JP2024016473A - カチオン電着塗装方法 - Google Patents

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照朗 浅田
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勉 重永
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Abstract

【課題】本開示は、自動車足回り部品または自動車車体において、初期錆の発生を大きく抑制でき、さらに高い防錆性を有する塗膜を形成可能なカチオン電着塗装方法を提供する。【解決手段】溶接部を有する被塗物を、カチオン電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装を行い、被塗物上に析出電着塗膜を形成すること、並びに、上記析出電着塗膜を加熱硬化する加熱硬化工程を経て、上記被塗物上に硬化電着塗膜を形成すること、を有し、上記被塗物は、自動車足回り部品または自動車車体であり、上記カチオン電着塗料組成物は、アミン変性エポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)と、架橋樹脂微粒子(C)とを含み、上記析出電着塗膜の最低溶融粘度は12,000mPa・s以上25,000mPa・s以下である、カチオン電着塗装方法。【選択図】なし

Description

本開示は、カチオン電着塗装方法に関する。
自動車部品、例えば、自動車足回り部品は、自動車の安全性、耐久性にも大きく関係する部品である。このため、自動車足回り部品等は、走行中の跳ね石、海岸付近等の塩害、凍結防止剤、融雪剤等、様々な外的要因に対して高い防錆性を有する必要がある。
特許文献1は、自動車車体における塗料付着性、防錆性、耐熱性及び耐チッピング性の向上を目的とする自動車用塗料組成物を開示する。特許文献1に係る自動車用塗料組成物は、数平均分子量7100~8500、酸価15~20のアクリル樹脂と、数平均分子量7100~8500、エポキシ当量400~3000のアミン変性エポキシ樹脂とを結合剤とする塗料に対して、ワックス0.5~30重量%、アルミニウムペースト1.0~15重量%の一方又は両方を含有する。また、特許文献1は、この自動車用塗料組成物を、エアスプレー、エアレススプレー等を用いて塗装し、塗膜を形成することを開示する。
特開2001-31901号公報
しかし、特許文献1に係る発明は、電着塗装により形成される塗膜と比べて、防錆性が劣る傾向にある。また、例えば、複雑な形状を有する部品をエアスプレー等で塗装すると、塗膜のスケが生じるおそれがある。更に、特許文献1に係る塗料組成物を用いて形成した塗膜は、上述した外的要因に起因して、初期錆が発生するまでの期間が短いという問題を有している。
その上、特許文献1に係る発明であれば、自動車部品、特に、複雑な形状を有する自動車足回り部品等における防錆性を高めるには、複数回の塗装工程および乾燥工程を経ることで、厚い塗膜を形成する必要がある。
このため、作業工程が多く、経済的、環境的な面からも、より短期間で塗膜を形成することが望まれている。
上記のように、自動車部品、特に、自動車足回り部品等を被覆する塗膜に対して、初期錆の発生を抑制でき、高い防錆性を有することが要求されている。
さらに、自動車足回り部品等は複雑な形状を有しているため、このような部品においても、初期錆の発生を抑制でき、高い防錆性を有することが要求されている。
上記問題を鑑み、本開示は、初期錆の発生を大きく抑制でき、高い防錆性を有する塗膜を形成できる、自動車車体、特に自動車足回り部品用のカチオン電着塗装方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本開示は下記態様を提供する。
[1]
溶接部を有する被塗物を、カチオン電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装を行い、被塗物上に析出電着塗膜を形成すること、並びに、
上記析出電着塗膜を加熱硬化する加熱硬化工程を経て、上記被塗物上に硬化電着塗膜を形成すること、を有し、
上記被塗物は、自動車足回り部品または自動車車体であり、
上記カチオン電着塗料組成物は、アミン変性エポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)と、架橋樹脂微粒子(C)とを含み、
上記析出電着塗膜の最低溶融粘度は12,000mPa・s以上25,000mPa・s以下である、
カチオン電着塗装方法。
[2]
上記被塗物はさらにエッジ部を有する、[1]のカチオン電着塗装方法。
[3]
上記被塗物が有する上記溶接部は、溶接ビードと、スパッタと、スラグとからなる群から選択される少なくとも1つを有する、[1]または[2]のカチオン電着塗装方法。
[4]
上記カチオン電着塗料組成物における、上記架橋樹脂微粒子(C)の量は、アミン変性エポキシ樹脂(A)および硬化剤(B)の樹脂固形分100質量部に対して、10質量部を超え20質量部以下である、[1]~[3]のいずれかのカチオン電着塗装方法。
[5]
上記最低溶融粘度は、12,000mPa・s以上20,000mPa・s以下である、[1]~[4]のいずれかのカチオン電着塗装方法。
[6]
上記架橋樹脂微粒子(C)は、エチレン性不飽和結合を有するモノマーと、架橋性共重合モノマーとの共重合体である、[1]~[5]のいずれかのカチオン電着塗装方法。
[7]
上記硬化電着塗膜の平均膜厚は15μm以上60μm未満である、[1]~[6]のカチオン電着塗装方法。
[8]
上記溶接部はスパッタおよびスラグを有し、
上記溶接部およびエッジ部いずれからも2mmまたはそれ以上離れた点で測定した上記硬化電着塗膜の平均膜厚が、15μm以上60μm未満である、
[3]に記載のカチオン電着塗装方法。
本開示に係るカチオン電着塗装方法は、自動車足回り部品または自動車車体に対する初期錆の発生を大きく抑制できる。本発明のカチオン電着塗装方法は、更に高い防錆性を有するカチオン電着塗膜を形成できる。
その上、複雑な形状を有する自動車足回り部品または自動車車体であっても、本開示に係るカチオン電着塗装方法は、初期錆の発生を大きく抑制でき、さらに高い防錆性を有するカチオン電着塗膜を形成できる。
本開示に係るカチオン電着塗装方法を完成するに至った経緯を説明する。
自動車部品、例えば、自動車足回り部品は、要求される力学的特性及び耐久性を満たすために、通常、高強度材からなる鋼板等を相互に溶接して形成される。また、溶接により形成された自動車部品等の被塗物は、例えば、防錆性を向上させるために、塗料組成物で塗装され、塗膜が形成される。
ここで、塗膜が形成された自動車部品等において、溶接により形成される溶接部の周囲から、初期錆の発生が生じ得る。
通常、溶接部は、溶接ビードと、スパッタと、スラグとからなる群から選択される少なくとも1つを有する。溶接ビードは、高強度材からなる鋼板等と高い接合性を有する金属材料を主成分として含み得る。このため、例えば、自動車足回り部品を構成する鋼板等と密着性の高い電着塗料組成物を用いて、被塗物全体を電着塗装することにより、溶接ビードにおいては、良好に塗膜で被覆できる。
溶接部の溶接ビードの近傍には、スパッタと呼ばれる、溶接工程で発生する金属粒子が散在し得る。スパッタは、球状又は略球状であるので、その頂点を含む周辺部において、電着塗料組成物からなる塗膜の形成が困難である。このため、スパッタ近傍は、初期錆の発生の原因となる場合がある。
更に、溶接部の溶接ビードの近傍には、スラグと呼ばれる、溶接工程で発生するガラス質の成分が散在し得る。しかし、スラグはその材質上、電着塗料組成物で塗膜を形成できない、又は、ほとんど塗膜を形成できない。したがって、塗膜が形成されないスラグ又は塗膜の膜厚が極めて薄いスラグ近傍から、初期錆の発生の原因となる場合がある。
溶接部の他に、例えば、自動車足回り部品において電着塗装が困難な部分としてエッジ部がある。従来のカチオン電着塗装方法によれば、このようなエッジ部において、均一な塗膜を形成できないことがあり、初期錆の発生の原因となる場合がある。
更に、スラグ部での防錆性の向上を試みると、スパッタ部そしてエッジ部の防錆性が悪くなる傾向があり、その逆の態様でも同様のことが生じ得る。このように、溶接部を有する自動車足回り部品等の防錆性を向上させることを試みると、様々な部分でトレードオフの関係が生じており、溶接部を有する自動車足回り部品等の防錆性の向上、初期錆発生を抑制することは容易ではなかった。
このため、通常、自動車足回り部品等の部品全体の防錆性を向上させるために、防錆性を有する電着塗料組成物から形成される塗膜の膜厚を厚くする対策が取られている。しかし、膜厚を厚くすると、自動車足回り部品等に締結されるボルトの折れ、ゆるみ、締結不足などが生じる場合があり、自動車足回り部品等に要求される苛酷な物性を満たせなくなるおそれがある。
本発明者らは、このような問題について鋭意研究し、溶接部を有する自動車足回り部品の防錆性を向上させ、初期錆の発生を抑制できるカチオン電着塗装方法の開発を目標とした。
その結果、所定のカチオン電着塗料組成物を用い、更に、析出電着塗膜の最低溶融粘度を、所定の範囲内に設定し、硬化電着塗膜の膜厚を所定の範囲内にする、カチオン電着塗装方法によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
