・64Pの目標回転速度をω4ψとして、下記の数式7及び数式8を用いて算出する。数式7は、目標回転力Uψと回転力Tの関係が「Uψ-T≧0」のときを表し、数式8は、想定のX-Y座標系における目標並進力Uyが「Uψ-T<0」のときを表している。なお、目標並進力Ux・Uyを発生させない状況においては、目標回転速度ω2ψ2=目標回転速度ω4ψ2並びに目標回転速度ω1ψ2=目標回転速度ω3ψ2を満たすこととなる。
Figure 2024023797000008
Figure 2024023797000009
以上より、それぞれの推力部6を構成するプロペラ61P・62P・63P・64Pの目標回転速度ωi(i=1~4)は、下記の数式9のように算出される。
Figure 2024023797000010
このような算出方法によれば、フック33に対して並進力のみを付与する際には、計四つの推力部6(第一推力部61~第四推力部64)のうちの二つ又は三つの推力を利用する。例えば、図中のX-Y座標系の斜め45度である矢印T1へ並進力のみを付与する際には、第一推力部61と第二推力部62の推力を利用する(図7の(A)参照)。また、例えば、図中のX-Y座標系の斜め30度である矢印T2へ並進力のみを付与する際には、第一推力部61と第二推力部62の推力を利用し、かつ揺動制御装置4の向きが変わらないように第四推力部64のみ若しくは第二推力部62と第四推力部64の両方の推力を利用する(図7の(B)参照)。
加えて、このような算出方法によれば、フック33に対して回転力のみを付与する際には、計四つの推力部6(第一推力部61~第四推力部64)のうちの一つ又は二つの推力を利用する。例えば、図中のX-Y座標系において矢印R1へ回転力のみを付与する際には、第一推力部61又は第三推力部63のいずれか一方、若しくは第一推力部61と第三推力部63の両方の推力を利用する(図8の(A)参照)。また、例えば、図中のX-Y座標系において矢印R2へ回転力のみを付与する際には、第二推力部62又は第四推力部64のいずれか一方、若しくは第二推力部62と第四推力部64の両方の推力を利用する(図8の(B)参照)。
加えて、このような算出方法によれば、フック33に対して並進力と回転力を付与する際には、計四つの推力部6(第一推力部61~第四推力部64)のうちの最大三つの推力を利用する。例えば、図中のX-Y座標系の斜め30度である矢印T2へ並進力を付与しつつ矢印R1へ回転力を付与する際には、第一推力部61と第二推力部62の推力を利用し、かつ第三推力部63のみ若しくは第一推力部61と第三推力部63の両方の推力を利用する(図9の(A)参照)。また、例えば、図中のX-Y座標系の斜め30度である矢印T2へ並進力を付与しつつ矢印R2へ回転力を付与する際には、第一推力部61と第二推力部62の推力を利用し、かつ第四推力部64のみ若しくは第二推力部62と第四推力部64の両方の推力を利用する(図9の(B)参照)。
この点、かかる算出方法は、それぞれの推力部6(第一推力部61~第四推力部64)が互いに対向する一対のプロペラを有しており、一方のプロペラと他方のプロペラが反転してカウンタートルクを相殺する構成において見出したものである。しかし、かかる算出方法に拘らない場合は、図10の(A)のように、それぞれの推力部6(第一推力部61~第四推力部64)が一つのプロペラで構成されていてもよい。また、図10の(B)のように、それぞれの推力部6が一つの可変ピッチプロペラで構成されていてもよい。更に、図10の(C)のように、四つではなく三つの推力部6(第一推力部61~第三推力部63)を備え、それぞれの推力部6が別方向に推力を生じる二つのプロペラで構成されていてもよい。更に、図10の(D)のように、それぞれの推力部6(第一推力部61~第三推力部63)が一つの可変ピッチプロペラで構成されていてもよい。或いは、その他の構成であってもよい。
最後に、揺動制御装置4に適用された技術的思想とその効果についてまとめる。
揺動制御装置4は、フック33に取り付けられる複数の推力部6(第一推力部61~第四推力部64)と、フック33或いはフック33に吊り下げられた荷物Lの揺動運動を認識できる制御部7と、を備えている。そして、制御部7がそれぞれの推力部6の出力調整を行うことでフック33或いはフック33に吊り下げられた荷物Lの揺動運動を制御する。かかる揺動制御装置4によれば、荷物Lの揺動運動を制御でき、荷物Lを安定させた状態で搬送することが可能となる。また、フック33に荷物Lが吊り下げられていない状態であるときは、フック33の揺動運動を制御できる。
揺動制御装置4は、制御部7がフック33或いはフック33に吊り下げられた荷物Lの回転運動を認識する。そして、制御部7がそれぞれの推力部6(第一推力部61~第四推力部64)の出力調整を行うことでフック33或いはフック33に吊り下げられた荷物Lの回転運動を制御する。かかる揺動制御装置4によれば、荷物Lの回転運動を制御でき、荷物Lを安定させた状態で搬送することが可能となる。また、フック33に荷物Lが吊り下げられていない状態であるときは、フック33の回転運動を制御できる。
揺動制御装置4は、制御部7がフック33或いはフック33に吊り下げられた荷物Lの回転運動による慣性モーメントを算出する。そして、制御部7がそれぞれの推力部6(第一推力部61~第四推力部64)の出力調整を行うことで慣性モーメントに応じた推力を発生させる。かかる揺動制御装置4によれば、荷物Lの回転運動を素早くかつ正確に制御でき、荷物Lを安定させた状態で搬送することが可能となる。また、フック33に荷物Lが吊り下げられていない状態であるときは、フック33の回転運動を素早くかつ正確に制御できる。