(カチオン電着塗装方法)
本開示に係るカチオン電着塗装方法は、
溶接部を有する被塗物を、カチオン電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装を行い、被塗物上に析出電着塗膜を形成すること、並びに、
上記析出電着塗膜を加熱硬化する加熱硬化工程を経て、上記被塗物上に硬化電着塗膜を形成すること、を有し、
上記被塗物は、自動車足回り部品または自動車車体であり、
上記カチオン電着塗料組成物は、アミン変性エポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)と、架橋樹脂微粒子(C)とを含み、
上記析出電着塗膜の最低溶融粘度は12,000mPa・s以上25,000mPa・s以下である、
カチオン電着塗装方法である。尚、本発明は、自動車足回り部品での問題を検討したものであるが、自動車部品を含む自動車車体全体への使用を必ずしも制限するものではないので、自動車車体を含めた被塗物に適用できる。以下、単に「自動車足回り部品」と述べた場合でも、自動車車体全体への使用を排除するものではない。
本開示に係るカチオン電着塗装方法は、溶接部を有する被塗物、すなわち、自動車足回り部品または自動車車体を、カチオン電着塗料組成物中に浸漬し、上記被塗物に電着塗装を行うことを含む。
本開示に係るカチオン電着塗装方法は、被塗物をカチオン電着塗料組成物中に浸漬する前工程として、例えば、被塗物を、アルカリ脱脂工程、水洗工程、化成処理工程からなる群から選択される少なくとも1つの工程に付してもよい。これら各工程は、既知の工程を採用できる。また、化成処理に用いる化成処理液は、既知のものを使用できる。
化成処理液は、pHが1.5以上6.5以下であってよく、ある態様において、pHは2以上6.5以下、例えば、pHは2.5以上6.0以下である。pHがこの様な範囲内であることにより、膜厚が均一で、被塗物との密着性の高い化成塗膜を形成できる。
化成処理における処理温度は、20℃以上70℃以下であってよく、例えば、30℃以上60℃以下である。化成処理における化成時間は、5秒以上1200秒以下であってよく、例えば、30秒以上120秒以下である。
化成処理方法は特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法、ロールコート法等を挙げることができる。
このようにして得られる化成塗膜は、0.1mg/m2以上500mg/m2以下の範囲内であることができる。
(電着塗装)
本開示におけるカチオン電着塗装方法は、溶接部を有する被塗物を、カチオン電着塗料組成物中に浸漬し、被塗物に電着塗装を行うことを含む。この工程により、被塗物に電着塗膜を析出させることができる。
例えば、本開示に係る電着塗装は、本開示に係るカチオン電着塗料組成物中に、溶接部を有する被塗物を浸漬し、これを陰極として50~450Vの電圧を所定時間印加することを含んでよい。電圧の印加時間は、電着条件により異なるが、例えば、2~4分である。硬化電着塗膜の平均膜厚が好ましくは15μm以上60μm未満となるよう、被塗物上に析出電着塗膜を形成する。
本開示におけるカチオン電着塗装方法は、電着塗装により析出した電着塗膜(析出電着塗膜)を加熱硬化する加熱硬化工程を経て、上記被塗物上に硬化電着塗膜を形成することを有する。
例えば、本開示におけるカチオン電着塗装方法は、溶接部を有する被塗物を、カチオン電着塗料組成物中に浸漬し、被塗物に電着塗装を施し、被塗物上に析出電着塗膜(未硬化の電着塗膜ともいう)を形成し、必要に応じて水洗した後、加熱硬化工程を行い、硬化電着塗膜を形成する。
本開示におけるカチオン電着塗装方法において、被塗物上に形成された析出電着塗膜の最低溶融粘度は、12,000mPa・s以上25,000mPa・s以下である。カチオン電着塗料組成物を加熱硬化する加熱硬化工程において、被塗物上に形成された析出電着塗膜の最低溶融粘度がこのような範囲内であることにより、自動車部品、特に自動車足回り部品において、溶接により形成される溶接部の周囲から発生し得る初期錆の発生期間を大きく延ばすことができる。例えば、市販されている自動車部品用の電着塗料組成物と比べて、1.05倍以上2倍以下程度の範囲で、初期錆の発生期間を延長できる。
本発明に係る所定の電着塗料組成物を用い、かつ、被塗物上に形成された析出電着塗膜の最低溶融粘度を本開示の範囲内とすることにより、溶接部に含まれ得る、溶接ビードと、スパッタと、スラグのいずれの部分においても、良好に防錆性を発現させることができる。
更に、本発明に係る所定の電着塗料組成物を用い、かつ、被塗物上に形成された析出電着塗膜の最低溶融粘度を本開示の範囲内とすることにより、自動車足回り部品における、エッジ部等、塗膜の形成が困難とされてきた部分に対しても、良好に防錆性を発現させることができる。
このように、本開示に係るカチオン電着塗装方法によれば、被塗物に対する密着性が強い塗膜を形成でき、防錆性を高めることができる。また、例えば、塗膜のスケが生じることを抑制できるので、上述した塩害等による初期錆の発生についても、大きく抑制でき、初期錆の発生までの期間を長くすることができる。
その上、複雑な形状を有する自動車足回り部品であっても、本発明に係る電着塗料組成物を用いることにより、少なくとも1回の塗装工程を得ることにより、所望の塗膜を形成できる。よって、作業工程を少なくでき、経済的、環境的な面からの負担も軽減できる。
より具体的には、溶接ビード部分において、その表面形状に沿って、より密着性の高い塗膜を形成できる。
例えば、溶接部が有し得るスパッタは、球状又は略球状であり、従来のカチオン電着塗装方法では、塗膜の形成が不十分、例えば、塗膜のスケが生じることが多々生じていた。
これに対して、本開示に係るカチオン電着塗装方法であれば、スパッタにおいても、密着性に優れた塗膜を形成できる。例えば、球状又は略球状の頂点部分、側面においても、塗膜のスケを抑制でき、初期錆の発生を大きく抑制できる。
更に、通常、ガラス質などの材料を多く含むスラグにおいても、本開示に係るカチオン電着塗装方法であれば、塗膜スケ等の問題が生じることがなく、防錆性の発現に必要とされる塗膜を形成することができる。その上、スラグ周辺においても密着性に優れており、初期錆の発生を大きく抑制できる。
したがって、本開示に係るカチオン電着塗装方法であれば、溶接部における初期錆の発生を大きく抑制でき、その上、溶接部以外の領域においても優れた防錆性を有することができる。
また、溶接部(溶接ビード、スラグ及びスパッタからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る)及びエッジ部における、腐食因子の透過を抑制でき、錆進展速度の制御が可能である。
自動車足回り部品や自動車車体等の被塗物は、溶接部の他に、塗膜の形成が困難な部分としてエッジ部を有しており、本開示に係るカチオン電着塗装方法であれば、エッジ部においても、防錆性に優れた塗膜を形成できる。
特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、本開示に係る所定の塗料組成物は、所定の最低溶融粘度を有することにより、エッジ部における収縮応力を良好に保持でき、防錆性を向上できるものと考えられる。
加えて、従来のカチオン電着塗装方法では解決できなかった、溶接部/スラグ部、スパッタ部/エッジ部において生じた耐食性向上のための背反関係を、本開示に係るカチオン電着塗装方法は解決することができた。
このような観点においても、本開示に係るカチオン電着塗装方法は、従来は困難とされてきた、溶接部における塗膜形成を十分に行うことができ、防錆性の向上及び初期錆の発生を大きく抑制できる。さらに、本開示に係るカチオン電着塗装方法は、優れた防錆性だけでなく、耐薬品性、耐チッピング性及び耐熱性にも優れた塗膜を形成できる。
ある態様において、被塗物上に形成された析出電着塗膜の最低溶融粘度は、12,000mPa・s以上22,000mPa・s以下であり、例えば、12,000mPa・s以上20,000mPa・s以下である。
別の態様において、被塗物上に形成された析出電着塗膜の最低溶融粘度は、12,000mPa・s以上19,000mPa・s以下であり、例えば、12,000mPa・s以上18,000mPa・s以下である。
本開示に係る所定のカチオン電着塗料組成物における析出電着塗膜の最低溶融粘度をこのような範囲内で有する、本開示のカチオン電着塗装方法であれば、上述した効果を有することができる。例えば、溶接部における防錆性を更に向上でき、初期錆の発生をより大きく抑制できる。さらに、本開示に係るカチオン電着塗装方法は、優れた防錆性だけでなく、耐薬品性、耐チッピング性及び耐熱性にもより優れた塗膜を形成できる。
本開示において、最低溶融粘度は、カチオン電着塗料組成物の電着塗装によって析出した電着塗膜において、100℃以上160℃以下における最低粘度であり、例えば、ソリキッドメーター MR300(UBM社製)を用いて測定できる。例えば、コーンプレート(直径40mm)を使用し、温度範囲(例えば25℃~200℃)の条件で、測定される。
カチオン電着塗料組成物を加熱硬化する加熱硬化工程において、加熱硬化温度は、例えば、120℃以上260℃以下であり、ある態様においては、130℃以上220℃以下である。別の態様において、加熱硬化温度は、140℃以上220℃以下である。
このような加熱硬化温度で、塗料組成物を焼付け硬化する時間は、例えば、10分以上30分以下である。
上記硬化電着塗膜の平均膜厚は好ましくは、15μm以上60μm未満である。
本開示においては、特定のカチオン電着塗料組成物を用いて硬化電着塗膜を形成し、そして、加熱硬化工程を経て形成された硬化電着塗膜の平均膜厚は、具体的には15μm以上60μm未満である。本開示においては、上記構成によって、良好な防錆性が得られる利点がある。これにより、防錆性を高めることができると共に、自動車足回り部品等に締結されるボルトの折れ、ゆるみ、締結不足などを抑制できる。従って、自動車足回り部品の物性不良を抑制でき、耐久性、信頼性をより高くできる。
また、本開示のカチオン電着塗装方法であれば、平均膜厚がこのような範囲内でありながらも、初期錆を抑制でき、優れた防錆性を有する。また、わきなどの塗膜不良を抑制できる。
加熱硬化工程を経て形成された塗膜の平均膜厚は、例えば、15μm以上60μm未満であり、より具体的には25μm以上45μm未満であり、ある態様においては、25μm以上40μm以下である。平均膜厚の測定は、例えば、電磁膜厚計やビデオマイクロスコープによる断面観察により行うことができる。
本発明の方法においては、本開示における特定のカチオン電着塗料組成物を用いて、具体的には平均膜厚が15μm以上60μm未満である硬化電着塗膜を形成する。これにより、例えば、一般的に電着塗膜が析出し難いスパッタ、スラグ部位においても、耐食性が発揮される程度の膜厚(約7μmまたはそれ以上)を確保することができ、良好な耐食性が得られることとなる利点がある。
従来のカチオン電着塗装方法においては、上述のように、スパッタ及びスラグにおける塗膜形成は、例えば、塗膜のスケが生じる等、不十分であることが多かった。このため、従来のカチオン電着塗装方法の場合、スパッタ及びスラグの部分の膜の膜厚が0~5μm未満程度と不十分であり、初期錆の発生を抑制できない場合があった。
上記技術的課題を解消する手法の1つとして、例えば、カチオン電着塗装において形成される膜厚を厚くして、スパッタ及びスラグの部分にも電着塗膜を十分に析出させることによって、初期錆の発生の抑制する方法が考えられる。しかしながら、析出する電着塗膜の膜厚を単に厚くするのみでは、ネジ部の締結性が悪い等、足回り部品の物性不良を生じる場合があった。
これに対して、本開示に係るカチオン電着塗装方法においては、特定のカチオン電着塗料組成物を用いて、そして、硬化電着塗膜の平均膜厚を具体的に15μm以上60μm未満とすることによって、スパッタ部及びスラグ部においても防錆性が発現される程度の電着塗膜を析出させることができる。これにより、優れた防錆性、及び初期錆の抑制が可能となり、その上、スパッタ部及びスラグ部におけるネジ部の締結性が良好であり、足回り部品の物性不良を回避することができる。
例えば、溶接部およびエッジ部を有する被塗物であって溶接部がスパッタおよびスラグを有する被塗物に対して、本開示におけるカチオン電着塗装方法により硬化電着塗膜を形成した場合において、上記溶接部およびエッジ部いずれからも2mmまたはそれ以上離れた点で測定した上記硬化電着塗膜の平均膜厚が15μm以上60μm未満である態様が挙げられる。
このように、本開示に係るカチオン電着塗装方法であれば、溶接部を有する被塗物においても防錆性発現に必要となる膜厚を確保することができるため、優れた防錆性を有し、初期錆の発生を抑制できる。また、スパッタ等のように球状の表面形状を有する被塗物であっても、本開示に係るカチオン電着塗装方法であれば、防錆性を確保することができる。その上、スラグ部のようなガラス質部を有する被塗物においても、十分な防錆性を確保することができる。
このように、本開示のカチオン電着塗装方法であれば、スパッタ、スラグ及びエッジの端部に近い領域においても電着塗膜を形成することができ、防錆性に優れ、初期錆の発生を大きく抑制できる。
なお、スパッタ、スラグ及びエッジの端部は、当該技術分野において通常行われる方法により導くことができ、エッジの端部からの距離も、通常行われる方法に従い算出できる。
本開示において、被塗物に形成された硬化電着塗膜の耐食性評価は、JIS Z 2371(2000)に準拠した塩水噴霧試験(35℃×168時間)によって行ってよい。例えば膜厚15μm以上60μm未満の硬化電着塗膜を、塩水噴霧試験した場合において、被塗物に形成された硬化電着塗膜の、エッジ部における錆発生個数が、エッジ部1cmあたり例えば5個/cm未満である場合は、エッジ部における耐食性(防錆性)に優れた塗膜であるということができる。
更に、塩水噴霧試験した場合において、被塗物に形成された硬化電着塗膜の、溶接部における錆発生個数が、溶接部1cmあたり例えば5個/cm未満である場合は、溶接部における耐食性(防錆性)に優れた塗膜であるということができる。
本開示におけるカチオン電着塗装方法によると、エッジ部及び溶接部を共に有する被塗物に対しても、耐食性(防錆性)に優れた塗膜が形成される。
なお、JIS Z 2371(2000)は、ISO 9227に対応する日本工業規格である。
別の態様において、本開示に係るカチオン電着塗装方法により得られた塗膜の耐食性に関する評価は、例えば、特開2016-50915号公報に記載の評価方法により行ってもよい。
この評価方法によると、(塗膜形成されていない)被塗物と、本開示に係る方法で形成した塗膜表面との間に電圧を印加し、上記塗膜が絶縁破壊するときの電圧値に基づいて、被塗物の耐食性を評価できる。この評価方法を用いることで、溶接部、例えば、溶接ビード、スパッタおよびスラグからなる群から選択される少なくとも1つを有する溶接部においても、耐食性を効率よく測定できる。同様に、エッジ部における耐食性も効率的に評価できる。
上述した特開2016-50915号公報に記載の評価方法は、例えば、以下の方法により行える。
まず、電着塗膜を形成した被塗物の電着塗膜表面上に、ゴムマット等を介して容器を設置し、該容器内に所定の電解質溶液を充填する。この電解質溶液内に、電源装置に接続された電極を浸漬させ、電着塗膜表面上方に非接触状態で保持する。
更に、電源装置の他方の配線を、被塗物における、電着塗膜で被覆されていない被塗物面に接続させる。なお、被塗物は、化成処理されたものであってもよい。
この状態において、情報処理端末の制御のもと、電源装置により電極と電着塗膜で被覆されていない被塗物面との間に電圧が印加される。このとき、電源装置により印加される電圧は、時間に対して徐々に増大してもよく、すなわち、電圧を漸増させながら印加してもよい。これにより、絶縁電圧をより精度良く検出することができる。印加電圧の掃引速度は、例えば、0.1~10V/sの範囲であり、ある態様においては0.5~2V/sである。
電源装置は、上記印加電圧に対して、電極と、電着塗膜で被覆されていない被塗物面との間に流れる電流を検出する。この方法によれば、例えば、両者間の電流は印加電圧を上昇させても、所定の時刻(t1)において所定の電圧値(V1)となるまではほとんど流れない。しかし、電圧値(V1)を超えると電流量が急激に増加し、電圧値V2(時刻t2)において電流量は閾値(A1)に到達する。
これは、電圧値V1に至るまでは塗膜における腐食因子の遮断性能が維持されており、電流量が抑えられているものと考えられる。一方、印加電圧の上昇が塗膜への腐食因子の浸透を助ける、もしくは塗膜が徐々に破壊され、腐食因子としての電解質溶液が塗膜内部へ徐々に浸透し、やがて電着塗膜で被覆されていない被塗物面の表面に到達したことにより、急激に電流量が増加することを意味するものと考えられる。換言すると、電圧の印加に伴い腐食因子の塗膜への浸透が促され、腐食因子が、電着塗膜で被覆されていない被塗物面の表面に到達したことにより、塗膜は絶縁破壊され、その遮断性能は失われたと考えられる。
その後、電流量が閾値A1に達したときの電圧値V2を絶縁電圧とすると、絶縁電圧V2となる時間t2は、腐食因子が電着塗膜で被覆されていない被塗物面に到達するまでの期間、すなわち電着塗膜で被覆されていない被塗物面の腐食抑制期間に対応すると考えられる。この方法を用いることで、腐食促進試験により塗装鋼板の腐食抑制期間を測定する代わりに、塗膜の絶縁電圧V2を測定することにより、塗装鋼板の耐食性を評価することができる。
このように、特開2016-50915号公報に記載の評価方法は、電着塗膜を形成した被塗物における、電着塗膜で被覆されていない被塗物面と、塗膜の表面との間に電圧を増大させながら印加し、塗膜が絶縁破壊するときの電圧値、すなわち電源装置により検出された電流量が閾値A1に到達したときの絶縁電圧V2を求めることにより、この絶縁電圧V2に基づいて上記塗膜の耐食性を評価できる。
同構成によれば、電解質溶液の存在下、電着塗膜を形成した被塗物に電圧を印加することにより、腐食因子としての電解質溶液の塗膜への浸透を促すことができる。そして、腐食因子が電着塗膜で被覆されていない被塗物面に到達したときの電圧値、すなわち塗膜が絶縁破壊するときの絶縁電圧V2を測定すれば、この絶縁電圧V2は上記腐食抑制期間と相関関係があるため、上記腐食抑制期間という観点から電着塗膜を形成した被塗物の耐食性、すなわち、本発明に係る電着塗膜の耐食性を評価できる。これにより、電着塗膜を形成した被塗物の耐食性を腐食促進試験により評価する必要が無く、電着塗膜で被覆されていない被塗物面の種類、塗膜の構成材料、膜厚、及び焼付条件等の条件出しや品質管理、工程管理等の面において本方法を活用することができる。