揺動制御装置4は、制御部7がフック33或いはフック33に吊り下げられた荷物Lの振子運動を認識する。そして、制御部7がそれぞれの推力部6(第一推力部61~第四推力部64)の出力調整を行うことでフック33或いはフック33に吊り下げられた荷物Lの振子運動を制御する。かかる揺動制御装置4によれば、荷物Lの振子運動を制御でき、荷物Lを安定させた状態で搬送することが可能となる。また、フック33に荷物Lが吊り下げられていない状態であるときは、フック33の振子運動を制御できる。
揺動制御装置4は、制御部7がフック33或いはフック33に吊り下げられた荷物Lの振子運動による慣性力を算出する。そして、制御部7がそれぞれの推力部6(第一推力部61~第四推力部64)の出力調整を行うことで慣性力に応じた推力を発生させる。かかる揺動制御装置4によれば、荷物Lの振子運動を素早くかつ正確に制御でき、荷物Lを安定させた状態で搬送することが可能となる。また、フック33に荷物Lが吊り下げられていない状態であるときは、フック33の振子運動を素早くかつ正確に制御できる。
揺動制御装置4は、ワイヤロープ32を垂下するブーム31を備え、制御部7がブーム31の撓み量を算出するものとしている。そして、荷物Lを地切する際には、制御部7がそれぞれの推力部6(第一推力部61~第四推力部64)の出力調整を行うことでブーム31の撓みが大きくなって変位する方向に対して等しい方向にフック33を移動させる。かかる揺動制御装置4によれば、ブーム31に撓みが生じることに起因した荷物Lの振子運動を制御できる。
揺動制御装置4は、フック33を中心に計四つの推力部6(第一推力部61~第四推力部64)が等しい位相で取り付けられており、フック33を挟み込むように対をなす第一の推力部6(第一推力部61)と第三の推力部6(第三推力部63)が互いに反対方向に推力を発生させ、フック33を挟み込むように対をなす第二の推力部6(第二推力部62)と第四の推力部6(第四推力部64)が互いに反対方向に推力を発生させ、更に第一及び第三の推力部6(第一推力部61及び第三推力部63)による推力と第二及び第四の推力部6(第二推力部62及び第四推力部64)による推力が互いに反対方向に回転力を発生させるものとしている。そして、フック33に対して並進力と回転力を付与する際には、計四つの推力部6(第一推力部61~第四推力部64)のうちの最大三つの推力を利用する。かかる揺動制御装置4によれば、最小限の電力消費によって揺動運動(回転運動・振子運動)を制御できる。
1 クレーン
2 走行体
3 旋回体
31 ブーム
32 ワイヤロープ
33 フック
4 揺動制御装置
5 枠体部
6 推力部
61 第一推力部
61D モータードライバ
61M モーター
61P プロペラ
62 第二推力部
62D モータードライバ
62M モーター
62P プロペラ
63 第三推力部
63D モータードライバ
63M モーター
63P プロペラ
64 第四推力部
64D モータードライバ
64M モーター
64P プロペラ
7 制御部
L 荷物

Claims (2)

  1. ワイヤロープに吊られるフックを備え、
    前記フックに荷物を吊り下げた状態で当該荷物を搬送する揚重機の揺動制御装置であって、
    前記フックに取り付けられる複数の推力部と、
    前記フック或いは当該フックに吊り下げられた荷物の揺動運動を認識できる制御部と、を備え、
    前記制御部がそれぞれの前記推力部の出力調整を行うことで前記フック或いは当該フックに吊り下げられた荷物の揺動運動を制御し、
    前記推力部は前記フックのブロック部分に固定されて、前記ブロック部分に回転自在に支持されるプロペラを有しており、
    前記プロペラの回転軸方向は、前記ワイヤロープが延びる方向と側面視において直交しており、
    前記フックを中心に計四つの前記推力部が等しい位相で取り付けられており、
    前記フックを挟み込むように対をなす第一の前記推力部と第三の前記推力部が互いに反対方向に推力を発生させ、
    前記フックを挟み込むように対をなす第二の前記推力部と第四の前記推力部が互いに反対方向に推力を発生させ、
    更に第一及び第三の前記推力部による推力と第二及び第四の前記推力部による推力が互いに反対方向に回転力を発生させるものとし、
    前記フックに対して並進力と回転力を付与する際には、計四つの前記推力部のうちの最大三つの推力を利用する、ことを特徴とした揺動制御装置。
  2. ワイヤロープに吊られるフックを備え、
    前記フックに荷物を吊り下げた状態で当該荷物を搬送する揚重機の揺動制御装置であって、
    前記フックに取り付けられる三つの推力部と、
    前記フック或いは当該フックに吊り下げられた荷物の揺動運動を認識できる制御部と、を備え、
    前記制御部がそれぞれの前記推力部の出力調整を行うことで前記フック或いは当該フックに吊り下げられた荷物の揺動運動を制御し、
    前記推力部は前記フックのブロック部分に固定されて、前記ブロック部分に回転自在に支持されるプロペラを有しており、
    前記プロペラの回転軸方向は、前記ワイヤロープが延びる方向と側面視において直交している、ことを特徴とした揺動制御装置。
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