なお、電流量の閾値A1は、急激な電流量の増加を検出できる程度に設定されていればよく、例えば0.5mA以上であることが好ましい。また、より好ましくは、1~50mA、特に好ましくは、5~15mAである。
さらに、上記測定に際し、試験温度は10~40℃において一定に保持されていることが好ましい。また、より好ましくは、20~30℃、特に好ましくは、23~27℃である。
また、電着塗膜を形成した被塗物の耐食性として、予め実験的に求めておいた電着塗膜を形成した被塗物の上記腐食抑制期間と上記絶縁電圧V2との関係に基づいて、試験片の絶縁電圧V2の実測値から当該試験片の腐食抑制期間を求めることが好ましい。
例えば、参照データとして、膜厚の異なる、電着塗膜を形成した被塗物について、予め腐食促進試験により腐食抑制期間を求めるとともに絶縁電圧V2を測定して両者の相関関係を求めておき、焼付条件等の異なる、電着塗膜を形成した被塗物(試験片)の絶縁電圧V2の実測値から、上記相関関係に基づいて当該試験片の腐食抑制期間を求め、試験片上に形成された塗膜の膜質等を評価できる。
これにより、電着塗膜で被覆されていない被塗物面の種類、塗膜の構成材料、膜厚、及び焼付条件等の異なる試験片に対して、より正確且つ定量的に電着塗膜を形成した被塗物の耐食性を評価できる。
(カチオン電着塗料組成物)
本開示のカチオン電着塗装方法におけるカチオン電着塗料組成物は、アミン変性エポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)と、架橋樹脂微粒子(C)とを含む。
これら所定の成分を有するカチオン電着塗料組成物を用いる、本発明に係るカチオン電着塗装方法であれば、自動車足回り部品または自動車車体において、初期錆の発生を大きく抑制でき、さらに高い防錆性を有する塗膜を形成できる。
(アミン変性エポキシ樹脂(A))
アミン変性エポキシ樹脂(A)は、電着塗膜を構成する塗膜形成樹脂である。アミン変性エポキシ樹脂(A)として、樹脂骨格中のオキシラン環を有機アミン化合物で変性して得られるカチオン変性エポキシ樹脂が好ましい。一般にカチオン変性エポキシ樹脂は、出発原料樹脂分子内のオキシラン環を1級アミン、2級アミンあるいは3級アミンおよび/またはその酸塩などのアミン類との反応によって開環して調製される。出発原料樹脂の典型例は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多環式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。また他の出発原料樹脂の例として、特開平5-306327号公報に記載のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、ジイソシアネート化合物、またはジイソシアネート化合物のイソシアネート基をメタノール、エタノールなどの低級アルコールでブロックして得られたビスウレタン化合物と、エピクロルヒドリンとの反応によって調製することができる。
上記出発原料樹脂は、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、2官能性のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ビスフェノール類、2塩基性カルボン酸などにより鎖延長して用いることができる。特にビスフェノール類は、アミン類によるオキシラン環の開環反応時に用いて、鎖延長してもよい。
また同じく、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、分子量またはアミン当量の調節、熱フロー性の改良などを目的として、一部のオキシラン環に対して2-エチルヘキサノール、ノニルフェノール、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテルなどのモノヒドロキシ化合物、オクチル酸などのモノカルボン酸化合物を付加して用いることもできる。
オキシラン環を開環し、アミノ基を導入する際に使用し得るアミン類の例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミンなどの1級アミン、2級アミンまたは3級アミンおよび/もしくはその酸塩を挙げることができる。また、アミノエチルエタノールアミンメチルイソブチルケチミンなどのケチミンブロック1級アミノ基含有2級アミン、ジエチレントリアミンジケチミンも使用することができる。これらのアミン類は、全てのオキシラン環を開環させるために、オキシラン環に対して少なくとも当量で反応させる必要がある。
本開示において、アミン変性エポキシ樹脂(A)の数平均分子量は、1,000~5,000の範囲内である。数平均分子量が1,000以上であることにより、得られる硬化電着塗膜の耐溶剤性および防錆性などの物性が良好となる。一方で、数平均分子量が5,000以下であることにより、アミン変性エポキシ樹脂の粘度調整が容易となって円滑な合成が可能となり、また、得られたアミン変性エポキシ樹脂(A)の乳化分散の取扱いが容易になる。ある態様において、アミン変性エポキシ樹脂(A)の数平均分子量は、1,600~3,200の範囲である。
なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。
アミン変性エポキシ樹脂(A)のアミン価は、例えば、20~100mgKOH/gの範囲内である。アミン変性エポキシ樹脂(A)のアミン価が20mgKOH/g以上であることにより、電着塗料組成物中におけるアミン変性エポキシ樹脂(A)の乳化分散安定性が良好となる。一方で、アミン価が100mgKOH/g以下であることにより、硬化電着塗膜中のアミノ基の量が適正となり、塗膜の耐水性を低下させるおそれがない。ある態様において、アミン変性エポキシ樹脂(A)のアミン価は、20~80mgKOH/gの範囲内である。
アミン変性エポキシ樹脂(A)の水酸基価は、例えば、50~400mgKOH/gの範囲内である。水酸基価が50mgKOH/g以上であることにより、硬化電着塗膜において硬化が良好となる。一方で、水酸基価が400mgKOH/g以下であることにより、硬化電着塗膜中に残存する水酸基の量が適正となり、塗膜の耐水性を低下させるおそれがない。ある態様において、アミン変性エポキシ樹脂(A)の水酸基価は、100~300mgKOH/gの範囲内であるのがより好ましい。
本開示に係るカチオン電着塗料組成物において、数平均分子量が1,000~5,000であり、アミン価が20~100mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が50~400mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂(A)を用いることによって、被塗物に優れた防錆性を付与できる。
アミン変性エポキシ樹脂(A)は、必要に応じて、アミン価および/または水酸基価の異なるアミン変性エポキシ樹脂を併用してもよい。2種以上の異なるアミン価、水酸基価のアミン変性エポキシ樹脂を併用する場合は、使用するアミン変性エポキシ樹脂の質量比に基づいて算出する平均アミン価および平均水酸基価が、上記の数値範囲であるのが好ましい。また、併用するアミン変性エポキシ樹脂(A)としては、アミン価が20~50mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が50~300mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂と、アミン価が50~200mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が200~500mgKOH/gであるアミン変性エポキシ樹脂との併用が好ましい。このような組合せを用いると、エマルションのコア部がより疎水となりシェル部が親水となるため優れた耐食性を付与することができるという利点がある。
本開示に係るカチオン電着塗料組成物は、必要に応じて、アミン変性エポキシ樹脂(A)に加えて、アミノ基含有アクリル樹脂、アミノ基含有ポリエステル樹脂などを含んでもよい。
(硬化剤(B))
本開示に係るカチオン電着塗料組成物中に含まれる硬化剤(B)は、加熱条件下においてアミン変性エポキシ樹脂(A)と硬化反応する塗膜形成樹脂を使用できる。硬化剤(B)として、メラミン樹脂またはブロックイソシアネート硬化剤が好適に用いられる。硬化剤(B)として好適に用いることができるブロックイソシアネート硬化剤は、ポリイソシアネートを、封止剤でブロック化することによって調製することができる。
ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などの脂環式ポリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレットおよび/またはイソシアヌレート変性物など);が挙げられる。
封止剤の例としては、n-ブタノール、n-ヘキシルアルコール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの一価のアルキル(または芳香族)アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルなどのセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノールなどのポリエーテル型両末端ジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどのジオール類と、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸などのジカルボン酸類から得られるポリエステル型両末端ポリオール類;パラ-t-ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;およびε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムに代表されるラクタム類が好ましく用いられる。
ブロックイソシアネート硬化剤のブロック化率は100%であるのが好ましい。これにより、電着塗料組成物の貯蔵安定性が良好になるという利点がある。
ブロックイソシアネート硬化剤は、脂肪族ジイソシアネートを封止剤でブロック化することによって調製された硬化剤と、芳香族ジイソシアネートを封止剤でブロック化することによって調製された硬化剤とを併用することが好ましい。
ブロックイソシアネート硬化剤は、アミン変性エポキシ樹脂(A)の1級アミンと優先的に反応し、さらに水酸基と反応して硬化する。
メラミン樹脂として、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとを反応させて得られる部分または完全メチロール化メラミン樹脂、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をアルコール成分で部分的にまたは完全にエーテル化して得られる部分または完全アルキルエーテル型メラミン樹脂、イミノ基含有型メラミン樹脂、及びこれらの混合型メラミン樹脂が挙げられる。ここで、アルキルエーテル型メラミン樹脂としては、例えば、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル/ブチル混合アルキル型メラミン樹脂などが挙げられる。
硬化剤として、フェノール樹脂などの有機硬化剤、シランカップリング剤、金属硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化剤など、上記メラミン樹脂および/またはブロックイソシアネート硬化剤と併用してもよい。
(架橋樹脂微粒子(C))
本開示に係るカチオン電着塗料組成物は、架橋樹脂微粒子(C)を含む。本開示で用いる架橋樹脂微粒子(C)は、例えば、エチレン性不飽和結合を有するモノマーと、架橋性共重合モノマーとを公知の方法により、水性媒体中で乳化重合することによって得られる共重合体であってよい。乳化重合は公知の乳化剤および/または分散剤を用いるのが好ましい。例えば、架橋樹脂微粒子(C)は、艶消し剤及び/又はつきまわり性向上剤としても使用できる。
架橋樹脂微粒子(C)の製造に用いることのできるエチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルや、これと共重合し得るエチレン性不飽和結合を有する他のモノマー、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどがある。これらモノマーは二種類以上用いてもよい。
架橋性共重合モノマーとしては、分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有するモノマーおよび/または相互に反応し得る基をそれぞれ担持する2種のエチレン性不飽和基含有モノマーを含む。
分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールの重合性不飽和モノカルボン酸エステル、多塩基酸の重合性不飽和アルコールエステル、および2個以上のビニル基で置換された芳香族化合物などがあり、それらの例としては以下のような化合物がある。
エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールアリロキシジメタクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレ-ト、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジメタクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリメタクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパンジアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパンジメタクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリメタクリレート、トリアクリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、トリアクリルトリメリテート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレートおよびジビニルベンゼン。
さらに架橋目的のモノマーとして分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに、あるいは所望によりそれらと共に、相互に反応し得る基をそれぞれ担持する2種のエチレン性不飽和基を有するモノマーを使用することもできる。例えばグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等のグリシジル基含有エチレン性不飽和結合を有するモノマーと、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有エチレン性不飽和結合を有するモノマー;2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、アリルアルコール、メタアリルアルコールなどのヒドロキシル基含有エチレン性不飽和結合を有するモノマーと、ビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナートなどのイソシアナート基を有するエチレン性不飽和結合を有するモノマーなどがあげられる。しかしながらこれら以外にも相互に反応し得る基を各々担持する任意の組合わせの2種のエチレン性不飽和結合を有するモノマーを用いることができる。
架橋樹脂微粒子(C)を構成するエチレン性不飽和結合を有するモノマーは、硬化剤と反応し得る官能基を有するモノマーを含んでいてもよく、その例としては、カルボキシル基含有モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などがあり、ヒドロキシル基含有モノマー、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、アリルアルコール、メタクリルアルコールや含窒素系としてアクリル酸アミドやメタクリル酸アミドなどがある。
カチオン電着塗料組成物における、架橋樹脂微粒子(C)の量は、アミン変性エポキシ樹脂(A)および硬化剤(B)の樹脂固形分100質量部に対して、例えば、12質量部以上15質量部以下であるのがより好ましく、13質量部以上15質量部以下であるのが更に好ましい。本開示におけるカチオン電着塗料組成物において、例えば架橋樹脂微粒子(C)の量を上記範囲に調整することによって、析出電着塗膜の最低溶融粘度の範囲を好適な範囲に調整することができる。
また、架橋樹脂微粒子(C)の量が所定の範囲内であることにより、本開示に係る塗料組成物は、溶接ビードとスパッタとスラグとなる群から選択される少なくとも1つを有する溶接部、及びエッジ部等において、塗膜スケの無い良好な塗膜を形成できる。
例えば、1回の電着塗装及び加熱硬化を経て塗膜を形成する場合であっても、被塗物の溶接部及びエッジにおいて、塗膜のスケが生じることを抑制できる。更に、電着塗装と加熱硬化とを繰り返すことなく、本開示に係る範囲内の膜厚を有することができる。したがって、効率的に、優れた防錆性を有し、かつ、初期錆の発生を抑制できる塗膜を形成できる。更に、少ない塗装工程で良好に塗膜形成できるので、環境負荷も抑制できる。
本開示において、アミン変性エポキシ樹脂(A)および硬化剤(B)の樹脂固形分100質量部に対する、架橋樹脂微粒子(C)の量は、上記範囲内であり、多量の架橋樹脂微粒子(C)を含むことができる。このように、多量の架橋樹脂微粒子(C)を含むことにより、スラグおよびスパッタのうちの少なくとも1つを有する溶接部においても、より優れた防錆性を有し、かつ、初期錆の発生をより効果的に抑制できる塗膜を形成できる。
(顔料分散ペースト)
本開示に係るカチオン電着塗料組成物は、必要に応じて顔料分散ペーストを含んでもよい。顔料分散ペーストは、一般に顔料分散樹脂および顔料を含む。
(顔料分散樹脂)
顔料分散樹脂は、顔料を分散させるための樹脂であり、例えば、水性媒体中に分散されて使用される。顔料分散樹脂として、4級アンモニウム基、3級スルホニウム基および1級アミン基から選択される少なくとも1種またはそれ以上を有する変性エポキシ樹脂などの、カチオン基を有する顔料分散樹脂を用いることができる。水性溶媒としてはイオン交換水または少量のアルコール類を含む水などを用いることができる。
(顔料)
顔料は、電着塗料組成物において一般的に用いられる顔料である。顔料として、例えば、通常使用される無機顔料および有機顔料、例えば、チタンホワイト(二酸化チタン)、カーボンブラックおよびベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、トリポリリン酸アルミニウム、およびリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料など、が挙げられる。
(被塗物)
本開示における被塗物は、自動車足回り部品または自動車車体である。足回り部品は、特に限定されず、例えば、サスペンションアーム、サスペンションメンバー、クロスメンバ、トーションビーム、トレールリンク、ロアアーム、ステアリングナックル等が挙げられる。これらを構成する部品も、本発明における被塗物に含まれる。
被塗物である自動車足回り部品または自動車車体は、通電可能な種々の材料から形成される。例えば、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛-鉄合金系めっき鋼板、亜鉛-マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム-シリコン合金系めっき鋼板、錫系めっき鋼板などが挙げられる。
本開示に係る被塗物は、溶接部を有する。ある態様において、溶接部は、溶接ビードと、スパッタと、スラグとからなる群から選択される少なくとも1つを有する。
溶接ビードは、被塗物を形成する材料に対して高い接合性を有する材料を含むことが好ましい。
溶接部の溶接ビードの近傍には、スパッタと呼ばれる、溶接工程で発生する金属粒子が散在し得る。スパッタは、通常、球状又は略球状である。スパッタのサイズは、特に限定されないが、例えば直径2mm以下であり、より具体的には直径0.01mm以上2mm以下である。本開示のカチオン電着塗装方法であれば、スパッタが種々のサイズを有していても、優れた防錆性を有する塗膜を形成できる。
溶接部の溶接ビードの近傍には、スラグと呼ばれる、溶接工程で発生するガラス質の成分が散在し得る。スラグのサイズは、特に限定されないが、例えば長さ500μm以下、幅500μm以下、厚さ80μm以下の偏平状の形状を有し得る。上記スラグのサイズはより具体的には、例えば長さ5μm以上500μm以下、幅5μm以上500μm以下、厚さ5μm以上80μm以下の偏平状の形状を有し得る。
なお、本開示において、溶接部がスパッタ及びスラグを有さない、或いはほとんど有さない形態も、本発明に係る被塗物に含まれる。また、溶接部を研磨した形態も、本発明に係る被塗物に含まれる。
溶接部の他に、自動車足回り部品または自動車車体は、例えば、エッジ部を有し得る。本開示におけるカチオン電着塗装方法であれば、防錆性を、エッジ部を有する自動車足回り部品または自動車車体に付与でき、更に、初期錆の発生を大きく抑制できる。
以下の実施例により本開示を更に具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されない。実施例中「部」及び「%」は、ことわりのない限り質量基準による。
(カチオン電着塗料組成物)
製造例1 アミン変性エポキシ樹脂(A-1)の調製
メチルイソブチルケトン92部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER-331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA325部、オクチル酸65部、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を140℃に保持し、エポキシ当量が1220g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が120℃になるまで冷却した。ついでジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)52部とジエタノールアミン83部の混合物を添加し、120℃で1時間反応させることにより、アミン変性エポキシ樹脂(A-1)を得た。
この樹脂の数平均分子量は2,560、アミン価は50mgKOH/g(うち1級アミンに由来するアミン価は14mgKOH/g)、水酸基価は240mgKOH/gであった。
製造例2-1 硬化剤(B-1)の調製
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)1680部およびMIBK732部を反応容器に仕込み、これを60℃まで加熱した。ここに、トリメチロールプロパン346部をMEKオキシム1067部に溶解させたものを60℃で2時間かけて滴下した。さらに75℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK27部を加えて固形分が78%のブロックイソシアネート硬化剤(B-1)を得た。イソシアネート基価は252mgKOH/gであった。
製造例2-2 硬化剤(B-2)の調製
4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート1340部およびMIBK277部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ε-カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK349部を加えてブロックイソシアネート硬化剤(B-2)を得た(固形分80%)。イソシアネート基価は251mgKOH/gであった。
製造例3 樹脂エマルションの調製
製造例1で得たアミン変性エポキシ樹脂(A-1)350部(固形分)と、製造例2-1で得たブロックイソシアネート硬化剤(B-1)75部(固形分)および製造例2-2で得たブロックイソシアネート硬化剤(B-2)75部(固形分)とを混合し、次いで、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテルを固形分に対して3%(15部)になるように加えた。次に、ギ酸および酢酸を等モルで、それらの合計添加量が樹脂中和率40%相当分になるように加えて中和した。次いで、上記より得られた混合物34.0部を加えて混合した(第2混合)。
その後、イオン交換水を加えてゆっくり希釈し、次いで固形分が40%になるように減圧下でメチルイソブチルケトンを除去して、樹脂エマルションを得た。
製造例4 架橋樹脂微粒子(C)の調製
環流冷却器、撹拌機、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、メチルイソブチルケトン56.3部を仕込み、窒素雰囲気下115℃に加熱保持した。これへ、グリシジルメタクリレート16.0部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート4.2部、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート14.8部、n-ブチルメタクリレート58.1部、t-ブチルメタクリレート6.9部、およびt-ブチルパーオクトエート4.0部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下した。滴下終了後115℃に約1時間保持した後、t-ブチルパーオクトエート0.5部を滴下し、115℃で約30分保持し、固形分65%のアクリル樹脂の溶液を得た。数平均分子量は6000であった。
冷却後これへN-メチルエタノールアミン8.5部を加え、窒素雰囲気下120℃で2時間反応させ、固形分約67%の架橋樹脂微粒子(C)の溶液を得た。
製造例5 顔料分散樹脂の製造
2-エチルヘキサノールハーフブロック化イソホロンジイソシアネートの調製
攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)222.0部を入れ、メチルイソブチルケトン(MIBK)39.1部で希釈した後、ここヘジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した後、2-エチルヘキサノール131.5部を攪拌下、乾燥窒素雰囲気で2時間かけて滴下し、2-エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(固形分90.0質量%)を得た。
4級化剤の調製
反応容器に、ジメチルエタノールアミン87.2部、75%乳酸水溶液117.6部およびエチレングリコールモノn-ブチルエーテル39.2部を順に加え、65℃で30分攪拌して4級化剤を調製した。
顔料分散樹脂の製造
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:DER-331J、ダウケミカル社製)710.0部とビスフェノールA289.6部とを反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、150~160℃で1時間反応させ、次いで、120℃に冷却した後、先に調製した2-エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。反応混合物を110~120℃で1時間撹拌し、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル463.4部を加え、混合物を85~95℃に冷却し、先に調製した4級化剤196.7部を添加した。酸価が1となるまで反応混合物を85~95℃に保持した後、脱イオン水964部を加えて、目的とする、4級アンモニウム基を有するエポキシ樹脂(顔料分散樹脂)を得た(固形分50質量%)。
製造例6 顔料分散ペーストの製造
イオン交換水110.1部に、製造例5で得られた顔料分散樹脂を56.7質量部加え、室温で1時間、1000rpmにて攪拌した。その後、顔料であるカーボンブラック8部、サテントン(焼成カオリン)86.6部を加え、次いで、サンドミルを用いて40℃で2000rpmにて粒度10μm以下になるまで分散し、固形分濃度47質量%の顔料ペーストが得られた。
実施例
被塗物の調製
二枚の冷延鋼板(JIS G3141、SPCC-SD、縦150mm、横70mm、厚さ2mm)を溶接し、溶接部を有する冷延鋼板を製造した。冷延鋼板の溶接部は、溶接ビードと、スパッタと、スラグとを有していた。更に被塗物は、エッジ部を有していた。
上記スパッタは、溶接部1cmあたり1個有り、スパッタの大きさは直径0.5mm、高さ0.4mmであった。スラグは、溶接部1mmあたり2個有り、スラグの大きさは150×80mm、高さ25mmであった。また、エッジ部のバリ高さは、30μmであった。
上記より製造された、溶接部を有する鋼板を、サーフクリーナーEC90(日本ペイント社製)中に50℃で2分間浸漬して、脱脂処理した。次にサーフファインGL1(日本ペイント社製)に常温30秒浸漬し、次いでサーフダインEC3200(日本ペイント・サーフケミカルズ社製、ジルコニウム化成処理剤)に35℃で2分間浸漬した。その後、脱イオン水による水洗を行った。
実施例1
ステンレス容器に、イオン交換水2146部、製造例3の樹脂エマルション1328部および製造例6で調製した顔料ペースト418部、製造例4で得られた架橋樹脂微粒子108部(樹脂エマルションの樹脂固形分とエポキシ粘性剤の樹脂固形分の合計に対して、樹脂固形分として12質量%となる量)を加えて混合し、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を調製した。
上記の通り製造した溶接部を有する被塗物を、カチオン電着塗料組成物中に浸漬し、硬化後の電着塗膜の膜厚が30μmとなるように、2-エチルヘキシルグリコールを必要量添加した。その後、電着塗料組成物に鋼板を全て埋没させた後、直ちに電圧の印加を開始し、30秒間昇圧し180Vに達してから150秒間保持する条件で電圧を印加して、溶接部を有する被塗物(冷延鋼板)上に未硬化の電着塗膜を析出させ、被塗物に電着塗装を行った。
未硬化の電着塗膜、すなわち、被塗物上に析出した電着塗膜を、160℃で15分間加熱し硬化させて、被塗物上に硬化電着塗膜を形成した。
被塗物上に析出した析出電着塗膜の最低溶融粘度は12000mPa・sであった。また、得られた硬化電着塗膜の膜厚は30μmであった。
ここで、析出電着塗膜の最低溶融粘度は、100℃以上160℃以下における最低粘度であり、ソリキッドメーター MR300(UBM社製)を用いて測定した。コーンプレート(直径40mm)を使用し、温度範囲(50℃~180℃)の条件で、測定した。
また、硬化電着塗膜の膜厚は、溶接部およびエッジ部いずれからも2mm以上離れた点で膜厚を10点または以上測定し、上限値10%および下限値10%を除いて平均値(トリム平均値)を算出することにより求めた。
実施例2
ステンレス容器に、イオン交換水2155部、製造例3の樹脂エマルション 1306部および製造例6で調製した顔料ペースト418部、製造例4で得られた架橋樹脂微粒子122部(樹脂エマルションの樹脂固形分とエポキシ粘性剤の樹脂固形分の合計に対して、樹脂固形分として13.5質量%となる量)を加えて混合し、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を調製した。
上記より調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、実施例1と同様の手順により電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
実施例3
ステンレス容器に、イオン交換水2158部、製造例3の樹脂エマルション 1298部および製造例6で調製した顔料ペースト418部、製造例4で得られた架橋樹脂微粒子126部(樹脂エマルションの樹脂固形分とエポキシ粘性剤の樹脂固形分の合計に対して、樹脂固形分として14質量%となる量)を加えて混合し、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を調製した。
上記より調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、実施例1と同様の手順により電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
実施例4
ステンレス容器に、イオン交換水2164部、製造例3の樹脂エマルション 1283部および製造例6で調製した顔料ペースト418部、製造例4で得られた架橋樹脂微粒子135部(樹脂エマルションの樹脂固形分とエポキシ粘性剤の樹脂固形分の合計に対して、樹脂固形分として15質量%となる量)を加えて混合し、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を調製した。
上記より調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、実施例1と同様の手順により電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
実施例5
実施例1で調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、硬化後の電着塗膜の膜厚が15μmとなるように2-エチルヘキシルグリコールを添加したこと以外は、実施例1と同様にして電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
実施例6
実施例4で調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、硬化後の電着塗膜の膜厚が15μmとなるように2-エチルヘキシルグリコールを添加したこと以外は、実施例4と同様にして電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
実施例7
実施例1で調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、硬化後の電着塗膜の膜厚が60μmとなるように2-エチルヘキシルグリコールを添加したこと以外は、実施例1と同様にして電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
実施例8
実施例4で調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、硬化後の電着塗膜の膜厚が60μmとなるように2-エチルヘキシルグリコールを添加したこと以外は、実施例4と同様にして電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
実施例9
実施例2で調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、硬化後の電着塗膜の膜厚が15μmとなるように2-エチルヘキシルグリコールを添加したこと以外は、実施例2と同様にして電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
実施例10
実施例3で調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、硬化後の電着塗膜の膜厚が15μmとなるように2-エチルヘキシルグリコールを添加したこと以外は、実施例3と同様にして電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
実施例11
実施例2で調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、硬化後の電着塗膜の膜厚が60μmとなるように2-エチルヘキシルグリコールを添加したこと以外は、実施例2と同様にして電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
実施例12
実施例3で調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、硬化後の電着塗膜の膜厚が60μmとなるように2-エチルヘキシルグリコールを添加したこと以外は、実施例3と同様にして電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
実施例13
実施例2で調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、硬化後の電着塗膜の膜厚が10μmとなるように2-エチルヘキシルグリコールを添加したこと以外は、実施例2と同様にして電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
実施例14
実施例2で調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、硬化後の電着塗膜の膜厚が60μmとなるように2-エチルヘキシルグリコールを添加したこと以外は、実施例2と同様にして電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
比較例1
ステンレス容器に、イオン交換水2140部、製造例3の樹脂エマルション 1343部および製造例6で調製した顔料ペースト418部、製造例4で得られた架橋樹脂微粒子99部(樹脂エマルションの樹脂固形分とエポキシ粘性剤の樹脂固形分の合計に対して、樹脂固形分として11質量%となる量)を加えて混合し、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を調製した。
上記より調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、実施例1と同様の手順により電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
比較例2
ステンレス容器に、イオン交換水2170部、製造例3の樹脂エマルション 1268部および製造例6で調製した顔料ペースト418部、製造例4で得られた架橋樹脂微粒子144部(樹脂エマルションの樹脂固形分とエポキシ粘性剤の樹脂固形分の合計に対して、樹脂固形分として16質量%となる量)を加えて混合し、40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を調製した。
上記より調製したカチオン電着塗料組成物を用いて、実施例1と同様の手順により電着塗装を行い、硬化電着塗膜を形成した。
析出電着塗膜の最低溶融粘度および硬化電着塗膜の膜厚を実施例1と同様の手順により測定した。これらを下記表に示す。
上記実施例および比較例について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
硬化性
上記実施例および比較例で形成した硬化電着塗膜を、アセトンに浸漬し、56℃で4時間加熱還流させた。還流後の硬化電着塗膜を乾燥させ、アセトン浸漬前後での塗膜質量から、下記式より塗膜残存率を求め、硬化性の評価を行った。評価基準は以下の通りとした。
塗膜残存率=Y/X
X=アセトン浸漬前の塗膜質量;
Y=アセトン浸漬後の塗膜質量。
評価基準
○;塗膜残存率 90%以上
△;塗膜残存率 85%以上90%未満(実用上問題なし)
×;塗膜残存率 85%未満(実用上問題あり)
硬化電着塗膜外観(塗装外観)
上記実施例および比較例で形成した硬化電着塗膜を有する電着塗装板について、塗膜外観における異常の有無を目視で判断した。評価基準は以下の通りとした。
評価基準
◎ :極めて均一な塗膜外観を有している
○ :均一な塗膜外観を有している
○△:ややムラがあると視認される部分があるものの、全体としてほぼ均一な塗膜外観を有している
△ :ムラが視認される
× :塗膜外観が明らかに不均一である
エッジ被覆性
上記実施例および比較例で形成した硬化電着塗膜において、エッジ部の塗膜の断面を、ビデオマイクロスコープ(キーエンス社製)を用いて膜厚計測し、下記基準により評価した。
評価基準
◎ :11μm以上
○ :9μm以上~11μm未満
○△:7μm以上~9μm未満
△ :5μm以上~7μm未満
× :5μm未満
エッジ防錆性
本試験の評価は、上記冷延鋼板ではなく、L型専用替刃(LB10K:オルファ株式会社製、長さ100mm、幅18mm、厚さ0.5mm)を、サーフクリーナーEC90(日本ペイント社製)中に50℃で2分間浸漬して脱脂処理し、サーフファインGL-1(日本ペイント社製)で表面調整し、次いでリン酸亜鉛化成処理液であるサーフダインSD-5000(日本ペイント社製、リン酸亜鉛化成処理液)中に40℃で2分間浸漬して、リン酸亜鉛化成処理を行ったものを用いた。これに、上記実施例および比較例によって得られた電着塗料組成物を、上記電着塗装と同様の条件で電着塗装して加熱硬化させ、硬化電着塗膜を形成したのち、JIS Z 2371(2000)に準拠した塩水噴霧試験(35℃×168時間)を行い、L型専用替刃先端部に発生した錆の個数を調べた。
なお、この試験において「L型専用替刃先端部」は、刃の頂点から替刃本体方向に対して5mmまでの幅を意味する。上記幅は、表面側および裏面側の両方を含み、表面裏面の合計では10mmの幅となる。この「L型専用替刃先端部」は、本明細書における「エッジ部」に相当する。
例えば、下記評価で、L型専用替刃先端部に発生した錆の個数が20個である場合は、L型専用替刃の長さが100mm(10cm)、L型専用替刃先端部の幅は表面裏面の合計で10mm(幅1cm)であるため、L型専用替刃先端部1cmあたりの錆の個数は、
20個/10cm=2個/cm
となる。
評価基準
◎ :10個未満
(L型専用替刃先端部1cmあたりの錆の個数として、1個/cm未満)
○ :10個以上~20個未満
(L型専用替刃先端部1cmあたりの錆の個数として、1個/cm以上2個/cm未満)
○△:20個以上~50個未満
(L型専用替刃先端部1cmあたりの錆の個数として、2個/cm以上5個/cm未満)
△ :50個以上~100個未満
(L型専用替刃先端部1cmあたりの錆の個数として、5個/cm以上10個/cm未満)
× :100個以上
(L型専用替刃先端部1cmあたりの錆の個数として、10個/cm以上)
溶接部被覆性
上記実施例および比較例で形成した硬化電着塗膜において、溶接部の塗膜の断面を、ビデオマイクロスコープ(キーエンス社製)を用いて膜厚計測し、下記基準により評価した。
評価基準
◎ :11μm以上
○ :9μm以上~11μm未満
○△:7μm以上~9μm未満
△ :5μm以上~7μm未満
× :5μm未満
溶接部防錆性
上記実施例および比較例で形成した硬化電着塗膜において、JIS Z 2371(2000)に準拠した塩水噴霧試験(35℃×168時間)を行い、溶接部に発生した錆の個数を調べ、下記基準により評価した。
評価基準
◎ :10個未満
○ :10個以上~20個未満
○△:20個以上~50個未満
△ :50個以上~100個未満
× :100個以上

実施例で形成した硬化電着塗膜は、いずれも、良好な硬化性および塗膜外観を有しており、さらに、エッジ被覆性、エッジ部防錆性、溶接部被覆性、溶接部防錆性に優れることが確認された。膜厚が10μmと薄い実施例13では、多少良くない値が出ているが、許容範囲内である。
比較例1は、析出電着塗膜の最低溶融粘度が12,000mPa・s未満である例である。この例では、特にエッジ被覆性、エッジ部防錆性が劣ることが確認された。
比較例2は、析出電着塗膜の最低溶融粘度が25,000mPa・sを超える例である。この例では、特に溶接部被覆性、溶接部防錆性が劣ることが確認された。
本開示に係るカチオン電着塗装方法は、自動車足回り部品を含む自動車車体において、初期錆の発生を大きく抑制でき、さらに高い防錆性を有する塗膜を形成できる。
その上、複雑な形状を有する自動車足回り部品または自動車車体であっても、本開示に係るカチオン電着塗装方法は、初期錆の発生を大きく抑制でき、さらに高い防錆性を有する塗膜を形成できる。

Claims (8)

  1. 溶接部を有する被塗物を、カチオン電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装を行い、被塗物上に析出電着塗膜を形成すること、並びに、
    前記析出電着塗膜を加熱硬化する加熱硬化工程を経て、前記被塗物上に硬化電着塗膜を形成すること、を有し、
    前記被塗物は、自動車足回り部品または自動車車体であり、
    前記カチオン電着塗料組成物は、アミン変性エポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)と、架橋樹脂微粒子(C)とを含み、
    前記析出電着塗膜の最低溶融粘度は12,000mPa・s以上25,000mPa・s以下である、
    カチオン電着塗装方法。
  2. 前記被塗物は、さらに、エッジ部を有する、請求項1記載のカチオン電着塗装方法。
  3. 前記被塗物が有する前記溶接部は、溶接ビードと、スパッタと、スラグとからなる群から選択される少なくとも1つを有する、請求項1又は2に記載のカチオン電着塗装方法。
  4. 前記カチオン電着塗料組成物における、前記架橋樹脂微粒子(C)の量は、アミン変性エポキシ樹脂(A)および硬化剤(B)の樹脂固形分100質量部に対して、12質量部を超え15質量部以下である、請求項1または2に記載のカチオン電着塗装方法。
  5. 前記最低溶融粘度は、12,000mPa・s以上20,000mPa・s以下である、請求項1または2に記載のカチオン電着塗装方法。
  6. 前記架橋樹脂微粒子(C)は、エチレン性不飽和結合を有するモノマーと、架橋性共重合モノマーとの共重合体である、請求項1または2に記載のカチオン電着塗装方法。
  7. 前記硬化電着塗膜の平均膜厚は、15μm以上60μm未満である、請求項1または2に記載のカチオン電着塗装方法。
  8. 前記溶接部はスパッタおよびスラグを有し、
    前記溶接部およびエッジ部いずれからも2mmまたはそれ以上離れた点で測定した前記硬化電着塗膜の平均膜厚が、15μm以上60μm未満である、
    請求項3に記載のカチオン電着塗装方法。
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